(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138041
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】フィルターからろ過残渣を除去する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/021 20060101AFI20170522BHJP
B01D 46/42 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
F01N3/021
B01D46/42 C
【請求項の数】21
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-514336(P2013-514336)
(86)(22)【出願日】2011年6月8日
(65)【公表番号】特表2013-533414(P2013-533414A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】US2011039609
(87)【国際公開番号】WO2011156477
(87)【国際公開日】20111215
【審査請求日】2014年6月4日
(31)【優先権主張番号】61/352,908
(32)【優先日】2010年6月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512315670
【氏名又は名称】フィルター・センシング・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FILTER SENSING TECHNOLOGIES,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・サポック
(72)【発明者】
【氏名】レスリー・ブロムバーグ
【審査官】
山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】
特表2000−508964(JP,A)
【文献】
特開2006−281132(JP,A)
【文献】
特開平02−146212(JP,A)
【文献】
特開平05−133216(JP,A)
【文献】
特開2003−003826(JP,A)
【文献】
特開平08−028247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38
B01D 46/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルター浄化システムであって、
ろ過残渣を含むフィルター要素と、
前記フィルター要素に機械的に連結され、前記ろ過残渣を砕くための振動要素と、
前記フィルター要素内の砕かれたろ過残渣を収集するためのろ過残渣収集システムと、
前記振動要素を前記フィルター要素の複数の位置の任意の位置に連結し得るように前記振動要素の前記フィルター要素への機械的連結の位置を調節する手段と、
を含むフィルター浄化システム。
【請求項2】
前記振動要素に連結したコントローラーにして、前記振動要素を第1周波数で振動させて前記ろ過残渣を砕くためのコントローラーを更に含む請求項1に記載のフィルター浄化システム。
【請求項3】
前記振動要素が、モーター、磁歪素子、圧電素子、空気圧素子、超音波素子、音響素子、からなる群から選択される請求項1に記載のフィルター浄化システム。
【請求項4】
前記振動要素が、少なくとも2つの周波数で振動する形態を有する請求項1に記載のフィルター浄化システム。
【請求項5】
前記コントローラーが、前記振動要素を第2周波数で振動させて前記砕かれたろ過残渣をフィルター要素から移動させる請求項2に記載のフィルター浄化システム。
【請求項6】
前記フィルター要素内のろ過残渣量に関する情報を提供するプローブを更に含む請求項1に記載のフィルター浄化システム。
【請求項7】
前記コントローラーに連結されたプローブを更に含み、前記プローブからの出力に基づき、前記コントローラーが第1周波数を第2周波数に移行させる請求項5に記載のフィルター浄化システム。
【請求項8】
フィルターからのろ過残渣浄化方法であって、
フィルター要素を強制振動させてフィルターからろ過残渣を脱離させるステップと、
前記フィルター要素における前記強制振動させる位置を、前記フィルター要素への振動要素の連結位置を調整することにより変更させるステップと、
脱離したろ過残渣をろ過残渣収集システム内に収集するステップと、
を含む方法。
【請求項9】
