(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アドホック無線通信を行う複数の無線通信端末と、複数の前記無線通信端末と直接又は間接に無線通信を行う基地局と、複数の前記無線通信端末から前記基地局を介して送信される信号を処理するサーバと、を備え、
複数の前記無線通信端末はそれぞれ、信号の受信を行う受信回路と、信号の送信を行う送信回路と、少なくとも前記受信回路に接続される発電回路と、制御部と、を備え、
前記発電回路は、発電素子と、前記発電素子の発電電力を蓄電する蓄電素子と、を有し、
前記制御部は、前記蓄電素子の蓄電量が所定値以上である場合、前記発電回路からの電力供給によって前記受信回路を駆動し、他の無線通信端末からの信号の待ち受けを行い、さらに、前記他の無線通信端末から受信した信号の中継を行い、
前記サーバは、信号の送信元である複数の前記無線通信端末のうち、所定期間内にその信号が前記サーバに到達しない信号未達の無線通信端末が存在する場合、前記信号未達の無線通信端末とは別の無線通信端末を、一時的に中継を行う当番端末に指定し、前記当番端末に対して電池の電力で中継を行う旨のコマンド指示を送信し、
前記コマンド指示を受信した前記当番端末は、電池の電力で前記中継を行うこと
を特徴とする無線通信システム。
前記サーバは、前記信号未達の無線通信端末よりも前記基地局へのホップ数が少なく、かつ、前記信号未達の無線通信端末を介して過去に信号を中継した無線通信端末を前記当番端末の候補とし、前記候補のうち電池残量が最大である無線通信端末を前記当番端末として指定すること
を特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
アドホック無線通信を行う複数の無線通信端末と、複数の前記無線通信端末と直接又は間接に無線通信を行う基地局と、複数の前記無線通信端末から前記基地局を介して送信される信号を処理するサーバと、を備える無線通信システムにおいて実行される無線通信方法であって、
前記無線通信端末は、信号の受信を行う受信回路と、信号の送信を行う送信回路と、少なくとも前記受信回路に接続される発電回路と、制御部と、を備えており、
前記発電回路は、発電素子と、前記発電素子の発電電力を蓄電する蓄電素子と、を有し、
前記制御部は、前記蓄電素子の蓄電量が所定値以上である場合、前記発電回路からの電力供給によって前記受信回路を駆動し、他の無線通信端末からの信号の待ち受けを行い、さらに、前記他の無線通信端末から受信した信号の中継を行い、
前記サーバは、信号の送信元である複数の前記無線通信端末のうち、所定期間内にその信号が前記サーバに到達しない信号未達の無線通信端末が存在する場合、前記信号未達の無線通信端末とは別の無線通信端末を、一時的に中継を行う当番端末に指定し、前記当番端末に対して電池の電力で中継を行う旨のコマンド指示を送信し、
前記コマンド指示を受信した前記当番端末は、電池の電力で前記中継を行うこと
を特徴とする無線通信方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、一例として、無線通信システムS(
図1参照)が、センサ1(
図2参照)の検出値に基づいて機器の稼働監視や異常検知を行う場合について説明する。
【0013】
≪第1実施形態≫
<無線通信システムの構成>
図1は、本実施形態に係る無線通信システムの構成図である。無線通信システムSは、設備や機器の状態(例えば、橋梁の歪み)を表す物理量をセンサ1(
図2参照)で検出し、その検出結果を基地局20を介してサーバ30に送信するシステムである。
図1に示すように、無線通信システムSは、複数の無線通信端末11〜19と、基地局20と、サーバ30と、を備えている。
【0014】
(無線通信端末)
無線通信端末11〜19は、アドホック無線通信を行うことで周囲の他の無線通信端末を自律的に認識してネットワークを構築する機能を有している。無線通信システムSでは、無線通信端末14〜19と基地局20との情報をやり取りを、他の無線通信端末11〜13によって中継する(マルチホップ通信)。無線通信端末11〜19は、自身が送信した情報が基地局20に到達するまでのホップ数に応じて、複数のランクに分類される。以下では、M段のホップで基地局20に接続可能な無線通信端末を「ランクMの無線通信端末」と記す。
【0015】
例えば、
図1に示す無線通信端末11からの情報は、基地局20に対し直接的に送信される。したがって、無線通信端末11は、ランク1の無線通信端末である。また、無線通信端末14からの情報は、ランク1の無線通信端末11を経由することで基地局20に対し間接的に送信される。したがって、無線通信端末14は、ランク2の無線通信端末である。
なお、
図1では、ランク1又はランク2の無線通信端末11〜19を図示したが、実際にはランク3以上の無線通信端末も存在している。
【0016】
図2は、無線通信端末の機能ブロック図である。無線通信端末11は、センサ1と、制御部2と、メモリ3と、送信回路4と、アンテナ5と、受信回路6と、スイッチ回路7と、電池8と、発電回路9と、を備えている。なお、
図2ではバスBを一本線で簡略化して図示したが、実際には、データバス(図示せず)、アドレスバス(図示せず)等、複数のバスが制御部2に接続されている。
【0017】
センサ1は、設備の状態(例えば、橋梁の歪み具合)を表す物理量を検出するものである。センサ1として、歪センサ、破断センサ、温度センサ、傾斜センサ等、様々な種類のセンサを用いることができる。センサ1によって取得された情報(検出値)は、送信回路4及びアンテナ5を介し、基地局20に向けて送信される。
【0018】
制御部2は、例えばマイコン(Microcomputer:図示せず)であり、ROM(Read Only Memory)に記憶されたプログラムを読み出してRAM(Random Access Memory)に展開し、CPU(Central Processing Unit)が各種処理を実行するようになっている。
制御部2は、無線通信端末11の動作を統括制御する機能を有し、バスBを介してセンサ1、メモリ3、送信回路4、受信回路6、スイッチ回路7、電池8、及び発電回路9に接続されている。なお、制御部2が実行する処理の詳細については後記する。
【0019】
メモリ3は、無線通信端末11の端末ID・ランク、センサ1の検出値、電池8の残量、サーバ30からのコマンド指示、他の無線端末装置から受信した情報等を記憶するものである。メモリ3として、例えば、半導体記憶素子が用いられる。
【0020】
