(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の主面および前記第1の主面の反対側の第2の主面を有する絶縁基材と、前記絶縁基材の前記第2の主面に設けられた金属箔とを有する金属箔張積層板を準備する工程と、
前記金属箔張積層板の前記第1の主面に保護フィルムを設ける工程と、
前記保護フィルムおよび前記絶縁基材を部分的に除去することにより、底面に前記金属箔が露出した有底ビアホールを形成する穿孔工程と、
前記保護フィルムを表面から途中まで除去して、底面に前記有底ビアホールが露出した導電ペースト流動用溝を形成する溝形成工程と、
導電ペースト注入用流路および真空排気用流路が設けられたハウジング部材であって、前記導電ペースト注入用流路および前記真空排気用流路の一端が開口した開口面を有する、ハウジング部材を準備するハウジング部材準備工程と、
前記開口面が前記保護フィルムに対向するように前記ハウジング部材を前記保護フィルム上に配置することにより、前記導電ペースト注入用流路および前記真空排気用流路を、前記有底ビアホール、前記導電ペースト流動用溝および前記ハウジング部材の前記開口面により画成される導電ペースト流動空間に連通させるハウジング部材配置工程と、
前記真空排気用流路を介して前記導電ペースト流動空間を減圧する工程と、
前記導電ペースト注入用流路を介して導電ペーストを前記導電ペースト流動空間に注入することにより、前記有底ビアホール内に前記導電ペーストを充填する充填工程と、
を備えることを特徴とする導電ペーストの充填方法。
前記溝形成工程において、前記複数の有底ビアホールを一回ずつ通るように前記導電ペースト流動用溝を一筆書き状に形成することを特徴とする請求項2に記載の導電ペーストの充填方法。
前記充填工程の間、前記ハウジング部材に対して前記保護フィルムの方向に前記導電ペーストの注入圧力よりも大きい圧力を加えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電ペーストの充填方法。
前記保護フィルムおよび前記絶縁基材を部分的に除去することによりダミー有底ビアホールを形成し、前記ダミー有底ビアホールは、前記ハウジング部材が前記保護フィルム上に配置された状態において、前記導電ペースト流動空間に連通し、かつ、前記有底ビアホールと前記真空排気用流路の間に位置する、工程をさらに備え、
前記充填工程において、前記ダミー有底ビアホールに前記導電ペーストが流入した時点で、前記導電ペーストの注入を終了することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の導電ペーストの充填方法。
請求項1〜9のいずれかに記載の導電ペーストの充填方法により前記金属箔張積層板に形成された有底ビアホールに導電ペーストが充填された第1および第2の配線基材を準備する工程と、
前記保護フィルムが有する接着剤層を前記第1の配線基材に残すように前記第1の配線基材の前記保護フィルムを剥離し、前記有底ビアホールに充填された導電ペーストの一部を突出させる工程と、
前記第2の配線基材の前記保護フィルムを、前記保護フィルムが有する微粘着性の接着剤層とともに剥離し、前記有底ビアホールに充填された導電ペーストの一部を突出させる工程と、
前記第1および第2の配線基材を、前記導電ペーストの突出部同士が当接するように積層し、前記積層された第1および第2の配線基材を加熱して一体化する一体化工程と、
を備えることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、同一符号の構成要素の詳しい説明は繰り返さない。また、図面は模式的なものであり、実施形態に係る特徴部分を中心に示すものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。
【0022】
本発明の実施形態について、
図1A〜
図1Eおよび
図2を参照して説明する。
図1A〜
図1Eは、本実施形態に係る多層プリント配線板の製造方法を説明するための工程断面図である。
図2(a)は、有底ビアホールに導電ペーストを充填するために使用されるハウジング部材30の平面図である。
図2(b)は、
