特許第6138069号(P6138069)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138069
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】作業車の車体フレーム
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/18 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   B62D21/18 B
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-23585(P2014-23585)
(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公開番号】特開2015-150904(P2015-150904A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年6月27日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 出荷日 平成25年9月1日 出荷場所 株式会社クボタのタイ・インド販売会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貞治
(72)【発明者】
【氏名】正円 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】岡本 尚也
【審査官】 森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−223547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の位置に前後方向に長くかつ縦姿勢で配備した左右のサイドプレートと、左右の前記サイドプレートにわたるとともに前記サイドプレートよりも上下幅が短くかつ前後長さが短いクロスメンバとを備え、かつ、前記クロスメンバの左右両端部を、対応する前記サイドプレートにおける上下の両端から離れた位置に溶接して溶接構造体を構成し、
前記クロスメンバは、その前後方向の一端が、左右の前記サイドプレートの間においてトランスミッションケースに連接し、
左右の前記サイドプレートは、それらにおける前記クロスメンバの前後方向の他端との連接箇所の周辺部に接合する左右の補強プレートを備え、
左右の前記補強プレートは、前記クロスメンバの前後方向の端部に隣接する隣接部と、この隣接部から前記クロスメンバの反対側に延出する延出部とを備え、
前記延出部は、その延出端側ほど幅狭になる外形で、応力分散用の開口部又は凹入部を有する形状に形成し、
左右の前記補強プレートの周縁部分のうち、前記開口部の周縁部分又は前記凹入部における凹入終端側の周縁部分を除いた周縁部分を対応する前記サイドプレートに溶接している作業車の車体フレーム。
【請求項2】
前記開口部を角の無い孔により形成している請求項1に記載の作業車の車体フレーム。
【請求項3】
前記凹入部を角の無い形状に形成している請求項1に記載の作業車の車体フレーム。
【請求項4】
前記延出部の外形を角の無い形状に形成している請求項1〜3のいずれか一つに記載の作業車の車体フレーム。
【請求項5】
前記クロスメンバを平板により構成している請求項1〜4のいずれか一つに記載の作業車の車体フレーム。
【請求項6】
前記クロスメンバを筒状の軸支部材により構成している請求項1〜4のいずれか一つに記載の作業車の車体フレーム。
【請求項7】
前記クロスメンバを、左右の前記サイドプレートにわたるとともに前後方向の一端が前記トランスミッションケースに連接する平板と、前記平板の前後方向の他端に連接する状態で左右の前記サイドプレートを貫通する筒状の軸支部材とを溶接して構成し、
前記補強プレートは、前記隣接部を前記軸支部材に連接している請求項1〜4のいずれか一つに記載の作業車の車体フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右の位置に前後方向に長くかつ縦姿勢で配備した左右のサイドプレートと、左右の前記サイドプレートにわたるとともに前記サイドプレートよりも上下幅が短くかつ前後長さが短いクロスメンバとを備え、かつ、前記クロスメンバの左右両端部を、対応する前記サイドプレートにおける上下の両端から離れた位置に溶接して溶接構造体を構成した作業車の車体フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
