特許第6138061号(P6138061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138061
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】電子部品の実装装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20170522BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   H01L21/60 311T
   H01L21/60 321Y
   H01L21/66 R
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-4514(P2014-4514)
(22)【出願日】2014年1月14日
(65)【公開番号】特開2015-133422(P2015-133422A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】香月 貴通
(72)【発明者】
【氏名】仲村 誠司
【審査官】 ▲高▼須 甲斐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−216140(JP,A)
【文献】 特開2006−019380(JP,A)
【文献】 特開平10−075096(JP,A)
【文献】 特開2003−060398(JP,A)
【文献】 特開2013−214636(JP,A)
【文献】 特開2007−305724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンプを有する電子部品を基板に実装する電子部品の実装装置であって、
前記バンプに転写材を転写する転写部と、
前記転写部によって転写材が転写された前記バンプを撮像して画像データを生成する撮像部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記画像データが表す画像上で前記バンプの最大径から内側に特定距離移動した外縁部に濃度検出点を設定し、前記濃度検出点が位置している画素の濃度と当該画素の近傍画素の濃度とを加重平均した濃度を前記濃度検出点の濃度とし、前記濃度検出点の濃度に基づいて前記転写材の転写量を判断する転写量判断処理を実行する、電子部品の実装装置。
【請求項2】
バンプを有する電子部品を基板に実装する電子部品の実装装置であって、
前記バンプに転写材を転写する転写部と、
前記転写部によって転写材が転写された前記バンプを撮像して画像データを生成する撮像部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記画像データが表す画像上で前記バンプの最大径から内側に特定距離移動した外縁部に濃度検出点を設定し、前記濃度検出点が位置している画素の濃度と当該画素の近傍画素の濃度とを加重平均した濃度を前記濃度検出点の濃度とし、前記濃度検出点の濃度に基づいて前記転写材の量を重さあるいは体積によって表す転写量を判断する転写量判断処理を実行する、電子部品の実装装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電子部品の実装装置であって、
前記制御部は、前記転写量判断処理において、前記濃度検出点が位置している画素の濃度と当該画素の近傍画素の濃度とを、前記濃度検出点からそれら各画素の中心点までの距離で重み付けして加重平均する、電子部品の実装装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の電子部品の実装装置であって、
前記制御部は、前記転写部に転写材を補充すべきか否かを前記転写量判断処理で判断された転写量に基づいて判断する補充判断処理を実行する、電子部品の実装装置。
【請求項5】
請求項に記載の電子部品の実装装置であって、
前記転写部に転写材を補充する補充部を備え、
前記制御部は、前記補充判断処理で転写材を補充すべきと判断した場合に、前記補充部に転写材を補充させる補充処理を実行する、電子部品の実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
