特許第6138114号(P6138114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6138114情報記録媒体用ガラス基板の製造方法、磁気ディスクの製造方法、および、研磨用キャリア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138114
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】情報記録媒体用ガラス基板の製造方法、磁気ディスクの製造方法、および、研磨用キャリア
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/84 20060101AFI20170522BHJP
   G11B 5/73 20060101ALI20170522BHJP
   B24B 37/04 20120101ALI20170522BHJP
【FI】
   G11B5/84 A
   G11B5/73
   B24B37/04
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-507598(P2014-507598)
(86)(22)【出願日】2013年3月6日
(86)【国際出願番号】JP2013056082
(87)【国際公開番号】WO2013146135
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2015年12月24日
(31)【優先権主張番号】特願2012-80467(P2012-80467)
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 隆史
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−288920(JP,A)
【文献】 特開平11−245162(JP,A)
【文献】 特開2009−190159(JP,A)
【文献】 米国特許第06129609(US,A)
【文献】 特開2012−064295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/84
B24B 37/04
G11B 5/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、
遊星歯車機構を備えた両面研磨装置を用いて前記ガラス基板の主表面を、研磨剤を供給しながら研磨する表面研磨工程を有し、
前記両面研磨装置は、
前記ガラス基板の上側に位置し、前記ガラス基板側に上側研磨パッドを有する上定盤と、
前記ガラス基板の下側に位置し、前記ガラス基板側に下側研磨パッドを有する下定盤と、
前記ガラス基板を保持する貫通保持孔が複数設けられ、前記上定盤と前記下定盤との間に配置されるとともに、前記遊星歯車機構により所定の回転運動を行なう円盤状のキャリアと、を備え、
前記貫通保持孔は、
前記キャリアの中心位置の近傍に配置される一つの第1貫通保持孔と、
前記第1貫通保持孔の周りに環状に配置される複数の第2貫通保持孔と、を有し、
前記第1貫通保持孔の中心位置は、
前記ガラス基板の直径をDmmとし、前記キャリアの中心位置から前記第1貫通保持孔の中心位置までの距離をrmmとした場合に、[(D/4)≦r≦(D/2)]の関係式を満足する位置に設けられ
前記第1貫通保持孔の周りに環状に配置される前記第2貫通保持孔よりも、前記キャリアの半径方向の内側の位置において、前記貫通保持孔よりも直径が小さい補助貫通孔をさらに有し
前記補助貫通孔は、前記キャリアの重心位置が前記キャリアの中心位置となるように設けられている、磁気ディスクの製造方法。
【請求項2】
前記キャリアの板厚は、0.3mm以上2.2mm以下である、請求項1に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法によって得られた前記情報記録媒体用ガラス基板の表面に少なくとも磁性層を含む薄膜を形成する、磁気ディスクの製造方法。
【請求項4】
円形ディスク形状のガラス基板を研磨する遊星歯車機構を備えた両面研磨装置に用いられる円盤状の研磨用キャリアであって、
前記ガラス基板を保持する貫通保持孔が複数設けられ、
前記貫通保持孔は、
前記キャリアの中心位置の近傍に配置される一つの第1貫通保持孔と、前記第1貫通保持孔の周りに環状に配置される複数の第2貫通保持孔と、を有し、