前記フィルター要素を強制振動させてフィルターからろ過残渣を脱離させるステップが、第1周波数及び第1振動出力を第1時間長において印加してろ過残渣を砕くステップを更に含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記フィルター要素を強制振動させてフィルターからろ過残渣を脱離させるステップが、前記第1時間長の後、第2周波数及び第2振動出力を第2時間長において印加するステップを更に含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第1周波数が前記第2周波数未満である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1周波数が60Hz未満であり、前記第2周波数が100Hzより大きい請求項10に記載の方法。
【請求項13】
第1振動出力が前記第2振動出力未満である請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記フィルター要素を強制振動させてフィルターからろ過残渣を脱離させるステップが、所定時間経過後に、または所定量のろ過残渣がフィルター要素から除去された後に停止される請求項8に記載の方法。
【請求項15】
印加される強制振動を変更させるために、ろ過残渣の測定水準を使用する請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記フィルター要素を通して流動する流体を更に含み、前記流体により前記フィルター要素から前記ろ過残渣が除去される請求項1に記載のフィルター浄化システム。
【請求項17】
前記流体が液体である請求項16に記載のフィルター浄化システム。
【請求項18】
前記流体がガスである請求項16に記載のフィルター浄化システム。
【請求項19】
前記強制振動により脱離させたろ過残渣を流体を使用して除去させるステップを更に含む請求項8に記載の方法。
【請求項20】
前記流体が液体である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記流体がガスである請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ここでの参照により本明細書の一部とするところの、2010年6月9日付で提出された米国仮出願第61/352,908号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの用途において、フィルターを有効且つ効率的に浄化する必要がある。詳しくは、高価なフィルターを浄化し、再利用可能な状態に再生する必要がある。加えて、フィルターの多くは従来手段による浄化が困難である。一般的なフィルター浄化法では、ろ過残渣を強制エアで吹き落とす。強制エア法によるフィルター浄化には数多くの不利益がある。
【0003】
先ず、強制エア法及びシステムは健康及び環境上有害な空中浮遊粒子やダストを発生する。強制エア法式浄化システムの多くでは大型で且つ費用の嵩む二次的なダスト収集及びろ過システムが必要となる。
【0004】
第2に、強制エアはフィルターからろ過残渣を常に有効除去する訳ではない。詳しくは、小孔、チャネル、プリーツあるいはその他を有するフィルター、または、ろ過残渣が焼結、固着あるいはそうでなければ当該ろ過残渣自身またはフィルター表面に接着したフィルターは強制エア法では有効に浄化し得ない。
【0005】
第3に、強制エア法は、エアフローが僅か乃至全く生じないフィルターエリアのろ過残渣除去には有効ではない。
最後に、有効浄化されないフィルターは使用寿命が短くなり、それら浄化不良フィルターを用いるシステムの効率を低下させ得る。
【0006】
フィルターには多くのタイプがあり、特にディーゼル粒子フィルターは強制エア法による浄化が非常に困難である。ディーゼル粒子フィルターは内燃機関を含む広範な発生源からのすす排出を低減させるために用いられる。ディーゼル粒子フィルターには多くのタイプがあるが、セラミックハニカムタイプの壁流れフィルターが最も一般的である。これらのフィルターは、キン青石、シリコンカーバイド、ムライト、アルミニュームチタネート、あるいは任意のその他の好適材料であり得る。壁流れフィルターは、一般に数千のチャネルを含み、そのチャネル壁は多孔質材料から構成される。各チャネルの端部はフィルターの対向する各端部位置で交互に閉塞され得る(チェッカーボードパターン)。フィルターの入口チャネルの開放端に入る粒子含有排気は多孔質のフィルター壁を押し流され、隣り合う出口チャネルに入る。排気中のすす粒子は壁の孔あるいはチャネル面に沿ったケーキ層に捕捉される。
【0007】
セラミック壁流れフィルターに加え、メタルフォーム、焼結メタル、ファイバーベースの各フィルター(セラミック、ガラス、紙、及びその他)を含むその他多数のディーゼル粒子フィルターが存在する。これらのフィルターはその他形態、中でも、プリーツ、チャネル、あるいは多孔質マトリクス、を含み得る。