図2(a)のA−A線に沿う断面図である。
【0023】
まず、
図1A(1)に示すように、主面1aおよび主面1aの反対側の主面1bを有する絶縁基材1と、絶縁基材1の主面(下面)1bに設けられた金属箔2とを有する金属箔張積層板3を準備する。
【0024】
金属箔張積層板3は、例えば、片面銅張積層板である。この場合、絶縁基材1は、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミドまたはポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる可撓性絶縁フィルム(例えば100μm厚)であり、金属箔2は、銅箔(例えば12μm厚)である。なお、金属箔2は、銅以外の金属(銀、アルミニウムなど)からなるものでもよい。
【0025】
なお、絶縁基材1は、絶縁フィルムに限らず、ガラスエポキシ基板などのリジッドプリント配線板用の絶縁基板であってもよい。
【0026】
次に、
図1A(1)に示すように、金属箔張積層板3の主面1aに保護フィルム6を設ける。保護フィルム6は、接着剤層4と、絶縁フィルム5とを有する。
【0027】
保護フィルム6は、絶縁基材1の主面1aに接着剤層4(例えば厚さ15μmのローフローボンディングシート)をラミネートした後、接着剤層4上に絶縁フィルム5(例えば25μm厚のPET)を貼り合わせることにより設ける。別の方法として、絶縁フィルム5の片面に接着剤層4を設けた保護フィルム6を準備し、この保護フィルム6を絶縁基材1に貼り合わせてもよい。
【0028】
上記いずれの方法においても、接着剤層4、あるいは絶縁フィルム5の片面に接着剤層4を設けた保護フィルム6をラミネートする際、後述の一体化工程において配線基材同士を接着させるのに必要な接着性が残るように、接着剤層4の熱硬化温度よりも低い温度でラミネートすることが必要である。
【0029】
次に、
図1A(2)に示すように、保護フィルム6および絶縁基材1を部分的に除去することにより、底面に金属箔2が露出した有底ビアホール7,8,9を形成する(穿孔工程)。有底ビアホール7,8,9の径は、例えばφ150μm〜200μmである。
【0030】
なお、穿孔工程において形成する有底ビアホールの個数は、3個に限らず、任意の個数でよい。
【0031】
また、穿孔工程において、
図1A(2)に示すように、保護フィルム6および絶縁基材1を部分的に除去することにより、ダミー有底ビアホール10を形成してもよい。例えば、外形加工等により最終的に破棄される領域にダミー有底ビアホール10を形成する。
【0032】
このダミー有底ビアホール10は、後述するハウジング部材30が保護フィルム6上に配置された状態において、導電ペースト流動空間Sに連通し、かつ、有底ビアホール9とハウジング部材30の真空排気用流路32との間に位置する。有底ビアホール9は、有底ビアホール7,8,9のうち最も真空排気用流路32に近い有底ビアホールである。
【0033】
ダミー有底ビアホール10は複数形成してもよい。これらのダミー有底ビアホール10は、連続して設けられ、後述の導電ペースト流動用溝11で接続される。
【0034】
ダミー有底ビアホール10は、有底ビアホール7,8,9を形成する穿孔工程とは別の工程で形成してもよい。ダミー有底ビアホール10は、必ずしも底面に金属箔2が露呈している必要はない。
【0035】
次に、
図1A(3)に示すように、保護フィルム6を表面から途中まで除去して、底面に有底ビアホール7,8,9が露出した導電ペースト流動用溝11を形成する(溝形成工程)。導電ペースト流動用溝11は有底ビアホール7,8,9を繋ぐ溝である。なお、導電ペースト流動用溝11の深さは例えば10μm〜15μmである。導電ペースト流動用溝11の幅は例えば100μmである。
【0036】
穿孔工程および溝形成工程を経て、
図1A(3)に示す穿孔基材19が得られる。
【0037】
有底ビアホールを複数形成した場合、複数の有底ビアホール7,8,9を繋ぐように導電ペースト流動用溝11を形成する(後述の
図1B(b)参照)。有底ビアホール7,8,9の各々は、導電ペースト流動用溝11の底面に全て露出している必要はない。
【0038】