前記第1貫通保持孔の中心位置は、
前記ガラス基板の直径をDmmとし、前記キャリアの中心位置から前記第1貫通保持孔の中心位置までの距離をrmmとした場合に、[(D/4)≦r≦(D/2)]の関係式を満足する位置に設けられ
前記第1貫通保持孔の周りに環状に配置される前記第2貫通保持孔よりも、前記キャリアの半径方向の内側の位置において、前記貫通保持孔よりも直径が小さい補助貫通孔をさらに有し、
前記補助貫通孔は、前記キャリアの重心位置が前記キャリアの中心位置となるように設けられている、研磨用キャリア。
【請求項5】
前記キャリアの板厚は、0.3mm以上2.2mm以下である、請求項4に記載の研磨用キャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録媒体用ガラス基板の製造方法、磁気ディスクの製造方法、および、研磨用キャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスクなどの情報記録媒体は、コンピュータなどにハードディスクとして搭載される。情報記録媒体は、基板の表面上に、磁気、光、または光磁気などの性質を利用した記録層を含む磁気薄膜層が形成されて製造される。記録層が磁気ヘッドによって磁化されることによって、所定の情報が情報記録媒体に記録される。
【0003】
情報記録媒体は年々記録密度が向上している。それに伴い情報記録媒体に使用される基板の品質にも高い品質が要求されている。情報記録媒体用の基板としては、従来アルミニウム基板が用いられてきたが、記録密度の向上に伴い、アルミニウム基板に比較して基板表面の平滑性および強度に優れるガラス基板に徐々に置き換わりつつある。
【0004】
情報記録媒体用のガラス基板の製造方法では、高い表面形状精度を確保するための研削工程/研磨工程を有している。ガラス基板の高精度な形状品質を達成するために、加工処理能力の異なるスラリーや研削/研磨パッドを効果的に組み合わせた2段階以上の研削/研磨工程が適用されている。従来のガラス基板の製造に関する技術は、たとえば特開2007−015105号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−015105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
情報記録媒体として使用されるガラス基板は、一般に複数のガラス基板をキャリアに設けられた貫通保持孔に保持して、ガラス基板の研削/研磨が行なわれる。近年はコスト削減のため、研削/研磨で使用されるキャリアの一枚辺りのガラス基板数を増やす傾向がある。
【0007】
また、一枚あたりの記録密度を高めるために、ガラス基板の外周側の端面近傍に至る領域にまで情報記録領域として用いるようになってきていることから、ガラス基板の外周側の端面の形状仕上げ精度も高い精度が要求されるようになってきている。
【0008】
キャリアに対して、最密となるように貫通保持孔を設けると、キャリアの中心位置付近にもガラス基板を置くことになる。ガラス基板をキャリアの中心に配置すると、研磨工程において、両面研磨装置の駆動時に、中心に配置されたガラス基板は、研磨パッドの定盤内周付近と定盤外周付近の中間にある領域(以下、中帯領域と称する。)の同じ位置を、集中的に通過する。
【0009】
ガラス基板が、研磨パッドの同じ位置を集中的に通過することは、研磨工程において、研磨パッド上のガラス基板が通過する部分に、研磨パッドの偏摩耗が生じ、研磨パッドの中帯領域における研磨パッドの硬度が低下することとなる。
【0010】
定盤の中帯領域における研磨パッドの硬度が低下すると、硬度が低下した領域をガラス基板が通過する際に、ガラス基板が傾斜、沈降して、ガラス基板の端面形状が不均一になる。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、両面研磨装置を用いた研磨工程において、定盤の研磨パッドに、硬度の不均一な領域が生じることを抑制することが可能な、情報記録媒体用ガラス基板の製造方法、磁気ディスクの製造方法、および、研磨用キャリアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に基づいた情報記録媒体用ガラス基板の製造方法においては、円形ディスク形状のガラス基板の主表面に磁気薄膜層が形成される情報記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、遊星歯車機構を備えた両面研磨装置を用いて上記ガラス基板の主表面を、研磨剤を供給しながら研磨する表面研磨工程を有する。
