特許第6137989号(P6137989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6137989画像形成部材および画像転写部材を使用するインクベースのデジタル印刷に関するシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137989
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】画像形成部材および画像転写部材を使用するインクベースのデジタル印刷に関するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B41C 1/10 20060101AFI20170522BHJP
   B41M 1/06 20060101ALI20170522BHJP
   B41F 7/02 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   B41C1/10
   B41M1/06
   B41F7/02
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-167946(P2013-167946)
(22)【出願日】2013年8月13日
(65)【公開番号】特開2014-46688(P2014-46688A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2016年8月9日
(31)【優先権主張番号】13/599,380
(32)【優先日】2012年8月30日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュ−ヘン・リウ
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−250027(JP,A)
【文献】 特開平11−020124(JP,A)
【文献】 特開昭47−021207(JP,A)
【文献】 特開2011−133848(JP,A)
【文献】 特開2013−256113(JP,A)
【文献】 米国特許第8586277(US,B1)
【文献】 米国特許第8833254(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41C 1/00 − 1/18
B41M 1/00 − 1/42
B41F 7/00 − 7/40
G03G 15/00 −15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク印刷に有用なインクベースのデジタル印刷システムであって、
湿潤液の層が形成されるように構成され、かつ、湿潤液の層をレーザーパターニングして湿潤液画像を形成するレーザー画像装置によって放出される光エネルギーを吸収するよう構成される画像形成部材と、
転写部材であって、これと前記画像形成部材とで湿潤液画像装填ニップを形成して、前記湿潤液画像を前記画像形成部材から当該転写部材に転写する転写部材と、
インクローラであって前記湿潤液画像が塗布されている前記転写部材の表面にインクを塗布して、前記湿潤液画像に基づくインク画像を形成するように構成されるインクローラと、
を備える、インクベースのデジタル印刷システム。
【請求項2】
湿潤液の均一な層を前記画像形成部材の表面上へ形成するよう構成される湿潤液計測供給システム、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記レーザー画像装置は、画像データに従って前記湿潤液を供給するよう構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記転写部材は、前記湿潤液画像装填ニップで前記画像形成部材の表面から前記湿潤液画像が転写されるように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
レーザー画像装置であって、前記レーザー画像装置は、湿潤液画像を形成するために、前記湿潤液層の一部を選択的に蒸発させるレーザー光線を前記画像形成部材の湿潤液の層に照射するよう構成されるレーザー画像装置、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記画像形成部材は、赤外線吸収表面をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記転写部材は、適合表面をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記転写部材は、シリコン表面をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記画像形成部材および前記転写部材のそれぞれは、テクスチャ表面を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
