特許第6138029号(P6138029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138029
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ダム貯水池の堆砂排出設備
(51)【国際特許分類】
   E02B 8/00 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   E02B8/00
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-237508(P2013-237508)
(22)【出願日】2013年11月18日
(65)【公開番号】特開2015-98671(P2015-98671A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2016年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】巻幡 敏秋
(72)【発明者】
【氏名】角 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田窪 宏朗
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭29−007361(JP,Y1)
【文献】 特開2010−144359(JP,A)
【文献】 特開昭54−052838(JP,A)
【文献】 特開2002−282888(JP,A)
【文献】 実公昭63−027098(JP,Y2)
【文献】 実開昭60−040563(JP,U)
【文献】 特開昭63−293213(JP,A)
【文献】 実公昭59−007288(JP,Y2)
【文献】 特開2007−291686(JP,A)
【文献】 特開平05−005318(JP,A)
【文献】 実開昭58−149460(JP,U)
【文献】 特開平02−147728(JP,A)
【文献】 特開平06−212661(JP,A)
【文献】 特開2008−133632(JP,A)
【文献】 特開平08−013538(JP,A)
【文献】 特開平05−157038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 8/00
E02B 8/02
E02F 5/28
E02F 7/00
F03B 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダム貯水池の堆砂を堤体の下流側に移動させる堆砂運搬手段が具備されたダム貯水池の堆砂排出設備であって、
吸水口が上記ダム貯水池の水域に配置されるとともに、上記堤体を越えて、排水口が上記堤体の下流側に配置されるサイフォン式導水管と、
上記サイフォン式導水管にサイフォンの原理を働かせる負圧ポンプと、
上記サイフォン式導水管からの水により駆動する水圧エンジンと、
上記水圧エンジンの駆動による動力を上記堆砂運搬手段に伝達することにより、当該堆砂運搬手段を駆動させる動力伝達手段とが具備されたことを特徴とするダム貯水池の堆砂排出設備。
【請求項2】
堆砂運搬手段が、スクリューコンベアを有し、
上記スクリューコンベアが、被運搬物から水を排出してダム貯水池に戻し得る構造であることを特徴とする請求項1に記載のダム貯水池の堆砂排出設備。
【請求項3】
スクリューコンベアが、ダム貯水池に水没して配置されて堆砂および水を吸引する吸引スクリューコンベアと、この吸引スクリューコンベアの下流側に接続されて上記堆砂を上方に運搬する上昇スクリューコンベアとを有し、
上記吸引スクリューコンベアと上記上昇スクリューコンベアとを接続する自在継手と、
上記上昇スクリューコンベアをその軸方向に回転自在に支持する回転支持体と、
上記ダム貯水池に浮べられるとともに係留されて移動自在な浮体とが具備され、
上記吸引スクリューコンベアの上流部が、上記浮体に係留されて、移動自在にされたことを特徴とする請求項2に記載のダム貯水池の堆砂排出設備。
【請求項4】
吸引スクリューコンベアのスクリューと連動するプロペラが設けられ、
上記プロペラが、その回転による流体力でダム貯水池の堆砂を攪拌することにより、上記吸引スクリューコンベアによる上記堆砂の吸引範囲を拡大させるものであることを特徴とする請求項3に記載のダム貯水池の堆砂排出設備。
【請求項5】
