特許第6138006号(P6138006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138006
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】慣性体の固定構造
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/22 20060101AFI20170522BHJP
   F16F 15/315 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   H02K1/22 Z
   F16F15/315 A
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-194065(P2013-194065)
(22)【出願日】2013年9月19日
(65)【公開番号】特開2015-61416(P2015-61416A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(72)【発明者】
【氏名】小川 和己
(72)【発明者】
【氏名】梶川 敦史
(72)【発明者】
【氏名】水谷 竜彦
(72)【発明者】
【氏名】北田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中田 一聡
(72)【発明者】
【氏名】道下 雅也
(72)【発明者】
【氏名】小坂 大知
(72)【発明者】
【氏名】生島 嘉大
(72)【発明者】
【氏名】村上 智堂
(72)【発明者】
【氏名】宮路 剛
(72)【発明者】
【氏名】森本 貴文
(72)【発明者】
【氏名】浅田 和樹
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−261995(JP,A)
【文献】 特開2007−015441(JP,A)
【文献】 米国特許第06137194(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00 − 1/16
H02K 1/18 − 1/26
H02K 1/28 − 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心に貫通孔が設けられた慣性体と、
前記貫通孔と嵌合された回転軸と、
前記回転軸の外周面において前記慣性体が嵌合された嵌合部の回転軸線方向両側にそれぞれ螺設された第一および第二雄ねじと、
前記第一および第二雄ねじにそれぞれ螺合された第一および第二雌ねじがそれぞれ螺設され、前記慣性体を両端から前記第一および第二雄ねじと前記第一および第二雌ねじとの螺合によって予め設定された軸力で締め付けて前記嵌合部に固定する第一および第二ナットと、
を備え
前記回転軸は、いずれか一端のみから前記第二ナットおよび前記慣性体が前記第一雄ねじを通過して挿入が可能であり、前記第一ナットの前記第一雌ねじが前記第一雄ねじに螺合可能に形成されている慣性体の固定構造。
【請求項2】
前記第一雄ねじと雌ねじおよび前記第二雄ねじと雌ねじは、それぞれ同じ巻き方向および同じリードで螺設されている請求項1に記載の慣性体の固定構造。
【請求項3】
前記慣性体は、モータを駆動源とする車両における前記モータの回転子であり、前記回転軸は、変速機の入力軸に連結されている請求項1または2に記載の慣性体の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慣性体を回転軸に固定する固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、慣性体を回転軸に固定する構造として、例えば、特許文献1−3に示すものがある。特許文献1−3に示す構造では、モータのロータ(慣性体)を回転軸に固定する構造が開示されている。
【0003】
特許文献1の技術では、回転軸であるロータ軸21の軸線方向に設けられたキー溝211に、慣性体である回転子20(ロータ)を両端から挟持する端板24の内周面に設けられた突条241が係合されている。また、端板24の係合穴242に、回転子20の両端面から突設される係合突起222が係合されている。また、一方の端板24は、ロータ軸21に一体で形成されたフランジ212によって支持され軸線方向フランジ側への移動を規制されている。これによって、ロータ軸21と回転子20とが端板24を介して周方向への相対回転を規制されている。
【0004】
また、特許文献2に開示される技術では、慣性体である電動機ロータAの回転軸線方向両端が端板2A、2Bによって挟持されている。また、電動機ロータAおよび端板2A、2Bの回転中心部は、回転軸である電動機ロータシャフト3に挿通されている。そして、端板2Aの外側端面は、電動機ロータシャフト3の外周面に形成されたロータ受け部31(フランジ)に支持され、端板2Bの外側端面はナット6によって締め付けられている。これにより、電動機ロータAと電動機ロータシャフト3とが、周方向への相対回転を規制されている。