基板搬送システム、および
インク画像転写ニップを含み、
前記インク画像転写ニップは、前記転写部材および前記基板搬送システムによって規定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
インクベースのデジタル印刷に関する方法であって、
画像形成部材の表面上へ湿潤液を計測しながら供給して、湿潤液の層を形成すること
画像データに従って湿潤液画像を形成するために前記湿潤液の層に放射線を選択的に照射して湿潤液画像を形成すること、
転写部材および前記画像形成部材によって規定される湿潤液パターン装填ニップで前記湿潤液画像を前記転写部材へ転写すること、
インク画像を生成するために、前記湿潤液画像を有する前記転写部材の表面へインクを塗布すること、
および、
前記転写部材および基板搬送システムによって規定されるインク画像転写ニップで前記インク画像を基板へ転写すること、
を含む方法。
【請求項12】
前記インク画像の基板への転写前に、前記インクの粘着性を高めるために前記インク画像を調節すること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
湿潤液画像転写後に前記画像形成部材の表面に残る湿潤液を蒸発させるために、熱および気流を前記画像形成部材の前記表面へ印加すること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記選択的に照射することは、レーザー画像装置からレーザー光線を出力することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記インク画像の転写後に、前記転写部材表面に残っているインクを除去することを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はインクベースのデジタル印刷に関する。具体的には、本開示は、画像形成部材および湿潤液画像を画像形成部材から受信する画像転写部材を有する印刷システムを備えるインクベースのデジタル印刷に関する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術のインクベースのデジタル印刷システム、すなわちデジタルリソグラフィ印刷用に構成される可変データリソグラフィシステムは、画像形成部材に塗布された湿潤液の層をレーザーパターニングする画像形成システムを含む。画像形成システムは、光エネルギーを放出する高出力レーザーを含む。画像形成部材は、画像生成に求められる要求の中でも特に、光エネルギーを吸収することができるプレートまたはブランケットなどの高価で画像再形成可能な表面層を含む必要がある。高い印刷速度および削減されたシステムおよび作動コストが一般的に望まれる一方で、従来技術のインクベースのデジタル印刷システムを使用して得られる印刷速度はレーザー画像形成プロセスによって制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術のインクベースのデジタル印刷システムは、高価であり、かつ湿潤液およびインク相互作用に関する適合性を含む厳しい設計要件が課されるプレートを有する画像形成部材が必要なレーザーパターニング用の高出力レーザーを使用する。システムは、画像形成部材への湿潤液を計測すること、レーザー画像装置を使用して画像データに従って湿潤液をパターニングすること、および湿潤液画像をインク付けのために別個の部材へ転写することが望まれる。
【0004】
1つの実施形態において、インク印刷に有用なインクベースのデジタル印刷システムは、湿潤液の層を受信するよう構成され、かつレーザー画像装置によって放出される光エネルギーを吸収するよう構成される画像形成部材、およびインクを受信するよう構成される転写部材を含んでよく、転写部材および画像形成部材は湿潤液画像装填ニップを形成する。システムは、画像形成部材の表面上に湿潤液の均一な層を形成するよう構成される湿潤液計測システムを含み得る。
【0005】
1つの実施形態において、システムはレーザー画像装置を含んでよく、レーザー画像装置は、湿潤液画像を形成するために、湿潤液層の一部を選択的に蒸発させるためにレーザー光線を画像形成部材の湿潤液の層に照射するよう構成される。システムは、画像データに従って、湿潤液をさらすよう構成されるレーザー画像装置を含み得る。システムは、転写ニップで画像形成部材の表面から湿潤液画像を受信するよう構成される転写部材を含み得る。システムは、赤外線吸収表面をさらに含む画像形成部材を含み得る。
【0006】
