特許第6138059号(P6138059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138059
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】タッチパネル
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20170522BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   G06F3/041 430
   G06F3/044 124
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-1390(P2014-1390)
(22)【出願日】2014年1月8日
(65)【公開番号】特開2015-130083(P2015-130083A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鴻野 勝正
【審査官】 円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−198615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の一方面側の第1方向に間隔をあけて配置される複数列の第1電極と、前記基材の一方面側の前記第1方向と交差する第2方向に間隔をあけて配置される複数列の第2電極と、を備え、表示装置の前面に取り付けられるタッチパネルであって、
前記基材は、前記第1電極及び前記第2電極が配置されるセンサ領域と、前記センサ領域の周囲に設けられる周縁領域と、を有し、
前記第1電極は、複数の導体線を交差させることで形成されかつ前記第2方向に間隔をあけて配置された複数の第1電極セルを有し、
前記第2電極は、複数の導体線を交差させることで形成されかつ前記第1方向に間隔をあけて配置された複数の第2電極セルを有し、
前記第1電極セル及び前記第2電極セルには、配線が接続され、
前記配線は、互いに交差することなく前記周縁領域に向けて引き出され、同列の前記第1電極セルから引き出される配線同士及び同列の前記第2電極セルから引き出される配線同士が電気的に結合されているタッチパネル。
【請求項2】
前記配線は、少なくとも前記第1電極セルと前記第2電極セルとの間を延びる部分が、一部の前記導体線と平行である請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記第1電極セルと前記第2電極セルとの間には、前記導体線及び前記配線とは接続されない補助線が複数設けられ、前記補助線は前記配線と平行である請求項1又は2に記載のタッチパネル。
【請求項4】
少なくとも一部の前記配線には、当該配線と交差し、当該配線に隣接する前記配線及び前記導体線とは接続されない第1模造線が設けられている請求項1〜3のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項5】
少なくとも一部の前記補助線には、当該補助線と交差し、前記配線及び前記導体線とは接続されない第2模造線が設けられている請求項3又は請求項3を引用する請求項4に記載のタッチパネル。
【請求項6】
前記第1模造線及び前記第2模造線の少なくとも一方は、前記導体線同士のピッチと等しいピッチを有する複数の線上に位置するように配置されている請求項4を引用する請求項5に記載のタッチパネル。
【請求項7】
前記導体線の方向が表示装置のブラックマトリクスに対して斜め方向である請求項1〜6のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項8】
前記第1電極及び前記第2電極は、両端部間の導通性を阻害しない範囲で前記導体線を切断する切断部を備える請求項1〜7のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項9】
相互容量検出型の静電容量式タッチパネルである請求項1〜8のいずれかに記載のタッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式の透明なタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピューターや電子機器において、押しボタンを用いずにディスプレイの表示を利用した操作の開発が盛んであり、その操作のために、ディスプレイの前面に透明のタッチパネルを配置して、タッチ位置を検出している。タッチパネルの種類としては、抵抗膜式、表面弾性波式、赤外線方式などがあり、指のタッチや近接による静電容量の変化で位置を検出する静電容量式もある。例えば、特許文献1には、マトリクス状の電極(X方向、Y方向の2層構造)の静電容量式タッチスイッチが記載されている。
