(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138093
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】サーバ冷却システム及びその冷却方法
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20170522BHJP
F24F 3/044 20060101ALI20170522BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20170522BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20170522BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
G06F1/20 C
F24F3/044
F28D15/02 L
F28D15/02 101A
F24F7/06 B
H05K7/20 W
G06F1/20 B
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-184329(P2014-184329)
(22)【出願日】2014年9月10日
(65)【公開番号】特開2016-57902(P2016-57902A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2016年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】302030756
【氏名又は名称】シムックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503471536
【氏名又は名称】合資会社次世代技術
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】特許業務法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 高英
(72)【発明者】
【氏名】石井 忠司
【審査官】
佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/069226(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/132592(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0277863(US,A1)
【文献】
特開2007−330656(JP,A)
【文献】
特開2012−107801(JP,A)
【文献】
特開昭62−071299(JP,A)
【文献】
特開2012−177959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
F24F 3/044
F24F 7/06
F28D 15/02
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバ室(7)において複数配列されているサーバ(1)を冷却するサーバ冷却システムであって、
各サーバ(1)の発熱部(4)に、その熱を吸熱するために一端が取り付けられた、高温の熱から低温の熱へ熱移動させる機能を有するヒートパイプ(5)と、
前記サーバ(1)により加熱された空気を外部へ排出する、前記サーバ室(7)に設けられた排気通路(8,29)と、
前記排気通路(8,29)内に設けられた、前記ヒートパイプ(5)の他端が取り付けられた冷却フィン(6)と、
前記サーバ(1)を収容する断熱性を有するサーバラック(11)と、を備え、
前記サーバ(1)の発熱部(4)の熱を前記ヒートパイプ(5)で吸熱し、該ヒートパイプ(5)で前記冷却フィン(6)まで移動させ、該冷却フィン(6)を排気通路(8,29)内で冷却して前記サーバ室(7)外にその熱交換した空気を排気して放熱する構成にした、ことを特徴とするサーバ冷却システム。
【請求項2】
前記サーバ(1)の発熱部(4)に伝熱プレート(23)を張り付け、該伝熱プレート(23)に前記ヒートパイプ(5)を取り付けた、ことを特徴とする請求項1のサーバ冷却システム。
【請求項3】
前記サーバ(1)の発熱部(4)に隣接してルーバー(25)を配置し、該ルーバー(25)にヒートパイプ(5)を取り付け、該ルーバー(25)を冷却する冷却ファン(31)を備えた、ことを特徴とする請求項1のサーバ冷却システム。
