【文献】
LILLO F B,IMPROVED DETECTION OF SERUM HIV P24 ANTIGEN AFTER ACID DISSOCIATION OF IMMUNE COMPLEXES,AIDS 1993,英国,1993年,V7 N10,P1331-1336
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染が認められる対象から得た生体試料中のHIVウイルス負荷を監視するためのインビトロの方法であって、前記対象から得た生体試料に含まれるHigh mobility group box 1(HMGB1)タンパク質を定量する段階を含み、定量の標的となる前記HMGB1タンパク質は、循環HMGB1であり、HMGB1タンパク質が多いほどウイルス負荷が大きい、方法。
前記定量されたHMGB1を、HIVに感染していない対象から得た生体試料由来のHMGB1の量と、または異なる時点で同一患者から得た生体試料由来のHMGB1の量と比較する、請求項1に記載のインビトロの方法。
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した対象におけるHIV感染症の治療の効果を監視するためのインビトロの方法であって、(a)前記治療中の異なる時点において前記対象から得た試料に含まれるHigh mobility group box 1(HMGB1)タンパク質を定量する段階であって、定量の標的となる前記HMGB1タンパク質が、循環HMGB1である、定量する段階と、(b)前記対象に施した前記治療の効果を測定する段階とを含む、方法。
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した患者における、後天性免疫不全症候群(AIDS)の進行状態またはAIDSへの進行状態のいずれかのインビトロの予後診断のために、前記対象から得た生体試料に含まれるHigh mobility group box 1(HMGB1)タンパク質を定量する方法であって、定量の標的となる前記HMGB1タンパク質は、循環HMGB1であり、HMGB1タンパク質のレベルが高いほどAIDSまたは進行状態のAIDSを発症するリスクが高い、方法。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】aNK細胞は、一次未成熟HIV-1感染DCの成熟を誘導する。(a)精製CD14
+単球から生成したiDCを、IL-4とGM-CSFの存在下でaNK細胞と様々な比で24時間同時培養した。DCの生存を7-AAD分析を用いてフローサイトメトリーで測定した。生存DCは7AAD
-CD56
-細胞として同定した。データは3つの独立した実験を表し、値は平均±sdである。(b)aNK細胞は、iDCの成熟を誘導する。R5-HIV-1 BaL(p24、1ng/ml)に3時間感染させた、または非感染のiDCのいずれかを、rNK細胞またはaNK細胞と1:5の比でインキュベートしたiDCのフローサイトメトリー分析。HLA-DRおよびCD86特異的抗体で同時染色し、成熟DC(CD86
brightHLA-DR
bright)を同定した。3つの独立した実験のうちの代表的な実験のデータを示す。(c)この研究において使用された感染の状況は、iDCの増殖性感染の状況であり、これは、3日目で感染iDCの培養液上清においてp24が顕著に検出されたこと、およびCD40発現の標的となるDC内のp24のフローサイトメトリーによる細胞内検出により示される。実験は3つの別個のドナーのDCで行われ、値は平均±sdである。(d)HIV-1感染は、iDCの成熟をそれ自体では誘導せず、これは0.001〜10ng/mlのp24 HIV-1に感染したiDCのCD86/HLA-DRによる二重染色によって示される。LPS(DC0)(78.1%のCD86
brightHLA-DR
bright)によって誘導されたmDCの割合を陽性対照として示す。(e)感染させた、または非感染のiDCの、rNKまたはaNK細胞のいずれかとの示される同時培養において誘導された成熟CD86
brightHLA-DR
brightDCの割合を示す。これらの実験を、数ドナーから得た一次細胞上で行い、そのうちの3つから代表的なデータを示す。印がある箇所は、統計分析をノンパラメトリックなマン-ホイットニー検定法で行った。
*p<0.05、
**p=0.02
【
図2】aNK-DCクロストークは、aNK細胞およびDCの両方でHMGB1発現を引き起こす。(a)サイトカイン含量を調査するため、iDC、rNK細胞、aNK細胞(10
6/ml)の24時間無細胞培養液の上清、またはaNK細胞およびiDC(比1:5)の同時培養物を検査した。MAP技術を使用して、IL-1β、IL-6、IL-10、TNF-α、IL-12、およびIFN-γを定量し、HMGB1はELISAで定量した。
*p<0.05(ノンパラメトリックなマン-ホイットニー検定法)(b)新規に選別した血液のNK細胞におけるHMGB1発現を免疫蛍光(赤)で検出した。DAPI(青)の対比染色により、HMGB1が核に局在していることが示された。(C)aNK細胞をHIV-1と一緒にインキュベートすると、HMGB1の分泌が阻害された。左のパネルは、aNK細胞(10
6細胞/ml)を培地で、またはR5-HIV-1 BaL(p24、1ng/ml)で3時間インキュベートし、21時間後にHMGB1の産生を検査した結果を示す。データは3つの独立した実験を表し、値は平均±sdである。右パネルは、同じ調製のaNK細胞におけるHMGB1発現の免疫蛍光分析である。(d)aNK-iDCクロストーク中のHMGB1産生は、iDCのHIV-1感染によって阻害されない。iDCを培地中で、またはHIV-1 BaL(p24、1ng/ml)で3時間インキュベートし、さらにaNK細胞と21時間同時培養した(aNK:iDC比1:5)。その後、培養液上清におけるHMGB1濃度を測定した。データは、3つの独立した実験の平均±sdを表す。(e)非感染またはHIV-1感染iDCにおけるHMGB1発現の共焦点免疫蛍光分析を示す。上パネルは、非感染iDCを、中パネルは、細胞内のp24染色によって示したHIV-1感染および複製iDCを、下パネルは、HIV-1と一緒にインキュベートしたが、細胞内のp24発現では陰性であったiDCを示す。(f)成熟DCを、LPS(DC0)、可溶性CD40L(DC1)、またはLPS+PGE2(DC2)でiDCを48時間刺激して生成した。DC0、DC1、およびDC2を培地で3時間インキュベートするか、R5-HIV-1 BaL(p24、1ng/ml)に感染させ、さらに培地で21時間インキュベートした。培養液上清におけるHMGB1を定量した。3つの独立した実験の平均±sdを示す。(g)24時間同時培養した、aNK細胞と、非感染DC(上パネル)またはHIV-1感染DC(下パネル)のコンジュゲートにおけるHMGB1発現の免疫蛍光分析を示す。DCはDC-SIGN
+であり、aNK細胞とDCは両方とも、これらのコンジュゲートにおいてHMGB1を発現する。異なった一次細胞調製物で実施した3つのうち代表的な1つ実験の画像を示す。
【
図3】HIV-1に感染したiDCのaNK依存型成熟はHMGB1により仲介され、RAGEが関与している。(a)左パネルは、iDCを、遮断抗HMGB1抗体(10μg/ml)またはグリチルリジン(10μg/ml)の存在下、単独でまたはaNK細胞と一緒に24時間培養した。CD86およびHLA-DR特異的抗体でフローサイトメトリーを行い、DCの成熟状態を測定した結果を示す。右パネルは、同じ実験をHIV-1感染iDCで実施した結果を示す。データは、少なくとも3つの独立した実験の平均±sdを表し、ノンパラメトリックなマン-ホイットニー検定法で統計的に比較した。
*p<0.05.(b)iDC(10
6細胞/ml)をrh-HMGB1の濃度を増加させながら(1〜10μg/ml)、48時間培養した。その後、細胞を抗CD86抗体、抗HLA-DR抗体、抗CD80抗体、抗CD83抗体、抗DC-LAMP抗体、および抗CD40抗体で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。(c)DCによるサイトカインおよびケモカイン産生(MAPにより測定)に対するrh-HMGB1の影響。iDC(10
6細胞/ml)を培地で、またはrh-HMGB1(1または10μg/ml)の存在下で48時間インキュベートした。陽性対照として、iDCをLPSで刺激した(DC0)。(d)iDC、DC0、またはrh-HMGB1(1μg/ml)と一緒にインキュベートしたiDCによるRAGEの表面発現のフローサイトメトリー検出。iDCは非感染、またはHIV-1に感染(p24、1ng/mlで3時間)のいずれかであった。(e)iDC、DC0、aNK細胞と24時間同時培養した非感染またはHIV-1感染iDCをrh-HMGB1(1μg/ml)と一緒にインキュベートし、続いて、抗RAGE抗体で染色し、フローサイトメトリーで分析した。NK細胞を、CD3またはCD56特異的抗体(CD3
-CD56
+)で同時染色することによって分析から排除した。
【
図4】HIV-1に感染したDCによってNK誘発Th1分極が障害されるが、これはIL-12とIL-18の産生の変化と関係している。(a)NK細胞が誘発するDCによるTh1分極を、rNKまたはaNK細胞(2x10
5/ml)の存在下で30分間iDC(10
6/ml)をインキュベートすることで検査した。ナイーブCD4 T細胞(10