【0003】
従来の静電容量式タッチパネルは、基材の一方面に帯状にパターニングされたインジウム錫酸化物(ITO)などからなる透明の第1電極が形成された第1導電性基材と、基材の一方面に帯状にパターニングされたITOなどからなる透明の第2電極が形成された第2導電性基材とを備えており、第1電極及び第2電極が互いに対向するようにして、両導電性基材が粘着層を介して貼着される。しかしながら、ITOは抵抗率が高く、200Ω/□〜1000Ω/□が一般的である。特に大型のタッチパネルでは、電極の端子間の抵抗値が増加し、これに伴い静電容量検出の感度が低下するため、タッチパネルとして動作させることが困難になる場合がある。
【0004】
そこで、ITOを使用しない静電容量式のタッチパネルが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2のタッチパネルでは、銅又は銅合金からなる金属線を網目状に形成して電極を形成することで、電極の透過率を70%以上にしており、視認性を維持したまま低抵抗の電極を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006−511879号公報
【特許文献2】特開2013−069257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2のタッチパネルでは、基材の一方面に網目状の第1電極が形成された第1導電性基材と、基材の一方面に網目状の第2電極が形成された第2導電性基材とを重ね合わせた構造であるため、タッチパネル全体の厚みが厚くなる。近年、タッチパネルは、薄型・軽量化が求められているところ、特許文献2のタッチパネルでは軽薄の要求に不利であるという問題がある。また、2枚の基材にそれぞれ電極や配線などを形成する必要があるため、タッチパネル製造のための工程が多くなり、タッチパネルを効率よく製造することが困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、低抵抗な電極を備えるとともに、薄型化・軽量化を実現できるタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、基材と、前記基材の一方面側の第1方向に間隔をあけて配置される複数列の第1電極と、前記基材の一方面側の前記第1方向と交差する第2方向に間隔をあけて配置される複数列の第2電極と、を備え、表示装置の前面に取り付けられるタッチパネルであって、前記基材は、前記第1電極及び前記第2電極が配置されるセンサ領域と、前記センサ領域の周囲に設けられる周縁領域と、を有し、前記第1電極は、複数の導体線を交差させることで形成されかつ前記第2方向に間隔をあけて配置された複数の第1電極セルを有し、前記第2電極は、複数の導体線を交差させることで形成されかつ前記第1方向に間隔をあけて配置された複数の第2電極セルを有し、前記第1電極セル及び前記第2電極セルには、配線が接続され、前記配線は、互いに交差することなく前記周縁領域に向けて引き出され、同列の前記第1電極セルから引き出される配線同士及び同列の前記第2電極セルから引き出される配線同士が電気的に結合されているタッチパネルによって達成される。
【0009】
上記構成のタッチパネルにおいては、前記配線は、少なくとも前記第1電極セルと前記第2電極セルとの間を延びる部分が、一部の前記導体線と平行であることが好ましい。
【0010】
また、前記第1電極セルと前記第2電極セルとの間には、前記導体線及び前記配線とは接続されない補助線が複数設けられ、前記補助線は前記配線と平行であることが好ましい。
【0011】
また、少なくとも一部の前記配線には、当該配線と交差し、当該配線に隣接する前記配線及び前記導体線とは接続されない第1模造線が設けられていることがより好ましい。
【0012】
また、少なくとも一部の前記補助線には、当該補助線と交差し、前記配線及び前記導体線とは接続されない第2模造線が設けられていることが好ましい。
【0013】
また、前記第1模造線及び前記第2模造線の少なくとも一方は、前記導体線同士のピッチと等しいピッチを有する複数の線上に位置するように配置されていることが好ましい。
【0014】
また、前記導体線の方向が表示装置のブラックマトリクスに対して斜め方向であることが好ましい。
