(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の網状フィルムの幹繊維と枝繊維とで形成される開口部の、幹繊維に沿った長さが、前記第2の網状フィルムの幹繊維と枝繊維とで形成される開口部の、幹繊維に沿った長さと同一であり、
前記第1の網状フィルムの幹繊維と枝繊維とで形成される開口部の、枝繊維に沿った長さが、前記第2の網状フィルムの幹繊維と枝繊維とで形成される開口部の、枝繊維に沿った長さと同一である、請求項1に記載の網状不織布。
前記第2の網状フィルムのパターンが、前記第1の網状フィルムのパターンに対して、90°もしくは−90°回転したパターンである、請求項1または2に記載の網状不織布。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2に記載された割繊維不織布には、その製造方法に起因する継ぎ目が存在している。かかる継ぎ目は、特に長尺不織布として用いられる場合には、外観上の問題となる場合があった。さらには、長尺不織布を巻回してなる巻回体においては、外観上の問題に加え、継ぎ目部分の厚みが大きいために巻回体の均一性が損なわれる場合があった。特に、この問題は、割繊維不織布を他基材と貼り合せた場合に顕著に表れていた。
【0007】
一方、特許文献3に記載された広幅網状延伸膜に、網状組織の割繊維を積層してなる網状不織布は、継ぎ目が存在せず、長尺不織布としての使用に特に適している。しかし、外観においては、特許文献1、2に開示された割繊維不織布が好まれる傾向にある。また、特許文献3に記載された網状不織布には、他素材と複合化した場合に、その凹凸により素材の平滑性が損なわれるという欠点があり、改善が求められている。
【0008】
継ぎ目がなく、かつ、割繊維不織布と同様の外観を備え、長尺不織布あるいは巻回体としても用いることができる積層網状不織布が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものである。本発明者らは、不織布を構成するフィルムの形状を新たにすることで、継ぎ目がなく、かつ、一定の厚みを保つことができ、割繊維不織布と同様の外観を備えた網状不織布が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、継ぎ目のない網状不織布であって、互いに並行に延びる幹繊維と、隣接する前記幹繊維同士を繋ぐ枝繊維とを備え、前記幹繊維が第1の方向にほぼ配列した第1の網状フィルムと、互いに並行に延びる幹繊維と、隣接する前記幹繊維同士を繋ぐ枝繊維とを備え、前記幹繊維が前記第1の方向と交差する第2の方向にほぼ配列した第2の網状フィルムとを、積層してなる。
【0010】
前記網状不織布において、前記第1の網状フィルムが、一軸延伸多層ポリオレフィンフィルムを前記第1の方向に割繊後、前記第2の方向に拡幅して得られたものであり、前記第2の網状フィルムが、多層ポリオレフィンフィルムに、前記第2の方向に沿ったスリットを形成した後、前記第2の方向に一軸延伸して得られたものであることが好ましい。
【0011】
本発明は、別の実施の形態によれば、前述の網状不織布からなる、継ぎ目のない長尺網状不織布であって、長さが幅よりも少なくとも大きい長尺網状不織布である。
【0012】
本発明は、また別の実施の形態によれば、前述の長尺網状不織布をロール状に巻回してなる網状不織布巻回体である。
【0013】
本発明は、別の局面によれば、網状不織布の製造方法であって、一軸延伸多層ポリオレフィンフィルムを長さ方向(機械方向)に割繊後、幅方向に拡幅して、長尺の第1の網状フィルムを得る工程と、多層ポリオレフィンフィルムに、幅方向にスリットを形成した後、幅方向に一軸延伸して、長尺の第2の網状フィルムを得る工程と、前記第1と前記第2の網状フィルムを継ぎ目なく連続して積層して接着する工程とを含む。
【0014】
