【文献】
EKRAMI HOSSEIN M,WATER-SOLUBLE FATTY ACID DERIVATIVES AS ACYLATING AGENTS FOR REVERSIBLE LIPIDIZATION OF POLYPEPTIDES,FEBS LETTERS,NL,ELSEVIER,1995年 9月11日,V371,P283-286
【文献】
DIRKSEN A,NUCLEOPHILIC CATALYSIS OF OXIME LIGATION,ANGEWANDTE CHEMIE. INTERNATIONAL EDITION,WILEY VCH VERLAG,2006年11月20日,V45 N45,P7581-7584
【文献】
MIKKEL B THYGESEN,NUCLEOPHILIC CATALYSIS OF CARBOHYDRATE OXIME FORMATION BY ANILINES,THE JOURNAL OF ORGANIC CHEMISTRY,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2010年 3月 5日,V75 N5,P1752-1755
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水溶性リンカーに結合した脂肪酸または脂肪酸エステルを含み、治療用タンパク質と安定に結合した、水溶性脂肪酸誘導体であって、ここで前記水溶性リンカーが、水溶性ポリマーと、前記治療用タンパク質に結合した少なくとも1つの第1の官能基と、前記脂肪酸または脂肪酸エステルに結合した第2の官能基とを含み、前記第1の官能基がアミノオキシ基であり、前記第2の官能基がアミノオキシ基である、水溶性脂肪酸誘導体。
インビトロまたはインビボでヒト血清アルブミン(HSA)と結合し、天然の治療用タンパク質と比較して増加した半減期を有する、請求項1に記載の脂肪酸誘導体であって、前記脂肪酸が飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸である、脂肪酸誘導体。
前記脂肪酸がC10、C12、C14、C16、C18、C20、C22、およびC24からなる群から選択される鎖長を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の脂肪酸誘導体。
前記脂肪酸が、末端カルボキシル基およびω基からなる群から選択される前記脂肪酸上の基で前記水溶性リンカーに結合しており、前記ω基が、ヒドロキシル、アミノ、チオ、およびカルボキシルからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の脂肪酸誘導体。
前記脂肪酸が16−ヒドロキシヘキサデカン酸であるか、または前記脂肪酸エステルが16−ヒドロキシヘキサデカン酸メチルエステルである、請求項1または2に記載の脂肪酸誘導体。
前記脂肪酸誘導体が、オキシム連結により前記治療用タンパク質と安定に結合しており、前記オキシム連結が、前記水溶性リンカー上のアミノオキシ基と前記治療用タンパク質上の酸化炭水化物のアルデヒド基との間に形成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の脂肪酸誘導体。
前記水溶性ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)、分岐PEG、ポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシアルキルデンプン(HAS)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、炭水化物、多糖類、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、デンプン、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、ポリアルキレンオキサイド(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリエチレン−コ−無水マレイン酸、ポリスチレン−コ−無水マレイン酸、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルマール)(PHF)、および2−メタクリロイルオキシ−2’−エチルトリメチルアンモニウムホスフェート(MPC)からなる群から選択される、請求項1に記載の脂肪酸誘導体。
前記水溶性ポリマーがPEGであり、かつO3、O5、O7、O9、O11、O13、およびO15からなる群から選択される鎖長を含む、請求項14に記載の脂肪酸誘導体。
抱合を可能にする条件下で、前記治療用タンパク質上の酸化炭水化物部分と請求項1に記載の脂肪酸誘導体とを接触させることを含む、治療用複合タンパク質を調製する方法であって、
前記炭水化物部分は、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)、四酢酸鉛(Pb(OAc)4)、および過ルテニウム酸カリウム(KRuO4)からなる群から選択される酸化剤を含む緩衝剤とのインキュベーションによって酸化され、
前記酸化炭水化物部分と前記脂肪酸誘導体上の活性アミノオキシ基との間にオキシム連結が形成され、
前記オキシム連結形成が、アニリン、o−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、スルファニル酸、o−アミノベンザミド、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、o−アニシジン、m−アニシジン、およびp−アニシジンからなる群から選択される求核触媒により触媒される、方法。
前記治療用タンパク質が、第IX因子(FIX)、第VIII因子(FVIII)、第VIIa因子(FVIIa)、フォンヴィレブランド因子(VWF)、第FV因子(FV)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、トロンビン(FII)、プロテインC、プロテインS、tPA、PAI−1、組織因子(TF)、ADAMTS13プロテアーゼ、IL−1アルファ、IL−1ベータ、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−11、コロニー刺激因子−1(CSF−1)、M−CSF、SCF、GM−CSF、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、EPO、インターフェロン−アルファ(IFN−アルファ)、コンセンサスインターフェロン、IFN−ベータ、IFN−ガンマ、IFN−オメガ、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−31、IL−32アルファ、IL−33、トロンボポエチン(TPO)、Ang−1、Ang−2、Ang−4、Ang−Y、アンジオポエチン様ポリペプチド1(ANGPTL1)、アンジオポエチン様ポリペプチド2(ANGPTL2)、アンジオポエチン様ポリペプチド3(ANGPTL3)、アンジオポエチン様ポリペプチド4(ANGPTL4)、アンジオポエチン様ポリペプチド5(ANGPTL5)、アンジオポエチン様ポリペプチド6(ANGPTL6)、アンジオポエチン様ポリペプチド7(ANGPTL7)、ビトロネクチン、血管内皮成長因子(VEGF)、アンジオゲニン、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、骨形態形成タンパク質−1、骨形態形成タンパク質−2、骨形態形成タンパク質−3、骨形態形成タンパク質−4、骨形態形成タンパク質−5、骨形態形成タンパク質−6、骨形態形成タンパク質−7、骨形態形成タンパク質−8、骨形態形成タンパク質−9、骨形態形成タンパク質−10、骨形態形成タンパク質−11、骨形態形成タンパク質−12、骨形態形成タンパク質−13、骨形態形成タンパク質−14、骨形態形成タンパク質−15、骨形態形成タンパク質受容体IA、骨形態形成タンパク質受容体IB、骨形態形成タンパク質受容体II、脳由来神経栄養因子、カルジオトロフィン−1、毛様体神経栄養因子、毛様体神経栄養因子受容体、クリプト(cripto)、クリプティック(cryptic)、サイトカイン誘導性好中球走化性因子1、サイトカイン誘導性好中球走化性因子2α、サイトカイン誘導性好中球走化性因子2β、β内皮細胞成長因子、エンドセリン1、上皮成長因子、エピゲン(epigen)、エピレギュリン、上皮由来好中球誘引物質、線維芽細胞成長因子4、線維芽細胞成長因子5、線維芽細胞成長因子6、線維芽細胞成長因子7、線維芽細胞成長因子8、線維芽細胞成長因子8b、線維芽細胞成長因子8c、線維芽細胞成長因子9、線維芽細胞成長因子10、線維芽細胞成長因子11、線維芽細胞成長因子12、線維芽細胞成長因子13、線維芽細胞成長因子16、線維芽細胞成長因子17、線維芽細胞成長因子19、線維芽細胞成長因子20、線維芽細胞成長因子21、酸性線維芽細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、グリア細胞株由来神経栄養因子受容体α1、グリア細胞株由来神経栄養因子受容体α2、成長関連タンパク質、成長関連タンパク質α、成長関連タンパク質β、成長関連タンパク質γ、ヘパリン結合上皮成長因子、肝細胞成長因子、肝細胞成長因子受容体、肝細胞癌由来成長因子、インスリン様成長因子I、インスリン様成長因子受容体、インスリン様成長因子II、インスリン様成長因子結合タンパク質、ケラチノサイト成長因子、白血病抑制因子、白血病抑制因子受容体α、神経成長因子受容体、ニューロポエチン、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、オンコスタチンM(OSM)、胎盤成長因子、胎盤成長因子2、血小板由来内皮細胞成長因子、血小板由来成長因子、血小板由来成長因子A鎖、血小板由来成長因子AA、血小板由来成長因子AB、血小板由来成長因子B鎖、血小板由来成長因子BB、血小板由来成長因子受容体α、血小板由来成長因子受容体β、プレB細胞成長刺激因子、幹細胞因子(SCF)、幹細胞因子受容体、TNF、TNF0、TNF1、TNF2、形質転換成長因子α、形質転換成長因子β、形質転換成長因子β1、形質転換成長因子β1.2、形質転換成長因子β2、形質転換成長因子β3、形質転換成長因子β5、潜在型形質転換成長因子β1、形質転換成長因子β結合タンパク質I、形質転換成長因子β結合タンパク質II、形質転換成長因子β結合タンパク質III、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、腫瘍壊死因子受容体I型、腫瘍壊死因子受容体II型、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PUP)、インスリン、レクチン リシン、プロラクチン、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、組織プラスミノーゲン活性化因子、IgG、IgE、IgM、IgA、およびIgD、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、DNアーゼ、フェチュイン、黄体形成ホルモン、エストロゲン、インスリン、アルブミン、リポタンパク質、胎児性タンパク質、トランスフェリン、トロンボポエチン、ウロキナーゼ、インテグリン、トロンビン、レプチン、ヒュミラ(アダリムマブ)、プロリア(デノスマブ)、エンブレル(エタネルセプト)、表1のタンパク質、またはそれらの生物活性断片、誘導体、もしくは変異体からなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の脂肪酸誘導体。
前記水溶性ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)、分岐PEG、ポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシアルキルデンプン(HAS)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、炭水化物、多糖類、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、デンプン、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、ポリアルキレンオキサイド(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリエチレン−コ−無水マレイン酸、ポリスチレン−コ−無水マレイン酸、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルマール)(PHF)、および2−メタクリロイルオキシ−2’−エチルトリメチルアンモニウムホスフェート(MPC)からなる群から選択される、請求項10または11に記載の方法。
前記治療用タンパク質が、第IX因子(FIX)、第VIII因子(FVIII)、第VIIa因子(FVIIa)、フォンヴィレブランド因子(VWF)、第FV因子(FV)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、トロンビン(FII)、プロテインC、プロテインS、tPA、PAI−1、組織因子(TF)、ADAMTS13プロテアーゼ、IL−1アルファ、IL−1ベータ、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−11、コロニー刺激因子−1(CSF−1)、M−CSF、SCF、GM−CSF、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、EPO、インターフェロン−アルファ(IFN−アルファ)、コンセンサスインターフェロン、IFN−ベータ、IFN−ガンマ、IFN−オメガ、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−31、IL−32アルファ、IL−33、トロンボポエチン(TPO)、Ang−1、Ang−2、Ang−4、Ang−Y、アンジオポエチン様ポリペプチド1(ANGPTL1)、アンジオポエチン様ポリペプチド2(ANGPTL2)、アンジオポエチン様ポリペプチド3(ANGPTL3)、アンジオポエチン様ポリペプチド4(ANGPTL4)、アンジオポエチン様ポリペプチド5(ANGPTL5)、アンジオポエチン様ポリペプチド6(ANGPTL6)、アンジオポエチン様ポリペプチド7(ANGPTL7)、ビトロネクチン、血管内皮成長因子(VEGF)、アンジオゲニン、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、骨形態形成タンパク質−1、骨形態形成タンパク質−2、骨形態形成タンパク質−3、骨形態形成タンパク質−4、骨形態形成タンパク質−5、骨形態形成タンパク質−6、骨形態形成タンパク質−7、骨形態形成タンパク質−8、骨形態形成タンパク質−9、骨形態形成タンパク質−10、骨形態形成タンパク質−11、骨形態形成タンパク質−12、骨形態形成タンパク質−13、骨形態形成タンパク質−14、骨形態形成タンパク質−15、骨形態形成タンパク質受容体IA、骨形態形成タンパク質受容体IB、骨形態形成タンパク質受容体II、脳由来神経栄養因子、カルジオトロフィン−1、毛様体神経栄養因子、毛様体神経栄養因子受容体、クリプト(cripto)、クリプティック(cryptic)、サイトカイン誘導性好中球走化性因子1、サイトカイン誘導性好中球走化性因子2α、サイトカイン誘導性好中球走化性因子2β、β内皮細胞成長因子、エンドセリン1、上皮成長因子、エピゲン(epigen)、エピレギュリン、上皮由来好中球誘引物質、線維芽細胞成長因子4、線維芽細胞成長因子5、線維芽細胞成長因子6、線維芽細胞成長因子7、線維芽細胞成長因子8、線維芽細胞成長因子8b、線維芽細胞成長因子8c、線維芽細胞成長因子9、線維芽細胞成長因子10、線維芽細胞成長因子11、線維芽細胞成長因子12、線維芽細胞成長因子13、線維芽細胞成長因子16、線維芽細胞成長因子17、線維芽細胞成長因子19、線維芽細胞成長因子20、線維芽細胞成長因子21、酸性線維芽細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、グリア細胞株由来神経栄養因子受容体α1、グリア細胞株由来神経栄養因子受容体α2、成長関連タンパク質、成長関連タンパク質α、成長関連タンパク質β、成長関連タンパク質γ、ヘパリン結合上皮成長因子、肝細胞成長因子、肝細胞成長因子受容体、肝細胞癌由来成長因子、インスリン様成長因子I、インスリン様成長因子受容体、インスリン様成長因子II、インスリン様成長因子結合タンパク質、ケラチノサイト成長因子、白血病抑制因子、白血病抑制因子受容体α、神経成長因子受容体、ニューロポエチン、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、オンコスタチンM(OSM)、胎盤成長因子、胎盤成長因子2、血小板由来内皮細胞成長因子、血小板由来成長因子、血小板由来成長因子A鎖、血小板由来成長因子AA、血小板由来成長因子AB、血小板由来成長因子B鎖、血小板由来成長因子BB、血小板由来成長因子受容体α、血小板由来成長因子受容体β、プレB細胞成長刺激因子、幹細胞因子(SCF)、幹細胞因子受容体、TNF、TNF0、TNF1、TNF2、形質転換成長因子α、形質転換成長因子β、形質転換成長因子β1、形質転換成長因子β1.2、形質転換成長因子β2、形質転換成長因子β3、形質転換成長因子β5、潜在型形質転換成長因子β1、形質転換成長因子β結合タンパク質I、形質転換成長因子β結合タンパク質II、形質転換成長因子β結合タンパク質III、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、腫瘍壊死因子受容体I型、腫瘍壊死因子受容体II型、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PUP)、インスリン、レクチン リシン、プロラクチン、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、組織プラスミノーゲン活性化因子、IgG、IgE、IgM、IgA、およびIgD、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、DNアーゼ、フェチュイン、黄体形成ホルモン、エストロゲン、インスリン、アルブミン、リポタンパク質、胎児性タンパク質、トランスフェリン、トロンボポエチン、ウロキナーゼ、インテグリン、トロンビン、レプチン、ヒュミラ(アダリムマブ)、プロリア(デノスマブ)、エンブレル(エタネルセプト)、表1のタンパク質、またはそれらの生物活性断片、誘導体、もしくは変異体からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のタンパク質抱合のための材料および方法にかかわらず、例えば安定なタンパク質複合体の操作および調製を可能にする、新しい材料および方法が望まれている。脂肪酸はHSAに結合するという利点を提供し得るが、脂肪酸は、水溶液環境で操作がしばしば困難であり、時間とともにそのタンパク質結合パートナーから放出または除去され得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ポリマーおよび水溶性脂肪酸誘導体をタンパク質に抱合させるための材料および方法を提供するが、これは、この抱合反応が求核触媒に触媒されたとき、タンパク質の薬力学的および/または薬物動態的特性を改善し、同時に種々の試薬に付随するコストおよび受容患者への健康リスクを最小限に抑える。本発明は、水溶液中で水溶性脂肪酸誘導体をタンパク質に抱合させ、それによって脂肪酸誘導体が時間とともに放出されない安定なタンパク質複合体を生成するための材料および方法を提供する。
【0013】
本発明の一実施形態において、水溶性リンカーと結合した脂肪酸または脂肪酸エステルを含み、治療用タンパク質と安定に結合した、水溶性脂肪酸誘導体が提供される。別の実施形態において、脂肪酸誘導体は、インビトロまたはインビボでヒト血清アルブミン(HSA)と結合する。また別の実施形態において、脂肪酸誘導体−治療用タンパク質複合体は、天然の治療用タンパク質と比較して、増加した半減期を有する。さらに別の実施形態において、前述の脂肪酸誘導体は飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸を含む。関連実施形態において、脂肪酸は飽和脂肪酸である。さらに別の実施形態において、脂肪酸は分岐鎖脂肪酸である。
【0014】
脂肪酸誘導体中の様々な長さの脂肪酸が想定されている。一実施形態において、脂肪酸が、奇数炭素数を有する合成脂肪酸を含む、鎖長C10〜C24を含む前述の脂肪酸誘導体が提供される。一実施形態において、脂肪酸がC10、C12、C14、C16、C18、C20、C20、C22、およびC24からなる群から選択される鎖長を含む、前述の脂肪酸誘導体が提供される。別の実施形態において、脂肪酸は、C14、C16、およびC18からなる群から選択される鎖長を有する。また別の実施形態において、脂肪酸は、C13、C15、およびC17からなる群から選択される鎖長を有する。
【0015】
また別の実施形態において、脂肪酸が、末端カルボキシル基およびω基からなる群から選択される脂肪酸上の基で水溶性リンカーに結合している、前述の脂肪酸誘導体が提供される。別の実施形態において、脂肪酸は、ω基で水溶性リンカーに結合している。また別の実施形態において、ω基は、ヒドロキシル、アミノ、チオ、およびカルボキシルからなる群から選択される。
【0016】
本発明の一実施形態において、脂肪酸が16−ヒドロキシヘキサデカン酸である、前述の脂肪酸誘導体が提供される。
【0017】
別の実施形態において、脂肪酸エステルがメチルエステルおよびエチルエステルからなる群から選択される、脂肪酸誘導体が提供される。一実施形態において、脂肪酸エステルは16−ヒドロキシヘキサデカン酸メチルエステルである。
【0018】
