(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スメクタイト系吸着性物質100重量部と、高分子凝集剤2〜200重量部と、炭酸塩0.5〜140重量部と、水酸化カルシウム5〜40重量部と、無機系凝集剤2〜60重量部とを含み、
Cs134及び/又はCs137を含む汚水に対して0.05〜0.3%の割合で添加した際の処理後上澄み液中のCs134及びCs137の残存放射能濃度が、それぞれ10Bq/L以下であることを特徴とする放射性セシウム含有汚水用処理剤。
前記スメクタイト系吸着性物質が酸性白土を主成分とするものであって、該酸性白土の5重量%水性懸濁液のpHが4.5〜8.5であることを特徴とする請求項1に記載の放射性セシウム含有汚水用処理剤。
さらに、スメクタイト系吸着性物質100重量部に対して、5〜40重量部の水酸化マグネシウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の放射性セシウム含有汚水用処理剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これら従来の凝集剤は、原価が高く大量の汚水を処理するには不向きであったり、清澄度や凝集・沈殿に要する時間の面で十分なものではなかった。
【0008】
この発明は、上述の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、上澄み液の清澄性に優れ、凝集・沈殿に要する時間の短い汚水処理剤を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的とするところは、安価に提供できる汚水処理剤を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的とするところは、放射性元素を含む汚水から放射性元素を除去できる汚水処理剤を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的並びに作用効果については、以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題は、以下の汚水処理剤および汚水処理方法により解決することができると考えられる。本発明に係る汚水処理剤は、スメクタイト系吸着性物質(以下、「スメクタイト系吸着剤」と言い換える場合がある)100重量部と、高分子凝集剤2〜200重量部と、炭酸塩0.5〜140重量部と、水酸化カルシウム5〜40重量部と、を含むことを特徴とするものである。
【0013】
このような構成によれば、凝集に要する時間が短く、処理後の上澄み液の清澄度に優れ、放射性元素を含む汚水から放射性元素を取り除くことが可能な汚水処理剤が得られる。
【0014】
また、本発明の好ましい実施の形態においては、汚水処理剤は、さらに、スメクタイト系吸着性物質100重量部に対して、2〜60重量部の無機系凝集剤を含むものであってもよい。
【0015】
このような構成によれば、上述の効果に加えて凝集初期における凝集速度に優れた汚水処理剤が得られる。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記炭酸塩が炭酸水素ナトリウム/又は炭酸カルシウムであってもよい。
【0017】
このような構成によれば、上澄み液の清澄度と沈降速度により優れた汚水処理剤が得られる。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記高分子凝集剤がポリアクリルアミド系凝集剤であってもよい。
【0019】
このような構成によれば、酸性液中でもフロックの形成が妨げられにくい汚水処理剤が得られる。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記無機系凝集剤が硫酸アルミニウムであってもよい。
【0021】
このような構成によれば、より凝集性にすぐれた汚水処理剤が得られる。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記スメクタイト系吸着性物質が酸性白土及び/又はベントナイトを主成分とするものであってもよい。
【0023】
ここで「主成分とする」とは、スメクタイト系吸着性物質全量のうち70%以上が酸性白土、ベントナイト、若しくはこれらの混合物であることを意味する。
【0024】
そして、このような構成によれば、汚水処理剤中に放射性元素の除去に十分な量のスメクタイト成分が含まれるため、放射性元素の吸着力乃至除去力がより高く、また凝集性にも優れた汚水処理剤が得られる。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記スメクタイト系吸着性物質が酸性白土を主成分とするものであって、該酸性白土の5重量%水性懸濁液のpHが4.5〜8.5であってもよい。
【0026】
このような構成によれば、処理時のpHを凝集により効果的な中性付近に調整し易く、得られる上澄み液のpHも5.8〜8.6の範囲となるため、公共用水域へも安全に排出できる。
【0027】
本発明の好ましい実施の形態においては、さらにスメクタイト系吸着性物質100重量部に対して、5〜40重量部の水酸化マグネシウムを含んでもよい。
【0028】
このような構成によれば、水酸化マグネシウムも水酸化カルシウムと同様に凝集に好適な塩基度とpH域の維持に寄与するため、上澄み液の清澄度と沈降速度により優れた汚水処理剤が得られる。