本発明は、また別の実施の形態によれば、継ぎ目のない長尺網状フィルムであって、ほぼ幅方向に互いに並行に延びる幹繊維と、隣接する前記幹繊維同士を繋ぐ枝繊維とを備え、長さが、幅よりも少なくとも大きい長尺網状フィルムである。
【0015】
本発明は、また別の実施の形態によれば、前述の長尺網状フィルムに他基材を積層した積層体である。
【0016】
本発明は、また別の実施の局面によれば、前述の長尺網状フィルムの製造方法であって、長尺の多層ポリオレフィンフィルムに、幅方向にスリットを形成する工程と、前記工程により得られたスリットフィルムを幅方向に一軸延伸する工程とを含む。
【0017】
本発明は、また別の実施の局面によれば、前述の積層体の製造方法であって、長尺の多層ポリオレフィンフィルムに、幅方向にスリットを形成する工程と、前記工程により得られたスリットフィルムを幅方向に一軸延伸して前記長尺網状フィルムを得る工程と、前記長尺網状フィルムに他基材を連続的に積層して接着する工程とを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来の割繊維不織布と同様の外観を備え、かつ、継ぎ目がなく、長尺不織布や巻回体として有用な網状不織布を提供することができる。このような網状不織布からなる巻回体は、継ぎ目がないために、均一性に優れる利点を有する。さらに、本発明に係る網状不織布は、従来技術による網状不織布と比較して、手触りが良く、特に包装材料や内装材料として用いる場合に、使用感を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を、実施形態及び図面を参照して詳細に説明する。しかし、以下の実施形態は本発明を限定する。
【0021】
[第1実施形態:網状不織布]
本発明は、第1実施形態によれば、網状不織布に関する。本実施形態による網状不織布は、互いに並行に延びる幹繊維と、隣接する前記幹繊維同士を繋ぐ枝繊維とを備え、前記幹繊維が第1の方向にほぼ配列した第1の網状フィルムと、互いに並行に延びる幹繊維と、隣接する前記幹繊維同士を繋ぐ枝繊維とを備え、前記幹繊維が前記第1の方向と交差する第2の方向にほぼ配列した第2の網状フィルムとを、積層してなり、継ぎ目が存在しない。
【0022】
ここで、第1の方向にほぼ配列したとは、第1の網状フィルムの幹繊維が、ある一定の方向に概ね揃って配列していることをいうが、厳密にすべての幹繊維の配列方向が同一である必要はなく、例えば、10°程度の誤差があってもよいことをいうものとする。また、同様に、第2の方向にほぼ配列したとは、第2の網状フィルムの幹繊維が、第1の方向とは異なる一定の方向に、概ね揃って配列していることをいうが、厳密にすべての幹繊維の配列方向が同一である必要はなく、例えば、10°程度の誤差があってもよいことをいうものとする。また、交差するとは、第1の方向と第2の方向とが異なっていることを意味し、好ましくは、直交から0〜20°の角度をもって交差し、さらに好ましくは、概ね直交している。概ね直交とは、好ましくは、直交±15°程度の誤差があってもよいことをいうものとする。
【0023】
図1は、本実施形態による網状不織布の一例を示す、概念的な平面図である。網状不織布は、長尺の場合もあるため、図示するのは、一部分である。網状不織布1は、第1の網状フィルム20と、第2の網状フィルム30とが積層されて構成されている。第1の網状フィルム20は、幹繊維20aと枝繊維20bとを備え、当該幹繊維20aが、第1の方向にほぼ配列している。図示する実施形態においては、第1の方向は、概ね長さ方向である。また、隣接する幹繊維20aは、並行に延び、かつ、概ね平行になっている。第2の網状フィルム30もまた、幹繊維30aと枝繊維30bとを備え、当該幹繊維30aが第2の方向にほぼ配列している。図示する実施形態においては、第2の方向は、概ね幅方向である。また、隣接する幹繊維30aは、並行に延び、かつ、概ね平行になっている。
【0024】