様々な水溶性リンカーが本発明において想定されている。一実施形態において、水溶性リンカーが、水溶性ポリマーと、治療用タンパク質に結合した少なくとも1つの官能基とを含む、前述の脂肪酸誘導体が提供される。一実施形態において、治療用タンパク質に結合した官能基は、負電荷または正電荷を付与する能力を有し、それによってリンカーを水溶性にする。また別の実施形態において、官能基は、スルホ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、アミド基、マレイミド基、アミノオキシ基、およびヒドラジド基からなる群から選択される。一実施形態において、官能基はアミノオキシ基である。
【0019】
多数の水溶性ポリマーが本発明において想定されている。一実施形態において、リンカーの必須部分である水溶性ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)、分岐PEG、ポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシアルキルデンプン(HAS)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、炭水化物、多糖類、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、デンプン、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、ポリアルキレンオキサイド(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリエチレン−コ−無水マレイン酸、ポリスチレン−コ−無水マレイン酸、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルマール)(PHF)、および2−メタクリロイルオキシ−2’−エチルトリメチルアンモニウムホスフェート(MPC)からなる群から選択される、前述の脂肪酸誘導体が提供される。また別の実施形態において、水溶性ポリマーはPEGである。また、様々な長さの水溶性ポリマーも本明細書において想定されている。一実施形態において、水溶性ポリマーが、O3、O5、O7、O9、O11、O13、およびO15からなる群から選択される鎖長を含む、脂肪酸誘導体が提供される。
【0020】
一実施形態において、水溶性リンカーが、
3−オキサペンタン−1,5−ジオキシアミン
【化1】
3,6,9−トリアオキサウンデカン(triaoxaundecane)−1,11−ジオキシアミン
【化2】
3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカン−1,17−ジオキシアミン;
【化3】
3,6,9,12,15,18,21−ヘプタオキサトリコサン−1,23−ジオキシアミン
【化4】
からなる群から選択される、脂肪酸誘導体が提供される。
【0021】
本発明の別の実施形態において、脂肪酸誘導体が、オキシム連結により治療用タンパク質と安定に結合している、脂肪酸誘導体が提供される。別の実施形態において、オキシム連結は、水溶性リンカー上のオキシム基と治療用タンパク質上の酸化炭水化物のアルデヒド基との間に形成される。
【0022】
本発明のまた別の実施形態において、水溶性リンカー上のマレイミド基が治療用タンパク質上の遊離スルフヒドリル基に結合することにより、脂肪酸誘導体が治療用タンパク質と安定に結合している、脂肪酸誘導体が提供される。また別の実施形態において、水溶性リンカー上のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルが治療用タンパク質上の遊離アミノ基に結合することにより、脂肪酸誘導体が治療用タンパク質と安定に結合している。
【0023】
本発明の一実施形態において、
a)式:
【化5】
の16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシイミノ)−ヘキサデカン酸ナトリウム塩、および
b)16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシアミノ)−ヘキサデカン酸メチルエステル
【化6】
からなる群から選択される、脂肪酸誘導体が提供される。
【0024】
様々な治療用タンパク質が本発明において想定されている。一実施形態において、治療用タンパク質が、第IX因子(FIX)、第VIII因子(FVIII)、第VIIa因子(FVIIa)、フォンヴィレブランド因子(VWF)、第FV因子(FV)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、トロンビン(FII)、プロテインC、プロテインS、tPA、PAI−1、組織因子(TF)、ADAMTS13プロテアーゼ、IL−1アルファ、IL−1ベータ、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−11、コロニー刺激因子−1(CSF−1)、M−CSF、SCF、GM−CSF、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、EPO、インターフェロン−アルファ(IFN−アルファ)、コンセンサスインターフェロン、IFN−ベータ、IFN−ガンマ、IFN−オメガ、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−31、IL−32アルファ、IL−33、トロンボポエチン(TPO)、Ang−1、Ang−2、Ang−4、Ang−Y、アンジオポエチン様ポリペプチド1(ANGPTL1)、アンジオポエチン様ポリペプチド2(ANGPTL2)、アンジオポエチン様ポリペプチド3(ANGPTL3)、アンジオポエチン様ポリペプチド4(ANGPTL4)、アンジオポエチン様ポリペプチド5(ANGPTL5)、アンジオポエチン様ポリペプチド6(ANGPTL6)、アンジオポエチン様ポリペプチド7(ANGPTL7)、ビトロネクチン、血管内皮成長因子(VEGF)、アンジオゲニン、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、骨形態形成タンパク質−1、骨形態形成タンパク質−2、骨形態形成タンパク質−3、骨形態形成タンパク質−4、骨形態形成タンパク質−5、骨形態形成タンパク質−6、骨形態形成タンパク質−7、骨形態形成タンパク質−8、骨形態形成タンパク質−9、骨形態形成タンパク質−10、骨形態形成タンパク質−11、骨形態形成タンパク質−12、骨形態形成タンパク質−13、骨形態形成タンパク質−14、骨形態形成タンパク質−15、骨形態形成タンパク質受容体IA、骨形態形成タンパク質受容体IB、骨形態形成タンパク質受容体II、脳由来神経栄養因子、カルジオトロフィン−1、毛様体神経栄養因子、毛様体神経栄養因子受容体、クリプト(cripto)、クリプティック(cryptic)、サイトカイン誘導性好中球走化性因子1、サイトカイン誘導性好中球走化性因子2α、サイトカイン誘導性好中球走化性因子2β、β内皮細胞成長因子、エンドセリン1、上皮成長因子、エピゲン(epigen)、エピレギュリン、上皮由来好中球誘引物質、線維芽細胞成長因子4、線維芽細胞成長因子5、線維芽細胞成長因子6、線維芽細胞成長因子7、線維芽細胞成長因子8、線維芽細胞成長因子8b、線維芽細胞成長因子8c、線維芽細胞成長因子9、線維芽細胞成長因子10、線維芽細胞成長因子11、線維芽細胞成長因子12、線維芽細胞成長因子13、線維芽細胞成長因子16、線維芽細胞成長因子17、線維芽細胞成長因子19、線維芽細胞成長因子20、線維芽細胞成長因子21、酸性線維芽細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、グリア細胞株由来神経栄養因子受容体α1、グリア細胞株由来神経栄養因子受容体α2、成長関連タンパク質、成長関連タンパク質α、成長関連タンパク質β、成長関連タンパク質γ、ヘパリン結合上皮成長因子、肝細胞成長因子、肝細胞成長因子受容体、肝細胞癌由来成長因子、インスリン様成長因子I、インスリン様成長因子受容体、インスリン様成長因子II、インスリン様成長因子結合タンパク質、ケラチノサイト成長因子、白血病抑制因子、白血病抑制因子受容体α、神経成長因子神経成長因子受容体、ニューロポエチン、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、オンコスタチンM(OSM)、胎盤成長因子、胎盤成長因子2、血小板由来内皮細胞成長因子、血小板由来成長因子、血小板由来成長因子A鎖、血小板由来成長因子AA、血小板由来成長因子AB、血小板由来成長因子B鎖、血小板由来成長因子BB、血小板由来成長因子受容体α、血小板由来成長因子受容体β、プレB細胞成長刺激因子、幹細胞因子(SCF)、幹細胞因子受容体、TNF、TNF0、TNF1、TNF2、形質転換成長因子α、形質転換成長因子β、形質転換成長因子β1、形質転換成長因子β1.2、形質転換成長因子β2、形質転換成長因子β3、形質転換成長因子β5、潜在型形質転換成長因子β1、形質転換成長因子β結合タンパク質I、形質転換成長因子β結合タンパク質II、形質転換成長因子β結合タンパク質III、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、腫瘍壊死因子受容体I型、腫瘍壊死因子受容体II型、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PUP)、インスリン、レクチンリシン、プロラクチン、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、組織プラスミノーゲン活性化因子、IgG、IgE、IgM、IgA、およびIgD、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、DNアーゼ、フェチュイン、黄体形成ホルモン、エストロゲン、インスリン、アルブミン、リポタンパク質、胎児性タンパク質、トランスフェリン、トロンボポエチン、ウロキナーゼ、インテグリン、トロンビン、レプチン、ヒュミラ(アダリムマブ)、プロリア(デノスマブ)、エンブレル(エタネルセプト)、表1のタンパク質、またはそれらの生物活性断片、誘導体、もしくは変異体からなる群から選択される、前述の脂肪酸誘導体が提供される。別の実施形態において、治療用タンパク質はFVIIaである。さらに別の実施形態において、治療用タンパク質はFVIIIである。また別の実施形態において、治療用タンパク質はFIXである。
【0025】
また、脂肪酸誘導体を調製する方法も本明細書において想定されている。一実施形態において、a)脂肪酸上のω−ヒドロキシ基を酸化させて、この脂肪酸上にアルデヒド基を生成することと、b)活性アミノオキシ基を含む水溶性リンカーをこのアルデヒド基とカップリングさせて、安定なオキシム連結を形成することと、を含み、脂肪酸誘導体が水溶性である、本明細書に記載されている脂肪酸誘導体を調製する方法が提供される。一実施形態において、ω−ヒドロキシ基が、デス・マーチン・ペルヨージナン試薬、Tempo試薬、塩化オキサリル/DMSOによるスワーン酸化、過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(TPAP)、6価クロム試薬、例えばコリンズ試薬、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)、および重クロム酸ピリジニウムからなる群から選択される酸化試薬により酸化される、前述の方法が提供される。また別の実施形態において、酸化試薬はデス・マーチン・ペルヨージナンである。
【0026】
別の実施形態において、脂肪酸が飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸である、前述の方法が提供される。また別の実施形態において、脂肪酸は飽和脂肪酸である。
【0027】
本発明のまた別の実施形態において、脂肪酸が分岐鎖脂肪酸である、前述の方法が提供される。
【0028】
別の実施形態によると、脂肪酸が、奇数炭素数を有する合成脂肪酸を含む、鎖長C10〜C24を含む、前述の方法も提供される。一実施形態において、脂肪酸がC10、C12、C14、C16、C18、C20、C20、C22、およびC24からなる群から選択される鎖長を有する、前述の脂肪酸誘導体が提供される。別の実施形態において、脂肪酸は、C14、C16、およびC18からなる群から選択される鎖長を有する。また別の実施形態において、脂肪酸は、C13、C15、およびC17からなる群から選択される鎖長を有する。
【0029】
また別の実施形態において、水溶性リンカーが、水溶性ポリマーおよび少なくとも1つのアミノオキシ基を含む、前述の方法が提供される。
【0030】
前述の方法で使用するための多数の水溶性ポリマーが、本明細書において想定されている。一実施形態において、水溶性ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)、分岐PEG、ポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシアルキルデンプン(HAS)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、炭水化物、多糖類、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、デンプン、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、ポリアルキレンオキサイド(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリエチレン−コ−無水マレイン酸、ポリスチレン−コ−無水マレイン酸、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルマール)(PHF)、および2−メタクリロイルオキシ−2’−エチルトリメチルアンモニウムホスフェート(MPC)からなる群から選択される、前述の方法が提供される。一実施形態において、水溶性ポリマーはPEGである。
【0031】
また、様々な長さの水溶性ポリマーも想定されている。一実施形態において、水溶性ポリマーが、O5、O7、O9、O11、O13、およびO15からなる群から選択される鎖長を含む、前述の方法が提供される。
【0032】
また別の実施形態において、水溶性リンカーが、
a)式:
【化7】
の3−オキサペンタン−1,5−ジオキシアミン、
b)式:
【化8】
の3,6,9−トリアオキサウンデカン−1,11−ジオキシアミン、
c)式:
【化9】
の3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカン−1,17−ジオキシアミン、および
d)式:
【化10】
の3,6,9,12,15,18,21−ヘプタオキサトリコサン−1,23−ジオキシアミンからなる群から選択される、前述の方法が提供される。
【0033】
さらに別の実施形態において、水溶性リンカーが、式:
【化11】
の3,6,9−トリアオキサウンデカン−1,11−ジオキシアミンである、前述の方法が提供される。
【0034】
また別の実施形態において、水溶性リンカーが、式:
【化12】
の3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカン−1,17−ジオキシアミンである、前述の方法が提供される。
【0035】
脂肪酸誘導体を作成するためのまた他の方法も本明細書において想定されている。一実施形態において、a)脂肪酸上のカルボキシル基をエステル化して、この脂肪酸上にエステルを生成することと、b)ステップa)の脂肪酸上のメシル基の導入によって、脂肪酸上のω−ヒドロキシ基を活性化することと、c)ステップb)のメシル基を置換することによって、活性アミノオキシ基を含む水溶性リンカーをカップリングさせ、それにより安定なオキシアミン−メチレン結合を形成することと、を含み、この脂肪酸誘導体が水溶性である、前述の脂肪酸誘導体を調製するための方法が提供される。
【0036】
一実施形態において、カルボキシル基が、塩化アセチル、酸存在下でのメタノール、酸存在下でのエタノール、ジアゾメタン、およびヨウ化メチルからなる群から選択されるエステル化剤によりエステル化される、前述の方法が提供される。別の実施形態において、エステル化剤は塩化アセチルである。
【0037】
また別の実施形態において、ω−ヒドロキシ基が、塩化メシル、塩化トシル、および塩化ノシルからなる群から選択される活性化剤により活性化される、前述の方法が提供される。一実施形態において、活性化剤は塩化メシルである。
【0038】
様々な脂肪酸が前述の方法における使用に想定されている。一実施形態において、脂肪酸が飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸である、前述の方法が提供される。別の実施形態において、脂肪酸は飽和脂肪酸である。さらに別の実施形態において、脂肪酸は分岐鎖脂肪酸である。
【0039】
また別の実施形態において、脂肪酸が、奇数炭素数を有する合成脂肪酸を含む、鎖長C10〜C24を含む、前述の方法が提供される。一実施形態において、脂肪酸がC10、C12、C14、C16、C18、C20、C20、C22、およびC24からなる群から選択される鎖長を有する、前述の脂肪酸誘導体が提供される。別の実施形態において、脂肪酸は、C14、C16、およびC18からなる群から選択される鎖長を有する。また別の実施形態において、脂肪酸は、C13、C15、およびC17からなる群から選択される鎖長を有する。
【0040】
また、様々な水溶性ポリマーが、前述の方法における使用に想定されている。一実施形態において、水溶性リンカーが水溶性ポリマーおよび少なくとも1つのアミノオキシ基を含む、前述の方法が提供される。別の実施形態において、水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、分岐PEG、ポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシアルキルデンプン(HAS)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、炭水化物、多糖類、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、デンプン、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、ポリアルキレンオキサイド(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリエチレン−コ−無水マレイン酸、ポリスチレン−コ−無水マレイン酸、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルマール)(PHF)、および2−メタクリロイルオキシ−2’−エチルトリメチルアンモニウムホスフェート(MPC)からなる群から選択される。別の実施形態において、水溶性ポリマーはPEGである。
【0041】
本発明のまた別の実施形態において、水溶性ポリマーがO3、O5、O7、O9、O11、O13、およびO15からなる群から選択される鎖長を含む、前述の方法が提供される。別の実施形態において、水溶性リンカーは、[0050]からなる群から選択される。
【0042】
複合タンパク質を調製する方法も本発明において想定されている。一実施形態において、抱合を可能にする条件下で、治療用タンパク質上の酸化炭水化物部分と前述の脂肪酸誘導体(または本明細書に記載の水溶性ポリマー)とを接触させることを含む、治療用複合タンパク質を調製するための方法であって、前記炭水化物部分は、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)、四酢酸鉛(Pb(OAc)4)、および過ルテニウム酸カリウム(KRuO4)からなる群から選択される酸化剤を含む緩衝剤とのインキュベーションによって酸化され、前記酸化炭水化物部分と前記脂肪酸誘導体上の活性アミノオキシ基との間にオキシム連結が形成され、前記オキシム連結形成が、o−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、スルファニル酸、o−アミノベンザミド、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、o−アニシジン、m−アニシジン、およびp−アニシジンからなる群から選択される求核触媒により触媒される、方法が提供される。
【0043】