バンプを有する電子部品を基板に実装する電子部品の実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バンプ付き電子部品の実装装置において、バンプ形成面を撮像して認識処理することにより、バンプへの接合材の付着量を表す指標となる接合材付着径をバンプごとに求めた付着量指標データに基づいて、当該部品の反り変形量を求める技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来の技術では、反り変形量を予め設定された閾値と比較することにより、当該部品の反り変形状態の良否判定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−277971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の技術ではバンプへの接合材(以下「転写材」という)の付着量(以下「転写量」という)を表す指標として接合材付着径を用いているが、接合材付着径はあくまで転写量の指標であり、転写量そのものを判断することはできなかった。
【0005】
本明細書では、バンプに転写された転写材の転写量を判断することができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される電子部品の実装装置は、バンプを有する電子部品を基板に実装する電子部品の実装装置であって、前記バンプに転写材を転写する転写部と、前記転写部によって転写材が転写された前記バンプを撮像して画像データを生成する撮像部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記画像データの前記バンプを表している画素の濃度に基づいて前記転写材の転写量を判断する転写量判断処理を実行する。
【0007】
上記電子部品の実装装置によると、画像データのバンプを表している画素の濃度に基づくことにより、バンプに転写された転写材の転写量を判断することができる。
【0008】
また、前記制御部は、前記転写量判断処理において、前記バンプの外縁部を表している画素の濃度に基づいて転写量を判断してもよい。
【0009】
上記電子部品の実装装置によると、バンプに転写された転写材の径から転写量を判断する場合に比べ、転写量を精度よく判断することができる。
【0010】
また、前記制御部は、前記転写量判断処理において、前記画像データが表す画像上で前記バンプの最大径から内側に特定距離移動した外縁部に濃度検出点を設定し、前記濃度検出点が位置している画素の濃度と当該画素の近傍画素の濃度とを加重平均した濃度を前記濃度検出点の濃度とし、前記濃度検出点の濃度に基づいて転写量を判断してもよい。
【0011】
上記電子部品の実装装置によると、対象画素の濃度だけを用いる場合に比べ、転写量の判断の信頼性が低下してしまうことを抑制できる。
【0012】
また、前記制御部は、前記転写量判断処理において、前記濃度検出点が位置している画素の濃度と当該画素の近傍画素の濃度とを、前記濃度検出点からそれら各画素の中心点までの距離で重み付けして加重平均してもよい。
【0013】
上記電子部品の実装装置によると、対象画素の重みを2とし、近傍画素の重みを1とするなどのように距離を重み付けとして用いない場合に比べ、濃度検出点の濃度を精度よく判断することができる。
【0014】
また、前記制御部は、前記転写量判断処理において、前記バンプを表している画素の濃度の分散に基づいて転写量を判断してもよい。
【0015】
上記電子部品の実装装置によると、バンプに転写された転写材の径から転写量を判断する場合に比べ、転写量を精度よく判断することができる。
【0016】
また、前記制御部は、前記転写部に転写材を補充すべきか否かを前記転写量判断処理で判断された転写量に基づいて判断する補充判断処理を実行してもよい。
【0017】
上記電子部品の実装装置によると、転写部に転写材を補充すべきか否かを転写量に基づいて判断するので、転写材の不足によってバンプに適切な量の転写材が転写されなくなってしまうことを抑制できる。
【0018】
また、上記電子部品の実装装置は、前記転写部に転写材を補充する補充部を備え、前記制御部は、前記補充判断処理で転写材を補充すべきと判断した場合に、前記補充部に転写材を補充させる補充処理を実行してもよい。
【0019】
上記電子部品の実装装置によると、実装装置によって自動で転写材が補充されるので、転写材の不足によってバンプに適切な量の転写材が転写されなくなってしまうことを抑制しつつ作業者の負担を軽減することができる。
【0020】
また、本明細書によって開示される電子部品の実装装置は、バンプを有する電子部品を基板に実装する電子部品の実装装置であって、前記バンプに転写材を転写する転写部と、前記転写部に転写材を補充する補充部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記転写部に転写材を補充するか否かを前記転写部によって前記バンプに転写された転写材の転写量に基づいて判断する補充判断処理と、前記補充判断処理で転写材を補充すると判断した場合に、前記補充部に転写材を補充させる補充処理と、を実行する。