送信回路4は、制御部2によってメモリ3から読み出された信号を送信する回路である。送信回路4は、高周波を発生させる発振回路(図示せず)、搬送波の振幅又は周波数を変化させて変調する変調回路(図示せず)等を有している。送信回路4の入力側は制御部2に接続され、出力側はスイッチ回路7に接続されている。
【0021】
アンテナ5は、送信回路4から入力される電気信号を電磁波に変換して放出したり(送信)、空間を介して伝播してきた電磁波を電気信号に変換したり(受信)するものである。アンテナ5は、スイッチ回路7に接続されている。
受信回路6は、アンテナ5から入力される電気信号を受信する回路である。受信回路6は、前記した電気信号を復調して元の信号を取得するための復調回路(図示せず)を有している。受信回路6の入力側はスイッチ回路7に接続され、出力側は制御部2に接続されている。
【0022】
スイッチ回路7は、制御部2からの指令に従って、送信回路4とアンテナ5との接続、及び、アンテナ5と受信回路6との接続を切り替える回路である。すなわち、信号送信時においてスイッチ回路7は、送信回路4とアンテナ5とを接続し、アンテナ5と受信回路6とを遮断する。一方、信号受信時においてスイッチ回路7は、アンテナ5と受信回路6とを接続し、送信回路4とアンテナ5とを遮断する。
【0023】
なお、スイッチ回路7を省略し、送信用アンテナ(図示せず)と受信用アンテナ(図示せず)とを別体で設けてもよい。この場合、前記した送信用アンテナは送信回路4に接続され、受信用アンテナは受信回路6に接続される
【0024】
電池8は、例えば、一次電池であり、センサ1、制御部2、メモリ3、送信回路4、及び受信回路6に対して給電可能に設置されている。なお、電池8として、充放電可能な二次電池を用いてもよい。
【0025】
発電回路9は、発電素子9a(
図3参照)によって得られる発電電力を、制御部2からの指令に応じて受信回路6に給電する回路である。
図3は、無線通信端末が備える発電回路の機能ブロック図である。
図3に示すように、発電回路9は、発電素子9aと、昇圧部9bと、キャパシタ9cと、電力供給制御部9dと、を有している。
【0026】
発電素子9aは、例えば、太陽光の光エネルギを電気エネルギに変換する太陽電池であり、1つ又は複数の太陽電池セル(図示せず)を有している。発電素子9aは、配線K1を介して昇圧部9bに接続されている。
昇圧部9bは、発電素子9aから入力される電圧を、キャパシタ9cの蓄電に適した電圧に昇圧する機能を有している。昇圧部9bは、配線K2,K3を介してキャパシタ9cに接続されるとともに、配線K2を介して電力供給制御部9dに接続されている。
【0027】
キャパシタ9c(蓄電素子)は、発電素子9aで生成された電荷を蓄えたり放出したりする素子であり、配線K3を介して配線K2に接続されている。キャパシタ9cには、発電素子9aからの発電電力が蓄電される。また、後記する電力供給制御部9dによって、キャパシタ9cから受信回路6に向けて放電される。なお、キャパシタ9cとして、例えば、電気二重層キャパシタを用いることができる。
【0028】
電力供給制御部9dは、配線K4を介した受信回路6への電力供給を、制御部2からの指令に応じて制御するものである。キャパシタ9cの蓄電量(電圧値)が所定値以上である場合、電力供給制御部9dは、キャパシタ9cを放電させることで受信回路6に電力供給する。発電回路9から受信回路6に供給される電力は、後記する転送待ち受けに用いられる。
【0029】
一方、キャパシタ9cの蓄電量(電圧値)が所定値未満である場合、電力供給制御部9dは、受信回路6への電力供給を行わない。つまり、発電素子9aから充分な発電電力量が得られていない間、受信回路6による転送待ち受けは行われない。このように本実施形態では、発電素子9aによる発電電力量が充分である無線通信端末のみを用いて、他の無線通信端末からの信号を中継するようにした。
なお、
図1に示す無線通信端末12〜19も、前記した無線通信端末11と同様の構成(
図2、
図3参照)を備えている。
【0030】
(基地局)
図1に示す基地局20は、ランク1の無線通信端末11〜13との間で直接的に無線通信を行ったり、ランク2以上の無線通信端末14〜19との間で間接的に(つまり、ランク1の無線通信端末11〜13を介して)無線通信を行ったりする。基地局20は、自身が取得した情報をネットワークNを介してサーバ30に送信する。その他、基地局20は、ネットワークNを介してサーバ30から受信したコマンド指示を、無線通信端末11〜19に向けて送信する機能も有している。
【0031】
図4は、基地局の構成を示す機能ブロック図である。
図4に示すように、基地局20は、アンテナ21と、スイッチ回路22と、信号を送信する送信回路23と、信号を受信する受信回路24と、基地局20全体の動作を制御する制御部25と、各種情報が格納されるメモリ26と、を備えている。基地局20には、外部の電源E(例えば、商用電力系統)から電力供給される。
なお、スイッチ回路22を省略し、送信用アンテナ(図示せず)と受信用アンテナ(図示せず)とを別体で設けてもよい。基地局20の各構成の詳細については説明を省略する。
【0032】
(サーバ)
図1に示すサーバ30は、ネットワークNを介して基地局20から送信される信号を処理する機能を有している。また、サーバ30は、基地局20を介して無線通信端末11〜19にコマンド指示を送信する機能も有している。サーバ30は、無線通信システムSの管理者のコンピュータ(図示せず)に接続されている。
【0033】
<無線通信端末の動作>
まず、
図5を参照して無線通信端末11〜19の動作の概要を説明した後、
図6〜
図13を参照しつつ無線通信端末11〜19の各動作について詳細に説明する。
図5は、無線通信システムでの上り通信に関する説明図である。
図5に示す無線通信端末11,13,15,17,18(白抜きの三角印)では、発電素子9a(
図3参照)の発電電力量が充分であり、受信回路6によってデータ信号の中継が行われている。一方、無線通信端末12,14,16,19(斜線入りの三角印)では、発電素子9aの発電電力量が充分でなく、データ信号の中継が行われていない。
【0034】
以下では、一例として、
図5に示す無線通信端末17が、基地局20に向けてデータ信号を送信する場合について説明する。無線通信端末17は、センサ1(
図2参照)の検出値を含むデータ信号を、基地局20に向けて定期的に送信する。