【0029】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記スメクタイト系吸着性物質の通常の土壌分析法による陽イオン交換容量(CEC)が50(ミリ当量/100g)以上であってもよい。
【0030】
このような構成によれば、汚水処理剤中に放射性元素の除去に十分な量のスメクタイト成分が含まれるため、例えば、染色廃液中のカチオン染料、工業廃水中の重金属イオン、放射能汚染水中の放射性金属イオン(Cs
+、Sr
2+)などの吸着力乃至除去力が高い汚水処理剤が得られる。
【0031】
さらに、本発明の実施の形態においては、前記スメクタイト系吸着性物質の含有水分は、0〜20%の範囲であってもよい。
【0032】
また、本発明は別の観点から捉えると、汚水処理剤を用いた汚水処理方法としても捉えることができる。
【0033】
この汚水処理方法は、泥を含む汚水に汚水処理剤を添加して、所定の撹拌時間及び静置時間を設けることで汚水を上澄み液と沈殿物とに分離する汚水処理方法であって、汚水に添加する凝集剤として本発明に係る汚水処理剤を用い、前記上澄み液の上澄み清澄度が30NTU未満、且つ、前記撹拌時間と前記静置時間とを合わせた処理時間が210秒以内であることを特徴とする。
【0034】
このような構成によれば、汚水処理に要する時間が短く、また処理後の上澄み液の清澄度にも優れた汚水処理方法が提供される。
【0035】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記上澄み液のpHが、5.8〜8.6の範囲であってもよい。
【0036】
このような構成によれば、上澄み液のpHが中性付近であることから、一般排水としてより扱いやすくなる。
【0037】
また、本発明の好ましい実施の形態においては、前記上澄み液中のCs134及びCs137の残存放射能濃度がそれぞれ10Bq/L以下であってもよい。
【0038】
このような構成によれば、放射性元素を含む廃液から放射性元素を高い精度で取り除ける汚水処理方法が提供される。
【0039】
本発明に係る汚水処理方法は、泥を含む汚水に、スメクタイト系吸着性物質100重量部と、高分子凝集剤2〜200重量部と、炭酸塩0.5〜140重量部と、水酸化カルシウム5〜40重量部と、を添加して、所定の撹拌時間及び静置時間を設けることで汚水を上澄み液と沈殿物とに分離するものであってもよい。
【0040】
このような構成によれば、本願に係る汚水処理剤を用いた場合と同様に、汚水処理に要する時間が短く、また処理後の上澄み液の清澄度にも優れた汚水処理方法が提供される。
【0041】
また、本発明の好ましい実施の形態においては、さらに、スメクタイト系吸着性物質100重量部に対して、2〜60重量部の無機系凝集剤を添加してもよい。
【0042】
このような構成によれば、上述の効果に加えて凝集初期における凝集速度に優れた汚水処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0043】
本発明の汚水処理剤によれば、汚水を短時間で、汚泥(汚濁物質)を含む沈殿物と清澄な上澄み液とに分離することができ、また上澄み液は一般排水として扱える程度の清澄度を有するものである。
【0044】
また、本発明の汚水処理剤は安価に製造可能であるため、大量の汚水の処理にも適している。
【0045】
また、本発明の汚水処理剤によれば、汚水中の放射性物質も吸着・凝集させて沈殿させるため、上澄み液に放射性物質が残留せず、沈殿物を除去した後の上澄み液を安全な一般廃水として扱うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下において、本発明の好適な実施の形態について述べるが、本発明は以下の記述で限定されるものではない。
【0048】
先にも述べたように、本発明に係る汚水処理剤は、スメクタイト系吸着性物質100重量部と、高分子凝集剤2〜200重量部と、炭酸塩0.5〜140重量部と、水酸化カルシウム5〜40重量部と、を含むものである。
【0049】
<吸着性物質について>
イオン交換性吸着剤は、放射性元素を吸着する作用がある。本願の汚水処理剤に用いる吸着性物質としては、陽イオン交換性を有するスメクタイト系吸着性物質を用いるが、放射性セシウムやストロンチウム等を吸着するだけでなく、凝集性能の向上にも寄与する。粘土系の吸着性物質にはカオリン等のスメクタイト系以外の吸着性物質もあるが、カオリン等のイオン交換力の低いものは放射性物質の吸着を目的とする場合には不向きである。
【0050】
本発明に用いるスメクタイト系吸着性物質は特に限定されるものではなく、酸性白土、ベントナイト等を適宜選択して用いることができ、凝集と廃水に適したpH域を中性付近に調整する必要性からは、pHが9.5以下の酸性白土乃至サブベントナイトを用いるのが好ましく、特に、pHが4.5〜8.5の酸性白土を用いるのが好ましい。スメクタイト系吸着性物質の粒径等についても特に限定はしない。また、スメクタイト系吸着性物質内の含有水分も特に限定しないが、0〜20%の範囲であることが好ましい。
【0051】
なお、酸性白土やベントナイト等のスメクタイト系吸着性物質は天然から得られるものであるため、酸性白土中に少量のベントナイトが含まれている(若しくはその逆)、スメクタイト系吸着性物質内にその他の不純物が含まれている、といったことがままある。そのため、本発明において用いる酸性白土及び/又はベントナイトは、スメクタイト系吸着性物質全量中50%以上が酸性白土若しくはベントナイトのいずれかであれば良く、70%以上であればより好ましい。