本明細書において、「長さ方向」とは、不織布及びこれを構成するフィルムを製造する際の機械方向すなわち送り方向を意味し、縦方向とも指称する。一方、「幅方向」とは、長さ方向と直角な方向、すなわち不織布及びこれを構成するフィルムの幅方向を意味し、横方向とも指称する。なお、概ね長さ方向、概ね幅方向というときには、例えば、長さ方向から±10°程度の方向をいうものとする。
【0025】
このとき、第1の網状フィルム20の幹繊維20aと、第2の網状フィルム30の幹繊維30aとは交差している。図示する実施形態においては、幹繊維20aと30aとは、概ね直交している。また、第1の網状フィルム20の枝繊維20bと、第2の網状フィルム30の枝繊維30bとも、同様に、交差しており、好ましくは概ね直交している。そして、第1の網状フィルム20と第2の網状フィルム30とは、その接触面において、接着しており、好ましくは熱溶着している。
【0026】
図2に、網状不織布1として積層される前の、第1の網状フィルム20単体の斜視図を示す。第1の網状フィルム20は、
図2(b)に示すように、第1の熱可塑性樹脂からなる層20cの両面に、第1の熱可塑性樹脂よりも低い融点を有する第2の熱可塑性樹脂からなる層20dを積層した層構造を有する。そして、
図2(a)に示すように、複数の幹繊維20aと、枝繊維20bとで構成される。枝繊維20bは幹繊維20aと比べて細く、第1の網状フィルム20の機械的強度は主として幹繊維20aによって与えられる。なお、図示する実施形態においては、第1の網状フィルム20においては、幹繊維20aが概ね長さ方向、すなわち縦方向にほぼ配向していることから、第1の網状フィルム20を、縦ウェブとも指称する。
【0027】
第2の熱可塑性樹脂からなる層20dの厚みは、第1の網状フィルム20全体の厚みの50%以下、望ましくは40%以下である。後述する第2の網状フィルム30との熱溶着時の接着強度等の諸物性を満足させるためには、第2の熱可塑性樹脂からなる層20dの厚みは3μm以上であればよいが、好ましくは4〜100μmの範囲から選択される。
【0028】
第1の網状フィルム20を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンおよびこれらの共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート群のポリエステルおよびこれらの共重合体、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミドおよびこれらの共重合体、ポリ塩化ビニル、メタクリル酸またはその誘導体の重合体および共重合体、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリテトラクロロエチレンポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられる。第1の網状フィルム20は、その延伸方向に高い引張強度を有している。その中でも、割繊性の良好なポリオレフィンおよびその重合体、ポリエステルおよびその重合体が好ましい。また、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との融点の差は、製造上の理由から、5℃以上であることが必要であり、好ましくは10〜50℃である。
【0029】
第1の網状フィルム20において、幹繊維20aと枝繊維20bの幅の比率は、目的に応じて当業者が決定することができるが、例えば、枝繊維20bの幅に対して、幹繊維20aの幅が、少なくとも1.2倍であることが好ましい。
【0030】
第1の網状フィルム20の製造方法としては、例えば、多層インフレーション法あるいは多層Tダイ法などの押出成形により、第1の熱可塑性樹脂からなる層20cの両面に第2の熱可塑性樹脂からなる層20dが積層された3層構造の原反フィルムを製造する。次いで、この原反フィルムを長さ方向に延伸し、スプリッターを用いて長さ方向に千鳥掛けに割繊(スプリット処理)して多数の並行なスリットを形成し、これと直交する方向に拡幅する。これにより、