【0008】
ディーゼル粒子フィルターは、エンジンから排出されるすすを99%以上捕捉する上で有効な場合がある。捕捉したすすはフィルターを再生することで定期的または連続的に除去される。当該再生プロセスによりすすが酸化されるが、不燃性の灰が残留する。
【0009】
不燃性の灰は時間経過と共にフィルター壁に沿って層状に、またはフィルターの各チャネルの後方にプラグ状に堆積する。灰は一般に、種々の硫酸塩、ホスフェート、酸化物を形成するMg、Ca、Zn等の、潤滑油添加材由来の金属成分から構成される。燃料中の微量金属(Na、K、Ca及びその他の、例えばバイオ燃料中に見られる元素)やエンジン摩耗メタル及び腐食粒子もそれらの堆積に寄与し得る。燃料由来の、例えばCe、Fe、Ptその他等の添加物でフィルターを再生する場合、これらの元素もまた、ディーゼル粒子フィルターにおける灰の堆積に大きく寄与する。
【0010】
堆積灰は排気流れを制限し、排気の背圧を増大させ、エンジンの燃料消費量に悪影響を及ぼす。灰はフィルターのすす収容量を減少させる。極端な場合、フィルターの詰まりによって排気背圧が過大化し、エンジン、排気、あるいは装置系の故障を来す。堆積灰によるフィルター及びシステム(エンジン、車両等)性能上の悪影響を軽減させる1方法はフィルターを浄化、即ち、灰を除去することである。
【0011】
ディーゼル粒子フィルター浄化に用いる一般的なシステム及び方法には、強制エアを使用する前後方向吹き出し法が含まれる。更には、フィルターはすすを酸化及び除去するために加熱(一般に650℃まで)もされ得る。フィルターの加熱はすすの除去に有効ではあるが、当該加熱温度における灰の除去効率は比較的低い。
【0012】
ディーゼル粒子フィルターを浄化しにくい理由の1つは、フィルター内部の灰の蓄積状態のみならずその組成にある。新しいフィルターを使用すると、灰は先ずフィルター壁に沿って薄層状に蓄積する。この薄層または薄膜はフィルター孔内へのすすの蓄積を防ぐ(深層濾過)ので、フィルターにすすも負荷された場合のフィルターの圧力損失を実際に低減させ得る。一般に、灰の比負荷が15g/L未満であると、50μオーダーの灰層となる有益な灰膜が形成されるが、圧力損失に関わる有益性を実現し得る灰層はもっと薄く且つ比負荷がもっと小さいものである。しかしながらそれらの値は灰の組成及び特性によって相違し得る。
【0013】
フィルターにおける灰蓄積量が増大するに従い、前記圧力損失はその初期の有益性を失う程に増大され得、すすが所定水準充填されると、すすと灰を含む粒子フィルターの横断圧力損失は、同一量においてすすを含むが灰は含まないフィルターの横断圧力損失よりも大きくなる。灰の比負荷水準が25乃至30g/L以上であるとフィルターの圧力損失は著しく増大し、すす充填容量が減少するのみならず、再生回数が増大され得る。
【0014】
灰の比負荷水準がそのように高いと、灰の大半(75%あるいはそれ以上)がフィルター後方に充填され、かくしてフィルターチャネル内に灰プラグを形成し得る。フィルターを路上で約240,000km(150,000マイル)に渡り使用すると、ディーゼル粒子フィルターチャネル長さの50%が灰で完全に詰まる場合もあり得る。チャネル端部に堆積した灰プラグは更に、相互にまたはフィルター表面上で充填、焼結、あるいは融合し得る。端部に蓄積した灰プラグはフィルターの灰詰まり部分の排気通過流れを完全に閉塞するため、フィルター壁に沿って薄層状に蓄積した多孔性の灰におけるそれよりもフィルターの圧力損失に一般に大きく寄与する。
【0015】
ディーゼル粒子フィルター内の灰分布を考慮すると、詰まった灰全部を除去し、しかしチャネル壁に沿って灰の薄層を若干残して浄化するのが理想的である。端部に詰まった灰を除去するとすす堆積用に入手可能なエリアが著しく増大され、かくして圧力損失が低減される。フィルター壁に沿って灰の薄層を残すことで、有益な効果であるすすの深層濾過が防止されないことからその有益な効果が保持され、また、ある程度の圧力損失が提供される。
【0016】
従来の強制エアシステムの効果は上記理想的浄化方法のそれとは真逆のものである。従来システム及び方法は、チャネル壁に沿った(ディーゼル粒子フィルターにおける最大流量部分)灰層の大半を除去するものであるが、流れが全く無い、あるいは無視し得る程度であるフィルター部分における灰(灰の大半)を除去するには非効率的である。
従って、フィルター、詳しくは、ディーゼル粒子フィルターと共に使用する改良された浄化システム及び方法に対する需要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国仮出願第61/352,908号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