6/ml)を同時培養に付加し、IFN-γまたはIL-4を産生するT細胞の頻度を8日後にフローサイトメトリーで決定した。実験は、非感染iDC(b)またはHIV-1感染iDC(c)、またはAZT(1mM)存在下のHIV-1感染iDC(d)のいずれかで行った。示した培養物の培養液上清におけるIL-12(e)、IL-18(f)、およびIFN-γ(g)の含量を検査した。データは、5つの独立した実験の平均±sdを表す。ノンパラメトリックなマン-ホイットニー検定法で統計的に比較した。
*p<0.05、
**p=0.03。
【
図5】NKDCクロストークの結果としてのDCにおけるHIV複製のHMGB1依存型誘発を示し、(a)単独で、またはrNKもしくはaNK細胞(2x10
5/ml)の存在下で3日間インキュベーションを行った後、HIV-1感染(下パネル)iDCまたは非感染(上パネル)iDC(CD40
+)(10
6/ml)におけるp24細胞内発現のフローサイトメトリー分析。(b)同じ培養物の培養液上清におけるp24濃度。3つの独立した実験の平均±sdである。
*p<0.05ノンパラメトリックなマン-ホイットニー検定法(c)単独で、またはaNK細胞存在下で3日間培養したHIV-1感染iDCにおける細胞内p24発現の免疫蛍光分析。核をDAPIで染色する。(d)単独で、またはaNK細胞存在下で6日間培養したHIV-1感染DC0(10
6/ml)における細胞内p24発現のフローサイトメトリー。(f及びg)単独で、またはrNKもしくはaNK細胞存在下で6日間培養したHIV-1感染成熟DCの培養液上清におけるp24濃度。3つの独立した実験の平均±sd。統計は、ノンパラメトリックなマン-ホイットニー検定法で比較した。*p<0.05。(e)先に示した培養物由来の細胞でのライトサイクル分析によって決定したHIV-1プロウイルスDNAレベル。異なった一次細胞調製で実施した3つの実験うちの代表的な1つを示す。
【
図6】外来性のrh-HMGB1は、iDCにおいてHIV-1およびHIV-2複製を引き起こす。(a)HIV-1感染iDCを単独でまたはaNK細胞存在下で3日間培養した。Rh-HMGB1(1μg/ml)をいくつかの培養物に付加した。HIV複製を、培養液上清におけるp24を定量することで測定した。(b)HIV-1感染iDCを単独でまたはaNK細胞存在下で3日間培養した。遮断抗HMGB1抗体(10μg/ml)またはグリチルリジン(10μg/ml)を培養開始時に付加した。HIV複製を、培養液上清におけるp24を定量することで測定した。3つの独立した実験の平均±sdを示す。統計は、ノンパラメトリックなマン-ホイットニー検定法で比較した。
*p<0.05(c)HIV-2感染iDCを単独でまたはaNK細胞存在下で3日間培養した。Rh-HMGB1(1μg/ml)をいくつかの培養物に付加した。HIV複製を、培養液上清におけるp24を定量することで測定した。
【
図7】活性化NK細胞(aNK)は、NK:DC比が5:1の場合、未成熟の樹状細胞(iDC)のアポトーシスを急速に誘導する。(a)健常ドナーの精製CD14
+単球から生成したiDCを、IL-4とGM-CSFの存在下で、2つの異なったNK:DC比で(1:5および5:1)、静止NK細胞(rNK)またはaNK細胞と24時間同時培養した。DCの生存を7-AAD分析を用いてフローサイトメトリーで測定した。NK細胞を、CD56
-集団をゲートして分析から排除した。生存DCは7-AAD
-FSC
high細胞である。データは、3つの独立した実験を表す。(b)aNK細胞によって誘導されたiDCのアポトーシスのライブビデオ映像顕微鏡法。異なった一次細胞調製で実施した3つの実験のうちの代表的な1つの画像を示す。(c)同時培養物における生存DCの割合によって評価されたaNK細胞によるiDC殺作用の動態。これらの実験は数名の健常ドナーからの一次細胞で行い、3つの実験から代表的なデータを示す。
【
図8】aNK細胞による殺作用に耐性のあるDCは成熟した表現型を示す。(a)精製CD14
+単球から生成したiDCを、IL-4とGM-CSFの存在下でaNK細胞とNK:DC比5:1で24時間同時培養した。DCの生存を7-AAD分析を用いてフローサイトメトリーで測定した。NK細胞を、CD56
-集団をゲートして分析から排除した。生存DCは7-AAD
-FSC
high細胞である。アポトーシスに加えて、aNK細胞はiDCの成熟を誘導する。HLA-DRおよびCD86特異的抗体で同時染色し、成熟DC(CD86
brightHLA-DR
bright)を同定した。陽性対照として、iDCをLPSで48時間刺激して成熟DCを生成した(DC0)。3つの独立した実験の代表的な実験のデータを示す。(b)単独で、またはaNK細胞とNK:DC比5:1で同時培養したiDCを、抗CD83抗体および抗DC-SIGN抗体で染色し、フローサイトメトリーにより分析した。両マーカーの陽性発現は、iDCの成熟した表現型を示す。データは、3つの独立した実験のうち1つを表す。
【
図9】iDCのaNK依存型のアポトーシスはTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)依存型であり、DR4受容体が関与している。(a)CD56
+NK細胞を健常ドナーの血液から精製した。NK細胞を、インターロイキン2(IL-2)(100ng/ml)の最適濃度以下の培養物に維持し(rNK細胞)、または培養物にPHA(10μg/ml)およびIL-2(10μg/ml)を付加して、活性化した(aNK細胞)。抗CD56抗体による染色強度により、CD56を高度に発現する(CD56
bright細胞)、および弱く発現する(CD56
dim細胞)2つのNK細胞集団を見分けることができる。データは、3つの独立した実験の平均±sdを表す。(b)NK細胞による膜TRAIL(mTRAIL)発現を、抗CD56特異的抗体および抗mTRAIL特異的抗体によるフローサイトメトリーで測定する。データは、3つの独立した実験のうち1つを表す。(c)抗CD56抗体および抗mTRAIL抗体でaNK細胞を同時染色した。CD56
brightおよびCD56
dim集団におけるmTRAILを発現するaNK細胞の割合を測定した。データは、3つの独立した実験の平均±sdを表す。(d)フローサイトメトリーによるiDC表面のTRAIL受容体DR4発現の検出。ある場合には、iDCをaNK細胞とNK:DC比5:1で同時培養した。NK-DC同時培養開始から1、2、3.5、6、および24時間後にDC表面でのDR4発現を分析する。これらの実験を3つのドナーで実施し、それらのうちの1つの代表的なデータを示す。(e)iDC(10
6細胞/ml)を、組換えヒト可溶性TRAIL(rhs-TRAIL)の濃度を増加させながら(1〜1000ng/ml)で24時間培養した。その後、7-AAD分析で細胞死を定量した。データは、3つの独立した実験の平均±sdを表す。(f)可溶性TRAIL(sTRAIL)含量を調査するため、iDC、rNK細胞、aNK細胞(10
6/ml)の24時間無細胞培養液の上清、またはaNK細胞およびiDC(比5:1)の同時培養物を検査した。sTRAILはELISAで定量した。データは、3つの独立した実験の平均±sdを表す。(g)iDCを、遮断抗DR4抗体(250ng/ml)の存在下、または非存在下、単独で、またはaNK細胞で(NK:DC比5:1)24時間培養した。DCの生存状態を7-AAD分析を用いてフローサイトメトリーで測定した。データは、3つの独立した実験のうち1つを表す。
【
図10】TRAIL分泌はHIV-1存在下でも持続されるが、R5-HIV感染DCは、aNK細胞による殺作用に耐性を示す。(a)iDCはR5-HIV-1 B
aL(p24、1ng/ml)に24時間感染させたか、または非感染のどちらかであり、数回の洗浄後に、aNK細胞と一緒に1:5および5:1の比でインキュベートした。iDC生存度を7-AADテストを用いてフローサイトメトリーで評価した。生細胞は7-AAA
-、アポトーシス細胞7-AAD
+、およびアポトーシスの壊死組織片は7-AAD
-FSC
lowである。ドットプロットは、少なくとも3つの独立した実験のうちの1つを表す。(b)R5-HIVはiDC成熟を誘導しない。DCは、非感染(iDC)、p24、1ng/mlでR5-HIV-1感染させた(HIV-DC)、またはLPSで48時間刺激した。その後、細胞をCD86とHLA-DRで染色した。データは、少なくとも3つの独立した実験のうちの1つを表す。(c)iDCのHIV感染はTRAIL分泌に影響しない。iDC、HIV感染DC(10
6/ml)の24時間無細胞の培養液上清、aNK細胞-iDC同時培養(比5:1)、およびaNK細胞-HIV感染DCの同時培養(比5:1)を、可溶性TRAIL(sTRAIL)の含量についてELISAで検査した。データは、3つの独立した実験の平均±sdを表す。(d)HIV-1感染DCは、TRAIL誘導アポトーシスに感受性なままである。iDCおよびHIV感染DC(10
6細胞/ml)をrhs-TRAILの濃度を増加させながら(1〜1000ng/ml)、24時間培養した。その後、7-AAD分析で細胞死を定量した。3つの独立した実験の平均±sdを示した。
【