【0005】
また、特許文献3に開示される技術では、金属製のパイプ17に回転軸であるシャフト16が焼き嵌めされ、パイプ17が慣性体である回転子14(ロータ)に圧入されている。これにより、回転子14とシャフト16とがパイプ17を介して周方向への相対回転を規制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭64−8536号公報
【特許文献2】特開2002−369451号公報
【特許文献3】特開2005−20825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、ロータ軸21にキー溝211を加工し端板24の内周面に突条241を形成する必要がある。さらに、端板24には、係合穴242を形成するとともに、回転子20の両端面には係合突起222を形成する必要がある。これらによって、製作コストが上昇してしまう。また、フランジ212の径がシャフト粗材の外径を決定するため、製造時の歩留まりが悪く、これもコストアップの要因となる。
【0008】
また、特許文献2に開示される技術では、ロータ受け部31の径がシャフト粗材の外径を決定するため、製造時の歩留まりが悪くコストアップの要因となる。また、ナット1個とロータ受け部31のみによって電動機ロータAを固定している。このため、例えば電動機ロータAに対して周方向、且つナット6の緩み方向に大きな荷重が作用した場合、電動機ロータAおよびナットが一緒に回転する。これにより、電動機ロータAおよびナットは軸線方向において、固定部であるロータ受け部31から離間する方向に移動するためナット6が緩み電動機ロータAの固定力が失われる虞がある。
【0009】
さらに、特許文献3に開示される技術では、シャフト16とパイプ17との間が焼き嵌めにより締結されている。このため、シャフト16に大きな回転トルクが作用した場合に、固定状態の保持が困難である。また、シャフト16をパイプ17に焼き嵌めしているのでシャフト16とパイプ17との位置決めが困難である。さらに、焼き嵌め時には、シャフト16およびパイプ17は高温となるため、冷却時間が必要となり製造時間が長くなる。これらは製作コストの上昇の要因となる。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、低コストで慣性体を回転軸に強固に固定する固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に係る慣性体の固定構造では、回転中心に貫通孔が設けられた慣性体と、前記貫通孔と嵌合された回転軸と、前記回転軸の外周面において前記慣性体が嵌合された嵌合部の回転軸線方向両側にそれぞれ螺設された第一および第二雄ねじと、前記第一および第二雄ねじにそれぞれ螺合された第一および第二雌ねじがそれぞれ螺設され、前記慣性体を両端から前記第一および第二雄ねじと前記第一および第二雌ねじとの螺合によって予め設定された軸力で締め付けて前記嵌合部に固定する第一および第二ナットと、を備え、前記回転軸は、いずれか一端のみから前記第二ナットおよび前記慣性体が前記第一雄ねじを通過して挿入が可能であり、前記第一ナットの前記第一雌ねじが前記第一雄ねじに螺合可能に形成されている。
【0012】
このように、慣性体を慣性体の両側に設けられた第一および第二ナットの締め付けのみによって回転軸上に固定するので、回転軸には雄ねじを設けるのみでよい。このため、従来技術1および2に開示されるように、回転軸に慣性体の一方の面を支持するフランジを設ける必要がない。これにより、回転軸の粗材径を完成状態に近似した外径とすることができ、歩留まりがよく低コストでの製造が可能となる。また、回転軸と慣性体との相対回転を規制するために、回転軸へのキー溝、およびキー溝に係合される端板への突条、さらには、慣性体の両端面への係合突起および端板への係合穴等を形成する必要がなく低コストでの製造が可能となる。また、回転軸のいずれか一端のみからしか、第二ナット、慣性体および第一ナットを組み付けできない場合でも、第二ナットの第二雌ねじを第二雄ねじに螺合させるために、第二ナットが通過する嵌合部に第二ナットの第二雌ねじと螺合する雄ねじを形成する必要がない。このため低コストでの製造が可能となる。
【0013】
請求項2に係る請求項1に記載の慣性体の固定構造では、前記第一雄ねじと雌ねじおよび前記第二雄ねじと雌ねじは、それぞれ同じ巻き方向および同じリードで螺設されている。
【0014】
これにより、慣性体に回転方向(周方向)の大きな外力が加わり、慣性体が第一および第二ナットとともに回転されても、第一および第二ナットはそれぞれ同じ回転軸線方向に同じ移動量だけ一緒に移動するだけである。このため、第一および第二ナットが慣性体を締め付ける軸力に変化は生じず緩みは発生しない。このような、簡易な方法によって、慣性体の固定の緩み止めを実現でき信頼性を向上させることができる。
【0017】
請求項に係る請求項1または2に記載の慣性体の固定構造では、前記慣性体は、モータを駆動源とする車両における前記モータの回転子であり、前記回転軸は、変速機の入力軸に連結されている。