【0015】
また、前記第1電極及び前記第2電極は、両端部間の導通性を阻害しない範囲で前記導体線を切断する切断部を備えることが好ましい。
【0016】
また、相互容量検出型の静電容量式タッチパネルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の導体線を交差させることで網目状の第1電極及び第2電極を形成しているので、希少金属であるインジウムの使用を避けることができ、ITOを用いるよりも基材上に形成される電極パターンの低抵抗化を図ることができ、かつ、電極パターンの視認性も向上させることができるので、静電容量式のタッチパネルとして好適に用いることができる。また、第1電極及び第2電極のいずれもが基材の一方面に形成されているので、タッチパネルの構造の簡略化と全体的な厚み・重さの軽減(薄型化・軽量化)を実現できるという優位性を有する。さらに、各電極セルに接続された各配線を、互いに交差することなく基材の周縁領域に向けて引き出し、所定の配線同士を結合しているので、基材のセンサ領域は、単純な構造を有し、単一のフォトリソグラフィ又は他の印刷方法を用いて基板上に直接形成可能である。よって、タッチパネル製造のための工程を少なくすることができ、製造プロセスが単純になるので、タッチパネルを効率よく製造することができるうえ、製造コストを低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るタッチパネルの平面図である。
図2図1の概略断面図である。
図3図1の一部分を拡大して示す平面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係るタッチパネルの平面図である。
図5図4の一部分を拡大して示す平面図である。
図6】本発明の他の実施形態に係るタッチパネルの一部分を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実態形態について添付図面を参照して説明する。尚、各図面は、構成の理解を容易にするため、実寸比ではなく部分的に拡大又は縮小されている。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るタッチパネルの平面図である。図2は、図1の概略断面図である。図3は、図1の一部分を拡大した平面図である。本実施形態に係るタッチパネル1は、静電容量式のタッチパネルであり、より具体的には、相互容量検出型の静電容量式のタッチパネルである。この種のタッチパネル1は、透明な基材2と、基材2の一方面T側に設けられた複数列の帯状の第1電極3及び複数列の帯状の第2電極4とを備えており、一方の第1電極3に駆動電圧を印加し、他方の第2電極4により指との間の静電容量の変化を検知して第2電極4によりY位置を検知し、第1電極3によりX位置を検知する。相互容量検出型のタッチパネルは、操作者がタッチパネルのセンサ領域R内で同時に多点のタッチ操作を行うマルチタッチを行った場合でも、各タッチ位置の検出を正確に行うことができるため、自己容量検出型のタッチパネルよりも好ましい方式である。このようなタッチパネル1は、例えば、銀行端末(キャッシュディスペンサー)、券売機、携帯電話、スマートフォン、タブレットデバイス、ノート型パソコン、ディスプレイ一体型パソコン、カーナビゲーションシステム、ゲーム機器、POS端末などの表示装置に取り付けられて使用される。
【0021】
基材2は、誘電体基材である。基材2の材料は、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンナフタレートなどの透明材料が挙げられる。基材2の厚みは10μm〜2000μm程度が好ましい。また、これらの材料を多層に積層してもよい。また、基材2の表面及び裏面に、表面及び裏面の保護のためのハードコート層や、反射防止層、防汚層、アンチブロッキング層、受容層などの機能層を設けたり、プラズマ処理などを施したりしてもよい。基材2は、指や導電性のペンなどでタッチされる可能性のある中央のセンサ領域Rと、センサ領域Rを取り囲む周縁領域Cとを有している。複数列の第1電極3及び第2電極4は、センサ領域R内に配置されている。
【0022】