別の実施形態において、治療用タンパク質が、第IX因子(FIX)、第VIII因子(FVIII)、第VIIa因子(FVIIa)、フォンヴィレブランド因子(VWF)、第FV因子(FV)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、トロンビン(FII)、プロテインC、プロテインS、tPA、PAI−1、組織因子(TF)、ADAMTS13プロテアーゼ、IL−1アルファ、IL−1ベータ、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−11、コロニー刺激因子−1(CSF−1)、M−CSF、SCF、GM−CSF、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、EPO、インターフェロン−アルファ(IFN−アルファ)、コンセンサスインターフェロン、IFN−ベータ、IFN−ガンマ、IFN−オメガ、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−31、IL−32アルファ、IL−33、トロンボポエチン(TPO)、Ang−1、Ang−2、Ang−4、Ang−Y、アンジオポエチン様ポリペプチド1(ANGPTL1)、アンジオポエチン様ポリペプチド2(ANGPTL2)、アンジオポエチン様ポリペプチド3(ANGPTL3)、アンジオポエチン様ポリペプチド4(ANGPTL4)、アンジオポエチン様ポリペプチド5(ANGPTL5)、アンジオポエチン様ポリペプチド6(ANGPTL6)、アンジオポエチン様ポリペプチド7(ANGPTL7)、ビトロネクチン、血管内皮成長因子(VEGF)、アンジオゲニン、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、骨形態形成タンパク質−1、骨形態形成タンパク質−2、骨形態形成タンパク質−3、骨形態形成タンパク質−4、骨形態形成タンパク質−5、骨形態形成タンパク質−6、骨形態形成タンパク質−7、骨形態形成タンパク質−8、骨形態形成タンパク質−9、骨形態形成タンパク質−10、骨形態形成タンパク質−11、骨形態形成タンパク質−12、骨形態形成タンパク質−13、骨形態形成タンパク質−14、骨形態形成タンパク質−15、骨形態形成タンパク質受容体IA、骨形態形成タンパク質受容体IB、骨形態形成タンパク質受容体II、脳由来神経栄養因子、カルジオトロフィン−1、毛様体神経栄養因子、毛様体神経栄養因子受容体、クリプト(cripto)、クリプティック(cryptic)、サイトカイン誘導性好中球走化性因子1、サイトカイン誘導性好中球走化性因子2α、サイトカイン誘導性好中球走化性因子2β、β内皮細胞成長因子、エンドセリン1、上皮成長因子、エピゲン(epigen)、エピレギュリン、上皮由来好中球誘引物質、線維芽細胞成長因子4、線維芽細胞成長因子5、線維芽細胞成長因子6、線維芽細胞成長因子7、線維芽細胞成長因子8、線維芽細胞成長因子8b、線維芽細胞成長因子8c、線維芽細胞成長因子9、線維芽細胞成長因子10、線維芽細胞成長因子11、線維芽細胞成長因子12、線維芽細胞成長因子13、線維芽細胞成長因子16、線維芽細胞成長因子17、線維芽細胞成長因子19、線維芽細胞成長因子20、線維芽細胞成長因子21、酸性線維芽細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、グリア細胞株由来神経栄養因子受容体α1、グリア細胞株由来神経栄養因子受容体α2、成長関連タンパク質、成長関連タンパク質α、成長関連タンパク質β、成長関連タンパク質γ、ヘパリン結合上皮成長因子、肝細胞成長因子、肝細胞成長因子受容体、肝細胞癌由来成長因子、インスリン様成長因子I、インスリン様成長因子受容体、インスリン様成長因子II、インスリン様成長因子結合タンパク質、ケラチノサイト成長因子、白血病抑制因子、白血病抑制因子受容体α、神経成長因子神経成長因子受容体、ニューロポエチン、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、オンコスタチンM(OSM)、胎盤成長因子、胎盤成長因子2、血小板由来内皮細胞成長因子、血小板由来成長因子、血小板由来成長因子A鎖、血小板由来成長因子AA、血小板由来成長因子AB、血小板由来成長因子B鎖、血小板由来成長因子BB、血小板由来成長因子受容体α、血小板由来成長因子受容体β、プレB細胞成長刺激因子、幹細胞因子(SCF)、幹細胞因子受容体、TNF、TNF0、TNF1、TNF2、形質転換成長因子α、形質転換成長因子β、形質転換成長因子β1、形質転換成長因子β1.2、形質転換成長因子β2、形質転換成長因子β3、形質転換成長因子β5、潜在型形質転換成長因子β1、形質転換成長因子β結合タンパク質I、形質転換成長因子β結合タンパク質II、形質転換成長因子β結合タンパク質III、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、腫瘍壊死因子受容体I型、腫瘍壊死因子受容体II型、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PUP)、インスリン、レクチンリシン、プロラクチン、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、組織プラスミノーゲン活性化因子、IgG、IgE、IgM、IgA、およびIgD、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、DNアーゼ、フェチュイン、黄体形成ホルモン、エストロゲン、インスリン、アルブミン、リポタンパク質、胎児性タンパク質、トランスフェリン、トロンボポエチン、ウロキナーゼ、インテグリン、トロンビン、レプチン、ヒュミラ(アダリムマブ)、プロリア(デノスマブ)、エンブレル(エタネルセプト)、表1のタンパク質、またはそれらの生物活性断片、誘導体、もしくは変異体からなる群から選択される、前述の方法が提供される。
【0044】
別の実施形態において、治療用タンパク質がFVIIaである、前述の方法が提供される。またさらに別の実施形態において、治療用タンパク質がFVIIIである、前述の方法が提供される。さらに別の実施形態において、治療用タンパク質がFIXである、前述の方法が提供される。
【0045】
また別の実施形態において、酸化剤が過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)である、前述の方法が提供される。別の実施形態において、求核触媒がm−トルイジンである、前述の方法が提供される。
【0046】
さらに別の実施形態において、治療用複合タンパク質を精製することをさらに含む、前述の方法が提供される。
【0047】
また別の実施形態において、脂肪酸誘導体が本明細書に記載の方法で調製される、前述の方法が提供される。
【0048】
脂肪酸誘導体を調製するまた他の方法も本発明において想定されている。一実施形態において、a)脂肪酸上のカルボキシル基をエステル化して、脂肪酸上にエステルを生成することと、b)活性マレイミド基を含む水溶性リンカーを遊離スルフヒドリル(SH)基とカップリングさせることによって、安定なチオエーテル結合を形成することと、を含み、脂肪酸誘導体が水溶性である、前述の脂肪酸誘導体を調製する方法が提供される。
【0049】
また別の実施形態において、a)脂肪酸上のカルボキシル基をエステル化して、脂肪酸エステルを生成することと、b)ステップa)によって生じた脂肪酸をアジド試薬と反応させることによって、対応する脂肪酸アジドを生成することと、c)ステップb)の脂肪酸アジドを水素化して、対応する脂肪酸アミンを生成することと、d)活性NHS基を含む水溶性リンカーを遊離アミン基とカップリングさせることによって、安定な結合を形成することと、を含み、脂肪酸誘導体が水溶性である、前述の脂肪酸誘導体を調製する方法が提供される。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する:
(項目1)
水溶性リンカーに結合した脂肪酸または脂肪酸エステルを含み、治療用タンパク質と安定に結合した、水溶性脂肪酸誘導体。
(項目2)
インビトロまたはインビボでヒト血清アルブミン(HSA)と結合する、項目1に記載の脂肪酸誘導体。
(項目3)
天然の治療用タンパク質と比較して増加した半減期を有する、項目1〜2のいずれかに記載の脂肪酸誘導体。
(項目4)
上記脂肪酸が飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸である、項目1〜3のいずれかに記載の脂肪酸誘導体。
(項目5)
上記脂肪酸が飽和脂肪酸である、項目4に記載の脂肪酸誘導体。
(項目6)
上記脂肪酸が分岐鎖脂肪酸である、項目4に記載の脂肪酸誘導体。
(項目7)
上記脂肪酸がC10、C12、C14、C16、C18、C20、C22、およびC24からなる群から選択される鎖長を含む、項目1〜6のいずれかに記載の脂肪酸誘導体。
(項目8)
上記脂肪酸がC14、C16、およびC18からなる群から選択される鎖長を有する、項目7に記載の脂肪酸誘導体。
(項目9)
上記脂肪酸が、末端カルボキシル基およびω基からなる群から選択される上記脂肪酸上の基で上記水溶性リンカーに結合している、項目1〜8のいずれかに記載の脂肪酸誘導体。
(項目10)
上記脂肪酸が上記ω基で上記水溶性リンカーと結合している、項目9に記載の脂肪酸誘導体。
(項目11)
上記ω基が、ヒドロキシル、アミノ、チオ、およびカルボキシルからなる群から選択される、項目10に記載の脂肪酸誘導体。
(項目12)
上記脂肪酸が16−ヒドロキシヘキサデカン酸である、項目1〜3のいずれかに記載の脂肪酸誘導体。
(項目13)
上記脂肪酸エステルが、メチルエステルおよびエチルエステルからなる群から選択される、項目1〜3のいずれかに記載の脂肪酸誘導体。
(項目14)
上記脂肪酸エステルが16−ヒドロキシヘキサデカン酸メチルエステルである、項目13に記載の脂肪酸誘導体。
(項目15)
上記水溶性リンカーが、水溶性ポリマーと、上記治療用タンパク質に結合した少なくとも1つの官能基とを含む、項目1〜14のいずれかに記載の脂肪酸誘導体。
(項目16)
上記官能基が、スルホ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、アミド基、マレイミド基、アミノオキシ基、およびヒドラジド基からなる群から選択される、項目15に記載の脂肪酸誘導体。
(項目17)
上記官能基がアミノオキシ基である、項目16に記載の脂肪酸誘導体。
(項目18)
上記水溶性ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)、分岐PEG、ポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシアルキルデンプン(HAS)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、炭水化物、多糖類、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、デンプン、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、ポリアルキレンオキサイド(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリエチレン−コ−無水マレイン酸、ポリスチレン−コ−無水マレイン酸、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルマール)(PHF)、および2−メタクリロイルオキシ−2’−エチルトリメチルアンモニウムホスフェート(MPC)からなる群から選択される、項目15〜17のいずれか1項に記載の脂肪酸誘導体。
(項目19)
上記水溶性ポリマーがPEGである、項目18に記載の脂肪酸誘導体。
(項目20)
上記水溶性ポリマーが、O3、O5、O7、O9、O11、O13、およびO15からなる群から選択される鎖長を含む、項目15〜17および19のいずれか1項に記載の脂肪酸誘導体。
(項目21)
上記水溶性リンカーが、
a)式:
【化40】
の3−オキサペンタン−1,5−ジオキシアミン、
b)式:
【化41】
の3,6,9−トリアオキサウンデカン(triaoxaundecane)−1,11−ジオキシアミン、
c)式:
【化42】
の3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカン−1,17−ジオキシアミン、および
d)式:
【化43】
の3,6,9,12,15,18,21−ヘプタオキサトリコサン−1,23−ジオキシアミンからなる群から選択される、項目17に記載の脂肪酸誘導体。
(項目22)
上記水溶性リンカーが、式:
【化44】
の3,6,9−トリアオキサウンデカン−1,11−ジオキシアミンである、項目21に記載の脂肪酸誘導体。
(項目23)
上記水溶性リンカーが、式:
【化45】
の3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカン−1,17−ジオキシアミンである、項目21に記載の脂肪酸誘導体。
(項目24)
上記脂肪酸誘導体が、オキシム連結により上記治療用タンパク質と安定に結合している、項目1〜3のいずれか1項に記載の脂肪酸誘導体。
(項目25)
上記オキシム連結が、上記水溶性リンカー上のオキシム基と上記治療用タンパク質上の酸化炭水化物のアルデヒド基との間に形成される、項目24に記載の脂肪酸誘導体。
(項目26)
上記水溶性リンカー上のマレイミド基が上記治療用タンパク質上の遊離スルフヒドリル基に結合することにより、上記脂肪酸誘導体が上記治療用タンパク質と安定に結合している、項目1〜3のいずれか1項に記載の脂肪酸誘導体。
(項目27)
上記水溶性リンカー上のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルが上記治療用タンパク質上の遊離アミノ基に結合することにより、上記脂肪酸誘導体が上記治療用タンパク質と安定に結合している、項目1〜3のいずれか1項に記載の脂肪酸誘導体。
(項目28)
上記脂肪酸誘導体が、
a)式:
【化46】
の16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシイミノ)−ヘキサデカン酸ナトリウム塩、および
b)16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシアミノ)−ヘキサデカン酸メチルエステル
【化47】
からなる群から選択される、項目1〜3のいずれか1項に記載の脂肪酸誘導体。
(項目29)
上記治療用タンパク質が、第IX因子(FIX)、第VIII因子(FVIII)、第VIIa因子(FVIIa)、フォンヴィレブランド因子(VWF)、第FV因子(FV)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、トロンビン(FII)、プロテインC、プロテインS、tPA、PAI−1、組織因子(TF)、ADAMTS13プロテアーゼ、IL−1アルファ、IL−1ベータ、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−11、コロニー刺激因子−1(CSF−1)、M−CSF、SCF、GM−CSF、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、EPO、インターフェロン−アルファ(IFN−アルファ)、コンセンサスインターフェロン、IFN−ベータ、IFN−ガンマ、IFN−オメガ、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−31、IL−32アルファ、IL−33、トロンボポエチン(TPO)、Ang−1、Ang−2、Ang−4、Ang−Y、アンジオポエチン様ポリペプチド1(ANGPTL1)、アンジオポエチン様ポリペプチド2(ANGPTL2)、アンジオポエチン様ポリペプチド3(ANGPTL3)、アンジオポエチン様ポリペプチド4(ANGPTL4)、アンジオポエチン様ポリペプチド5(ANGPTL5)、アンジオポエチン様ポリペプチド6(ANGPTL6)、アンジオポエチン様ポリペプチド7(ANGPTL7)、ビトロネクチン、血管内皮成長因子(VEGF)、アンジオゲニン、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、骨形態形成タンパク質−1、骨形態形成タンパク質−2、骨形態形成タンパク質−3、骨形態形成タンパク質−4、骨形態形成タンパク質−5、骨形態形成タンパク質−6、骨形態形成タンパク質−7、骨形態形成タンパク質−8、骨形態形成タンパク質−9、骨形態形成タンパク質−10、骨形態形成タンパク質−11、骨形態形成タンパク質−12、骨形態形成タンパク質−13、骨形態形成タンパク質−14、骨形態形成タンパク質−15、骨形態形成タンパク質受容体IA、骨形態形成タンパク質受容体IB、骨形態形成タンパク質受容体II、脳由来神経栄養因子、カルジオトロフィン−1、毛様体神経栄養因子、毛様体神経栄養因子受容体、クリプト(cripto)、クリプティック(cryptic)、サイトカイン誘導性好中球走化性因子1、サイトカイン誘導性好中球走化性因子2α、サイトカイン誘導性好中球走化性因子2β、β内皮細胞成長因子、エンドセリン1、上皮成長因子、エピゲン(epigen)、エピレギュリン、上皮由来好中球誘引物質、線維芽細胞成長因子4、線維芽細胞成長因子5、線維芽細胞成長因子6、線維芽細胞成長因子7、線維芽細胞成長因子8、線維芽細胞成長因子8b、線維芽細胞成長因子8c、線維芽細胞成長因子9、線維芽細胞成長因子10、線維芽細胞成長因子11、線維芽細胞成長因子12、線維芽細胞成長因子13、線維芽細胞成長因子16、線維芽細胞成長因子17、線維芽細胞成長因子19、線維芽細胞成長因子20、線維芽細胞成長因子21、酸性線維芽細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、グリア細胞株由来神経栄養因子受容体α1、グリア細胞株由来神経栄養因子受容体α2、成長関連タンパク質、成長関連タンパク質α、成長関連タンパク質β、成長関連タンパク質γ、ヘパリン結合上皮成長因子、肝細胞成長因子、肝細胞成長因子受容体、肝細胞癌由来成長因子、インスリン様成長因子I、インスリン様成長因子受容体、インスリン様成長因子II、インスリン様成長因子結合タンパク質、ケラチノサイト成長因子、白血病抑制因子、白血病抑制因子受容体α、神経成長因子神経成長因子受容体、ニューロポエチン、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、オンコスタチンM(OSM)、胎盤成長因子、胎盤成長因子2、血小板由来内皮細胞成長因子、血小板由来成長因子、血小板由来成長因子A鎖、血小板由来成長因子AA、血小板由来成長因子AB、血小板由来成長因子B鎖、血小板由来成長因子BB、血小板由来成長因子受容体α、血小板由来成長因子受容体β、プレB細胞成長刺激因子、幹細胞因子(SCF)、幹細胞因子受容体、TNF、TNF0、TNF1、TNF2、形質転換成長因子α、形質転換成長因子β、形質転換成長因子β1、形質転換成長因子β1.2、形質転換成長因子β2、形質転換成長因子β3、形質転換成長因子β5、潜在型形質転換成長因子β1、形質転換成長因子β結合タンパク質I、形質転換成長因子β結合タンパク質II、形質転換成長因子β結合タンパク質III、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、腫瘍壊死因子受容体I型、腫瘍壊死因子受容体II型、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PUP)、インスリン、レクチンリシン、プロラクチン、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、組織プラスミノーゲン活性化因子、IgG、IgE、IgM、IgA、およびIgD、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、DNアーゼ、フェチュイン、黄体形成ホルモン、エストロゲン、インスリン、アルブミン、リポタンパク質、胎児性タンパク質、トランスフェリン、トロンボポエチン、ウロキナーゼ、インテグリン、トロンビン、レプチン、ヒュミラ(アダリムマブ)、プロリア(デノスマブ)、エンブレル(エタネルセプト)、表1のタンパク質、またはそれらの生物活性断片、誘導体、もしくは変異体からなる群から選択される、項目1〜28のいずれか1項に記載の脂肪酸誘導体。
(項目30)
上記治療用タンパク質がFVIIaである、項目29に記載の脂肪酸誘導体。
(項目31)
上記治療用タンパク質がFVIIIである、項目29に記載の脂肪酸誘導体。
(項目32)
上記治療用タンパク質がFIXである、項目29に記載の脂肪酸誘導体。
(項目33)
a)脂肪酸上のω−ヒドロキシ基を酸化させて、上記脂肪酸上にアルデヒド基を生成することと、
b)活性アミノオキシ基を含む水溶性リンカーを上記アルデヒド基とカップリングさせて、安定なオキシム連結を形成することと、
を含み、上記脂肪酸誘導体が水溶性である、項目1に記載の脂肪酸誘導体を調製する方法。
(項目34)
上記ω−ヒドロキシ基が、デス・マーチン・ペルヨージナン試薬、Tempo試薬、塩化オキサリル/DMSO、過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(TPAP)、および6価クロム試薬(コリンズ試薬、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)、および重クロム酸ピリジニウム)からなる群から選択される酸化試薬により酸化される、項目33に記載の方法。
(項目35)
上記酸化試薬がデス・マーチン・ペルヨージナンである、項目34に記載の方法。
(項目36)
上記脂肪酸が飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸である、項目33〜35のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
上記脂肪酸が飽和脂肪酸である、項目36に記載の方法。
(項目38)
上記脂肪酸が分岐鎖脂肪酸である、項目36に記載の方法。
(項目39)
上記脂肪酸がC10、C12、C14、C16、C18、C20、C22、およびC24からなる群から選択される鎖長を含む、項目33〜37のいずれかに記載の方法。
(項目40)
上記脂肪酸がC14、C16、およびC18からなる群から選択される鎖長を有する、項目39に記載の方法。
(項目41)
上記脂肪酸が16−ヒドロキシヘキサデカン酸である、項目40に記載の方法。
(項目42)
上記水溶性リンカーが水溶性ポリマーおよび少なくとも1つのアミノオキシ基を含む、項目33〜41のいずれか1項に記載の方法。
(項目43)
上記水溶性ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)、分岐PEG、ポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシアルキルデンプン(HAS)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、炭水化物、多糖類、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、デンプン、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、ポリアルキレンオキサイド(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリエチレン−コ−無水マレイン酸、ポリスチレン−コ−無水マレイン酸、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルマール)(PHF)、および2−メタクリロイルオキシ−2’−エチルトリメチルアンモニウムホスフェート(MPC)からなる群から選択される、項目42に記載の方法。