【0021】
上記電子部品の実装装置によると、転写部に転写材を補充するか否かを転写部によってバンプに転写された転写材の転写量に基づいて判断するので、転写材の不足によってバンプに適切な量の転写材が転写されなくなってしまうことを抑制することができる。また、上記電子部品の実装装置によると、転写材を補充すると判断した場合に、補充部に転写材を補充させるので、作業者の負担を軽減することができる。
【0022】
なお、本明細書によって開示される技術は、電子部品の実装システム、電子部品の実装方法、電子部品の実装プログラム、電子部品の実装プログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
上記の電子部品の実装装置によると、バンプに転写された転写材の転写量を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態1に係る電子部品の実装装置の全体構成を示す模式図。
図2】互いに転写量が異なるバンプとその周辺を表す複数の画像を示す模式図。
図3】膜厚を説明するための模式図。
図4】バンプが光を反射する様子を示す模式図。
図5】バンプの外縁部を表している画素の濃度に基づく転写量の判断を説明するための模式図。
図6】加重平均の重み付けを説明するための模式図。
図7】制御部によって実行される転写量の判断処理のフローチャート。
図8】転写量を判断する実験を行った結果を示すグラフ。
図9】実施形態2に係る転写量を判断する実験を行った結果を示すグラフ。
図10】実施形態3に係る画素の濃度の分散を示すヒストグラム。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<実施形態1>
実施形態1を図1ないし図8によって説明する。
(1)電子部品の実装装置の全体構成
図1を参照して、実施形態1に係る電子部品の実装装置1の全体構成について説明する。実装装置1は半田などの金属からなるバンプ3を有する電子部品2を基板4に実装する装置である。実装装置1は転写部10、実装部11、搬送部12、撮像部13、補充部14、及び、制御部15を備えている。
【0026】
転写部10はバンプ3に半田ペースト10Cを転写させる機構である。半田ペースト10Cは転写材の一例である。転写部10は転写ステージ10A、スキージ10B、図示しないスキージ駆動部などを備えている。転写ステージ10Aには底面が平坦な凹部が形成されており、その凹部に半田ペースト10Cが収容されている。図示しないスキージ駆動部はスキージ10Bを図1に示す左右方向に移動させる機構である。図1に示す例ではスキージ駆動部がスキージ10Bを右から左に移動させることによって半田ペースト10Cがほぼ均一の厚さに均される。
【0027】
実装部11は電子部品2が実装される基板4を保持する機構である。実装部11は基板保持テーブル11Aなどを備えている。
【0028】
搬送部12は電子部品2を搬送する機構である。搬送部12は吸引などによって電子部品2を保持するヘッド12A、ヘッド12Aを図1に示す左右方向(X軸方向)、紙面に垂直な前後方向(Y軸方向)、上下方向(Z軸方向)、XY平面上の回転方向(Θ方向)に搬送する搬送機構、搬送機構を駆動する駆動モータなどを備えている。
【0029】
撮像部13は半田ペースト10Cが転写されたバンプ3を撮像して画像データを生成する機構である。撮像部13は転写部10と実装部11との間に設けられている。撮像部13は電子部品2を下方から照明する光源13A(図4参照)、イメージセンサ13B(図4参照)、光源13Aから出射されて電子部品2で反射された光をイメージセンサ13Bに結像させる光学系、イメージセンサ13Bから出力されたアナログの画像信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路などを備えており、A/D変換回路によって変換したデジタル信号を制御部15に出力する。A/D変換回路によって変換されたデジタル信号は画像データの一例である。
【0030】
補充部14は転写部10に半田ペースト10Cを補充する機構である。補充部14は補充用の半田ペースト10Cを収容する容器、容器に収容されている半田ペースを補充部14まで導くパイプ、容器に収容されている半田ペースト10Cを空気圧によってパイプから押し出すコンプレッサなどを備えている。補充部14に補充する半田ペースト10Cの量は制御部15がコンプレッサを制御することによって調整することができる。なお、補充部14の構成はこれに限られるものではなく、転写部10に半田ペースト10Cを補充できる構成であれば任意の構成であってよい。