第1電極3は、基材2の一方面Tの第1方向(図示例では左右のY方向)に所定間隔をあけて列を成して配置されており、隣接する第1電極3間は電気的に絶縁されている。各列の第1電極3は、それぞれ複数の第1電極セル30を備えている。一方、第2電極4は、基材2の一方面Tの前記第1方向(Y方向)と垂直に交差する第2方向(図示例では上下のX方向)に所定間隔をあけて列を成して配置されており、隣接する第2電極4間が電気的に絶縁されている。各列の第2電極4は、それぞれ複数の第2電極セル40を備えている。なお、本実施形態では、第1方向(Y方向)及び第2方向(X方向)は直交しているが、直交しない角度で基材2の一方面T上に第1電極3及び第2電極4を配置することもできる。
【0023】
複数の第1電極セル30は、基材2の一方面Tの第2方向(X方向)に等間隔で配置されている。第1電極セル30は、X方向に対して斜め方向(U方向又はV方向)を向く2種類の導体線L1,L2(図3に示す)を複数交差させることによって網目状に形成されており、複数の格子Kが組み合わされた形状である。格子Kは、図示例では正方形状であるが、これに限られるものではなく菱形状など任意の形状であってもよい。導体線L1,L2の線幅は、例えば1μm〜30μm程度であり、好ましくは1μm〜15μm程度である。また、導体線L1,L2のピッチは、例えば50μm〜500μm程度である。また、導体線L1,L2の厚みは、例えば0.1μm〜10μm程度である。このような寸法を有する第1電極セル30は、導体線L1,L2の線幅が非常に細く、線幅に対するピッチが十分に大きいため目立ちにくい。
【0024】
複数の第2電極セル40は、基材2の一方面Tの第1方向(Y方向)に等間隔で配置されている。第1電極セル30及び第2電極セル40の外形は、本実施形態では菱形状であり、第2電極セル40は、基材2の一方面T上に設けられた第1電極セル30と重ならないように第1電極セル30が存在しない空いたスペースを埋めるように設けられる。これにより、基材2のセンサ領域Rは、複数の第1電極セル30及び複数の第2電極セル40が敷き詰められた状態となる。また、センサ領域Rには、敷き詰められた各電極セル30,40の間を延びる隙間S1,S2が設けられている。各隙間S1,S2は、X方向に対して斜め方向のU方向及びV方向にそれぞれ延びて周縁領域Cまで達している。第2電極セル40も、第1電極セル30と同様に、2種類の導体線L1,L2を複数交差させることによって網目状に形成されている。この第2電極セル40の導体線L1,L2は、第1電極セル30の導体線L1,L2と同じ線幅、ピッチ、厚みであり、第2電極セル40は、第1電極セル30と同形状の格子Kが複数組み合わされた形状である。第2電極セル40の導体線L1,L2は、第1電極セル30の導体線L1,L2と同じ材料で形成されている。これにより、第2電極セル40を、第1電極セル30と一括して基材2の一方面T上に形成できるので、効率よく形成することが可能である。
【0025】
なお、第1電極セル30及び第2電極セル40の外形は、必ずしも菱形状である必要はなく、第1電極セル30と第2電極セル40との間で絶縁性が確保され、指などの接触ポイントを検出可能である限り、任意の形状とすることができる。
【0026】
また、上記した説明において、網目状とは、導体線L1,L2が交点を有するように交差していることに加えて、線が交わる部分において少なくとも一方の線が断続しているために線と線とが交点を有さないが交差していること(略網目状)も含んでいる。
【0027】
上記導体線L1,L2は、それぞれ表示装置(図示せず)のブラックマトリクスに対して斜め方向(X方向ないしはY方向に対して傾斜するU方向又はV方向)を向いていることが好ましい。導体線L1,L2がブラックマトリクスと同方向を向いていると、モアレが発生しやすいため、これにより、モアレの発生を防止している。この理由から、後述する配線5や補助線6もブラックマトリクスに対して傾斜することとなる。
【0028】
上記導体線L1,L2は、例えばフォトリソグラフィを使用して基材2上に形成することができる。例えば、基材2の一方面T上に銅や銀などの金属薄膜を成膜した後、金属薄膜の表面に感光性レジストを薄く塗布し加熱する。レジストの塗布面にパターンマスクを配置し、その上から紫外線を所定時間照射して露光することで、露光された部分と露光されていない部分からなるパターンを作製する。そして、現像液を用いて未露光の部分のレジストを除去してレジストパターンを形成し、金属薄膜の露出部分に対してエッチングを行って基材2上から除去し、基材2上に導体線L1,L2の配線パターンを形成する。その後、金属薄膜上の余分なレジストを除去することで、導体線L1,L2が形成される。金属薄膜の成膜は、スパッタリングや真空蒸着などの成膜方法で行われる。また、エッチングは、酸や酸化剤などによる湿式エッチング、又は、レーザーアブレーションや腐食性ガスを用いた乾式エッチングで行われる。