【0018】
本来、重量および慣性力が大きいために大きなコストがかかるとされる車両のモータの回転子(慣性体)の回転軸への固定に対して本発明を適用することにより、低コスト化において大きな効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明が適用された車両のリアトランスアクスルの概略構成を説明するスケルトン図である。
図2図1におけるA部の拡大詳細図である。
図3】変形例であるダブルナットによってロータが固定される状態を説明する図である。
図4】別の実施形態に係る慣性体をギヤとした場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<概要>
以下、この発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明が適用された電気式4輪駆動車両(本発明におけるモータを駆動源とする車両に相当する)におけるリアトランスアクスル10の構成を示すスケルトン図である。
【0023】
<リアトランスアクスルについて>
リアトランスアクスル10は、駆動源としての電動モータ11(本発明のモータに相当する)と、第1減速ギヤ対14と、第2減速ギヤ対16と、差動歯車装置19と、をトランスアクスルケース20内に備えて構成される2軸型の車両用電動式駆動装置である。
【0024】
第1減速ギヤ対14は、電動モータ11の出力軸12(本発明の回転軸に相当する)と当該出力軸12に平行なカウンタ軸13との間に設けられているギヤ対である。第2減速ギヤ対16は、カウンタ軸13と当該カウンタ軸13に平行、且つ電動モータ11と同心のデファレンシャルケース15の回転軸との間に設けられているギヤ対である。
【0025】
差動歯車装置19は、デファレンシャルケース15と差動機構17とを備えて構成される。差動歯車装置19は、電動モータ11から第1減速ギヤ対14および第2減速ギヤ対16を介して伝達されたトルクにより一対の後方車軸18を回転駆動する。
【0026】
なお、本実施形態に係る電気式4輪駆動車両は、前輪側の駆動を、例えば、エンジンおよび電動モータを備えたフロントトランスアクスル(いずれも図略)によって行なうハイブリッド車両である。しかし、フロントトランスアクスルは、今回の説明に関係がないので記載を省略する。このように、電気式4輪駆動車両は、4輪駆動車であるが、これに限るものではない。例えば、車両は、フロントトランスアクスルを備えない電気式後輪駆動車(FR車両)でもよいし、発明が適用される電動モータによって前輪のみが駆動される電気式前輪駆動車(FF車両)でもよい。
【0027】
出力軸12の軸線方向両端には一対の軸受21が装着されている。出力軸12は、それら一対の軸受21を介してトランスアクスルケース20により回転可能に支持されている。なお、後述するロータ11a(本発明の慣性体および回転子に相当する)の出力軸12(回転軸)への固定構造については後に詳述する。
【0028】
第1減速ギヤ対14は、小径側のカウンタドライブギヤ22と、大径側のカウンタドリブンギヤ23とを備えている。カウンタドライブギヤ22は、出力軸12の図1図2における右側端部(他端側)の先端側に一体的に固定されている。また、カウンタドリブンギヤ23は、カウンタドライブギヤ22と噛合した状態でカウンタ軸13の図1図2における左側端部(一端側)に一体的に固定されている。
【0029】
カウンタ軸13は、それぞれ同心に設けられた出力軸12やデファレンシャルケース15、およびそれらに固定されたカウンタドライブギヤ22や後述のファイナルドリブンギヤ26よりも車両前方側に設けられている。このカウンタ軸13の両端部には、一対の軸受24が嵌着されている。このカウンタ軸13は、当該一対の軸受24を介してトランスアクスルケース20により回転可能に支持されている。
【0030】
第2減速ギヤ対16は、図1に示すように、第1減速ギヤ対14の回転軸線方向右側(図1において)に配置されている。第2減速ギヤ対16は、小径側のファイナルドライブギヤ25と、大径側のファイナルドリブンギヤ26とを備えている。ファイナルドライブギヤ25は、カウンタ軸13の他端側に一体的に固定されている。また、ファイナルドリブンギヤ26は、出力軸12に固定されるカウンタドライブギヤ22の回転軸線方向右側(図1において)に配置されている。ファイナルドリブンギヤ26は、ファイナルドライブギヤ25と常時噛合状態でデファレンシャルケース15の外周部に嵌着されて一体的に固定されている。このような、第1減速ギヤ対14および第2減速ギヤ対16によって本発明に係る車両の変速機を構成している。
【0031】
デファレンシャルケース15の軸線方向両端の外周面には、一対の軸受27が嵌着されている。従って、デファレンシャルケース15およびデファレンシャルケース15に一体的に固定されたファイナルドリブンギヤ26は、これら一対の軸受27を介してトランスアクスルケース20により回転可能に支持されている。
【0032】