有底ビアホール7,8,9、ダミー有底ビアホール10および導電ペースト流動用溝11は、レーザ加工により形成することが好ましい。この場合、加工容易性の観点から炭酸ガスレーザ等の赤外線レーザを使用することが好ましいが、UV−YAGレーザ等の他のレーザを用いてもよい。
【0039】
炭酸ガスレーザを用いる場合、有底ビアホール7,8,9を形成する際にはビーム径を有底ビアホール7,8,9の所望の穴径に略等しくし、導電ペースト流動用溝11を形成する際にはビーム径を導電ペースト流動用溝11の所望の幅に略等しくする。
【0040】
ここでは、三菱電機(株)製の炭酸ガスレーザ加工機(ML605GTXIII-5100U2)を用いた。有底ビアホール7,8,9を形成する際、所定のアパーチャー等でビーム径を150μmに調整し、パルス幅を10μsec、1パルスあたりのエネルギーを5mJとし、5ショットで1つの有底ビアホールを形成した。導電ペースト流動用溝11を形成する際は、所定のアパーチャー等でビーム径を100μmに調整し、パルス幅を5μsec、1パルスあたりのエネルギーを3mJとし、ビームが略半分ずつオーバーラップするように50μmピッチで走査することで導電ペースト流動用溝11を形成した。
【0041】
有底ビアホール7,8,9および導電ペースト流動用溝11のいずれを形成する場合も、レーザの発信周波数は1kHz〜5kHzまで変化させることが可能である。レーザの描画速度は、1kHzの場合で50mm/秒、5kHzの場合で250mm/秒である。このため、導電ペースト流動用溝11の形成に必要な加工時間は、多くとも数秒以内である。したがって、導電ペースト流動用溝11の形成はプリント配線板の生産性に対してほとんど影響を与えない。
【0042】
レーザパルスを照射した後、デスミア処理を行って、絶縁基材1と金属箔2との境界における樹脂残渣、および金属箔2の裏面の処理膜を除去する。ここで、金属膜2の裏面の処理膜とは、銅箔等の金属箔2と絶縁基材1との密着性を向上させる等の目的で、金属箔張積層板3の製造時に設けられた膜(例えばNi/Cr膜)のことである。
【0043】
次に、ハウジング部材30を準備する(ハウジング部材準備工程)。
【0044】
図2(a),(b)に示すように、ハウジング部材30には、導電ペースト注入用流路31および真空排気用流路32が設けられている。ハウジング部材30は、導電ペースト注入用流路31および真空排気用流路32の一端が開口した開口面30aを有する。
【0045】
例えば、ハウジング部材30は、
図2(a),(b)に示すような板状の部材である。この場合、導電ペースト注入用流路31および真空排気用流路32は、板状のハウジング部材30を厚さ方向に貫通する導電ペースト注入孔および真空排気孔としてそれぞれ設けられている。導電ペースト注入用流路31および真空排気用流路32の他端はハウジング部材30の上面30bに開口している。
【0046】
なお、導電ペースト注入用流路31および真空排気用流路32は、上記のような直線状の貫通孔に限らず、L字状等に曲がった流路であってもよい。例えば、導電ペースト注入用流路31および/または真空排気用流路32の他端は、ハウジング部材30の側面30cに開口していてもよい。
【0047】
また、ハウジング部材30の形状は、平面状の開口面30aを有していればよく、板状に限るものではない。
【0048】
また、ハウジング部材30は、剛性の確保等の観点から、金属(アルミ、ステンレスなど)からなることが好ましい。
【0049】
次に、
図1B(a)に示すように、開口面30aが保護フィルム6に対向するように保護フィルム6(穿孔基材19)上にハウジング部材30を配置する(ハウジング部材配置工程)。これにより、導電ペースト注入用流路31および真空排気用流路32を導電ペースト流動空間Sに連通させる。ここで、導電ペースト流動空間Sは、有底ビアホール7,8,9、導電ペースト流動用溝11およびハウジング部材30の開口面30aにより画成される空間である。
【0050】
より具体的には、本工程において、ハウジング部材30を穿孔基材19に位置合わせした後、充填工程で導電ペーストがリークしないように両者を密着させる。
【0051】
図1(b)は、ハウジング部材30を保護フィルム6上に配置した状態におけるハウジング部材30の一部平面図を示している。