フィルター、詳しくは、ディーゼル粒子フィルターと共に使用する改良された浄化システム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、灰のプラグ状詰まり部分を除去するフィルター浄化システム及び方法が提供される。フィルターが振動され、当該振動により、捕捉され且つ充填されたろ過残渣が砕かれてフィルターから分離する。分離したろ過残渣は収集ビンに捕捉される。浄化システムは自動車内部等の用途対象に一体化され得る。別の実施例では浄化システムは別個の浄化ステーションであり、フィルターはその用途対象から取り外され、浄化され、次いで再度組み込まれる。
【発明の効果】
【0020】
フィルター、詳しくは、ディーゼル粒子フィルターと共に使用する改良された浄化システム及び方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、フィルター浄化システムの1実施例の例示図である。
【
図2】
図2は、
図1のフィルターの幾つかのチャネルの断面図である。
【
図3】
図3は、フィルター浄化システムの1実施例の斜視図である。
【
図4】
図4は、フィルター浄化システムの例示図である。
【
図5】
図5は、自動車等の装置に一体化したフィルター浄化システムの例示図である。
【
図6】
図6は、質量70kgにおける比推力0.1m/sのための条件を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1には本発明の1実施例に従う振動ベースのフィルター浄化システムが示される。ディーゼル粒子フィルター(以下、フィルターハウジング、粒子フィルター、フィルターとも称する)100は、フィルター要素(図示せず)を収納するハウジングから構成される。フィルター要素は任意タイプのものであり得るが、一般には、メタルハウジングまたは缶に収めたセラミックハニカムである。フィルター要素はハウジングと共にディーゼル粒子フィルター100を形成する。ディーゼル粒子フィルター100はその浄化に先立ち、その用途対象から取り外し得る。端部キャップ104がフィルター出口に固着され、フィルター入口には灰収集ビン106が固着される。端部キャップ104と灰収集ビン106とは従来のv型バンドクランプあるいはその他の、これら用途で一般に用いるクランプでフィルターに固着し得る。1つまたは1つ超の振動要素102がフィルターハウジング100に装着され得る。追加の振動要素108が端部キャップ104及び灰収集ビン106の何れかまたは両方に装着され得る。当該追加の振動要素108は図では端部キャップ104に装着されている。
【0023】
灰収集ビン106は、好適な組成の、メタル、プラスチック、複合材、あるいはその他製の容器であり得る。他の実施例では灰収集ビン106はフィルターバッグ、プラスチックバッグ、あるいは任意のその他の、ディーゼル粒子フィルター100の入り口に固着した粒子収容システムであり得る。
振動要素102、108は、ディーゼル粒子フィルター100、端部キャップ104、または灰収集ビン106の1つまたは1つ超に機械的に連結され得る。ある実施例では振動要素108が端部キャップ104または灰収集ビン106にボルト止めされ得、振動要素102が、ホースクランプ等のバンドクランプでディーゼル粒子フィルター100に固着され得る。
【0024】
各振動要素102、108はフィルター要素に直接接触してもしなくても良い。フィルター端部キャップ104と灰収集ビン106とは使用してもしなくても良い。他の実施例ではフィルター端部キャップ104は使用されず、振動要素108がフィルター要素面、例えば入口または出口の各面に直接接触され得る。この実施例では振動要素108及び102は手持ち形であり得、オペレーターによりフィルター要素面またはフィルターハウジングに手で押し付けられ得る。振動要素108及び102はその場に保持され得、あるいはディーゼル粒子フィルター100の外側ハウジング及びフィルター要素の各表面を含む表面に沿って移動され得る。
【0025】
ある実施例では振動要素102、108は従来の振動モーター、磁歪素子、圧電アクチュエーター、空気振動要素、あるいは任意のその他の、振動発生用に好適な装置であり得る。外部サプライまたは従来の電気アウトレットから振動要素102、108に電力が供給され得、これら振動要素は制御システム(図示せず)にも接続され得る。別の実施例では振動要素102、108は超音波あるいは音響トランスデューサーであり得る。振動要素102、108からディーゼル粒子フィルター100への振動伝達を改善させるためのゲル、水、あるいはその他の好適な材料等の追加的な接触媒質を使用してもしなくても良い。振動要素102、108の発生する振動は周期的またはランダムなものであり得、また、連続的またはパルス的なものであり得る。