まず、無線通信端末17は、自身のランク(=2)を含む送信予告信号を周囲の無線通信端末12,13,16,18にブロードキャストする。この送信予告信号は、周囲の無線通信端末12,13,16,18の中で、発電回路9(
図2参照)から受信回路6に電力供給されている無線通信端末13,18によって受信される。なお、無線通信端末12,16では、発電素子9aの発電電力量が充分でなく受信回路6が動作していないため、送信予告信号を受信できない。
【0035】
送信予告信号を受信した無線通信端末13,18のうち、送信元の無線通信端末17よりも上位ランクである無線通信端末13によって、無線通信端末17とのコネクションが確立される。ランク1である無線通信端末13は、ランク2である無線通信端末17から受信したデータ信号を基地局20に送信する。なお、基地局20に送信されたデータ信号は、ネットワークNを介してサーバ30に送信される。
【0036】
(送信処理)
図6は、上り通信におけるメッセージシーケンスである。以下では、
図5に示す無線通信端末13を「上位ランクの端末」とし、無線通信端末17を「下位ランクの端末」として説明する。
下位ランクの無線通信端末17は、センサ1(
図2参照)の検出値を含むデータ信号を基地局20に向けて定期的に送信する。ステップS101において無線通信端末17は、周囲の無線通信端末12,13,16,18(
図5参照)に送信予告信号をブロードキャストする。この送信予告信号には、無線通信端末17の端末IDと、ランク(=2)と、が含まれる。ステップS102において無線通信端末17は、後記する受信通知信号の待ち受けを行う。
【0037】
一方、上位ランクの無線通信端末13は、ステップS201において送信予告信号の待ち受け(転送待ち受け)を行う。転送待ち受けには、発電回路9(
図3参照)の電力が用いられる。
無線通信端末17から送信予告信号を受信すると、ステップS202において無線通信端末13は、無線通信端末17に対して受信通知信号を送信する。これによって、無線通信端末13,17との間でコネクションが確立される。
【0038】
ちなみに、受信通知信号を送信する無線通信端末が複数存在する場合、その送信タイミングをずらすことによって、無線通信端末17における受信通知信号の衝突を防止することが好ましい。例えば、送信予告信号を受信してから受信通知信号を送信するまでの遅延時間として、受信した送信予告信号の信号強度に反比例した値を用いることができる。これによって、信号の受信状態が最も良い無線通信端末13からの受信通知信号が無線通信端末17に最初に届くことになる。
【0039】
なお、ステップS202の処理を行う際、無線通信端末13の制御部2(
図2参照)は、電力の供給源を発電回路9から電池8に切り替える。つまり、ステップS201の処理には発電回路9の電力が用いられ、ステップS202,S203,S204の処理には電池8の電力が用いられる。なお、電源の切り替えの詳細については後記する。
ステップS203において無線通信端末13は、データ信号の待ち受け(データ待ち受け)を実行する。
【0040】
無線通信端末13から受信通知信号を受信すると、ステップS103において無線通信端末17は、無線通信端末13に対してデータ信号を送信する。このデータ信号には、無線通信端末17の端末IDと、ランク(=2)と、電池残量と、センサ1の検出値と、が含まれる。データ信号を送信した後、ステップS104において無線通信端末17は、Ack信号の待ち受けを行う。
【0041】
無線通信端末17からデータ信号を受信すると、ステップS204において無線通信端末13は、無線通信端末17に対してAck信号を送信する。これによって、無線通信端末13の受信処理が完了する。また、ステップS204で送信されたAck信号を受信することで、無線通信端末17の送信処理が完了する。
【0042】
図7は、上り通信においてデータ信号の通信が完了しなかった場合のメッセージシーケンスである。下位ランクの無線通信端末17(
図5参照)は、データ信号を送信した後(S1031)、ステップS1041において無線通信端末13からのAck信号の待ち受けを行う。所定時間経過後もAck信号を受信しない場合、ステップS1032において無線通信端末17は、データ信号を再送する。
【0043】
このようにして無線通信端末17は、Ack信号を受信するまで所定の最大再送回数(例えば、3回)に達するまでデータ信号の再送を行う。最大再送回数以内にAck信号が得られなかった場合、無線通信端末17は通信失敗を記録して送信処理を停止する。当該通信で送り損ねたデータ信号は、次の信号送信時に併せて送信される。
【0044】
図8は、信号の中継処理を行う場合において、送信側・受信側の無線通信端末の電源状態を示す説明図である。
図8では、発電回路9(
図2参照)の電力で行われる処理を斜線で図示し、電池8(
図2参照)の電力で行われる処理を白抜きで図示した。なお、かっこ中に示すステップ番号は、
図6に対応している。
【0045】
送信側の無線通信端末17(
図5参照)は、送信予告信号の送信(S101)、受信通知信号の待ち受け(S102)、データ信号の送信(S103)、及びAck信号の待ち受け(S104)を行う際、電池8の電力を用いる。
一方、受信側の無線通信端末13(
図5参照)は、発電回路9の電力で転送信号の待ち受けを行う(S201:斜線部分)。このとき、受信回路6以外の各構成については電池8の電力で動作しており、制御部2をスリープ状態にして電池8の消耗を最低限に抑えている。
【0046】
送信側の無線通信端末17から送信予告信号(S101)を受信した後、無線通信端末13の制御部2(
図2参照)は、受信回路6も含めた各構成の電源を電池8に切り替える。そして、制御部2は、電池8の電力を用いて受信通知信号の送信(S202)、データ信号の待ち受け(S203)、及びAck信号の送信(S204)を行う。このように電池8の電力を用いることで、ステップS202〜S204の処理を確実に行うことができる。
【0047】
図9は、無線通信端末による送信処理の動作を示すフローチャートである。以下では、一例として、
図5に示す無線通信端末17から無線通信端末13を介してデータ信号を転送する場合について説明する。
ステップS301において無線通信端末17は、送信すべきデータが発生したか否かを判定する。送信すべきデータの発生には、定期的な信号送信時刻の到来や、他の無線通信端末からのデータ信号の受信が含まれる。
【0048】
送信すべきデータが発生していない場合(S301→No)、無線通信端末17はステップS301の処理を繰り返す。一方、送信すべきデータが発生した場合(S301→Yes)、ステップS302において無線通信端末17は、周囲の無線通信端末12,13,16,18(