【0013】
上記両面研磨装置は、上記ガラス基板の上側に位置し、上記ガラス基板側に上側研磨パッドを有する上定盤と、上記ガラス基板の下側に位置し、上記ガラス基板側に下側研磨パッドを有する下定盤と、上記ガラス基板を保持する貫通保持孔が複数設けられ、上記上定盤と上記下定盤との間に配置されるとともに、上記遊星歯車機構により所定の回転運動を行なう円盤状のキャリアとを備える。
【0014】
上記貫通保持孔は、上記キャリアの中心位置の近傍に配置される一つの第1貫通保持孔と、上記第1貫通保持孔の周りに環状に配置される複数の第2貫通保持孔とを有する。
【0015】
上記第1貫通保持孔の中心位置は、上記ガラス基板の直径をDmmとし、上記キャリアの中心位置から上記第1貫通保持孔の中心位置までの距離をrmmとした場合に、[(D/4)≦r≦(D/2)]の関係式を満足する位置に設けられる。
【0016】
他の形態においては、上記第1貫通保持孔の周りに環状に配置される上記第2貫通保持孔よりも、上記キャリアの半径方向の内側の位置において、上記貫通保持孔よりも直径が小さい補助貫通孔をさらに有する。
【0017】
この発明に基づいた磁気ディスクの製造方法においては、上述のいずれかに記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法によって得られた上記情報記録媒体用ガラス基板の表面に少なくとも磁性層を含む薄膜を形成する。
この発明に基づいた研磨用キャリアにおいては、円形ディスク形状のガラス基板を研磨する遊星歯車機構を備えた両面研磨装置に用いられる円盤状の研磨用キャリアであって、上記ガラス基板を保持する貫通保持孔が複数設けられ、上記貫通保持孔は、上記キャリアの中心位置の近傍に配置される一つの第1貫通保持孔と、上記第1貫通保持孔の周りに環状に配置される複数の第2貫通保持孔と、を有し、上記第1貫通保持孔の中心位置は、上記ガラス基板の直径をDmmとし、上記キャリアの中心位置から上記第1貫通保持孔の中心位置までの距離をrmmとした場合に、[(D/4)≦r≦(D/2)]の関係式を満足する位置に設けられる。上記第1貫通保持孔の周りに環状に配置される上記第2貫通保持孔よりも、上記キャリアの半径方向の内側の位置において、上記貫通保持孔よりも直径が小さい補助貫通孔をさらに有し、上記補助貫通孔は、上記キャリアの重心位置が上記キャリアの中心位置となるように設けられている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、両面研磨装置を用いた研磨工程において、定盤の研磨パッドに、硬度の不均一な領域が生じることを抑制することが可能な、情報記録媒体用ガラス基板の製造方法、磁気ディスクの製造方法、および、研磨用キャリアを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態におけるガラス基板の製造方法によって得られるガラス基板を示す斜視図である。
図2】実施の形態におけるガラス基板の製造方法によって得られるガラス基板を備えた磁気ディスクを示す斜視図である。
図3】実施の形態におけるガラス基板の製造方法を示すフローチャート図である。
図4】研磨工程に用いられる両面研磨装置の部分斜視図である。
図5】実施の形態におけるキャリアを示す平面図である。
図6】実施の形態におけるキャリアの寸法関係を示す平面図である。
図7】ガラス基板の平面図である。
図8】参考技術におけるキャリアを示す平面図である。
図9】参考技術における下側研磨パッドの平面図である。
図10】他の実施の形態におけるキャリアを示す平面図である。
図11】実施例1−2、比較例1−2における評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に基づいた実施の形態および実施例について、以下、図面を参照しながら説明する。実施の形態および実施例の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。実施の形態および実施例の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0021】