(項目44)
上記水溶性ポリマーがPEGである、項目43に記載の方法。
(項目45)
上記水溶性ポリマーが、O5、O7、O9、O11、O13、およびO15からなる群から選択される鎖長を含む、項目42または44のいずれか1項に記載の方法。
(項目46)
上記水溶性リンカーが、
a)式:
【化48】
の3−オキサペンタン−1,5−ジオキシアミン、
b)式:
【化49】
の3,6,9−トリアオキサウンデカン−1,11−ジオキシアミン、
c)式:
【化50】
の3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカン−1,17−ジオキシアミン、および
d)式:
【化51】
の3,6,9,12,15,18,21−ヘプタオキサトリコサン−1,23−ジオキシアミンからなる群から選択される、項目45に記載の方法。
(項目47)
上記水溶性リンカーが、式:
【化52】
の3,6,9−トリアオキサウンデカン−1,11−ジオキシアミンである、項目46に記載の脂肪酸誘導体。
(項目48)
上記水溶性リンカーが、式:
【化53】
の3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカン−1,17−ジオキシアミンである、項目46に記載の脂肪酸誘導体。
(項目49)
a)脂肪酸上のカルボキシル基をエステル化して、上記脂肪酸上にエステルを生成することと、
b)脂肪酸上のω−ヒドロキシ基を活性化して、ステップa)の脂肪酸上にメシル基を生成することと、
c)ステップb)のメシル基を置換することによって、活性アミノオキシ基を含む水溶性リンカーをカップリングさせ、それにより安定なオキシイミン−メチレン結合を形成することと、
を含み、上記脂肪酸誘導体が水溶性である、項目1に記載の脂肪酸誘導体を調製する方法。
(項目50)
上記カルボキシル基が、塩化アセチル、酸存在下でのメタノール、酸存在下でのエタノール、ジアゾメタン、およびヨウ化メチルからなる群から選択されるエステル化剤によりエステル化される、項目49に記載の方法。
(項目51)
上記エステル化剤が塩化アセチルである、項目50に記載の方法。
(項目52)
上記ω−ヒドロキシ基が、塩化メシル、塩化トシル、および塩化ノシルからなる群から選択される活性化剤により活性化される、項目49〜51のいずれか1項に記載の方法。
(項目53)
上記活性化剤が塩化メシルである、項目52に記載の方法。
(項目54)
上記脂肪酸が飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸である、項目49〜53のいずれか1項に記載の方法。
(項目55)
上記脂肪酸が飽和脂肪酸である、項目54に記載の方法。
(項目56)
上記脂肪酸が分岐鎖脂肪酸である、項目54に記載の方法。
(項目57)
上記脂肪酸が、C10、C12、C14、C16、C18、C20、C22、およびC24からなる群から選択される鎖長を含む、項目49〜54のいずれかに記載の方法。
(項目58)
上記脂肪酸が、C14、C16、およびC18からなる群から選択される鎖長を有する、項目57に記載の方法。
(項目59)
上記脂肪酸が16−ヒドロキシヘキサデカン酸である、項目58に記載の方法。
(項目60)
上記水溶性リンカーが水溶性ポリマーおよび少なくとも1つのアミノオキシ基を含む、項目49〜59のいずれか1項に記載の方法。
(項目61)
上記水溶性ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)、分岐PEG、ポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシアルキルデンプン(HAS)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、炭水化物、多糖類、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、デンプン、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、ポリアルキレンオキサイド(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリエチレン−コ−無水マレイン酸、ポリスチレン−コ−無水マレイン酸、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルマール)(PHF)、および2−メタクリロイルオキシ−2’−エチルトリメチルアンモニウムホスフェート(MPC)からなる群から選択される、項目60に記載の方法。
(項目62)
上記水溶性ポリマーがPEGである、項目61に記載の方法。
(項目63)
上記水溶性ポリマーが、O3、O5、O7、O9、O11、O13、およびO15からなる群から選択される鎖長を含む、項目60または62のいずれか1項に記載の方法。
(項目64)
上記水溶性リンカーが、
a)式:
【化54】
の3−オキサペンタン−1,5−ジオキシアミン、
b)式:
【化55】
の3,6,9−トリアオキサウンデカン−1,11−ジオキシアミン、
c)式:
【化56】
の3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカン−1,17−ジオキシアミン、および
d)式:
【化57】
の3,6,9,12,15,18,21−ヘプタオキサトリコサン−1,23−ジオキシアミンからなる群から選択される、項目63に記載の方法。
(項目65)
上記水溶性リンカー、式:
【化58】
の3,6,9−トリアオキサウンデカン−1,11−ジオキシアミンである、項目64に記載の脂肪酸誘導体。
(項目66)
上記水溶性リンカーが、式:
【化59】
の3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカン−1,17−ジオキシアミンである、項目64に記載の脂肪酸誘導体。
(項目67)
抱合を可能にする条件下で、上記治療用タンパク質上の酸化炭水化物部分と項目1に記載の脂肪酸誘導体とを接触させることを含む、治療用複合タンパク質を調製する方法であって、
上記炭水化物部分は、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)、四酢酸鉛(Pb(OAc)4)、および過ルテニウム酸カリウム(KRuO4)からなる群から選択される酸化剤を含む緩衝剤とのインキュベーションによって酸化され、
上記酸化炭水化物部分と上記脂肪酸誘導体上の活性アミノオキシ基との間にオキシム連結が形成され、
上記オキシム連結形成が、アニリン、o−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、スルファニル酸、o−アミノベンザミド、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、o−アニシジン、m−アニシジン、およびp−アニシジンからなる群から選択される求核触媒により触媒される、方法。
(項目68)
上記治療用タンパク質が、第IX因子(FIX)、第VIII因子(FVIII)、第VIIa因子(FVIIa)、フォンヴィレブランド因子(VWF)、第FV因子(FV)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、トロンビン(FII)、プロテインC、プロテインS、tPA、PAI−1、組織因子(TF)、ADAMTS13プロテアーゼ、IL−1アルファ、IL−1ベータ、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−11、コロニー刺激因子−1(CSF−1)、M−CSF、SCF、GM−CSF、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、EPO、インターフェロン−アルファ(IFN−アルファ)、コンセンサスインターフェロン、IFN−ベータ、IFN−ガンマ、IFN−オメガ、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−31、IL−32アルファ、IL−33、トロンボポエチン(TPO)、Ang−1、Ang−2、Ang−4、Ang−Y、アンジオポエチン様ポリペプチド1(ANGPTL1)、アンジオポエチン様ポリペプチド2(ANGPTL2)、アンジオポエチン様ポリペプチド3(ANGPTL3)、アンジオポエチン様ポリペプチド4(ANGPTL4)、アンジオポエチン様ポリペプチド5(ANGPTL5)、アンジオポエチン様ポリペプチド6(ANGPTL6)、アンジオポエチン様ポリペプチド7(ANGPTL7)、ビトロネクチン、血管内皮成長因子(VEGF)、アンジオゲニン、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、骨形態形成タンパク質−1、骨形態形成タンパク質−2、骨形態形成タンパク質−3、骨形態形成タンパク質−4、骨形態形成タンパク質−5、骨形態形成タンパク質−6、骨形態形成タンパク質−7、骨形態形成タンパク質−8、骨形態形成タンパク質−9、骨形態形成タンパク質−10、骨形態形成タンパク質−11、骨形態形成タンパク質−12、骨形態形成タンパク質−13、骨形態形成タンパク質−14、骨形態形成タンパク質−15、骨形態形成タンパク質受容体IA、骨形態形成タンパク質受容体IB、骨形態形成タンパク質受容体II、脳由来神経栄養因子、カルジオトロフィン−1、毛様体神経栄養因子、毛様体神経栄養因子受容体、クリプト(cripto)、クリプティック(cryptic)、サイトカイン誘導性好中球走化性因子1、サイトカイン誘導性好中球走化性因子2α、サイトカイン誘導性好中球走化性因子2β、β内皮細胞成長因子、エンドセリン1、上皮成長因子、エピゲン(epigen)、エピレギュリン、上皮由来好中球誘引物質、線維芽細胞成長因子4、線維芽細胞成長因子5、線維芽細胞成長因子6、線維芽細胞成長因子7、線維芽細胞成長因子8、線維芽細胞成長因子8b、線維芽細胞成長因子8c、線維芽細胞成長因子9、線維芽細胞成長因子10、線維芽細胞成長因子11、線維芽細胞成長因子12、線維芽細胞成長因子13、線維芽細胞成長因子16、線維芽細胞成長因子17、線維芽細胞成長因子19、線維芽細胞成長因子20、線維芽細胞成長因子21、酸性線維芽細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、グリア細胞株由来神経栄養因子受容体α1、グリア細胞株由来神経栄養因子受容体α2、成長関連タンパク質、成長関連タンパク質α、成長関連タンパク質β、成長関連タンパク質γ、ヘパリン結合上皮成長因子、肝細胞成長因子、肝細胞成長因子受容体、肝細胞癌由来成長因子、インスリン様成長因子I、インスリン様成長因子受容体、インスリン様成長因子II、インスリン様成長因子結合タンパク質、ケラチノサイト成長因子、白血病抑制因子、白血病抑制因子受容体α、神経成長因子神経成長因子受容体、ニューロポエチン、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、オンコスタチンM(OSM)、胎盤成長因子、胎盤成長因子2、血小板由来内皮細胞成長因子、血小板由来成長因子、血小板由来成長因子A鎖、血小板由来成長因子AA、血小板由来成長因子AB、血小板由来成長因子B鎖、血小板由来成長因子BB、血小板由来成長因子受容体α、血小板由来成長因子受容体β、プレB細胞成長刺激因子、幹細胞因子(SCF)、幹細胞因子受容体、TNF、TNF0、TNF1、TNF2、形質転換成長因子α、形質転換成長因子β、形質転換成長因子β1、形質転換成長因子β1.2、形質転換成長因子β2、形質転換成長因子β3、形質転換成長因子β5、潜在型形質転換成長因子β1、形質転換成長因子β結合タンパク質I、形質転換成長因子β結合タンパク質II、形質転換成長因子β結合タンパク質III、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、腫瘍壊死因子受容体I型、腫瘍壊死因子受容体II型、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PUP)、インスリン、レクチンリシン、プロラクチン、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、組織プラスミノーゲン活性化因子、IgG、IgE、IgM、IgA、およびIgD、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、DNアーゼ、フェチュイン、黄体形成ホルモン、エストロゲン、インスリン、アルブミン、リポタンパク質、胎児性タンパク質、トランスフェリン、トロンボポエチン、ウロキナーゼ、インテグリン、トロンビン、レプチン、ヒュミラ(アダリムマブ)、プロリア(デノスマブ)、エンブレル(エタネルセプト)、表1のタンパク質、またはそれらの生物活性断片、誘導体、もしくは変異体からなる群から選択される、項目67に記載の方法。
(項目69)
項目67〜68のいずれか1項に記載の方法。
(項目70)
上記治療用タンパク質がFVIIaである、項目67〜69のいずれか1項に記載の方法。
(項目71)
上記治療用タンパク質がFVIIIである、項目67〜69のいずれか1項に記載の方法。
(項目72)
上記治療用タンパク質がFIXである、項目67〜69のいずれか1項に記載の方法。
(項目73)
上記酸化剤が過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)である、項目67〜72のいずれか1項に記載の方法。
(項目74)
上記求核触媒がm−トルイジンである、項目67〜73のいずれか1項に記載の方法。
(項目75)
上記治療用複合タンパク質を精製することをさらに含む、項目67〜74のいずれか1項に記載の方法。
(項目76)
上記脂肪酸誘導体が項目33〜47のいずれか1項に記載の方法により調製される、項目67〜75のいずれか1項に記載の方法。
(項目77)
上記脂肪酸誘導体が項目49〜66のいずれか1項に記載の方法により調製される、項目67〜75のいずれか1項に記載の方法。
(項目78)
a)脂肪酸上のカルボキシル基をエステル化して、上記脂肪酸上にエステルを生成することと、
b)活性マレイミド基を含む水溶性リンカーを遊離スルフヒドリル(SH)基とカップリングさせることによって、安定なチオエーテル結合を形成することと、
を含み、上記脂肪酸誘導体が水溶性である、項目1に記載の脂肪酸誘導体を調製する方法。
(項目79)
a)脂肪酸上のカルボキシル基をエステル化して、脂肪酸エステルを生成することと、
b)ステップa)によって生じた上記脂肪酸をアジド試薬と反応させることによって、対応する脂肪酸アジドを生成することと、
c)ステップb)の脂肪酸アジドを水素化して、対応する脂肪酸アミンを生成することと、
d)活性NHS基を含む水溶性リンカーを遊離アミン基とカップリングさせることによって、安定な結合を形成することと、
を含み、上記脂肪酸誘導体が水溶性である、項目1に記載の脂肪酸誘導体を調製する方法。
【発明を実施するための形態】
【0051】
治療用タンパク質の薬理学的および免疫学的特性は、化学修飾、ならびに高分子化合物、例えば本発明による脂肪酸および脂肪酸誘導体との抱合によって改善可能である。
【0052】
本明細書に記載の水溶性脂肪酸誘導体の添加は、治療用タンパク質、例えば、血液凝固タンパク質である第IX因子(FIX)、第VIII因子(FVIII)、第VIIa因子(FVIIa)、フォンヴィレブランド因子(VWF)、第FV因子(FV)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、トロンビン(FII)、プロテインC、プロテインS、tPA、PAI−1、組織因子(TF)、またはADAMTS 13プロテアーゼ、ならびに他の既知のタンパク質または生物学的活性/治療活性を有するそれらの断片の特性を改善するための1つの手法である。
治療用タンパク質
【0053】
本発明の特定の実施形態において、前述のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、以下の治療用タンパク質により例示される:酵素、抗原、抗体、受容体、血液凝固タンパク質、成長因子、ホルモン、およびリガンド。特定の実施形態において、治療用タンパク質は、血液凝固タンパク質、例えば、第IX因子(FIX)、第VIII因子(FVIII)、第VIIa因子(FVIIa)、フォンヴィレブランド因子(VWF)、第FV因子(FV)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、トロンビン(FII)、プロテインC、プロテインS、tPA、PAI−1、組織因子(TF)、またはADAMTS 13プロテアーゼである。
【0054】
特定の実施形態において、治療用タンパク質は、免疫グロブリン、サイトカイン、例えばIL−1アルファ、IL−1ベータ、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−11、コロニー刺激因子−1(CSF−1)、M−CSF、SCF、GM−CSF、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、EPO、インターフェロン−アルファ(IFN−アルファ)、コンセンサスインターフェロン、IFN−ベータ、IFN−ガンマ、IFN−オメガ、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−31、IL−32アルファ、IL−33、トロンボポエチン(TPO)、アンジオポエチン、例えばAng−1、Ang−2、Ang−4、Ang−Y、ヒトアンジオポエチン様ポリペプチドANGPTL1〜7、ビトロネクチン、血管内皮成長因子(VEGF)、アンジオゲニン、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、骨形態形成タンパク質−1、骨形態形成タンパク質−2、骨形態形成タンパク質−3、骨形態形成タンパク質−4、骨形態形成タンパク質−5、骨形態形成タンパク質−6、骨形態形成タンパク質−7、骨形態形成タンパク質−8、骨形態形成タンパク質−9、骨形態形成タンパク質−10、骨形態形成タンパク質−11、骨形態形成タンパク質−12、骨形態形成タンパク質−13、骨形態形成タンパク質−14、骨形態形成タンパク質−15、骨形態形成タンパク質受容体IA、骨形態形成タンパク質受容体IB、骨形態形成タンパク質受容体II、脳由来神経栄養因子、カルジオトロフィン−1、毛様体神経栄養因子、毛様体神経栄養因子受容体、クリプト(cripto)、クリプティック(cryptic)、サイトカイン誘導性好中球走化性因子1、サイトカイン誘導性好中球走化性因子2α、サイトカイン誘導性好中球走化性因子2β、β内皮細胞成長因子、エンドセリン1、上皮成長因子、エピゲン(epigen)、エピレギュリン、上皮由来好中球誘引物質、線維芽細胞成長因子4、線維芽細胞成長因子5、線維芽細胞成長因子6、線維芽細胞成長因子7、線維芽細胞成長因子8、線維芽細胞成長因子8b、線維芽細胞成長因子8c、線維芽細胞成長因子9、線維芽細胞成長因子10、線維芽細胞成長因子11、線維芽細胞成長因子12、線維芽細胞成長因子13、線維芽細胞成長因子16、線維芽細胞成長因子17、線維芽細胞成長因子19、線維芽細胞成長因子20、線維芽細胞成長因子21、酸性線維芽細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、グリア細胞株由来神経栄養因子受容体α1、グリア細胞株由来神経栄養因子受容体α2、成長関連タンパク質、成長関連タンパク質α、成長関連タンパク質β、成長関連タンパク質γ、ヘパリン結合上皮成長因子、肝細胞成長因子、肝細胞成長因子受容体、肝細胞癌由来成長因子、インスリン様成長因子I、インスリン様成長因子受容体、インスリン様成長因子II、インスリン様成長因子結合タンパク質、ケラチノサイト成長因子、白血病抑制因子、白血病抑制因子受容体α、神経成長因子神経成長因子受容体、ニューロポエチン、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、オンコスタチンM(OSM)、胎盤成長因子、胎盤成長因子2、血小板由来内皮細胞成長因子、血小板由来成長因子、血小板由来成長因子A鎖、血小板由来成長因子AA、血小板由来成長因子AB、血小板由来成長因子B鎖、血小板由来成長因子BB、血小板由来成長因子受容体α、血小板由来成長因子受容体β、プレB細胞成長刺激因子、幹細胞因子(SCF)、幹細胞因子受容体、TNF0、TNF1、TNF2を含むTNF、形質転換成長因子α、形質転換成長因子β、形質転換成長因子β1、形質転換成長因子β1.2、形質転換成長因子β2、形質転換成長因子β3、形質転換成長因子β5、潜在型形質転換成長因子β1、形質転換成長因子β結合タンパク質I、形質転換成長因子β結合タンパク質II、形質転換成長因子β結合タンパク質III、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、腫瘍壊死因子受容体I型、腫瘍壊死因子受容体II型、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体、血管内皮成長因子、およびキメラタンパク質、ならびに生物学的活性または免疫学的活性を有するそれらの断片である。
【0055】
特定の実施形態において、治療用タンパク質は、アルファ−、ベータ−、およびガンマ−インターフェロン、顆粒球コロニー刺激因子を含むコロニー刺激因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PUP)、インスリン、植物タンパク質、例えばレクチンおよびリシン、腫瘍壊死因子および関連対立遺伝子、可溶型の腫瘍壊死因子受容体、インターロイキン受容体および可溶型のインターロイキン受容体、成長因子、例えば組織成長因子、例えばTGFαまたはTGFβおよび上皮成長因子、ホルモン、ソマトメジン、色素ホルモン、視床下部放出因子、抗利尿ホルモン、プロラクチン、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、組織プラスミノーゲン活性化因子、ならびに免疫グロブリン、例えばIgG、IgE、IgM、IgA、およびIgD、ガラクトシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、DNアーゼ、フェチュイン、黄体形成ホルモン、エストロゲン、副腎皮質ステロイド、インスリン、アルブミン、リポタンパク質、胎児性タンパク質、トランスフェリン、トロンボポエチン、ウロキナーゼ、DNアーゼ、インテグリン、トロンビン、造血成長因子、レプチン、グリコシダーゼ、ヒュミラ(アダリムマブ)、プロリア(デノスマブ)、エンブレル(エタネルセプト)、およびそれらの断片、または上述のタンパク質もしくはそれらの断片を含む任意の融合タンパク質である。前述のタンパク質に加え、以下の表1は、本発明により想定される治療用タンパク質を提示する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【表1-16】