図5参照)に送信予告信号をブロードキャストする。次に、ステップS303において無線通信端末17は、送信予告信号を送信してから所定時間内に受信通知信号を受信したか否かを判定する。
【0049】
受信通知信号を受信していない場合(S303→No)、ステップS304において無線通信端末17は、送信予告信号の再送回数が所定回数(最大再送回数)に達したか否かを判定する。送信予告信号の再送回数が所定回数に達した場合(S304→Yes)、ステップS310において無線通信端末17は送信処理を停止する。
一方、送信予告信号の再送回数が所定回数に達していない場合(S304→No)、無線通信端末17の処理はステップS305に進む。ステップS305において無線通信端末17は、再び送信予告信号をブロードキャストし、ステップS303の処理に戻る。
【0050】
ステップS303において受信通知信号を受信した場合(S303→Yes)、ステップS306において無線通信端末17は、受信通知信号に含まれる端末ID及びランクを参照して、無線通信端末13(
図5参照)にデータ信号を送信する。
なお、複数の無線通信端末から受信通知信号を受信した場合、無線通信端末17は、最初に受信した受信通知信号の送信元である無線通信端末13に対して、データ信号を送信することが好ましい。前記したように、信号の受信状態が最も良い無線通信端末13からの受信通知信号が、最も早いタイミングで無線通信端末17に届くからである。
【0051】
ステップS307において無線通信端末17は、データ信号を送信してから所定時間内に無線通信端末13からAck信号を受信したか否かを判定する。
Ack信号を受信していない場合(S307→No)、ステップS308において無線通信端末17は、データ信号の再送回数が所定回数(最大再送回数)に達したか否かを判定する。
【0052】
データ信号の再送回数が所定回数に達していない場合(S308→No)、無線通信端末17の処理はステップS309に進む。ステップS309において無線通信端末17は、無線通信端末13に対してデータ信号を再送し、ステップS307の処理に戻る。
一方、データ信号の再送回数が所定回数に達した場合(S308→Yes)、ステップS310において無線通信端末17は、送信処理を停止する。なお、今回送信できなかったデータは、次回の通信でまとめて送られる。
【0053】
また、ステップS307においてAck信号を受信した場合(S307→Yes)、無線通信端末17は送信処理を終了する(END)。前記したように、ステップS301〜S310までの一連の処理には、電池8の電力が用いられる(
図8参照)。
【0054】
(中継処理)
図10は、無線通信端末による中継処理の動作を示すフローチャートである。なお、「START」時において無線通信端末13は、待ち受けを行っていない待機状態とする。
ステップS401において無線通信端末13は、電力供給制御部9d(
図3参照)によって、発電素子9aの発電電力量(つまり、キャパシタ9cの蓄電量)が所定値以上であるか否かを判定する。前記した「所定値」は、転送の待ち受けを所定時間継続して行うことができるか否かの判定基準となる閾値であり、予め設定されている。
【0055】
発電素子9aの発電電力量が所定値未満である場合(S401→No)、無線通信端末13はステップS401の処理を繰り返す。つまり、無線通信端末13は、発電電力量が所定値に達するか、又は、送信すべきデータが発生するまで待機する。なお、送信すべきデータが発生した場合、無線通信端末13は、前記した送信処理(
図9参照)を実行する。
【0056】
発電素子9aの発電電力量が所定値以上である場合(S401→Yes)、ステップS402において無線通信端末13は、送信予告信号の待ち受け(転送待ち受け)を開始する。つまり、無線通信端末13は、発電回路9(
図3参照)からの電力によって受信回路6を動作させ、他の無線通信端末からの送信予告信号の待ち受けを行う。
【0057】
ステップS403において無線通信端末13は、制御部2(
図3参照)によって、下位ランクの無線通信端末から送信予告信号を受信したか否かを判定する。送信予告信号を受信していない場合(S403→No)、無線通信端末13の処理はステップS401に戻る。一方、送信予告信号を受信した場合(S403→Yes)、ステップS404において無線通信端末13は、電力供給制御部9d(
図3参照)によって、受信回路6の電源を発電素子9aから電池8に切り替える。
【0058】
ステップS405において無線通信端末13は、送信予告信号の送信元である無線通信端末17に対して受信通知信号を送信する。
ステップS406において無線通信端末13は、無線通信端末17からデータ信号を受信したか否かを判定する。データ信号を受信した場合(S406→Yes)、ステップS407において無線通信端末13は、無線通信端末17に対してAck信号を送信する。
【0059】
次に、ステップS408において無線通信端末13は、データ信号を転送(中継)する。すなわち、無線通信端末13は、無線通信端末17から受信したデータ信号に自身の端末ID等を付加した上で、このデータ信号を基地局20(
図1参照)に送信する。これによって、データ信号がどのような経路で到達したかをサーバ30側で把握できる。なお、ステップS408の処理内容は、
図9で説明した送信処理と同様である。
【0060】
一方、ステップS406においてデータ信号を受信していない場合(S406→No)、ステップS409において無線通信端末13は、受信通知信号を送信してから所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過していない場合(S409→No)、無線通信端末13の処理はステップS406に戻る。一方、所定時間が経過した場合(S409→Yes)、ステップS410において無線通信端末13は、データ信号の待ち受けを停止する。
【0061】
ステップS411において無線通信端末13は、受信回路6(
図3参照)の電源を電池8から発電素子9aに切り替える。次に、無線通信端末13の処理はSTARTに戻り(RETURN)、発電回路9において転送待ち受けに充分な電力が得られるまで待機する。
【0062】
(端末管理テーブルについて)
図11は、無線通信端末を管理するための端末管理テーブルの説明図である。
サーバ30(
