特許第6138005号(P6138005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138005
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】レーザ加工ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/064 20140101AFI20170522BHJP
【FI】
   B23K26/064 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-194015(P2013-194015)
(22)【出願日】2013年9月19日
(65)【公開番号】特開2015-58452(P2015-58452A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和隆
(72)【発明者】
【氏名】古清水 洋
(72)【発明者】
【氏名】小野 育康
(72)【発明者】
【氏名】田川 省吾
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−039594(JP,A)
【文献】 特開2013−039593(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3048666(JP,U)
【文献】 特開平09−112642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
B23Q 16/00 − 16/12
F16H 51/00 − 55/30
B23Q 1/00 − 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームをワークに向けて出射する光路と、
前記光路の途中に配され、前記光路の中心周りに回転駆動されるリング状の駆動回転体と、
前記光路に交差する方向から前記光路に対して出入自在とされ、前記光路に挿入された際に前記レーザビームの光軸を屈折させる傾斜ガラスと、
前記傾斜ガラスを保持するリング状の従動回転体と、
前記光路から離間した軸を中心に回動自在とされ、回動端側に前記従動回転体を回転自在に備えており、前記軸を中心に回動されることで、前記傾斜ガラスを前記光路に対して出し入れする回動アームと、
前記駆動回転体および従動回転体の一方に設けられ、回転方向に沿って等間隔に配されると共にそれぞれが放射外方向に突出した複数の同一歯形の係合歯と、
前記駆動回転体および従動回転体の他方に設けられ、前記傾斜ガラスが前記光路に挿入された際に前記係合歯と係合することで、前記駆動回転体の回転を従動回転体に伝達する係合ピンと、
を備えるレーザ加工ヘッドであって、
前記各係合歯は、歯元幅中心線に対し左右非対称で、歯元幅中心線に対し歯先部が回転方向前方に斜めに倒れた形状をなしており、
前記係合歯の回転方向後側の側壁は、歯先部に近いほど傾斜がゆるやかで歯元部に近いほど傾斜がきつくなるように傾斜した径方向外方を向いた凸湾曲面形状の誘導案内壁として構成され、
前記係合歯の回転方向前側の側壁は、回転方向に対し垂直な壁か垂直よりも径方向内方を向いた壁よりなることで前記係合ピンを拾う拾い壁として構成され、
かつ、隣接する前記係合歯間の凹部の深さが前記係合ピンの直径よりも大きく設定されていることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工ヘッドであって、
前記係合ピンがカムフォロアで構成されていることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザ加工ヘッドであって、
前記カムフォロアとして、滑り軸受である無給油式のドライブッシュを軸受要素として組み込んだカムフォロアが使用されていることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、レーザビームのビーム幅を拡大するために、レーザビームの光軸を屈折偏心させる傾斜ガラス(ガラスの上下の一方の面にウェッジを付けたウェッジ付きガラスも含む)を回転自在に備えたレーザ加工ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ切断加工が可能なレーザ加工ヘッドを用いてレーザ溶接を行う場合、ワークへ照射するレーザビームのビーム幅を拡大するために、レーザビームの光軸を屈折偏心させる傾斜ガラスを回転させることが行われている(例えば、特許文献1参照)。また、ウィービング溶接を行う場合に、傾斜ガラスを回転させて、レーザビームの光軸を偏心回転させることで、溶接幅を拡大することが行われている。