【表1-17】
【表1-18】
【表1-19】
【表1-20】
【表1-21】
【表1-22】
【表1-23】
【表1-24】
【表1-25】
【表1-26】
【表1-27】
【表1-28】
【表1-29】
【表1-30】
【表1-31】
【表1-32】
【表1-33】
【表1-34】
【表1-35】
【0056】
本明細書において提供される治療用タンパク質は、排他的なものとみなすべきではない。むしろ、本明細書において提供する開示から明らかなように、本発明の方法は、本発明により水溶性脂肪酸誘導体の結合が望まれるいかなるタンパク質にも適用可能である。例えば、治療用タンパク質は、参照により全体が本明細書に援用される、米国特許第2007/0026485号に記載されている。
血液凝固タンパク質
【0057】
一態様において、本発明の出発物質は、ヒト血漿に由来してもよく、または米国特許第4,757,006号、米国特許第5,733,873号、米国特許第5,198,349号、米国特許第5,250,421号、米国特許第5,919,766号、および欧州特許第306 968号の特許に記載のように、組換え操作技術によって作製してもよい、血液凝固タンパク質である。
【0058】
治療用ポリペプチド、例えば、第IX因子(FIX)、第VIII因子(FVIII)、第VIIa因子(FVIIa)、フォンヴィレブランド因子(VWF)、第FV因子(FV)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、トロンビン(FII)、プロテインC、プロテインS、tPA、PAI−1、組織因子(TF)、およびADAMTS 13プロテアーゼを含む血液凝固タンパク質は、タンパク質分解酵素により迅速に分解され、抗体により中和される。これによりそれらの半減期および循環時間が減少し、それによってそれらの治療有効性を制限する。これらの凝固タンパク質の所望の治療効果または予防効果を達成または維持するためには、比較的高用量および頻回投与が必要とされる。その結果、適切な用量調節の実現が困難であり、頻回静脈内投与が必要なことで、患者の生活様式が制限される。
【0059】
本明細書に記載のように、第IX因子(FIX)、第VIII因子(FVIII)、第VIIa因子(FVIIa)、フォンヴィレブランド因子(VWF)、第FV因子(FV)、第X因子(FX)、第XI因子、第XII因子(FXII)、トロンビン(FII)、プロテインC、プロテインS、tPA、PAI−1、組織因子(TF)、およびADAMTS 13プロテアーゼを含むがこれらに限定されない血液凝固タンパク質が、本発明により想定されている。本明細書で使用する「血液凝固タンパク質」という用語は、その特定の天然血液凝固タンパク質と関連する生物学的活性を示す、任意の第IX因子(FIX)、第VIII因子(FVIII)、第VIIa因子(FVIIa)、フォンヴィレブランド因子(VWF)、第FV因子(FV)、第X因子(FX)、第XII因子(FXII)、トロンビン(FII)、プロテインC、プロテインS、tPA、PAI−1、組織因子(TF)、およびADAMTS 13プロテアーゼを指す。
【0060】
血液凝固カスケードは、内因系、外因系、および共通経路の3つの異なる部分に分けられる(Schenone et al.,Curr Opin Hematol.2004;11:272−7)。このカスケードは、一連のセリンプロテアーゼ酵素およびタンパク質補因子を含む。必要な場合には、不活性酵素原前駆体が活性型に変換され、その結果カスケード中の次の酵素が変換される。
【0061】
内因系経路は、第VIII、第IX、第X、第XI、および第XII凝固因子を必要とする。内因系経路の開始は、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、第XI因子(FXI)、および第XII因子(FXII)が負電荷を持つ表面に暴露されたときに生じる。また、血小板から分泌されるカルシウムイオンおよびリン脂質も必要とされる。
【0062】
外因系経路は、血管の血管内腔が損傷を受けたときに開始される。膜糖タンパク質組織因子が露出して、循環している第VII因子(FVII)および既存の少量のその活性型FVIIaと結合する。この結合は、FVIIからFVIIaへの完全な変換を促進し、続いて、カルシウムおよびリン脂質の存在下、第IX因子(FIX)から第IXa因子(FIXa)および第X因子(FX)から第Xa因子(FXa)への変換を促進する。FVIIaの組織因子との結合は、FVIIの基質(FIXおよびFX)結合部位をより接近させ、また立体構造変化を誘導することによって、タンパク質分解活性を強化し、これはFVIIaの酵素活性を強化する。
【0063】
このFXの活性化は、2つの経路の共通点である。リン脂質およびカルシウムとともに、第Va因子(FVa)および第Xa因子は、プロトロンビンをトロンビンに変換し(プロトロンビナーゼ複合体)、これは次いでフィブリノゲンを切断してフィブリンモノマーを形成する。このモノマーは重合してフィブリン鎖を形成する。第XIIIa因子(FXIIIa)は、これらの鎖を互いに共有結合させて強固な網目を形成する。
【0064】
また、FVIIからFVIIaへの変換は、トロンビン、FIXa、FXa、第XIa因子(FXIa)、および第XIIa因子(FXIIa)を含む複数のプロテアーゼによっても触媒される。このカスケードの初期段階を阻害するために、組織因子経路インヒビターは、FVIIa/組織因子/FXa複合生成物を標的とする。
第VIIa因子
【0065】
FVII(安定因子またはプロコンベルチンとも称される)は、止血および凝固における中枢的役割を有する、ビタミンK依存性セリンプロテアーゼ糖タンパク質である(Eigenbrot,Curr Protein Pept Sci.2002;3:287−99)。
【0066】
FVIIは肝臓で合成され、48kDの一本鎖糖タンパク質として分泌される。FVIIは、全てのビタミンK依存性セリンプロテアーゼ糖タンパク質と類似するタンパク質ドメイン構造を共有し、これは、タンパク質と脂質膜の相互作用に関与する、9〜12残基を有するアミノ末端γカルボキシシグルタミン酸(Gla)ドメイン、カルボキシ末端セリンプロテアーゼドメイン(触媒ドメイン)、および組織因子との相互作用を媒介する、カルシウムイオン結合部位を含有する2つの上皮成長因子様ドメインからなる。γグルタミルカルボキシラーゼは、分子のアミノ末端部分内のGla残基のカルボキシル化を触媒する。このカルボキシラーゼは、その作用について還元型のビタミンKに依存し、それはエポキシド型に酸化される。エポキシド型のビタミンKを還元型に変換し戻すためには、ビタミンKエポキシド還元酵素が必要とされる。
【0067】
FVIIの大部分は、酵素原の形態で血漿中を循環し、この形態の活性化は、アルギニン152とイソロイシン153との間のペプチド結合の切断をもたらす。その結果生じた活性FVIIaは、単一ジスルフィド結合(Cys135〜Cys262)を介して連結した、NH2由来の軽鎖(20kD)およびCOOH末端由来の重鎖(30kD)からなる。軽鎖は膜結合Glaドメインを含有し、重鎖は触媒ドメインを含有する。
【0068】
遺伝因子および環境因子によって決定されるFVIIの血漿濃度は、約0.5mg/mLである(Pinotti et al.,Blood.2000;95:3423−8)。FVII遺伝子型が異なると、平均FVIIレベルに数倍の差が生じる可能性がある。血漿FVIIレベルは、健康女性の妊娠中に上昇し、また年齢とともに増加し、女性および高トリグリセリド血症患者ではより高い。FVIIは、全ての凝固促進因子の中で最短の半減期(3〜6時間)を有する。健康な個人のFVIIaの平均血漿濃度は3.6ng/mLであり、FVIIaの循環半減期は、他の凝固因子と比較して比較的長い(2.5時間)。
【0069】
遺伝性FVII欠損症は稀な常染色体劣性出血性疾患であり、有病率は一般集団において500,000人当たり1例と推定される(Acharya et al.,J Thromb Haemost.2004;2248−56)。阻害物質による後天的FVII欠損症もまた、非常に稀である。セファロスポリン、ペニシリン、および経口抗凝固剤などの薬物に関連して発症する欠損症の例も報告されている。さらに、後天的FVII欠損症は、自然に、または骨髄腫、敗血症、再生不良性貧血などの他の症状に付随して、インターロイキン−2および抗胸腺細胞グロブリン療法によって発症することが報告されている。
【0070】
参照ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列には、例えば、ゲノム配列についてはGenBank受託番号J02933、cDNAについてはM13232(Hagen et al.PNAS 1986;83:2412−6)、ポリペプチド配列についてはP08709が含まれる(参考文献は全体が本明細書に援用される)。FVIIの種々の多型が記載されているが、例えば、Sabater−Lleal et al.(Hum Genet.2006;118:741−51)を参照されたい(参考文献は全体が本明細書に援用される)。
第IX因子
【0071】
FIXは、カルシウムイオン、リン脂質、およびFVIIIaの存在下でFXをその活性型に変換することによって、血液凝固の内因系経路に関与するビタミンK依存性血漿タンパク質である。FIXの主要な触媒能力は、セリンプロテアーゼとしての触媒能力であり、FX内の特定のアルギニン−イソロイシン結合に対して特異性を有する。FXIaによってFIXの活性化が生じ、これはFIXから活性化ペプチドを切除し、1つまたは複数のジスルフィド結合によって保持される2つの鎖を含む活性FIX分子を生成する。FIXの欠損は、X連鎖血友病Bの原因である。
【0072】
血友病AおよびBは、それぞれFVIIIおよびFIXポリペプチドの欠損を特徴とする遺伝性疾患である。この欠損の根本的な原因は、しばしばFVIIIおよびFIX遺伝子の突然変異の結果であり、これら双方はX染色体上に位置する。血友病に対する従来の療法は、しばしば、健常者からのプール血漿または半精製された凝固タンパク質の静脈内投与を伴う。これらの製剤は、感染性プリオン、HIV、パルボウイルス、A型肝炎、およびC型肝炎などの病原体またはウイルスが混入する可能性がある。したがって、ヒト血清の使用を必要としない治療薬に対する緊急の必要性が存在する。
【0073】
FIX活性の減少レベルは、血友病Bの重症度に正比例する。血友病Bの現在の治療は、血漿由来または組換えFIX(FIX置換または補充治療もしくは療法と称される)による、不足したタンパク質の補充からなる。
【0074】
FIXのポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列は、例えば、UniProtKB/Swiss−Prot受託番号P00740、および米国特許第6,531,298号において見出すことができる。
第VIII因子
【0075】
凝固第VIII因子(FVIII)は、非常に低い濃度で血漿中を循環し、フォンヴィレブランド因子(VWF)に非共有結合する。止血中、FVIIIは、VWFから分離し、カルシウムおよびリン脂質、または細胞膜の存在下で活性化の速度を高めることによって、活性第IX因子(FIXa)媒介のFX活性化のための補因子として機能する。
【0076】
FVIIIは、ドメイン構造A1−A2−B−A3−C1−C2を有する、約270〜330kDの単鎖前駆体として合成される。血漿から精製した場合(例えば、「血漿由来」または「血漿性」)、FVIIIは、重鎖(A1−A2−B)および軽鎖(A3−C1−C2)から構成される。軽鎖の分子質量は、80kDであり、Bドメイン内のタンパク質分解により、重鎖は90〜220kDの範囲内である。
【0077】
FVIIIはまた、出血性障害における治療用途のための組換えタンパク質として合成される。治療薬としての組換えFVIII(rFVIII)の潜在的有効性を判断するために、種々のインビトロアッセイが考案されている。これらのアッセイは、内在性FVIIIのインビボ効果を模倣する。FVIIIのインビトロトロンビン処理は、インビトロアッセイによって測定されるその凝固促進活性の迅速な増加およびその後の減少をもたらす。この活性化および不活性化は、重鎖および軽鎖の両方における特定の制限タンパク質分解と同時に起こり、これはFVIII中の様々な結合エピトープの有用性を変更して、例えば、FVIIIをVWFから解離させて、リン脂質表面に結合させるか、または特定のモノクローナル抗体に対する結合能力を変更する。
【0078】
FVIIIの欠如および機能不全は、最も頻度の高い出血性障害である血友病Aと関連する。血友病Aの管理に最適な治療は、血漿由来またはrFVIII濃縮物による補充療法である。FVIIIレベル1%未満の重度の血友病A患者は、一般に、次の服用までのFVIIIを1%超に維持することを目標とする予防療法を受ける。循環血中の種々のFVIII製剤の平均半減期を考慮すると、通常はFVIIIを週2〜3回投与することによって、この結果を達成することができる。
【0079】
参照ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列には、例えば、UniProtKB/Swiss−Prot P00451(FA8_HUMAN)、Gitschier J et al.,Characterization of the human Factor VIII gene,Nature,312(5992):326−30(1984)、Vehar GH et al.,Structure of human Factor VIII,Nature,312(5992):337−42(1984)、Thompson AR.Structure and Function of the Factor VIII gene and protein,Semin Thromb Hemost,2003:29;11−29(2002)がある。
フォンヴィレブランド因子
【0080】
フォンヴィレブランド因子(VWF)は、サイズが約500〜20,000kDの範囲の一連の多量体として血漿中を循環する糖タンパク質である。VWFの多量体形態は、ジスルフィド結合によって連結した250kDのポリペプチドサブユニットからなる。VWFは、損傷した血管壁の内皮下層への初期の血小板粘着を媒介する。より大きな多量体のみが止血活性を示す。内皮細胞は大きいポリマー形態のVWFを分泌し、低分子重量を有するVWFの形態(低分子重量VWF)はタンパク質分解的切断から生じると考えられている。高分子質量を有する多量体は、内皮細胞のバイベル・パラーデ小体中に貯蔵され、刺激時に遊離する。
【0081】
VWFは、大部分が繰り返しドメインからなるプレプロVWFとして、内皮細胞および巨核球によって合成される。シグナルペプチドの切断時に、プロVWFは、そのC末端領域のジスルフィド結合によって二量体化する。この二量体は、多量体化のためのプロトマーとして機能し、これは遊離末端間のジスルフィド結合によって制御される。多量体へのアセンブリ後、プロペプチド配列のタンパク質分解除去が続く(Leyte et al.,Biochem.J.274(1991),257−261)。
【0082】
VWFのクローン化cDNAから予測される一次翻訳産物は、2813残基の前駆体ポリペプチド(プレプロVWF)である。プレプロVWFは、22個のアミノ酸シグナルペプチドおよび741個のアミノ酸プロペプチドからなり、成熟VWFは2050個のアミノ酸を含む(Ruggeri Z.A.,and Ware,J.,FASEB J.,308−316(1993))。
【0083】
VWFの欠損は、事実上顕著な出血表現型を特徴とするフォンヴィレブランド病(VWD)の病因である。3型VWDは、VWFが完全に欠損した最も重度な形態であり、1型VWDは、VWFの量的減少に関連し、その表現型は非常に軽度なこともある。2型VWDは、VWFの質的欠損に関連し、3型VWDと同じくらい重度のこともある。2型VWDには多くのサブ形態があり、高分子量多量体の損失または減少に関連するものもある。2a型フォンヴィレブランド病(VWD−2A)は、中間体および大きい多量体の両方の損失を特徴とする。VWD−2Bは、最も高分子重量の多量体の損失を特徴とする。VWFに関連する他の疾患および障害は、当分野において既知である。
【0084】
プレプロVWFのポリヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれGenBank受託番号NM_000552およびNP_000543で入手可能である。
【0085】
本発明による他の血液凝固タンパク質は、当分野において、例えば、Mann KG,Thromb Haemost,1999;82:165−74に記載されている。
A.ポリペプチド
【0086】
一態様において、本発明の出発物質は、タンパク質またはポリペプチドである。本明細書で使用する治療用タンパク質という用語は、その治療用タンパク質に関連する生物学的活性を示すあらゆる治療用タンパク質分子を指す。本発明の一実施形態において、治療用タンパク質分子は全長タンパク質である。
【0087】
想定される治療用タンパク質分子は、全長タンパク質、全長タンパク質の前駆体、全長タンパク質の生物学的に活性なサブユニットまたは断片、ならびに治療用タンパク質のこれらの形態のうちのいずれかの生物学的に活性な誘導体および変異体を含む。したがって、治療用タンパク質は、(1)参照核酸によってコードされたポリペプチドまたは本明細書に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも約25個、約50個、約100個、約200個、約300個、約400個、またはそれ以上のアミノ酸の領域にわたり、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%を上回る、またはそれ以上のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するもの、および/または(2)本明細書に記載の参照アミノ酸配列、その免疫原性断片、および/またはその保存的に改変された変異体を含む免疫原に対して生じた抗体、例えばポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体に特異的に結合するものを含む。
【0088】
本発明によると、「治療用組換えタンパク質」という用語は、組換えDNA技術によって得られたあらゆる治療用タンパク質を含む。特定の実施形態において、この用語は、本明細書に記載のタンパク質を包含する。
【0089】
本明細書で使用する「治療用内因性タンパク質」という用語は、治療を受けることが意図される哺乳動物に由来する治療用タンパク質を含む。この用語は、前記哺乳動物中に存在する導入遺伝子または他の任意の外来DNAから転写された治療用タンパク質も含む。本明細書で使用する「治療用外因性タンパク質]という用語は、治療を受けることが意図される哺乳動物に由来しない血液凝固タンパク質を含む。
【0090】
本明細書で使用する「血漿由来の血液凝固タンパク質」または「血漿性」とは、凝固経路に関与する特性を有する、哺乳動物から採取した血液中に認められる全ての形態のタンパク質を含む。
【0091】
本明細書で使用する「生物学的に活性な誘導体」または「生物学的に活性な変異体」とは、前記分子の実質的に同じ機能的および/または生物学的特性、例えば結合特性、および/または同じ構造基盤、例えばペプチド骨格もしくは基本ポリマー単位を有する分子のあらゆる誘導体または変異体を含む。
【0092】
「類似体」、「変異体」または「誘導体」とは、場合によって程度は異なるが、天然に存在する分子と構造が実質的に類似し、同じ生物学的活性を有する化合物である。例えば、ポリペプチド変異体とは、参照ポリペプチドと実質的に類似する構造を共有し、同じ生物学的活性を有するポリペプチドを指す。変異体または類似体は、その類似体が由来する天然に存在するポリペプチドと比較して、(i)ポリペプチドの1つまたは複数の末端および/または天然に存在するポリペプチド配列の1つまたは複数の内部領域(例えば、断片)における1つまたは複数のアミノ酸残基の欠失、(ii)ポリペプチドの1つまたは複数の末端(典型的には「付加」または「融合」)および/または天然に存在するポリペプチド配列の1つまたは複数の内部領域(典型的には「挿入」)における1つまたは複数のアミノ酸の挿入または付加、あるいは(iii)天然に存在するポリペプチド配列中の1つまたは複数のアミノ酸の他のアミノ酸への置換、を含む1つまたは複数の突然変異に基づき、アミノ酸配列の組成が異なる。例として、「誘導体」は、(例えば化学的に)改変された参照ポリペプチドと同じまたは実質的に類似する構造を共有するポリペプチドを指す。
【0093】
種々の実施形態において、類似体、変異体、または誘導体は、例えば、タンパク質類似体、変異体、または誘導体に別の分子を抱合することによって、本発明による複合タンパク質を形成できるように設計される。
【0094】
変異体または類似体ポリペプチドには、本発明の治療用タンパク質アミノ酸配列に1つまたは複数のアミノ酸残基が付加された挿入変異体が含まれる。挿入は、タンパク質のいずれかまたは両方の末端に位置してもよく、および/または治療用タンパク質アミノ酸配列の内部領域内に位置付けてもよい。いずれかまたは両方の末端に付加残基を有する挿入変異体には、例えば、融合タンパク質、およびアミノ酸タグまたは他のアミノ酸標識を含むタンパク質がある。一態様において、血液凝固タンパク質分子は、特にその分子が大腸菌などの細菌細胞で組換え発現される場合に、N−末端Metを場合により含有する。