【請求項4】
前記排気通路(8)は、前記サーバ室(7)において各サーバ(1)の天井(9)内に設けられたダクトである、ことを特徴とする請求項1,2又は3のサーバ冷却システム。
【請求項5】
前記排気通路(29)は、前記サーバ室(7)の床下に設けられた二重床構造の風道(28)である、ことを特徴とする請求項1,2又は3のサーバ冷却システム。
【請求項6】
サーバ室(7)において各サーバ(1)から生じる熱を冷却するサーバ冷却方法であって、
各サーバ(1)の発熱部(4)で生じる熱を、高温部から低温部へ熱移動させる機能を有するヒートパイプ(5)で吸熱し、
この吸熱した熱を、前記ヒートパイプ(5)で前記サーバ室(7)の天井又は二重床構造に設けられた排気通路(8,29)内に備えられた冷却フィン(6)に移動させ、
前記排気通路(8,29)内において、冷凍機(27)で冷却した空気を送風して前記冷却フィン(6)を冷却し、熱交換した空気を外部へ排気することにより、各サーバ(1)を集中的に冷却する、ことを特徴とするサーバ冷却方法。
【請求項7】
前記サーバ(1)の発熱部(4)の熱は、伝熱プレート(23)を用いて熱伝導方式により前記ヒートパイプ(5)に伝熱する、ことを特徴とする請求項6のサーバ冷却方法。
【請求項8】
前記サーバ(1)の発熱部(4)の熱は、ルーバー(25)を用いて強制対流方式により前記ヒートパイプ(5)に伝熱する、ことを特徴とする請求項6のサーバ冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の冷却技術に係り、特に多数のサーバが収容されているサーバ室において、サーバが過熱状態とならないようにサーバを直接冷却することができるサーバ冷却システム及びその冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数のサーバ51を収容するサーバ室52では、サーバ51の発熱量が大きくなり過熱状態になると不具合が生じるおそれがある。そこで、サーバ室52において、
図11に示すように、個々のサーバ51にはその熱気をモータ53駆動によるサーバファン54を用いて、サーバラック55の上方に排気している。この排気された熱気は、冷却した気流による強制対流によって冷却している。グレーの矢印は熱交換後の暖かい空気を示す。室外機と室内機とから成る冷凍機56を設置して室内の温度を調整して機器の温度が上昇しないようにしている。このように、冷凍機56で冷却しているのはサーバ51そのものではなく、サーバ室52の室内の空気である。
【0003】
更に、サーバ室52は一般にケーブルを配線するために二重床構造となっており、冷凍機56の冷気をこの床下を風道57として利用し、上部から吸い込み床面58からサーバ51が配置してあるサーバラック55に向けて、冷気を噴出して温度調整している。
【0004】
このようにサーバ51を収容しているサーバラック55の列に効率的に冷気を供給する技術が種々提案されている。例えば、特許文献1の特開2010−164218号公報「サーバマシン室の空調方式」のように、サーバマシン室の天井面上に空調給気通路を形成し、床面下に空調還気通路を形成する。サーバラック列間の空間を1つおきに、空調給気される列から成るコールドアイルと熱排気される列から成るホットアイルとに設定する。コールドアイルの天井面に空調吹出口を設けて空調給気通路とサーバマシン室とを連通させ、さらにホットアイルの床面に排気吸込口を設けてサーバマシン室と空調還気通路とを連通させる。空調機からの冷気を空調給気通路へと送り込み、空調吹出口を通じてコールドアイルに冷気を送り込み、サーバラックとの熱交換後の暖気をホットアイルから排気吸込口を通じて床下の空調還気通路へと送り出すサーバマシン室の空調方式が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−164218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のサーバ室52の室内全体を冷却する方法は、冷却した気流による強制対流によって行っているため、冷凍機56による冷却はサーバ51そのものではなく、室内の空気である。このような冷却方法は、熱容量が大きいので冷やしにくく、また熱伝達率が小さい空気を冷却するためにエネルギー効率が悪いという問題を有していた。
【0007】