差動機構17は、周知の、所謂、傘歯車式の差動機構である。差動機構17は、デファレンシャルケース15内において、一対のサイドギヤ28と、ピニオンシャフト29と、一対のピニオンギヤ30とを備えている。
【0033】
一対のサイドギヤ28は、回転軸線上で相対向して配置されている。ピニオンシャフト29は、一対のサイドギヤ28間においてデファレンシャルケース15の回転軸線に直交する状態でデファレンシャルケース15に固設されている。一対のピニオンギヤ30は、ピニオンシャフト29により回転可能に支持されるとともに、上記一対のサイドギヤ28とそれぞれ常時噛合している。
【0034】
一対の後方車軸18は、一対のサイドギヤ28に一体的に連結されている。差動歯車装置19は、電動モータ11から第1減速ギヤ対14および第2減速ギヤ対16を介して伝達されたトルクにより、一対の後方車軸18の回転速度差を許容しつつ、それら一対の後方車軸18を回転駆動する。なお、一対の後方車軸18の一方は、中空円筒状に形成された出力軸12内を挿通して一対の後輪31の車両左側の一方に連結されている。
【0035】
トランスアクスルケース20は、後方車軸18の軸線方向において4分割された第1〜第4ケース部を備えている。第1分割ケース部20aは、蓋状に形成され、主に電動モータ11の一部を収容する。第2分割ケース部20bは、段差を有した筒状に形成され、主に電動モータ11の他部および第1減速ギヤ対14を収容する。
【0036】
第3分割ケース部20cは、筒状に形成され、トランスアクスルケース20内に向かって延在する隔壁20c1,20c2を有している。そして、隔壁20c1,20c2に接続される円筒部20c3によって軸受21および軸受27を支持している。また、隔壁20c1には、カウンタ軸13を挿通するための貫通孔が設けられている。第4分割ケース部20dは、蓋状に形成され、主に第2減速ギヤ対16および差動歯車装置19を収容する。第1〜第4ケース部20a,20b,20c,20dは、ボルトによって相互に締着されることによりケース内の油密を確保している。これらの分割ケース部は、鋳造軽合金、例えばアルミダイカスト等により形成されている。
【0037】
カウンタドリブンギヤ23とファイナルドリブンギヤ26は、その回転によりトランスアクスルケース20の底部に貯溜された潤滑油を掻き上げて各潤滑部位に供給するようになっている。上記潤滑部位には、例えば第1減速ギヤ対14および第2減速ギヤ対16の噛合部、差動機構17のギヤ噛合部や回転摺動部、および各軸受21,24,27などが相当する。
【0038】
<電動モータ11について>
次に、電動モータ11(モータ)について説明する。電動モータ11は、例えば車両加速走行時等に駆動されて動力が用いられる。また、減速時(アクセルオフ時も含む)に発電機として作動させることで運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する。図1図2に示すように、電動モータ11は、ロータ11a(慣性体)と、ステータ11bと、を有する。
【0039】
ステータ11bは、鉄心である積層鋼板が積層されたコア体11b1と、樹脂製のインシュレータ11b3を介してコア体11b1に巻回された励磁巻線11b2を有する。ステータ11bは、外周面がトランスアクスルケース20の第1分割ケース部20aおよび第2分割ケース部20bの各内周面に接するよう、ボルト36によって第2分割ケース部20bに固定されている。具体的には、ボルト36はコア体11b1を積層方向に貫通する貫通孔39に挿通されている。そして、ボルト36の先端に設けられた雄ねじが第2分割ケース部20bに螺設された雌ねじに螺合してステータ11bを固定している(図2参照)。
【0040】
円筒状のロータ11aの外周面はステータ11bの内周面(半径方向内方)に対向するようにステータ11bと同軸で配置されている。つまり、ロータ11aは、後述する固定構造によって出力軸12(回転軸)の嵌合部12cに固定され、ステータ11bの内周側にステータ11bの内周面と予め設定された隙間を介して同軸で配置されている。ロータ11aは、ステータ11bの発生する回転磁界と鎖交することで誘導電流および磁界が発生され回転トルクを発生させる。出力軸12は、変速機の入力軸を構成する第1減速ギヤ対14のカウンタドライブギヤ22の回転軸と一体連結されている。
【0041】
ロータ11aは、中央部に貫通孔を備える薄板で円環状の電磁鋼板(硅素鋼板)であるコアプレート32が回転軸線方向に積層されて形成されている。なお、ロータ11aの実際の回転数は、周知のレゾルバ33によって検出される。レゾルバ33は、レゾルバロータ33aを備え、レゾルバロータ33aは、図2に示す出力軸12の外周面に形成されたレゾルバロータ圧入部12dに圧入されている。
【0042】
<固定構造について>