【0095】
欠失変異体では、本明細書に記載される治療用タンパク質ポリペプチド中の1つまたは複数のアミノ酸残基が除去される。欠失は、治療用タンパク質ポリペプチドの一方または両方の末端において、および/または治療用タンパク質アミノ酸配列内の1つまたは複数の残基の除去によって実施することができる。したがって、欠失変異体は、治療用タンパク質ポリペプチド配列の断片を含む。
【0096】
置換変異体では、治療用タンパク質ポリペプチドの1つまたは複数のアミノ酸残基が除去され、代替残基で置換される。一態様において、置換は本質的に保存的であり、この種の保存的置換は当分野で周知である。あるいは、本発明は非保存的である置換も包含する。例示的な保存的置換は、Lehninger[Biochemistry,2nd Edition;Worth Publishers,Inc.,New York(1975),pp.71−77]に記載されており、下記に示す。
【表2】
【0097】
代替として、例示的な保存的置換を下記に示す。
【表3】
B.ポリヌクレオチド
【0098】
本発明の治療用タンパク質をコードする核酸には、例えば、遺伝子、プレmRNA、mRNA、cDNA、多型変異体、対立遺伝子、合成変異体および天然に存在する変異体があるが、これらに限定されない。
【0099】
また、本発明の治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドには、(1)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に記載される参照アミノ酸配列、およびその保存的に改変された変異体をコードする核酸と特異的にハイブリダイズするもの、(2)本明細書に記載される参照核酸配列に対して、少なくとも約25個、約50個、約100個、約150個、約200個、約250個、約500個、約1000個、またはそれ以上のヌクレオチド(最大で、成熟タンパク質の全長配列である1218個のヌクレオチド)の領域にわたり、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%を上回る、またはそれ以上のヌクレオチド配列同一性を有する核酸配列を有するものも含まれるが、これらに限定されない。例示的な「ストリンジェントなハイブリダイゼーション」条件には、42℃、50%ホルムアミド、5×SSC(20mM Na・PO4、pH6.8)でのハイブリダイゼーション、および55℃の1×SSCで30分間の洗浄が含まれる。ハイブリダイズする配列の長さおよびGCヌクレオチド含量に基づいて、これらの例示的な条件を変化させてもよいことは理解される。当分野で標準的な方法は、適切なハイブリダイゼーション条件の決定に適している。Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Second ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)§§9.47−9.51を参照されたい。
【0100】
「天然に存在する」ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は、典型的には、霊長類、例えばヒト;齧歯類、例えばラット、マウス、ハムスター;ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、または任意の哺乳動物を含むがこれらに限定されない哺乳動物に由来する。本発明の核酸およびタンパク質は、組換え分子(例えば、異種であり、野生型配列もしくはその変異体をコードするもの、または非天然のもの)であってもよい。
C.治療用タンパク質の作製
【0101】
治療用タンパク質の作製には、(i)遺伝子操作による組換えDNAの作製、(ii)例えば、限定するものではないが、トランスフェクション、エレクトロポレーション、またはマイクロインジェクションによる、原核細胞および真核細胞への組換えDNAの導入、(iii)前記形質転換細胞の培養、(iv)治療用タンパク質の例えば構成的な、または誘導時の発現、および(v)例えば培養培地からの、または形質転換細胞の採取による、精製された治療用タンパク質を得るための血液凝固タンパク質の単離、のための当分野で既知のあらゆる方法を含む。
【0102】
別の態様では、治療用タンパク質は、薬理学的に許容される血液凝固タンパク質分子を生成することを特徴とする好適な原核または真核宿主系での発現によって作製される。真核細胞の例は、CHO、COS、HEK293、BHK、SK−Hep、およびHepG2などの哺乳動物細胞である。
【0103】
多種多様なベクターが治療用タンパク質の調製に使用され、真核および原核発現ベクターから選択される。原核発現用のベクターの例には、限定するものではないが、pRSET、pET、およびpBADなどのプラスミドがあり、原核発現ベクターに使用されるプロモーターには、限定するものではないが、lac、trc、trp、recA、またはaraBADのうちの1つまたは複数がある。真核発現用のベクターの例には、(i)酵母での発現の場合、限定するものではないがAOX1、GAP、GAL1、またはAUG1などのプロモーターを使用した、限定するものではないがpAO、pPIC、pYES、またはpMETなどのベクター、(ii)昆虫細胞での発現の場合、限定するものではないがPH、p10、MT、Ac5、OpIE2、gp64、またはpolhなどのプロモーターを使用した、限定するものではないがpMT、PAc5、pIB、pMIB、またはpBACなどのベクター、ならびに(iii)哺乳類細胞での発現の場合、限定するものではないがCMV、SV40、EF−1、UbC、RSV、ADV、BPV、およびβ−アクチンなどのプロモーターを使用した、限定するものではないがpSVL、pCMV、pRc/RSV、pcDNA3、またはpBPVなどのベクター、および一態様では、限定するものではないがワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、またはレトロウイルスなどのウイルス系に由来するベクター、が含まれる。
【0104】
本発明の種々の実施形態において、治療用タンパク質は、水溶性脂肪酸誘導体または水溶性リンカーを治療用タンパク質上の1つまたは複数の炭水化物に抱合させることによって改変される。したがって、一実施形態において、治療用タンパク質は、糖タンパク質であり、グリコシル化が可能な宿主細胞から精製される(すなわち、このタンパク質は、インビボでグリコシル化されたあと、糖タンパク質として精製される)。種々の実施形態において、治療用タンパク質は糖タンパク質であるか、または糖タンパク質でなく、宿主細胞からの精製後にインビトロでグリコシル化される。インビトログリコシル化方法は、当分野で周知である(例えば、Meynial−Salles I and Combes D,Journal of Biotechnology 1996,46:1−14;/Sola RJ and Griebenow K,BioDrugs 2010,24:9−21を参照されたい)。当然ながら、当業者は、当分野で既知の手法によって、(1)治療用タンパク質を精製し、(2)インビトロでの場合により部位特異的なグリコシル化を可能にするために、治療用タンパク質を改変し(例えば、アミノ酸欠失/挿入/置換)、(3)インビトロで改変タンパク質をグリコシル化することができるであろう。
D.投与
【0105】
一実施形態において、本発明の治療用複合タンパク質は、静脈注射、筋肉注射、または腹腔内注射などの注射によって投与してもよい。
【0106】
本発明の治療用複合タンパク質を含む組成物をヒトまたは試験動物に投与するために、一態様において、この組成物は1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体を含む。「薬学的に」または「薬理学的に許容可能な」という用語は、下記に記載のように当分野で周知の経路を用いて投与したときに、安定であり、凝集および切断産物などのタンパク質分解を抑制し、さらにアレルギー性または他の有害反応を生じない、分子実体および組成物を指す。「薬学的に許容可能な担体」には、上記で開示した物質を含む、あらゆる臨床的に有用な溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、および吸収遅延剤などが含まれる。
【0107】
本明細書で使用する「有効量」とは、疾患もしくは障害を治療する、または疾患もしくは障害の症状を改善するのに好適な用量を含む。一実施形態において、「有効量」は、本明細書に記載される出血性障害を有する哺乳動物を治療するのに好適な用量を含む。
【0108】
組成物は、経口的に、局所的に、経皮的に、非経口的に、吸入噴霧によって、経膣的に、直腸に、または頭蓋内注射によって投与してもよい。本明細書において使用する非経口という用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、大槽内注射または注入手法を含む。静脈内、皮内、筋肉内、乳房内、腹腔内、髄腔内、球後、肺内注射による投与、および/または特定の部位における外科的移植も想定されている。一般に、組成物は、発熱因子、およびレシピエントに害を与え得る他の不純物を本質的に含まない。
【0109】
組成物の単回または複数回投与は、治療する医師によって選択された用量レベルおよびパターンで実施することができる。疾患の予防または治療のための適切な投薬量は、上述のような治療する疾患の種類、疾患の重症度および経過、薬物の投与が予防目的なのか治療目的なのか、治療歴、患者の病歴および薬物に対する反応、ならびに担当医の裁量により異なることになる。
【0110】
また、本発明は、有効量の本明細書に記載される治療用複合タンパク質を含む薬学的組成物にも関する。この薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、塩、緩衝剤、または賦形剤をさらに含んでもよい。この薬学的組成物は、上記で定義した出血性障害の治療に使用することができる。本発明の薬学的組成物は、溶液または凍結乾燥剤であってもよい。薬学的組成物の溶液に任意の好適な凍結乾燥プロセスを行ってもよい。さらなる態様として、本発明は、対象への投与のためのその使用を容易にするような形でパッケージ化された本発明の組成物を含むキットを含む。一実施形態において、かかるキットは、密封ボトルまたは容器などの包装容器に詰められた、本明細書に記載の化合物または組成物(例えば、治療用複合タンパク質を含む組成物)を含み、本方法を実施する際のその化合物または組成物の使用について説明したラベルが包装容器に貼られるか、またはパッケージ内に含まれる。一実施形態において、キットは、治療用複合タンパク質を含む組成物を有する第1の包装容器と、第1の包装容器中の組成物用の生理学的に許容可能な再構成液を有する第2の包装容器とを含む。一態様において、化合物または組成物は、単位剤形でパッケージ化される。キットは、特定の投与経路による組成物の投与に好適な装置をさらに含んでもよい。好ましくは、キットは、治療用タンパク質またはペプチド組成物の使用を説明したラベルを含む。
脂肪酸、脂肪酸誘導体、およびタンパク質−脂肪酸誘導体複合体
【0111】
一態様において、本明細書において提供される治療用タンパク質誘導体(すなわち、治療用複合タンパク質)分子は、水溶性脂肪酸誘導体と結合している。本明細書で使用する「水溶性脂肪酸誘導体」は、本明細書に記載の水溶性リンカー(例えば、アミノオキシリンカー)に結合した脂肪酸(すなわち、カルボン酸)を含む。かかる脂肪酸誘導体は、本発明によると、安定であり(すなわち、タンパク質から放出されない)、水溶性であり、ヒト血清アルブミンに結合可能である。
A.脂肪酸
【0112】
脂肪酸(すなわち、1つまたは複数のFA)は、本発明によりヒト血清アルブミンに結合可能な、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、分岐鎖脂肪酸(Mukheriji et al.,Prog Lipid Res 2003;42:359−76)、およびそれらの誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0113】
例として、脂肪酸は以下の一般構造を有する:
飽和FA:一般構造
【化13】
飽和FAメチルエステル:一般構造
【化14】
飽和FAエチルエステル:一般構造
【化15】
【0114】
また、脂肪酸は、本発明の種々の実施形態によると、種々の代替的構造(例えば、メチルエステルまたはエチルエステル)、または他の構造、例えばω位に末端基(例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、チオ基、およびカルボキシル基)を含むものなどを含む。
【0115】
一実施形態において、脂肪酸は天然に存在する脂肪酸である。種々の実施形態において、脂肪酸は、短鎖脂肪酸(例えば、炭素6個未満)、中鎖脂肪酸(例えば、炭素6〜12個)、長鎖脂肪酸(例えば、炭素12を上回る)、または超長鎖脂肪酸(例えば、炭素22を上回る)である。別の実施形態において、脂肪酸は4〜28個の炭素を有する。一実施形態において、脂肪酸はシス配置である。また別の実施形態において、脂肪酸はトランス配置である。
【0116】
一実施形態において、脂肪酸は、炭素12〜20個の長さの飽和脂肪酸である。かかる脂肪酸は、当分野で既知であり、例えば、C12(ドデカン酸、ラウリン酸)、C14(テトラデカン酸、ミリスチン酸)、C16(ヘキサデカン酸、パルミチン酸)、C18(オクタデカン酸、ステアリン酸)、およびC20(エイコサン酸、アラキジン酸)がある。不飽和脂肪酸の例は、ミリストレイン酸(C14:1)、パルミトレイン酸(C16:1)、オレイン酸(C18:1)、リノレン酸(C18:2)、およびアラキドン酸(C20:4)である。これらの脂肪酸のほとんどは、市販されており、また様々な化学的方法で調製することができる(Recent Developments in the Synthesis of Fatty Acid Derivatives,Editors:Knothe G and Derksen JTB,AOCS Press 1999,ISBN 1−893997−00−6)。
【0117】
本発明の種々の実施形態において、脂肪酸は、4個、6個、8個、10個、12個、14個、16個、18個、20個、22個、24個、26個、28個、30個、32個、34個、36個、38個、40個、42個、44個、46個、48個、または50個の炭素を含む。
B.脂肪酸誘導体
【0118】
本発明は、ヒト血清アルブミンに結合可能な新規の活性化脂肪酸誘導体(FA誘導体)群の調製を提供する。このFA誘導体は水溶性スペーサーまたはリンカーを含み、これは水溶液としてのFA誘導体の取扱いおよび操作を可能にする(すなわち、本発明による脂肪酸誘導体は、それが由来する対応する脂肪酸とは異なり、水溶性である)。一実施形態において、FA誘導体は活性アミノオキシ基を含み、これは安定なオキシム連結を形成する、FA誘導体と治療用タンパク質上の酸化炭水化物部分(主にN−グリカン)とのカップリングを可能にする。本明細書で使用する「安定な」連結とは、「非解離性」または「非加水分解性」である共有結合が形成されることを意味する。
【0119】
炭水化物を介する化学修飾は、FVIII、FIX、およびFVIIaなどの凝固タンパク質が高い残効性を有する複合体を形成するための好ましい選択肢であろう。
【0120】
例えば、限定するものではないが、以下の方策は、活性アミノオキシ基を含む水溶性FA誘導体を調製するための本発明による一実施形態を表す。
【0122】
FA誘導体(例えば、16−ヒドロキシヘキサデカン酸)のω−ヒドロキシ基をデス・マーチン・ペルヨージナンで酸化させて、アルデヒド基を生成する。次のステップでは、水溶性PEG鎖を含むジアミノオキシリンカー(例えば、3,6,9−トリアオキサウンデカン−1,11−ジオキシアミン)をこのアルデヒド基とカップリングさせて、安定なオキシム連結を形成する。以下の概略図は、方策1による一例を表す。
【0123】
ステップ1:16−ヒドロキシステアリン酸をデス・マーチン試薬で選択的に酸化して、16−オキソステアリン酸を得た。分離剤としてシリカゲルを用いたクロマトグラフィーでこの粗生成物精製した。
【化16】
【0124】
ステップ2:16−オキソステアリン酸ナトリウム塩の16−オキソ部分を3,6,9−トリアオキサウンデカン−1,11−ジオキシアミンと反応させた。分離剤としてシリカゲルを用いたクロマトグラフィーでこの粗生成物精製した。
【化17】
【0125】
代替的に、別の実施形態では、活性アミノオキシ基を含む水溶性FA誘導体を調製するために以下の方策が採用される。
【0127】
ω−ヒドロキシ脂肪酸(例えば、16−ヒドロキシヘキサデカン酸)のカルボキシル基は、塩化アセチルによりエステル化される。このメチルエステル誘導体のω−ヒドロキシ基は、塩化メシルによって活性化されて、より優れた脱離基が導入される。次に、このメシル基が水溶性PEG鎖を含むジアミノオキシリンカー(例えば、3,6,9−トリアオキサウンデカン−1,11−ジオキシアミン)と反応して、安定なアミノオキシ−メチレン結合を形成する。場合により、このメチルエステルをアルカリ溶液中で加水分解して、遊離カルボキシル基を生成する。以下の概略図は、方策2による一例を表す。
【0128】
ステップ1:メチル化試薬として塩化アセチルを使用してメチルエステルを形成することによって、16−ヒドロキシヘキサデカン酸のカルボン酸部分を保護した。
【化18】
【0129】
ステップ2:水酸基をより優れた脱離基であるメシルで置換することにより、16−ヒドロキシヘキサデカン酸メチルエステルの16−ヒドロキシ部分を活性化した。
【化19】
ステップ3:16−メチルスルホニルヘキサデカン酸メチルエステルの16−メシル部分を二官能性3,6,9−トリアオキサウンデカン−1,11−ジオキシアミンの1つのアミノオキシ部分で置換した。分離剤としてシリカゲルを用いたクロマトグラフィーでこの粗生成物精製する。
【化20】
【0130】
さらなる方策も本発明により想定されている。本発明は、例えば、酸化炭水化物残基のアルデヒド基とのカップリングのためのアミノオキシ化学に制限されない。本明細書に記載のように、治療用タンパク質のアルデヒド基とのカップリングのためのヒドラジド、アミノ基とのカップリングのためのNHSエステル、遊離SH基とのカップリングのためのマレイミドを含むがこれらに限定されない他の化学の使用も想定されている。
【0131】
例として、上述のように調製した脂肪酸メチルエステルを市販のMAL−PEG−COOH(mal−PEG(12)−COOH/IRIS Biotech GmbH,Marktredwitz,Germany)と本明細書に記載のように反応させる。また別の例として、反応性アミノ基を有する脂肪酸エステルを市販のNHS−PEG−NHS(NHS−dPEG(4)−NHS/IRIS Biotech GmbH,Marktredwitz,Germany)と本明細書に記載のように反応させる。
【0132】
水溶性リンカーには、水溶性ポリマー(例えば、PEG)が含まれるが、これに限定されない。このリンカーは、その水溶性を増加させる1つまたは複数の官能基を含む、いかなる化学構造からなってもよい。これらの官能基は、負電荷または正電荷を生成し、それによりリンカーを水溶性にする能力を有してもよい。一実施形態において、この官能基は、スルホ基またはカルボキシル基を含むが、これらに限定されない。さらに、リンカーをより水溶性にする、いかなる極性官能基を使用してもよい。この例には、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、マレイミド基、アミノオキシ基、およびヒドラジド基、ならびにN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルおよびスルホNHSエステルがある。
【0133】
種々の実施形態において、水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、分岐PEG、ポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシアルキルデンプン(HAS)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、炭水化物、多糖類、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、デンプン、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、ポリアルキレンオキサイド(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリエチレン−コ−無水マレイン酸、ポリスチレン−コ−無水マレイン酸、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルマール)(PHF)、2−メタクリロイルオキシ−2’−エチルトリメチルアンモニウムホスフェート(MPC)を含むが、これらに限定されない。
【0134】
一実施形態において、水溶性ポリマーはPEGである、本発明の種々の実施形態において、水溶性ポリマーは、およそ3〜25個の酸素の鎖長を含む。例えば、本発明による種々の実施形態において、水溶性ポリマーは、3個、5個、7個、9個、11個、13個、15個、17個、19個、21個、23個、または25個の酸素を含む。
C.タンパク質−脂肪酸誘導体複合体
【0135】