1つの実施形態において、システムは湿潤液システムおよび画像形成部材を含んでよく、約1ミクロンの厚さを有する画像形成部材に湿潤液の層を形成するよう構成される。転写部材は、適合表面を含み得る。表面は、例えばシリコンを備え得る。1つの実施形態において、画像形成部材および転写部材のそれぞれは、テクスチャ表面を有し得る。1つの実施形態において、システムは、転写部材が湿潤液画像に基づくインク画像を形成するために画像形成部材から転写された湿潤液画像を受信した後、転写部材の表面へインクを塗布するよう構成されるインクローラを含み得る。
【0007】
インクベースのデジタル印刷に関する方法の実施形態は、画像形成部材の表面への湿潤液の層を計測すること、画像データに従って湿潤液画像を形成するために湿潤液の層を放射線に選択的にさらすこと、および転写部材および画像形成部材によって規定される湿潤液パターン装填ニップで湿潤液パターンを転写部材へ転写すること、を含み得る。方法は、インク画像を生成するために湿潤液画像を有する転写部材の表面へインクを塗布することを含み得る。
【0008】
1つの実施形態において、方法は、インク画像の基板への転写前に、インクの粘着性を高めるためにインク画像を調節することを含み得る。方法は、転写部材および基板搬送システムによって規定されるインク画像転写ニップでインク画像を基板へ転写することを含み得る。方法は、湿潤液画像の転写後に、画像形成部材の表面に残る湿潤液を蒸発させるために画像形成部材の表面へ熱および気流を印加することを含み得る。方法は、レーザー画像装置からレーザー光線を出力することをさらに含む、選択的にさらすことを含み得る。1つの実施形態において、方法は、インクパターンの転写後に転写部材の表面に残るインクを除去することを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】従来技術のデジタル構造印刷システムの概略図を示す。
図2】実施形態に従って、インクベースのデジタル印刷システムを示す。
図3】実施形態に従って、インクベースのデジタル印刷方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
画像形成プレートに湿潤液をレーザーパターニングする高出力レーザーを使用する従来技術のインクベースのデジタル印刷システムは、高価であり、かつ制限された印刷速度を有する可能性がある。本明細書で開示されるシステムおよび方法は、真に効果的な可変デジタルデータリソグラフィ印刷を達成するために、湿潤液の可変パターニングに基づく以前に試された可変データ画像形成リソグラフィマーキング構想の様々な態様に対する改善に向けられている。
【0011】
開示される実施形態に従って、画像再形成可能な表面が画像形成部材に提供され、これはドラム、プレート、ベルトなどであってよい。画像再形成可能な表面は、例えば共通してシリコンと称される部類の材料から成っていてよく、特にポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む。画像再形成可能な表面は、搭載層にわたって比較的薄い層で形成されてよく、比較的薄い層の厚さは、印刷またはマーキング性能、耐久性および製造可能性のバランスを取って選択される。
【0012】
開示される実施形態は、例えば図1に示すような、インクベースのデジタル印刷に関する例示的な可変データリソグラフィシステム100を説明する。図1に示される例示的なシステム100の一般的な説明が本明細書で提供される。図1の例示的なシステム100に示される個々の構成要素および/またはサブシステムに関する追加の詳細は、本出願にて参照され得る。
【0013】
図1に示すように、例示的なシステム100は画像形成部材110を含み得る。図1に示される実施形態の画像形成部材110はドラムであるが、この例示的な記載は、画像形成部材110がプレートまたはベルト、または現段階で知られているか、または今後開発される別の構成を含む実施形態を排除すると解釈されるべきではない。画像形成部材110は、転写ニップ112でインク画像を画像受信媒体基板114へ塗布するために使用される。転写ニップ112は、画像転写メカニズム160の一部として、画像形成部材110の方向へ圧力をかける圧痕ローラ118によって形成される。画像受信媒体基板114は、例えば紙、プラスチック、または複合材シートフィルムなどの任意の特定の組成物に制限されると見なされるべきではない。例示的なシステム100は、多様な画像受信媒体基板に画像を生成するために使用され得る。開示される実施形態は、使用され得る幅広い自由度のマーキング(印刷)材料をさらに説明し、これは10重量%より大きい色素密度のマーキング材料を含む。本開示は、画像受信媒体基板114に出力画像を生成するために例示的なシステム100によって塗布され得るインク、色素、および他の材料であると共通して理解される材料を含めるために、幅広い印刷またはマーキング材料に関してインクという用語を使用する。
【0014】