【0031】
制御部15はCPU、ROM、RAMなどを備えている。CPUはROMに記憶されている制御プログラムを実行することによって実装装置1の各部を制御する。ROMは制御部15によって実行される制御プログラムや各種のデータなどを記憶している。RAMは制御部15が各種の処理を実行するための主記憶装置として用いられる。
【0032】
次に、実装装置1が電子部品2を基板4に実装する作動について概略的に説明する。この作動は制御部15による制御の下で行われる。搬送部12は電子部品2を保持しているヘッド12Aを転写ステージ10Aの上方に移動させ、ヘッド12Aを下降させることによってバンプ3に半田ペースト10Cを転写する。
【0033】
次に、搬送部12はヘッド12Aを上昇させ、撮像部13の上方に移動させる。搬送部12は撮像部13の上方で電子部品2の搬送を一時停止させ、この間に撮像部13によって電子部品2が下方から撮像される。撮像部13による撮像が終わると搬送部12はヘッド12Aの移動を再開し、実装部11の上方で移動を停止させる。そして、搬送部12はヘッド12Aを下降させて基板4に電子部品2を実装する。
【0034】
(2)半田ペーストの転写量の判断
バンプ3に転写された半田ペーストの量が少ないと電子部品2を基板4に実装した際に実装不良となる虞がある。そこで、制御部15はバンプ3に転写された半田ペーストの量を、撮像部13から出力された画像データのバンプ3を表している画素の濃度に基づいて判断する。ここで画素の濃度とは、イメージセンサ13Bの受光素子に入射した光の量、いわゆる光量を表すものであり、光量が多いほど画素の濃度は高くなる。本実施形態では画素の濃度を0(黒)〜255(白)の256階調で表し、255に近いほど濃度が高いものとする。
【0035】
図2を参照して、バンプ3に転写された半田ペーストの量と画像データのバンプ3を表している画素の濃度との関係について説明する。以降の説明ではバンプ3に転写された半田ペーストの量のことを単に転写量という。転写量の単位はグラムであってもよいしリットルであってもよい。
【0036】
図2に示す画像21〜29は電子部品2を下降させてバンプ3に半田ペーストを転写するときの電子部品2の下降位置を調整することによって膜厚を0μm(転写なし)、80μm、100μm、110μm、125μm、140μm、150μm、175μm、及び、200μmの順に変化させ、各膜厚においてバンプ3を撮像したものである。ここで膜厚とは、図3に示すようにバンプ3に転写された半田ペーストの下端から上端までの高さのことをいう。半田ペーストの転写量が多くなれば膜厚も大きくなるので、膜厚は転写量を間接的に表しているといえる。
【0037】
また、図2に示す各画像21〜29はバンプ3とその周辺とを表しており、各画像21〜29にはバンプ3の周囲の電子部品の表面も表されている。電子部品の表面は黒色であるとする。
【0038】
図2に示すように、膜厚が0μmの画像21、言い換えると半田ペーストが転写されていないバンプ3を撮像した画像21ではバンプ3の中心部は黒くなり、外縁部は白くなる。言い換えると、中心部を表す画素の濃度は低くなり、外縁部を表す画素の濃度は高くなる。この理由について図4を参照して説明する。
【0039】
図4に示すように、光源13Aの位置とイメージセンサ13Bの位置とは同じにできないので、光源13Aは斜め方向から光を照射する。バンプ3は略球形であるため、光を斜めから照射すると光源13Aから出射された光のうちバンプ3の中心部で反射された光はイメージセンサ13Bに入射し難くなる。これに対し、バンプ3の外縁部で反射された光は中心部に比べてイメージセンサ13Bに入射し易い。このため中心部の画素の濃度は低くなり、外縁部の画素の濃度は高くなる。なお、図4では光源13Aを一つしか示していないが、光源13Aは電子部品2を囲むように複数設けられているものとする。
【0040】
また、図2に示すように、膜厚が大きいバンプ3を撮像した画像ほど黒色の領域が多くなる。言い換えると、半田ペーストの転写量が多いほど濃度の低い画素が多くなる。これは、半田ペーストはバンプ3の表面に比べて光を反射し難いので、半田ペーストの転写量が多いほどイメージセンサ13Bに入射する光が少なくなるからである。つまり、半田ペーストの転写量とバンプ3を表す画素の濃度とには相関関係がある。このため画素の濃度から半田ペーストの転写量を判断することができる。