次に、ロータ11a(慣性体)の出力軸12(回転軸)への固定構造について説明する。ロータ11aはコアプレート32を積層したものである。このため、ロータ11aの貫通孔11a1は、積層によるばらつきによって、出力軸12を圧入するのには適さない穴形状となっている場合がある。そこで、本実施形態においては、出力軸12は、嵌合部12cが貫通孔11a1に挿入されて嵌合されている。ただし、このとき、貫通孔11a1の内周面と出力軸12の嵌合部12cの外周面との間の隙間は、嵌合部12cに嵌合されたロータ11aのセンタ位置が予め設定された許容範囲内に入るような大きさとなるよう形成されることが望ましい。
【0043】
図2に示すように、出力軸12の外周面における嵌合部12cの回転軸線方向両側には、第一および第二雄ねじ12a,12bが螺設されている。本実施形態においては、第二雄ねじ12bは第一雄ねじ12aよりも大きな外径(呼び径)によって形成されている。嵌合部12cの外径d2との関係も含めて説明すると、第一雄ねじ12aの外径d1≦嵌合部外径d2<第二雄ねじ12bの外径d3となっている。なお、本実施形態では、外径d1≒嵌合部外径d2となっている。
【0044】
また、出力軸12において、レゾルバロータ33aが圧入されるレゾルバロータ圧入部12d(図2参照)の外径d4は、第二雄ねじ12bの外径d3を越える大きさで形成されている。なお、出力軸12においてレゾルバロータ圧入部12dの、図2における右側にはレゾルバロータ圧入部12dより若干大きな外径で形成されたフランジ12eが形成されている。フランジ12eによって、レゾルバロータ33aの軸線方向における右方向(図2において)への移動が規制されている。また、フランジ12eの図2における右端面は、出力軸12に貫通孔が圧入固定されるカウンタドライブギヤ22の軸線方向左方への移動を規制している。このように、本実施形態においては、レゾルバロータ圧入部12dおよびフランジ12eを有しているため、第二ナット35,ロータ11a(慣性体)および第一ナット34を出力軸12(回転軸)に組み付ける際には、出力軸12の図2における左側(一端に相当する)からのみ挿入が可能となっている。
【0045】
第一および第二雄ねじ12a,12bは 嵌合部12cの両端でそれぞれ同じ巻き方向(右巻き)および同じリードで螺設されている。このとき、リードの大きさは任意に設定すればよい。なお、この態様に限らず、第一雄ねじおよび第二雄ねじ12a,12bは、それぞれ左巻きおよび同じリードで螺設されてもよい。
【0046】
第一雌ねじ34aおよび第二雌ねじ35aがそれぞれ内周面に形成された第一および第二ナット34,35は、第一雄ねじ12aおよび第二雄ねじ12bにそれぞれ一つずつ螺合される。第一および第二ナット34,35は、ロータ11aの軸線方向両端面11aA,11aBにそれぞれ当接する各当接面34c,35cと、スパナ等の工具によって把持される六角部34b,35bと、を備えている。
【0047】
なお、各当接面34c,35cの面積は、ロータ11aの軸線方向両端面11aA,11aBの強度に基づいて設定される。軸線方向両端面11aA,11aBの強度が低い場合には各当接面34c,35cの面積を大きく設定し、軸線方向両端面11aA,11aBとの接触面圧を低減させながら予め設定された軸力である必要軸力を確保する。このときの必要軸力は、ロータ11aに周方向の大きな力が加わり回転した場合に、軸線方向両端面11aA,11aBと各当接面34c,35cとの間に滑りが発生しない程度の大きさであることが望ましい。
【0048】
また、ロータ11aの軸線方向両端面11aA,11aBの強度が十分高い場合には、各当接面34c,35cの面積を小さく設定して軸線方向両端面11aA,11aBとの間の接触面圧を上げて上記で説明した必要軸力を確保してもよい。
【0049】
上記の構成によって、ロータ11aに周方向の大きな力が加わった場合、第一および第二ナット34,35とロータ11aとは相対回転することなく、一体的に回転する。
【0050】
第一および第二ナット34,35は、六角部34b,35bを把持した各工具によってネジの締め付け方向である右回りに回転されることにより、ロータ11a方向に向かってそれぞれ各リードと各ナット34,35の回転角に応じた同じ分だけ前進される。これにより、各ナット34,35は、各当接面34c,35cでロータ11aの両端面11aA,11aBを押圧し挟持してロータ11aを嵌合部12cに固定する。このときの各ナット34,35の締め付けトルクは、各当接面34c,35cがロータ11aの両端面11aA,11aBを押圧する軸力が、予め設定された軸力(必要軸力)となる大きさとする。
【0051】
<ロータ11aの組み付けについて>
次に、ロータ11aおよび第一および第二ナット34,35の出力軸12への組み付けについて説明する。本実施形態においては、ロータ11a等の組み付けの前に、まずレゾルバロータ33aをレゾルバロータ圧入部12dに圧入する。前述したように、レゾルバロータ圧入部12dの外径d4は、第二雄ねじ12bの外径d3,嵌合部外径d2および第一雄ねじ12aの外径d1に対して、d4>d3>d2≧d1となっている。これにより、レゾルバロータ33aの貫通孔を出力軸12の図2における左端面(本発明における出力軸12の一端に相当する)から挿通させても、レゾルバロータ33aは、第二雄ねじ12b,嵌合部12cおよび第一雄ねじ12aを通過してレゾルバロータ圧入部12dに容易に到達し圧入することができる。
