(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、カラオケ用マイクロホンは、通常、モノラル信号を出力するものが使用され、1本のマイクロホンを使用して1人で歌唱しても2人で歌唱してもモノラル信号として出力される。例えば、男女でデュエット歌唱する場合に、2本のマイクロホンでそれぞれ歌唱するとデュエット歌唱に独特の雰囲気を楽しむことができないことから、できれば1本のマイクロホンを共用して2人で歌唱してもよいが、これでは音場的に迫力等に欠けることになる。
【0003】
一方、1本のマイクロホンで異なる方向の音声を集音してステレオ信号を出力する、いわゆるステレオマイクロホンに関する技術が種々知られている。例えば、特許文献1には、単一指向性のミドル(M)用マイクエレメントと双指向性サイド(S)用マイクエレメントとを、指向軸を直交させて配置させ、これらのマイクエレメントからの出力信号を加算あるいは減算することで左右それぞれの信号を生成してステレオ信号を出力する、いわゆるMS方式のステレオマイクロホンが記載されている。このようなマイクロホンを使用すれば1本のマイクロホンでステレオ音声を集音してステレオ信号として出力することができることからデュエット歌唱に適しているといえる。
【0004】
また一方で、特許文献2に記載されているような2系統の音声信号を切り替えるクロスフェーダという操作子が知られている。この操作子は、2系統の音声信号を切り替える際に、フェーダの操作位置と信号の出力レベルとの関係を2つの音声信号の間で逆転させることにより、一方の操作端では一方の信号のみが出力され、中央操作位置では両方の信号が均等に混合され、他方の操作端では他方の信号のみが出力されるというものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているようなステレオマイクロホンでは特にデュエット歌唱に適した音場が得られるが、出力される2人の歌唱音声信号の定位は常に固定であり、中央定位や左右交代などの瞬時的に定位を変化させることができないという問題がある。また、特許文献2に記載さているようなクロスフェーダは、単純に2系統の信号の混合比を変化させながら出力を切り替えるものであり、2系統の信号の定位を連続的に変化させるというものではない。
【0007】
そこで、本発明は上記課題に鑑みなされたもので、単一のマイクロホンによるデュエット歌唱に際して各自の歌唱位置の定位を自在に変化可能とするカラオケ用マイクロホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、カラオケシステムでカラオケ楽曲を再生させながら歌唱者が歌唱時に使用するカラオケ用マイクロホンであって、複数のマイクエレメントを備え、これらマイクエレメントより集音された音声信号を第1音声信号及び第2音声信号として出力する音声信号処理手段と、筐体上に可動体を配設した操作子と、前記第1音声信号及び第2音声信号のそれぞれに対し、前記操作子の可動体位置に応じた定位を制御する制御手段と、前記第1音声信号及び第2音声信号を、前記制御手段で制御される定位で混合してステレオ信号として出力する混合手段と、を有する構成とする。
【0009】
請求項2の発明では、前記制御手段は、前記操作子の可動体位置が操作範囲の一の端部にある場合には前記第1音声信号を最も左に定位させると共に第2音声信号を最も右に定位させるべく制御し、当該操作子の可動体位置が操作範囲の略中央にある場合には前記第1音声信号及び第2音声信号の両方を中央に定位させるべく制御し、当該操作子の可動体位置が操作範囲の他の端部にある場合には前記第1音声信号を最も右に定位させると共に第2音声信号を最も左に定位させるべく制御する構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数のマイクエレメントより集音された音声信号を第1音声信号及び第2音声信号とし、制御手段が当該第1音声信号及び第2音声信号のそれぞれに対して筐体上に可動体が配設された操作子の可動体位置に応じた定位を制御するもので、具体的には、操作子の可動体位置が操作範囲の一の端部にある場合には第1音声信号を最も左に定位させると共に第2音声信号を最も右に定位させるべく制御し、当該操作子の可動体位置が操作範囲の略中央にある場合には第1音声信号及び第2音声信号の両方を中央