【0052】
なお、ハウジング部材30と保護フィルム6との間に、離型フィルム(図示せず)を介装してもよい。離型フィルムには、導電ペースト注入用流路31の開口および真空排気用流路32の開口に対応する位置にそれぞれ貫通孔が設けられている。
【0053】
本発明において、開口面30aが保護フィルム6に対向するように保護フィルム6上にハウジング部材30を配置すると述べた場合、上記のようにハウジング部材30と保護フィルム6との間に離型フィルム等を介装する場合も含むものとする。
【0054】
次に、真空排気用流路32を介して導電ペースト流動空間Sを減圧する(減圧工程)。真空ポンプ等を用いて、導電ペースト流動空間Sを例えば0.1kPa程度に減圧する。導電ペースト流動空間Sを減圧することにより、有底ビアホール7,8,9に充填された導電ペースト中にエアボイドが混入するのを回避することができる。
【0055】
なお、ダミー有底ビアホール10は導電ペースト流動空間Sに連通しているため、減圧工程によりダミー有底ビアホール10内の空間も減圧される。
【0056】
従来の真空印刷機を用いて穿孔基材19を含む系全体を真空引きする場合に比べて、導電ペースト流動空間Sの体積は極めて小さいため、減圧に要する時間は格段に短い。
【0057】
次に、導電ペースト注入用流路31を介して導電ペースト20を導電ペースト流動空間Sに注入または圧入することにより、有底ビアホール7,8,9内に導電ペースト20を充填する(充填工程)。ここで、導電ペースト20は、ペースト状の熱硬化性樹脂である樹脂バインダー(エポキシ等)に金属粒子(銅粒子、銀粒子など)を分散させたものである。
【0058】
なお、導電ペースト20は適切な粘度のものを用いる。好ましくは、B型回転粘度計により測定した20〜30℃における導電ペースト20の粘度が、500〜2000dPa・secであるものを用いる。粘度が500dPa・sec未満の場合、充填性は良好であるものの、導電ペーストが揮発成分を含む組成となる。このため、真空引きを行うことにより導電ペーストの状態が変化し、その結果、安定的なプロセスの構築が困難となるおそれがある。一方、粘度が2000dPa・secよりも大きい場合、導電ペーストの圧入が困難になる。
【0059】
また、充填工程において、揮発する溶剤を含まない導電ペースト20を使用することが好ましい。これにより、導電ペースト20が減圧下で固まることを防止し、保護フィルム6(絶縁フィルム5)の剥離を容易にすることができる。
【0060】
また、充填工程において、後述の一体化工程の加熱処理による熱硬化後の収縮が少ない導電ペーストを用いることが好ましい。これにより、多層プリント配線板の平坦度が損なわれることや、有底ビアホール近傍の接着や層間接続の健全性が害されることを防止できる。
【0061】
また、充填工程の間、ハウジング部材30に対して保護フィルム6の方向に導電ペースト20の注入圧力(圧入圧力)よりも大きい圧力を加えることが好ましい。これによりハウジング部材30は十分な圧着圧力によって保護フィルム6に密着し、その結果、導電ペースト20がハウジング部材30と保護フィルム6の間からリークすることを防止できる。
【0062】
導電ペースト注入用流路31を通って導電ペースト流動空間Sに注入された導電ペースト20は、
図1C(1)に示すように、まず、有底ビアホール7に流れ込んで、有底ビアホール7を充填する。有底ビアホール7の充填が完了すると、導電ペースト20は、有底ビアホール7と有底ビアホール8を接続する導電ペースト流動用溝11を伝って有底ビアホール8に流れ込み、有底ビアホール8を充填する。その後同様にして、
図1C(2)に示すように、導電ペースト20は、有底ビアホール9を充填し、その後、ダミー有底ビアホール10に流れ込む。
【0063】
導電ペースト20がダミー有底ビアホール10に流入した時点で、導電ペースト20の注入を終了する。このように、導電ペースト20がダミー有底ビアホール10に達した時点で導電ペースト20の注入を停止するようにすることで、導電ペースト20が真空排気用流路32に流入して真空排気用流路32が詰まることを防止することができる。
【0064】