【0026】
振動要素102、108はフィルター100に関する任意の位置または方向で固着され得る。ある実施例では振動要素102、108は、フィルターの、灰が最も高く堆積した部分、例えば端部プラグを標的とするよう調整(位置最適化)され得る。大抵の場合、灰の大半はフィルターチャネル後方に端部プラグとして堆積する。振動要素102、108をそれら端部プラグに接近して位置決めすることで、フィルター100の、灰が最も蓄積する部分に振動エネルギーが特に集中される。浄化に先立ち、堆積灰の位置及び長さを測定し得る。ディーゼル粒子フィルター100の1つまたは1つ超のチャネルに挿通した細いワイヤーロッドの挿入長さを測定して灰プラグの長さを決定する。堆積灰の位置測定は必要条件ではないが、堆積灰を標的とするための最適位置の決定に用い得る。
【0027】
振動要素102、108の位置を浄化プロセス中に変更又は調節してもしなくても良い。ある実施例では振動要素102、108は浄化プロセス中は固定されたままとされ得る。他の実施例では、振動要素102、108は浄化プロセス中に連続的あるいは間欠的に調節され得る。ある実施例では、除去する灰がもはや無くなるまで、フィルター100の特定部分に振動が付与される。次いで振動要素102、108は、尚堆積灰を含むフィルター100の他の部分に振動エネルギーを集中させるべくその位置が調節される。任意の振動周波数及び振動力範囲を使用し得る。1つまたは1つ超の振動要素102、108を使用し得る。
【0028】
ある実施例では、端部キャップ104及び灰収集ビン106に、無線周波数ベースのフィルターすす及び灰プローブ110をも装着し得る。フィルターハウジング100、端部キャップ104、灰収集ビン106がマイクロ波キャビティを形成する。無線周波数(以下RF)プローブ110は制御ユニット及び電源16に接続され得る。RFプローブ110はフィルター内の灰やすすの量に関する情報を提供するのみならず、フィルターのクラックまたは溶融等の破損を検出するために使用され得る。任意の周波数レンジが作動上好適であり得る。より高い周波数では空間分解測定能が高まる。RFプローブ110の測定値をフィルターの浄化時期決定に使用し得、また、ある実施例ではフィルター浄化の停止時期決定にも使用し得る。
【0029】
更には、ある実施例では1つまたは1つ超の接続部112及び114を使用し得る。これらの接続部は端部キャップ104、灰収集ビン106あるいはその両方における一部であり得る。接続部112及び114は、振動により除去したろ過残渣(灰/すす)を除去するためのエアフローあるいは任意のその他好適な流体流れを使用可能とし得る。他の実施例では、前記接続部の少なくとも一方に真空を印加してろ過残渣を除去し得る。エアフローまたは真空はシステム運転上の条件ではないが印加可能である。圧力トランスデューサー(図示せず)を使用して、浄化プロセスの前、最中、及び浄化後におけるフィルターハウジング100の圧力損失を監視し、かくして浄化システムの効率、及び、浄化済みフィルターの再使用適性の目安を提供させ得る。
【0030】
図1に示すシステムの運転を以下に説明する。堆積灰振動要素102、108が印加する振動及び力により堆積灰が砕かれる。ある実施例では、強い力と底周波振動とを組み合わせて印加することで堆積灰を砕き得る。その後、高周波振動と弱い力とを付加することで、砕いた灰をフィルターハウジング100の入り口セクションから灰収集ビン106内に落下させ得る。ある特定方法では60Hz以下の周波数で堆積灰を砕き、100Hz以上の周波数でフィルターハウジング100から灰を除去させ得る。他の実施例では1kHz前後のもっと高い周波数が使用され得る。振動はフィルターハウジング100から灰、すす、及び任意のその他汚染物を除去するために使用し得る。
【0031】
ある実施例における振動の印加継続時間は10分未満であり得る。印加する周波数及び力は一定または可変であり得る。ある実施例では、底周波数及び強力振動が2分間印加され、その後、高周波数及び弱力振動が更に2分間印加され、このプロセスが、10分間であり得る全浄化期間に渡り交互される。振動は任意継続時間印加され得るが10分未満またはそれ以上であり得る。
【0032】
浄化プロセス中の振動要素102、108の位置、方向、数は可変または調節可能である。印加する力及び振動周波数も可変であり得る。ある実施例では振動及び力を、振動モーターへの印加電圧、または、モーターシャフト上の内部重りを調節して変更し得る。他の実施例では、振動要素とフィルターとの間に単に吸収材(ラバーマットあるいはフォーム等の)を配置する。更に他の実施例では、仮に空気圧要素を用いる場合は圧力及び流量を変更し得る。