図1参照)は、自身に送信されたデータ信号を用いて端末管理テーブルTを作成する。端末管理テーブルTには、送信元である無線通信端末の端末ID・ランク・位置ブロックと、過去に受信した信号の伝達ルートと、データ周期と、前回のデータ受信時刻と、電池残量と、を含む情報が記録される。
サーバ30は、例えば、電池8(
図2参照)の電圧値に基づいて、無線通信端末の電池残量を推定する。なお、無線通信端末の合計起動時間、又は信号送受信の合計回数に基づいて電池残量を推定するようにしてもよい。
【0063】
図11に示す端末管理テーブルTのうち端末ID、ランク、過去の伝達ルート、及び電池残量は、無線通信端末から送信されるデータ信号に含まれている。また、データ周期(例えば、300sec)は、予め設定されている。サーバ30は、端末管理テーブルTのうち「データ周期」及び「前回のデータ受信時刻」に基づいて、無線通信端末11〜19からの定期的なデータ通信が途切れていないかを監視する。
【0064】
また、サーバ30は、過去に受信した信号の伝達ルートに基づいて、無線通信端末11〜19の位置を推定し、位置ブロックとして記録する。
図12は、それぞれの無線通信端末の位置ブロックを示す説明図である。
図12に示す例では、無線通信端末11,14,15を位置ブロックAとして分類し、無線通信端末12,15,16,17を位置ブロックBとして分類し、無線通信端末13,17,18,19を位置ブロックCとして分類している。
図12に示すように、その設置位置によって、1個の無線通信端末が複数の位置ブロックに重複して登録されることもある。また、ランク1の無線通信端末1個当たりに1つの位置ブロックが割り当てるとは限らない。
【0065】
(サーバからのコマンド指示)
図13は、サーバから無線端末装置にコマンド指示信号を送信する処理のメッセージシーケンスである。以下では、
図12に示すサーバ30から無線通信端末13(上位ランクの端末)を介して、無線通信端末17(下位ランクの端末)にコマンド指示を送る場合について説明する。
ステップS501においてサーバ30は、基地局20に対してコマンド指示信号を送信する。コマンド指示信号には、コマンド指示の内容(例えば、データ周期の変更)に加えて、指示対象となる無線通信端末13の端末ID及び位置ブロックも含まれる。
【0066】
基地局20は、無線通信端末17が所属する位置ブロックのうち、無線通信端末17よりもランクが1つ上の無線通信端末13から送信予告信号を受信すると(S502)、受信通知信号にコマンド指示信号の内容を含めて無線通信端末13に送信する(S503)。ちなみに、ステップS502の処理は、上位ランクの無線通信端末13自身が取得したデータ(センサ1の検出値を含む:
図2参照)を基地局20に送信するために、電池8の電力を用いて定期的に実行される。
基地局20は、上位ランクの無線通信端末13からデータ信号を受信した後(S504)、この無線通信端末13にAck信号を送信する(S505)。
【0067】
次に、上位ランクである無線通信端末13は、下位ランクである無線通信端末17から送信予告信号を受信すると(S506)、受信通知信号にコマンド指示信号の内容を含めて無線通信端末17に送信する(S507)。
無線通信端末17は、自身が受信した信号の中からコマンド指示を読み取り、これに対するコマンド指示Ackを含めたデータ信号を無線通信端末13に送信する(S508)。これに対して、無線通信端末13から無線通信端末17にAck信号が送信される(S509)。
【0068】
前記したコマンド指示Ackを含むデータ信号は、通常のデータ信号のやり取りと同様の手順で基地局20まで転送される(S510〜S513)。基地局20は、指示Ack信号を含むデータ信号を無線通信端末13から受信した場合(S512)、この無線通信端末13にAck信号を送信するとともに(S513)、サーバ30に指示Ack信号を送信する(S514)。
【0069】
なお、無線通信端末17から指示Ack信号を含むデータ信号を受け取った無線通信端末13は(S508)、それ以後のブロードキャストを停止し、自身のメモリ3(
図2参照)に格納されたコマンド指示信号を消去する。コマンド指示信号の中継に使われた他の無線通信端末は、自身よりも下位の無線通信端末に下り信号を一定期間ブロードキャストした後、この信号を消去してブロードキャストを停止する。
【0070】
<効果>
本実施形態では、無線通信端末11〜19のうち発電素子9aの発電電力量(キャパシタ9cの蓄電量)が所定値以上である無線通信端末のみを用いて信号の中継を行うようにした。このように発電回路9からの電力で受信回路6が転送待ち受けを行うことで、中継処理を行う際の電池8の消耗を抑制できる。
また、本実施形態では、発電電力量が所定値未満である無線通信端末は転送待ち受けを行わない。このように中継を行う際の転送待ち受けに電池8の電力を使う必要がないため、発電電力量の小さい無線通信端末の電力消費を抑制できる。
【0071】
仮に、発電素子9aの発電電力量が充分でない無線通信端末も電池8の電力で中継を行うこととした場合、設置環境や中継の有無によって、特定の無線通信端末で電池8の残量が急速に減っていく可能性がある。例えば、日当たりの悪い位置に設置され、かつ、頻繁に中継を行う無線通信端末は、他の無線通信端末よりも電池8の残量が急速に減っていく。その結果、無線通信端末間で電池8の消費電力量に大きな差が生じ、電池8の交換時期にばらつきが生じてしまう。
【0072】
これに対して本実施形態では、発電回路9の電力で転送待ち受け可能な無線通信端末のみを用いて中継を行う(そうでないものは、中継を行わない)。したがって、無線通信端末間において電池8の消費電力量の差が小さくなり、電池8の残量を均一化することができる。その結果、電池8の交換時期のばらつきが小さくなり、各無線通信端末11〜19に関して電池8の交換作業を一括して行うことが可能になる。したがって、電池8の交換作業に必要なコストを低減できるとともに、交換作業を短期間で済ませることができる。
【0073】
また、無線通信端末11〜19は、発電回路9の電力で転送待ち受けを行った後、受信通知信号の送信、データ信号の待ち受け、及びAck信号の送信を電池8の電力で行う。これによって、信号の中継処理を中断することなく確実に実行できる。
【0074】
≪第2実施形態≫
第2実施形態は、他の無線通信端末から受信した複数のデータ信号をまとめて転送する点が第1実施形態と異なるが、各無線通信端末11〜19の構成(
図2、
図3参照)については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態と異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