水圧エンジンが、サイフォン式導水管からの水がヘッド側またはキャップ側に交互に供給されてピストンを出退させる複動式の水圧シリンダと、当該ピストンの出退により駆動される出力軸とを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のダム貯水池の堆砂排出設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム貯水池の堆砂を堤体から下流側に排出する設備、つまりダム貯水池の堆砂排出設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ダムは、上流側からダム貯水池に堆砂が流れ込んでくることを想定して設計されている。しかし、計画されている以上の堆砂がダム貯水池に流れ込んだ場合、ダムの働きに悪影響を及ぼすおそれがあるので、ダム貯水池から堆砂を浚渫船などによって取り除く必要がある。このような浚渫船を不要とするものとしては、ダム自体に堆砂排出装置を設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の装置は、ダム貯水池から堤体の下流側にわたる配管により、サイフォンの原理を利用して堆砂を排出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−106497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の装置は、ダム貯水池の堆砂および水を一緒に排出するものである。このため、堆砂および水の両方を運搬するための大型配管(例えばサイフォン装置)やポンプが必要となり、さらに、この大型配管には堆砂および水の流れを遮断し得る専用のバルブが必要となるので、上記装置が複雑化する。また、上記特許文献1に記載の装置は、堆砂および水(つまり濁水)を下流側に排出するので、すなわち、本来排出する必要のない水まで無駄に排出するので、洪水期や出水期などダム貯水池の水が豊富にある期間にしか稼動できない。このように、上記装置では、稼動できる期間が限定されるので、その期間に多量の堆砂を排出することが必要となる。このため、上記装置は、必然的に大型となり、コストが高くなる。
【0005】
そこで、本発明は、設備自体が簡素化されて、ダム貯水池の水を浪費しない堆砂排出設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に係る本発明のダム貯水池の堆砂排出設備は、ダム貯水池の堆砂を堤体の下流側に移動させる堆砂運搬手段が具備されたダム貯水池の堆砂排出設備であって、
吸水口が上記ダム貯水池の水域に配置されるとともに、上記堤体を越えて、排水口が上記堤体の下流側に配置されるサイフォン式導水管と、
上記サイフォン式導水管にサイフォンの原理を働かせる負圧ポンプと、
上記サイフォン式導水管からの水により駆動する水圧エンジンと、
上記水圧エンジンの駆動による動力を上記堆砂運搬手段に伝達することにより、当該堆砂運搬手段を駆動させる動力伝達手段とが具備されたものである。
【0007】
また、請求項2に係る本発明のダム貯水池の堆砂排出設備は、請求項1に記載の堆砂運搬手段が、スクリューコンベアを有し、
上記スクリューコンベアが、被運搬物から水を排出してダム貯水池に戻し得る構造であるものである。
【0008】
さらに、請求項3に係る本発明のダム貯水池の堆砂排出設備は、請求項2に記載のスクリューコンベアが、ダム貯水池に水没して配置されて堆砂および水を吸引する吸引スクリューコンベアと、この吸引スクリューコンベアの下流側に接続されて上記堆砂を上方に運搬する上昇スクリューコンベアとを有し、
上記吸引スクリューコンベアと上記上昇スクリューコンベアとを接続する自在継手と、
上記上昇スクリューコンベアをその軸方向に回転自在に支持する回転支持体と、
上記ダム貯水池に浮べられるとともに係留されて移動自在な浮体とが具備され、
上記吸引スクリューコンベアの上流部が、上記浮体に係留されて、移動自在にされたものである。
【0009】
また、請求項4に係る本発明のダム貯水池の堆砂排出設備は、請求項3に記載のダム貯水池の堆砂排出設備において、吸引スクリューコンベアのスクリューと連動するプロペラが設けられ、
上記プロペラが、その回転による流体力でダム貯水池の堆砂を攪拌することにより、上記吸引スクリューコンベアによる上記堆砂の吸引範囲を拡大させるものである。
また、請求項5に係る本発明のダム貯水池の堆砂排出設備は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のダム貯水池の堆砂排出設備において、水圧エンジンが、サイフォン式導水管からの水がヘッド側またはキャップ側に交互に供給されてピストンを出退させる複動式の水圧シリンダと、当該ピストンの出退により駆動される出力軸とを有するものである。
【発明の効果】
【0010】