図11】High-mobility group box 1(HMGB1)は、NK誘導DCアポトーシスに対するHIV-1感染iDCの耐性に関連する。(a)iDCまたはHIV-1感染iDCを単独でまたはaNK細胞存在下(NK:DC比5:1)で培養した。ある実験では、アジドチミジン(AZT)をHIV感染時に付加し、他の実験では、グリチルリジン(10ng/ml)を同時培養開始時に付加した。その後、細胞死を7-AAD分析で定量した。(b)同じ実験を、遮断抗HMGB1抗体存在下(10および15μg/ml)で実施した。実施した3つの実験うち代表的な1つを示す。
【
図12】(a)aNK細胞は、iDC表面のTRAIL受容体(DR4)発現をアップレギュレートすることで、非感染iDCのアポトーシスを誘導し、TRAIL依存型アポトーシスに対するDCの感受性を高める。(b)HIV-1感染DCはHMGB1依存メカニズムによりaNK誘導アポトーシスに耐性を示す。したがって、aNK細胞は、感染DCの持続、CD4 T細胞へのDC依存型HIV感染、およびHIV貯蔵の確立に関与する。
【
図13-1】(A) 抗HMGB1抗体のELISA分析のための条件の測定。HMGB1でコートしたウェルを飽和させるBSA濃度の測定を示す。
【
図13-2】(B) 抗HMGB1抗体のELISA分析のための条件の測定。結合抗HMGB1抗体を明らかにする抗lgG-PAL抗体濃度(二次抗体)の測定を示す。(C) 抗HMGB1抗体のELISA分析のための条件の測定。ウェルをコートするためのHMGB1濃度の測定を示す。(D) 抗HMGB1抗体のELISA分析のための条件の測定。標準曲線の生成のための精製抗HMGB1抗体濃度の測定を示す。
【
図13-3】(E) 抗HMGB1抗体のELISA分析のための条件の測定。分析の特異性を示す。
【
図14】HMGB1タンパク質、またはBoxBでコートした抗HMGB1抗体価測定。
【
図15】無処理か、グリシン1.5Mで処理したヒト血清を、抗HMGB1 IgG抗体に関して力価測定した。循環(フリー)抗HMGB1抗体をけば線で表し、複合抗HMGB1抗体を灰色で表した。
【
図16】HIV
+患者の血清中のHMGB1濃度の力価測定。各ヒストグラムはそれぞれ患者一人を表す。水平線は、ELISA検定によって検出された最小レベルを示し、破線は健常ドナーのHMGB1の平均レベルを示す。
【
図17】HAART後、異なる時点(月単位)で測定された、T細胞部分集合(A)およびHIVウイルス負荷(B)へのHAARTの影響。
***:p<0.001および
**:p<0.05。
【
図18】M0でHAARTを受けるHIV感染患者の血清中のHMGB1の力価測定。破線は、健常ドナーのHMGB1の平均の濃度を示す。
【
図19】HIV感染患者の血清中の抗HMGB1抗体の力価測定、および抗レトロウイルス療法の影響。M-1は、治験参加の15〜30日前に検査した患者の血清サンプルを表す。M1、M3、M6およびM12は、HAART後の異なる時点を示す。ENDは、M9とM12との間でHAARTを止めた患者を表す。
【
図20】血清HMGB1および抗HMGB1抗体濃度の間(A)、ならびに、抗HMGB1抗体およびHIV-RNAウイルス負荷の間(B)の相関に関する研究。スピアマンの相関検定。相関係数r、相関確率(p)、および分析された標本数(n)を示す。
【0063】
(実施例)
HMGB1は、ほとんどすべての真核細胞にある核内タンパク質であり、ヌクレオソーム形成を安定化するために機能し、転写要素様のタンパク質として作用し、いくつかの遺伝子の発現を制御する。HMGB1は、また受傷、感染または他の炎症性の刺激に応じて活性化マクロファージ、成熟樹状細胞(DC)およびナチュラルキラー(NK)細胞によって分泌されるサイトカインでもある。
【0064】
ウイルス感染の初期段階では、先天免疫のエフェクター、すなわちNK細胞およびDCの局在動員および活性化を伴う。DCは、抗原提示、天然CD4
+T細胞の活性化、さらにTh1分極化にとって不可欠である。DCはまた、HIVの初期の標的であり、プロウイルスDNAを組み込むことによりHIV持続の一因となる。DCの成熟およびホメオスタシスはDCとNK細胞の間のクロストークによって制御される。このクロストークがHIV複製に対するDCの感受性に寄与することは、以前は知られていなかった。
【0065】
活性化NK細胞(aNK)は、NK細胞と未成熟DC(iDC)との接触の間に放出され、iDCsの成熟およびIL-12依存型のTヘルパー1細胞応答の誘導を促進するHMGB1のソースを提供する。iDCsがHIV-1に感染することで、DCはNK依存型IL-12分極化に非感受性となり、Th1応答を誘導できない。加えて、NK依存型のDC成熟および生存は、HIV-1 p24の産生増加、およびDCによるプロウイルスDNAの発現増加に関連していた。DCにおけるNK依存型のHIV-1複製増加は、HMGB1に特異的な抗体、およびHMGB1に特異的に相互作用することが知られているグリチルリジンにより阻害されたことから、この過程におけるこのサイトカインの重要な役割が示唆される。当然の結果として、rh-HMGB1が感染DCへの直接的な効果を有し、培養液上清におけるp24の産生を劇的に増加させた。DCでのHIV複製に対するHMGB1の強い刺激効果は、aNKとiDC同時培養においても認められた。HMGB1に特異的な中和抗体、またはグリチルリジンを付加することで、単独で、またはaNK細胞の存在下で培養された感染DCによるHIV-1産生が抑制された。これらすべての結果より、HMGB1は、感染DCに組換えヒトタンパク質として付加したか、またはNK:DCクロストーク中にaNK細胞により産生されたかに関らず、感染DCにおけるHIV-1複製を引き起こし、HIV-DNAを増加させることが示される。
【0066】
DCの直接感染は、CD4
+T細胞の感染より効率が悪いが
40,41、増えつつある数々の証拠から、DCによるウイルス産生に依存してDCが仲介する長期間のHIV感染が示され
42,43,44、インビボでHIVに感染したDCは、リンパ系組織への遊走の間のウイルス貯蔵として機能し、ウイルス感染を広げている恐れがある。
【0067】
本発明者らは、活性化NK細胞が、HIV-1感染DCにおいてウイルス貯蔵を確立する一因となることを初めて示した。本発明者らは本明細書において、HIV-1感染iDCのNK細胞活性化能力、およびaNK-iDCクロストークで産生されたHMGB1が、DCでのHIV-1複製およびプロウイルスDNA発現の刺激作用に大きく関与していることを示した。NK細胞とのクロストークに伴い、成熟感染DCによるTh1分極誘導が強く障害されることも実証した。これらの観察により、効率的にHIVの伝播を促進し、宿主免疫系から免れる能力を阻害する新規の治療が導き出された。
【0068】
自己由来のiDCとNK細胞との相互作用はお互いを活性化するとともに、T細胞が生成される前の免疫応答の初期相の開始/増幅において重要であると思われる
11。NK細胞は、iDCの成熟を引き起こすが、これはHMGB1依存型メカニズムを経由して生じる
20。iDCのNK依存型成熟は、DCの機能的な分極に関与すると報告されており、細胞内のフリーCa
2+濃度の上昇、細胞骨格系転位、NK/DCシナプスの分泌型ライソゾームの蓄積、および相互作用するNK細胞へのIL-18の調節された発現を伴う。これを受けて、NK細胞は大量のHMGB1を分泌し、DC成熟を誘導する
20。発明者らは、NK-DC接触の間のNK依存型DC成熟におけるHMGB1の関与を実証したが、これは抗HMGB1抗体、またはHMGB1と特異的に相互作用することが知られるグリチルリジンの阻害効果によって示された
31。共焦点顕微鏡法分析、および無細胞培養液上清におけるHMGB1検出により、既に報告されているように
20、HMGB1は一次NK細胞によって発現され分泌されたが、それだけでなく単離されたDCによっても産生され、HMGB1放出のレベルはその成熟段階に関連していることが実証された。iDCがaNK細胞と接触した場合に、成熟DCによる放出量に匹敵する、高水準のHMGB1が検出された。興味深いことに、NK-DCコンジュゲートの共焦点顕微鏡法分析により、両細胞がサイトカインを発現したことが示された。DCがaNK細胞と相互作用した後、HMGB1受容体であるRAGEが急速に誘導され、さらにダウンレギュレートされることが見出されたが、これはNK依存型DC成熟にHMGB1が関連することと矛盾しない。HMGB1は、DC成熟の一因となることに加えて、iDC上で化学遊走物質として作用し
45、RAGEにより活性が仲介される
45,46、CCR7およびCCR4リガンドに応答した成熟DCの遊走にも必要であることが示された
46。このようにHMGB1は警告として働き、DCに対する活性化作用および化学走性作用を有し、炎症組織から流入領域リンパ節へのDCの遊走を刺激する
45。HIVによって誘導されるような、制御不能なウイルス感染の文脈においては、このようなHMGB1の特性を考慮に入れなければならない。
【0069】
CD86
brightHLA-DR
brightDCの頻度が示すように、iDCのHIV-1増殖性感染はDCのNK依存表現型成熟を保存するが、HIVそれ自体は、使用したp24濃度範囲(0.001〜10ng/ml)においてDC成熟を誘導しなかった。しかしながら、aNK-DC相互作用の結果、iDCにおけるHIV-1感染は著しく増加した。これは、いくつかの方法により示され、p24