【0003】
図5は特許文献1に記載のレーザ加工ヘッドの構成を示す説明図、図6はその要部の構成を示す断面図、図7図9はレーザ加工ヘッドの主要部分の構成および作用を説明するための平面図である。
【0004】
図5に示すように、レーザ加工ヘッド1は、産業用ロボット(図示省略)におけるロボットアーム3の先端部に適宜構成のブラケット5を介して取り付けられている。このレーザ加工ヘッド1は、ブラケット5に取り付けられた筒状の加工ヘッド本体7を備えており、加工ヘッド本体7の上部には、レーザ発振器(図示省略)に一端側が接続された光ファイバ9の他端側を保持する光ファイバホルダ11が装着されている。
【0005】
加工ヘッド本体7の内部には、光ファイバの他端側(出射端)から出射されたレーザビームLBを、ワークWに向けて出射するための光路60が設けられており、この光路60の途中に、光ファイバの他端側から出射されたレーザビームLBを平行光線化するためのコリメートレンズ13が配置されている。
【0006】
そして、コリメートレンズ13の下方位置には、レーザビームLBを集光してワークWへ照射する集光レンズ15が設けられると共に、アシストガスをワークWのレーザ加工位置へ噴出するレーザノズル17が設けられている。
【0007】
また、光ファイバホルダ11に保持された光ファイバ9の出射端とコリメートレンズ13との間(光路60の途中)には、レーザビームLBの光軸LAに対して傾斜した傾斜ガラス19を備えた筒状のガラスホルダ21が設けられている。
【0008】
ガラスホルダ21および傾斜ガラス19は、光路60に交差する方向から光路60に対して出入自在とされており、傾斜ガラス19は、光路60に挿入された際に、レーザビームLBの光軸を屈折偏心させる働きをなす。ガラスホルダ21は、屈折ユニット格納部35内に回転自在に配置されている。
【0009】
図6に示すように、屈折ユニット格納部35は、周壁37を備えたボックス本体39を主体に構成されており、周壁37の上部に上部プレート41を取り付けることによって、屈折ユニット格納部35の内部は密封した格納室43となっている。そして、上部プレート41上に、光ファイバ9を保持した光ファイバホルダ11が固定されている。また、ボックス本体39における底部39Bの下部には、複数の支柱45を介して支持プレート47が固定されている。
【0010】
ボックス本体39の底部39Bと支持プレート47には、複数の軸受を介して中空状の従動プーリ49が回転自在に支持されている。この従動プーリ49の軸心は、光ファイバホルダ11の軸心と一致しており、光ファイバホルダ11の内部空間から従動プーリ49の内部空間までが、貫通した光路60の一部を構成している。
【0011】
従動プーリ49は、ボックス本体39の外側に備えられたモータ51に連動連結されている。即ち、従動プーリ49には、図6に示すように、モータ51によって回転される駆動プーリ53に掛け回したタイミングベルト55が巻回されており、モータ51を回転させることによって、従動プーリ49が回転するようになっている。
【0012】
従動プーリ49の上端部は格納室43内に突出しており、この従動プーリ49の上端面に、図8に示すように、リング状の駆動回転体57が、複数のボルトなどの固定具59によって一体的に取り付けられている。そして、従動プーリ49に一体化された駆動回転体57は、光路60の中心周りに回転駆動されるようになっている。
【0013】
駆動回転体57は、図8及び図9に示すように、放射外方向へ突出した複数の同一歯形の係合歯61を外周面に周方向(回転方向)に等間隔に備えている。各係合歯61は、歯元幅中心線に対して左右対称の略三角形状をなしており、歯元部から歯先部に行くほど窄まった形状をなしている。換言すれば、駆動回転体57は、各係合歯61の間に、放射外方向に行くほど次第に広くなる形状の複数の凹部63を等間隔に備えた構成である。
【0014】
図6図8に示すように、格納室43内であって駆動回転体57から離れた位置(光路60から離間した位置)には、駆動回転体57の軸心と平行な回動支持軸65が回動自在に備えられている。より詳細には、回動支持軸65の下部は、ボックス本体39の底部39Bに備えた軸受67に回転自在に支持されており、回動支持軸65の上部は、上部プレート41に備えた軸受69に回転自在に支持されている。そして、回動支持軸65の上端部は、上部プレート41上に装着したモータなどのロータリーアクチュエータ71の回転軸73とカップリング75を介して連動連結されている。
【0015】
この回動支持軸65には回動アーム77の基端部側が一体的に固定されており、回動アーム77の先端側(回動端側)には、傾斜ガラス19を備えたガラスホルダ21が、従動回転体79を介して回転自在に装着されている。即ち、ガラスホルダ21を保持したリング状の従動回転体79が、軸受81を介して回動アーム77に回転自在に取り付けられている。