開示される実施形態は、例えば円柱コア、または円柱コアにわたる1つまたは複数の構造層であり得る構造的な搭載層にわたって形成される画像再形成可能な表面層から成る画像形成部材110を含む画像形成部材110の詳細を記述および説明する。
例示的なシステム100は、画像形成部材110の画像再形成可能な表面を湿潤液で均一に湿らせる、湿潤ローラまたは湿潤ユニットと見なされ得る一連のローラを一般的に備える湿潤液サブシステム120を含む。湿潤液サブシステム120の目的は、一般的には均一かつ制御された厚さを有する湿潤液の層を画像形成部材110の画像再形成可能な表面へ届けることである。上記で示したように、湿潤液は、以下でより詳細に説明するように、表面張力を小さくすると同時に後続のレーザーパターニングのサポートに必要な蒸発エネルギーを低くするために追加される少量のイソプロピルアルコールまたはエタノールを選択的に含む水を主に含んでよいことが知られている。湿潤液が噴水溶液である場合、少量の特定の界面活性剤が噴水溶液に加えられてよい。代わりに、他の適切な湿潤液がインクベースのデジタルリソグラフィシステムの性能を高めるために使用され得る。
【0015】
画像形成部材110の画像再形成可能な表面上への湿潤液が計測されると、湿潤液サブシステム120による画像形成部材110の画像再形成可能な表面上への湿潤液の計測を制御するために、フィードバックを提供し得るセンサ125を使用して湿潤液の厚さが測定され得る。
【0016】
正確で均一な量の湿潤液が湿潤液サブシステム120によって画像形成部材110の画像再形成可能な表面へ提供されると、例えばレーザーエネルギーを使用して湿潤液層を画像広域パターニングすることによって均一な湿潤液層に潜像を選択的に形成するために、光パターニングサブシステム130が使用され得る。一般的には、湿潤液は光エネルギー(赤外線または可視)を効率的に吸収しない。画像形成部材110の画像再形成可能な表面は、理想的には、湿潤液の加熱において廃棄されるエネルギーを最小化し、かつ高空間分解能の能力を維持するために熱の側部拡散を最小化するために、表面に近い光パターニングサブシステム130から放出されるレーザーエネルギー(赤外線または可視)のほとんどを吸収するのがよい。代わりに、付随的な放射レーザーエネルギーの吸収を補助するために、適切な放射線感知構成要素が湿潤液に追加されてもよい。光パターニングサブシステム130がレーザー放出器として上記で説明される一方で、当然のことながら、湿潤液をパターニングするために、多様な異なるシステムが光エネルギーを届けるために使用され得る。
【0017】
簡潔には、光パターニングサブシステム130からの光パターニングエネルギーの印加により、湿潤液の層の一部が選択的に蒸発する結果となる。
【0018】
光パターニングサブシステム130による湿潤液層のパターニングに続いて、画像形成部材110の画像再形成可能な表面にわたってパターン化された層がインクローラサブシステム140へ渡される。インクローラサブシステム140は、湿潤液の層および画像形成部材110の画像再形成可能な表面層にわたってインクの均一な層を塗布するために使用される。インクローラサブシステム140は、画像形成部材110の画像再形成可能な表面層と接触する1つまたは複数のインク形成ローラ上へのオフセットリソグラフィインクを計測するために、アニロックスローラを使用し得る。それとは別に、インクローラサブシステム140は、画像再形成可能な表面へ正確な供給量のインクを提供するために、一連の計測ローラなど他の従来の要素を含み得る。インクローラサブシステム140は、画像再形成可能な表面の画像化された部分を表すポケットへインクを沈着させ得、一方で湿潤液の未フォーマット部分のインクはこれらの部分に付着しない。
【0019】
画像形成部材110の画像再形成可能な層に存在するインクの密着性および粘着性は、メカニズムの数によって変更され得る。1つの当該のメカニズムは、レオロジー(複素粘性係数)制御サブシステム150の使用に関与し得る。レオロジー制御サブシステム150は、例えば画像再形成可能な表面層と相対的なインク粘着強度を高めるために、インクの部分的な架橋コアを画像再形成可能な表面に形成し得る。硬化メカニズムは、光またはフォト硬化、熱硬化、乾燥、または様々な形式の化学的硬化を含み得る。冷却は、複数の物理的な冷却メカニズムを介するとともに、化学的な冷却を介してレオロジーを変更するために使用され得る。
【0020】
その後、インクは、画像形成部材110の画像再形成可能な表面から画像受信媒体114の基板へ転写サブシステム160を使用して転写される。転写は、基板114がニップ112を通過する時に、画像形成部材110および圧痕ローラ118の間で起こり、従って画像形成部材110の画像再形成可能な表面の空所内のインクは基板114と物理的に接触する。レオロジー制御システム150によってインクの付着性が変更されたことにより、変更されたインクの付着性がインクを基板114へ付着させ、かつ画像形成部材110の画像再形成可能表面から離させる。転写ニップ112での温度および圧力状態の入念な制御により、画像形成部材110の画像再形成可能な表面から基板114へのインクの転写効率は95%を超えることが可能である。一部の湿潤液が基板114を湿らせることも可能な一方で、当該の湿潤液の量は最小となり、かつ急速に蒸発するか、または基板114によって吸収される。