【0052】
次に、レゾルバロータ33aがレゾルバロータ圧入部12dに圧入されている状態において、ロータ11aを出力軸12の嵌合部12cに固定する場合について説明する。このような場合、第二ナット35,ロータ11aおよび第一ナット34を、出力軸12の図2における左端面(一端)から順次挿入する。このとき、第二雄ねじ12bの外径d3、嵌合部外径d2および第一雄ねじ12aの外径d1は、前述の通りd3>d2≧d1という関係を有している。これにより、第二ナット35は、第一雄ねじ12aおよび嵌合部12cに干渉されることなく良好に通過し、第二雌ねじ35aが第二雄ねじ12bに螺着される。また、ロータ11aは、第一雄ねじ12aに干渉されることなく良好に通過し、嵌合部12cに到達する。そして、第一ナット34が第一雄ねじ12aに螺着される。
【0053】
<第一および第二ナット34,35の締め付け方法>
次に、上記によって嵌合部12cに到達したロータ11aを、嵌合部12cに固定するための第一および第二ナット34,35の締め付け方法について説明する。第一および第二ナット34,35を締め付ける前に、まず予めロータ11aを嵌合部12cの軸線方向における所定の位置に精度よく配置する。次に、一方のナットである例えば第一ナット34の当接面34cをロータ11aが軸線方向に移動しないよう注意しながら手作業や機械等による所定の方法によってロータ11aの端面11aAに当接させる。そして、このような状態において、例えばスパナ等の工具によって出力軸12(回転軸)に対する第一ナット34の相対回転を規制する。
【0054】
その後、他方のナットである、例えば第二ナット35を予め設定された軸力となるよう所定の締め付けトルクで締め付けることにより、ロータ11aを嵌合部12cの所定の位置に固定する。この方法によれば、嵌合部12cにおけるロータ11aの軸線方向位置を所定の位置で良好に規制できるとともに、所定の位置が変更されても簡易に対応できる。なお、上記において、工具によって相対回転を規制するナットを第二ナット35とし、所定の締め付けトルクで締め付けるナットを第一ナット34としてもよい。
【0055】
ここで、第一および第二ナット34,35の別の締め付け方法についても説明しておく。別の締め付け方法では、第一および第二ナット34,35を右方向に同じ回転角ずつ同時に締め付けることにより、ロータ11aを嵌合部12cに固定する。この場合、まず初めに、予めロータ11aを嵌合部12cの軸線方向における所定の位置に配置する。次に、手作業や機械等による所定の方法によって第一および第二ナット34,35の各当接面34c,35cをそれぞれロータ11aの両端面11aA,11aBに当接させる。その後、当該当接させた状態から第一および第二ナット34,35を同時に同じ回転方向に同じ回転角ずつ締め付けていけばよい。これにより、ロータ11aは嵌合部12cにおいて初めに配置された所定の位置で固定される。
【0056】
なお、上記のようにして、ロータ11aが、予め設定された嵌合部12cの所定の位置に固定された状態においては、第一および第二ナット34,35の各雌ねじ34a,35aは、第一および第二雄ねじ12a,12bに対して回転軸線方向の何れの方向にも所定の寸法Lだけ移動可能に構成されている(図2参照)。このとき、所定の寸法Lは、ロータ11aに円周方向の大きな外力が加わり、ロータ11aおよび第一,第二ナット34,35が円周方向に一体で回転されたとき、第一,第二ナット34,35の各雌ねじ34a,35aが、螺合する各雄ねじ12a,12bに沿って回転することにより回転軸線方向に移動する寸法より大きければよく、事前の実験に基づいて設定すればよい。
【0057】
<作用について>
次に、作用について説明する。例えば、電動モータ11が作動され、ロータ11aが出力軸12と一体で所定の回転数で回転しているときに、運転者がさらに加速を要求し図略のアクセルペダルが踏込まれた場合を考える。これによって、より大きな電流がステータ11bに供給される。そして、ロータ11aは、ステータ11bが発生させる、より大きな回転磁界に応じた大きな回転トルクを発生させる。
【0058】
しかし、このとき、ロータ11aが固定される出力軸12(回転軸)は、第1減速ギヤ対14および第2減速ギヤ対16等によって構成される変速機を介して一対の後方車軸18および一対の後輪31に連結されている。このため、ロータ11aが大きなトルクを発生させても、瞬間的には、出力軸12は、一対の後輪31によって回転の上昇を阻害される。これにより、ロータ11aと出力軸12との間には相対回転を生じさせる力が発生される。
【0059】
しかし、上述したようにロータ11aは、第一および第二雄ねじ12a,12bに螺合される第一および第二ナット34,35によって軸線方向両端面11aA,11aBが予め設定された軸力で押圧されて嵌合部12cに固定されている。これにより、ロータ11aが出力軸12に対して相対回転すると、第一および第二ナット34,35もロータ11aと共に出力軸12に対して相対回転する。また、第一および第二雄ねじ12a,12bは、嵌合部12cの両端で、それぞれ同じ巻き方向(右巻き)および同じリードで螺設されている。