【0041】
次に、画素の濃度から半田ペーストの転写量を判断する方法について説明する。図2に示すようにバンプ3の中心部は半田ペーストの転写量によらずほぼ黒色であるので、半田ペーストの転写量の変化に対する画素の濃度の変化が小さい。転写量の変化に対する画素の濃度の変化が小さいと転写量を精度よく判断することが困難である。これに対し、バンプ3の外縁部を表している画素の濃度は中心部に比べて転写量の変化に対する変化が大きい。そこで、本実施形態ではバンプ3の外縁部を表している画素の濃度に基づいて転写量を判断する。
【0042】
図5を参照して、バンプ3の外縁部を表している画素の濃度に基づく転写量の判断について説明する。先ず、制御部15は画像データを解析して当該画像データが表す画像上でバンプ3を認識する。バンプ3の認識は種々の方法で行うことができる。例えばバンプ3を表す画素と電子部品2の表面を表す画素との境界をエッジ検出によって検出し、検出した境界に最少自乗円を当てはめることによって認識してもよい。また、バンプ3の半径は固定であるので、エッジ検出によって検出した境界内の領域の中心点Pからの距離がバンプ3の半径以下である領域をバンプ3として認識してもよい。
【0043】
次に、制御部15は画像データが表す画像上でバンプ3の最大径から内側に特定距離移動した外縁部に濃度検出点を設定する。具体的には例えば、制御部15はバンプ3の中心点Pを中心として予め決定されている半径rの仮想円Sを設定し、中心点Pから放射状に延びる複数の仮想直線Tと仮想円Sとの交点を濃度検出点Qとして設定する。仮想円Sの半径rの具体的な決定の仕方については後述する。
【0044】
上述した複数の仮想直線Tの数は適宜に決定可能であり、例えば隣り合う2つの仮想直線Tがなす角度Θを1度とすることによって359本の仮想直線Tを設定してもよいし、角度Θを2度とすることによって179本の仮想直線Tを設定してもよい。また、角度Θは一定でなくてもよい。
【0045】
次に、制御部15は濃度検出点Qが位置している画素を対象画素とし、対象画素の濃度とその対象画素の上下左右の4つの近傍画素の濃度とを加重平均することによって各濃度検出点Qの濃度を決定する。具体的には例えば、図6に示すように濃度検出点Qと対象画素Gの中心点との距離をL1、上画素H1の中心点との距離をL2、下画素H2の中心点との距離をL3、左画素H3の中心点との距離をL4、右画素H4の中心点との距離をL5、これらの距離の合計をLとすると、制御部15は以下の式1によって濃度検出点Qの濃度を決定する。
【0046】
濃度検出点Qの濃度=[{(L−L1)/L}×対象画素Gの濃度+{(L−L2)/L}×上画素H1の濃度+{(L−L3)/L}×下画素H2の濃度+{(L−L4)/L}×左画素H3の濃度+{(L−L5)/L}×右画素H4の濃度]/4 ・・・ 式1
【0047】
なお、近傍画素は上下左右の画素に限られるものではない。例えば右斜め上などの対象画素Gに対して斜めの位置にある画素も近傍画素として用いてもよい。また、左側の2つの画素や右側の2つの画素などのように同じ方向にある複数の画素を近傍画素として用いてもよい。どの範囲までを近傍画素として用いるかは適宜に決定することができる。
【0048】
次に、制御部15は各濃度検出点Qの濃度を合計した合計濃度を算出し、算出した合計濃度から転写量を判断する。具体的には例えば、制御部15は合計濃度と転写量との関係を示す一次関数を用いて転写量を判断する。この一次関数は予め実験などによって決定されたものである。
【0049】
なお、合計濃度と転写量との関係を示す関数は一次関数に限られるものではなく、実験などによって適宜に決定することができる。また、関数を用いるのではなく、予め実験などによって合計濃度と転写量との対応関係を調べてROMに記憶させておき、その対応関係を用いて転写量を判断してもよい。
【0050】
(3)仮想円の半径
次に、前述した仮想円Sの半径rの決定の仕方について説明する。半径rは、図2に示すように膜厚を順に変化させて画像データを生成し、それ以上膜厚の差を精度よく判断することが困難になる画像の一つ前の画像における半田ペーストの半径より大きい半径として決定してもよい。
【0051】
具体的には例えば、図2に示す例では110μmと125μmとでは膜厚の差を精度よく判断することができるとする。これに対し、125μmと140μmとでは外縁部を表している画素の濃度の差が小さいことにより、どのように半径rを設定しても膜厚の差を精度よく判断することが困難であるとする。ここで画素の濃度の差が小さいと膜厚の差を精度よく判断することが困難になる理由は、画素の濃度の差が小さいと相対的に光量のばらつきやノイズの影響が大きくなって誤判定する可能性が高くなるからである。