【0016】
そして、ロータリーアクチュエータ71を駆動して、回動アーム77を回動支持軸65を中心にして往復回動させることにより、傾斜ガラス19を、図7に示すように、レーザビームLBの光路60に対応した位置に挿入したり、図8に示すように、レーザビームLBの光路60から離反した後退位置に位置決めしたりすることができるようになっている。なお、回動アーム77を後退位置へ回動したときに、回動アーム77に当接して衝撃を緩和するストッパ85が、ボックス本体39の記周壁37の内面に備えられている。
【0017】
また、図6及び図9に示すように、従動回転体79の下部には、駆動回転体57に設けた係合歯61に係合可能な円柱形状の係合ピン83が突設されている。この係合ピン83は、傾斜ガラス19が光路60に挿入された際に、駆動回転体57の係合歯61と噛み合い、これにより、駆動回転体57の回転を従動回転体79に伝達する役目を果たす。
【0018】
以上の構成において、図8に示すように、傾斜ガラス19がレーザビームLBの光路60から外れた位置にあるときには、光ファイバ9の出射端から出射されたレーザビームLBは、直進してコリメートレンズ13へ直接入射され、レーザ切断加工等を行うことになる。
【0019】
一方、図8に示す状態から回動アーム77を反時計回り方向に回動させると、傾斜ガラス19は、図7に示すように、レーザビームLBの光路60中に進入して位置決めされる。またこの状態に至る過程で、図9に示すように、ガラスホルダ21を保持する従動回転体79の下部の係合ピン83が、駆動回転体57の係合歯61間の凹部63内に入り込んで係合歯61と係合し、最終的に係合ピン83と係合歯61が係合した状態で、駆動回転体57の軸心と従動回転体79の軸心とが一致する。
【0020】
従って、この状態で、駆動回転体57と一体化された従動プーリ49をモータ51により回転させると、係合歯61および係合ピン83を介して、駆動回転体57の回転が従動回転体79に伝達され、傾斜ガラス19が回転する。それにより、傾斜ガラス19によって屈折されたレーザビームLBの光軸が偏心回転することとなり、レーザビームLBのビーム幅が拡大することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2013−39594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
ところで、前述した特許文献1に記載のレーザ加工ヘッド1においては、駆動回転体57が回転して従動回転体79に回転を伝えるときに、略三角形状の係合歯61間の放射外方向に広がった凹部63から係合ピン83が抜ける可能性があることが分かった。
【0023】
そこで、本出願人は、図8に示した略三角形状の係合歯61を有する駆動回転体57の代わりに、図10図12に示すように、側面視形状が略長方形状の係合歯210を有し、係合歯210間に溝型の凹部220を有する駆動回転体200を用いたレーザ加工ヘッドを開発した。
【0024】
このように係合歯210の歯形を略長方形状にした場合、図12に示すように、係合歯210の回転方向R1の後側の側壁212、即ち、歯先部211から回転方向R1の後側に隣接する係合歯210との間の凹部220の谷底部221に至る後側の側壁212、および、係合歯210の回転方向R1の前側の側壁212、即ち、歯先部211から回転方向R1の前側に隣接する係合歯210との間の凹部220の谷底部221に至る前側の側壁213が、共に同一形状で回転方向R1にほぼ垂直な壁面となる。
【0025】
また、係合歯210の歯先部211は、駆動回転体200の回転中心と同心の円弧に沿った円周壁として形成されている関係で、歯先部211の回転方向の両端から側壁212、213に至る部分に、角をとるためのアール部211aが設けられている。
【0026】
この構成の駆動回転体200を使用した場合、係合歯210間の凹部220に係合ピン83が嵌まった状態で駆動回転体200が回転した際に、係合ピン83が係合歯210の前側の回転方向R1にほぼ垂直な側壁213によって拾われやすくなる。そのため、係合ピン83が凹部220から抜けにくくなり、特許文献1に記載のレーザ加工ヘッド1における問題点が解消される。
【0027】
しかし、図10に示すように、回動アーム77を矢印R2方向(傾斜ガラス19を光路60に挿入する方向)に回動させた場合、係合ピン83は、まず図12(a)に示すように、係合歯210の歯先部211の外周に回動による押圧力Fを持って当たり、その状態で駆動回転体200が矢印R1方向に回転することで、係合ピン83は歯先部211に当接しながら移動し、アール部211aを過ぎた段階で、図11および図12(b)に示すように凹部220に嵌まり、凹部220の谷底部221に押圧力Fを持って当たることになる。つまり、係合ピン83は、係合歯210と係合する際に、歯先部211の外周と凹部220の谷底部221との2カ所に2回衝突することになる。