図2(a)に示すような、幹繊維20aが第1の方向、すなわち図示する形態においては、ほぼ長さ方向に配列された第1の網状フィルム20が得られる。
【0031】
図示する実施形態においては、第1の網状フィルムについて、第1の方向を、概ね長さ方向としたが、本発明はこれに限定されるものではない。第1の網状フィルムにおける幹繊維の方向は、長さ方向には限定されない。
【0032】
次に、
図3に、網状不織布1として積層される前の、第2の網状フィルム30単体の斜視図を示す。第2の網状フィルム30は、
図3(a)および
図3(b)に示すように、第1の熱可塑性樹脂からなる層30cの両面に、第1の熱可塑性樹脂よりも低い融点を有する第2の熱可塑性樹脂からなる層30dを積層した層構成を有する。第2の網状フィルム30を平面視すると、
図3(a)に示すように、複数の幹繊維30aと、枝繊維30bとで構成され、枝繊維30bは幹繊維30aと比べて、その幅が細くなっている。第2の網状フィルム30においては、幹繊維30aが概ね幅方向、すなわち横方向にほぼ配向していることから、第2の網状フィルム30を、横ウェブとも指称する。
【0033】
第2の網状フィルム30全体の厚みと第2の熱可塑性樹脂からなる層30dの厚みとの関係は、上述した第1の網状フィルム20についての説明と同じであり、また、第2の網状フィルム30を構成する樹脂材料についても、上述した第1の網状フィルム20と実質的に同じ材料を用いることができ、その詳細な説明は省略する。好ましくは、第1の網状フィルム20と第2の網状フィルム30とは、同一の熱可塑性樹脂からなる。
【0034】
第2の網状フィルム30において、幹繊維30aと枝繊維30bの幅の比率は、目的に応じて当業者が決定することができるが、例えば、枝繊維30bの幅に対して、幹繊維30aの幅が、少なくとも1.2倍であることが好ましい。
【0035】
第2の網状フィルム30の製造方法は、第1の熱可塑性樹脂からなる層30cの両面に第2の熱可塑性樹脂からなる層30dが積層された3層構造の原反フィルムを製造する。次いで、この原反フィルムに対して、第2の方向、図示する実施形態においては、ほぼ幅方向(
図3に示すT方向)に沿って、スリット処理を施して多数の並行なスリットを形成する。その後、原反フィルムを第2の方向、図示する実施形態においては幅方向(
図3に示すT方向)に延伸する。このように原反フィルムに、先にスリットを形成した後に、これを幅方向に延伸することにより、幹繊維30aと枝繊維30bとを備える第2の網状フィルム30が得られる。幅方向のスリットは、円筒の外周面上に突起が形成された回転ローラとこれに対向する外周面が平坦な回転ローラ間に、原反フィルムを通過搬送することにより形成することができる。
【0036】
図示する実施形態においては、第2の網状フィルムについて、第2の方向を、概ね幅方向としたが、本発明はこれに限定されるものではない。第2の網状フィルムにおける幹繊維の方向は、幅方向には限定されず、スリッターの刃の角度等によって、適宜変更することができる。
【0037】
一実施形態においては、第2の網状フィルム30のパターンは、第1の網状フィルム20のパターンに対して、90°もしくはマイナス90°回転したパターンである。ここで、パターンとは、第1の網状フィルム、第2の網状フィルムをそれぞれ、平面視した場合に、幹繊維、枝繊維並びにこれらにより形成される開口部の形状からつくられる連続した模様をいうものとする。したがって、この場合、第1の網状フィルム20の幹繊維20aの幅は、第2の網状フィルム30の幹繊維30aの幅と同一である。また、第1の網状フィルム20の幹繊維20aと枝繊維20bとで形成される開口部の、幹繊維20aに沿った長さ(
図2中、l
20で表される)は、第2の網状フィルム30の幹繊維30aと枝繊維30bとで形成される開口部の、幹繊維30aに沿った長さ(
図3中、l
30で表される)と同一である。第1の網状フィルム20の枝繊維20bと、第2の網状フィルム30の枝繊維30bについても、幅、開口部の枝繊維20b、30bに沿った長さが、それぞれ同一である。この場合、外観が、割繊維不織布と同様になる。