に定位させるべく制御し、当該操作子の可動体位置が操作範囲の他の端部にある場合には第1音声信号を最も右に定位させると共に第2音声信号を最も左に定位させるべく制御し、混合手段において第1音声信号及び第2音声信号を当該制御手段で制御される定位で混合してステレオ信号として出力する構成とすることにより、デュエット歌唱に際して単一のマイクロホンで当該マイクロホン側より可動体の移動で第1音声信号及び第2音声信号たる各自の歌唱位置の定位を自在に変化させることができ、ひいては歌唱者の嗜好に応じた歌唱音場とさせて満足度の向上を図ることができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図により説明する。
図1に、本発明に係るカラオケ用マイクロホンの構成図を示す。
図1(A)は、カラオケ用マイクロホン11の外観図を示したもので、筐体12における上部側の網目状外覆部12A内に複数のマイクエレメントが配置される。この実施形態では、
図1(B)に示すような、双指向性のサイド用マイクエレメント(ME−S)21と単一指向性のミドル用マイクエレメント(ME−M)22とが指向軸を直交させて設けられたMS方式のステレオマイクロホンとする。各マイクエレメントは、例えばコンデンサ型である。
【0013】
また、筐体12上における網目状外覆部12Aに連続して把持部12Bの所定位置に電源スイッチ13が設けられ、また、これに近接して長穴14が形成されてその周囲に操作目盛14Aが形成される。長穴14は、後述する操作子の一部を構成する例えばフェーダ(この実施形態では可変抵抗器とする)の可動範囲に応じた長さとして形成され、これよりフェーダに連結された可動体15を表出させるように配設される。そして、筐体12の最下端から音声信号用L及び音声信号用Rの2本の接続コード16,17が延出される。なお、ここでは有線式のマイクロホンとするが、送信回路を内蔵させた無線式のマイクロホンとしても適用できるものである。
【0014】
カラオケ用マイクロホン11の筐体12内には、
図1(B)に示すように、双指向性のサイド用マイクエレメント21と単一指向性のミドル用マイクエレメント22とが指向軸を直交させて設けられ、それぞれで集音された音声信号が音声信号処理手段23に入力される。この音声信号処理手段23は、例えば前述の特許文献1の
図1に記載されているような回路構成を採用することができ、ここでは説明を省略する。この場合、特許文献1の回路構成において最終的に出力される音声信号Lが本発明の
図1における第1音声信号Lであり、音声信号Rが本発明の
図1における第2音声信号Rである。
【0015】
カラオケ用マイクロホン11の筐体12内には、音声信号処理手段23の他に、操作子24、制御手段25及び混合手段26が内蔵される。すなわち、上記音声信号処理手段23より出力された第1音声信号L及び第2音声信号Rは、制御手段25に供される。制御手段25は、詳細な回路図及び制御動作は操作子24も含めて
図3及び
図4で説明するが、第1音声信号L及び第2音声信号Rのそれぞれに対し、操作子24の可動体15の操作位置に応じた定位を制御するものである。後述の
図3及び
図4は制御手段25(操作子24)をアナログ回路として示し、後述の
図5にデジタル構成として示す。
【0016】
そして、上記混合手段26は、詳細は
図3で示すが、第1音声信号L及び第2音声信号Rを、制御手段25で制御される定位で混合してステレオ信号として接続コード16,17より出力するものである。
【0017】
ここで、
図2に、本発明のカラオケ用マイクロホンが使用されるカラオケシステムのブロック構成図を示す。
図2において、カラオケシステム31は、主要装置としてのカラオケ本体32に有線又は無線で外部接続されるものとして、
図1のカラオケ用マイクロホン11の他に、表示手段である表示部33、ミキシングアンプ34、スピーカシステム35を備え、また、有線又は無線で遠隔入出力端末36が接続される。なお、上記各構成について、本発明の要旨と直接関連しない要素部分であっても、従前のカラオケシステムにおいても大部分が適用可能であることを示すために、システム全体を説明する。
【0018】