【0052】
スメクタイト系粘土である酸性白土及びベントナイト中には、原土の状態でシリカやオパール等の夾雑物が2〜4割程度含まれており、スメクタイト系粘土の純度は6〜8割程度である。なお、スメクタイト系粘土の純度は精製処理等により上げることもできるため、必要に応じて純度の高いスメクタイト系粘土を選択してもよい。
【0053】
発明者等の知見によれば、スメクタイト系吸着性物質中にスメクタイト成分が5割程度含まれていれば、放射性元素に対する除去・吸着能は十分に得られることがわかっている。ここで「スメクタイト成分」とは、スメクタイト系粘土中の夾雑物を除いたものを意味する。一例として、酸性白土及び/又はベントナイトの含有量が80%のスメクタイト系吸着性物質を用いれば、スメクタイト系粘土の純度を考慮してもスメクタイト系吸着性物質中の約5〜6割程度がスメクタイト成分ということになる。
【0054】
<放射性元素の吸着について>
また本発明に係る汚水処理剤は、染色廃液中のカチオン染料や、工業廃水中の重金属イオン、放射能汚染水、除染廃水等に含まれる放射性金属イオン(Cs
+、Sr
2+)についても吸着・除去することができるため、放射性元素を含む廃水の処理にも好適である。加えて、本発明に係る廃水処理剤は短い撹拌時間で汚染物質の凝集が行えるために処理1回あたりに要する時間が短くなり、何回も汚水処理作業を繰り返す必要がある大量の汚染廃水の処理にも好適である。
【0055】
本願に係る汚水処理剤に優れた放射性元素吸着能が認められるのは、スメクタイト系吸着性物質に依るものが大きいと考えられる。また、発明者等の知見によれば、スメクタイト系吸着性物質の、一般にいう土壌分析法(例えば、新潟県農林水産部「土壌及び植物分析法の手引き」(H11.3改訂)p.36−37に記載)に準拠して測定される陽イオン交換容量(CEC)が50(ミリ当量/100g)以上であれば汚水処理剤中に十分な量のスメクタイト成分が含まれているということができ、放射性元素を含む汚水に対して高い除去・吸着能が期待される。なお、陽イオン交換容量は、スメクタイト成分含有百分率(%)の等倍程度の値となるため、陽イオン交換容量が50以上であれば、スメクタイト系吸着性物質中のスメクタイト成分量が50%以上であるとも言える。
【0056】
<無機系凝集剤について>
無機系凝集剤は主に初期の凝集に寄与するものであり、汚水中の汚濁物質等を取り込んで小さい粒子を形成する。本願の汚水処理剤に用いる無機系凝集剤としては、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄等の一般的な無機系凝集剤の中から適宜選択して用いることができるが、凝集性が高く安価であるという点から硫酸アルミニウムが好ましい。無機系凝集剤として硫酸アルミニウムを用いると、硫酸アルミニウムが汚水中の粘土等を取り込んで無機性の小さな粒子乃至フロックを形成する。
【0057】
無機系凝集剤の配合量としては、スメクタイト系吸着性物質100重量部に対して、2〜60重量部の範囲で配合することが好ましく、15〜35重量部の範囲であればより望ましい。無機系凝集剤の配合量が2重量部を下回ると、無機系凝集剤の配合量が少ないために初期の凝集が進みにくく、上澄み清澄度についても劣る虞がある。一方、無機系凝集剤の配合量が60重量部を上回ると、フロックが大きく育ちにくく、その結果として沈降速度にも劣り汚水処理に要する時間が長くなる虞がある。
【0058】
<高分子凝集剤について>
高分子凝集剤は、無機系凝集剤により形成された粒子同士を凝集させて大きなフロックを形成させるものである。フロックは大きくなることでより沈降しやすくなるため、清澄度と沈降速度の向上に効果がある。本願の汚水処理剤に用いる高分子凝集剤としては、ノニオン性高分子凝集剤であるポリアクリルアミド、アニオン性高分子凝集剤であるアクリルアミドアクリル酸ソーダ、カチオン性高分子凝集剤であるジメチルアミノエチルメタクリレート等の一般的な高分子凝集剤の中から適宜選択して用いることができるが、酸性液中でも効果が維持されるという点からノニオン系高分子凝集剤が好ましい。
【0059】
高分子凝集剤の配合量としては、スメクタイト系吸着性物質100重量部に対して、2〜200重量部の範囲で配合することが好ましく、5〜100重量部の範囲であればより望ましい。高分子凝集剤の配合量が2重量部を下回ると、配合量が少ないために高分子凝集剤による効果が十分に発揮されないためにフロックが成長しにくく、結果として上澄み清澄度と沈降速度が悪化する虞がある。一方、高分子凝集剤の配合量が200重量部を上回ると、上澄み液や沈殿物にヌメリと濁りが生じ、清澄度が悪化するだけでなく上澄み液を脱水作業時に作業効率が悪化する虞もある。また、発明者等の知見によれば、高分子凝集剤の添加量が少ないと、沈殿物の濾過性と剥離性が向上する傾向が見られる。
【0060】
発明者等が、高分子凝集剤の添加量を変えて比較試験を行ったところ、スメクタイト系吸着剤100重量部に対して高分子凝集剤を7%添加した試料では沈降速度(撹拌終了から沈降終了までにかかる時間)が30秒程度だったのに対して、高分子凝集剤を3%添加した試料では沈降速度が1分程度であり、7%添加試料の方が沈降速度に優れていた。その一方で、撹拌終了から3分経過した後に上澄み清澄度を測定したところ、清澄度はどちらも10NTU未満と十分なものであった。
【0061】