【0060】
これにより、第一,第二ナット34,35およびロータ11aが、出力軸12に対して一体的に相対回転すると、第一および第二ナット34,35の一方は緩み側に、また他方は締め込み側に回転することになる。このため、第一,第二ナット34,35およびロータ11aは、同じ寸法だけ軸線方向に一体で移動する。よって、第一および第二雄ねじ12a,12bの間の寸法に変化は生じない。即ち、第一,第二ナット34,35によって挟持されるロータ11aに対する締付け力(軸力)に変化は生じず、ロータ11aの緩みを良好に抑制することができる。
【0061】
<減速時の作用について>
また、例えば、電動モータ11が作動され、ロータ11aが出力軸12と一体で所定の回転数で回転しているときに、ブレーキペダルが踏込まれ車両が減速したとする。そして、これによって、大きな回生制動力がロータ11aに発生されたとする。
【0062】
このとき、ロータ11aは、ステータ11bから大きな回転抵抗を受ける。上記で説明したようにロータ11aが固定される出力軸12(回転軸)は、変速機を介して一対の後方車軸18および一対の後輪31に連結されている。このため、ロータ11aが大きな回転抵抗によって停止しようとしても出力軸12は、回転を続けようとする一対の後輪31によって回転の停止が阻害される。これにより、ロータ11aと出力軸12との間には上述の加速時とは逆方向に相対回転を生じさせる力が発生する。しかし、上記と同じ理由によって、第一,第二ナット34,35によってロータ11aを締め付ける締め込み力(軸力)に変化は生じず、ロータ11aの緩みを良好に抑制することができる。
【0063】
<効果>
上述のように、本実施形態のリアトランスアクスル10の慣性体の固定構造によれば、第一および第二ナット34,35はロータ11aを中心とする対向する位置で同じ巻き方向および同じリードのネジである。これにより、ロータ11a(慣性体)に大きな回転方向(周方向)の外力が加わり、ロータ11aと共に回転するよう予め設定された軸力で締付けられた第一および第二ナット34,35とともに回転されても、第一,第二ナット34,35およびロータ11aはそれぞれ同じ移動量だけ回転軸線方向に一緒に移動するだけである。これにより、第一および第二ナット34,35がロータ11a(慣性体)を締め付ける軸力に変化は発生せずロータ11aの緩みは抑制される。このような、簡易な方法によって、ロータ11a(慣性体)の固定の緩み止めを実現でき信頼性を向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態のリアトランスアクスル10の慣性体の固定構造によれば、出力軸12(回転軸)は、いずれか一端のみから第二ナット35およびロータ11a(慣性体)が第一雄ねじを通過して挿入が可能である。そして、第一ナット34の第一雌ねじ34aが第一雄ねじ12aに螺合可能に形成されている。
【0065】
これにより、回転軸のいずれか一端のみからしか、第二ナット35,ロータ11a(慣性体)および第一ナット34を組み付けできない場合でも、第二ナット35の第二雌ねじ35aを第二雄ねじ12bに螺合させるために、第二ナット35が通過する嵌合部12cに第二ナット35の第二雌ねじ35aと螺合する雄ねじを形成する必要がない。このため低コストでの製造が可能となる。
【0066】
また、本実施形態のリアトランスアクスル10の慣性体の固定構造によれば、ロータ11a(慣性体)は、電動モータ11(モータ)を駆動源とする車両の電動モータ11のロータ11aである。本来、重量および慣性力が大きいために大きなコストがかかるとされる車両の電動モータ11(モータ)のロータ11a(慣性体)の出力軸(回転軸)への固定に対して本発明を適用することにより、低コスト化において大きな効果を得ることができる。
【0067】
また、本実施形態のリアトランスアクスル10の慣性体の固定方法では、一方のナット(第一または第二ナット34,35)の出力軸12(回転軸)との相対回転を工具によって規制しながら他方のナット(第二または第一ナット35,34)を締め付けていく。これにより、ロータ11a(慣性体)の嵌合部12cにおける回転軸線方向の位置を精度良く自在に設定可能である。また、嵌合部12cにおけるロータ11aの配置位置に変更が発生しても容易に対応できる。
【0068】
なお、上記実施形態においては、出力軸12(回転軸)にレゾルバロータ33aのレゾルバロータ圧入部12dおよびフランジ12eを設けている。しかし、この態様に限らず、レゾルバ33およびフランジ12eを廃止してもよい。この場合、出力軸12(回転軸)においては、第二雄ねじ12bが最大径となるので、出力軸12(回転軸)の粗材径を完成状態に近似した外径とすることができ、歩留まりがよく低コストで製造可能となる。なお、このとき、第一および第二雄ねじは同じ外径であってもよい。第一および第二雄ねじが同じ外径である場合には、第一および第二ナットをそれぞれ出力軸の両端から挿入して第一および第二雄ねじにそれぞれ螺合させればよい。これによって、出力軸(回転軸)の粗材径を一層小さくすることができ効果的である。