+DC頻度の増加を表す。NK-DC培養液上清におけるp24放出の著しい増加に関連しており、免疫蛍光により単一細胞レベルで確かめられた。さらに、NK-DCクロストークにより、DCにおけるプロウイルスHIV-1 DNA発現が劇的に増加した。DCとNK細胞の相互活性化におけるHMGB1の重大な役割を考慮し、遮断抗HMGB1抗体またはグリチルリジンがある場合に、iDCにおけるHIV-1複製の誘発へのHMGB1の寄与を評価した。これらの阻害物質がp24放出に与える強いブロッキング効果により、HMGB1がこの過程に関与することが示される。両阻害物質により、NK細胞の非存在下における感染iDCの24時間培養において、HIV-1複製も著しく減少したことは注目に値する。これはiDCによるHMGB1の自発的放出によるとみられ、本明細書で示されるとともに、以前にも報告されており
46、この放出は、iDCのHIV-1感染後も保存された。これらの観察から、DCでのHIV-1複製の制御におけるHMGB1の中心的役割が明らかとなる。当然の結果として、rh-HMGB1により、感染DC、およびaNK-感染DC同時培養の培養液上清においてp24放出が著しく増加したことが実証された。血漿HMGB1レベルが、慢性HIV-1-感染患者において高く、臨床的合併症を有する患者において最も高濃度であることが見出されたことより、これらのデータはHIVの病因を理解する上で重要な意味合いを持つ可能性がある
47。さらに、外来性のHMGB1は、インビトロで、抗レトロウイルス療法で治療中のHIV-1感染患者のPBMCにおいてHIV-1の再活性化を誘導すると報告された
39。
【0070】
分泌HMGB1は、同種のDCによる活性化後、ナイーブCD4 T細胞の増殖、生存、および分極に必要であり、これらの作用は、DCにより発現されたRAGEに関与している
48。本明細書で、同質であるという条件において、HMGB1はそれ自体では、Th1分極を誘導できないことが示された。実際、HIV-1感染DCはHMGB1を正常レベルで産生し続けたが、IL-12とIL-18の放出が阻害され、HIV-1感染DCの存在下でのTh1応答は誘導されなかった。最近の研究では、Th1分極の調節におけるNK細胞の必要不可欠な役割が強調されており、NK細胞がDCによるIL-12とIL-18の放出を引き起こし、次いで、NK細胞によるIFN-γの産生が促進され、これにより、T細胞のTh1細胞への分化が引き起こされることが示唆されている
49,50。NK細胞の活性化に応答してIL-12とIL-18を多く産生するHIV-1感染DCの障害は、Th1分極の障害に関連したため、Th1分化におけるIL-12およびIL-18の必要不可欠な役割が、本明細書で確認された。この障害は、DCにおけるHIV-1複製に直接関連しており、HIV阻害剤AZTの正の効果により示された。これらの観察から、HIV感染患者のDCにおいて報告されているいくつかの機能的な変化
51,52、例えばIL-12を含む数種のサイトカインの分泌減少、および自己由来CD4 T細胞を刺激する能力の障害、がNK-DCクロストークの障害に関連する可能性があることが示唆される。近年同様のことが示唆されている
30。
【0071】
発明者らは、HIV-1複製の活性化、およびHIV-1感染DCにおけるウイルス貯蔵の確立は、aNK細胞と自己由来DCとの間のクロストークに依存していることを示し、このクロストーク中にNK細胞とDCの両方から産生されるHMGB1の、この過程における中心的役割を同定し、DCにおけるHIV複製のNK依存型誘発は、HMGB1に特異的に結合するグリチルリジン、または抗HMGB1抗体のブロッキングによって完全に抑制されることを示した。加えて、NK細胞とのクロストーク後、HIV-1感染DCがTh1分極を誘導する能力が著しく障害されることも実証した。ウイルス伝播の促進におけるNK-DCクロストークの役割、およびウイルス複製の誘発およびウイルス貯蔵への補充におけるHMGB1のインビボでの関与に基づいて、HIV感染を治療し、監視する方法を記述する。
【0072】
(実施例1)
活性化NK細胞は、HIV-1に感染した自己由来の一次未成熟樹状細胞の成熟を引き起こす。
単離された単球から単球由来DCを生成し、同一ドナーから精製されたNK細胞と同時培養することで、DC成熟におけるNK細胞の役割を調べた。NK細胞は休止している(rNK)か、またはPHAおよびIL-2の併用により活性化(aNK)させた。aNK細胞を自己由来の未成熟DC(iDC)と24時間同時培養すると、NK/DC比に依存して、iDCの生存またはアポトーシスのいずれかが誘導されたが、これは、先の報告
14と一致している。実際には、aNK/DC比が5:1である場合、DCのアポトーシスを引き起こし、1:5の場合、DCの生存を引き起こした(
図1a)。aNK/DC比が1:5である場合のiDC生存は、成熟DCの特徴である成熟マーカーCD86およびHLA-DRの共発現の増加が示すように(CD86
brightHLA-DR
brightDCの基準は15.3%であるが、aNK細胞により、72.1%となった)(
図1b)、DCの成熟に関連している。CD86
brightHLA-DR
brightDCの割合によって判断されるように、同じ実験条件下でrNK細胞がDCの成熟に与える影響は小さかった(
図1b、e)。iDCの増殖性感染の条件下で、iDCのHIV-1感染後3日目に、iDCの培養液上清におけるp24放出の測定と、iDC細胞内のp24染色を行ったが(
図1c)、iDCのNK依存型の成熟には変化がなかった(
図1b)。
【0073】
DC成熟におけるHIVの直接の効果は、HIV濃度が0.001〜10ng/mlの範囲で見られたが、DC成熟の強力な誘発物質として正の対照として使用されたLPSとは対照的に、HIVは成熟マーカーCD86およびHLA-DRの発現を増加させなかった(
図1b、d)。
図1eに示す、代表的な3ドナーのデータから、iDCが感染しているかどうかにかかわらず、aNK細胞との24時間の同時培養後にaNK細胞がiDCの成熟に大きな影響を与えることが確認された。これらのデータは、増殖性HIV1に感染したiDCが、NK-DCクロストーク中にNK細胞により誘導された成熟に対して、通常の感受性を維持することを示す。
【0074】
(実施例2)
aNK-DCクロストークは、NK細胞とDCの両方でHMGB1発現を引き起こす。
iDCのaNK依存型成熟に関与する分子を同定するために、multianalyte profiling(MAP)を使用して、iDC、NK細胞、およびaNK:iDCの24時間培養で産生された重要なサイトカインをマップした。iDCはIL-1β、IL-6、およびIL-12を少量放出し、IL-10またはTNF-αを産生しなかった。aNK細胞とiDCを同時培養すると、炎症性サイトカインプロファイルが誘導され、IL-12分泌が大きく増加し、NK細胞由来のTNF-αおよびIFN-γが有意水準となり、IL-10は産生されなかった(
図2a)。興味深いことに、これら培養液上清においてHMGB1が高度に検出され、HMGB1はiDCとNK細胞の両方に由来しているが、aNK:iDC同時培養により培養液上清におけるHMGB1濃度は大きく増加した(
図2a)。共焦点顕微鏡法により単一細胞レベルで、NK細胞がHMGB1を産生する能力があり、HMGB1は、新たに単離したNK細胞の核において検出され(
図2b)、さらに、aNK細胞の原形質に移動した(
図2c)ことが確認された。HIV-1と一緒に3時間インキュベーションを行うと、aNK細胞におけるHMGB1発現が大きく減少した。これは培養液上清、および共焦点顕微法で検出された(
図2c)。HMGB1レベルはrNK細胞でのレベルに比較可能なレベルに到達した(
図2a)。本発明者らは、NK細胞がHIV-1を複製できないことを確認した。これは、培養液上清でp24が検出されなかったこと、およびNK細胞で細胞内p24染色(FACSによる検出)がなかったことにより示された(データは示さない)。HMGB1はiDCによっても分泌され、iDCが感染しても、培養液上清には比較可能な量のサイトカインが産生された(
図2d)。HIV-1に感染しているかどうかにかかわらず、HMGB1のほとんどは、iDCの原形質で検出され(
図2e)、p24とHMGB1の二重細胞内染色が示すように、感染DCのp24発現はHMGB1の発現を変更しなかった(
図2e)。iDCをaNK細胞と同時培養した場合、培養液上清でHMGB1の分泌が強く誘導されることが確認され(
図2d)、その量は成熟DC、すなわちDC0、DC1、およびDC2が産生するレベルと比較可能なレベルに達した(
図2f)。iDCのHIV-1感染は、NK-DC同時培養(
図2d)、および成熟DCの培養(
図2f)で産生されたHMGB1の量に大きな影響は与えなかった。共焦点顕微鏡法分析により、aNK細胞とiDCのコンジュゲートの形成が示されたが、この複合物は、aNK細胞をHIV-1感染DCと同時培養した場合にも観察された。また、DCの感染状態にかかわらず、両細胞はHMGB1を発現した(
図2g)。これらの結果により、NK細胞とiDCの両方がNK-DCクロストーク中にHMGB1を発現し、この工程はiDCのHIV-1感染により変更されないことが実証された。
【0075】
(実施例3)
HIV-1感染iDCのaNK依存型成熟はHMGB1により仲介され、RAGEが関与している。
NK依存型DC成熟にHMGB1が関与している可能性を確認するために、溶解性のHMGB1分子
31と特異的に相互作用することが知られているグリチルリジンを抗HMGB1抗体と同様に使用した(
図3a)。24時間のaNK-iDC同時培養開始時に付加したこれら阻害物質により、成熟DC(CD86
brightHLA-DR
brightとして同定)の割合が、aNK細胞がない場合に観察される基準レベルにまで減少した(