また、本発明に用いる高分子凝集剤の重合度については特に限定するものではないが、100万〜1000万の範囲であることが好ましい。高分子凝集剤の重合度が低すぎると清澄度が悪化しやすくなり、逆に重合度が高すぎると上澄み液に濁りやヌメリが生じやすくなる。
【0062】
<塩基度調整剤について>
塩基度調整剤は、処理後の廃水(上澄み液)のpHを中性付近に調整するために用いるものである。また、用いる原料によっては処理液のpHにより反応が起こりにくくなることもあるため、反応の促進にも影響することもある。
【0063】
本願の汚水処理剤に用いる塩基度調整剤としては、水酸化カルシウム(消石灰)を用いる。理由は定かではないが塩基度調整剤として水酸化カルシウムを用いると、沈降速度と清澄度の優れた汚水処理剤が得られる。また、凝集に好適な塩基度とpH域を維持するために、必要に応じて水酸化マグネシウムを併用してもよい。
【0064】
水酸化カルシウムの配合量としては、スメクタイト系吸着性物質100重量部に対して、5〜40重量部の範囲で配合し、15〜25重量部の範囲であればより好ましい。水酸化カルシウムの配合量が5重量部を下回ると、pHが凝集に適した範囲から外れるためかフロックが成長しにくく、上澄み清澄度、沈降速度共に悪化する傾向が見られる。一方、水酸化カルシウムの配合量が40重量部を上回ると、やはりpHが凝集に適した範囲から外れるためかフロックが成長しにくくなり、上澄み清澄度、沈降速度共に悪化する。
【0065】
また、水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムを併用する場合には、水酸化カルシウムは、スメクタイト系吸着性物質100重量部に対して、15〜25重量部の範囲で配合し、水酸化マグネシウムはスメクタイト系吸着性物質100重量部に対して、0〜10重量部の範囲で配合し、水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムを合わせた配合量がスメクタイト系吸着性物質100重量部に対して、25重量部以下であることが好ましい。
【0066】
<炭酸塩について>
炭酸塩は発泡性を有するため、汚水処理剤を液中に投入した際の分散性の向上に寄与し、また高分子凝集剤の溶解性向上にも効果が認められる。本願の汚水処理剤に用いる炭酸塩としては、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸カルシウムなどを用いることができ、上澄み液の清澄度と沈降速度に優れる点から炭酸水素ナトリウム、及び炭酸カルシウムが好ましい。
【0067】
炭酸塩の配合量としては、スメクタイト系吸着性物質100重量部に対して、0.5〜140重量部の範囲で配合することが好ましく、2〜100重量部の範囲であればより好ましい。炭酸塩の配合量が0.5重量部を下回ると、炭酸塩による分散効果が十分に得られないためにフロックが成長しにくく、上澄み清澄度、沈降速度ともに悪化する虞がある。一方、炭酸塩の配合量が140重量部を上回ると、炭酸塩の添加による効果は頭打ちとなる一方で、相対的に他の原料の配合量が減少するために清澄度、沈降速度のいずれについても悪化する虞がある。
【0068】
<製造方法について>
本発明にかかる汚水処理剤は、所定の容器に原料をすべて加えて、それらを均一になるまで混ぜることで製造することができる。混練に用いる装置としては、一軸または二軸の押出型混練装置、ロール型混練装置、バンバリーミキサー、土練機、コンクリートミキサー、ディスクペレッターなど一般的な混練装置を適宜使用することができ、比較的少量の混合であれば原料を入れた容器を振るなどして混ぜてもよい。本発明において、原料の添加順や混練設備の構成等は特に限定せず、また、用いるスメクタイト系粘土やその他原料は、必要に応じて粉砕するなどして予め粒径を調整してもよい。原料が均一に混ざった後はそのまま所定の容器や袋等に移して包装すればよいが、乾燥工程、分級工程、品質検査工程等を適宜設けてもよい。
【0069】
<汚水処理方法について>
先にも述べたように、本発明にかかる汚水処理剤は、泥を含む汚水に加えて撹拌することで汚水中の汚泥等を吸着・凝集させ、上澄み液と沈殿物とにわけることができる。処理後の溶液を濾紙、濾布などで濾過し、上澄み液から汚泥が含まれた沈殿物を取り除くことにより、比較的清澄な上澄み液は一般排水として廃棄することが可能となる。ここで用いる濾紙、濾布は特に限定せず、汚水処理に一般的に用いられるものを汚水の種類や量に応じて適宜選択して用いることができる。
【0070】
汚水処理剤を添加した後に必要とされる撹拌時間は、容器の大きさにもよるが30秒〜5分程度の範囲であることが好ましい。撹拌時間が30秒未満であると、汚水処理剤と汚水との接触時間が十分でないためフロックが十分に成長せず、上澄み清澄度と沈降速度が悪化する虞があり、逆に撹拌時間が5分を超えると、形成されたフロックが破壊されて上澄み清澄度が低下する虞がある。
【0071】
また、撹拌処理については、棒状のもので撹拌する、ハンドミキサーを用いる、など一般的な撹拌方法を適宜選択して用いることができ、ごく少量であればスターラー等を用いても良い。しかしながら、撹拌時に強い力で撹拌を行ったり撹拌時間を長くしすぎたりすると、形成されたフロックが破壊されて上澄み液中に微細な粒子が残存しやすくなるため注意が必要である。
【0072】
なお、各原材料を汚水処理剤と同様の割合で汚水中にほぼ同時に投下した後に撹拌することでも、本願に係る汚水処理剤と同様の効果が得られる可能性があると考えられる。しかしながら、各原材料の投下間隔が長くなると汚水処理効果が低下する虞があり、また調合してパッケージングされた汚水処理剤を用いれば、汚水に投入して撹拌するだけで容易に汚水処理を行うことができるためパッケージングされたものを用いることが好ましい。