【0021】
特定のオフセットリソグラフィシステムにおいて、オフセットローラは図1に示されないが、最初にインク画像パターンを受信し得、その後既知の間接転写方法に従って、インク画像パターンを基板へ転写し得ることを理解されたい。
【0022】
大部分のインクの基板114への転写に続き、いずれの残留インクおよび/または残留湿潤液は、画像形成部材110の画像再形成可能な表面から、好ましくは表面をこすったり摩耗させたりせずに除去される必要がある。エアナイフ175は、残留湿潤液を除去するために利用され得る。しかしながら、一部のインク残留物が残り得ると予想される。当該の残ったインク残留物の除去は、特定の形式の洗浄サブシステム170の使用を通して達成され得る。米国特許出願13/095,714号は、少なくとも画像形成部材110の画像再形成可能な表面と物理的に接触する付着性または粘着性部材などの少なくとも第1の洗浄部材を含む洗浄サブシステム170の詳細を説明し、付着性または粘着性部材は、残留インクおよびいずれの残っている少量の界面活性剤化合物を画像形成部材110の画像再形成可能な表面の湿潤液から除去する。その後、付着性または粘着性部材は、残留インクが付着性または粘着性部材から転写され得る平滑ローラと接触してよく、インクは実質的に、例えばドクターブレードによって平滑ローラからはがされる。
【0023】
開示される実施形態は、画像形成部材110の画像再形成可能な表面の洗浄を容易にし得る他のメカニズムを詳述する。しかしながら、洗浄メカニズムにかかわらず、残留インクおよび湿潤液の画像形成部材110の画像再形成可能な表面からの洗浄は、提案されるシステムの弱体化を防ぐために必須である。洗浄されると、画像形成部材110の画像再形成可能な表面は、再び湿潤液の新しい層を画像形成部材110の画像再形成可能な表面へ供給する湿潤液サブシステム120へ渡され、プロセスが繰り返される。
【0024】
上記で提案した構造に従って、可変データデジタルリソグラフィは、リソグラフィ画像形成システムにおける真に可変のデジタル画像生成において注目されてきた。上記で説明した構造は、画像形成プレートの機能性および潜在的に転写ブランケットを組み合わせて、光吸収表面を有する必要がある単一の画像形成部材110を作り上げる。
【0025】
高出力画像形成レーザーを有する従来技術のインクベースのデジタル印刷システムは高価である。高出力レーザー画像形成装置は高価であり、画像形成部材は、高価な画像再形成可能プレートまたは光エネルギーを吸収することができ、かつ多数の他の設計制約が課せられる表面層を含む必要がある。例えば、従来技術の画像形成部材は、画像再形成可能なプレート、ブランケット、または光エネルギーを吸収することができる表面層を含む必要がある。従来技術の画像形成プレートは以下の要件、すなわち、インク付けおよびインク画像の放出が可能であること、多様な基板へのインク画像の転写を容易にする適合性、温度許容度、例えば炭素または酸化鉄(III)などの酸化鉄を包含することによって赤外線吸収を可能にすること、インク/プレート/湿潤液の相互作用に適した表面の濡れ具合を可能にすること、レーザー画像形成またはパターニング後に湿潤液を留めるよう構成される適切な表面テクスチャを有すること、例えば何万回以上の圧痕の長い期間にわたって上記要件および空間均一性を維持できること、を含む要件を満たす必要がある。
【0026】
具体的には、従来技術の画像形成プレートは、1)インクをインクローラから受け付け、インク転写ニップで受け付けたインクのほぼ100%を放出できるよう構成される必要がある。画像形成部材は、2)紙、プラスチック、および梱包材に適した基板を含む様々な基板に印刷できるよう適合可能である必要がある。画像形成プレートは、3)レーザーパターニングに適応するために、200℃より高い温度に耐えるよう構成される必要がある。画像形成プレートは、4)赤外線光を吸収するよう構成される必要があり、プレートの本体においてカーボンブラックまたは酸化鉄を包含し得る。例えば、吸収深度を最小化するために、赤外線吸収装置の濃度は、例えば10%と高いのがよい。画像形成プレートは、5)湿潤液、インク、およびプレートの相互作用のために表面を濡らすよう構成される必要があり、画像形成プレートは、6)表面テクスチャを有するよう構成される必要がある。
【0027】