作業車の一例であるトラクタにおいては、主クラッチハウジングとトランスミッションケースとを、断面形状を中空角形に構成した板金製のセンタフレーム(車体フレーム)にて連結したものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−193703号公報(段落番号0016、図1図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなトラクタにおいては、センタフレームを、左右一対のサイドプレートとそれらの上端部にわたるトッププレートとを備える下向きU字状に構成したメインメンバと、トランスミッションケースからサイドプレートの前後中間部にわたる前後長さを有するクロスメンバとを溶接して得た溶接構造体で構成することが一般的である。
【0005】
このような構成のトラクタで悪路走行などを行った場合には、その走行に伴って大きい突き上げ力などを受けることに起因して溶接構造体(センタフレーム)に大きい負荷が作用する。そして、このような場合には、溶接構造体の各サイドプレートにおけるクロスメンバの前端との接合箇所に、クロスメンバからの力に起因した高い応力集中が発生することが判明した。そのため、上記のような負荷が長期にわたって作用すると、左右のサイドプレートにおけるクロスメンバの前端との連接箇所に、その連接箇所での高い応力集中に起因した破損を招く虞がある。
【0006】
そこで、各サイドプレートにおけるクロスメンバの前端との連接箇所の周辺部に補強プレートを接合して、補強プレートの全周をサイドプレートに溶接する補強を行った後、悪路走行時での応力分布の解析を行ってみた。
【0007】
この補強では、単に高い応力集中箇所が、左右のサイドプレートにおけるクロスメンバの前端との連接箇所から、クロスメンバからの力が働く方向に位置する補強プレートとサイドプレートとの溶接個所に移動するだけで、応力を好適に分散させることができなかった。
【0008】
又、クロスメンバからの力が働く方向に位置するプレート部分に開口部を形成した補強プレートを用意し、この補強プレートを、各サイドプレートにおけるクロスメンバの前端との連接箇所の周辺部に接合して、その外周と開口部の内周とを含む全周をサイドプレートに溶接する補強を行った後、悪路走行時での応力分布の解析を行ってみた。
【0009】
この補強では、単に高い応力集中箇所が、左右のサイドプレートにおけるクロスメンバの前端との連接箇所から、クロスメンバからの力が働く方向に位置する補強プレートの開口部の内周とサイドプレートとの溶接個所に移動するだけで、応力を好適に分散させることができなかった。
【0010】
本発明の目的は、悪路走行時などにおいて、左右のサイドプレートにおけるクロスメンバの前後方向の一端との連接箇所に高い応力集中が発生することに起因して、その連接箇所又は周辺箇所が破損する虞を未然に回避できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の課題解決手段は、
左右の位置に前後方向に長くかつ縦姿勢で配備した左右のサイドプレートと、左右の前記サイドプレートにわたるとともに前記サイドプレートよりも上下幅が短くかつ前後長さが短いクロスメンバとを備え、かつ、前記クロスメンバの左右両端部を、対応する前記サイドプレートにおける上下の両端から離れた位置に溶接して溶接構造体を構成し、
前記クロスメンバは、その前後方向の一端が、左右の前記サイドプレートの間においてトランスミッションケースに連接し、
左右の前記サイドプレートは、それらにおける前記クロスメンバの前後方向の他端との連接箇所の周辺部に接合する左右の補強プレートを備え、
左右の前記補強プレートは、前記クロスメンバの前後方向の端部に隣接する隣接部と、この隣接部から前記クロスメンバの反対側に延出する延出部とを備え、
前記延出部は、その延出端側ほど幅狭になる外形で、応力分散用の開口部又は凹入部を有する形状に形成し、
左右の前記補強プレートの周縁部分のうち、前記開口部の周縁部分又は前記凹入部における凹入終端側の周縁部分を除いた周縁部分を対応する前記サイドプレートに溶接している。
【0012】
この手段によると、悪路走行時などのように、大きい突き上げ力などを受けることに起因して溶接構造体に大きい負荷が作用する場合には、このときの負荷に応じて溶接構造体の各サイドプレートにおけるクロスメンバの前後方向の一端との連接箇所に発生する応力を、周縁部分を溶接していない応力分散用の開口部、又は、凹入終端側の周縁部分を溶接していない凹入部により、各補強プレートの延出部における開口部又は凹入部を挟んだ両側部分に分散させることができる。
【0013】
そして、その両側部分を有する延出部は、その延出端側ほど幅狭になって、その断面積が延出端に向けて徐々に小さくなる部分であることから、開口部又は凹入部による分散後の応力を延出部の延出方向に好適に分散させることができる。
【0014】