上記ダム貯水池の堆砂排出設備によると、設備を簡素化することができるとともに、ダム貯水池の水の浪費を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係るダム貯水池の堆砂排出設備を示す概略斜視図である。
図2】同ダム貯水池の堆砂排出設備の概略構成を示すブロック図である。
図3】同ダム貯水池の堆砂排出設備におけるスクリューコンベアを示す縦断面図である。
図4図3を拡大して示す図であり、(a)は図3のaの拡大図、(b)は図3のbの拡大図、(c)は図3のcの拡大図である。
図5】同スクリューコンベアにおける呑口部の横断面図を示す図であり、(a)は図4(c)のA−A断面図、(b)は図4(c)のB−B断面図、(c)は図4(c)のC−C断面図である。
図6】同堆砂排出設備における水圧エンジンを示す図であり、(a)が側面断面図、(b)が斜視図である。
図7】同水圧エンジンにおける水圧シリンダおよび水圧機器を示す水圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係るダム貯水池の堆砂排出設備について図面に基づき説明する。
まず、ダム貯水池の堆砂排出設備の概略構成について説明する。
【0013】
この堆砂排出設備は、図1および図2に示すように、ダム貯水池Pの底に溜まった堆砂Aを堤体Bの下流側Dに移動させて排出するものである。すなわち、上記堆砂排出設備100は、概略的に、ダム貯水池Pの堆砂Aを堤体Bの下流側Dに移動させる堆砂運搬手段1〜4と、この堆砂運搬手段1〜4に必要な動力を発生させる動力発生手段5〜7と、この動力発生手段5〜7により発生した動力を上記堆砂運搬手段1〜4に伝達する動力伝達手段8〜10とから構成される。
【0014】
『堆砂運搬手段1〜4』
上記堆砂運搬手段1〜4は、図1および図3に示すように、堆砂Aの上流側から、ダム貯水池Pに水没して配置された吸引スクリューコンベア1と、この吸引スクリューコンベア1の下流端に接続された上昇スクリューコンベア2と、この上昇スクリューコンベア2からの被運搬物(堆砂Aであり以下に詳しく説明する)を堤頂Btまで略水平に運搬するベルトコンベア3とが具備される。また、上記堆砂運搬手段1〜4は、図1および図2に示すように、上記ベルトコンベア3からの被運搬物である堆砂Aを上記堤体Bの下流側Dまで滑り降ろす排砂管4(例えばジャバラホース)も具備される。
【0015】
上記吸引スクリューコンベア1および上昇スクリューコンベア2(以下、これらを単にスクリューコンベア1,2という)は、いずれも上流側から下流側まで被運搬物を排水しながら運搬するものである。すなわち、上記スクリューコンベア1,2は、図3におけるaおよびbの拡大図、つまり図4(a)および(b)に示すように、外殻案内管1o,2oおよび内殻案内管1i,2iと、この内殻案内管1i,2iの内部で回転して被運搬物を運搬するスクリュー1s,2sとを有する。上記内殻案内管1i,2iは、多孔が形成されて上記被運搬物から水を排出する構造(多孔式二重管)、つまり排水構造にされている。このため、上記被運搬物は、ダム貯水池Pの水面から上昇した段階で水が排出されて、堆砂Aのみとなる。
【0016】
上記吸引スクリューコンベア1は、図1および図3に示すように、平面視で、上流端(以下、呑口部1mという)が中央位置(堆砂Aが多く溜まっていると想定される位置)に配置されるとともに、下流端が斜樋Tの近くに配置される。すなわち、上記吸引スクリューコンベア1は、その呑口部1mで堆砂Aおよび水を吸引して下流端(上昇スクリューコンベア2側)まで運搬するものである。ここで、上記呑口部1mは、効率よく堆砂Aを吸引し得る構造にされている。すなわち、上記呑口部1mは、図4(c)に示すように、スクリューの軸1aおよび外殻案内管1oの上部が吸引の上流側に延長されるとともに、延長されたスクリューの軸1aの上流端に設けられたプロペラ11[図5(a)も参照]と、このプロペラ11の回転による流体力で攪拌・移流された堆砂Aおよび水をノズル効果により吸引する開口円盤12[図5(c)も参照]とを有する。また、上記呑口部1mは、図4(c)に示すように、延長されたスクリューの軸1aを支持する2つの支承部13,14が設けられる。これら2つの支承部13,14のうち、一方は上記プロペラ11の下流側に配置された三方支承部13[図5(b)も参照]であり、他方は上記開口円盤12の下流側に配置された四方支承部14[図5(c)も参照]である。なお、上記呑口部1mは、図1および図3に示すように、ダム貯水池Pに浮かべられた浮体Fに係留されているので(上記浮体F自身も斜樋Tに係留されている)、ある程度は上下流方向および鉛直方向に移動自在である。