【0073】
本発明に係る汚水処理剤の使用量は処理対象となる汚水の状況に合わせて適宜決定すればよいが、一般的な土壌泥水等の処理を行う場合であれば、固形分濃度1〜2%程度の汚水に対して汚水処理剤を500〜3000ppm程度添加することで十分な効果が発揮される。汚水処理剤の使用量が500ppm以下であると、汚水処理剤による効果が十分に得られない虞があり、一方3000ppm以上であると、汚水処理のコストが増大するだけでなく、高分子凝集剤特有のヌメリが発生し、作業性の低下、自然環境への悪影響という理由から、必要量以上の添加は好ましくない。
【0074】
<上澄み清澄度>
先にも述べたように、本発明に係る汚水処理剤は、沈殿物と分離した後の上澄み液を一般排水として処理することを目的の一つとしている。おおよその目安としては、処理後の上澄み液を目視で確認した際に、液中に目立つ浮遊物等が見あたらない程度の清澄度であることが好ましい。発明者等の知見によれば、濁度計で測定した濁度(清澄度)が10NTU以下であれば目視では清澄な液体に見え、10〜30NTUの範囲であればやや濁って見える程度であり、30NTUを超えると目視でもはっきりと濁りが認められるレベルである。本発明においては、上澄み液の清澄度が30NTU未満であればよく、10NTU未満であればより好ましい。
【0075】
<沈降速度>
また、本発明の目的の一つは、大量の汚水でも短時間で処理可能な汚水処理剤を提供することにある。一般的に凝集剤による汚水処理は、汚水への凝集剤の投入、撹拌(凝集)、必要に応じて静置して沈降、脱水(濾過)という手順で行われ、凝集と沈降に要する時間が短縮されると、処理に要する総時間も当然短縮される。凝集剤を用いた汚水処理では、凝集剤により形成されたフロックが大きい方がその重みにより沈降速度が向上し、また上澄み清澄度も増す傾向にあるため、フロックが実用的な範囲内で大きく形成されることが好ましい。フロックが大きく形成されれば重さで沈降速度が速くなるだけでなく、脱水濾過時に沈殿物が濾紙の目を抜ける可能性も低くなると考えられる。
【0076】
本発明においては、撹拌終了からフロックが沈降し終えるまでに要する沈降時間(沈降速度)は90秒未満であることが好ましく、60秒未満であればより望ましい。また、汚水処理剤添加から撹拌・凝集時間と、撹拌停止後の沈降時間とを合わせた総処理時間は210秒未満(3分30秒未満)であることが好ましく、180秒未満であればより好ましい。現在、一般的に使用されている汚水処理剤の沈降速度が90秒程度であることから、沈降速度が90秒未満であれば市販汚水処理剤よりも短時間で汚水処理を行うことができる汚水処理剤であると言える。
【0077】
[検証試験A:塩基度調整剤の種類についての検証(その1)]
塩基度調整剤の種類の違いによる汚水処理性能への影響を検証するために、塩基度調整剤として複数のカルシウム塩を用いて試験を行った。
[汚水処理剤の製造方法]
所定の容器に、スメクタイト系吸着性物質として酸性白土(pH5〜6)100重量部、高分子凝集剤としてポリアクリルアミド系高分子凝集剤10重量部、無機系凝集剤として硫酸アルミニウム25重量部、炭酸塩として重曹10重量部、カルシウム塩として水酸化カルシウム(A−1)、炭酸カルシウム(A−2)、塩化カルシウム(A−3)を15重量部加え、均一になるまで撹拌することでA−1〜A−3の3種の汚水処理剤が得られた。
[汚水処理剤による汚水処理方法]
得られた3種の汚水処理剤を、汚泥を含む汚水を入れたビーカーに、汚水に対して2000ppmの割合で加え、スターラーで2分間撹拌した後に2分間静置して上澄み清澄度の測定を行った。3種の汚水処理剤について上澄み清澄度(測定方法は後述)を測定した結果が
図1に示されている。
【0078】
この試験では3種の塩基度調整剤の添加量を等量にして試験を行ったため上澄み液のpHについては差が出たが、その点を考慮しても水酸化カルシウムを添加した汚水処理剤A−1の効果が抜き出たものであった。汚水処理剤A−1を添加したビーカーでは撹拌停止後15秒程度でフロックの大半が沈降し、30秒経過時点でほぼ沈殿し上澄み液も十分に澄んだものであったのに対して、汚水処理剤A−2、A−3を添加したビーカーでは沈降速度、上澄み清澄度のいずれについてもA−1よりも劣るものであった。この結果より、上記3種のカルシウム塩の中では水酸化カルシウムが最適であると考えられる。
【0079】
[検証試験B:塩基度調整剤の種類についての検証(その2)]
次いで、pHがほぼ同程度となるように塩基度調整剤の添加量を調整して試験を行った。汚水処理剤の製造方法は前述の通りであり、各汚水処理剤毎の原料の配合割合、上澄み清澄度が
図2に、各汚水処理剤毎の沈降速度が
図3に、それぞれ示されている。なお、汚水処理方法における静置時間は1分半とし、
図3(a)〜(d)は左から、B−1(水酸化カルシウム添加)、B−2(水酸化マグネシウム添加)、B−3(炭酸カルシウム添加)の順で3つのビーカーが並べられている。
【0080】
この試験では、水酸化カルシウム(B−1)、水酸化マグネシウム(B−2)、炭酸カルシウム(B−3)の3種を用いて試験を行っており、塩基度調整剤の添加量はそれぞれpHが6〜7程度になるように調整したため、塩基度調整剤の種類毎に添加量が異なる。汚水処理剤B−1を添加したビーカーでは、撹拌停止後15秒(