【0069】
<変形例>
なお、上記実施形態においては、第一および第二ナット34,35を第一および第二雄ねじ12a,12bにそれぞれ一つずつ螺合した。しかし、この態様に限らず、図3に示すように、上記本実施形態の変形例として第一および第二ナット34,35の一方を2個設ける構成としてもよい。2個で構成されるナットは所謂ダブルナットである。図3に示す実施形態では、第二ナット35にナット53を締め付けて2個とした。なお、ナット53は通常の六角ナットである。
【0070】
ダブルナットである第二ナット35およびナット53が出力軸12(回転軸)と相対回転し軸線方向に移動するには非常に大きな力が必要となる。これにより、変形例では、ロータ11a(慣性体)に各ナット35,53を回転させるほどの非常に大きな回転方向(周方向)の外力が加わった場合に、第一ナット34,ロータ11aおよび各ナット35,53が一体で回転される。このとき、各第一ナット34および各ナット35,53は、それぞれ回転軸線方向に同じ移動量だけ一緒に移動するだけであるので、第一ナット34および各ナット35,53がロータ11a(慣性体)を締め付ける軸力に変化は発生しない。よって、第一ナット34および各ナット35,53によって固定されるロータ11a(慣性体)に緩みが発生することが抑制され、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、このとき、端面35cとロータ11aの端面との間には滑りが発生しないことが上記作用を成立させる条件となることはいうまでもない。
【0071】
<別の実施形態>
次に、別の実施形態について図4に基づいて説明する。上記実施形態では、慣性体を電動モータ11のロータ11aとし、回転軸を出力軸12であるものとした。しかし、この態様に限らず、慣性体をカウンタドライブギヤ22、カウンタドリブンギヤ23およびファイナルドライブギヤ25のようなギヤ50としてもよい(図4参照)。ギヤ50は、カウンタドライブギヤ22、カウンタドリブンギヤ23およびファイナルドライブギヤ25と同様の機能を有するものであり、カウンタドリブンギヤ23をベースに構成した。
【0072】
このように、図4に示すように、上記実施形態におけるロータ11aをギヤ50に置き換え、出力軸12を出力軸51に置き換えてもよい。このとき、嵌合部12cを嵌合部51cに置き換える。また、嵌合部12cの軸線方向両端に螺設された第一および第二雄ねじ12a,12bを第一および第二雄ねじ51a,51bと置き換えるものとする。第一および第二雄ねじ51a,51bは、嵌合部51cの両端でそれぞれ同じ巻き方向(右巻き)および同じリードで螺設されている。
【0073】
第二雄ねじ51bは第一雄ねじ51aよりも大きな外径(呼び径)によって形成されている。嵌合部51cの外径d6との関係も含めて説明すると、第一雄ねじ51aの外径d5は、d5≦嵌合部外径d6<第二雄ねじ51bの外径d7の関係を有している。このように構成されることで、出力軸51が、第二雄ねじ51bの図4における右方向に、例えば第二雄ねじ51bの外径d7よりも大きな径で形成された軸部分を有していても、第一および第二雌ねじ54a,55aが螺設された第一および第二ナット54,55(上記実施形態の第一および第二ナット34,35に相当する)およびギヤ50は、出力軸51の図4における左端(一端)からのみ挿入が可能となる。
【0074】
そして、出力軸51の一端から挿入された第二ナット54は第一雄ねじ51aおよび嵌合部51cを通過して第二雄ねじ51bに螺合する。また、出力軸51の一端から挿入されたギヤ50は、第一雄ねじ51aを通過して嵌合部51cに配置され、第一ナット54は第一雄ねじ51aに螺合される。その後、上記実施形態と同様の方法によってギヤ50が固定されることにより、別の実施形態においても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
なお、本発明は、上記実施形態および別の実施形態で説明した態様に限らず、慣性体と慣性体に嵌合される回転軸という構成を有すれば如何なるものにも適用が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0076】
10・・・リアトランスアクスル、 11・・・モータ(電動モータ)、 11a・・・ロータ(慣性体)、 11a1・・・貫通孔、 11aA,11aB・・・端面、 12,51・・・出力軸(回転軸)、 12a,51a・・・第一雄ねじ、 12b,51b・・・第二雄ねじ、 13・・・カウンタ軸、 14・・・第1減速ギヤ対、 16・・・第2減速ギヤ対、18・・・一対の後方車軸、 22・・・カウンタドライブギヤ、 22a,22b・・・端面、 23・・・カウンタドリブンギヤ、 26・・・ファイナルドリブンギヤ、 34,52・・・第一ナット、 35,53・・・第二ナット、 50・・・ギヤ(慣性体)。
図1
図2
図3
図4