【0029】
なお、導体線L1,L2の形成時には、導体線L1,L2の経年劣化を防止するために防錆層を表面に設けることが好ましい。防錆層は、例えば、基材2の一方面T上に金属薄膜を形成する際に、金属薄膜の表面にニッケル銅(NiCu)などの防錆作用を有する金属を薄膜として堆積させることで、形成することができる。
【0030】
また、導体線L1,L2の形成時には、メッシュ状にパターニングされる第1及び第2電極セル30,40のインビジブル性(電極有/無の差異が見えにくい)を悪化させる金属光沢を抑えるために黒化処理を行うことが好ましい。この黒化処理は、例えば、基材2の一方面T上に金属薄膜を形成する際に、基材2の一方面T又は基財2の一方面Tに成膜された金属薄膜の表面を、黒色などの光の反射を抑制可能な低反射色に変色させることで行うことができる。基材2の一方面Tや金属薄膜の表面は、例えば金属薄膜をスパッタリングや真空蒸着などで基材2の一方面Tに成膜する時に、酸素や窒素などのガスをチャンバー内に流し、金属の酸化や窒化により生成される生成物質を薄膜として、金属薄膜の最下層又は最表層に堆積させることで、黒色などの低反射色に変色させることができる。これにより、エッチング及びレジスト除去後の導体線L1,L2は、黒化処理により形成された黒化層を、その表面又は裏面(基材2との境界面)に有する。その結果、導体線L1,L2の金属光沢を抑えることができるので、第1及び第2電極セル30,40のインビジブル性を良好とすることができる。なお、金属薄膜を基材2の一方面Tに成膜する時に、光反射率の低い金属を金属薄膜の表面又は裏面(基材2との境界面)に堆積することで、基材2の一方面Tや金属薄膜の表面を黒色などの低反射色に変色させてもよい。
【0031】
また、導体線L1,L2の形成後、硫酸や水酸化ナトリウム水溶液などの薬液に導体線L1,L2の表面を浸漬させて、黒色などの低反射色に変色させることでも、黒化処理を行うことができる。その他、めっきなどにより、導体線L1,L2上に、酸化銅などの光反射率が低い酸化物などを堆積させることでも、黒化処理を行うことができる。
【0032】
なお、導体線L1,L2の形成方法としては、上記以外のフォトリソグラフィを使用してもよい。例えば、銀インクのような感光性を有する導電性インクを用いたフォトリソグラフィによっても、導体線L1,L2を形成することができる。また、フォトリソグラフィによる方法に限定されず、銀、金、白金、パラジウム、銅、カーボンなどの極微細な導電性粒子を含む導電性インクや、PEDOT・PSSのような透明導電性樹脂を基材2上にスクリーン印刷やグラビア印刷、インクジェット印刷などの公知の印刷方法を用いて細線パターン状に印刷することでも、導体線L1,L2を形成することもできる。
【0033】
各第1電極セル30及び各第2電極セル40には、線状の配線5が接続されている。各配線5は、各第1電極セル30又は各第2電極セル40から基材2の周縁領域Cまで互いに交差することなく延びるように引き出されている。本実施形態では、周縁領域Cに隣接する各第1電極セル30及び各第2電極セル40(すなわち、帯状の各第1電極3及び各第2電極4の両端に配置された各第1電極セル30及び各第2電極セル40)に接続された配線5は、センサ領域Rの外側に配置されてそのまま周縁領域Cを延びている。一方、その他の各第1電極セル30及び各第2電極セル40に接続された配線5は、第1電極セル30と第2電極セル40との間の隙間S1,S2を延びて周縁領域Cまで引き出されている。例えば、図1及び図3では、各配線5は、各電極セル30,40の上側の端部から、各電極セル30,40の上方において隣接する隙間S1,S2のうち、U方向に延びる隙間S1に引き出され、この隙間S1を周縁領域Cまで直線状に延びている。また、各配線5は、この隙間S1を直線状に延びる際、各電極セル30,40と接触することがないように、第1電極セル30及び第2電極セル40の導体線L1,L2のうち、U方向に延びる導体線L1と平行に延びており、かつ、他の電極セル30,40から引き出された配線5と交差することがないように、互いに間隔をあけて平行に延びている。なお、平行とは、完全な平行に加え、平行から僅かに傾いた状態も含んでいる。配線5の線幅は、例えば1μm〜30μm程度であり、好ましくは1μm〜15μm程度である。また、配線5のピッチは、例えば50μm〜500**μm程度である。また、配線5の厚みは、例えば0.1μm〜10μm程度である。
【0034】