【0033】
ある実施例では浄化プロセスをRFセンサー110を使用して監視及び制御し得る。それらのシステムでは、浄化プロセスの各パラメータ(振動、力、変位量)を、測定したろ過残渣除去率に基づいて調節または最適化し得る。フィルター100の浄化プロセスは、フィルター100のろ過残渣需要可能なレベルに低下したことがRFセンサー110により判断されると停止され得る。別の実施例では、灰除去、除去灰質量、あるいはフィルター100の圧力損失を目視観察することで、浄化プロセスの終了時点を判断し得、またはプロセスパラメーターを調節し得る。また別の実施例では、所定時間経過後に浄化プロセスを終了させ得る。X線、テラヘルツ、イメージング、ボアスコープ、を用いてのフィルターチャネル検査、及び、ワイヤーロッドを使用しての灰のプラグ長さの手動計測、を含む任意数の測定システム及び方法を用いて、浄化プロセスの各パラメータを調節するためのフィルター100内の灰高さを決定し、または、フィルター100の浄化停止時期を決定し得る。
【0034】
他の実施例ではフィルター100を、先ず650℃以上、好ましくは700乃至1000℃の範囲において加熱する。この加熱により、灰プラグの堆積を変化(膨張または収縮)させ、かくして振動によるそれらの除去を容易化させ得る。加熱は、エンジンの既存のフィルター再生システム、または外部ヒーターあるいは炉を用いて実施し得る。
【0035】
図2には振動浄化法の詳細追加例示される。ディーゼル粒子フィルター200の3つのチャネルの断面が示される。図には、多孔質のチャネル壁202、入り口チャネル204、入り口チャネル壁に沿った層状の、またチャネル後方位置ではプラグ状の堆積灰206、が示される。出口チャネル208も示される。印加された振動210、212、214が図示される。
【0036】
振動は210及び212で示す如く各チャネルに直角に、あるいは214の如く各チャネルに平行に、または各チャネル及びフィルター200に対する任意の角度あるいは方向で印加され得る。振動の印加方向を浄化運転中に変化させてもさせなくても良い。振動は各チャネルあるいはフィルターにおいて直接誘起され得、またはフィルターハウジングを通して誘起され得る。振動210、212、214は、各チャネルから灰またはろ過残渣206を破砕、分離、除去するために用いられる。ある実施例ではチャネル210及び212に直交する振動が、灰プラグや堆積灰206を破砕してバラすために使用され得る。バラバラに砕かれた堆積灰は、チャネル204に平行の振動214を印加することでチャネル204を移動させ、フィルターから落下させ、かくして除去し得る。振動210、212、214は任意シーケンスで任意方向に印加可能である。
【0037】
図3には、灰収集ビン302及び端部キャップ304を固定した特定のフィルター300が示される。振動モーター306が端部キャップ304の上部に取り付けられる。フィルター300の周囲に沿って振動カラー308も取り付けられる。振動カラー308は、磁歪素子あるいはその他の好適な素子等の1つまたは1つ超の振動要素310を格納し得る。浄化プロセス中に、フィルター300における灰集積量の多い、あるいは端部プラグ等の除去困難な灰を含む部分を標的とするよう振動カラー308の位置を調節し得る。
【0038】
振動要素306及び310は、ハウジング300上、または、ハウジング300内に格納したフィルター要素の外側の端部キャップ304上に載置した状態で図示されるが、振動要素、即ち、振動モーター306をフィルターのフェース上に直接配置する等により、フィルター要素上に直接載置し得る。他の実施例ではフィルター要素は振動印加に先立ちそのハウジング300から取り外し得る。
振動要素306及び310による振動印加により灰は分離して灰収集ビン302内に落下する。かくして空気由来の灰ダストは発生しない。
【0039】
図4には灰浄化ステーションが示される。当該ステーションは、支持構造400、隔離要素406、支持面402、から構成される。1つまたは1つ超の振動要素408が支持面402に固定される。振動要素408は電源及び制御ユニット(図示せず)に連結され得る。支持面402は、当該支持面から支持構造400への振動伝達を低減させる隔離要素406を介して支持構造400に物理的に連結される。
【0040】
支持フィクスチャ404を支持面402に連結し得る。支持フィクスチャ404は、水平あるいは垂直方向、またはオペレーターの選択する任意方向で取り付け得る。支持フィクスチャ404は使用してもしなくても良い。支持フィクスチャ404を用いない場合、フィルター(図示せず)はオペレーターが手であるいは何らかのその他手段で保持し得る。
【0041】