レーザーパターニング後、湿潤液画像は不安定である。湿潤液の流動性により、液体の表面張力は、レーザー出力による湿潤液の除去後、ポケットの縁/角を再整形する傾向がある。結果として、プルバック(レーザーパターニング後の過度な縁の再整形)として知られる画像欠陥が生じる可能性があり、画像分解能および画像忠実性が減少する。レーザーパターニング後に湿潤液を留めるには、良好な表面テクスチャが重要である。これは、湿潤液が極端な温度勾配にさらされる場合のレーザー照射中に特に困難である。さらに、表面テクスチャはインク付けプロセスで重要である。テクスチャのない滑らかなプレート表面は、様々な固形化および網点の均一性の問題をもたらし得る。プレート表面のプラズマエッチングは、適切なテクスチャリング方法と見なされている。しかしながら、プラズマエッチングはすべての材料に対して効果的なわけではない。さらに、プラズマエッチングは、プレートに埋め込まれた赤外線吸収装置を露出させる可能性がある。
【0028】
画像形成プレートは、7)画像形成プレートと湿潤液およびインクの様々な化学的構成要素との間の混和性要件を満たす必要がある。画像形成プレートは、8)耐摩耗性である必要があり、上記に列挙された1〜7の要件を長期間にわたって維持する。少なくとも、持続的な加熱および圧力サイクルにさらされるプレートの表面特性に関する要件1〜7のうちの多くのために、これは困難である。不良モードは表面摩耗を含み、画像形成プレート部分からのプレートの表面などを通る赤外線吸収装置の浸出を含む。
【0029】
実施形態のシステムおよび方法は、2つの別個の物理的な部材、すなわち画像形成部材および転写部材との間で、画像形成プレートの機能性を分割する。画像形成部材および転写部材は、ロールまたはシリンダであってよい。画像形成部材は、印刷システムにおいて湿潤液を吸収材から受信するよう構成され得る。画像形成部材の表面への湿潤液が計測された後、湿潤液画像またはパターンを形成するために画像データに従って、レーザーエネルギーが湿潤液層へ湿潤液をパターニングするために印加される。具体的には、湿潤液はレーザーエネルギーにより蒸発する。
【0030】
その後、画像形成部材は、レーザーパターニングされた湿潤液画像を受信する転写部材と接触され得る。画像形成部材および転写部材は、画像形成部材から転写部材への湿潤液画像の接触転写/分割に関する湿潤液画像(または、パターン)装填ニップを規定し得る。装填ニップで、湿潤液に浸った画像形成部材の表面領域は湿っていてよく、転写部材が接触すると、少量の湿潤液が転写部材の表面への転写のために放出される。インクベースのデジタル印刷システムおよび方法は、実施形態に従って、赤外線吸収、湿潤液、およびインクの要件すべてを満たす開発中の画像形成部材材料に関連するリスクおよびコストを削減できる。さらに、システムおよび方法は、画像品質、印刷速度を向上させ、廃棄物を削減できる。
【0031】
画像形成部材は、上記に列挙したプレート要件3および4、および要件5〜7の変形を課せられる。例えば、要件5)に関して、画像形成部材は、湿潤液と画像形成部材との間の相互作用に適応することが必要なだけである。6)に関して、表面テクスチャは、湿潤液および、例えばそのプルバック用に構成されることが必要なだけである。これは、例えばセラミック材料など、硬くて耐久性のある画像形成部材表面を選択することによって達成され得る。7)に関して、画像形成部材は、湿潤液と画像形成部材との間の相互作用に適応するよう構成されることが必要なだけである。さらに、画像形成部材は、持続的に上昇する温度で動いてよく、レーザー画像装置の出力要件を削減し、印刷速度を向上させる。
【0032】
転写部材は、上記に列挙した要件1、2、および5、および要件6〜8の変形を課せられ得る。例えば、要件6)に関して、転写部材の表面は必要であればインク付けのためにテクスチャされ得る。一部のインクはテクスチャを必要とせず、テクスチャのない表面で作用することができる。要件7)に関して、転写部材と湿潤液との間の相互作用が軽減され、従ってこの要件を満たす難しさが低減される。要件8)に関して、要件3〜4を満たす必要がなく、より容易に達成される。画像形成プレートの大部分からの赤外線吸収装置の浸出など、一部の不良モードはなくなり、従って転写部材は赤外線吸収性材料を必要としない。
【0033】
図2は、実施形態に従って、インクベースのデジタル印刷システムを示す。具体的には、図2は画像形成部材205を示す。画像形成部材205は、その表面207に、または表面の下に赤外線吸収性材料を含む。好ましくは、画像形成部材表面207は、赤外線吸収性材料の浸出なしに赤外線光を吸収するよう構成され、赤外線吸収性材料は酸化鉄またはカーボンブラックを含み得る。
【0034】
システムは、湿潤液計測システム210を含み得る。湿潤液計測システム210は、画像形成部材205の表面207上への湿潤液の均一な層を計測するよう構成され得る。システムは、レーザー光線を放出し、かつレーザー光線を画像形成部材205の表面207の湿潤液の層へ選択的に照射するよう構成されるレーザー画像装置212を含み得る。レーザー光線は、画像データに従って、湿潤液層の所望のエリアで湿潤液を蒸発させることによって湿潤液をパターニングするために照射され得る。