なお、図1及び図3では、各配線5は、各電極セル30,40から隙間S1を左斜め上方に向かって延びて周縁領域Cまで引き出されているが、隙間S1を右斜め下方に向かってU方向に延びる導体線L1と平行に延びて周縁領域Cまで交差することなく引き出されていてもよく、また、V方向に延びる隙間S2を左斜め下方又は右斜め上方に向けて、V方向に延びる導体線L2と平行に延びて周縁領域Cまで交差することなく引き出されていてもよい。また、各配線5は一方向に延びる直線状である必要はなく、互いに交差することがないうえ各電極セル30,40と接触することがなければ、隙間S1,S2をジグザグ状に延びて周縁領域Cまで引き出されていてもよい。つまり、各配線5同士が互いに交差することなく、かつ、各電極セル30,40と接触することがなければ、各配線5を周縁領域Cまで引き出す方法は特に限定されるものではなく、種々の方法を採用することができる。
【0035】
周縁領域Cまで引き出された各配線5は、例えばフレキシブルプリント基板などのコネクタ7により他の所定の配線5と電気的に結合されている。具体的には、複数列の第1電極3について、それぞれの列毎に第1電極3を構成する複数の第1電極セル30が同電位を有するように、また、複数列の第2電極4について、それぞれの列毎に第2電極4を構成する複数の第2電極セル40が同電位を有するように、同じ列をなす全ての第1電極セル30から引き出される配線5同士及び同じ列をなす全ての第2電極セル30から引き出される配線5同士が、周縁領域Cにおいてコネクタ7により電気的に結合されている。例えば、図1及び図3に示すように、Y方向に列を成して配置される第1電極3について、左側から順にα列、β列、γ列、δ列とし、X方向に列を成して配置される第2電極4について、上側から順にa列、b列、c列、d列、e列とする。この場合に、基材2の周縁領域Cに引き出される各配線5のうち、α列の第1電極3を構成する第1電極セル30からの配線5(先端にαと記載)同士、β列の第1電極3を構成する第1電極セル30からの配線5(先端にβと記載)同士、γ列の第1電極3を構成する第1電極セル30からの配線5(先端にγと記載)同士、δ列の第1電極3を構成する第1電極セル30からの配線5(先端にδと記載)同士、をそれぞれコネクタ7により結合する。また、a列の第2電極4を構成する第2電極セル40からの配線5(先端にaと記載)同士、b列の第2電極4を構成する第2電極セル40からの配線5(先端にbと記載)同士、c列の第2電極4を構成する第2電極セル40からの配線5(先端にcと記載)同士、d列の第2電極4を構成する第2電極セル40からの配線5(先端にdと記載)同士、e列の第2電極4を構成する第2電極セル40からの配線5(先端にeと記載)同士、をそれぞれコネクタ7により結合する。そして、コネクタ7により電気結合された結合配線が、静電容量検出回路(図示省略)に接続されることで、各列の第1電極3及び各列の第2電極4と静電容量検出回路(図示省略)とが電気的に接続される。なお、図示例では、第1電極3が4列、第2電極4が5列であるが、各電極3,4ともにこれよりも多くても少なくともいいのは言うまでもない。
【0036】
各配線5は、導体線L1,L2と一緒に上記方法で基材2の一方面T上に形成してもよいし、導体線L1,L2を形成した後、導電インクを例えばスクリーン印刷などの公知の印刷方法を用いて基材2の一方面T上に細線状に印刷することで形成してもよい。ただし、各配線5を、導体線L1,L2と同じ材料で一括して基材2の一方面T上に形成すれば、効率よく形成することが可能である。
【0037】
上記構成のタッチパネル1において、タッチ位置の検出方法は、従来の静電容量式のタッチパネルと同様であり、第1電極セル30及び第2電極セル40の接触位置において人体の静電容量に基づく電圧等の変化を検出することによって、接触位置の座標が演算される。
【0038】
本実施形態に係るタッチパネル1においては、複数の導体線L1,L2を交差させることで網目状の電極3,4を形成しているので、希少金属であるインジウムの使用を避けることができ、ITOを用いるよりも基材2上に形成される電極パターンの低抵抗化を図ることができ、かつ、電極パターンの視認性も向上させることができるので、静電容量式のタッチパネルとして好適に用いることができる。また、第1電極3及び第2電極4のいずれもが基材2の一方面Tに形成されているので、タッチパネル1の構造の簡略化と全体的な厚み・重さの軽減(薄型化・軽量化)を実現できるという優位性を有する。
【0039】