【0052】
上述した例の場合、それ以上膜厚の差を精度よく判断することが困難になる画像とは125μmの画像のことであり、その一つ前の画像とは110μmの画像のことである。この場合、110μmの画像における半田ペーストの半径より大きい半径を半径rとして決定してもよい。半径rを110μmの画像における半田ペーストの半径より大きくする理由は、110μmの画像における半田ペーストの半径より小さいと、110μmの画像と125μmの画像とで合計濃度の差が小さくなってしまう虞があるからである。
【0053】
なお、例えば膜厚が110μm以上であれば実装不良が起きないことがわかっており、110μmと125μmとの膜厚の差は判断できなくてもよいという場合も考えられる。この場合は100μmの画像における半田ペーストの半径より大きい半径を半径rとして決定してもよい。100μmの画像は110μmの画像の一つ前の画像である。
【0054】
なお、半径rは別の方法によって決定してもよい。具体的には、それ以上膜厚の差を精度よく判断することが困難になる画像とその一つ前の画像との両方について、半径を徐々に変化させながら前述した合計濃度をそれぞれ求め、求めた合計濃度の差が最も大きくなる半径を半径rとして決定してもよい。
【0055】
また、半径rは例えば以下の式2を満たす範囲で任意に決定してもよい。
バンプ3の半径>半径r≧バンプ3の半径×0.7 ・・・ 式2
【0056】
(4)制御部による転写量の判断処理
次に、図7を参照して、制御部15によって実行される転写量の判断処理について説明する。本処理は撮像部13から制御部15に画像データが出力されると開始される。
【0057】
S101では、制御部15は各バンプ3について、撮像部13から出力された画像データに基づいて半田ペーストの転写量を判断する。この判断の仕方は前述した通りであるので説明は省略する。S101は転写量判断処理の一例である。
【0058】
S102では、制御部15はS101でバンプ3毎に判断した転写量に基づいて転写の良/不良を判定する。具体的には例えば、制御部15は各バンプ3についてS101で判断した転写量と予め設定されている閾値とを比較し、転写量が閾値以上であるバンプ3の数が基準数以上であれば良と判定し、基準数未満であれば不良と判定する。制御部15は、良と判定した場合(S102:Yes)はS103に進み、不良と判定した場合(S102:No)はS108に進む。
【0059】
なお、制御部15は転写量が閾値未満であるバンプ3が一つでもあれば不良と判定してもよい。また、制御部15は全てのバンプ3について転写量を判断するのではなく、サンプルとして抽出したバンプ3についてのみ転写量を判断してもよい。
【0060】
S103では、制御部15は搬送部12や実装部11を制御して電子部品2を基板4に実装させる。
S104では、制御部15はS101でバンプ3毎に判断した転写量を合計し、合計した転写量を累積転写量に加算する。
【0061】
S105では、制御部15は累積転写量が閾値以上であるか否かを判断し、閾値以上である場合は半田ペーストを補充すべきと判断してS106に進み、閾値未満である場合は半田ペーストを補充すべきではないと判断して処理を終了する。S105は補充判断処理の一例である。
【0062】
S106では、制御部15は補充部14を制御して累積転写量分の半田ペーストを転写部10に補充する。S106は補充処理の一例である。
S107では、制御部15は累積転写量を0(ゼロ)にリセットする。
S108では、制御部15はスピーカから警告音を発するなどのエラー処理を実行する。
【0063】
(5)実施形態の効果
以上説明した実施形態1に係る電子部品の実装装置1によると、画像データのバンプ3を表している画素の濃度に基づくことにより、バンプ3に転写された半田ペーストの転写量を判断することができる。
【0064】
更に、電子部品の実装装置1によると、バンプ3の外縁部を表している画素の濃度に基づいて転写量を判断するので、バンプ3に転写された半田ペーストの径から転写量を判断する場合に比べ、転写量を精度よく判断することができる。以下、具体的に説明する。
【0065】
図8を参照して、バンプ3の外縁部を表している画素の濃度に基づいて転写量を判断する実験を行った結果について説明する。図8において横軸はバンプ3に転写された半田ペーストの膜厚を示しており、縦軸は濃度を示している。この実験では膜厚を0μm(転写なし)、80μm、100μm、110μm、125μm、140μm、150μm、175μm、及び、200μmの順に変化させてバンプ3毎に濃度検出点Qの濃度の平均値を求め、バンプ3毎に求めた濃度の平均値の最大値、最小値、及び、平均値を求めた。