振動要素408は支持面402に振動を誘起させるために使用され、当該誘起された振動が支持面402上に配置したフィルターに伝達される。支持面上でのフィルター位置は浄化プロセス中に変動し得る。支持面402上に配置したフィルターは
図3に示す如く端部キャップ304及び灰収集ビンを含んでも含まなくても良い。フィルターが端部キャップ304あるいは灰収集ビン302を含まない場合、エンクロージャあるいは灰収集ビンあるいはシステムは、フィルターから除去される灰を収集及び収納するべく、支持面402上に取り付け得る。
【0042】
支持構造402上に配置したフィルターに振動要素408により誘起された振動が灰を砕き、分離させ、フィルターから除去するために使用される。フィルターは
図1及び
図3に示す如く、当該フィルターに直接固定した追加の振動要素を有し得、または、振動要素408が振動の唯一の発生源であり得る。1つまたは1つ超の振動要素408を使用し得る周波数、力、変位量、及びその他のプロセス制御上のパラメーターも調節可能である。
【0043】
図5には、装置500に組み込んだディーゼル粒子フィルター508に直接適用した振動ベースのフィルター浄化システムが示される。装置500は粒子フィルター508を格納する任意の装置であり得る。装置500は静止型あるいは、移動用の1つまたは1つ超のトラクション装置502を格納するもので有り得る。粒子フィルターは排気導管506を介してエンジン504に接続し得る。フィルター508からの排気を、導管510を介して装置500から離れる方向に差し向け得る。粒子フィルター508及び排気導管506、510を、装置500に関して水平、垂直、または任意角度で配行し得る。
【0044】
1つ以上の振動要素512をフィルター508に装着し得る。振動要素512は更に、図示しない電源及びコントローラーに連結され得る。灰収集ビン518を排気導管506に連結させ得るよう、連結部516を使用し得る。排気導管506には弁、プラグ、またはゲートメカニズム514も挿通させ得る。ゲートメカニズム514は、エンジン504からの排気をフィルター508に流す第1位置と、フィルター508の上流側のろ過残渣を灰収集ビン518に流す第2位置とを有する。
【0045】
振動要素512は装置500に尚、組み込まれた状態下にフィルター508から灰を砕き、分離させ、除去するために使用し得る。1実施例では、分離され、除去された灰は、エンジンを切った状態で排気導管510に逆流を印加することでフィルター508及び排気導管506から吹き出される。エアコンプレッサあるいはエアブロワ等の流体流れ源を排気導管510に連通させ、フィルター508を通して流体を上流側に吹送させ得る。灰はこの流れで運ばれ、排気導管506を介して灰収集ビン518に入る。灰収集ビン518は、容器、バッグ、または第2フィルター要素であり得る。灰収集ビン518は、収集した灰を廃棄するために取り外すことができる。弁、プラグあるいはゲートメカニズム514は灰がエンジン504に吹き出されるのを防止するために使用し得る。システムから灰を除去するための逆流印加は必要としてもしなくても良い。別の実施例では灰収集ビン518に代えて真空システム(図示せず)を連結部516に連結し得る。別の実施例では、フィルター508が垂直方向に取り付けられる場合等において、振動のみを用いてフィルター浄化を実施し得る。
【0046】
以下に、浄化法の特定例を説明する。フィルターに印加する振動はフィルターにおける推力により特徴付けられる。かくして、異なる“シェイク”プロセスを変倍化及び比較し得る。フィルターの運動量を突然失わせる(つまりある表面に衝突する)振動であればフィルターを比較的短時間で有効浄化し得る。ある実施例では、材料の健全性を犠牲にしない衝突直前の速度は毎秒約5乃至10cmである。それより速いと大きな振動や音が生じる。従って、フィルターをほぼ瞬間的に減速させる比推力は<毎秒0.1m(フィルターの質量で基準化)となる。
【0047】
各推力は、空気圧振動器、振動モーター、磁歪素子、圧電素子、超音波あるいは音響トランスデューサー及びその他、を用いる機械的あるいは電気的手段の何れかを使用して調和様式下に発生させ得る。磁歪素子を用いる場合、これら磁歪素子は矩形波様の駆動電流により非調和様式下に駆動され得る。
【0048】
特定実施例ではDPFを含むフィルターアセンブリの缶、マット、及びセンサーの質量は約70kgである。振動要素の周波数がfであると、力の印加時間はおよそ0.5/fとなる。500Hzで動作する約70kgの質量で毎秒0.1mの比推力を発生させるに要する力Fは約7000Nである。当該システムの提供する相当する加速度は約10gである。
必要な電力も算出し得る。半サイクルでの変位量は50ミクロンのオーダーのものである。従って、システム駆動に要する電力は約400Wである。
【0049】