また、各電極セル30,40に接続された各配線5を、互いに交差することなく基材2の周縁領域Cに向けて引き出し、所定の配線5同士を結合して静電容量検出回路(図示省略)と電気接続しているので、基材2のセンサ領域Rは、単純な構造を有し、単一のフォトリソグラフィ又は他の印刷方法を用いて基板2上に直接形成可能である。よって、タッチパネル製造のための工程を少なくすることができ、製造プロセスが単純になるので、タッチパネル1を効率よく製造することができるうえ、製造コストを低くすることができる。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、図4及び図5に示すように、基材2の一方面Tのセンサ領域Rにおいて、隣接する第1電極セル30と第2電極セル40との間のうち、配線5が設けられていない領域(本実施形態では隙間S2)に、各電極セル30,40とは電気的に独立した補助線6が複数本設けてもよい。複数の補助線6は、導体線L1,L2及び配線5とは接続されないように、配線5(及び導体線L1)と同方向(U方向)を向くように延びており、互いに間隔をあけて平行に設けられている。補助線6同士のピッチは、配線5同士のピッチと等しいことが好ましい。これにより、第1電極セル30と第2電極セル40との隙間が補助線6で補完され、配線5を目立ちにくくすることができるので、タッチパネル1の視認性を向上させることができる。補助線6の線幅は、配線5と同じであることが好ましいが、異なっていてもよく、例えば1μm〜30μm程度であり、好ましくは1μm〜15μm程度である。また、補助線6の厚みは、例えば0.1μm〜10μm程度である。なお、隣接する第1電極セル30と第2電極セル40との隙間のうち、配線5が設けられている領域(本実施形態では隙間S1)についても、配線5及び導体線L1,L2(各電極セル30,40)と接続しないように、配線5と平行に1又は複数の補助線6を設けてもよい(図3についても同様)。これにより、基材2の一方面Tのセンサ領域Rにおいて、配線5の密度が低い箇所について補助線6で補完することで、配線5によるパターンを一様にできるので、タッチパネル1の視認性をさらに向上させることができる。また、補助線6を配線5とともに設けることで、配線5及び補助線6により平行に並べられる線同士のピッチを、導体線L1(L2)のピッチと同じとすることができる。これにより、タッチパネル1の視認性をさらに向上させることができる。なお、図3及び図5においては、補助線6を配線5よりも太く図示しているが、これは、補助線6を容易に判別できるようにしているためであり、配線5及び補助線6の線幅は同じであることが好ましい。
【0041】
また、図6(a)〜(c)に示すように、少なくとも一部の配線5に、当該配線5と交差する方向(V方向)に延びる第1模造線8を複数設けてもよい。なお、図6(b)及び図6(c)は、図6(a)の領域Aを抜き出して拡大した図である。第1模造線8と、この第1模造線8を挟む2つの配線5(第1模造線8が設けられる配線5に隣接する2つの配線5)との間には、両者が電気接続しないように隙間が形成される。図6(b)及び図6(c)では、説明のため隙間を大きめに描写しているが、隙間を小さくする方が視認性の観点からは好ましい。各第1模造線8は、同じ線(仮想線I)上に他の第1模造線8が位置するように配置されているとともに、この線(仮想線I)が導体線L2(又はL1)同士のピッチと等しいピッチをあけて平行に複数設けられるように配置されているのが好ましい。例えば、図6(b)では、間隔をあけてV方向に複数並べられた配線5のうち一つ置きの配線5に対して、各配線5の長さ方向(U方向)に導体線L2(又はL1)同士のピッチと等しいピッチをあけて第1模造線8を複数設けるようにする。なお、図6(b)においては、配線5を補完するために設けられた配線5と平行に延びる補助線6に対しても第1模造線8を複数設けている。また、図6(c)では、間隔をあけてV方向に複数並べられた配線5の全てに対して、各配線5の長さ方向(U方向)に導体線L2(又はL1)同士のピッチの2倍のピッチをあけて第1模造線8を複数設けるとともに、隣接する配線5の間においては、第1模造線8が互い違いに配置されるように設ける。これにより、複数の第1模造線8が、導体線L2(又はL1)同士のピッチと等しいピッチを有する複数の仮想線I上に設けられる。なお、図6(c)においても、配線5を補完するために設けられた配線5と平行に延びる補助線6に対しても第1模造線8を複数設けている。
【0042】