アミノオキシリンカー系(すなわち、水溶性脂肪酸誘導体がアミノオキシリンカーを含む系)は、本発明により想定されている。例えば、本発明の一実施形態において、オキシム基を形成する、ヒドロキシルアミンまたはヒドロキシルアミン誘導体のアルデヒド(例えば、過ヨウ素酸ナトリウムによる酸化後の炭水化物部分上のもの)との反応が、タンパク質複合体の調製に適用される。例えば、糖タンパク質(例えば、本発明による治療用タンパク質)をまず過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)などの酸化剤で酸化する(Rothfus JA et Smith EL.,J Biol Chem 1963,238,1402−10、およびVan Lenten L and Ashwell G.,J Biol Chem 1971,246,1889−94)。糖タンパク質の過ヨウ素酸塩酸化は、隣接ジオールを過ヨウ素酸で酸化して活性アルデヒド基を形成する、1928年に記載された古典的なマラプラード反応に基づく(Malaprade L.,Analytical application,Bull Soc Chim France,1928,43,683−96)。かかる酸化剤のさらなる例は、四酢酸鉛(Pb(OAc)4)、酢酸マンガン(MnO(Ac)3)、酢酸コバルト(Co(OAc)2)、酢酸タリウム(TlOAc)、硫酸セリウム(Ce(SO4)2)(米国特許第4,367,309号)、または過ルテニウム酸カリウム(KRuO4)(Marko et al.,J Am Chem Soc 1997,119,12661−2)である。「酸化剤」とは、炭水化物中の隣接ジオールを酸化し、それによって生理学的反応条件下で、活性アルデヒド基を生成することが可能な弱い酸化化合物を意味する。
【0136】
第2のステップは、オキシム連結を形成するための、アミノオキシ基を含有するポリマー(例えば、脂肪酸誘導体)の酸化炭水化物部分とのカップリングである。本発明の一実施形態において、このステップは、触媒量の求核触媒アニリンまたはアニリン誘導体の存在下で実施してもよい(Dirksen A et Dawson PE,Bioconjugate Chem.2008;Zeng Y et al.,Nature Methods 2009;6:207−9)。アニリン触媒は、オキシム結合を劇的に加速し、非常に低濃度の試薬の使用を可能にする。本発明の別の実施形態において、オキシム連結は、NaCNBH3による還元によって安定化され、アルコキシアミン結合を形成する。さらなる触媒を下記に記載する。別の実施形態では、このステップをm−トルイジンの存在下で実施する。
【0137】
本発明の一実施形態において、水溶性リンカー(例えば、脂肪酸誘導体)をタンパク質に抱合させる反応ステップは別個に順次実施する(すなわち、出発物質(例えば、治療用タンパク質、水溶性リンカーなど)、試薬(例えば、酸化剤、アニリンなど)、および反応生成物(例えば、治療用タンパク質上の酸化炭水化物、活性化アミノオキシ水溶性リンカーなど)が、個々の反応ステップ間で別々である)。別の実施形態において、本発明による抱合反応を完了するために必要な出発物質および試薬は、単一の容器中で実施される。一実施形態では、天然タンパク質をアミノオキシ−ポリマー試薬と混合する。その後、酸化試薬を添加し、抱合反応を実施する。
【0138】
アミノオキシ技術に関するさらなる情報は、以下の参考文献に記載され、これらはそれぞれ全体が本明細書に援用される:欧州特許第1681303A1号(ヒドロキシアルキルデンプン化エリスロポエチン)、国際公開第2005/014024号(オキシム結合基により連結したポリマーとタンパク質の複合体)、国際公開第96/40662号(アミノオキシ含有リンカー化合物および複合体におけるそれらの用途)、国際公開第2008/025856号(改変タンパク質)、Peri F et al.,Tetrahedron 1998,54,12269−78、Kubler−Kielb J and Pozsgay V.,J Org Chem 2005,70,6887−90、Lees A et al.,Vaccine 2006,24(6),716−29、およびHeredia KL et al.,Macromolecules 2007,40(14),4772−9。
【0139】
水溶性リンカーのカップリングは、タンパク質との直接カップリングによって(例えば、タンパク質上の遊離スルフヒドリル基または遊離アミノ基を介して)、または本明細書に記載のリンカー分子を介して行うことができる。抱合は、一態様では、安定な結合の形成下で、水溶性リンカーの治療用タンパク質との直接カップリング(または、リンカー系を介するカップリング)によって実施される。
【0140】
したがって、本発明の種々の実施形態において、本明細書に記載の脂肪酸誘導体は、治療用タンパク質への抱合を可能にするよう設計される。例えば、脂肪酸誘導体は、本明細書に記載のように、種々の末端反応性基を含むように設計される。
【0141】
特定の態様では、様々な化学的方法のいずれかを用いて、治療用タンパク質を水溶性脂肪酸誘導体に抱合させる(Roberts JM et al.,Advan Drug Delivery Rev 2002;54:459−76)。例えば、一実施形態において、治療用タンパク質は、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルを用いて、脂肪酸誘導体をタンパク質の遊離アミノ基に抱合させることによって改質される。別の実施形態において、マレイミド化学を用いて、水溶性脂肪酸誘導体を遊離SH基とカップリングさせる。別の実施形態では、ヒドラジド化学またはアミノオキシ化学を用いて、水溶性脂肪酸誘導体を前酸化後の治療用タンパク質の炭水化物部分とカップリングさせる。
【0142】
本発明の一実施形態では、活性N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルを含む水溶性脂肪酸誘導体の使用により、リジン残基を介して治療用タンパク質を改変する。この誘導体は、安定なアミド結合を形成することにより、温和な条件下で治療用タンパク質のリジン残基と反応する。
【0143】
本発明の別の実施形態において、タンパク質または脂肪酸誘導体の一方または両方上のカルボキシル基とタンパク質または脂肪酸誘導体のアミン基との間のペプチド結合、あるいはタンパク質または脂肪酸誘導体のカルボキシル基と治療用タンパク質または脂肪酸誘導体の水酸基と間のエステル連結による連結が想定されている。治療用タンパク質が脂肪酸誘導体と共有結合する別の連結は、脂肪酸の末端に形成されたアルデヒド基と反応するタンパク質の遊離アミノ基との間のシッフ塩基を介するものである。生成されたシッフ塩基は、一態様において、NaCNBH3による特異的還元によって安定化されて、第2級アミンを形成する。代替的な手法は、前酸化後にNH4Clを用いた、還元的アミノ化によって脂肪酸誘導体中に末端遊離アミノ基を生成することである。二官能性試薬を用いて、2つのアミノ基または2つの水酸基を連結してもよい。例えば、BS3(ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート/Pierce,Rockford,IL)などの試薬を用いて、アミノ基を含有する脂肪酸誘導体をタンパク質のアミノ基とカップリングさせる。さらに、例えばアミン基およびチオール基に連結するために、スルホ−EMCS(N−ε−マレイミドカプロイルオキシ)スルホスクシンイミドエステル/Pierce)などのヘテロ二官能性架橋試薬が用いられる。
【0144】
別の手法では、活性ヒドラジド基を有する脂肪酸誘導体を調製し、前酸化およびアルデヒド官能基の生成後に、タンパク質の炭水化物部分とカップリングさせる。
【0145】
上述のように、治療用タンパク質の遊離アミン基は、脂肪酸誘導体の1−カルボキシル基と反応してペプチジル結合を形成するか、または1−カルボン酸基とタンパク質上のヒドロキシルもしくは他の好適な活性基との間にエステル連結が形成される。
【0146】
種々の実施形態において、治療用タンパク質は、化学量論量(例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:7、1:8、1:9、または1:10など)で脂肪酸誘導体に連結するか、または結合する。種々の実施形態において、1〜6個、7〜12個、または13〜20個の脂肪酸誘導体がタンパク質に連結している。また別の実施形態において、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、またはそれ以上の脂肪酸誘導体がタンパク質に連結している。
【0147】
種々の実施形態において、治療用タンパク質を改変して、グリコシル化部位(すなわち、天然グリコシル化部位以外の部位)を導入する。かかる改変は、当分野で既知の標準的分子生物学的手法を用いて達成することができる。さらに、治療用タンパク質は、1つまたは複数の炭水化物部分を介する水溶性リンカーへの抱合前に、インビボまたはインビトロでグリコシル化してもよい。これらのグリコシル化部位は、タンパク質の水溶性リンカーとの抱合の標的としての機能を果たし得る(米国特許出願第20090028822号、米国特許出願第2009/0093399号、米国特許出願第2009/0081188号、米国特許出願第2007/0254836号、米国特許出願第2006/0111279号、およびDeFrees S.et al.,Glycobiology,2006,16,9,833−43)。
【0148】
一実施形態において、複合タンパク質は、天然治療用タンパク質生成物の完全な機能的活性を保持し、天然治療用タンパク質生成物比較して延長されたインビボ半減期を提供する。別の実施形態において、複合タンパク質は、天然タンパク質に対して少なくとも20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56,57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、110%、120%、130%、140%、または150%(パーセント)の生物学的活性を保持する。
【0149】
関連態様において、合タンパク質および天然血液凝固タンパク質の生物学的活性は、血液凝固因子抗原値に対する発色活性の比率(血液凝固因子:Chr:血液凝固因子:Ag)によって決定される。
【0150】
本発明のまた別の実施形態において、複合タンパク質の半減期は、天然治療用タンパク質のインビボ半減期に対して0.5倍、0.6倍、0.7倍、0.8倍、0.9倍、1.0倍、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍減少または増加する。
求核触媒
【0151】
本明細書に記載のように、水溶性脂肪酸誘導体の治療用タンパク質への抱合は、アニリンによって触媒することができる。アニリンは、アルデヒドおよびケトンのアミンとの水性反応を強く触媒して、安定なイミン、例えばヒドラゾンおよびオキシムを形成する。下図は、無触媒とアニリン触媒のオキシム結合反応を比較している(出典:Kohler JJ,ChemBioChem 2009;10:2147−50)。
【化21】
【0152】
しかしながら、アニリンに付随する多数の健康リスクを考慮すると、代替的触媒が望ましい。本発明は、代替的オキシム結合触媒としてのアニリン誘導体を提供する。かかるアニリン誘導体には、o−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、スルファニル酸、o−アミノベンザミド、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、o−アニシジン、m−アニシジン、およびp−アニシジンが含まれるが、これらに限定されない。下図は、無触媒とm−トルイジン触媒のオキシム結合反応を比較している(国際出願PCT/US2011/45873号)。
【化22】
【0153】
本発明の一実施形態において、m−トルイジン(別名メタ−トルイジン、m−メチルアニリン、3−メチルアニリン、または3−アミノ−1−メチルベンゼン)を使用して、本明細書に記載の抱合反応を触媒する。M−トルイジンおよびアニリンは、類似する物理的特性および本質的に同じpKa値(m−トルイジン:pKa4.73、アニリン:pKa4.63)を有する。
【0154】
本発明の求核触媒は、オキシム結合(例えば、アミノオキシを使用)またはヒドラゾン形成(例えば、ヒドラジド化学を使用)に有用である。本発明の種々の実施形態において、抱合反応に求核触媒が0.1mM、0.2mM、0.3mM、0.5mM、0.5mM、0.6mM、0.7mM、0.8mM、0.9mM、1.0mM、1.5mM、2.0mM、2.5mM、3.0mM、3.5mM、4.0mM、4.5mM、5.0mM、5.5mM、6.0mM、6.5mM、7.0mM、7.5mM、8.0mM、8.5mM、9.0mM、9.5mM、10.0mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、または50mMの濃度で提供される。一実施形態において、求核触媒1〜10mMが提供される。本発明の種々の実施形態において、抱合反応のpHは、4.0〜7.0、4.5〜7.0、5.0〜6.5、5.0〜6.5である。種々の実施形態において、抱合反応のpHは、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、および7.5である。一実施形態において、このpHは5.5〜6.5である。
複合タンパク質の精製
【0155】
種々の実施形態において、酸化剤とともにインキュベートされたタンパク質および/または本発明による水溶性脂肪酸誘導体と抱合された治療用タンパク質の精製が望ましい。多数の精製法が当分野で既知であり、限定するものではないが、クロマトグラフ法、濾過法、および沈殿法が挙げられる(例えば、Guide to Protein Purification,Meth.Enzymology Vol 463(edited by Burgess RR and Deutscher MP),2nd edition,Academic Press 2009を参照されたい)。
【0156】
以下の実施例は、制限を意図するものではなく、本発明の特定の実施形態の例示に過ぎない。
【実施例】
【0157】
実施例1
ホモ二官能性リンカーNH2[OCH2CH2]2ONH2の調製
【0158】
ホモ二官能性リンカーNH
2[OCH
2CH
2]
2ONH
2
【化23】
【0159】
Boturyn et al.(Tetrahedron 1997;53:5485−92)に従って、第1級アミンの修正ガブリエル合成を利用した2ステップ有機反応で、2つの活性アミノオキシ基を含む3オキサペンタン−1,5−ジオキシアミンを合成した(
図1)。第1のステップでは、2,2−ジクロロジエチルエーテルの1つの分子をエンド−N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシミドの2つの分子とDMF中で反応させた。得られた中間体から、エタノール中でのヒドラジン分解によって、所望のホモ二官能性生成物を調製した。
実施例2
ホモ二官能性リンカーNH2[OCH2CH2]6ONH2の調製
【0160】
ホモ二官能性リンカーNH
2[OCH
2CH
2]
6ONH
2
【化24】
【0161】
Boturyn et al.(Tetrahedron 1997;53:5485−92)に従って、第1級アミンの修正ガブリエル合成を利用した2ステップ有機反応で、2つの活性アミノオキシ基を含む3,6,9,12,15−ペンタオキサ−ヘプタデカン−1,17−ジオキシアミンを合成した。第1のステップでは、ヘキサエチレングリコールジクロリドの1つの分子をエンド−N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシミドの2つの分子とDMF中で反応させた。得られた中間体から、エタノール中でのヒドラジン分解によって、所望のホモ二官能性生成物を調製した。
実施例3
ホモ二官能性リンカーNH2[OCH2CH2]4ONH2の調製
【化25】
【0162】
Boturyn et al.(Tetrahedron 1997;53:5485−92)に従って、第1級アミンの修正ガブリエル合成を利用した2ステップ有機反応で、2つの活性アミノオキシ基を含むホモ二官能性リンカーNH
2[OCH
2CH
2]
4ONH
2(3,6,9−トリアオキサウンデカン−1,11−ジオキシアミン)を合成した。第1のステップでは、ビス−(2−(2−クロロエトキシ)−エチル)−エーテルの1つの分子を、エンド−N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシミドの2つの分子とDMF中で反応させた。得られた中間体から、エタノール中でのヒドラジン分解によって、最終的ホモ二官能性生成物を調製した。
実施例4
16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシイミノ)−ヘキサデカン酸ナトリウム塩の調製
【0163】
Halligan and Nair(Arkivoc 2006(ii)101−106)およびHubbs and Heathcock(J Am Chem Soc,2003;125:12836−43)に従って、2ステップ有機反応で、脂肪酸-アミノオキシリンカー16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシイミノ)−ヘキサデカン酸ナトリウム塩を合成した。
【0164】
中間体1:16−オキソヘキサデカン酸ナトリウム塩
【化26】
【0165】
ジクロロメタン(10mL)およびテトラヒドロフラン(20mL)中の16−ヒドロキシヘキサデカン酸(800mg、2.9mmol)の冷却溶液(0℃)に、デス・マーチン・ペルヨージナン(1636mg、3.7mmol)を0℃で添加した。この混合物をAr雰囲気下、0℃で3.5時間、室温で2.5時間撹拌した。次いで、飽和重炭酸ナトリウム溶液中のチオ硫酸ナトリウムの15%溶液を添加し、この混合物を室温で1.5時間撹拌した。中間体1をジエチルエーテルで抽出し、硫酸ナトリウム上で乾燥後、有機層を蒸発乾固し、分離剤としてのシリカゲルおよびトルエン/酢酸エチル溶媒混合物を用いたカラムクロマトグラフィーによって精製した。収率:34%(白色固体)。
【0166】
生成物:16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシイミノ)−ヘキサデカン酸ナトリウム塩
【化27】
【0167】
無水テトラヒドロフラン(3mL)中の3,6,9−トリアオキサウンデカン−1,11−ジオキシアミン(146mg、0.65mmol)の溶液に、中間体1(19.1mg、0.07mmol)を添加した。この混合物をAr雰囲気下、室温で1.5時間撹拌した。次いで、この混合物を蒸発乾固し、分離剤としてのシリカゲルおよびジクロロメタン/メタノール/ヒューニッヒ塩基溶媒混合物を用いたカラムクロマトグラフィーによって精製した。収率:71%(白色固体)。
【0168】
質量分析(ESI):m/z=477,3529、[M+2H]
+
実施例5
16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシアミノ)−ヘキサデカン酸メチルエステルの調製
【0169】
Hang et al.(J Am Chem Soc 2007;129:2744−5)に従って、3ステップ有機反応で、脂肪酸メチルエステル-アミノオキシリンカー16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシアミノ)−ヘキサデカン酸メチルエステルを合成した。
【0170】
中間体1:16−ヒドロキシヘキサデカン酸メチルエステル
【化28】
【0171】
無水メタノール(27mL)中の16−ヒドロキシヘキサデカン酸(3000mg、10.79mmol)の冷却(0℃)溶液に、塩化アセチル(3.837mL、53.96mmol)を℃で2分以内に滴下添加し、次いでこの混合物をAr雰囲気下、室温で3.5時間撹拌した。その後、この混合物を蒸発乾固し、残留物をジクロロメタン(100mL)に溶解し、飽和重炭酸ナトリウム溶液(2×50mL)およびブライン溶液(1×50mL)で洗浄した。硫酸ナトリウム上で乾燥後、回収した有機層を蒸発乾固し、室温で真空乾燥した。収率:92%(白色固体)。
【0172】
中間体2:16−メチルスルホニルヘキサデカン酸メチルエステル
【化29】
【0173】
ジクロロメタン(40mL)中の中間体1(2807mg、9.80mmol)の冷却溶液(0℃)に、トリエチルアミン(1.502mL、10.78mmol)を添加し、次いでジクロロメタン(5mL)中の塩化メシル(0.834mL、10.78mmol)の予冷却溶液(0℃)を0℃で10分以内に滴下添加した。この混合物を0℃で30分間、室温で2.75時間撹拌した。次いで、この混合物をジクロロメタン(150mL)で希釈し、水(1×100mL)、飽和重炭酸ナトリウム溶液(2×100mL)、およびブライン溶液(1×100mL)で洗浄した。硫酸ナトリウム上で乾燥後、回収した有機層を蒸発乾固し、室温で真空乾燥した。収率:95%(淡黄白色固体)。
【0174】
生成物:16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシアミノ)−ヘキサ−デカン酸メチルエステル
【化30】
【0175】
無水N,N−ジメチルホルムアミド(22mL)中の3,6,9−トリアオキサウンデカン−1,11−ジオキシアミン(517mg、2.30mmol)の溶液に、無水N,N−ジメチルホルムアミド(7mL)中の中間体2(70mg、0.19mmol)の溶液をAr雰囲気下、室温で1時間滴下添加した。この混合物を異なる温度(室温、50℃、80℃)で2日間撹拌して反応を完了させた。次いで、この混合物を蒸発乾固し、分離剤としてのシリカゲルおよびジクロロメタン/メタノール溶媒混合物を用いたカラムクロマトグラフィーによって、この粗生成物を精製した。収率:31%(無色の部分的に凝固した白油)。
【0176】
質量分析(ESI):m/z=493,3824、[M+H]
+
実施例6
16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシアミノ)−ヘキサ−デカン酸メチルエステルの凝固第VIII因子の炭水化物部分とのカップリング
【0177】
2ステップ手順を用いてFA−rFVIIIを調製する。第1ステップにおいて、rFVIIIをNaIO
4で酸化し、アニオン交換クロマトグラフィー(AEC)によって精製する。続いて、この酸化rFVIIIをFA−アミノキシ試薬で改変する。
【0178】
rFVIII(45mg出発物質)をNaIO