【0035】
転写部材235は、画像形成部材205を用いて湿潤液画像装填ニップを形成するよう構成されてよく、従って画像形成部材表面207の領域のレーザーパターニングによって生成された湿潤液画像は、装填ニップでの圧力下で転写部材表面231へ転写される。具体的には、軽い圧力が転写部材表面231と画像形成部材表面207との間に印加され得る。湿潤液画像装填ニップで、湿潤液画像は圧力下で分割され、多量の湿潤液を転写部材235へ転写して、転写部材235の表面231にレーザー画像装置212によってパターン化された湿潤液画像を形成する。転写される湿潤液の量は、接触圧力の調整によって調整され得る。例えば、約1ミクロン以下の湿潤液層が転写部材表面231へ転写され得る。
【0036】
湿潤液画像が転写部材235へ転写された後、インクローラ219からのインクは、インクパターンまたは画像を形成するために転写部材表面231へ塗布される。インクパターンまたは画像は、湿潤液パターンの陰像であるか、または一致してもよい。インク画像は、転写部材235および基板搬送ロール240によって形成されるインク画像転写ニップで媒体へ転写され得る。基板搬送ロール240は、転写部材235から紙搬送241によって運ばれる媒体へのインク画像の接触転写を容易にするために、例えば転写部材表面231に対しての紙搬送241を促し得る。
【0037】
システムは、インク画像転写ニップでのインク画像の転写前に、インク画像のインクの粘着性を高めるレオロジー調節システム245を含み得る。システムは、例えば転写部材235から紙搬送241によって運ばれる媒体へのインク画像の転写後に、媒体のインク画像を硬化させる硬化システム247を含み得る。レオロジー調節システム245は、媒体プロセス方向に対して、転写部材ニップの前に配置され得る。硬化システム247は、媒体プロセス方向に対して、転写部材235の後に配置され得る。転写部材235から媒体へのインク画像の転写後、残留インクは転写部材洗浄システム239によって除去され得る。
【0038】
湿潤液パターンの画像形成部材表面207からの転写後、画像形成部材205は新しいサイクルの準備において洗浄され得る。画像形成部材表面207を洗浄する様々な方法が使用され得る。
【0039】
図3は、実施形態に従って、インクベースのデジタル印刷方法を示す。具体的には、図3はインクベースのデジタル印刷プロセス300を示す。方法は、S301で画像形成部材に湿潤液の均一な層を形成するために、吸収材を使用して湿潤液を画像形成部材表面へ塗布することを含み得る。方法は、S303でレーザー画像形成システムによって出力されるレーザー光線を湿潤液層に照射することを含み得る。湿潤液は、画像データに従って湿潤液をパターニングするためにレーザー光線を照射され得る。湿潤液層の所望の部分がレーザーエネルギーにさらされると、湿潤液の所望の部分はレーザーによって出力されたエネルギーを吸収し、かつ画像形成部材表面から蒸発して、湿潤液パターンまたは画像を残す。
【0040】
方法は、S305で湿潤液パターンまたは画像を転写部材へ転写することを含み得る。具体的には、湿潤液画像は、画像形成部材および転写部材によって形成される湿潤液画像装填ニップでの圧力下で転写され得る。湿潤液画像は、S305で分割され、区分され、または装填ニップで画像形成部材から転写部材へ接触転写され得る。
【0041】
方法は、S307で転写部材の表面をインク付けすることを含み得る。インクは、インクパターンまたは画像を生成するために、湿潤液を有さない転写部材表面の一部へ付着し得る。方法は、S309でインク画像のレオロジー調節を行うことを含み得る。インク画像は、転写部材および基板搬送ロールによって形成される圧力ニップでのインク画像の効率的な転写の準備において、インクの粘着性を高めるよう調節され得る。具体的には、方法は、インク画像の紙または梱包材などの基板への転写前に、インク画像を事前硬化させることを含み得る。
【0042】
方法は、S311でインク画像を転写部材から基板へ転写することを含み得る。具体的には、インクは、基板搬送経路によって運ばれる紙などの基板へ転送され得る。基板搬送経路は、転送部材および基板搬送ロールによって形成される転写ニップを経由して基板を運ぶよう構成され得る。方法は、転写ロールから基板へのインクパターンまたは画像転写後に残ったインクを除去するために、S315で転写部材を洗浄することを含み得る。方法は、S321で画像形成部材を洗浄することを含み得る。具体的には、画像形成部材は、S305での湿潤液画像の画像形成部材から転写部材への転写後に、画像形成部材表面に残っている湿潤液を除去するよう構成される洗浄システムによって洗浄され得る。
図1
図2
図3