また、このサーバ室52内を冷却する方法は、この冷却された空気がサーバ室52の壁面に接触することで、外壁温度との大きな温度差により、
図11のサーバ室52の周囲の広い面積の壁面から外部の熱(グレーの矢印で示す)が流入しやすいという問題を有していた。しかも、サーバ室52内で空気を循環させるため循環ファン59が必要であり、余計なエネルギーが必要であり、騒音が大きいという問題も有していた。
更に、
図11に示すように、サーバ室52の室温が低くなるので、サーバ室52の室内で作業する際に、作業者に過度の負担がかかり、健康障害の危険があるという問題を有していた。
【0008】
本発明の発明者は、サーバ室の室内の空気を冷却し、その冷却した空気をサーバのCPU、ハードディスク等の電子回路に送風して基板を冷却し、電子回路の熱は室内の空気を経由して空調によって排気する方法は効率が悪いと考えた。そこで、熱源であるサーバ51の電子回路の発熱部分を直接冷却することに着目した。サーバ51を直接冷却することにより、無駄にサーバ室を冷やしすぎないので、冷却する熱量を減少させることが可能であると考えた。
【0009】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、サーバの発熱部分を直接冷却することで冷却効率を高めることができるサーバ冷却システム及びその冷却方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の冷却システムは、サーバ室(7)において複数配列されているサーバ(1)を冷却するサーバ冷却システムであって、
各サーバ(1)の発熱部(4)に、その熱を吸熱するために一端が取り付けられた、高温の熱から低温の熱へ熱移動させる機能を有するヒートパイプ(5)と、
前記サーバ(1)により加熱された空気を外部へ排出する、前記サーバ室(7)に設けられた排気通路(8,29)と、
前記排気通路(8,29)内に設けられた、前記ヒートパイプ(5)の他端が取り付けられた冷却フィン(6)と、
前記サーバ(1)を収容する断熱性を有するサーバラック(11)と、を備え、
前記サーバ(1)の発熱部(4)の熱を前記ヒートパイプ(5)で吸熱し、該ヒートパイプ(5)で前記冷却フィン(6)まで移動させ、該冷却フィン(6)を排気通路(8,29)内で冷却して前記サーバ室(7)外にその熱交換した空気を排気して放熱する構成にした、ことを特徴とする。
【0011】
前記サーバ(1)の発熱部(4)に伝熱プレート(23)を張り付け、該伝熱プレート(23)に前記ヒートパイプ(5)を取り付けることができる。
【0012】
前記サーバ(1)の発熱部(4)に隣接してルーバー(25)を配置し、このルーバー(25)にヒートパイプ(5)を取り付け、該ルーバー(25)を冷却する送風ファン(26)を備えることができる。
【0013】
前記排気通路(8)は、前記サーバ室(7)において各サーバ(1)の天井(9)内に設けられたダクトである。
前記排気通路(29)は、前記サーバ室(7)の床下に設けられた二重床構造の風道(28)である。
【0014】
本発明の冷却方法は、サーバ室(7)において各サーバ(1)から生じる熱を冷却するサーバ冷却方法であって、
各サーバ(1)の発熱部(4)で生じる熱を、高温部から低温部へ熱移動させる機能を有するヒートパイプ(5)で吸熱し、
この吸熱した熱を、前記ヒートパイプ(5)で前記サーバ室(7)の天井又は二重床構造に設けられた排気通路(8,29)内に備えられた冷却フィン(6)に移動させ、
前記排気通路(8,29)内において
、冷凍機(27)で冷却した空気を送風して前記冷却フィン(6)を冷却し、熱交換した空気を外部へ排気することにより、各サーバ(1)を集中的に冷却する、ことを特徴とする。
【0015】
前記サーバ(1)の発熱部(4)の熱は、伝熱プレート(23)を用いて熱伝導方式により前記ヒートパイプ(5)に伝熱することができる。
【0016】
または、前記サーバ(1)の発熱部(4)の熱は、ルーバー(25)を用いて強制対流方式により前記ヒートパイプ(5)に伝熱することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の冷却システムでは、サーバ(1)から生じる高温の熱を高温状態のままでヒートパイプ(5)に直接伝熱させ、このヒートパイプ(5)によりその高温の熱を冷却フィン(6)まで熱移動させ、この冷却フィン(6)により熱交換して放熱する。サーバ(1)を集中的に冷却するためサーバ室(7)全体は低温にならない。サーバ室(7)の室内の空気を冷やす必要がないため、外部からサーバ室(7)への熱流入も最小限となり、省エネルギー性に優れている。サーバ室(7)内は室温が冷えすぎることがないので、通常のオフィスと同様に作業することができる。