【0028】
係合ピン83は、回転自在のローラやカムフォロアで構成されているので、歯先部211の外周に当接しながら凹部220に向けて移動する際に、転がり移動することになるが、上記のレーザ加工ヘッドの場合、係合歯210の歯先部211の外周と凹部220の谷底部221に対する2回の衝突を繰り返すことで、衝撃により係合ピン83が回転不良を起こしやすくなり、係合ピン83の損耗が激しくなる問題があることが分かった。
【0029】
本発明は、上記事情を考慮し、係合ピンが係合歯に係合する際の衝撃を緩和して、係合ピンの損耗リスクを減じることができ、これにより、係合ピンの耐久性を向上して、傾斜ガラスを回転させる機構の信頼性を高めることができるレーザ加工ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記課題を解決するために、請求項1の発明のレーザ加工ヘッドは、レーザビームをワークに向けて出射する光路と、前記光路の途中に配され、前記光路の中心周りに回転駆動されるリング状の駆動回転体と、前記光路に交差する方向から前記光路に対して出入自在とされ、前記光路に挿入された際に前記レーザビームの光軸を屈折させる傾斜ガラスと、前記傾斜ガラスを保持するリング状の従動回転体と、前記光路から離間した軸を中心に回動自在とされ、回動端側に前記従動回転体を回転自在に備えており、前記軸を中心に回動されることで、前記傾斜ガラスを前記光路に対して出し入れする回動アームと、前記駆動回転体および従動回転体の一方に設けられ、回転方向に沿って等間隔に配されると共にそれぞれが放射外方向に突出した複数の同一歯形の係合歯と、前記駆動回転体および従動回転体の他方に設けられ、前記傾斜ガラスが前記光路に挿入された際に前記係合歯と係合することで、前記駆動回転体の回転を従動回転体に伝達する係合ピンと、を備えるレーザ加工ヘッドであって、前記各係合歯は、歯元幅中心線に対し左右非対称で、歯元幅中心線に対し歯先部が回転方向前方に斜めに倒れた形状をなしており、前記係合歯の回転方向後側の側壁は、歯先部に近いほど傾斜がゆるやかで歯元部に近いほど傾斜がきつくなるように傾斜した径方向外方を向いた凸湾曲面形状の誘導案内壁として構成され、前記係合歯の回転方向前側の側壁は、回転方向に対し垂直な壁か垂直よりも径方向内方を向いた壁よりなることで前記係合ピンを拾う拾い壁として構成され、かつ、隣接する前記係合歯間の凹部の深さが前記係合ピンの直径よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0031】
請求項2の発明は、請求項1に記載のレーザ加工ヘッドであって、前記係合ピンがカムフォロアで構成されていることを特徴とする。
【0032】
請求項3の発明は、請求項2に記載のレーザ加工ヘッドであって、前記カムフォロアとして、滑り軸受である無給油式のドライブッシュを軸受要素として組み込んだカムフォロアが使用されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
請求項1の発明によれば、係合歯の前側の側壁が、回転方向に対し垂直な壁か垂直よりも径方向内方を向いた壁よりなる拾い壁として構成されており、かつ、隣接する係合歯間の凹部の深さが係合ピンの直径よりも大きく設定されているので、係合歯の回転中に係合ピンが凹部から抜ける心配がない。
【0034】
また、各係合歯が、歯元幅中心線に対し左右非対称で、歯元幅中心線に対し歯先部が回転方向前方に斜めに倒れた形状をなしており、係合歯の回転方向後側の側壁が、歯先部に近いほど傾斜がゆるやかで歯元部に近いほど傾斜がきつくなるように傾斜した径方向外方を向いた凸湾曲面形状の誘導案内壁として構成されているので、係合ピンが係合歯の歯先部に当たった後は、誘導案内壁に沿ってスムーズに衝撃なく凹部に到達する。従って、係合歯の歯先部に係合ピンが当たるときの1回の衝撃だけで係合が成立し、衝撃回数が少なくなる分、係合ピンの損耗リスクが減り、それにより、係合ピンの耐久性が向上して、傾斜ガラスを回転させる機構の信頼性を高めることができる。
【0035】
請求項2の発明によれば、係合ピンがカムフォロアで構成されているので、係合歯と係合するときに、係合歯の歯面に沿って転がりながら凹部に嵌まることになり、摺動による損耗が少ない。
【0036】