その結果、悪路走行時などのように溶接構造体に大きい負荷が作用する場合において、溶接構造体の各サイドプレートにおけるクロスメンバの前後方向の一端との連接箇所に高い応力集中が発生することに起因して、その連接箇所又は周辺箇所が破損する虞を未然に回避することができる。
【0015】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記開口部を角の無い孔により形成している。
【0016】
この手段によると、開口部が角を有することに起因した補強プレートでの急激な形状変化により、補強プレートなどにおいて高い応力集中が発生する虞を未然に回避することができる。
【0017】
従って、開口部が角を有することに起因した高い応力集中の発生で補強プレートなどが破損する虞を未然に回避することができる。
【0018】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記凹入部を角の無い形状に形成している。
【0019】
この手段によると、凹入部が角を有することに起因した補強プレートでの急激な形状変化により、補強プレートなどにおいて高い応力集中が発生する虞を未然に回避することができる。
【0020】
従って、凹入部が角を有することに起因した高い応力集中で補強プレートなどが破損する虞を未然に回避することができる。
【0021】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記延出部の外形を角の無い形状に形成している。
【0022】
この手段によると、延出部がその外形に角を有することに起因した補強プレートでの急激な形状変化により、補強プレートなどにおいて高い応力集中が発生する虞を未然に回避することができる。
【0023】
従って、延出部がその外形に角を有することに起因した高い応力集中で補強プレートなどが破損する虞を未然に回避することができる。
【0024】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記クロスメンバを平板により構成している。
【0025】
この手段によると、悪路走行時などにおいて、各サイドプレートにおける平板の前後方向の一端との連接箇所に発生する応力を好適に分散させることができる。
【0026】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記クロスメンバを筒状の軸支部材により構成している。
【0027】
この手段によると、ブレーキ軸などを支持する軸支部材をクロスメンバに兼用する構成の簡素化を図りながらも、悪路走行時などにおいて、各サイドプレートにおける軸支部材の前後方向の一端との連接箇所に発生する応力を好適に分散させることができる。
【0028】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記クロスメンバを、左右の前記サイドプレートにわたるとともに前後方向の一端が前記トランスミッションケースに連接する平板と、前記平板の前後方向の他端に連接する状態で左右の前記サイドプレートを貫通する筒状の軸支部材とを溶接して構成し、
前記補強プレートは、前記隣接部を前記軸支部材に連接している。
【0029】
この手段によると、ブレーキ軸などを支持する軸支部材をクロスメンバの一部に兼用する構成を採用しながらも、悪路走行時などにおいて、各サイドプレートにおける軸支部材の前後方向の一端との連接箇所に発生する応力を好適に分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】車体フレームの構成などを示すトラクタの概略左側面図である。
図2】サイドフレームの補強構造を示す溶接構造体の縦断斜視図である。
図3】サイドフレームの補強構造を示す溶接構造体の縦断左側面図である。
図4】サイドフレームの補強構造を示す要部の拡大縦断左側面図である。
図5】別実施形態でのサイドフレームの補強構造を示す要部の拡大縦断左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る作業車の車体フレームを、作業車の一例であるトラクタに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0032】
図1に示すように、本実施形態で例示するトラクタは、車体フレーム1の前半部に原動部2を備え、車体フレーム1の後半部に搭乗運転部3を備えている。そして、原動部2の左右に駆動可能な操舵輪としての前輪4を配備し、搭乗運転部3の左右に制動可能な駆動輪としての後輪5を配備して、4輪駆動型に構成している。
【0033】