上記表示部33は、通常の楽曲選曲表示やカラオケ演奏時の背景映像等を表示するもので、例えば液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、その他種々のディスプレイを採用することができる。上記ミキシングアンプ34は、カラオケ本体32より送られてくる音楽演奏データに、マイクロホン11からの音声信号L,Rをミキシングし、増幅してスピーカシステム35より出力する。マイクロホン11とは接続コード16,17で接続されるが、当該マイクロホン11が無線方式の場合には受信部を備える。
【0019】
上記遠隔入出力端末36は、図示しない端末送受信部により、カラオケ本体32に対して有線方式ないし無線方式(IR方式やブルートゥース(登録商標)機構のピコネット接続方式など)を利用してデータ授受を行うためのもので、少なくとも選曲楽曲登録手段37を適宜備える。この選曲楽曲登録手段37は楽曲を検索させ、選曲させるテーブルを備えるプログラムであるり、選曲された楽曲は、後述のカラオケ本体32における予約待ち行列(51)に登録される。
【0020】
上記カラオケ本体32は、バス41、中央制御部42、ROM43、RAM44、記憶部45、表示制御手段である映像再生制御手段46、音楽演奏制御部47、及び送受信部48を適宜備える。また、上記RAM44には、予約待ち行列51の記憶領域が形成され、記憶部45には、楽曲DB52及び映像DB53が記憶される。
【0021】
上記中央制御部42は、このシステムを統括的に処理制御する物理的なCPUであり、ROM43に記憶されているプログラムに基づくアルゴリズム処理を行う。上記RAM44は、予約待ち行列51の記憶領域が形成される他に、上記種々のプログラムを展開、実行させるための作業領域としての役割をなすもので、例えば半導体メモリで構成され、仮想的にハードディスク上に構築される場合をも含む概念である。
【0022】
上記映像再生制御手段46は、演奏時に、映像DB53より抽出された背景映像を表示部33に出力するプログラム乃至電子回路である。上記音楽演奏制御部47は、楽曲コードで楽曲DB52より抽出された音符データに基づいて楽音を生成してデジタル出力し、アナログ変換してミキシングアンプ34に出力する電子回路である。上記送受信部48Aは、遠隔入出力端末36との間で有線方式ないし無線方式(IR方式やブルートゥース(登録商標)機構のピコネット接続方式など)を利用してデータ授受を行うためのもので、そのための電子回路及びプログラムである。
【0023】
上記記憶部45に記憶されている楽曲DB52は、楽曲毎に、音符データ及び歌詞データを格納する。演奏に関して、具体的には、楽曲ID、曲名及びアーチストID(アーチスト名)が関連付けられた楽曲テーブルを有し、楽曲毎に、楽曲IDで管理される所定データ形式のカラオケ楽曲の音符データ(例えば、MIDI(登録商標)形式の音符データ)等で構成される楽曲データ(ファイル)について楽曲コードをファイル名としてそれぞれ格納したデータベースである。
【0024】
そこで、
図3に、
図1のカラオケ用マイクロホンの一例を示した回路構成図を示す。
図3における回路構成は概略的なもので細部は省略している。
図3において、制御手段25は、上述の音声信号処理手段23より出力された第1音声信号Lに対する第1音声処理回路61と、第2音声信号Rに対する第2音声処理回路62とで構成される。なお、図では、制御手段25の回路構成が操作子24の回路構成(可変抵抗器)と互いに関連することから、当該操作子24をも含めた形態となっている。
【0025】
第1音声処理回路61は、第1音声信号Lを、制御手段25において、反転増幅部63及び反転増幅部64の各非反転入力端子に入力させると共に、当該第1音声信号Lの信号ラインと並列接続された操作子24の可変抵抗器を介して当該反転増幅部63及び反転増幅部64の各反転入力端子に入力させる回路構成である。そして、反転増幅部63の出力は、L出力用の第1音声信号L1として混合手段26のL出力用の加算部67の一方の端子に入力され、反転増幅部64出力は、R出力用の第1音声信号R1として混合手段26のR出力用の加算部68の一方の端子に入力される。
【0026】
第2音声処理回路62は、第2音声信号Rを、制御手段25において、反転増幅部65及び反転増幅部66の各非反転入力端子に入力させると共に、当該第2音声信号Rの信号ラインと並列接続された操作子24の可変抵抗器を介して当該反転増幅部65及び反転増幅部66の各反転入力端子に入力させる回路構成である。そして、反転増幅部65の出力は、R出力用の第2音声信号R2として混合手段26の加算部68の他方の端子に入力され、反転増幅部66の出力は、L出力用の第2音声信号L2として混合手段26の加算部67の他方の端子に入力される。