【0018】
冷却フィン(6)の熱交換は、排出通路(8,29)内において行うので、送風ファン(26)は基本的には冷凍機(27)と排出通路(8,29)内のみに必要で、サーバラック(11)毎には不要になるので、省エネルギーと騒音の低減になる。
【0019】
本発明の冷却方法では、外気温が高いときには冷却フィン(6)は冷凍機(27)を用いて冷却し、送風ファン(26)で室外に放熱する。
外気温が高温にならないときには、冷凍機(27)を稼働させずに外気だけで冷却フィン(6)を十分冷却できるため、省エネルギー性能に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例1のサーバ冷却システムを示す概略説明図である。
【
図3】ヒートパイプを示す一部省略した原理説明図である。
【
図4】冷却フィンを示し、(a)は拡大正面図、(b)は拡大平面図である。
【
図5】サーバから熱伝導方式による吸熱構造を示す拡大斜視図である。
【
図6】サーバから強制対流方式による吸熱構造を示す拡大斜視図である。
【
図7】サーバ冷却システムの変形例を示す概略説明図である。
【
図8】実施例2のサーバ冷却システムを示すサーバラックの側断面図である。
【
図9】実施例2のサーバ冷却システムを示すサーバラックの背断面図である。
【
図10】実施例2の冷却フィンの一例を示す斜視図である。
【
図11】従来のサーバ室を冷却する方法を示す概略説明図である
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のサーバ冷却システムは、高温の熱から低温の熱への熱移動させる機能を有するヒートパイプと冷却フィンを用いてサーバ室内に複数配列されているサーバを集中的に冷却するシステムである。
【実施例1】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
<冷却システムの全体構成>
図1は本発明の実施例1のサーバ冷却システムを示す概略説明図である。
図2はサーバの一例を示す概略説明図である。
実施例1のサーバ冷却システムは、各サーバ1のCPU2やハードディスク3等の発熱部4に、その熱を吸収するために一端が取り付けられたヒートパイプ5と、このヒートパイプ5の他端が取り付けられた冷却フィン6と、この冷却フィン6の加熱された空気を外部へ排出する、サーバ室7に設けられた排気通路8と、を備えたものである。この冷却システムは、サーバ室7において複数配列されているサーバ1を集中的に冷却するシステムである。実施例1のサーバ冷却システムは、サーバ室7の天井面9の上側に排気通路8を形成したものである。
【0023】
サーバ室7には、床面10に複数のサーバラック11が並べられている。これらのサーバラック11の内部にサーバ1が収容されている。複数の列が相互に離れた状態で、サーバ室7の内部に配列されている。図示例では4基のサーバラック11(サーバ1)を示しているが、これは一例であって4基に限定されないことは勿論である。また、実施例1のサーバ冷却システムでは、そのサーバ室7の構成は、天井面9の上側に排気通路8を形成したものであれば図示例の配置に限定されない。
【0024】
<サーバの構成>
図2に示すサーバ1は、上からルーター12、CPU2、ルーター12、ハードディスク3と2段のスイッチングハブ13が備えられた構成を示している。本発明では例えば上側のルーター12とCPU2との間に上部冷却用マウント14が配置されている。この上部冷却用マウント14にはヒートパイプ5の一端が接続されている。この上部冷却用マウント14は、上側のルーター12と共に主にCPU2を冷却する。なお、このサーバ1は一例であってこのような構成に限定されないことは勿論である。
【0025】
下側のルーター12とハードディスク3との間に下部冷却用マウント15が配置されている。下部冷却用マウント15にもヒートパイプ5の一端が接続されている。この下部冷却用マウント15は、下側のルーター12と共に主にハードディスク3を冷却する。
【0026】
ヒートパイプ5の一端が接続される冷却用マウント14,15も図示例のように上部冷却用マウント14と下部冷却用マウント15の2か所に限定されず、1か所又は3か所以上設けることは可能である。