【0066】
発明者が半田ペーストの径から膜厚を判断する実験を行ったところ、20μm〜30μm程度の膜厚の差は半田ペーストの径として顕著に現れなかった。言い換えると、半田ペーストの径からは20μm〜30μm程度の膜厚の差を判断することは困難であった。これに対し、実施形態1に係る電子部品の実装装置1によると、図8に示すように少なくとも膜厚が80μm〜125μmの範囲において20μm程度の膜厚の差が濃度の差として顕著に表れている。
【0067】
このように、実施形態1に係る電子部品の実装装置1によると、バンプ3に転写された半田ペーストの径から転写量を判断する場合に比べ、転写量を精度よく判断することができる。
【0068】
更に、電子部品の実装装置1によると、対象画素Gの濃度と近傍画素H1〜H4の濃度とを加重平均した濃度を濃度検出点Qの濃度とする。画素の濃度は光量のばらつきやノイズの影響などを受けることがあるので一つの画素の濃度だけを用いると転写量の判断の信頼性が低下する虞がある。対象画素Gの濃度と近傍画素H1〜H4の濃度とを加重平均すると、対象画素Gの濃度だけを用いる場合に比べて転写量の判断の信頼性が低下してしまうことを抑制できる。
【0069】
更に、電子部品の実装装置1によると、濃度検出点Qから各画素の中心点までの距離を重み付けとして用いるので、対象画素Gの重みを2とし、近傍画素Hの重みを全て1とするなどのように距離を重み付けとして用いない場合に比べ、濃度検出点Qの濃度を精度よく決定することができる。
【0070】
更に、電子部品の実装装置1によると、転写部10に半田ペーストを補充すべきか否かをS101で判断した転写量に基づいて判断するので、半田ペーストの不足によってバンプ3に適切な量の半田ペーストが転写されなくなってしまうことを抑制できる。
【0071】
更に、電子部品の実装装置1によると、転写部10に半田ペーストを補充すべきと判断した場合は実装装置1によって自動で半田ペーストが補充されるので、半田ペーストの不足によってバンプ3に適切な量の半田ペーストが転写されなくなってしまうことを抑制しつつ作業者の負担を軽減することができる。
【0072】
<実施形態2>
次に、実施形態2を図9によって説明する。
実施形態1ではバンプ3の外縁部を表している画素の濃度に基づいて転写量を判断する場合を例に説明した。これに対し、実施形態2ではバンプ3を表している画素の濃度の平均値に基づいて転写量を判断する。ここでバンプ3を表している画素とは、エッジ検出によって検出されたバンプ3を表している領域を構成している全ての画素のことをいう。
【0073】
実施形態2に係る制御部15は、バンプ3を表している画素の濃度の平均値を算出し、平均値と転写量との関係を示す一次関数を用いて転写量を判断する。この一次関数は予め実験などによって決定されたものである。なお、平均値と転写量との関係を示す関数は一次関数に限られるものではなく、実験などによって適宜に決定することができる。また、関数を用いるのではなく、予め実験などによって平均値と転写量との対応関係を調べてROMに記憶させておき、その対応関係を用いて転写量を判断してもよい。
【0074】
図9を参照して、バンプ3を表している画素の濃度の平均値に基づいて転写量を判断する実験を行った結果について説明する。図9に示すようにバンプ3を表している画素の濃度の平均値を用いる場合も少なくとも80μm〜125μmの範囲において20μm程度の膜厚の差が濃度の差として顕著に表れている。このため、バンプ3に転写された半田ペーストの径から転写量を判断する場合に比べ、転写量を精度よく判断することができる。
【0075】
ただし、実施形態2で説明した方法は、実施形態1で説明した方法に比べ、濃度の平均値を結ぶ直線の傾きの絶対値が小さい。このため実施形態1で説明した方法の方が実施形態2で説明した方法よりも転写量を精度よく判断することができるといえる。
【0076】
<実施形態3>
次に、実施形態3を図10によって説明する。
前述した実施形態2ではバンプ3を表している画素の濃度の平均値に基づいて転写量を判断する場合を例に説明した。これに対し、実施形態3ではバンプ3を表している画素の濃度の分散に基づいて転写量を判断する。
【0077】