【0017】
上記上昇スクリューコンベア2は、図3に示すように、複数の回転支持体Sにより、その案内管1o,1iの軸方向に対して回転自在に、且つ上記斜樋Tに沿って配置される。また、上記上昇スクリューコンベア2は、上流端が吸引スクリューコンベア1の下流端に自在継手(詳しくは第2自在継手10として後述する)を介して接続される。このため、上記吸引スクリューコンベア1および上記上昇スクリューコンベア2は、上記吸引スクリューコンベア1の呑口部1mがある程度は上下流方向および鉛直方向に移動しても、上記第2自在継手10および回転支持体Sにより、柔軟に対応可能な構成である。さらに、図1に示すように、上記上昇スクリューコンベア2は、下流端が堤頂Btよりも高くに位置するように配置される。
【0018】
上記ベルトコンベア3は、一般に使用されている公知の土砂運搬用ベルトコンベアであり、図1に示すように、堆砂Aを運搬する無端ベルト3bと、この無端ベルト3bを循環させる駆動部3rとを有する。また、上記ベルトコンベア3は、上流端が上記上昇スクリューコンベア2の下流端の下方に配置されるとともに、下流端が堤頂Btに配置される。なお、図1には、一基のベルトコンベア3を示したが、堆砂Aを運搬する距離によっては、数基のベルトコンベア3を直列に接続したものであってもよい。
【0019】
上記排砂管4は、図1に示すように、上流端が上記ベルトコンベア3の下流端の下方に配置されるとともに、下流端が上記堤体Bの下流側Dに配置される。図1および図2に示すように、上記排砂管4の下流端の位置には、例えば河岸など、堆砂Aの仮置に適した場所(以下、堆砂仮置場Dpという)が選択される。
【0020】
『動力発生手段5〜7』
上記動力発生手段5〜7は、図1および図2に示すように、ダム貯水池Pから堤体Bを跨ぐように配置されたサイフォン式導水管5と、このサイフォン式導水管5にサイフォンの原理を働かせる負圧ポンプ(サイフォンの原理を働かせるポンプであればよい)6と、上記サイフォン式導水管5からの水により駆動する水圧エンジン7とが具備される。
【0021】
上記サイフォン式導水管5は、図1に示すように、上流端(吸水口)が堤体Bに沿ってダム貯水池Pに配置されるとともに、下流端(排水口)が堤体Bの下流側Dで上記水圧エンジン7に接続される。また、上記サイフォン式導水管5は、図示を省略するが、上流端(吸水口)がダム貯水池Pの水域に位置するとともに、内部にフィルターが設けられるので、水圧エンジン7に水のみを送るものである。
【0022】
上記負圧ポンプ6は、図1に示すように、上記サイフォン式導水管5の最も高い位置、つまり堤頂Btに配置される。このため、上記負圧ポンプ6は、その位置まで上記サイフォン式導水管5に水を満たすことにより、当該サイフォン式導水管5にサイフォンの原理を働かせるものである。
【0023】
上記水圧エンジン7は、図6(a)に示すように、上記サイフォン式導水管5からの水(以下、図2に示すように圧力水という)により複動式の水圧シリンダ70のピストンロッド78を出退させ、このピストンロッド78の出退により駆動軸69とともに出力スプロケット80[図6(b)参照]を回転駆動させるものである。なお、以下では、上記水圧シリンダ70のヘッド側を前側、キャップ側を後側として説明する。上記水圧エンジン7は、少なくとも5つ(前側から順に第1〜第5を冠して称する)の支持部材61vが立設固定された架台61hと、この架台61hに設置される機器類62〜70と、上記架台61hおよび機器類62〜70を納める箱体60とを備える。上記機器類62〜70は、第4および第5の支持部材61vに支持されて圧力水によりピストンロッド78を出退させ得る上述した複動式の水圧シリンダ70と、この水圧シリンダ70のピストンロッド78の先端(前端)に後端が接続されたコンロッド62と、このコンロッド62を前後方向に移動可能に支持するとともに第3の支持部材61vに支持されたコンロッドガイド63と、上記コンロッド62の前端に接続されるとともに第2の支持部材61vのクランク軸64を介して回転自在に支持された回転盤65と、この回転盤65の回転に同期する駆動スプロケット66とを有する。すなわち、上記回転盤65は、水圧シリンダ70のピストンロッド78の出退によりクランク軸64を中心に回転し、駆動スプロケット66を回転駆動させ得るものである。なお、この駆動スプロケット66の回転は、図示しないフライホイールに補助されてトルクが一定になる。また、上記機器類62〜70は、第1の支持部材61vに設けられた駆動軸69と、この駆動軸69に中心が固定された受動スプロケット68と、上記駆動スプロケット66および受動スプロケット68を連結連動させるチェーン67とを有する。