【0038】
別の実施形態においては、第1の網状フィルム20の幹繊維20aの幅は、第2の網状フィルム30の幹繊維30aの幅と異なって良い。また、第1の網状フィルム20の幹繊維20aと枝繊維20bとで形成される開口部の、幹繊維20aに沿った長さl
20は、第2の網状フィルム30の幹繊維30aと枝繊維30bとで形成される開口部の、幹繊維30aに沿った長さl
30と異なって良い。
【0039】
本発明に係る網状不織布は、上記特徴を備え、かつ、長さが、幅よりも少なくとも大きいことが好ましい。ここでいう長さとは、上記において定義した長さ方向、すなわち、不織布及びこれを構成するフィルムを製造する際の機械方向すなわち送り方向の寸法をいう。また、幅とは、長さ方向と直角な方向の寸法をいう。したがって、長さが幅よりも大きいとは、一般的には、製造機械によって決定されうる最大幅よりも、長さが大きいことをいう。本発明に係る網状不織布は、従来技術と異なり、切断されたフィルムによって構成されることがない。したがって、継ぎ目が存在しない。
【0040】
次に、本実施形態に係る
図1に示す網状不織布1を、図面を参照して、製造方法の観点から説明する。
図4は本発明の一実施態様である第1の網状フィルム20の製造方法を示す概略図である。
図4に示すように、第1の網状フィルム20は、主として(1)多層フィルムの製膜工程、(2)多層フィルムの配向工程、(3)配向した多層フィルムを配向軸と平行にスプリットするスプリット工程および(4)スプリットしたフィルムを巻き取る巻取工程等を経て製造される。
【0041】
以下各工程を説明する。
図4において、(1)多層フィルムの製膜工程では、主押出機111に第1の熱可塑性樹脂よりも低い融点を有する第2の熱可塑性樹脂を供給し、2台の副押出機112に接着層樹脂として第1の熱可塑性樹脂を供給して、主押出機111から押出される熱可塑性樹脂を中心層(配向層)とし、2台の副押出機112、112から押出される接着層樹脂を内層および外層として、インフレーション成形により多層フィルムを作製する。ここで、第1の熱可塑性樹脂は、
図2に示す第1の熱可塑性樹脂からなる層20cを構成し、第2の熱可塑性樹脂は、
図2に示す第2の熱可塑性樹脂からなる層20dを構成するものである。
図4は、3台の押出機を用いて多層環状ダイ113を通して下吹出し水冷インフレーション114により製膜する場合の例を示したが、多層フィルムの製造方法としては、多層インフレーション法、多層Tダイ法などを用いることができ、特に限定されない。
【0042】
(2)配向工程では、上記製膜した環状多層フィルムを2枚のフィルムF、F'に切り裂き、赤外線ヒーター、熱風送入機等を備えたオーブン115内を通過させ、所定温度に加熱しながら、初期寸法に対し配向倍率1.1〜15、好ましくは5〜12、さらに好ましくは6〜10でロール配向を行う。延伸倍率が1.1倍未満では、機械的強度が十分でなくなるおそれがある。一方、延伸倍率が15倍を超えると、通常の方法で延伸することが難しく、高価な装置を必要とするなどの問題が生じる。延伸は、多段で行うことが延伸むらを防止するために好ましい。上記配向温度は、中心層の熱可塑性樹脂の融点以下であり、通常20〜160℃、好ましくは60〜150℃、さらに好ましくは90〜140℃の範囲であり、多段で行うことが好ましい。
【0043】
(3)スプリット(割繊)工程では、上記配向した多層フィルムを高速で回転するスプリッター(回転刃)116に摺動接触させて、フィルムにスプリット処理(割繊化)を行う。スプリット方法としては、上記のほか、多層一軸配向フィルムを叩打する方法、捻転する方法、摺動擦過(摩擦)する方法、ブラッシュする方法等の機械的方法、あるいはエアージェット法、超音波法、レーザー法等により無数の微細な切れ目を形成方してもよい。これらの中でも特に回転式機械的方法が好ましい。このような回転式機械的方法としては、タップネジ式スプリッター、ヤスリ状粗面体スプリッター、針ロール状スプリッター等の各種形状のスプリッターが挙げられる。