【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなトラクタにおいては、センタフレームを、左右一対のサイドプレートとそれらの上端部にわたるトッププレートとを備える下向きU字状に構成したメインメンバと、トランスミッションケースからサイドプレートの前後中間部にわたる前後長さを有するクロスメンバとを溶接して得た溶接構造体で構成することが一般的である。
【0005】
このような構成のトラクタで悪路走行などを行った場合には、その走行に伴って大きい突き上げ力などを受けることに起因して溶接構造体(センタフレーム)に大きい負荷が作用する。そして、このような場合には、溶接構造体の各サイドプレートにおけるクロスメンバの前端との接合箇所に、クロスメンバからの力に起因した高い応力集中が発生することが判明した。そのため、上記のような負荷が長期にわたって作用すると、左右のサイドプレートにおけるクロスメンバの前端との連接箇所に、その連接箇所での高い応力集中に起因した破損を招く虞がある。
【0006】
そこで、各サイドプレートにおけるクロスメンバの前端との連接箇所の周辺部に補強プレートを接合して、補強プレートの全周をサイドプレートに溶接する補強を行った後、悪路走行時での応力分布の解析を行ってみた。
【0007】
この補強では、単に高い応力集中箇所が、左右のサイドプレートにおけるクロスメンバの前端との連接箇所から、クロスメンバからの力が働く方向に位置する補強プレートとサイドプレートとの溶接個所に移動するだけで、応力を好適に分散させることができなかった。
【0008】
又、クロスメンバからの力が働く方向に位置するプレート部分に開口部を形成した補強プレートを用意し、この補強プレートを、各サイドプレートにおけるクロスメンバの前端との連接箇所の周辺部に接合して、その外周と開口部の内周とを含む全周をサイドプレートに溶接する補強を行った後、悪路走行時での応力分布の解析を行ってみた。
【0009】
この補強では、単に高い応力集中箇所が、左右のサイドプレートにおけるクロスメンバの前端との連接箇所から、クロスメンバからの力が働く方向に位置する補強プレートの開口部の内周とサイドプレートとの溶接個所に移動するだけで、応力を好適に分散させることができなかった。
【0010】
本発明の目的は、悪路走行時などにおいて、左右のサイドプレートにおけるクロスメンバの前後方向の一端との連接箇所に高い応力集中が発生することに起因して、その連接箇所又は周辺箇所が破損する虞を未然に回避できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の課題解決手段は、
左右の位置に前後方向に長くかつ縦姿勢で配備した左右のサイドプレートと、左右の前記サイドプレートにわたるとともに前記サイドプレートよりも上下幅が短くかつ前後長さが短いクロスメンバとを備え、かつ、前記クロスメンバの左右両端部を、対応する前記サイドプレートにおける上下の両端から離れた位置に溶接して溶接構造体を構成し、
前記クロスメンバは、その前後方向の一端が、左右の前記サイドプレートの間においてトランスミッションケースに連接し、
左右の前記サイドプレートは、それらにおける前記クロスメンバの前後方向の他端との連接箇所の周辺部に接合する左右の補強プレートを備え、
左右の前記補強プレートは、前記クロスメンバの前後方向の端部に隣接する隣接部と、この隣接部から前記クロスメンバの反対側に延出する延出部とを備え、
前記延出部は、その延出端側ほど幅狭になる外形で、応力分散用の開口部又は凹入部を有する形状に形成し、
左右の前記補強プレートの周縁部分のうち、前記開口部の周縁部分又は前記凹入部における凹入終端側の周縁部分を除いた周縁部分を対応する前記サイドプレートに溶接している。
【0012】
この手段によると、悪路走行時などのように、大きい突き上げ力などを受けることに起因して溶接構造体に大きい負荷が作用する場合には、このときの負荷に応じて溶接構造体の各サイドプレートにおけるクロスメンバの前後方向の一端との連接箇所に発生する応力を、周縁部分を溶接していない応力分散用の開口部、又は、凹入終端側の周縁部分を溶接していない凹入部により、各補強プレートの延出部における開口部又は凹入部を挟んだ両側部分に分散させることができる。
【0013】
そして、その両側部分を有する延出部は、その延出端側ほど幅狭になって、その断面積が延出端に向けて徐々に小さくなる部分であることから、開口部又は凹入部による分散後の応力を延出部の延出方向に好適に分散させることができる。
【0014】
その結果、悪路走行時などのように溶接構造体に大きい負荷が作用する場合において、溶接構造体の各サイドプレートにおけるクロスメンバの前後方向の一端との連接箇所に高い応力集中が発生することに起因して、その連接箇所又は周辺箇所が破損する虞を未然に回避することができる。
【0015】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記開口部を角の無い孔により形成している。
【0016】
この手段によると、開口部が角を有することに起因した補強プレートでの急激な形状変化により、補強プレートなどにおいて高い応力集中が発生する虞を未然に回避することができる。
【0017】
従って、開口部が角を有することに起因した高い応力集中の発生で補強プレートなどが破損する虞を未然に回避することができる。
【0018】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記凹入部を角の無い形状に形成している。
【0019】
この手段によると、凹入部が角を有することに起因した補強プレートでの急激な形状変化により、補強プレートなどにおいて高い応力集中が発生する虞を未然に回避することができる。
【0020】
従って、凹入部が角を有することに起因した高い応力集中で補強プレートなどが破損する虞を未然に回避することができる。
【0021】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記延出部の外形を角の無い形状に形成している。
【0022】
この手段によると、延出部がその外形に角を有することに起因した補強プレートでの急激な形状変化により、補強プレートなどにおいて高い応力集中が発生する虞を未然に回避することができる。
【0023】
従って、延出部がその外形に角を有することに起因した高い応力集中で補強プレートなどが破損する虞を未然に回避することができる。
【0024】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記クロスメンバを平板により構成している。
【0025】
この手段によると、悪路走行時などにおいて、各サイドプレートにおける平板の前後方向の一端との連接箇所に発生する応力を好適に分散させることができる。
【0026】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記クロスメンバを筒状の軸支部材により構成している。
【0027】
この手段によると、ブレーキ軸などを支持する軸支部材をクロスメンバに兼用する構成の簡素化を図りながらも、悪路走行時などにおいて、各サイドプレートにおける軸支部材の前後方向の一端との連接箇所に発生する応力を好適に分散させることができる。
【0028】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記クロスメンバを、左右の前記サイドプレートにわたるとともに前後方向の一端が前記トランスミッションケースに連接する平板と、前記平板の前後方向の他端に連接する状態で左右の前記サイドプレートを貫通する筒状の軸支部材とを溶接して構成し、
前記補強プレートは、前記隣接部を前記軸支部材に連接している。
【0029】
この手段によると、ブレーキ軸などを支持する軸支部材をクロスメンバの一部に兼用する構成を採用しながらも、悪路走行時などにおいて、各サイドプレートにおける軸支部材の前後方向の一端との連接箇所に発生する応力を好適に分散させることができる。