請求項3の発明によれば、カムフォロアとして、滑り軸受である無給油式のドライブッシュを軸受要素として組み込んだカムフォロアが使用されているので、軸受要素としてコロを使用する形式のカムフォロアのようにフレッチング摩耗を起こすおそれがなく、一層の耐久性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の実施形態のレーザ加工ヘッドに使用される駆動回転体の構成図で、(a)は全体平面図、(b)はその一部の拡大図である。
図2】前記レーザ加工ヘッドにおいて、駆動回転体の係合歯の後側の側壁である誘導案内壁に係合ピンが当たっている状態を示す平面図である。
図3】前記レーザ加工ヘッドにおいて、駆動回転体の係合歯間の凹部に係合ピンが嵌まった状態を示す平面図である。
図4】前記駆動回転体の係合歯と係合ピンの関係を示す拡大図で、(a)は係合歯の後側の側壁である誘導案内壁に係合ピンが当たっている状態を示す図、(b)は係合歯間の凹部に係合ピンが嵌まった状態を示す図である。
図5】従来および本発明の実施形態に係るレーザ加工ヘッドの全体構成を示す説明図である。
図6】従来および本発明の実施形態に係るレーザ加工ヘッドの主要部の構成を示す断面図である。
図7】同レーザ加工ヘッドの主要部分の構成および作用を説明するための平面図である。
図8】従来の駆動回転体を使用したレーザ加工ヘッドの主要部分の構成および作用を説明するための平面図である。
図9】従来の駆動回転体を使用したレーザ加工ヘッドの主要部分の構成および作用を説明するための平面図である。
図10】従来のレーザ加工ヘッドの問題点を改善するために本発明者が先に開発したレーザ加工ヘッドの主要部分の構成および作用を説明するための平面図である。
図11】同レーザ加工ヘッドの主要部分の構成および作用を説明するための平面図である。
図12】従来の係合歯と係合ピンの関係を示す拡大図で、(a)は係合ピンが係合歯の歯先部の外周に当たっている状態を示す図、(b)は係合ピンが係合歯間の凹部に入ろうとしている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
【0039】
本発明の実施形態に係るレーザ加工ヘッドは、前述した図5図9の従来のレーザ加工ヘッド1における駆動回転体57に代えて、図1に示す駆動回転体100を使用したものであり、その他の構成は、従来のレーザ加工ヘッド1と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0040】
図1(a)に示すように、従動プーリ49(図6参照)に結合される駆動回転体100は、光路60(図6参照)の中心Oを中心として一定方向(矢印R1方向)に回転駆動されるものであり、外周部に、回転方向R1に沿って等間隔に配された複数の係合歯110を有している。係合歯110は、それぞれが放射外方向に突出した同一歯形のもので、隣接する係合歯110間が凹部120となっている。
【0041】
一方、ガラスホルダ21を保持する従動回転体79(図6参照)は、傾斜ガラス19が光路60に挿入された際に係合歯110と係合することで、駆動回転体100の回転を従動回転体79に伝達する係合ピン83を有している。係合ピン83としては、滑り軸受である無給油式のドライブッシュを軸受要素として組み込んだカムフォロアが使用されている。
【0042】
各係合歯110は、図1(b)に示すように、歯元幅110Wの中心線110Lに対し左右非対称で、歯元幅中心線110Lに対し歯先部111が回転方向前方に斜めに倒れた形状をなしている。しかも、係合歯110の回転方向後側の側壁、即ち、歯先部111から回転方向後側に隣接する係合歯110との間の凹部120の谷底部121に至る後側の側壁は、歯先部111に近いほど傾斜がゆるやかで歯元部114に近いほど傾斜がきつくなるように傾斜した、径方向外方を向いた凸湾曲面形状の誘導案内壁112として構成されている。つまり、誘導案内壁112は、歯先部111側が緩斜面112bとして形成され、凸湾曲面112bを経て、凹部120の谷底部121に至る部分が急斜面112cとして形成されており、全体が滑らかに連続した曲面として構成されている。
【0043】
また、係合歯110の回転方向前側の側壁は、回転方向に対し垂直な壁か垂直よりも径方向内方を向いた壁よりなることで係合ピンを拾う拾い壁113として構成されている。つまり、拾い壁113は、回転方向R1に対し垂直な面を113Kとすると、垂直な面113Kよりも回転方向R1の後側に凹んだ形状に形成されている。
【0044】
また、隣接する係合歯110間の凹部120の深さ120Hは、係合ピン83の直径よりも大きく設定されている。
【0045】
次に作用を説明する。
【0046】