図3(b))の時点で沈降がかなり進んでおり、撹拌停止後30秒(
図3(c))、1分30秒(
図3(d))の時点ではほぼ沈降が終了し、上澄み清澄度も高かった。これに対して、汚水処理剤B−2を添加したビーカーでは、沈降速度自体はB−1のビーカーとそれほど変わらないが、上澄み液に明確に濁りが見られる。また、B−3を添加したビーカーでは、撹拌停止後15秒(
図3(b))の時点ではほとんど沈降しておらず、撹拌停止後1分30秒(
図3(d))経過時点で上澄み液が目視でもわかる程度にはっきりと濁っており、フロックの大きさが他2つのビーカーよりも小さいためか、沈殿物の沈降も終了していないようであった。この結果より、pHが同程度となるように塩基度調整剤毎に添加量を調整した場合であっても、水酸化カルシウムの結果が最も優れていることが明らかである。
【0081】
[検証試験C:炭酸塩の種類についての検証]
次いで、炭酸塩の種類の違いによる汚水処理性能への影響を検証するために、塩基度調整剤として複数のカルシウム塩を用いて試験を行った。汚水処理剤の製造方法は前述の通りであり、各汚水処理剤毎の原料の配合割合、上澄み清澄度が
図4に、各汚水処理剤毎の沈降速度が
図5に、それぞれ示されている。なお、汚水処理方法における撹拌時間は1分半、静置時間は2分とし、
図5(a)〜(d)は左から、C−1(炭酸水素ナトリウム添加)、C−2(炭酸カルシウム添加)、C−3(炭酸ナトリウム添加)の順でビーカーが並べられている。
【0082】
炭酸塩として、炭酸水素ナトリウム(C−1)、炭酸カルシウム(C−2)、炭酸ナトリウム(C−3)の3種を用いて得られた汚水処理剤の性能を比較したところ、汚水処理剤C−1、及びC−2を添加したビーカーでは、撹拌停止後15秒(
図5(b))の時点でも沈降がかなり進んでおり、撹拌停止後30秒(
図5(c))の時点ではほぼ沈降が完了して、上澄み液も澄んでいた。このため、撹拌停止後2分経過(
図5(d))後に上澄み液の清澄度を測定したところ、高い清澄度が得られた。これに対して、汚水処理剤C−3を添加したビーカーでは、撹拌停止後30秒(
図5(c))の時点ではまだビーカー内全体が濁って見え、撹拌停止後2分(
図5(d))の時点では大半が沈降したもののフロックが小さいためか上澄み液にやや濁りが残った。この結果から、炭酸塩としては炭酸水素ナトリウム、及び炭酸カルシウムが好ましいものと考えられる。
【0083】
[検証試験D:含有水分量の違いについての検証]
次いで、スメクタイト系粘土の含有水分量の違いによる汚水処理性能への影響を検証するために、スメクタイト系粘土の含有水分量を20%(D−1)、13%(D−2)、0%(D−3)となるように調整して試験を行った。汚水処理剤の製造方法は前述の通りであり、各汚水処理剤毎の原料の配合割合、上澄み清澄度、沈降速度が
図6に示されている。なお、汚水処理方法における撹拌時間は1分半、静置時間は2分とした。
【0084】
スメクタイト系粘土の含有水分量を変えた場合の汚水処理性能への影響について検証を行ったが、汚水処理剤D−1、D−2、D−3のいずれについても、フロックサイズ、上澄み清澄度、沈降速度、共にほぼ同程度であった。この結果から、含有水分量が20%程度までならばスメクタイト系粘土中の含有水分は汚水処理性能に影響を与えないものと考えられる。
【0085】
含有水分量が0%と20%とで効果に実質的な差異が見られなかったことから、含有水分量が20%を超えてもある程度までは性能的な影響は少ないものと考えられるが、スメクタイト系粘土中の含有水分量が過度に多くなると原料を混合する際に粘土が塊になり混ざりにくくなる虞があり、また混合終了後に乾燥工程が必要なることも考えられる。このため、含有水分量が0〜20%の範囲であるスメクタイト系粘土を用いることが、現実的には好ましいものと思われる。
【0086】
[検証試験E:高分子凝集剤の粒径の違いについての検証]
ノニオン系高分子凝集剤であるポリアクリルアミドは、粒状品、粉末品など様々な形状のものが市販されている。これら高分子凝集剤の粒径が本発明に係る汚水処理剤の物性に影響するかについて検証を行った結果が
図14に示されている。汚水処理剤の製造方法は前述の通りであり、各汚水処理剤毎の原料の配合割合、上澄み清澄度は
図14に示されている。ここで、各高分子凝集剤としては、粒径約1mmのもの(E−1)は市販品を使用、粒径0.6〜0.7mmのもの(E−2)は1mmのものを石臼粉砕したもの、粒径0.4〜0.5mmのもの(E−3)は1mmのものを機械粉砕したものである。なお、汚水処理方法における撹拌時間は1分半、静置時間は10分とした。
【0087】
高分子凝集剤として、粒径の異なる3種を用いた場合の汚水処理剤の性能を比較したところ、粒径0.4〜0.5mm(E−3)では静置後30〜40秒程度でほぼ沈降が完了したのに対して、粒径0.6〜0.7mm(E−2)では約1分、粒径1mm(E−1)では約2分と、高分子凝集剤の粒径が細かくなるにつれて凝集速度及び沈降速度は速くなる傾向が見られた。その一方で、10分静置した後の上澄み清澄度を測定したところ、わずかな差ではあるが、高分子凝集剤の粒径が大きいものの方が清澄度については優れていることがわかった。上述の粒径の範囲であればいずれも製品として使用可能であると考えられるが、高分子凝集剤の粒径は凝集速度、沈降速度、上澄み清澄度に影響を与えるものと認められる。
【実施例1】
【0088】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0089】
[実施例1]