車体フレーム1は、フロントフレーム6の後部に水冷式のエンジン7を連結し、このエンジン7の後下部にクラッチハウジング8を連接し、クラッチハウジング8にセンタフレーム9の前端部を連結し、センタフレーム9の後端部に後部フレームを兼ねるトランスミッションケース(以下、T/Mケースと称する)10を連結して構成している。原動部2は、エンジン7とともに、ラジエータ11、冷却ファン12、及び、燃料タンク13、などを備えている。搭乗運転部3は、ステアリングホイール14及び運転座席15などを備えている。
【0034】
図1〜3に示すように、センタフレーム9は、クラッチハウジング8とT/Mケース10とにわたる溶接構造体16により構成している。溶接構造体16は、メインメンバ17とクロスメンバ18とを溶接して構成している。
【0035】
メインメンバ17は、左右の位置に前後方向に長くかつ縦姿勢で配備する左右のサイドプレート19、及び、左右のサイドプレート19にわたるトッププレート20、などを溶接して略下向きU字状に構成している。そして、その後端部に、左右のサイドプレート19の間において、T/Mケース10に連接して、T/Mケース10とのボルト連結を可能にする左右の後側連結具21を溶接装備している。
【0036】
左右のサイドプレート19は、クラッチハウジング8とT/Mケース10とにわたる前後長さを有している。そして、それらの前端部を、クラッチハウジング8の側面に連接して、クラッチハウジング8とのボルト連結を可能にする前側連結部19Aに構成している。又、それらの後端部を、T/Mケース10の側面に連接して、T/Mケース10とのボルト連結を可能にする後側連結部19Bに構成している。
【0037】
トッププレート20は、左右のサイドプレート19よりも短い長さでクラッチハウジング8とT/Mケース10とにわたる前後長さを有している。そして、その前端部に、クラッチハウジング8とのボルト連結を可能にし、かつ、ステアリングフレーム22の立設装備を可能にする左右の前側連結具23を溶接装備している。
【0038】
クロスメンバ18は、左右のサイドプレート19にわたるボトムプレート24と、左右のサイドプレート19を貫通する筒状の軸支部材25とを溶接して構成している。そして、左右のサイドプレート19の後半部における各サイドプレート19の下端から上方に離れた下端側の位置に配備している。
【0039】
ボトムプレート24は、左右のサイドプレート19にわたる左右幅を有し、かつ、T/Mケース10と左右のサイドプレート19の前後中間部とにわたる前後長さを有する平板により構成している。そして、その後端部を、左右のサイドプレート19の間において、T/Mケース10に連接して、T/Mケース10とのボルト連結を可能にする連結部24Aに構成している。
【0040】
軸支部材25は、左右のサイドプレート19を貫通する左右幅を有する丸鋼管により構成している。又、左右のサイドプレート19の前後中間部に、ボトムプレート24の前端に連接する状態で配備している。そして、その左右の両端部を対応するサイドプレート19に溶接している。又、その左右のサイドプレート19の間に位置する左右中央側の部分をボトムプレート24の前端に連接して溶接している。
【0041】
上記の構成から、クロスメンバ18は、左右のサイドプレート19にわたるとともにサイドプレート19よりも上下幅が短くかつ前後長さが短くなるように構成している。又、その後端が、左右のサイドプレート19の間においてT/Mケース10に連接するように構成している。
【0042】
溶接構造体16は、T/Mケース10に連接する後半部を、高い強度を有する角パイプ状に構成している。そして、その内部空間などを、クラッチハウジング8からT/Mケース10にわたる伝動系、及び、T/Mケース10から前車軸ケース26にわたる伝動系、などを通すための空間として利用している。
【0043】
図1に示すように、軸支部材21は、左右向きのブレーキ軸27を相対回転可能に支持している。ブレーキ軸27は、軸支部材21から右方に突出する右端部に、左右のサイドブレーキペダル28を装備している。又、軸支部材21から左方に突出する左端部に、左側のサイドブレーキペダル28とブレーキ軸27を介して一体揺動する左側の操作アーム29を備えている。
【0044】
左側のサイドブレーキペダル28は、前述したブレーキ軸27と左側の操作アーム29、及び、左側の操作アーム29から後方に延出する左側の操作ロッド30、などを介して、T/Mケース10に内蔵した左側後輪制動用のサイドブレーキ(図示せず)に操作連係している。
【0045】
右側のサイドブレーキペダル28は、右側のサイドブレーキペダル28と一体揺動する右側の操作アーム(図示せず)、及び、右側の操作アームから後方に延出する右側の操作ロッド(図示せず)、などを介して、T/Mケース10に内蔵した右側後輪制動用のサイドブレーキ(図示せず)に操作連係している。
【0046】