すなわち、上記駆動軸69は、駆動スプロケット66の回転により回転駆動するものである。さらに、上記駆動軸69は、左側[図6(a)では手前側]まで伸びて箱体60を貫通し、図6(b)に示すように、箱体60の外部に突出した先端に、上述した出力スプロケット80が取り付けられている。以上より、上記水圧エンジン7は、上記サイフォン式導水管5からの水(圧力水)により出力スプロケット80を回転駆動させ得るものである。また、上記水圧エンジン7は、その駆動に必要な圧力水の量がピストン76の移動した体積分のみであるから、小さな水量で十分に駆動するものである。さらに、上記水圧エンジン7における出力スプロケット80の回転速度は、水力タービンのような他の水力機関と比べて低く、堆砂運搬手段1〜4に必要な回転速度と大きな差異がない。
【0024】
次に、上記水圧エンジン7の要部となる上記水圧シリンダ70と、この水圧シリンダ70に水圧回路により接続された水圧機器とについて図7に基づき説明する。
「水圧シリンダ70」
上記水圧シリンダ70は、長筒形のシリンダチューブ72を備えたシリンダ本体71と、このシリンダチューブ72の内部で長手方向に移動自在なピストン部75とから構成されている。
【0025】
上記シリンダ本体71は、シリンダチューブ72の前端部の開口を覆うフロントカバー73Fと、シリンダチューブ72の後端部の開口を覆うリヤカバー73Rと、シリンダチューブ72の外周面に取り付けられてシリンダチューブ72内の上記圧力水を給排する前後のポート74F,74Rとを備えている。これらのうち、前のポート74Fは、フロントカバー73Fの後面に向けて取り付けられており、後のポート74Rは、リヤカバー73Rの前面に向けて取り付けられている。これら前後のポート74F,74Rは、一方/他方のポート(74F/74R)で給水しつつ他方/一方のポート(74R/74F)で排水するものである。
【0026】
上記ピストン部75は、シリンダチューブ72の内周面に摺動しながら当該シリンダチューブ72の内部を前後に移動し得るピストン76と、このピストン76の前後面にそれぞれ突設された前後のクッションプランジャ77と、前のクッションプランジャ77に取り付けられるとともに上記フロントカバー73Fを貫通して前方に伸びた上記ピストンロッド78とを有している。
【0027】
上記フロントカバー73Fの後面側およびリヤカバー73Rの前面側には、それぞれ前後のクッションプランジャ77と略同一形状な開口である前後の嵌合凹部73iが形成されている。また、上記フロントカバー73Fおよびリヤカバー73Rには、上記前後の嵌合凹部73iと前後のポート74F,74Rとをそれぞれ連通する前後の連通溝73cが形成されている。さらに、上記フロントカバー73Fには、ピストンロッド78を貫通させるロッド穴73lが形成されている。
【0028】
「水圧機器」
上記水圧機器としては、ピストン76の前後の移動限を検出する出端検出器52および退端検出器53と、これら出端検出器52または退端検出器53からの信号により圧力水の供給/排出するポート74F,74Rを自動で切り換える方向切換弁54と、上記方向切換弁54への圧力水の流入量を制御する流入制御バルブ55と、上記方向切換弁54から圧力水の流出量を制御する流出制御バルブ56とが具備される。
【0029】
上述した構成以外の例としては、図示しないが、出端検出器52および退端検出器53の代わりに、クランク軸64に直結されたカム機構が具備される。このカム機構により、ピストン76の前後の移動限を機械的に検出するとともに、その検出についての信号を方向切換弁54に送信することで、上記出端検出器52および退端検出器53が具備される構成と同様の制御を実現する。
【0030】
『動力伝達手段8〜10』
上記動力伝達手段8〜10は、図1に示すように、水圧エンジン7における出力スプロケット80の回転力(動力)をベルトコンベア3における駆動部3rに伝達する回転軸8と、図3に示すように、上記駆動部3rの回転力(動力)を上昇スクリューコンベア2におけるスクリュー2sに伝達する第1自在継手9と、上昇スクリューコンベア2におけるスクリュー2sの回転力(動力)を吸引スクリューコンベア1におけるスクリュー1sに伝達する上述した第2自在継手10とが具備される。なお、上記出力スプロケット80の回転速度と上記駆動部3rおよびスクリュー1s,2sに必要な回転速度とに大きな差異がないので、上記動力伝達手段8〜10は、減速機などの機器を必要としない。
【0031】
以下、上記ダム貯水池Pの堆砂排出設備100の作用について説明する。