例えば、タップネジ式スプリッターとしては、通常、5角あるいは6角の角形であって、1インチあたり10〜150、好ましくは15〜100のネジ山を有するものが用いられる。またヤスリ状粗面体スプリッターとしては、実公昭51−38980号公報に記載されたものが好適である。ヤスリ状粗面体スプリッターは、円形断面軸の表面を鉄工用丸ヤスリ目またはこれに類似の粗面体に加工し、その面に2条の螺旋溝を等ピッチに付与したものである。これらの具体的なものとしては、米国特許第3,662,935号、同第3,693,851号等に開示されたものが挙げられる。上記第1の網状フィルム20を製造する方法は、特に限定されないが、好ましくは、ニップロール間にスプリッターを配置し、多層一軸配向フィルムに張力をかけつつ移動させ、高速で回転するスプリッターに摺動接触させてスプリットし網状化する方法が挙げられる。
【0044】
上記スプリット工程におけるフィルムの移動速度は、通常1〜1,000m/分、好ましくは10〜500m/分である。また、スプリッターの回転速度(周速度)は、フィルムの物性、移動速度、目的とする第1の網状フィルム20の性状などにより適宜選択することができるが、通常、10〜5,000m/分、好ましくは50〜3,000m/分である。
【0045】
このように割繊して形成したフィルムは、所望により拡幅した後、熱処理117を経て、(4)巻取工程118において所定の長さに巻き取り、網状不織布用原反の一方である第1の網状フィルム20として供給する。
【0046】
図5は、本願の一実施態様である、第1の網状フィルム20と第2の網状フィルム30を積層した網状不織布1の製造工程を示す概略図である。
図5に示すように、主として(1)多層フィルムの製膜工程、(2)多層フィルムの長さ方向に対して略直角にスリット処理を行うスリット工程、(3)多層スリットフィルムの横一軸配向工程および(4)横一軸配向スリットフィルム(第2の網状フィルム30)に縦ウェブである第1の網状フィルム20を重層して熱圧着する圧着工程を含むものである。
【0047】
以下各工程を説明する。
図5において、(1)多層フィルムの製膜工程では、主押出機311に第1の熱可塑性樹脂を供給し、副押出機312に第2の熱可塑性樹脂を供給して、主押出機311から押出される第1の熱可塑性樹脂を内層とし、副押出機312から押出される第2の熱可塑性樹脂を外層として、インフレーション成形により2層フィルムを作製する。ここで、第1の熱可塑性樹脂は、
図3に示す第1の熱可塑性樹脂からなる層30cを構成し、第2の熱可塑性樹脂は、
図3に示す第2の熱可塑性樹脂からなる層30dを構成するものである。
図5には、2台の押出機を用いて多層環状ダイ313を通して下吹出し水冷インフレーション314により製膜する場合の例を示した。多層フィルムの製造方法としては、前記
図4の例と同様に、多層インフレーション法、多層Tダイ法などを用いることができ、特に限定されない。
【0048】
(2)スリット工程では、上記製膜した環状多層フィルムに、走行方向に対して概ね直角に、千鳥掛けに横スリット315を入れる。上記スリット方法としては、カミソリ刃または高速回転刃のような鋭利な刃先で切り裂く方法、スコアーカッター、シアーカッター等でスリットを形成する方法などが挙げられるが、特に熱刃(ヒートカッター)によるスリット方法が最も好ましい。このような熱刃の例としては、特公昭61−11757号、米国特許第4,489,630号、同第2,728,950号等に開示されている。
【0049】
(3)配向工程では、上記スリット処理を行ったフィルムに横配向316を施す。横配向方法としては、テンター法、プーリー法等が挙げられるが、装置が小型であり経済的であることからプーリー法が好ましい。プーリー法としては、英国特許第849,436号および特公昭57−30368号に開示された方法が挙げられる。配向温度等の条件は前記
図4の例の場合と同様である。
【0050】