ところで、例えば、悪路走行時などにおいては、大きい突き上げ力などを受けることに起因してセンタフレーム9に大きい負荷が作用する。そして、このような場合には、左右のサイドプレート19におけるクロスメンバ18の前端との連接箇所に、クロスメンバ18からの力に起因した高い応力集中が発生することが判明した。そのため、上記のような負荷が長期にわたって作用すると、左右のサイドプレート19におけるクロスメンバ18の前端との連接箇所に、その連接箇所での高い応力集中に起因した亀裂などの破損を招く虞がある。
【0047】
そこで、このトラクタの車体フレーム1においては、上記の破損を招く虞を未然に回避するための補強構造を採用している。以下、その補強構造について説明する。
【0048】
図1〜4に示すように、左右のサイドプレート19は、それらの内面におけるクロスメンバ18の前端との連接箇所の周辺部に接合する左右の補強プレート31を備えている。
【0049】
左右の補強プレート31は、クロスメンバ18の前端部に備えた軸支部材21に隣接する隣接部31Aと、この隣接部31Aからクロスメンバ18の反対側となる前側に、クロスメンバ18からの力が働く方向Fに沿った前上がり姿勢で延出する延出部31Bとを備えている。
【0050】
左右の隣接部31Aは、軸支部材21の係入を許容する凹部31Cを有する二股状に形成している。又、それらにおける凹部31Cの凹入終端側を形成する周縁部分31Aaの形状を、軸支部材21の外周に接する半円形に形成している。これにより、左右の隣接部31Aが軸支部材21に連接するように構成している。
【0051】
左右の延出部31Bは、それらの延出端側ほど幅狭になる外形で、応力分散用の開口部31Dを有する形状に形成している。具体的には、各延出部31Bにおける延出端側の外周縁部分31Baを円弧状に形成している。又、それらの延出端側の外周縁部分31Baから隣接部31Aにおける凹入終端側以外の上下両側の周縁部分31Abにわたる上下両側の外周縁部分31Bbを、延出端側の外周縁部分31Baよりも曲率の小さい円弧状で、延出端側の外周縁部分31Baに角を有しない状態で連接するように形成している。これにより、左右の延出部31Bを、それらの隣接部側が延出端に向けて緩やかに幅狭になる状態で、それらの外形が角の無い形状になるように形成している。
【0052】
開口部31Dは、角の無い孔により形成している。具体的には、開口部31Dにおける延出端側の周縁部分31Daを、延出端側の外周縁部分31Baと同心で、その外周縁部分31Baよりも曲率の大きい円弧状に形成している。又、開口部31Dにおける隣接部側の周縁部分31Dbを、隣接部31Aにおける凹入終端側の周縁部分31Aaと同心で、その周縁部分31Aaよりも曲率の小さい円弧状に形成している。そして、それらの周縁部分31Da,31Dbを、それらにわたる上下両側の円弧状の周縁部分31Dcにより角を有しない状態で連接することにより、角の無い孔形状に形成している。
【0053】
左右の補強プレート31は、それらの周縁部分31Aa,31Ab,31Ba,31Bb,31Da〜31Dcのうち、開口部31Dの周縁部分31Da〜31Dcを除いた周縁部分31Aa,31Ab,31Ba,31Bbを対応するサイドプレート19に溶接している。又、それらの隣接部31Aにおける凹入終端側の周縁部分31Aaを軸支部材21に溶接している。
【0054】
上記の構成により、例えば、悪路走行時などのように、大きい突き上げ力などを受けることに起因してセンタフレーム9に大きい負荷が作用する場合には、このときの負荷に応じて左右のサイドプレート19におけるクロスメンバ18の前端との連接箇所に発生する応力を、周縁部分31Da〜31Dcを溶接していない応力分散用の開口部31Dにより、各補強プレート31における開口部31Dを挟んだ上下両側部分に分散させることができる。そして、その上下両側部分は、それらの隣接部側が延出部31Bの延出端に向けて緩やかに幅狭になって、その断面積が延出端に向けて徐々に小さくなる部分であることから、応力を好適に分散させることができる。その結果、悪路走行時などのようにセンタフレーム9に大きい負荷が作用する場合において、左右のサイドプレート19におけるクロスメンバ18の前端との連接箇所などに応力が集中して亀裂などの破損を招く虞を未然に回避することができる。
【0055】
〔別実施形態〕
【0056】
〔1〕溶接構造体16は、メインメンバ17を、左右の位置に前後方向に長くかつ縦姿勢で配備する左右のサイドプレート19、及び、左右のサイドプレート19にわたるトッププレート20、などを一体装備する略下向きU字状に屈曲形成したものであってもよい。
【0057】