図3a)。同様の効果は、感染DCでも得られた(
図3a)。iDCを1〜10μg/mlのrh-HMGB1で24時間処理したが、rh-HMGB1それ自体では、iDCの表現型成熟を誘導せず、類似のデータは48時間の培養でも得られた(
図3b)。実際、iDCの自然成熟は、CD86
brightHLA-DR
brightDCの高い割合が示すように、培地での48時間培養後に観察されたが、10μg/mlのrh-HMGB1では、これら細胞の割合は、65%から71%までわずかに増加しただけであった。興味深いことに、CD80とCD83の発現が不足していること、およびmDC(DC0)において完全に発現されるDC-lampの発現が弱いこと(
図3b)により評価されるようにrh-HMGB1処理DCは完全には成熟していなかった。しかしながら、rh-HMGB1処理DCによるケモカイン、MCP1、MIP-1α、MIP-1β、およびIL-8の放出が増加したことが示すように、これら部分的成熟DCは、rh-HMGB1に機能的に感受性であった(
図3c)。HMGB1受容体には、RAGE
32,33、TLR-2、およびTLR-4
34がある。RAGEはHMGB1の最初に同定された受容体であり、T細胞、単球、マクロファージ、およびDC
35などの種々の免疫細胞により発現され、成熟DCがインビボでリンパ節へホーミングする際に使用される
36。iDCではTLR-2とTLR-4はほとんど検出されないが(図示せず)、フローサイトメトリーにより示されるように、RAGEはDCで完全に発現し、成熟DC0ではより高度に発現していた(
図3d)。HMGB11μg/mlでiDCをインキュベートすると、RAGEのダウンレギュレーションが観察され、これらの細胞がこの受容体を使用したことが強く示唆される(
図3d)。DCがHIV-1に感染しても、iDCとDC0でRAGEレベルは変化しなかった。感染DCをHMGB1とインキュベーションすると、類似のRAGEのダウンレギュレーションが誘導された(
図3d)。NK-DCクロストークにおけるRAGEの関与の可能性を、同じ方法で、aNK細胞と同時培養したDCおよび単独で培養したDCでのRAGE発現を比較して評価した。aNK細胞との同時培養を2時間行った後、DCでRAGE発現のアップレギュレーションが見られ、24時間後にダウンレギュレーションした(
図3e)。HIV-1感染DCでもたいへんよく似た観察がなされた(
図3e)。このように、HMGB1は、NK-DCクロストークの間、非感染およびHIV-1感染iDCの成熟に重要な要素であり、またRAGEが関与しており、iDCでのRAGEの発現は増殖性感染後も変わらない。
【0076】
(実施例4)
NK-DCクロストークの障害の結果としてのHIV感染DCによるTh1分極の障害。
NK細胞とiDCとの相互作用の結果、1型分極化DCが誘導されるが、これはTh1応答誘導のNK細胞由来支援のキャリアとして働く
37。aNK細胞とのクロストーク後に、Th1応答を分極する感染または非感染DCの能力を評価するため、ナイーブCD4
+CD45RO
-T細胞を、DCおよびaNK細胞の存在下で8日間同時培養した。Th1分極をT細胞におけるIFN-γとIL-4の細胞内産生を検出することで決定し、FACSによって測定した(
図4a)。ナイーブT細胞とiDCとの同時培養ではIFN-γ陽性T細胞の割合は増加せず、ナイーブT細胞をiDCとrNK細胞で同時培養した場合にも同様のデータが得られた。対照的に、ナイーブT細胞をaNK細胞存在下でiDCと同時培養すると、IFN-γT細胞応答の著しい増加が誘導され(
図4b)、これは、aNK:iDCクロストークがTh1分極にとって不可欠であることを示唆している。HIV-1感染DCで同じ実験を行ったが、Th1分極は観察されなかった(
図4c)。HIV-1複製がTh1分極の阻害に寄与することがAZTの付加により示されたが、これはaNK細胞と一緒に同時培養された感染DCによって誘導されるIFN-γT細胞応答の増加をAZTが回復させたのである(
図4d)。AZTは、これらの条件においてウイルス複製を阻害する濃度で使用したが、この濃度は上清にp24抗原を投与して評価した(データは示さない)。IL-12とIL-18はDCにより産生される重要なサイトカインで、Th1分極に関与している。このことにより、DCによるこれらのサイトカインの放出に対するaNK-DCクロストークの影響の問題に取り組んだ。aNK-DCクロストークが、非感染DCによるIL-12およびIL-18の両方の分泌を引き起こすことが見出された。両サイトカインの産生が、aNK細胞および感染DCの同時培養において、もはや検出されなかったことは重要である(
図4e、f)。加えて、HIV-1感染DCで同時培養を行った場合、aNK-DCクロストーク中のNK細胞によるIFN-Y産生の誘発は、もはや検出されなかった(
図4g)。Th1分極のためのDCの初回刺激が、DCにより放出されたIL-12およびIL-18、ならびにNK細胞により放出されたIFN-γ等のサイトカインの誘導によりaNK-iDCクロストーク中に起こる。HIV-1感染すると、NK-DCクロストークの障害により、iDCはaNK細胞によりもはや分極化されない。したがって、HIV-1感染DCのTh1分極を誘導する能力が低下する。
【0077】
(実施例5)
iDCにおけるHIV-1の複製および持続のNK-DC依存型誘発におけるHMGB1の中心的役割
NK感作HIV-1感染DCによるTh1分極の障害がHIV-1複製に依存する(
図4d)ことが示されたので、本発明者らはaNK-iDC相互作用が、iDCにおけるHIV-1複製を引き起こすかどうか検査した。iDCはHIV-1(p24、1ng/ml)に3時間感染させ、単独でまたはrNKならびにaNK存在下で18時間さらに培養し、p24が細胞内で発現しているDCの頻度をフローサイトメトリーで測定した。感染したiDCを単独で培養した場合、p24
+DCの割合は極めて低いが、aNK細胞と相互作用すると、p24
+DCが全DCの約三分の一を占め、NK細胞の非存在下ではたった4%であった(
図5a)ことと比較すると、著しく増加した。同じ条件下で、rNK細胞はiDCのHIV複製に影響を与えなかった(
図5a)。感染DCにおいてaNKに依存して増加したHIV複製は、培養液上清でのp24抗原検出によって確認され、単独でまたはrNK細胞と一緒に培養した感染iDCと比較して、aNKのHIV-1iDCとの同時培養では、p24産生の統計的に有意な増加が検出された(
図5b)。NK-DC相互作用がp24発現DCの頻度に与える劇的な効果はp24特異的抗体を用いて共焦点顕微鏡法によって確かめられた。感染翌日に細胞内のp24が染色されたDCは極めて稀であったが、DCをaNK細胞で培養すると、p24
+DCが高度に観察された(
図5c)。興味深いことに、iDCのHIV複製に対するaNK細胞の正の影響は成熟DCでも同様に観察された。FACSで検出されるp24
+DCの頻度が、aNK細胞で24時間同時培養されたHIV-1感染DC0においてDC0単独培養と比較して(
図5d)増加したことが見出された。aNK細胞と同時培養されたHIV-1感染成熟DC0、DC1、およびDC2の培養液上清におけるp24検出により、成熟DCのHIV-1複製におけるaNK細胞の著しい刺激効果が確認された(
図5f及びg)。rNK細胞は成熟感染DCにおけるHIV-1複製に著しい影響を及ぼさなかったことは注目すべきである(
図5f及びg)。本発明者らは、aNK細胞がiDCにおけるプロウイルスDNA発現に影響を与えるかどうか検査した。
図5(
e)のデータは、HIV-1プロウイルスDNA複製物の数が、rNK細胞との、または単独での感染iDC培養と比較して、感染iDCのaNK細胞との培養で大きく増加したことを示す。
【0078】
最近、外来性のHMGB1は、感染単球細胞系でのHIV-1複製を増加させ
38、またインビトロで、抗レトロウイルス療法で治療中のHIV-1感染患者のPBMCでHIV-1の再活性化を誘導すると報告された
39。したがって、DCにおけるHIV複製のNK依存型誘発におけるHMGB1の役割に関する問題に取り組んだ。外来性のrh-HMGB1がHIV-1感染iDCへの直接的な影響を有し、培養液上清におけるp24の産生を劇的に増加させることが見出された(
図6a)。rh-HMGB1はまた、aNK細胞と同時培養したHIV-1感染iDCによるp24産生に著しい刺激効果を有していた(
図6a)。HMGB1が感染iDC-aNK同時培養でのHIV-1複製誘発に与える影響を調べるため、HMGB1に特異的な中和抗体またはグリチルリジンをこの同時培養に付加し、上清のp24産生を測定した。両HMGB1阻害物質は、aNK細胞と同時培養した、または単独で培養した感染iDCによるHIV-1産生を抑制した(
図6b)。これらの結果より、外来性のHMGB1が感染iDCによるHIV-1複製を引きこすことが示された。また、iDCにおけるHIV-1複製に対するaNK細胞依存型の刺激作用がHMGB1により仲介されることも示された。
【0079】
(実施例6)
一次細胞の単離および分離。
末梢血単核球(PBMC)を、フィコールハイパック密度勾配法で健常ドナー(EFS Cabanel, Paris, France)の血液から分離した。CD14
+単球を、CD14に特異的な免疫磁気ビーズ(Miltenyi Biotech, Auburn, CA)を使用して、正の選択によってPBMCから単離した。iDCを生成するために、記載にあるように