4(最終濃度200μM)で酸化する。30分間のインキュベーション時間後(22℃)、1MのL−システイン水溶液(最終濃度:10mM)を添加して、酸化反応を停止させる。この酸化rFVIIIをEMD TMAE(M)上のアニオン交換クロマトグラフィーによって精製する。次いで、25μLの16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシアミノ)−ヘキサ−デカン酸メチルエステル(実施例3に従って調製したもの)のDMSO中10%(w/v)溶液をこの溶出液(タンパク質濃度2mg/mL)に添加し、カップリング反応を4℃で18時間実施する。次いでこのFA−rFVIII複合体をPhenyl Sepharose 4 FF上のHICによってさらに精製する。最後に、30kD膜(MILLIPORE)を用いたUF/DFによって、この溶出液を濃縮する。
実施例7
16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシアミノ)−ヘキサ−デカン酸メチルエステルの凝固第IX因子の炭水化物部分とのカップリング
【0179】
10mgのrFIXを反応緩衝液(20mM L−ヒスチジン、5mM CaCl
2、150mM NaCl、pH6.0)に溶解して、最終濃度2.5mg/mLとする。この溶液に5mMのNaIO
4水溶液を添加して、最終濃度100μMとした。この反応混合物を暗所での穏やかな撹拌下、4℃で1時間インキュベートした。次いで、過剰NaIO
4を除去するために、この混合物を予め平衡化したPD−10脱塩カラムに充填する。この混合物に8μLの16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシアミノ)−ヘキサ−デカン酸メチルエステル(実施例3に従って調製したもの)のDMSO中10%(w/v)溶液を添加し、カップリング反応を4℃、pH6.0で18時間実施する。次いで、この複合体を Q−Sepharose FF上のIEXによってさらに精製する。最後に、Vivaspin装置を用いたUF/DFによって、この溶出液を濃縮する。
実施例8
16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシアミノ)−ヘキサ−デカン酸メチルエステルの凝固第VIIa因子の炭水化物部分とのカップリング
【0180】
10mgのrFVIIaを反応緩衝液(50mM Hepes、150mM 塩化ナトリウム、5mM 塩化カルシウム、pH6.0)に溶解して、最終濃度2.0mg/mLとした。この溶液に、5mMのNaIO
4水溶液を添加して、最終濃度50μMとする。この反応混合物を暗所での穏やかな撹拌下、4℃で1時間インキュベートする。次いで、過剰NaIO
4を除去するために、この混合物を予め平衡化したPD−10脱塩カラムに装填する。この混合物に8μLの16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシアミノ)−ヘキサ−デカン酸メチルエステル(実施例3に従って調製したもの)のDMSO中10%(w/v)溶液を添加し、カップリング反応を4℃、pH6.0で18時間実施する。次いで、この複合体を Q−Sepharose FF上のIEXによってさらに精製する。最後に、Vivaspin装置を用いたUF/DFによって、この溶出液を濃縮する。
実施例9
16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシアミノ)−ヘキサ−デカン酸メチルエステルの凝固第VIII因子の炭水化物部分とのカップリング
【0181】
10mgのrFVIIIをHepes緩衝液(50mM Hepes、150mM NaCl、5mM 塩化カルシウム、pH6.0)に溶解して、タンパク質濃度を2mg/mLとする。次いで、10μLの16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシアミノ)−ヘキサ−デカン酸メチルエステル(実施例3に従って調製したもの)のDMSO中10%(w/v)溶液をこのFVIII溶液に添加する。続いて求核触媒m−トルイジンの水溶液(50mM)を調製し、この混合物に15以内に添加して最終濃度10mMとする。最後に、40mMの過ヨウ素酸ナトリウム水溶液を添加して濃度400μMとする。この反応混合物を暗所での穏やかな撹拌下、温度22℃で120分間インキュベートする。次いで、L−システイン水溶液(1M)を添加して反応混合物中の最終濃度10mMにし、60分間インキュベートすることにより反応を停止させる。続いて、この反応混合物をQ−Sepharose FFを充填したIEXカラム(1.6×8cm)に装填する。このカラムを20カラム体積の平衡化緩衝液(20mM Hepes、5mM CaCl
2、pH7.4)で洗浄し、このFA−rFVIII複合体を緩衝液B(20mM Hepes、5mM CaCl
2、0.5M NaCl、pH7.4)で溶出させる。最後に、この生成物に、ダイアフィルトレーション緩衝液としてHepes緩衝液7.4(20mM Hepes、150mM NaCl、5mM CaCl
2、pH7.4)を用いた、Vivaspin装置によるUF/DFを実施する。
実施例10
16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシアミノ)−ヘキサ−デカン酸メチルエステルの凝固第IX因子の炭水化物部分とのカップリング
【0182】
7mgのrFIXをHis緩衝液(20mM His、150mM NaCl、5mM CaCl
2、pH6.0)に溶解して、タンパク質濃度2mg/mLとする。次いで、7μLの16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシアミノ)−ヘキサ−デカン酸メチルエステル(実施例3に従って調製したもの)のDMSO中10%(w/v)溶液をこのFIX溶液に添加する。次いで、求核触媒m−トルイジンの水溶液(50mM)を調製し、この混合物に15以内に添加して最終濃度10mMとする。最後に、40mMの過ヨウ素酸ナトリウム水溶液を添加して濃度250μMとする。この反応混合物を暗所での穏やかな撹拌下、温度22℃で120分間インキュベートする。続いて、L−システイン(最終濃度:5mM)を室温で30分間添加して、反応を停止させる。
【0183】
このFA−rFIX複合体をアニオン交換クロマトグラフィーによって精製する。この反応混合物を10mLの緩衝液A(50mM Hepes、5mM CaCl
2、pH7.5)で希釈し、緩衝液Aで平衡化した5mLのHiTrap Q FF カラム(GE Healthcare,Fairfield,CT)に装填する。同じ緩衝液を用いて、5CVでカラムを洗浄する。次いで、カラムを緩衝液B(50mM Hepes、1M NaCl、5mM CaCl
2、pH7.5)で溶出する。この複合体を含む画分を再生セルロースで作られた10kD膜を用いたUF/DFによって濃縮する。150mM NaClおよび5mM CaCl
2を含む20mM Hepes緩衝液(pH7.2)に対する最終ダイアフィルトレーションステップを実施する。
実施例11
16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシアミノ)−ヘキサ−デカン酸メチルエステルの凝固第VIIa因子の炭水化物部分とのカップリング
【0184】
10mgのrFVIIaをHepes緩衝液(50mM Hepes、150mM 塩化ナトリウム、5mM 塩化カルシウム、pH6.0)に溶解する。次いで、10μLの16−(2−(2−(2−(2−アミノオキシエトキシ)−エトキシ)−エトキシ)−エトキシアミノ)−ヘキサ−デカン酸メチルエステル(実施例3に従って調製したもの)のDMSO中10%(w/v)溶液をこのFVIIa溶液に添加する。続いて求核触媒m−トルイジンの水溶液(50mM)を調製し、この混合物に15以内に添加して最終濃度10mMとする。最後に、40mMの過ヨウ素酸ナトリウム水溶液を添加して濃度250μMとする。この反応混合物を暗所での穏やかな撹拌下、温度22℃で120分間インキュベートする。続いて、L−システイン(最終濃度:5mM)を室温で30分間添加して、反応を停止させる。このFA−rFVIIa複合体をアニオン交換クロマトグラフィーによって精製する。この反応混合物10mLの緩衝液A(50mM Hepes、pH7.4)で希釈し、緩衝液Aで平衡化した5mLのHiTrap Q FF カラム(GE Healthcare,Fairfield,CT)に装填する。同じ緩衝液を用いて、5CVでカラムを洗浄する。次いで、カラムを緩衝液B(50mM Hepes、1M NaCl、5mM CaCl
2、pH7.4)で溶出する。この複合体を含む画分を再生セルロースで作られた10kD膜を用いたUF/DFによって濃縮する。150mM NaClおよび5mM CaCl
2を含む20mM Hepes緩衝液(pH7.2)に対する最終ダイアフィルトレーションステップを実施する。
実施例12
求核触媒存在下での活性アミノオキシ基を含むFA誘導体の酸化炭水化物部分とのカップリング
【0185】
活性アミノオキシ基を含むFA誘導体の治療用酸化タンパク質(本明細書の表1に記載のタンパク質など)とのカップリングも提供される。
【0186】
アミノオキシ基を含むFA誘導体のカップリングのために、治療用タンパク質(例えば、EPO、G−CSF、またはインスリン;表1参照;濃度:0.5〜3mg/mL)の炭水化物部分(主にN−グリカン)をまずNaIO
4(濃度:200μM)で酸化する。次いで、L−システイン(最終濃度:5mM)の添加により反応を停止させ、この試薬をUF/DFによって分離する。ダイアフィルトレーション後、25M過剰量を用いてFAアミノオキシ試薬(すなわち、FA誘導体)を添加し、求核触媒m−トルイジン(濃度:10mM)の存在下で、穏やかな撹拌下、pH6.0、室温で1時間のカップリング反応を実施する。続いて、反応混合物をイオン交換(IEX)カラムに装填する。このカラムを5CVを上回る洗浄用緩衝液で洗浄し、この複合体をNaClリニアグラジエントで溶出する。最後にこの複合体を含む画分にUF/DFを実施する。
実施例13
求核触媒存在下での活性アミノオキシ基を含むFA誘導体の酸化炭水化物部分とのカップリング
【0187】
アミノオキシ基を含むFA誘導体の治療用タンパク質の炭水化物部分とのカップリングのために、求核触媒m−トルイジン(濃度:10mM)の存在下、タンパク質(例えば、EPO、G−CSF、またはインスリン;表1参照;濃度:0.5〜3mg/mL)をpH6.0でNaIO
4(濃度:300μM)とともに室温で1時間インキュベートする。次いで、L−システイン(最終濃度:5mM)の添加により反応を停止させ、この反応混合物をイオン交換(IEX)カラムに装填する。このカラムを5CVを上回る洗浄用緩衝液で洗浄し、この複合体をNaClリニアグラジエントで溶出する。最後にこの複合体を含む画分にUF/DFを実施する。
実施例14
求核触媒存在下での活性アミノオキシ基を含むFA誘導体の酸化血液凝固タンパク質とのカップリング
【0188】
活性アミノオキシ基を含むFA誘導体の酸化血液凝固タンパク質(上記の実施例に記載のようなFIX、FVIII、およびFVIIaなど)とのカップリングは、濃度範囲2〜20mMの求核触媒、例えばm−トルイジンの存在下で実施してもよい。
実施例15
水溶性MAL脂肪酸リンカーの調製
【0189】
ω位の水溶性PEG鎖および活性MAL基を含む脂肪酸リンカーを2ステップ合成で調製する。
【0190】
ステップ1:16−ヒドロキシヘキサデカン酸メチルエステルの調製:
【化31】
【0191】
実施例3に従って、メタノール中、室温で5時間、市販の16−ヒドロキシヘキサデカン酸を塩化アセチルでエステル化して対応するメチルエステルを得る(Hang et al.,Chemical probes for the rapid detection of fatty−acylated proteins in mammalian cells,JACS 2007;129:2744−5)。
【0192】
ステップ2:MAL脂肪酸リンカーの調製:
【化32】
【0193】
光延反応を利用して、THF中、室温で、16−ヒドロキシヘキサデカン酸メチルエステルを市販のMAL−PEG−COOH(mal−Peg(12)−COOH/IRIS Biotech GmbH,Marktredwitz,Germany)と一晩反応させる(Toyokuni et al.,Synthesis of a New Heterobifunctional Linker,N−[4−(Aminooxy)butyl]−maleimide,for Facile Access to a Thiol−Reactive 18F−Labeling Agent,Bioconjugate Chem 2003;14:1253−9)。
実施例16
水溶性NHS脂肪酸リンカーの調製
【0194】
ω位の水溶性PEG鎖および末端活性NHSエステルを含む脂肪酸リンカーを4ステップ合成を使用して調製する。
【0195】
ステップ1:16−ブロモヘキサデカン酸メチルエステルの調製
【化33】
【0196】
還流温度で一晩、市販の16−ブロモヘキサデカン酸をメタノールおよび触媒量の濃硫酸でエステル化して、対応するメチルエステルを得る(Zinic et al.,Positionally Isomeric Organic Gelators:Structure−Gelation Study,Racemic versus Enantiomeric Gelators,and Solvation Effects,Chem Eur J 2010;16:3066−82)。
【0197】
ステップ2:16−アジドヘキサデカン酸メチルエステルの調製
【化34】
【0198】
アセトニトリル中、還流温度で4日間、16−ブロモヘキサデカン酸メチルエステルをアジ化ナトリウムと反応させて対応するアジドを得る(Zinic et al.,Positionally Isomeric Organic Gelators:Structure−Gelation Study,Racemic versus Enantiomeric Gelators,and Solvation Effects,Chem.Eur.J.2010;16:3066−82)。
【0199】
ステップ3:16−アミノヘキサデカン酸メチルエステルの調製
【化35】
【0200】
メタノール中、3バールで3時間、16−アジドヘキサデカン酸メチルエステルをパラジウム/活性炭で触媒を用いて水素化し、対応するアミンを得る(Zinic et al.,Positionally Isomeric Organic Gelators:Structure−Gelation Study,Racemic versus Enantiomeric Gelators,and Solvation Effects,Chem.Eur.J.2010;16:3066−82)。
【0201】
ステップ4:NHS脂肪酸リンカーの調製
【化36】
【0202】
1,4−ジオキサン中、室温で3日間、16−アミノヘキサデカン酸メチルエステルを市販のNHS−PEG−NHS(NHS−dPEG(4)−NHS/IRIS Biotech GmbH,Marktredwitz,Germany)と反応させてNHS脂肪酸リンカーを得る(Cline et al.,The Aminolysis of N−Hydroxysuccinimide Esters.A Structure−Reactivity Study,JACS 1987;109:3087−91)。
実施例17
タンパク質FA複合体の分析による特徴付け
【0203】
本明細書の実施例に従って調製したFA−rFVIII、rFIX、もしくはFVIIa試料のアルブミン結合特性を酵素結合免疫吸着検定(ELISA)系を使用してインビトロで検証する。96ウェルプレートをヒト血清アルブミン(HSA)に対するポリクローナル抗体でコーティングする。次のステップは、PBS−ゼラチン緩衝液によるELISAプレートのブロッキングである。次いで、HASをその抗体に結合させ、その後異なる濃度で希釈したFA−タンパク質試料を結合させる。最後に、このHSA−タンパク質試料をペルオキシダーゼで標識した抗VIII、抗FIX、もしくは抗FVIIa抗体により検出する。基質としてテトラメチル−ベンジジン(TMB)を用いて、ペルオキシダーゼ活性を検出する。ELISAリーダーを用いて、450nmの発色強度を測定する。FA−タンパク質試料のHASとの結合は、異なる試料濃度をx軸に示し、それらが対応する吸光度値をy軸に示すことによって評価する。
実施例18
アミノオキシ基を含む水溶性PEG化脂肪酸リンカーの調製
【0204】
実施例1に記載の3−オキサペンタン−1,5−ジオキシアミンを用いて、ω位のアミノオキシ部分が脂肪酸カルボキシル基と連結した水溶性PEG鎖を含む脂肪酸リンカーを3ステップ合成で調製する。
【0205】
ステップ1:N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−3−オキサペンタン−1,5−ジオキシアミンの調製
【化37】
【0206】
1,4−ジオキサン中、周囲温度で1時間、3−オキサペンタン−1,5−ジオキシアミンを9−フルオレニルメチルクロロホルメートと反応させた。この溶液を減圧下で蒸発させ、溶媒混合物としてジクロロメタン/メタノール20/1(v/v)を用いるシリカゲルクロマトグラフィーを使用してこの粗生成物を精製し、純粋なモノFMOC保護ジオキシアミンを得た(Boturyn et al.,Synthesis of Fluorescent Probes for the Detection of Abasic Sites in DNA,Tetrahedron 1997;Vol.53,No.15,5485−92)。
【0207】
ステップ2:ヘキサデカン酸(2−(2−(N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)アミノオキシ)エトキシ)エトキシ)アミドの調製
【化38】
【0208】
THF中、周囲温度で一晩、N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−3−オキサペンタン−1,5−ジオキシアミンを市販のパルミチン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルと反応させて、モノFMOC保護アミノオキシ−脂肪酸複合体を得る(Jong et al.,Synthesis of ceramides using N−hydroxysuccinimide esters,Journal of Lipid Research 1972;Vol.13,819−22)。
【0209】
ステップ3:ヘキサデカン酸(2−(2−アミノオキシエトキシ)エトキシ)アミドの調製
【化39】
【0210】
ジクロロメタン中、周囲温度で、モノFMOC保護アミノオキシ−脂肪酸複合体をピペリジンと反応させて、最終生成物として脱保護アミノオキシ−脂肪酸リンカーを得る(Boturyn et al.,Synthesis of Fluorescent Probes for the Detection of Abasic Sites in DNA,Tetrahedron 1997;Vol.53,No.15,5485−92)。
実施例19
MAL脂肪酸リンカーのA1PIとのカップリング
【0211】
光延反応を利用した16−ヒドロキシヘキサデカン酸メチルエステルと市販のMAL−PEG−COOH(mal−Peg(12)−COOH/IRIS Biotech GmbH,Marktredwitz,Germany)との反応によって、実施例15に記載のように、MAL基を含む脂肪酸リンカーを調製する。このリンカーをA1PIの遊離SH基とカップリングさせる。
【0212】
10mgの精製A1PI(濃度:1mg/mL)を反応緩衝液(20mM リン酸塩、5mM EDTA、pH7.0)に溶解し、10μLのMAL脂肪酸リンカーのDMSO中5%(w/v)溶液をこのA1PI溶液に添加する。改変反応を室温で2時間実施したあと、L−システイン(最終濃度:10mM)による反応停止ステップを行う。L−システインの添加後、穏やかな撹拌下、反応混合物を同じ温度でさらに1時間インキュベートする。改変されたA1PIを平衡化緩衝液(25mM リン酸塩、pH6.5)で希釈してこの溶液を伝導率4.5mS/cm未満に補正し、カラム体積(CV)5mLの予備充填したHiTrap Q FF(GE−Healthcare)に装填する。次いで、このカラムを10CVの平衡化緩衝液(流量:2mL/分)で平衡化する。最後に、PEG−A1PIを溶出緩衝液(25mM Na
2HPO
4、1M NaCl、pH6.5)を用いてリニアグラジエントで溶出する。
実施例20
NHS脂肪酸リンカーの凝固第VIII因子とのカップリング
【0213】
16−ヒドロキシヘキサデカン酸メチルエステルと市販のNHS−PEG−NHS(NHS−dPEG(4)−NHS(IRIS Biotech GmbH,Marktredwitz,Germany)との反応によって、実施例16に記載のように、NHS基を含む脂肪酸リンカーを調製する。このリンカーを凝固第VIII因子のリジン残基の遊離アミノ基とカップリングさせる。
【0214】
10mgのrFVIIIをHepes緩衝液(50mM Hepes、150mM NaCl、5mM 塩化カルシウム、pH6.0)に溶解して、タンパク質濃度を2mg/mLとする。次いで、10μLのNHS脂肪酸リンカーのDMSO中10%(w/v)溶液をこのFVIII溶液に添加する。この反応混合物を暗所での穏やかな撹拌下、温度22℃で120分間インキュベートする。次いで、グリシン水溶液(1M)を添加して反応混合物中の最終濃度20mMとし、反応を停止させる。この混合物を穏やかな撹拌下、室温で15分間インキュベートし、続いてQ−Sepharose FF(1.6×8cm)を充填したIEXカラムに装填する。このカラムを20カラム体積の平衡化緩衝液(20mM Hepes、5mM CaCl
2、pH7.4)で洗浄し、このFA−rFVIII複合体を緩衝液B(20mM Hepes、5mM CaCl
2、0.5M NaCl、pH7.4)で溶出させる。最後に、この生成物に、ダイアフィルトレーション緩衝液としてHepes緩衝液7.4(20mM Hepes、150mM NaCl、5mM CaCl
2、pH7.4)を用いた、Vivaspin装置によるUF/DFを実施する。