[汚水処理剤の製造方法]
所定の容器に、スメクタイト系吸着性物質として酸性白土(新潟県新発田市産粘土、pH5〜6)を100重量部、高分子凝集剤としてポリアクリルアミド系高分子凝集剤(キースロックA−5131、協和産業(株))をそれぞれ
図7,8に記載の分量、無機系凝集剤として硫酸アルミニウム(水澤化学工業株式会社製)を25重量部、塩基度調整剤として水酸化カルシウム(株式会社オクト製)を15重量部、炭酸塩として炭酸水素ナトリウム(東ソー株式会社製)を10重量部加え、均一になるまで撹拌することで1−1〜1−14に係る14種の汚水処理剤が得られた。
[汚水処理剤による汚水処理方法]
得られた14種の汚水処理剤を、汚泥を含む汚水を入れたビーカーに、汚水に対して2000ppmの割合で加え、スターラーで1分30秒撹拌した後に撹拌を停止してフロックサイズと沈降速度の測定を行った。また、撹拌停止後2分、すなわち静置開始から2分後の上澄み清澄度を測定した。
【0090】
[実施例2]
[汚水処理剤の製造方法]
所定の容器に、スメクタイト系吸着性物質として酸性白土(実施例1と同じ)を100重量部、高分子凝集剤としてポリアクリルアミド系高分子凝集剤(キースロックA−5131、協和産業(株))を10重量部、無機系凝集剤として硫酸アルミニウム(水澤化学工業株式会社製)をそれぞれ
図9に記載の分量、塩基度調整剤として水酸化カルシウム(株式会社オクト製)を15重量部、炭酸塩として炭酸水素ナトリウム(東ソー株式会社製)を10重量部加え、均一になるまで撹拌することで2−1〜2−10に係る10種の汚水処理剤が得られた。
[汚水処理剤による汚水処理方法]
実施例1と同様の条件でフロックサイズ、沈降速度、及び上澄み清澄度の測定を行った。
【0091】
[実施例3]
[汚水処理剤の製造方法]
所定の容器に、スメクタイト系吸着性物質として酸性白土(実施例1と同じ)を100重量部、高分子凝集剤としてポリアクリルアミド系高分子凝集剤(キースロックA−5131、協和産業(株))を10重量部、無機系凝集剤として硫酸アルミニウム(水澤化学工業株式会社製)を25重量部、塩基度調整剤として水酸化カルシウム(株式会社オクト製)をそれぞれ
図10に記載の分量、炭酸塩として炭酸水素ナトリウム(東ソー株式会社製)を10重量部加え、均一になるまで撹拌することで3−1〜3−10に係る10種の汚水処理剤が得られた。
[汚水処理剤による汚水処理方法]
実施例1と同様の条件でフロックサイズ、沈降速度、及び上澄み清澄度の測定を行った。
【0092】
[実施例4]
[汚水処理剤の製造方法]
所定の容器に、スメクタイト系吸着性物質として酸性白土(実施例1と同じ)を100重量部、高分子凝集剤としてポリアクリルアミド系高分子凝集剤(キースロックA−5131、協和産業(株))を10重量部、無機系凝集剤として硫酸アルミニウム(水澤化学工業株式会社製)を25重量部、塩基度調整剤として水酸化カルシウム(株式会社オクト製)を15重量部、炭酸塩として炭酸水素ナトリウム(東ソー株式会社製)をそれぞれ
図11,12に記載の分量、を加え、均一になるまで撹拌することで4−1〜4−15に係る15種の汚水処理剤が得られた。
[汚水処理剤による汚水処理方法]
実施例1と同様の条件でフロックサイズ、沈降速度、及び上澄み清澄度の測定を行った。
【0093】
[実施例5]
[放射性元素を含む汚水の処理について]
放射性元素を含む汚水を用いて、放射性元素の除染能力について検証を行った。
[汚水処理剤の製造方法]
所定の容器に、スメクタイト系吸着性物質として酸性白土(実施例1と同じ)100重量部、高分子凝集剤としてポリアクリルアミド系高分子凝集剤(キースロックA−5131、協和産業(株))10重量部、無機系凝集剤として硫酸アルミニウム(水澤化学工業株式会社製)5重量部、炭酸塩として重曹(東ソー株式会社製)5重量部、水酸化カルシウム(株式会社オクト製)5重量部を加え、均一になるまで撹拌することで実施例5に係る汚水処理剤が得られた。
[試験方法]
放射性セシウムCs−134が650Bq/L、放射性セシウムCs−137が1300Bq/L含まれた廃液(福島県内にて採取)3リットルを入れたビーカーを2つ用意し、一方に実施例5に係る汚水処理剤を、もう一方に市販品の汚水処理剤(スーパーソリウェルパウダー、クマケン工業(株))を6g(2000ppm相当)添加した。各ビーカーをスターラーにて所定時間(
図13参照)撹拌後にそれぞれ2分間静置し、その後に不織布で脱水濾過して上澄み液と沈殿物とを分離し、上澄み液中の残存放射能濃度を測定した結果が
図13に示されている。なお、放射能濃度の測定は、ゲルマニウム半導体検出器を用いたガンマ線スペクトロメトリーによる各種分析法に準拠して行われ、SEG−EMS(セイコー・イージーアンドジー(株))とGe半導体検出器GEM20−70(オルテック社製)を使用して行った。
【0094】
なお、各実施例における物性値の測定及び評価は以下の通りに行った。
【0095】
[フロックサイズの評価について]
目視にて沈殿後のフロックサイズの評価を行った
大:15mm以上
中:5〜15mm
小:5mm未満
【0096】
[上澄み清澄度の測定方法]
撹拌処理後、ビーカー内のフロックが完全に沈殿するまで十分な時間を置き、フロックが完全に沈殿した後に上澄み液10mlを測定容器に量り採り、濁度計(ラコムテスター濁度計 TN−100、EUTECH INSTRUMENTS製)にセットすることで、各上澄み液の濁度(清澄度)の測定を行った。
【0097】
[上澄み清澄度の評価について]