図10に示すように、膜厚が小さいバンプ3を撮像した画像データ、言い換えると半田ペーストの転写量が少ないバンプ3を撮像した画像データは濃度の高い画素から濃度の低い画素まで存在しているので濃度の分散は大きくなる。これに対し、膜厚が大きいバンプ3を撮像した画像データ、言い換えると半田ペーストの転写量が多いバンプ3を撮像した画像データは濃度の低い画素が多くなるので濃度の分散は小さくなる。つまり、半田ペーストの転写量とバンプ3を表す画素の濃度の分散とには相関関係がある。このため画素の濃度の分散から半田ペーストの転写量を判断することができる。
【0078】
実施形態3に係る制御部15は、バンプ3を表している画素の濃度の分散を算出し、分散と転写量との関係を示す一次関数を用いて転写量を判断する。この一次関数は予め実験などによって決定されたものである。なお、分散と転写量との関係を示す関数は一次関数に限られるものではなく、実験などによって適宜に決定することができる。また、関数を用いるのではなく、予め実験などによって分散と転写量との対応関係を調べてROMに記憶させておき、その対応関係を用いて転写量を判断してもよい。
【0079】
分散は平均値との差の自乗の平均値であるので平均値に比べて転写量の変化に対する変化が大きい。このため分散を用いると実施形態2で説明した平均値を用いる方法よりも転写量を精度よく判断することができる。
【0080】
<他の実施形態>
上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0081】
(1)上記実施形態では対象画素の濃度と近傍画素の濃度とを用いて濃度検出点Qの濃度を決定する場合を例に説明した。これに対し、近傍画素の濃度は用いず、対象画素の濃度をそのまま濃度検出点Qの濃度としてもよい。
【0082】
(2)上記実施形態では対象画素の濃度と近傍画素の濃度とを濃度検出点Qからそれら各画素の中心点までの距離で重み付けして加重平均することによって濃度検出点Qの濃度を決定する場合を例に説明した。これに対し、対象画素の重みが2、他の全ての近傍画素の重みが1などのように予め固定で決められている重み付けで加重平均してもよい。このようにすると加重平均を算出する処理を簡素にすることができる。
【0083】
(3)上記実施形態ではバンプ3毎に判断した転写量を累積転写量に加算し(S104)、累積転写量が閾値以上である場合は半田ペーストを補充すべきと判断する場合を例に説明した(S106)。これに対し、例えば予め設定されている値から転写量を減算し、その値が0になったら半田ペーストを補充すべきと判断してもよい。
【0084】
(4)上記実施形態では累積転写量が閾値以上であると判断した場合(S105:Yes)は補充部14を制御して転写部10に半田ペーストを補充する場合を例に説明した。これに対し、実装装置1は補充部14を備えていなくてもよい。その場合は、例えばS105で累積転写量が閾値以上であると判断した場合は表示装置にその旨を表示し、その表示を見た作業者が転写部10に半田ペーストを補充するようにしてもよい。
【0085】
また、S104以降の処理は実行しないようにしてもよい。つまり、S101で判断した転写量はS102での転写の良/不良の判定にのみ用いられてもよい。
【0086】
(5)上記実施形態では画像データのバンプ3を表している画素の濃度に基づいて半田ペーストの転写量を判断し(S101)、判断した転写量を累積転写量に加算する場合を例に説明した(S104)。これに対し、転写量の判断に高い精度を求めない場合は、1つのバンプ3当たりの平均的な転写量を予め実験などで求めておき、その転写量を累積転写量に加算してもよい。
【0087】
例えば転写部10にある程度余裕を持たせて半田ペーストを収容している場合は、大まかな累積転写量が判ればよい場合もある。そのような場合はバンプ3に半田ペーストを転写するたびに画像データから転写量を判断せず、予め求めておいた固定の転写量を累積転写量に加算してもよい。このようにすると転写部10に半田ペーストを補充すべきか否かを判断するための処理を簡素にすることができる。
【0088】
(6)上記実施形態では転写材として半田ペーストを例に説明した。しかしながら、転写材は半田ペーストに限られるものではなく、例えば銀ペーストやフラックスであってもよい。
【0089】
(7)上記実施形態では制御部15がCPUを備えている場合を例に説明した。これに対し、制御部15はCPUに加えてASICを備え、CPUとASICとで処理を分担して実行してもよい。
【符号の説明】
【0090】
1・・・電子部品の実装装置、2・・・電子部品、3・・・バンプ、4・・・基板、10・・・転写部、11・・・実装部、12・・・搬送部、13・・・撮像部、14・・・補充部、15・・・制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10