上記のように、本充填工程では、導電ペースト20は、導電ペースト流動用溝11に沿って流動し、導電ペースト注入用流路31の開口部から近い有底ビアホールから有底ビアホール内を順次充填していく。
【0065】
導電ペースト20の注入を終了するタイミングは、導電ペースト流動空間Sの体積に応じた充填量を予め決めておき、当該充填量に達した時点でもよい。あるいは、当該充填量に基づいて所定の充填速度に対する充填時間を予め決めておき、当該充填時間に達した時点で導電ペースト20の注入を終了してもよい。
【0066】
なお、体積の大きなダミー有底ビアホール10を形成しておくことで、導電ペースト20の充填時間のマージンを増やすことができる。
【0067】
充填工程の後、
図1D(1)に示すように、導電ペースト流動空間Sを大気開放した後、ハウジング部材30を穿孔基材19から取り外す。
【0068】
次に、
図1D(2)に示すように、ダミー有底ビアホール10を除去する。具体的には、ダミー有底ビアホール10をパンチ等で打ち抜いて除去したり、あるいは、ダミー有底ビアホール10が形成された領域を裁断等により除去する。
【0069】
このようにダミー有底ビアホール10を除去しておくことで、後述の一体化工程の加熱処理によってダミー有底ビアホール10内の空気が熱膨張する結果、多層プリント配線板の平坦度が損なわれることや、ダミー有底ビアホール10近傍の接着や層間接続の健全性が害されることを防止できる。
【0070】
ここまでの工程を経て、
図1D(2)に示す配線基材25Aを得る。
【0071】
次に、
図1D(3)に示すように、接着剤層4を配線基材25Aに残すように配線基材25Aの保護フィルム6を剥離する。これにより、有底ビアホール7,8,9に充填された導電ペースト21,22,23の一部を突出させる。導電ペースト21,22,23のうち、接着剤層4から突出した部分が突出部21a,22a,23aとなる。突出部21a,22a,23aの高さは、絶縁フィルム5の厚みにほぼ等しい。なお、導電ペースト流動用溝11内の導電ペースト20は、絶縁フィルム5の剥離により絶縁フィルム5とともに除去される。
【0072】
ここまでの工程を経て、
図1D(3)に示す配線基材25を得る。
【0073】
次に、上記と同様の工程を経て、
図1E(1)に示す配線基材26を製造する。配線基材25の製造方法との相違点の一つは、金属箔張積層板3の主面1aに設けられた保護フィルム6の構成である。配線基材26の製造に用いる保護フィルム6は、絶縁フィルム(例えば20μm厚のPETフィルム)の片面に微粘着性の接着剤層(例えば10μm厚)が形成されたものである。この微粘着性の接着剤層は、保護フィルム6を剥離する際、絶縁フィルム5と一緒に絶縁基材1から剥離される。
【0074】
配線基材26の製造では、上記のような微粘着性の接着剤層を有する保護フィルムを金属箔張積層板3の主面1aに貼り合わせる。そして、保護フィルム6を剥離する際、保護フィルム6を微粘着性の接着剤層とともに剥離する。このため、
図1E(1)に示すように、配線基材26の突出部21a,22a,23aは絶縁基材1から突出した状態となる。配線基材26の突出部21a,22a,23aの高さは、保護フィルム6の厚みにほぼ等しい。
【0075】
なお、配線基材26の穿孔工程では、有底ビアホール7,8,9の径を配線基材25の有底ビアホール7,8,9の系よりも大きく形成することが好ましい。例えば、配線基材25の有底ビアホール7,8,9の径φ150μmに対して、配線基材26の有底ビアホール7,8,9の径はφ200μmとする。これにより、配線基材25と配線基材26を積層する際の位置合せマージンを大きくすることができる。
【0076】
次に、
図1E(1)に示すように、配線基材25および配線基材26を、導電ペーストの突出部同士が当接するように積層し、積層された配線基材25および配線基材26(以下、単に「積層体」ともいう。)を加熱して一体化する(一体化工程)。本工程により、接着剤層4が熱硬化するとともに、導電ペースト20の金属粒子が互いに金属結合し且つ金属箔2とも金属結合する。より詳しくは、以下のようにして一体化工程を行う。
【0077】