【0027】
<ヒートパイプの構成>
図3はヒートパイプを示す一部省略した原理説明図である。
ヒートパイプ5は、アルミニウム又は銅等の金属製パイプ16の内壁に毛細管構造を有するウィック17を備え、このウィック17の内部は中空になった密閉容器である。ヒートパイプ5には適量の水又は油等の作動液18が真空封入されている。ヒートパイプ5の表面に熱が加えられると(図示の左側の「入熱部」)、その部分の内壁の作動液18はその熱を潜熱として奪い、沸騰して蒸気になる。
【0028】
次に、この蒸気は高い圧力を持っているため密閉容器(金属製パイプ16)内を高速で移動し(図示の左側から右側への移動)、放熱部(図示の右側)で凝縮する。ここで蒸気は潜側に配置し、熱を放出し、加えられた熱が外部に放出される。凝縮した作動液18はウイック17の毛細管作用により入熱部に還流する。このサイクルを繰り返し、熱を連続的に高効率に移動させることができる。本発明はこの熱移動の機能を応用したもので、ヒートパイプ5の「入熱部」をサーバ1側に配置し、ヒートパイプ5の「放熱部」を冷却フィン6側に配置した。
【0029】
ヒートパイプ5の他端が取り付けられた冷却フィン6は、サーバ室7に設けられた排気通路8内に配置される。この排気通路8から冷却フィン6の加熱された空気を外部へ排出する。このヒートパイプ5は断熱材19で保護する。勿論、サーバ室7の室内温度の上昇を防止するためである。
【0030】
<冷却フィンの構成>
図4は冷却フィンを示し、(a)は拡大正面図、(b)は拡大平面図である。
冷却フィン6は、図示するように、上側フィン20と下側フィン21とから成る。上側フィン20には長い突起が多数形成され、伝熱面積を広げた設計になっている。下側フィン21の突起は、上側フィン20の突起より短めになっている。これは排気通路8内においての安定性を考慮したものである。この図示例の突起の長さに限定されるものではない。また、1個の冷却フィン6に形成される突起の本数も図示例に限定されないことは勿論である。更に熱交換率の向上を図れる形状であれば、この突起の形状も図示例に限定されない。
【0031】
上側フィン20と下側フィン21の間にヒートパイプ5のヒートパイプアダプタ22を介してヒートパイプ5の一端が接続されている。このヒートパイプアダプタ22は2枚の板材を張り合わせた構成で、1枚目は上側フィン20に取り付けられ、2枚目は下側フィン21に取り付けられている。この板材でヒートパイプ5を着脱自在に挟む構成になっている。
【0032】
<サーバからの吸熱構造>
図5はサーバから熱伝導方式による吸熱構造を示す拡大斜視図である。
図6はサーバから強制対流方式による吸熱構造を示す拡大斜視図である。
次に、サーバ1(発熱部4)からヒートパイプ5に効率よく伝熱する吸熱構造を説明する。
図4に示す吸熱構造は、サーバ1(発熱部4)に伝熱プレート23の一端を締付具24で張り付けるように取り付け、この伝熱プレート23の他端にヒートパイプ5を取り付けた熱伝導方式による吸熱構造である。伝熱プレート23は熱伝導率の高い材質のプレートである。例えば、アルミニウム、黄銅(真鍮)、ニッケル、鉄等の金属板を用いる。この伝熱プレート23の吸熱構造によれば、個々のCPU2等に冷却ファンを設ける必要はない。
【0033】
また、
図6に示す吸熱構造は、サーバ1(発熱部4)に隣接してルーバー25を配置し、このルーバー25にヒートパイプ5を取り付けた強制対流方式による吸熱構造である。この吸熱構造によれば、冷却用のファンを必要とするがサーバ1(発熱部4)全体を冷却することができる。
これらのサーバ1からの吸熱構造は共にサーバラック11のみの加工だけで良いので、汎用性の高い冷却システムになる。
【0034】
<冷却方法>
本発明の冷却システムでは、サーバ1で発生した高温の熱を高温状態のままでヒートパイプ5に直接伝熱させ、このヒートパイプ5により熱移動させ、その高温の熱を冷却フィン6により熱交換して放熱することによりサーバ1を集中的に冷却する。従来のようにサーバ1全体、すなわち高熱を発しないスイッチングハブ13、ルーター12まで冷却していない。更にはサーバ室7全体も冷却していない。そこで、サーバ1全体、サーバ室7全体を冷却するものではないため、サーバ室7が低温にならない。
【0035】
サーバ室7の室内の空気を冷やす必要がないため、外部からサーバ室7への熱流入も最小限となるため、省エネルギー性に優れている。サーバ室7内は室温が冷えすぎることがないので、通常のオフィスと同様に作業することができる。