まず、負圧ポンプ6により、サイフォン式導水管5の最も高い位置にまで吸水口から水を満たしておく。すると、サイフォン式導水管5にサイフォンの原理が働き、その後は負圧ポンプ6を停止しても、自動的にダム貯水池Pの水がサイフォン式導水管5の吸水口から排水口まで送られる。
【0032】
そして、ダム貯水池Pの底に溜まった堆砂Aを堤体Bの下流側Dに排出する必要が生ずると、流入制御バルブ55および流出制御バルブ56を開く。すると、圧力水が水圧シリンダ70に供給されて、ピストンロッド78が出退し、出力スプロケット80が回転駆動する。
【0033】
出力スプロケット80が回転すると、この回転力(動力)が回転軸8により駆動部3rに伝達されて、無端ベルト3bが循環する。また、駆動部3rの回転力(動力)が第1自在継手9により上昇スクリューコンベア2におけるスクリュー2sに伝達されて、このスクリュー2sが回転する。さらに、このスクリュー2sの回転力(動力)が第2自在継手10により吸引スクリューコンベア1におけるスクリュー1sに伝達されて、このスクリュー1sが回転する。このため、吸引スクリューコンベア1により、呑口部1mから堆砂Aおよび水が吸引されて、上昇スクリューコンベア2まで運搬される。なお、呑口部1mでは、プロペラ11の回転による流体力で堆砂Aが攪拌されることにより、堆砂Aの吸引範囲が拡大される。また、上昇スクリューコンベア2により、被運搬物(堆砂Aおよび水)から水が排出されて、堆砂Aがベルトコンベア3まで運搬される。さらに、ベルトコンベア3により、堆砂Aが排砂管4まで運搬されて、排砂管4により、堆砂Aが堆砂仮置場Dpまで滑り降りる。
【0034】
このように、上記ダム貯水池Pの堆砂排出設備100によると、水圧エンジン7を使用することにより、ダム貯水池Pの小さな水量でも十分に堆砂運搬手段1〜4が駆動するので、ダム貯水池Pの水の浪費を防止することができる。
【0035】
また、水圧エンジン7を使用することにより、出力スプロケット80の回転速度と上記駆動部3rおよびスクリュー1s,2sに必要な回転速度とに大きな差異がなく、減速機など大型の減速用装置を必要としないので、設備を簡素化することができる。
【0036】
さらに、上昇スクリューコンベア2により、被運搬物から水を排出してダム貯水池Pに戻すので、ダム貯水池Pの水を無駄に運搬することなく、一層ダム貯水池Pの水の浪費を防止することができる。
【0037】
加えて、上昇スクリューコンベア2により、ダム貯水池Pの水を無駄に運搬しないので、運搬に必要な動力が削減されて、一層設備を簡素化することができる。
また、呑口部1mは、浮体Fに係留されてある程度は上下流方向および鉛直方向に移動自在であるとともに、効率よく堆砂Aを吸引し得る構造であるから、水の吸引を抑えることで、より一層設備を簡素化することができる。
【0038】
ところで、上記実施の形態では、水圧エンジン7における水圧シリンダ70の数について説明しなかったが、堆砂運搬手段1〜4に必要な動力に応じて、適宜設計される。
また、上記実施の形態では、動力伝達手段8〜10となる、出力スプロケット80と回転軸8との連結構造、および回転軸8と駆動部3rとの連結構造について詳細に説明しなかったが、これらの連結構造には、歯車など公知のものが適宜使用される。
【0039】
さらに、呑口部1mを、その近くに随伴流を発生させることで一層効率よく堆砂Aを吸引しうる構造にしてもよい。具体的には、図示しないが、開口円盤12に堆砂A吸引用の吸引口を複数形成し、外殻案内管1oにおける開口円盤12および四方支承部14の下流側に別途の細管(以下、吸引管という)の上流端を接続する。一方で、サイフォン式導水管5の下流側の一部を分岐部とし、この分岐部にベンチュリ管を接続する。また、このベンチュリ管に上記吸引管の下流端を接続する。なお、サイフォン式導水管5の分岐部からベンチュリ管への圧力水の流れを制御するために、ベンチュリ管の上流側に仕切弁が設けられる。この構造により、上記仕切弁を開にすることでベンチュリ管にベンチュリの原理が働き、吸引管および吸引口を介しての呑口部1mに随伴流が発生する。したがって、効率よく堆砂Aが吸引されることになるので、より一層ダム貯水池Pの水の浪費を防止することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 吸引スクリューコンベア
2 上昇スクリューコンベア
3 ベルトコンベア
4 排砂管
1〜4 堆砂運搬手段
5 サイフォン式導水管
6 負圧ポンプ
7 水圧エンジン
5〜7 動力発生手段
8 回転軸
9 第1自在継手
10 第2自在継手
8〜10 動力伝達手段
70 水圧シリンダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7