まず、配線基材25と配線基材26を対向させて位置合せを行い、配線基材25の突出部21a,22a,23aと、配線基材26の突出部21a,22a,23aとがそれぞれ互いに当接するように、配線基材25および配線基材26を積層する。
【0078】
積層された配線基材25および配線基材26の一体化は、具体的には、真空プレス装置または真空ラミネータ装置を用いて行う。これらの装置を用いて、例えば、積層体を200℃程度の積層プロセス温度で加熱するとともに、数MPa程度の圧力で加圧する。なお、この積層プロセス温度は液晶ポリマーの軟化温度より50℃以上低い。
【0079】
真空プレス装置を用いる場合、例えば、上記の加熱・加圧条件で30分〜60分程度、積層体を保持する。これにより、接着剤層4の熱硬化、および導電性ペースト21,22,23のバインダー樹脂の熱硬化が完了する。
【0080】
真空ラミネータ装置を用いる場合、加熱・加圧時間は数分程度であり、その終了時点で熱硬化反応は未だ完了していない。このため、真空ラミネータ装置からオーブン装置に積層体を移送し、ポストキュア処理を行う。ポストキュア処理では、例えば、200℃前後の温度で60分程度、積層体を加熱する。これにより、接着剤層4の熱硬化、および導電性ペースト21,22,23のバインダー樹脂の熱硬化が完了する。
【0081】
真空プレス装置および真空ラミネータ装置のいずれを用いた場合も、所定の積層プロセス温度での加熱により、導電ペースト21,22,23に含まれる金属粒子が互いに金属結合するとともに金属箔2と金属結合する。これにより、
図1E(2)に示すように、層間接続用の導電ビア24が形成される。
【0082】
なお、200℃程度の積層プロセス温度で導電ペーストに含まれる金属粒子同士が金属結合するために、低融点はんだに含まれるような低融点金属(In、SnIn、SnBi等)や低融点合金を含む導電ペーストを用いることが好ましい。
【0083】
また、導電ペーストに含まれる金属粒子の融点は、積層プロセス温度以下であることが好ましい。このような低融点金属として、例えば、In、SnIn、SnBiが挙げられる。充填工程においては、これらの低融点金属のいずれかからなる金属粒子を含む導電ペーストを用いることが好ましい。
【0084】
また、金属箔2が銅箔である場合には、充填工程において、Sn、Zn、Al、Ag、Ni、Cuまたはこれらの合金を含む導電ペーストを用いることが好ましい。これにより、積層プロセス温度(例えば200℃程度)の加熱により、導電ペーストに含まれる金属粒子が銅箔と合金層を形成する。
【0085】
次に、
図1E(2)に示すように、配線基材25および配線基材26の外側の金属箔2をパターニングして、配線パターン27および配線パターン28を形成する。金属箔2のパターニングは、例えば、公知のフォトファブリケーション手法を用いたエッチングにより行う。
【0086】
なお、両面同時露光を行うことにより、配線基材25の金属箔2および配線基材26の金属箔2を同時にパターニングしてもよい。これにより、配線基材25と配線基材26とを積層する際の位置合わせ精度(積層精度)よりも高い精度で、配線パターン27と配線パターン28との間の位置合わせを行うことができる。
【0087】
上記の工程を経て、
図1E(2)に示すように、配線パターン27と配線パターン28とを電気的に接続する導電ビア24が設けられた多層プリント配線板29を得る。
【0088】
その後、必要に応じて、カバーレイやソルダーレジスト層の形成、配線パターン27,28のランド部の表面処理(金めっき等)、および外形加工等を行う。
【0089】
なお、絶縁フィルム5の厚みは、導電ペースト21,22,23の突出部21a,22a,23aの高さ(即ち、導電ペーストの飛び出し量)を規定することになる。よって、絶縁フィルム5が厚すぎる場合は、突出部21a,22a,23aが突出しすぎるために、一体化工程において接着剤層4により多層プリント配線板29の凹凸を吸収しきれず、多層プリント配線板29の平坦度が損なわれるおそれがある。一方、絶縁フィルム5が薄すぎる場合、突出部21a,22a,23aが低すぎるために一体化工程で配線基材の積層体を加圧しても導電ペースト(例えば、配線基材25の導電ペースト21と配線基材26の導電ペースト21)同士の圧着が弱く、導電ビア24の接続信頼性を十分に確保できないおそれがある。したがって、絶縁フィルム5の厚さは、25±5μmの範囲とすることが好ましい。