53、精製CD14
+単球を、グルタミン2mM、10%FCS、ペニシリン(100U/ml)、およびストレプトマイシン(100μg/ml)を添加したRPMI1640培地で、組換えヒト(rhu)GM-CSFおよび10ng/mlのrhlL-4(Peprotech INC, Rockyhill, USA)の存在下で6日間培養した(1X10
6細胞/ml)。2日毎に培養液を交換した。NK細胞を、CD3、CD4、CD14、CD19、CD20、CD36、CD123、CD66b、グリコフォリンA(StemCell Technologies)に対する抗体の枯渇混合液を使用して、単球を欠いたPBMCから負の選択で単離した。フローサイトメトリー(FACScalibur、Becton Dickinson)でFITCコンジュゲート抗CD3抗体およびAPCコンジュゲート抗CD56抗体を用いてCD3
-CD56
+細胞として測定されたNK細胞に富む画分は、異なる実験において85から95%まで変動した。FITCコンジュゲート抗CD14抗体で評価された骨髄細胞によるコンタミネーションは、一貫して1%未満だった。ナイーブCD4 T細胞(CD4
+CD45RA
+)を、CD4とCD45RAに特異的な免疫磁気ビーズ(Miltenyi Biotech, Auburn, CA)を使用して、PBMCから正の選択で単離した。単離されたナイーブCD4 T細胞の細胞純度は90%を常に超えていた。
【0080】
(実施例7)
NK細胞の活性化および感染
精製NK細胞を、細胞を生存したまま維持(rNKとして参照)するため、IL-2(100ng/ml)(Peprotech)の最適濃度以下で10
6細胞/mlで培養したか、または、PHA(10μg/ml)(Sigma)およびIL-2(10μg/ml)の併用により活性化(aNK細胞として参照)した。いくつかの実験では、aNK細胞(10
6細胞/ml)をHIV-1(p24 1ng/ml)の存在下で、3時間インキュベートし、さらに21時間培養した。この条件下では、増殖性感染は観察できなかった。その後、サイトカインおよびケモカイン検出のために培養液上清を検査した(以下参照)。
【0081】
(実施例8)
樹状細胞の成熟および表現型の分析
IL-4とGM-CSFの存在下で6日間の培養後に、iDC(10
6細胞/ml)を刺激せず、またはDC0細胞を得るためLPS(大腸菌(E. coli)セロタイプ026-B6、Sigma-Aldrich)10μg/mlで、DC1細胞を得るため三量体のCD40L(Sigma-Aldrich)500ng/mlで、もしくはDC2細胞を得るためLPS10μg/mlおよびPGE2(Sigma-Aldrich)1μg/mlで、48時間刺激した。DCの表現型の分析およびそれらの成熟段階の特性評価をフローサイトメトリーで行った。DCを、PBS/10%、FCS/0.1%、NaN
3の100μlで希釈した、CD80、CD83、CD86、HLA-DR、CD40、DC-LAMP、またはDC-SIGN(抗体はすべてBD Biosciences, San Jose, CA)に特異的な抗体を使用して、4℃で20分染色した。いくつかの実験では、DCを染色するためにHMGB1受容体、RAGE(Abcam)に特異的な抗体を使用した。2回の洗浄後、細胞をPFA1%で固定し、直後にFACScalibur(Becton Dickinson)で収集し、Flow Joソフトウエアで分析した。
【0082】
(実施例9)
樹状細胞のHIV-1感染
ウイルス株調製を、健常ドナーのMDMでR5-HIV-1 Ba-Lを増幅して調製した。その後、ウイルス株を、HIV-1 p24濃度の測定前に遠心分離により、先浄した。iDCを200,000細胞/ウェルで96ウェル培養プレートに播種し、様々な濃度(p24/ml 0.001〜10ng)のR5-HIV-1 BALで5%CO2雰囲気下37℃で3時間インキュベートした。細胞を回収し、10%FCSを含む培地で4回洗浄し、必要な場合は、別に示さない限り、rNKまたはaNK細胞をNK/DC比1:5で付加した。NK-DC同時培養を、DCの成熟段階の分析および/またはウイルス産生の定量化の前に24時間続けた。ある実験では(
図6)、HIV-1感染iDCを、rh-HMGB1(1μg/ml)(R&DSystems)存在下で、およびある培養においては、ウサギ抗HMGB1抗体(10μg/ml)(Abcam、Cambridge、UK)またはグリチルリジン(10μg/ml)の存在下で、単独、またはaNK細胞と3日間インキュベートした。
【0083】
(実施例10)
HIV-1ウイルス産生、プロウイルス負荷、および感染DCの頻度の定量化
感染細胞培養物の上清におけるHIV-1の濃度を、ELISA(Ingen、Belgium)でp24タンパク質の量を測定することにより、測定した。これまでの記載にあったように
54、QIAamp DNA Blood Mini Kit(Qiagen、Basel、Switzerland)を使用して、細胞からDNAを抽出し、RT-PCR法によってHIV-1プロウイルス負荷を定量した。HIV-1感染細胞の頻度を、細胞内のp24分子を検出するフローサイトメトリーで測定した。細胞表面を、DCを標的とするCD40特異的抗体(BD Biosciences、San Jose、CA)で染色し、細胞内はp24特異的抗体(Coulter)で染色した。染色した細胞をPFA1%で固定し、直後にFACScalibur(Becton Dickinson)で収集し、Flow Joソフトウエアで分析した。ある実験では、感染DCをレーザー走査型共焦点顕微法によって、免疫蛍光後に画像化した。
【0084】
(実施例11)
iDCとNK細胞の同時培養
別に示さない限り、rNKまたはaNKをiDCまたはmDCと1:5(2x10
5NK+10x10
5DC/1ml)の比で24時間同時培養した。これまでの記載にあったように
55、7-AAD分析でDCの生存を測定した。簡単に述べると、培養細胞を細胞核色素7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD、St. Quentin-Fallavier、Sigma-Aldrich)20μg/mlを使用し、4℃で30分間染色し、CD56特異的抗体(BD Biosciences、San Jose、CA)で同時染色した。生存DCをCD56
-7-AAD
-細胞として同定した。NK-DC同時培養においてDCの表現型特性評価を行った際には、NK細胞をFACS分析からCD56特異的抗体による染色で常に排除した。
【0085】
(実施例12)
サイトカインおよびケモカイン産生の測定
無細胞培養液上清を、iDCを10
6細胞/ml、rNKまたはaNK細胞を2x10
5細胞/ml、またはaNKとiDC細胞を1:5の比で、24時間インキュベートして調製した。ケモカインとサイトカインを、Luminex(24plexキット、Biosource)で製造者の指示にしたがって測定した。簡単に述べると、標準物質の上澄50μlを抗体結合ビーズで2時間インキュベートし、洗浄液で2回洗浄し、ビオチン化二次抗体で1時間インキュベートした。streptavidin-PEを使用した最後のインキュベーションを30分間行い、Luminex100ISで収集した。各分析物で少なくとも100のイベントが収集された。標準曲線を上回る、または下回る値は、測定された最低、または最高の濃度と置換した。無細胞培養液上清のHMGB1の定量化をELISAキット(IBL、Hamburg)で行った。NK誘発DCによるナイーブCD4 T細胞のTh1分極を検査する実験において(
図4)、培養液上清におけるIL-12、IFN-γ、およびIL-18の定量化をELISAキット(R&D SystemsのIL-12およびIFN-γ、MBLのIL-18キット)で行った。
【0086】
(実施例13)
Th1分極分析
これまでに報告されているように
56、ナイーブCD4T細胞(10
6/ml)を、非感染またはHIV-1感染iDC(10
6/ml)および静止または活性化NK細胞(2x10
5/ml)の存在下で8日間同時培養し、Th1分極をフローサイトメトリーで検査した。簡単に述べると、タンパク質分泌を阻害するために培養の最後の16時間に、brefeldine A(10μg/ml)(Sigma Aldrich)を付加した。PerCPコンジュゲートCD8抗体およびFITCコンジュゲートCD3抗体(BD Biosciences、San Jose、CA)、で表面染色を行い、続いて、1%PFA、4℃で15分間細胞固定を行い、サポニン緩衝剤(PBS-BSA0.2%-NaN
30.01%-サポニン0.5%)で透過処理を行い、APCコンジュゲートIFN-γまたはIL-4特異的抗体(BD Biosciences、San Jose、CA)で細胞内染色を行った。染色細胞を、直後にFACScalibur(Becton Dickinson)で収集し、Flow Joソフトウエアで分析した。Th1分極に対するHIV-1複製の影響を分析するため、単独でまたはHIV-1感染iDC+/-rNKまたはaNK細胞存在下でインキュベートしたナイーブCD4 T細胞の培養開始時にAZT1mMを付加した。AZTは同時培養の最後まで残った。上述したようにiDCのHIV-1感染を、AZT非存在下で行った。
【0087】
(実施例14)
統計分析
統計分析をノンパラメトリックなマン-ホイットニー検定法で行った。有意差のP値が報告された。プロットしたデータは平均±標準偏差を表す(s.d.)。