〔2〕溶接構造体16は、左右の位置に前後方向に長くかつ縦姿勢で配備する左右のサイドプレート19と、左右のサイドプレート19にわたるとともにサイドプレート19よりも上下幅が短くかつ前後長さが短いクロスメンバ18とを、左右のサイドプレート19における上下の両端から離れた位置にクロスメンバ18が位置するように溶接して構成したものであってもよい。
【0058】
〔3〕溶接構造体16は、クロスメンバ18の前端がトランスミッションケース10に連接するように構成したものであってもよい。
【0059】
〔4〕溶接構造体16は、複数のクロスメンバ18を備えるように構成したものであってもよい。
【0060】
〔5〕溶接構造体16における左右のサイドプレート19の補強構造としては、左右の補強プレート31における周縁部分31Aa,31Ab,31Ba,31Bb,31Da〜31Dcのうち、隣接部31Aにおける凹入終端側の周縁部分31Aaと、開口部31Dの周縁部分31Da〜31Dcとを除いた周縁部分31Ab,31Ba,31Bbを対応するサイドプレート19に溶接し、隣接部31Aにおける凹入終端側の周縁部分31Aaを軸支部材21にのみ溶接するように構成してもよい。
【0061】
〔6〕左右の補強プレート31における延出部31Bの延出方向は、クロスメンバ18からの力が働く方向Fに応じて種々の変更が可能である。
【0062】
〔7〕左右の補強プレート31における開口部31Dの形状は、角の無い孔により形成していれば種々の変更が可能であり、例えば、真円形状、延出部31Bの延出方向に長い楕円形状、又は、延出部31Bの延出方向に短い楕円形状、などであってもよい。
【0063】
〔8〕左右の補強プレート31における外形の形状は、延出部31Bの外形が延出端側ほど幅狭になる角の無い形状になれば種々の変更が可能であり、例えば、延出部31Bにおける延出端側の外周縁部分31Baから隣接部31Aにおける凹入終端側以外の上下両側の周縁部分31Abにわたる上下両側の外周縁部分31Bbが直線になるように形成してもよい。
【0064】
〔9〕図5に示すように、左右の補強プレート31は、それらの延出部31Bに、延出部31Bの延出端から隣接部31Aに向けて角の無い形状で凹入する応力分散用の凹入部31Eを形成したものであってもよい。
この構成における凹入部31Eの形状は、角の無い形状であれば種々の変更が可能であるが、図5では、凹入部31Eの凹入始端側を形成する円弧状の上下両側の周縁部分31Eaと、これらの周縁部分31Eaから隣接部31Aに向けて互いの離間距離が隣接部側ほど短くなる状態で延出する上下両側の周縁部分31Ebと、これらの周縁部分31Ebにわたる円弧状で凹入部31Eの凹入終端を形成する周縁部分31Ecとを、延出部31Bにおける上下両側の外周縁部分31Bbの間において、角を有しない状態で連接することにより得た形状を例示している。
そして、左右の補強プレート31の周縁部分31Aa,31Ab,31Bb,31Ea〜31Ecのうち、凹入部31Eにおける凹入終端側の周縁部分31Eb,31Ecを除いた周縁部分31Aa,31Ab,31Bb,31Eaを対応するサイドプレート19に溶接している。又、左右の補強プレート31の隣接部31Aにおける凹入終端側の周縁部分31Aaを軸支部材21に溶接している。
尚、左右の補強プレート31の周縁部分31Aa,31Ab,31Bb,31Ea〜31Ecのうち、隣接部31Aにおける凹入終端側の周縁部分31Aaと、凹入部31Eにおける凹入終端側の周縁部分31Eb,31Ecとを除いた周縁部分31Ab,31Bb,31Eaを対応するサイドプレート19に溶接し、隣接部31Aにおける凹入終端側の周縁部分31Aaを軸支部材21にのみ溶接するように構成してもよい。
又、凹入部31Eにおける凹入終端の周縁部分31Ecのみを溶接しないように構成してもよい。
【0065】
〔10〕クロスメンバ18は、平板からなるボトムプレート24のみ、あるいは、筒状の軸支部材25のみによって構成したものであってもよい。又、平板又は軸支部材25以外の角型鋼管やC形鋼材などによって構成したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る作業車の車体フレームは、左右のサイドプレートとクロスメンバとを溶接して構成した溶接構造体を車体フレームに備えるトラクタ又は乗用草刈機などの作業車に適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
10 トランスミッションケース
16 溶接構造体
18 クロスメンバ
19 サイドプレート
25 軸支部材
31 補強プレート
31A 隣接部
31Aa 周縁部分
31Ab 周縁部分
31B 延出部
31Ba 周縁部分
31Bb 周縁部分
31D 開口部
31Da 周縁部分
31Db 周縁部分
31Dc 周縁部分
31E 凹入部
31Ea 周縁部分
31Eb 周縁部分
31Ec 周縁部分
図1
図2
図3
図4
図5