上記で得られた横一軸配向された第2の網状フィルム30(横ウェブ)は、(4)熱圧着工程317に搬送される。一方、
図4に示す方法で製造された第1の網状フィルム20(縦ウェブ)を原反繰出しロール210から繰出して、所定の供給速度で走行させて拡幅工程211に送り、前述の拡幅機により数倍に拡幅し、必要により熱処理を行う。この縦ウェブを、上記の横ウェブに重層して熱圧着工程317に送り、ここで縦ウェブと横ウェブを配向軸が交差するように積層して熱圧着し、目飛びなどの不良検査を経た後、巻取工程318に搬送して網状不織布1の製品とする。
【0051】
このようにして得られた網状不織布1の製品は、長尺の網状不織布とすることができる。本実施形態における長尺網状不織布とは、連続的に製造された継ぎ目のない不織布であって、製造装置の幅に起因する最大幅よりも、機械方向の長さが少なくとも長い不織布をいう。長尺網状不織布は、継ぎ目が存在しないために、利用性が高く、様々な用途に使用可能であるという利点がある。
【0052】
そして、ある態様においては、このような長尺網状不織布をロール状に巻回して、網状不織布巻回体とすることができる。網状不織布に継ぎ目がないことに起因して、網状不織布巻回体は、均一性に優れたものとなっている。
【0053】
[第2実施形態:長尺網状フィルム]
本発明は、第2実施形態によれば、継ぎ目のない長尺網状フィルムであって、ほぼ幅方向に互いに並行に延びる幹繊維と、隣接する前記幹繊維同士を繋ぐ枝繊維とを備え、長さが、幅よりも少なくとも大きい長尺網状フィルムに関する。長尺網状フィルムは、前述の網状不織布について説明した、長尺の第2の網状フィルムであってよい。したがって、その製造方法も、第2の網状フィルムについて、
図3及び
図5を参照して説明したとおりである。
【0054】
第2実施形態による長尺網状フィルムは他基材と積層する用途において、特に有用である。
【0055】
[第3実施形態:他基材との積層体]
本発明は、第3実施形態によれば、第2実施形態による長尺網状フィルムと、他基材とを積層してなる積層体である。他基材は、長尺網状フィルムと機械方向に連続的に重ね合わせることができる、任意の樹脂フィルム、紙、布帛、金属箔、不織布、ネット等であってよく、好ましくは任意の長尺シート状の樹脂フィルムと不織布である。他基材は、長尺網状フィルムと積層した際に、第1の方向の強度と比較して第2の方向の強度が小さく、第2の方向に補強する目的であれば基材を選ばない。好ましくは、第1の方向はほぼ長さ方向であり、第2の方向はほぼ幅方向であるが、特定方向には限定されない。一例としては、長尺シート状のポリオレフィンフィルムもしくは、ポリオレフィン網状体であってよい。長尺シート状のポリオレフィン網状体としては、縦方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープを積層してなる不織布もしくは織成してなる織布が挙げられる。市販品としては、例えば、萩原工業(株)製のメルタック、積水フィルム(株)製のソフネット、ソフクロス(いずれも商品名)、クラボウ社製のクレネット(商品名)、コンウェッド社製のコンウェッドネット、Thermanet(商品名)、また長尺シート状不織布としては、旭・デュポン社製Tyvek(商品名)、三井化学(株)製タフネル、シンテックス(商品名)、東洋紡(株)製ボランス、エクーレ(商品名)、旭化成せんい(株)製ベンリーゼ、エルタス(商品名)、ユニチカ(株)製エルベス(商品名)などが挙げられるが、これらには限定されない。
【0056】
積層体の製造方法は、第2実施形態による長尺網状フィルムを得る工程と、任意の他基材とを、好ましくは機械方向に、連続的に積層する工程と、任意選択的に、基材に合わせた任意の方法で接着する工程とにより実施することができる。得られた積層体は、用途に応じて、積層体からなる巻回体とすることもできる。
【0057】
第3実施形態による積層体は、第2実施形態による長尺網状フィルムと他基材との利点を併せ持ち、かつ、巻回体としても均一性を損なわない点で有利である。