図2は、実施形態のレーザ加工ヘッドにおいて、駆動回転体100の係合歯110の後側の側壁である誘導案内壁112に係合ピン83が当たっている状態を示す平面図、図3は、駆動回転体100の係合歯110間の凹部120に係合ピン83が嵌まった状態を示す平面図、図4は、駆動回転体100の係合歯110と係合ピン83の関係を示す拡大図で、図4(a)は係合歯110の後側の側壁である誘導案内壁112に係合ピン83が当たっている状態を示す図、図4(b)は係合歯110間の凹部120に係合ピン83が嵌まった状態を示す図である。
【0047】
実施形態の構成のレーザ加工ヘッドにおいて、図2に示すように、回動支持軸65を中心にして回動アーム77を矢印R2方向に回動させると、あるタイミングで、図4(a)にも拡大して示すように、係合ピン83が係合歯110の誘導案内壁112に当たる。この状態で係合歯110が矢印R1方向に回転すると、回動アーム77の回動力により誘導案内壁112に当接力Fで押し付けられた係合ピン83は、係合ピン83を支持する従動回転体79が回動アーム77に回転自在に支持されていることにより、図3および図4(b)に示すように、誘導案内壁112に沿って凹部120に到達する。
【0048】
このように係合ピン83が歯先部111の外周に当たって係合歯110間の凹部120に嵌まる際に、係合歯110が歯元幅中心線110Lに対し左右非対称で、歯元幅中心線110Lに対し歯先部111が回転方向前方に斜めに倒れた形状をなしており、かつ、係合歯110の回転方向後側の側壁が、歯先部111に近いほど傾斜がゆるやかで歯元部114に近いほど傾斜がきつくなるように傾斜した径方向外方を向いた凸湾曲面形状の誘導案内壁112として構成されていることにより、係合ピン83が係合歯110の歯先部111の外周に当たった後に誘導案内壁112に沿ってスムーズに衝撃なく凹部120に到達することになる。
【0049】
従って、係合歯110の歯先部111の外周に係合ピン83が当たるときの1回の衝撃だけで係合ピン83と係合歯110の係合が成立し、衝撃回数が少なくなる分、係合ピン83の損耗リスクが減り、これにより、係合ピン83の耐久性が向上して、傾斜ガラス19を回転させる機構の信頼性が高まる。
【0050】
そして、係合歯110と係合ピン83の係合が成立した状態で、駆動回転体100が回転することにより、駆動回転体100の回転が係合歯110および係合ピン83を介して従動回転体79に伝達され、これにより、傾斜ガラス19が回転して、光路60を通るレーザビームの光軸が屈折した状態で偏心回転することとなり、レーザビームのビーム幅が拡大する。
【0051】
このように、係合歯110と係合ピン83の係合が成立した状態で駆動回転体100が回転する際に、係合歯110の前側の側壁が、回転方向R1に対し垂直な壁か垂直よりも径方向内方を向いた壁よりなる拾い壁113として構成されており、かつ、隣接する係合歯110間の凹部120の深さが係合ピン83の直径よりも大きく設定されていることにより、係合ピン83が確実に拾い壁113に拾われる。そして、係合歯110の回転中に係合ピン83が凹部120から抜ける心配がなくなる。
【0052】
また、この実施形態では、係合ピン83がカムフォロアで構成されているので、係合歯110と係合するときに、係合歯110の歯面に沿って転がりながら凹部120に嵌まることになり、摺動による損耗が少なくなる。しかも、カムフォロアとして、滑り軸受である無給油式のドライブッシュを軸受要素として組み込んだカムフォロアが使用されているので、軸受要素としてコロを使用する形式のカムフォロアのようにフレッチング摩耗を起こすおそれがなく、一層の耐久性の向上が図れる。
【0053】
なお、前記実施形態では、駆動回転体100に係合歯110が設けられ、従動回転体79に係合ピン83が設けられている場合を示したが、この逆に、駆動回転体に係合ピンが設けられ、従動回転体に係合歯が設けられていても、同様の効果を得ることができる。つまり、駆動回転体と従動回転体の構成が逆になっていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 レーザ加工ヘッド
19 傾斜ガラス
60 光路
65 回動支持軸
77 回動アーム
79 従動回転体
83 係合ピン
100 駆動回転体
110 係合歯
111 歯先部
110L 歯元幅中心線
110W 歯元幅
112 誘導案内壁
113 拾い壁
114 歯元部
120 凹部
120H 凹部の深さ
LB レーザビーム
LA レーザビームの光軸
W ワーク
R1 駆動回転体の回転方向
O 光路の中心
図1
図2
図3
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図5
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図11
図12