以下では、一例として、
図1に示す無線通信端末13によって信号を中継する場合について説明する。
【0075】
図14、
図15は、無線通信端末による中継処理の動作を示すフローチャートである。なお、
図14のステップS401〜S404、
図15のステップS405〜S407,S409〜S411の処理は、第1実施形態で説明した中継処理(
図10参照)と同様である。
【0076】
図15のステップS406でデータ信号を受信した場合(S406→Yes)、無線通信端末13はAck信号を送信した後(S407)、ステップS601においてデータ数が所定値に達したか否かを判定する。前記したデータ数は、下位ランクの無線通信端末から受信して一時的にメモリ3(
図2参照)に格納しておくデータ数の上限値である。つまり、無線通信端末13は、下位ランクの無線通信端末から受信したデータ信号をすぐに転送することなく、データ数が所定値(例えば、3つ)に達するまでメモリ3に記憶しておく。
【0077】
データ数が所定値に達していない場合(S601→No)、無線通信端末13の処理は
図14のステップS401に戻る。一方、データ数が所定値に達した場合(S601→Yes)、無線通信端末13の処理はステップS602に進む。
ステップS602において無線通信端末13は、データ信号の送信時刻になったか否かを判定する。この送信時刻の周期(例えば、300sec:
図11参照)は予め設定されている。データ信号の送信時刻になっていない場合(S602→No)、無線通信端末13はステップS602の処理を繰り返す。一方、データ信号の送信時刻になった場合(S602→Yes)、無線通信端末13の処理はステップS603に進む。
【0078】
ステップS603において無線通信端末13は、メモリ3(
図2参照)に格納されたデータを読み出し、上位ランクの無線通信端末に転送すべきデータと、自身のデータ(端末ID、ランク、電池残量、センサ1の検出値等)と、を合わせた合同データを生成する。
ステップS604において無線通信端末13は、ステップS603で生成した合同データの信号を基地局20に送信(転送)する。
【0079】
<効果>
本実施形態によれば、他の無線通信端末からの信号をその都度転送する場合と比較して、データ信号の送信(中継)回数を減らすことができる。したがって、第1実施形態よりもさらに電池8の消費電力を削減できる。
【0080】
≪第3実施形態≫
第3実施形態は、無線通信端末の周囲に中継可能な他の無線通信端末が存在しない場合、サーバ30が指定した無線通信端末を用いて中継を行う点が第1実施形態と異なるが、その他の点については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態と異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0081】
<サーバの動作>
図16は、サーバの動作を示すフローチャートである。
ステップS701においてサーバ30は、定期的なデータ通信(定時データ通信)が途絶えている無線通信端末が存在するか否かを判定する。つまり、サーバ30は、端末管理テーブルT(
図11参照)を参照し、データ周期と、前回のデータ受信時刻と、に基づいて、データ周期(所定期間)ごとにデータ通信が行われているか否かを各無線通信端末について判定する。
【0082】
定時データ通信が途絶えている無線通信端末が存在しない場合(S701→No)、サーバ30は処理を終了する(END)。一方、定時データ通信が途絶えている無線通信端末が存在する場合(S701→Yes)、サーバ30の処理はステップS702に進む。
以下では、
図12に示す無線通信端末17(ランク2、位置ブロックC)で定時データ通信が途絶えているものとして説明する。
【0083】
ステップS702においてサーバ30は、ステップS701で特定した無線通信端末17の周囲に位置する同ランクの無線通信端末について、データ信号が途絶えているか否かを判定する。つまり、サーバ30は、端末管理テーブルT(
図11参照)を参照し、無線通信端末17と同じ位置ブロックCに属し、かつ、無線通信端末17と同ランクである無線通信端末18,19(
図12参照)について、データ信号が途絶えていないか否かを判定する。
【0084】
無線通信端末17の周囲に位置する同ランクの無線通信端末18,19について、データ信号が途絶えているものが存在する場合(S702→Yes)、サーバ30の処理はステップS703に進む。この場合、上位ランクの無線通信端末が中継を行っていない可能性が高い。
ステップS703においてサーバ30は、無線通信端末17よりも1つ上のランクの無線通信端末11〜13の中から、信号未達の端末群をカバーできる無線通信端末を抽出する。つまり、サーバ30は、信号未達の無線通信端末よりも基地局20へのホップ数が少なく、かつ、信号未達の無線通信端末を介して過去に信号を中継したことのある無線通信端末(当番端末の候補)を抽出する。当該処理は、端末管理テーブルT(
図11参照)のランクと、過去の伝達ルートと、を参照することで行われる。
【0085】
ステップS704においてサーバ30は、ステップS703で抽出した候補の中から当番端末を決定する。ここで「当番端末」とは、それまで中継(待ち受け)を行っていなかった無線通信端末のうち、電池8(
図1参照)の電力で一時的に中継を行うよう指示される無線通信端末である。
サーバ30は、例えば、ステップS703で抽出した候補の中で、電池残量が最大であるものを当番端末にする。つまり、サーバ30は、端末管理テーブルT(
図11参照)を参照して電池残量を比較し、電池残量が最大であるものを当番端末として指定する。なお、上位側から階層的に複数の無線通信端末を当番端末に指定してもよい。
【0086】
ステップS705においてサーバ30は、ステップS704で決定した当番端末(例えば、無線通信端末13:
図12参照)に対して、電池8の電力で転送の待ち受けを行う旨のコマンド指示信号を送信する。
前記したコマンド指示信号は、
図13で説明した手順で送信される。つまり、それまで中継を行っていなかった無線通信端末13が電池8の電力でデータ送信を行った際、基地局20からの受信通知信号にコマンド信号(当番端末の指定)を含めるようにする。
なお、当番端末を指定した後もデータ信号の到達状況が改善しない場合、サーバ30によって、別の無線通信端末を当番端末に指定することが好ましい。
【0087】