【0090】
また、金属箔2のパターニングは、一体化工程の前に行っておいてもよい。
【0091】
以上説明したように、本実施形態では、ハウジング部材30を穿孔基材19の保護フィルム6上に配置し、導電ペースト注入用流路31および真空排気用流路32を導電ペースト流動空間Sに連通させた後、導電ペースト流動空間Sを減圧し、その状態でハウジング部材30の導電ペースト注入用流路31を介して導電ペースト20を導電ペースト流動空間Sに注入する。
【0092】
本実施形態によれば、導電ペースト流動空間Sを減圧した状態で導電ペースト20を注入することで、有底ビアホール7,8,9内に充填された導電ペースト21,22,23中にエアボイドが混入することを防止できる。
【0093】
さらに、本実施形態によれば、導電ペースト流動空間Sのみを局所的に減圧すればよいため、真空印刷機が不要となり、簡易に実施可能であるとともに、製造コストを低減することができる。
【0094】
さらに、本実施形態によれば、導電ペースト流動空間Sのみを局所的に減圧すればよいため、真空印刷機を用いてプリント配線板を含む系全体を減圧する場合に比べて、減圧工程に要する時間を大幅に短縮することができ、生産性を向上させることができる。
【0095】
参考として実績値の一例を挙げれば、300個の有底ビアホール(φ150μm)を形成した穿孔基材に対して導電ペーストの充填を行ったところ、約10秒で導電ペーストの充填を完了することができた。使用した穿孔基材の長さは約10cmで、有底ビアホール間の間隔は約1mmである。なお、従来の真空印刷機を用いた場合、系の真空引きから印刷終了まで例えば約3分程度の時間を要する。
【0096】
また、本実施形態によれば、従来の真空環境下のスクリーン印刷に比べて印刷ロスが少なく、導電ペーストの廃棄量を低減させることができる。これにより、高価な導電ペーストの製品使用率が向上し、製造コストを低減させることができる。
【0097】
また、本実施形態によれば、プリント配線板を含む系全体を真空引きする必要がないため、フレキシブルプリント配線板の製造において、いわゆるロールトゥロール(Roll to Roll)方式で充填工程を実施することができる。これにより、生産性をさらに向上させることができる。
【0098】
また、1つの穿孔基材(あるいは複数の製品を含むワークシート)に複数のハウジング部材を配置して、導電ペーストの充填を並行して行ってもよい。これにより、充填工程に要する時間をさらに短縮することができる。
【0099】
また、穿孔基材19にダミー有底ビアホール10を形成しておくことで、真空排気用流路32が導電ペースト20で詰まることを防止し、充填工程の信頼性を向上させることができる。
【0100】
なお、本実施形態では、保護フィルム6に導電ペースト流動用溝11を形成したが、ハウジング部材30に同様の溝を形成してもよい。ただし、保護フィルム6に導電ペースト流動用溝11を形成した方が、ハウジング部材30の汎用性を高めることができる。つまり、導電ペーストの注入位置(導電ペースト注入用流路31の開口位置)と真空排気位置(真空排気用流路32の開口位置)が同じ製品に対しては、有底ビアホールの配置によらず、共通のハウジング部材30が適用可能である。保護フィルム6に導電ペースト流動用溝11を設けることで、多様な穿孔基材に対して1種類のハウジング部材で対応することができる。
【0101】
さらに、保護フィルム6に導電ペースト流動用溝11を設けることで、ハウジング部材30を保護フィルム6上に配置するときに高精度な位置合せが必要ないという利点もある。
【0102】
また、ハウジング部材30に導電ペースト流動用溝を設けないことで、ハウジング部材30に導電ペーストの残渣が付着しづらくなり、次の充填工程に悪影響を及ぼすことを防ぐことができる。
【0103】
なお、穿孔工程で形成される有底ビアホールの個数が多くなるにつれて(例えば数百〜数千個)、導電ペーストの充填時間や注入圧力を適切に制御することが困難になる。そこで、導電ペースト流動用溝11を一筆書き状に形成することが考えられる。
【0104】
即ち、