一般的に、液体の清澄度が10NTU以下であれば目視では清澄な液体に見え、10〜30NTUの範囲であればやや濁って見える程度であり、30NTUを超えると目視でもはっきりと濁りが認められるレベルである。本願実施例においては、清澄度を以下の4段階に分けて評価を行った。
A(清澄度5NTU未満):目視で濁りは認められず、非常に清澄な液体である。
B(清澄度5〜10NTU):目視で濁りは認められず、清澄な液体である。
C(清澄度10〜30NTU):目視でやや濁りが認められるが、一般廃水として
扱える程度に清澄な液体である。
D(清澄度30NTU以上):目視ではっきりと濁りが認められ、一般廃水として
扱うのに適さない液体である。
【0098】
[沈降速度の測定方法]
ビーカー内を観察し、静置開始時点(撹拌処理終了時点)から、ビーカー内の目視できる大きさのフロックがビーカー底部に全て沈殿した沈降完了時点までの時間を沈降速度とした。
【0099】
[沈降速度の評価について]
本願実施例においては、沈降速度を以下の4段階に分けて評価を行った。
A(沈降速度30秒未満):沈降速度が著しく速い。
B(沈降速度30〜60秒):沈降速度が非常に速い。
C(沈降速度60〜90秒):沈降速度が速い。
D(沈降速度90秒以上):沈降速度がやや遅い。
【0100】
[総合評価]
上述の上澄み清澄度と沈降速度の評価結果を踏まえて、以下の基準に基づいて各実施例に係る汚水処理剤の総合評価を行った。
◎:上澄み清澄度、沈降速度共にAで、汚水処理剤として非常に優れている。
○:上澄み清澄度、沈降速度共にB以上で、汚水処理剤として優れている。
△:上澄み清澄度、沈降速度の一方がB以上、他方がC以下で、汚水処理剤として実用可能なレベルである。
×:上澄み清澄度、沈降速度共にC以下で、汚水処理剤として実用に適さない。
【0101】
実施例1で得られた14種の汚水処理剤の試験結果が
図7,8に示されている。
図7,8の結果から、高分子凝集剤は添加量が多いほどフロックが大きく成長し、それに伴い沈降速度が向上する傾向があることが認められた。その一方で上澄み清澄度については、配合量10〜20重量部の範囲では5NTU未満という非常に優れた結果となるが、30重量部を上回ったあたりから少しずつ悪化する傾向にある。また、今回の測定内容の範囲外となるが、配合量が50重量部を超えたあたりから上澄み液にぬめりが生じ、脱水時の作業性が悪化するという傾向も見られた。これらの結果から、高分子凝集剤の配合量は、スメクタイト系吸着剤100重量部に対して、2〜200重量部の範囲であることが好ましいことがわかった。
【0102】
実施例2で得られた10種の汚水処理剤の試験結果が
図9に示されている。
図9の結果から、無機系凝集剤は25重量部程度の添加まではフロックの成長と沈降速度の短縮に寄与するが、それを超えると逆にフロックの成長を阻害する傾向があることが認められた。これは、無機系凝集剤の過剰添加により凝集に適した電荷量から外れ、凝集性能を阻害していることが原因であると考えられる。また、上澄み清澄度についても、25重量部程度の添加までは向上するが、それを超えると徐々に悪化することがわかった。これは液中の汚濁物質等が大きなフロックとしてまとまらなかったことにより、一部の汚濁物質が沈殿せずに上澄み液中に残ったことが原因であると考えられる。これらの結果から、無機系凝集剤の配合量は、スメクタイト系吸着剤100重量部に対して、0〜60重量部の範囲であることが好ましいことがわかった。
【0103】
実施例3で得られた10種の汚水処理剤の試験結果が
図10に示されている。
図10の結果から、水酸化カルシウムの添加量が適切な量、即ち液性が中性になる程度の添加量だと、上澄み清澄度、沈降速度ともに優れた汚水処理剤となることがわかる。一方、添加量が少なすぎる場合、逆に多すぎる場合には、液性が酸性、又はアルカリ性に偏り凝集剤が適切に作用しないためかフロックが成長しにくく、上澄み清澄度と沈降速度も悪化する。実施例3の結果から、本実施例において水酸化カルシウムの配合量は、スメクタイト系吸着性物質(または「スメクタイト系吸着剤」)100重量部に対して、5〜40重量部の範囲であることが好ましいことがわかった。なお、先にも述べたように、本願において水酸化カルシウムは上澄み液のpHを中性付近に調整するために添加するものであるから、他の原料の配合量が変更されれば水酸化カルシウムの適正な配合量も変更されるものである。
【0104】
実施例4で得られた8種の汚水処理剤の試験結果が
図11,12に示されている。
図11,12の結果から、炭酸塩を適量添加することでフロックの成長とそれによる沈降速度の短縮、加えて上澄み清澄度に寄与することがわかる。炭酸塩は0.5重量部以上の添加で効果が認められ、10重量部程度の添加が最適量であり、実用範囲は140重量部程度であった。添加量が10〜140重量部の範囲での上澄み清澄度と沈降速度の低下は緩やかなことから、炭酸塩を過剰に添加した場合の物性の低下は炭酸塩の添加量が増したことにより他の原料の配合割合が相対的に低下したことに起因すると考えられる。
【0105】
実施例5に係る汚水処理剤と、市販の汚水処理剤とで放射性元素を含む廃水を処理したところ、いずれの汚水処理剤で処理された上澄み液についても、放射性セシウムCs−134とCs−137の残存放射能濃度は検出下限の10Bq/L以下であった。このことから本発明に係る汚水処理剤は、除染に使用される市販汚水処理剤と同程度の除染能力を持つことに加え、撹拌時間は市販汚水処理剤よりも短く、より短時間で除染が行える優れた汚水処理剤であると言える。