周波数が低いと必要電力は減少するが変位量は大きくなる。かくして、60Hzでは必要な力は800N、電力は約42Wである。しかしながら、シェイク動作による加速度は約1gに過ぎない。
図6には70kgの質量における比推力0.1m/秒のための条件が示される。低い方の周波数は従来のモーター(不平衡モーター)を使用して実現し得る。高い方の周波数は磁歪素子あるいはその他好適な装置を用いて実現し得る。
【0050】
磁歪材料は磁界を印加すると長さが変化する強磁性材料の等級のものである。それら材料の幾つかは磁歪される。室温ではTERFENOL−Dがその一例である。ある実施例では3つのそれら材料のアクチュエーターが
図4に示す如く支持面402に、或は
図3に示す如く振動カラー308に固定される。各アクチュエーターは直径が約1cm、長さは3cmであるが、もっと幅広のまたは長いアクチュエーターを使用できる。それらアクチュエーターはハイパワー型オーディオアンプで駆動される。
【0051】
前記アクチュエーターは長さ約100ミクロンであり、数百ワットの電力を必要とする。比較的短いアクチュエーターの共振周波数は動作周波数よりずっと高く、また磁場侵入もずっと速い。500Hzで動作する3つのアクチュエーターが、70kgの質量を500Hzでシェイクするために必要な力に一致する約6700Nを発生する。
【0052】
矩形波形を使用してのアクチュエータ駆動は、フィルターアセンブリの下方への動きが停止した場合に、灰はおそらくこの時点で分離して底部位置の容器に落下するので、特に有益である。加速度の方向は、各アクチュエーターを異なる位相で駆動することで容易に変化させ得る。支持面402(
図4)を異なる周波数で駆動することさえ可能である。
【0053】
本発明の振動ベースの浄化システム及び方法を個別に、または、強制エア法や熱再生器等のその他の浄化法と組み合わせて適用し得る。フィルターの負荷状態及びフィルターの健全性(欠損、溶解)測定値を適用してもしなくても良い。無線周波数及びマイクロ波式の各センサー、圧力センサー、流量測定値、超音波測定値、X線測定値、灰の質量測定値、類似システム及びパラメーター、をも用いて浄化プロセスの有効性を決定し得る。1例として蛍光性粉末等の検出可能な粉末をフィルターを通す逆流に導入してフィルターの欠陥を検出できる。その他粉末も使用できる。フィルターの、粉末導入側と反対側に粉末が検出される場合はフィルターに欠陥があり得る。フィルターのろ過残渣レベルのその場での測定値または推定値をも使用して、振動方向、周波数、浄化プロセス中に印加される力等のプロセスパラメーターをリアルタイムに制御し得る。浄化プロセスは所定時間長経過後に、あるいは、所定量のろ過残渣がフィルターから除去された後、あるいは、フィルター内のろ過残渣残留レベルが受容可能なレベルに低減された後、停止し得る。
【0054】
フィルター流入流れに帯電粒子を追加し、灰、あるいはすす、あるいはその他のろ過残渣中に存在してそれらを凝集及びまたは、フィルター壁に保持させ易くする電荷を中和させることで浄化を支援させ得る。当該中和を最良化するために、正及び負の電荷を追加し得る。何れの極性の電荷も、同一空間内に存在させ得、あるいは空間または時間を交互させ得る。各電荷は、その他生成手段の中でも、外部のコロナ放電により発生させ得る。
各実施例及び説明は例示的なものであってこれに限定しようとするものではない。本発明の振動ベースの浄化システム及び方法を全タイプのディーゼル粒子フィルター、及び、そのための全タイプのフィルター(例えば、プリーツ付きフィルター、ペーパーフィルター、フィルターバッグ)に対し、その材料組成、形態あるいはデザインに関わらず等しく適用可能である。更に、ろ過残渣はフィルター内に堆積する、すす、あるいは灰、あるいは任意のその他物質であり得る。フィルターから除去したろ過残渣は、フィルターの各チャネルの端部位置でプラグ状に堆積し、フィルター表面上に層状に堆積し、あるいはフィルターの孔内に堆積し得る。
【符号の説明】
【0055】
100 ディーゼル粒子フィルター
100 フィルター
102 振動要素
104 フィルター端部キャップ
106 灰収集ビン
108 振動要素
110 灰プローブ
112 接続部
200 ディーゼル粒子フィルター
202 チャネル壁
204 チャネル
206 堆積灰
208 出口チャネル
300 フィルター
302 灰収集ビン
304 端部キャップ
306 振動モーター
308 振動カラー
310 振動要素
400 支持構造
402 支持面
404 支持フィクスチャ
406 隔離要素
408 振動要素
500 ディーゼル粒子フィルター
502 トラクション装置
504 エンジン
506 排気導管
508 粒子フィルター
510 排気導管
512 振動要素
514 ゲートメカニズム
516 連結部
518 灰収集ビン