図3に示すように、穿孔工程で有底ビアホール12を複数形成した場合、溝形成工程において、これら複数の有底ビアホール12を一回ずつ通るように導電ペースト流動用溝13を一筆書き状に形成することが好ましい。これにより、導電ペースト20の注入から真空排気までの経路が分岐や合流を有しない形状になる。このため、有底ビアホールの数が多い場合でも、導通用孔12の数と導電ペースト流動用溝13の長さに基づいて、充填工程の各種制御パラメータ(充填時間、充填速度、注入圧力など)を比較的容易に決めることができる。また、このように導電ペースト流動用溝を一筆書き状に形成することで、充填工程を終了するタイミングを容易に把握することができる。
【0105】
また、ダミー有底ビアホール10をハウジング部材30から視覚的に確認できる窓を設けておくことが好ましい。より詳しくは、ハウジング部材準備工程において、
図4(a),(b)に示すハウジング部材30Pを準備する。ハウジング部材30Pには、モニタ用貫通孔33が設けられており、このモニタ用貫通孔33に、ガラスまたは透明樹脂等の透明材料34が気密に嵌め込まれている。
【0106】
ここで、モニタ用貫通孔33は、
図4(a)に示すように、ハウジング部材30Pが保護フィルム6上に配置された状態において、ダミー有底ビアホール10の上方に位置する開口面30aに一端が開口し、且つハウジング部材30Pを金属箔張積層板3の厚さ方向に貫通するように設けられている。
【0107】
そして、充填工程では、ダミー有底ビアホール10に導電ペースト20が流入したことを、モニタ用貫通孔33を介して検出した時点で、導電ペースト20の注入を終了するようにする。
【0108】
このようにダミー有底ビアホール10の様子をモニタするための窓をハウジング部材に設けることで、導電ペースト20がダミー有底ビアホール10に到達するタイミングを容易に捉えることができる。
【0109】
なお、有底ビアホールの様子をモニタするための窓をハウジング部材に設けてもよい。
図5(a),(b)に示すように、ハウジング部材30Qには、モニタ用貫通孔35が設けられており、このモニタ用貫通孔35に、ガラスまたは透明樹脂等の透明材料34が気密に嵌め込まれている。
【0110】
ここで、モニタ用貫通孔35は、
図5(a)に示すように、ハウジング部材30Qが保護フィルム6上に配置された状態において、有底ビアホール9の上方に位置する開口面30aに一端が開口し、且つハウジング部材30Qを金属箔張積層板3の厚さ方向に貫通するように設けられている。
【0111】
そして、充填工程では、導電ペースト20が有底ビアホール9内を充填したことを、モニタ用貫通孔35を介して検出した時点で、導電ペースト20の注入を終了するようにする。これにより、導電ペースト20の注入を終了するタイミングを容易に決めることができる。
【0112】
なお、有底ビアホール9とダミー有底ビアホール10とを繋ぐ導電ペースト流動用溝11の上方に位置するように、ハウジング部材にモニタ用の窓を設けてもよい。
【0113】
また、金属箔張積層板3は絶縁基材1の両面に金属箔2が設けられた両面金属箔張積層板であってもよい。この場合、片面の金属箔2をパターニングし、環状の穿孔加工用マスクや、受けランドを予め形成しておく。その後、パターニングされた金属箔2を覆うように絶縁基材1の主面に保護フィルム6を設ける。
【0114】
その後、
図6に示すように、保護フィルム6および絶縁基材1を部分的に除去することにより、底面に金属箔が露出した有底ビアホール14,15,16を形成する。この際、ダミー有底ビアホール17を形成してもよい。
【0115】
有底ビアホール14,16は、パターニングされた金属箔2からなる穿孔加工用マスク2aによりステップ状に加工された有底ビアホールである。有底ビアホール15は、パターニングされた金属箔2からなる受けランド2bが底面に露出した浅い有底ビアホールである。
【0116】
続く充填工程以降の工程は前述した工程と同様であるので省略する。このように本発明によれば、様々なタイプの有底ビアホール内に導電ペーストを充填することができる。
【0117】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。