[ガラス基板1・磁気ディスク10]
図1および図2を参照して、まず、本実施の形態に基づく情報記録媒体用ガラス基板の製造方法によって得られるガラス基板1、およびガラス基板1を備えた磁気ディスク10について説明する。図1は、磁気ディスク10(図2参照)に用いられるガラス基板1を示す斜視図である。図2は、情報記録媒体として、ガラス基板1を備えた磁気ディスク10を示す斜視図である。
【0022】
図1に示すように、磁気ディスク10に用いられるガラス基板1(情報記録媒体用ガラス基板)は、中心に孔1Hが形成された環状の円板形状を呈している。円形ディスク形状のガラス基板1は、表主表面1A、裏主表面1B、内周端面1C、および外周端面1Dを有している。
【0023】
ガラス基板1の大きさは、特に制限はなく、たとえば外径0.8インチ、1.0インチ、1.8インチ、2.5インチ、または3.5インチなどである。ガラス基板1の厚さは、破損防止の観点から、たとえば0.30mm〜2.2mmである。本実施の形態におけるガラス基板1の大きさは、外径が約65mm、内径が約20mm、厚さが約0.8mmである。ガラス基板1の厚さとは、ガラス基板1上の点対称となる任意の複数の点で測定した値の平均によって算出される値である。
【0024】
図2に示すように、磁気ディスク10は、上記したガラス基板1の表主表面1A上に磁性膜が成膜されて、磁気記録層を含む磁気薄膜層2が形成される。図2中では、表主表面1A上にのみ磁気薄膜層2が形成されているが、裏主表面1B上にも磁気薄膜層2が形成されていてもよい。
【0025】
磁気薄膜層2は、磁性粒子を分散させた熱硬化性樹脂をガラス基板1の表主表面1A上にスピンコートすることによって形成される(スピンコート法)。磁気薄膜層2は、ガラス基板1の表主表面1Aに対してスパッタリング法、または無電解めっき法等により形成されてもよい。
【0026】
ガラス基板1の表主表面1Aに形成される磁気薄膜層2の膜厚は、スピンコート法の場合は約0.3μm〜約1.2μm、スパッタリング法の場合は約0.04μm〜約0.08μm、無電解めっき法の場合は約0.05μm〜約0.1μmである。薄膜化および高密度化の観点からは、磁気薄膜層2はスパッタリング法または無電解めっき法によって形成されるとよい。
【0027】
磁気薄膜層2に用いる磁性材料としては、特に限定はなく従来公知のものが使用できるが、高い保持力を得るために結晶異方性の高いCoを基本とし、残留磁束密度を調整する目的でNiやCrを加えたCo系合金などが好適である。また、熱アシスト記録用に好適な磁性層材料として、FePt系の材料が用いられてもよい。
【0028】
また、磁気記録ヘッドの滑りをよくするために磁気薄膜層2の表面に潤滑剤を薄くコーティングしてもよい。潤滑剤としては、たとえば液体潤滑剤であるパーフロロポリエーテル(PFPE)をフレオン系などの溶媒で希釈したものが挙げられる。
【0029】
さらに、必要により下地層や保護層を設けてもよい。磁気ディスク10における下地層は磁性膜に応じて選択される。下地層の材料としては、たとえば、Cr、Mo、Ta、Ti、W、V、B、Al、またはNiなどの非磁性金属から選ばれる少なくとも一種以上の材料が挙げられる。
【0030】
また、下地層は単層とは限らず、同一または異種の層を積層した複数層構造としても構わない。たとえば、Cr/Cr、Cr/CrMo、Cr/CrV、NiAl/Cr、NiAl/CrMo、NiAl/CrV等の多層下地層としてもよい。
【0031】
磁気薄膜層2の摩耗や腐食を防止する保護層としては、たとえば、Cr層、Cr合金層、カーボン層、水素化カーボン層、ジルコニア層、シリカ層などが挙げられる。これらの保護層は、下地層、磁性膜など共にインライン型スパッタ装置で連続して形成できる。また、これらの保護層は、単層としてもよく、あるいは、同一または異種の層からなる多層構成としてもよい。
【0032】
上記保護層上に、あるいは上記保護層に替えて、他の保護層を形成してもよい。たとえば、上記保護層に替えて、Cr層の上にテトラアルコキシシランをアルコール系の溶媒で希釈した中に、コロイダルシリカ微粒子を分散して塗布し、さらに焼成して酸化ケイ素(SiO)層を形成してもよい。
【0033】
[ガラス基板の製造方法]
次に、図3に示すフローチャート図を用いて、本実施の形態における情報記録媒体用ガラス基板(以下、単にガラス基板と称する。)の製造方法について説明する。図3は、実施の形態におけるガラス基板1の製造方法を示すフローチャート図である。