このように、第1模造線8を所定の配線5(及び補助線6)と交差するように配置することで、各配線5(及び補助線6)と各第1模造線8とによって、略網目状パターンが形成される。すなわち、第1電極セル30と第2電極セル40との隙間に、周りの第1電極セル30及び第2電極セル40の網目状パターンと近い形状の略網目状パターンが形成される。第1電極セル30と第2電極セル40との隙間に、略網目状パターンが形成されると、第1電極セル30及び第2電極セル40の網目状パターンを目立ちにくくすることができるので、タッチパネル1の視認性を向上させることができる。なお、配線5に対する第1模造線8の設け方は、図6(b)や図6(c)の方法に限定されるものではなく、間隔をあけて配置された各配線5を電気接続しなければ種々の方法を採用することができる。第1模造線8の線幅は、配線5や補助線6と同じであることが好ましいが、異なっていてもよく、例えば1μm〜30μm程度であり、好ましくは1μm〜15μm程度である。また、第1模造線8の厚みは、例えば0.1μm〜10μm程度である。
【0043】
さらに、補助線6に対しても、補助線6と交差する方向(V方向)に延びる第2模造線9を複数設けてもよい。第2模造線9は、配線5や導体線L1,L2と電気接続されなければ、その長さは限定されるものではない。例えば、第1模造線8のような所定の長さ(第2模造線9が設けられる補助線6に隣接する2つの補助線6との間に位置する程度の長さ)とし、第1模造線8を各配線5に設けるのと同様の方法(例えば図6(b)や図6(c))で、各補助線6に設けてもよい。つまり、複数の第2模造線9を、導体線L2(又はL1)同士のピッチと等しいピッチを有する複数の仮想線I上に設けられるように配置し、所定の補助線6と交差させることで、各補助線6及び各第2模造線9によって、略網目状パターンを形成する。また、第2模造線9の長さを全ての補助線6と交差する長さとし、複数の第2模造線9を各補助線6の長さ方向に導体線L2(又はL1)同士のピッチと等しいピッチをあけて互いに平行となるように設けるようにしてもよい。この場合には、各補助線6及び各第2模造線9によって網目状パターンが形成される。このようにして、第1電極セル30と第2電極セル40との隙間に、周りの第1電極セル30及び第2電極セル40の網目状パターンと近い形状の略網目状パターンないしは網目状パターンが形成されると、第1電極セル30及び第2電極セル40の網目状パターンを目立ちにくくすることができるので、タッチパネル1の視認性をさらに向上させることができる。第2模造線9の線幅は、配線5や補助線6と同じであることが好ましいが、異なっていてもよく、例えば1μm〜30μm程度であり、好ましくは1μm〜15μm程度である。また、第2模造線9の厚みは、例えば0.1μm〜10μm程度である。
【0044】
各補助線6、各第1模造線8及び第2模造線9は、導体線L1,L2と一緒に上記方法で基材2の一方面T上に形成してもよいし、導体線L1,L2を形成した後、導電インクを例えばスクリーン印刷などの公知の印刷方法を用いて基材2の一方面T上に細線状に印刷することで形成してもよい。ただし、各配線5を、導体線L1,L2と同じ材料で一括して基材2の一方面T上に形成すれば、効率よく形成することが可能である。
【0045】
上記した各実施形態においては、導体線L1,L2や配線5、補助線6、模造線8,9は真っ直ぐな直線状であるが、波のような形の波形状や鋸の歯のような形の鋸歯状など、種々の形状とすることができる。また、上記実施形態においては、補助線6や模造線8,9を設けているが、必ずしも設ける必要はない。
【0046】
また、上記実施形態において、各電極3,4の両端部間での導通性を阻害しない範囲で、各電極セル30,40を構成する複数の導体線L1,L2に対して、導体線L1,L2を切断する切断部を部分的に設けてもよい。導体線L1,L2と配線5との間や、導体線L1,L2と補助線6との間、その他にも配線5、補助線6と第1模造線8、第2模造線9との間には隙間が形成されているため、各電極セル30,40にこのような切断部を設けることにより、電極パターン全体に対して一様に線が途切れる断続部(空白部)が発生する。よって、光線透過率が向上するとともに、電極パターンの見た目をより均一にできるので、視認性をさらに向上させることができる。このような切断部は、網目状の各電極30,40を形成する複数の導体線L1,L2の交差部に形成されていてもよいし、交差部とは異なる場所に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 タッチパネル
2 基材
3 第1電極
4 第2電極
5 配線
6 補助線
8 第1模造線
9 第2模造線
30 第1電極セル
40 第2電極セル
R センサ領域
C 周縁領域
L1,L2 導体線
図1
図2
図3
図4
図5
図6