【0088】
(実施例15)
HIV-1感染樹状細胞はHMGB1依存メカニズムによりNK誘導アポトーシスに耐性である。
樹状細胞(DC)およびナチュラルキラー(NK)細胞は、感染に対する初期防御において決定的役割を担う重要な先天性エフェクターである。NK-DCクロストークは最近実証された。このクロストークは双方向性であり、両細胞型の活性化状態に依存して、NK細胞の活性化およびキラー細胞への分化、DCの成熟またはアポトーシスを導く可能性がある。DCはヘルパーCD4
+T細胞のTh1エフェクターへのプライミングに必要であり、HIV等の制御不能なウイルスの慢性型の発現により、DCの成熟障害および破壊が誘導される恐れがある。この研究で、我々は、DC破壊へのNK-DC相互作用の影響、およびこのクロストークに対するHIVの影響の問題に取り組んだ。
【0089】
未成熟DC(iDC)を、健常ドナーから選別した単球から調節し、IL-4とGM-CSFの存在下で6日間培養した。いくつかの実験では、iDCをR5-HIV-1(p24 1ng/ml)に感染させた。自己由来の精製aNK細胞(PHA+IL-2によって活性化)との同時培養実験は、様々なNK/DC比で実施された。DCの成熟およびアポトーシスに対するNK-DC相互作用の影響を、多変量フローサイトメトリーを使用して、7-AAD染色を、HLA-DR、DC-SIGN、CD83、CD86、DR4、mTRAILなどに特異的なモノクローナル抗体による膜および細胞内染色と組み合わせて、分析した。
【0090】
aNK細胞は、NK/DC比が5:1で非感染iDCのアポトーシスを急速に(1〜2時間以内)誘導することが見出された。NK-DC同時培養のライブビデオ顕微鏡法によって、NK-DC接触直後に、DCは典型的なアポトーシス表現型(細胞の容積および泡の増加)を示す(
図7)。生存DCは、成熟細胞の表現型を示す(
図8)。iDCアポトーシスには、aNK細胞により産生されたTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)が関与しており、膜レベルでTRAILを発現するCD56
brightNK細胞と、TRAIL受容体DR4を発現するDCの間の相互作用が仲介している。NK依存型のiDCアポトーシスは、抗DR4抗体の中和により完全に抑制され、ここから、この過程におけるTRAIL依存型経路の重要な役割が強調される(
図9)。しかしながら、NK-DC同時培養へのコンカナマイシンA(顆粒球依存細胞毒性の阻害剤)を付加しても、DCアポトーシスにおけるパーフォリン経路の関連を除けば、NK依存型のDCアポトーシスに対する効果はない。
【0091】
aNK誘導iDCアポトーシスに対するHIVの影響を調べるために、iDCをR5-HIV-1(p24/ml 1ng)に感染させた。HIV感染後、iDCはaNK依存型アポトーシスに耐性となった。感染iDCをCD86/HLA-DRで同時染色して示したように、HIV-1は、iDCの成熟をそれ自体では誘導しない(
図10)。aNK細胞によるTRAIL分泌は、iDCのHIV感染には影響されず、HIV-1感染DCはTRAIL誘導アポトーシスに感受性を有したままであった(
図10)。グリチルリジンまたは遮断抗HMGB1抗体存在下での阻害分析により示したように、aNK誘導アポトーシスに対するHIV-1感染iDCの耐性は、HMGB1に依存することが見出された(
図11)。iDC感染時にアジドチミジン(AZT)を付加することで実証したように、aNK誘導アポトーシスに対するHIV-1感染iDCの耐性は、DCにおけるHIV-1複製に依存することが見出された(
図11)。まとめると、これらの結果より、iDCがHIV-1に感染することで、炎症性サイトカインHMGB1が関与するaNK誘導アポトーシスに対する感染iDCの耐性が誘導されることを示す。
【0092】
本発明者らは以前から、aNK細胞とHIV-1感染iDCとの間のクロストークによって、DCにおけるウイルス複製およびプロウイルスDNA発現が劇的に増加し、この過程は、主としてHMGB1に引き起こされていることを認識していた。実施例における結果により、HIV-1感染DCの生存における重要な介在物質としてのHMGB1の決定的な関与を示され、ここからウイルスの持続およびHIV貯蔵の確立におけるHMGB1の役割が強調される。これらの結果から、ウイルス伝播を効率的に促進するためにHIVがどのようにDCを「ハイジャックするか」、また、HIV感染症治療のためにこの特質をどのように使用できるかが示される。
【0093】
(実施例16)
HIV-2存在下でのaNK-DC同時培養実験
ウイルス複製のNK依存型誘発に対するHIV-2感染DCの感受性の問題に、HIV-1の場合と同様に取り組んだ。この過程におけるHMGB1の影響を評価した。
1 DCのHIV-2感染:iDCを96ウェル培養プレートに500,000細胞/ウェルで播種し、HIV-2(p24/ml 20ng)と5%CO2雰囲気下37℃で3時間インキュベートした。
2 NK-DC同時培養:細胞を回収し、10%FCSを含むRPMIで3回洗浄し、必要な場合は、aNK細胞をaNK/DC比1:5で付加した。必要な場合は、組換えHMGB1を10μg/ml(R&D Systems)、またはウサギ抗HMGB1抗体(1μg/ml)(Abcam、Cambridge、UK)を付加した。NK-DC同時培養を、培養液上清におけるウイルス産生の定量化前に3〜7日続けた。
3 HIV-2ウイルス産生の定量化:上清のHIV-2粒子の濃度を、p24ELISAキット(Ingen、Belgium)で測定した。
【0094】
図6Cで示すように、感染DCを単独で培養したか、またはaNK細胞存在下で培養したかに関らず、感染の3日後、HIV-2産生はかなりの低レベルで検出された。rh-HMGB1により、ウイルス複製はわずかに増加した。我々のHIV-1に関する以前の研究で観察されたように、DCの感染後3日では、有意なウイルス複製を検出するには早すぎる。これらの同時培養上清は7日後に再度検査する。
【0095】
(実施例17)
ヒト血清におけるHMGB1タンパク質および抗HMGB1抗体の検出/HIVに感染した患者における疾患活性との関連
HIV感染者の血清におけるHMGB1タンパク質の濃度は、シノテストのELISAキット(IBL)によって定量した。
【0096】
さらに、全抗HMGB1特異的抗体を検出するため、特定のELISA分析を開発した。HMGB1に特異的な自己抗体がSLE(全身性紅斑性狼瘡)で発見できる(Hayashi et al., 2009)ことを考慮し、HIV感染者において抗HMGB1抗体を検出されたかどうか、およびそれらのレベルがHIV感染と関連していたかどうかを確かめた。
【0097】
抗HMGB1抗体検出のためのELISA分析
以下の2ステップの分析を開発した。
(1)第一ステップでは、ヒトHMGB1に特異的なウサギポリクローナル抗体を使用し、コートしたHMGB1またはBoxBでの抗体の力価測定のための条件を定義した。抗HMGB1抗体は、血清(Urbonaviciute et al. Factors masking HMGB1 in human serum and plasma. J Leukoc Biol. 2007 81:67-74)において、免疫複合体として発見されると考えられたため、抗体の力価測定前にこれらの複合体を解離させる方法を開発した。
(2)第二ステップでは、ドナー数グループから得たヒト試料(健常ドナー、敗血症性ショック患者、または抗レトロウイルス療法前後のHIV
+患者のいずれかの血清)を使用した。
【0098】
下記の試薬を使用した。
-ヒトHMGB1(Adcam ab18256)に対するウサギ一次ポリクローナル抗体はヒトHMGB1のC末端150残基由来のKLHコンジュゲート合成ペプチドに対して作用する。
-ヒトHMGB1と99%同一のラットHMGB1をコードする発現プラスミドから大腸菌で産生された組換えHMGB1(HMGBiotech HM-115)。
-ヒトとネズミにおいて全く同一の哺乳類の配列をコードする発現プラスミドから大腸菌で産生されたHMGB1(HMGBiotech HM-051)からの組換えのBoxB。
-対照ウサギ血清(Sigma、参照番号R9133)。
-フォスファターゼアルカリ(PAL)とコンジュゲートした抗ウサギIgGまたはIgM、基質P-ニトロフェニルリン酸錠(pNPP)。
-キャリブレーター:血清(Sigma、参照番号12511)のヒトIgG、および血清(Sigma、参照番号18260)のヒトIgM。
-ヤギにおいて産生された、抗ヒトIgG(Fc特異的)アルカリフォスファターゼ抗体(Sigma、参照番号A9544)、ヤギにおいて産生された抗ヒトIgM(μ鎖特異的)アルカリフォスファターゼ抗体(Sigma、参照番号A3437)。
【0099】
下記の分析を実施した。
【0100】