一方、ステップS702において、無線通信端末17の周囲に位置する同ランクの無線通信端末18,19の中で、データ信号が途絶えているものが存在しない場合(S702→No)、サーバ30の処理はステップS706に進む。
ステップS706においてサーバ30は、ステップS701で特定した無線通信端末17の接続先が、1つ上のランクである他の無線通信端末を介した伝達ルートに含まれているか否かを判定する。前記した「接続先」とは、無線通信端末17と過去にデータのやり取りがあった他の無線通信端末を意味している。
【0088】
無線通信端末17の接続先が、1つ上のランクである他の無線通信端末を介した伝達ルートに含まれている場合(S706→Yes)、サーバ30の処理はステップS707に進む。ステップS707においてサーバ30は、ステップS706で特定した伝達ルート(例えば、無線通信端末18→無線通信端末13→基地局20)が、無線通信端末17のデータ途絶後も使用されているか否かを判定する。
【0089】
ステップS706で特定した伝達ルートが、無線通信端末17のデータ途絶後も使用されている場合(S707→Yes)、サーバ30の処理はステップS708に進む。この場合、上位ランクの無線通信端末13は正常であるため、信号未達の無線通信端末17自体に異常がある可能性が高い。ステップS708においてサーバ30は、無線通信端末17が故障しているかをチェックすべき旨の情報を、管理者のコンピュータ(図示せず)に送信する。
【0090】
一方、無線通信端末17の接続先が、他の無線通信端末を介した伝達ルートに含まれていない場合(S706→No)、サーバ30の処理はステップS709に進む。この場合、上位の無線通信端末13が中継を行っていない可能性が高い。
ステップS709においてサーバ30は、無線通信端末17の接続先である上位ランクの無線通信端末13に中継の開始を指示する。この場合、上位ランクの無線通信端末13は、前記した「当番端末」と同様に電池8の電力で中継(転送の受信待ち受け)を行う。
また、ステップS706で特定した伝達ルートが、無線通信端末17のデータ途絶後に使用されていない場合も(S707→No)、サーバ30はステップS709の処理を実行する。
【0091】
<当番端末の動作>
図17は、当番端末となる無線通信端末の動作を示すフローチャートである。以下では、無線通信端末13(
図12参照)が当番端末に指定されるものとして説明する。
ステップS801において無線通信端末13は、自身が当番端末に指定されたか否かを判定する。すなわち、無線通信端末13は、定期的なデータ通信を行う際の受信通知信号(S503:
図13参照)に、無線通信端末13を当番端末として動作させる旨のコマンド指示が含まれるか否かを判定する。
前記した受信通知信号は、無線通信端末13自身が取得したデータ(センサ1の検出値を含む:
図2参照)を送信するために電池8の電力を用いて定期的な送信予告信号を送信した際(S502:
図13参照)、基地局20から返信される信号である。
【0092】
当番端末に指定されていない場合(S801→No)、無線通信端末13はステップS801の処理を繰り返す。一方、当番端末に指定された場合(S801→Yes)、無線通信端末13の処理はステップS802に進む。
ステップS802において無線通信端末13は、受信回路6の電源を発電素子9a(
図3参照)から電池8に切り替える。
ステップS803において無線通信端末13は、受信回路6によって、送信予告信号の待ち受け(転送待ち受け)を開始する。
【0093】
ステップS804において無線通信端末13は、他の無線通信端末から送信予告信号を受信したか否かを判定する。送信予告信号を受信していない場合(S804→No)、無線通信端末13の処理はステップS805に進む。
ステップS805において無線通信端末13は、自身が当番端末として指定されてから所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過していない場合(S805→No)、無線通信端末13の処理はステップS804に戻る。一方、所定時間が経過した場合(S805→Yes)、無線通信端末13の処理はステップS808に進む。
【0094】
一方、ステップS804において送信予告信号を受信した場合(S804→Yes)、ステップS405において無線通信端末13は、下位ランクの無線通信端末に受信通知信号を送信する。
なお、送信予告信号を受信してから受信通知信号を送信するまでの遅延時間を、通常の中継処理時よりも長くする(つまり、時間稼ぎをする)ことが好ましい。発電素子9aの電力で自発的に中継を開始した他の無線通信端末が無線通信端末13の近くに存在する可能性があるからである。他の無線通信端末からの受信通知信号が、下位ランクの無線通信端末に先に届けば、無線通信端末13自身が中継を行う必要がなくなり、電池8の消耗を抑制できる。
【0095】
受信通知信号を送信した後(S405)、データ信号を受信しないまま(S406→No)、所定時間が経過した場合(S806→Yes)、無線通信端末13の処理はステップS808に進む。
ステップS808において無線通信端末13は、当番端末としての動作を終了する旨をサーバ30に通知する。これによって、転送の受信待ちを無用に長時間行うことを回避し、電池8の消耗を抑制できる。
ステップS809において無線通信端末13は、受信回路6の電源を電池8から発電素子9aに切り替える。つまり、無線通信端末13は、当番端末としての役割を終了して待機する。
【0096】
図17に示すステップS405〜S408の処理については、第1実施形態で説明した中継処理(
図10参照)と同様であるから説明を省略する。無線通信端末13が当番端末として中継を行うことで、それまで信号未達であった無線通信端末17等のデータ信号が基地局20を介してサーバ30に送信される。
【0097】
ステップS810において無線通信端末13は、発電素子9aの発電電力量が所定値以上であるか否かを判定する。前記した「所定値」は、転送の待ち受けを所定時間継続して行うことができるか否かの判定基準となる閾値である。
発電電力量が所定値未満である場合(S810→No)、無線通信端末13の処理はステップS804に戻る。一方、発電電力量が所定値以上である場合(S810→Yes)、無線通信端末13の処理はステップS811に進む。
【0098】
ステップS811において無線通信端末13は、受信回路6の電源を電池8から発電素子9aに切り替える。この場合、無線通信端末13は、発電素子9aの発電電力を用いて中継処理(
図10参照)を実行する。
【0099】
<効果>