【0036】
冷却フィン6の熱交換は、排出通路8内において行うので、送風ファン26は基本的には冷凍機27と排出通路8内のみに必要で、サーバラック11毎には不要になるので、省エネルギーと騒音の低減が達成できる。
【0037】
外気温が高いときには冷却フィン6は冷凍機27を用いて冷却し、送風ファン26を用いて室外に放熱する。
一方、外気温が高温にならないときには、冷凍機27を稼働させずに外気だけで冷却フィン6を十分に冷却できるため、省エネルギー性能に優れている。
【0038】
<サーバ冷却システムの変形例(床下の排気通路の構成)>
図7はサーバ冷却システムの変形例を示す概略説明図である。
サーバ冷却システムの変形例は、サーバ室7の床面10の下側はケーブルを配線するために二重床構造になっており、この二重床構造の風道28をそのまま排気通路29として利用したものである。ヒートパイプ5の他端が取り付けられた冷却フィン6は、この二重床構造の排気通路29内に配置する。実施例1と同様にこの排気通路29から冷却フィン6の加熱された空気を外部へ排出する。
【0039】
このように二重床構造の床下に排気通路29を設け、ここに冷却フィン6を配置してサーバ1を冷却する構成では、ヒートパイプ5をサーバラック11に添わせる形で床下に向けた構成である。そのために、サーバ室7におけるヒートパイプ5の凹凸感がなく室内を有効活用することが可能になる。
【実施例2】
【0040】
図8は実施例2のサーバ冷却システムを示すサーバラックの側断面図である。
図9は実施例2のサーバ冷却システムを示すサーバラックの背断面図である。
図10は実施例2のサーバの一例を示す斜視図である。
実施例2のサーバ冷却システムは、供給用冷却ダクト30の空気を冷却ファン31で各サーバ1のCPU2やハードディスク3等の発熱部4に送風して冷却するシステムである。このシステムは、サーバ1の発熱部4に空気を送風して冷却する冷却ファン31と、熱交換した温熱を伝熱するルーバー25に取り付けられたヒートパイプ5と、このヒートパイプ5の他端が取り付けられた冷却フィン32と、この冷却フィン32の加熱された空気を外部へ排出する排熱用冷却ダクト33と、を備えたものである。更に、サーバラック11自体を断熱材19で覆い、サーバ室7に熱が籠らないようになっている。
図8、
図9では吸熱構造としてルーバー25を用いた強制対流方式を利用しているが、
図5に示した熱伝導方式による吸熱構造を用いることも勿論可能である。
【0041】
実施例2のサーバ冷却システムでは、サーバ1で発生した高温の熱を冷却ファン31を用いて供給用冷却ダクト30の空気を強制対流で冷却する。熱交換した温風熱は、ルーバー25とヒートパイプ5を用いて冷却フィン32から排熱用冷却ダクト33から排気する。このサーバ冷却システムでも、サーバ1全体ではなく高熱を発するサーバ1のCPU2やハードディスク3等の発熱部4を集中的に冷却する。サーバ室7全体も冷却していないので、サーバ室7が低温にならない。
【0042】
<冷却フィンの構成>
図10は実施例2の冷却フィンを示す拡大斜視図である。
実施例2の冷却フィン32は、伝熱板34を複数枚上下方向に数枚間隔を開けて並べた構造になる。冷風の送風方向に伝熱板34の長手方向に併せてヒートパイプ5を取り付ける。なお、
図6に示したような、突起を設けた形式の冷却フィン6を実施例2のサーバ冷却システムに組み込むことができる。
【0043】
図示のような冷却フィン32の伝熱板34の面積は、ヒートパイプ5の本数に合わせる。即ち、ヒートパイプ5の本数が多いときは熱交換率を高めるために伝熱板34の面積を広くする。逆に、ヒートパイプ5の本数が少ないときは伝熱板34の面積を狭くするとた調整をする。
【0044】
なお、本発明は、サーバ1の発熱部分4を直接冷却することで冷却効率を高めることができれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のサーバ冷却システム及びその冷却方法は、サーバ1、サーバ室7の冷却に限定されず、室内に設置された高温になりやすい発熱部がある電子装置を直接冷却するものであれば利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 サーバ
4 発熱部
5 ヒートパイプ
6 冷却フィン
7 サーバ室
8 排気通路(天井側)
16 金属製パイプ
17 ウイック
18 作動液
27 冷凍機
29 排気通路