【0027】
混合手段26では、加算部67おいては、第1音声信号L1と第2音声信号L2とを加算して音声信号Lとして出力することで接続コード16からミキシングアンプ34の第1入力端子IN1に入力させる。また、加算部68においては、第1音声信号R1と第2音声信号R2とを加算して音声信号Rとして出力することで接続コード17からミキシングアンプ34の第2入力端子IN2に入力させるものである。
【0028】
ミキシングアンプ34では、第1入力端子IN1に入力された音声信号Lと音楽演奏制御部47から送られてくるL用音楽演奏信号とをミキシングしてL用出力端子LOよりスピーカシステム35に出力し、第2入力端子IN2に入力された音声信号Rと音楽演奏制御部47から送られてくるR用音楽演奏信号とをミキシングしてR用出力端子ROよりスピーカシステム35に出力することで、当該スピーカシステム35より放音させるものである。
【0029】
そこで、
図4に、制御手段における操作子と各音声信号出力状態との関係による定位制御の説明図を示す。
図4は、カラオケ用マイクロホン11における操作子24の可動体15が移動されたときの位置(操作子位置とする)に応じた第1音声信号及び第2音声信号の出力状態を示したものである。
【0030】
まず、操作子24の可動体15の位置(操作子位置)が操作範囲の一の端部(
図4における最左端部)にある場合には、第1音声信号を最も左(L)に定位させると共に、第2音声信号を最も右(R)に定位させるべく制御する。すなわち、スピーカシステム35においては、第1音声信号Lのみが左側に定位し、第2音声信号Rのみが右側に定位した状態での放音となる。
【0031】
また、操作子24の可動体15の位置(操作子位置)が操作範囲の略中央にある場合には、第1音声信号(C)及び第2音声信号(C)の両方を中央に定位させるべく制御する。すなわち、スピーカシステム35のセンタ位置で、第1音声信号C+第2音声信号Cの定位状態の放音となる。
【0032】
そして、操作子24の可動体15の位置(操作子位置)が操作範囲の他の端部(
図4における最右端部)にある場合には、第1音声信号を最も右(R)に定位させると共に、第2音声信号を最も左(L)に定位させるべく制御する。すなわち、スピーカシステム35においては、第1音声信号Rのみが右側に定位し、第2音声信号Lのみが左側に定位した状態での放音となるものである。
【0033】
上記操作子24の可動体15は連続的に移動自在であり、操作子24の変位も連続的であることから、第1音声信号及び第2音声信号の定位状態においても左側、略中央、右側へと連続的に制御されるものである。なお、操作子24において、特に連続的とせずに、段階的、例えば左端、略中央、右端の3段階で変位させてもよいものである。
【0034】
次に、
図5に、本発明に係るカラオケ用マイクロホンの他の例の構成ブロック図を示す。
図5において、カラオケ用マイクロホン11の筐体12内に内蔵される要素として、音声信号処理手段23及び混合手段26は
図1(B)と同様であり、制御手段をデジタル処理するプロセッサ(DSP)の制御手段72とし、操作子71として例えばポテンショメータで構成したものである。
【0035】
すなわち、操作子71は、可動体15の位置信号を制御手段72に出力するもので、制御手段72はその位置信号に応じて第1音声信号及び第2音声信号の定位を制御するものである。なお、制御手段72をDSPとする関係で、音声信号処理手段23からの第1音声信号L及び第2音声信号RをA/D(アナログ/デジタル)変換部73を介して制御手段72に入力させ、制御手段72からの第1音声信号及び第2音声信号をD/A変換部74を介して混合手段26に入力させることで、上記
図4に示す第1音声信号及び第2音声信号の定位を連続的、若しくは段階的に制御することができるものである。
【0036】
このように、単一の操作子で2系統の音声信号の定位を制御させる構成とすることによって、デュエット歌唱に際して単一のマイクロホンで当該マイクロホン側より可動体15の移動で第1音声信号及び第2音声信号たる各自の歌唱位置の定位を自在に変化させることができ、ひいては歌唱者の嗜好に応じた歌唱音場とさせて満足度の向上を図ることができるものである。