96ウェルプレートのコーティングをDPBS中3μg/mlのHMGB1をまたは0.5μg/mlのBoxBのいずれかで4℃で一晩行った。同時に、キャリブレーターのコーティングを、イソタイプ対応のDPBSにおいて系列希釈で行った(ヒト試料で実行されたELISA分析に対してのみ)。マイクロプレートウォッシャー(Atlantis, Oasys)を使用して、DPBS/0.05%(v/v)Tween(登録商標)20でプレートを4回洗浄した。同様の洗浄をELISA分析の各ステップ後に行った。非結合サイトをPBS/2%(w/v)BSAで4℃で2時間ブロックした。DPBS/0.05%(v/v)Tween(登録商標)/1%(W/V)BSAで希釈した血清サンプルの100μlアリコートをコートした、およびコートしていないウェルに付加し、37℃で1時間インキュベートした。すべての血清試料は、処理しないで、または、グリシン1.5M(v/v、pH1.85)で、ウォーターバスで25℃で30分間処理し、さらに氷上で維持し、1.5Mトリス、v/v、pH9.0で希釈して検査した。その後、試料を直ちに希釈し(1/10〜1/1000)、コートしたプレートに入れた。DPBS/0.05%(v/v)Tween(登録商標)/1%(W/V)BSAにおいて希釈した、抗ウサギIgGアルカリフォスファターゼコンジュゲート抗体(希釈率1/10000)、またはヤギ抗ヒトIgG(希釈率1/2000)、もしくはIgM(希釈率1/2000)アルカリフォスファターゼコンジュゲート抗体を37℃で1時間付加した。抗原特異的抗体の検出を、100μlpNPP基質で、37℃で30分インキュベーションした後に行った。NaOH3Mを100μl付加して反応を止めた。我々が以前に、ShigellaLPS(Launayet al. Vaccine 2009, 27:1184〜1191)に特異的なELISAで報告したように、HMGB1またはBoxB特異的抗体の濃度を、Ascent softwareのThermoElectrocorpによって標準免疫グロブリン溶液の吸光度から得られた標準曲線により算定した。データを検出された抗体のμg/mlで表す。
【0101】
この分析を進めるために、いくつかのパラメータを、HMGB1またはBoxBでコートしたプレートのいずれかを使用して検査し、ウサギ抗ヒト抗体の力価を測定した。得られた結果は下記のとおりである。
-BSA濃度が2%〜5%である場合、等しく効率的である(
図13A)。
-抗lgG-PAL抗体の1/10000希釈液を、精製抗HMGB1抗体の力価曲線の直線部分にあるため選択した(
図13B)。矢印により示す。
-精製抗HMGB1抗体の力価曲線の直線性によって示されるように、HMGB1濃度2.5〜5μg/mlがウェルをコートするために最適であった(
図13C)。
-精製抗HMGB1抗体濃度0.5μg/mlを選択した(
図13D)。
-ウサギ抗HMGB1抗体と比較して、免疫していないウサギ抗体の反応がないことから、この検定は特異的であり(
図13E)、
-HMGB1またはBoxBのいずれかでコートしたプレートで精製ウサギ抗ヒト抗体を検査した時に比較可能なデータを得た。さらにBoxB(HMGB1の主要な免疫原性の一部)を選択した(
図14)。
【0102】
ヒト試料における複合体抗HMGB1抗体の検出のための酸処理
ヒト生体試料の検査に必要な分析条件を測定するため、一連のヒト血清を、HMGB1特異的抗体の存在に関して力価測定した。[HMGB1/抗HMGB1抗体]複合体が生体試料の中にあったと仮定して、これらの免疫複合体を解離させるためのグリシン1.5M、pH1.85での前処理の影響を分析した。すべての血清試料は、処理しないで、またはグリシン1.5M(v/v、pH1.85)を用いてウォーターバス中25℃で30分間処理し、さらに氷上で維持し、1.5Mトリス、v/v、pH9.0で希釈して検査した。その後、試料を直ちに希釈し、コートしたプレートに入れ、上記のように検査した。
【0103】
図15に示すデータから、グリシン1.5Mで処理して免疫複合体を解離させない限り、ヒト血清において抗HMGB1抗体はほとんど検出されないことが示される。したがって、ほとんどのHMGB1特異的抗体はHMGB1と複合体を形成し、炎症誘発性分子の中和メカニズムを示す。
【0104】
HIV
+患者の血清におけるHMGB1および抗HMGB1抗体の定量化
循環性HMGB1および抗HMGB1抗体を、未治療のHIV感染(HIV
+)患者において、疾患の異なる病期で検査した。
【0105】
1.HIV感染患者の血清におけるHMGB1力価測定
図16は、HIV+患者において、健常ドナー(破線)と比較して、HMGB1の循環レベルの増加が検出されることを示す。
【0106】
2.CD4細胞、CD8細胞、プロウイルスDNA、およびHIV RNA VLに対する強力な抗レトロウイルス療法の影響
7人のHIV+患者(検出可能なウイルス負荷を有する、VL)の1年の臨床フォローアップの間に、抗HIV薬剤の併用で構成する高活性抗レトロウイルス剤療法(HAART)の免疫学的効果(宿主細胞へのHIV侵入および複製をブロックする)、HAARTの開始(M0)、およびHAARTの1(M1)、3(M3)、6(M6)、および12(M12)カ月後にCD4細胞、CD8細胞、プロウイルスDNAおよびHIV RNA VLを測定した。結果を下記の表、および
図17に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
患者の特性を示す表より、HAARTは、すべての患者において、HIV-RNA VLの顕著で急速な抑制を誘導し、(△ウイルス負荷は、所与の時点でのVLと基準のM0におけるVLの間の差異を意味する)、検出不可能レベル(50複製/ml血液)に到達することが示される。さらに、HAARTは血中のCD4 T細胞の数の有意な増加を誘導する一方で、CD8 T細胞レベルでは変化は検出されなかった(
図17A)。HAARTは、また原形質のHIV-RNAウイルス負荷の有意な減少を(M0に対してM1、M3においてp<0.001、M6およびM12においてp<0.05)誘導する。細胞関連HIV-DNAに対する有意な効果は観察されなかった(
図17B)。
【0109】
3.これら血清試料におけるHMGB1および抗HMGB1抗体に対する強力な抗レトロウイルス療法の影響。
HMGB1および抗HMGB1抗体の血漿濃度を、HAARTの開始(M0)、およびHAARTの1(M1)、3(M3)、6(M6)、および12(M12)か月後に力価測定した。抗体価を上で記述した分析によって測定した。つまり、力価測定の前にグリシンで患者の血清を処理し、抗HMGB1抗体を定量した。結果を
図18および19に示す。
【0110】
これらの患者の血清試料におけるHMGB1の力価測定により、HAART存在下のHIV-RNA VLの抑制がHMGB1のレベルの減少に関連することが示された(
図18)。M6で、HMGB1レベルは健常者のレベル(破線)に到達した。したがって、HAARTの影響により、HMGB1産生におけるHIVの駆動的な役割が論証される。
【0111】
図19におけるデータにより、抗HMGB1抗体の検出可能な濃度がM0における患者の血清において見出され、抗レトロウイルス療法は、M6において抗HMGB1濃度の低下を誘導し、M12で検出不可能な値に到達することが示された。基準と比較して抗HMGB1抗体レベルにおける統計的に有意な減少を、M6(p=0.05)および後の時点(M12)で同様に検出した。
【0112】
したがって、HMGB1および抗HMGB1レベルの合同測定により、慢性HIV感染は、HMGB1の産生を引き起こすこと、そしてこれが中和抗体の産生を引き起こすことが示される。これは、HMGB1レベルの急降下(M3)と抗HMGB1レベルの低下(M6)の間の遅れを意味する動的過程であり、強力な抗レトロウイルス療法の後に両分子レベルは正規化されている。
【0113】
抗HMGB1レベルとHIVウイルス負荷の間の相関
上述の結果を考慮して、HMGB1および抗HMGB1抗体の循環レベルがHIV-RNAウイルス負荷と関連するかどうかに関する重要な問題に取り組んだ。
【0114】
したがって、HIV
+患者の血清試料を、ウイルス負荷を変動させながら、疾患の異なる病期で検査した。結果を、下記の表(スピアマンの相関検定)、および
図20に要約する。
【0115】
【表2】
【0116】
図20Aに示すように、HMGB1および抗HMGB1抗体値の間に逆相関があり、低レベルのHMGB1が高水準の抗体に関連するように、HMGB1産生は、HMGB1を中和する抗HMGB1抗体の合成を誘導することを示している。
【0117】
図20Bでは、抗HMGB1抗体とVLの間の逆相関が示され、抗HMGB1抗体の中和活性により、抗体はウイルス複製に対するHMGB1の刺激活性を抑制することが示唆される。
【0118】
これらのデータから、HIV+患者における抗HMGB1に基づいた治療により、HMGB1中和、そしてウイルス負荷の減少につながり、この治療の有益な影響が主張される。
【0119】
改変形態および他の実施形態
本発明の概念と同様、開示された産物、組成物、および方法の様々な修飾形態および変更形態は、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、当業者に明らかになる。本発明を、特定の好ましい実施形態との関係で説明してきたが、特許請求に係る発明は、こうした特定の実施形態に限定することを意図しないことを理解されたい。本発明を実施するために記述された様態の、医薬、免疫学、生物、化学薬品もしくは薬品作用学、または関連分野の専門家に明らかな各種の変更は、以下の請求項によって包含されるものとする。
【0120】
参照による組み込み
本開示において引用、または参照される各文献、特許、特許申請、特許公開、特に、テキストにおける参照の引用を包含する特定の主題に関するものは、参照により完全に組み込まれる。このようないかなる参考文献も先行技術を構成することは自認されず、引用された文献の正確性および適切性に異議を申し立てる権利は留保される。
【0121】
(参考文献)