本実施形態によれば、無線通信端末17の周囲に中継可能な無線通信端末が存在しない場合、サーバ30によって指定された無線通信端末13(当番端末)が、電池8の電力を用いて中継を行う。このように、それまで中継を行っていなかった(発電素子9aの発電電力量が充分でない)無線通信端末13を用いて一時的に中継を行うことで、各無線通信端末からのデータ信号を定期的に取得できる。
【0100】
また、サーバ30は、当番端末の候補となる無線通信端末が複数存在する場合、電池残量が最大であるものを当番端末に指定する。これによって、無線通信端末11〜19の電池残量の均一化が促される。
また、サーバ30は、過去の伝達ルートを調べることで、定時データ通信が途絶えている無線通信端末17について故障している可能性が高いか否かを判定する。これによって、無線通信システムSの管理者は、修理又は交換すべき無線通信端末を容易に把握できる。
【0101】
≪第4実施形態≫
第4実施形態は、中継に関わる動作を全て発電回路9の電力で行う点が第1実施形態と異なるが、その他の点については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態と異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
なお、図示は省略するが、本実施形態において無線通信端末11〜19の発電回路9(
図2参照)は受信回路6に接続されるとともに、送信回路4にも接続されている。つまり、制御部2からの指令に応じて、発電回路9から送信回路4にも電力供給できるようになっている。
【0102】
図18は、無線通信端末による中継処理の動作を示すフローチャートである。
図18に示すフローチャートでは、前記した中継処理のフローチャート(
図10参照)からステップS404,S411の処理(受信回路6の電源切替)を省略し、中継処理に用いる電源を全て発電回路9としている。以下では、一例として、無線通信端末13(
図12参照)によって中継処理を行う場合について説明する。
【0103】
ステップS401において発電素子9aの発電電力量が所定値以上である場合(S401→Yes)、ステップS402aにおいて無線通信端末13は、発電回路9からの電力で転送待ち受けを開始する。なお、転送待ち受けを行う間、電池8の電力は受信回路6に供給されない。
また、ステップS403において送信予告信号を受信した場合(S403→Yes)、ステップS405aにおいて無線通信端末13は、発電回路9からの電力で受信通知信号を送信する。
【0104】
また、ステップS406においてデータ信号を受信した場合(S406→Yes)、無線通信端末13は、発電回路9からの電力でAck信号を送信し(S407a)、さらに発電回路9からの電力でデータ信号を転送する(S408a)。データ信号を転送した後、無線通信端末13の処理はSTARTに戻り(RETURN)、中継処理に必要な電力を発電回路9から得られるまで待機する。
なお、待機中に送信すべきデータが発生した場合、無線通信端末13は待機を中止し、電池8の電力でデータ信号を送信する。
【0105】
<効果>
本実施形態によれば、中継処理を行う際の転送待ち受けだけでなく、その後に行う受信通知信号の送信、Ack信号の送信、及びデータ信号の転送も、発電回路9の電力で行う。このように一連の中継処理に発電回路9の電力を用いるため、第1実施形態よりもさらに電池8の消費電力を削減できる。
【0106】
≪変形例≫
以上、本発明に係る無線通信システムSについて各実施形態により説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、各実施形態では、発電素子9aが太陽電池である場合について説明したが、これに限らない。すなわち、発電素子9aとして、振動(圧力の変化)に伴うエネルギを電気エネルギに変換する振動発電素子を用いてもよい。振動発電素子は、例えば、圧電素子を敷き詰めてなる板状を呈しており、モータ等の機器に設置される。
【0107】
また、発電素子9aとして、デバイスの温度差から電力を得る熱電素子を用いてもよい。熱電素子は、2種類の金属(又は、p型半導体とn型半導体)を接合することで構成され、温度差に伴って起電力を生じる(ゼーベック効果)。熱電素子は、例えば、発熱体であるサーバに設置されたり、高温水が流れる配管に設置されたりする。
また、前記した太陽電池、振動発電素子、熱電素子のうち2種類又は3種類を組み合わせる(並列接続する)ことで発電素子9aを構成してもよい。
【0108】
また、各実施形態では、センサ1(
図2参照)の検出値に基づいて機器の稼働状況を管理するセンサネットシステムとして無線通信システムSを用いる場合について説明したが、これに限らない。例えば、機器の消費電力を測定して、その出力を制御するエネルギマネジメントシステムとして無線通信システムSを用いてもよい。エネルギマネジメントシステムの例として、複数の空気調和機の消費電力を測定し、その測定結果に応じて設定温度等を変更することが考えられる。
【0109】
また、第3実施形態では、ランク2の無線通信端末17(
図12参照)からのデータ信号がサーバ30に届かない場合について説明したが、これに限らない。すなわち、ランク3以上の無線通信端末についても、過去の伝達ルートを調べることで信号未達の端末群をカバーできる上位ランクの無線通信端末(当番端末の候補:S703)を1つ又は複数抽出できる。
【0110】
また、例えば、第3実施形態と第4実施形態を組み合わせてもよい。すなわち、信号未達の無線通信端末が存在する場合(S702:
図16参照)、信号未達の無線通信端末とは別の無線通信端末を当番端末に指定し(S704:
図16参照)、この当番端末によって電池8の電力で中継処理を行ってもよい。なお、発電素子9aの発電電力量が所定値以上になった場合(S810→Yes:
図17参照)、それまで当番端末だった無線通信端末は、発電素子9aの発電電力を用いて一連の中継処理を行う(
図18参照)。
【0111】
また、
図2、
図3に示す各構成は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、前記の各構成は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テープ、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0112】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。