【0034】
本実施の形態におけるガラス基板の製造方法は、ガラスブランク材準備工程(ステップS10)、ガラス基板形成工程(ステップS20)、研削/研磨工程(ステップS30)、化学強化工程(ステップS40)、および洗浄工程(ステップS50)を備えている。化学強化処理工程(ステップS40)を経ることによって得られたガラス基板(図1におけるガラス基板1に相当)に対して、磁気薄膜形成工程(ステップS60)が実施されてもよい。磁気薄膜形成工程(ステップS60)によって、情報記録媒体としての磁気ディスク10が得られる。
【0035】
以下、これらの各ステップS10〜S60の詳細について順に説明する、以下には、各ステップS10〜S60間に適宜行なわれる簡易的な洗浄については記載していない。
【0036】
(ガラスブランク材準備工程)
ガラスブランク材準備工程(ステップS10)においては、ガラス基板を構成するガラス素材が溶融される(ステップS11)。ガラス素材は、たとえば一般的なアルミノシリケートガラスが用いられる。アルミノシリケートガラスは、58質量%〜75質量%のSiOと、5質量%〜23質量%のAlと、3質量%〜10質量%のLiOと、4質量%〜13質量%のNaOと、を主成分として含有する。溶融したガラス素材は、下型上に流し込まれた後、上型および下型によってプレス成形される(ステップS12)。プレス成形によって、円盤状のガラスブランク材(ガラス母材)が形成される。
【0037】
ガラスブランク材は、ダウンドロー法またはフロート法によって形成されたシートガラス(板ガラス)を、研削砥石で切り出すことによって形成されてもよい。またガラス素材も、アルミノシリケートガラスに限られるものではなく、任意の素材であってもよい。
【0038】
(ガラス基板形成工程)
次に、ガラス基板形成工程(ステップS20)においては、プレス成形されたガラスブランク材の両方の主表面に対して、寸法精度および形状精度の向上を目的として、第1ラップ工程が施される(ステップS21)。ガラスブランク材の両方の主表面とは、後述する各処理を経ることによって、図1における表主表面1Aとなる主表面および裏主表面1Bとなる主表面のことである(以下、両主表面ともいう)。たとえば、粒度#400のアルミナ砥粒(粒径約40〜60μm)を用いることによって、表面粗さRmaxで6μm程度に仕上げる。
【0039】
第1ラップ工程の後、円筒状のダイヤモンドドリルなどを用いて、ガラスブランク材の中心部に対してコアリング(内周カット)処理が施される(ステップS22)。コアリング処理によって、中心部に孔の開いた円環状のガラス基板が得られる。中心部の孔に対しては、所定の面取り加工が施されてもよい。
【0040】
また、ガラス基板の外周端面および内周端面がブラシによって鏡面状に研磨される(ステップS22)。研磨砥粒としては、酸化セリウム砥粒を含むスラリーが用いられる。
【0041】
(研削/研磨工程)
次に、研削/研磨工程(ステップS30)においては、ガラス基板の両主表面に対して第2ラップ工程が施される(ステップS31)。第2ラップ工程は、遊星歯車機構を利用した両面研磨装置を用いて行なわれる。具体的には、ガラスブランク材の両主表面に上下から定盤を押圧させ、水、研削液または潤滑液を両主表面上に供給し、ガラスブランク材とラップ定盤とを相対的に移動させて、第2ラップ工程が行なわれる。
【0042】
第2ラップ工程(ステップS31)によって、ガラス基板としてのおおよその平行度、平坦度、および厚みなどが予備調整され、おおよそ平坦な主表面を有するガラス母材が得られる。第2ラップ工程では、発生する研削痕を小さくするため、前記第1ラップ工程と比較して微細な砥粒を用いる。たとえば、定盤上にダイヤモンドタイルパッド等の固定砥粒を取りつけることにより、ガラス基板両面上を表面粗さRmaxで2μm程度に仕上げる。
【0043】
次に、第1ポリッシュ工程(粗研磨)として、第2ラップ工程(ステップS31)においてガラス基板の両主表面に残留したキズを除去しつつ、ガラス基板の反りを矯正する(ステップS33)。第1ポリッシュ工程においては、遊星歯車機構を利用した両面研磨装置が使用される。たとえば、硬質ベロア、ウレタン発泡、またはピッチ含浸スウェードなどの研磨パッドを用いて研磨が行なわれる。研磨剤としては、一般的な酸化セリウム砥粒を主成分とするスラリーが用いられる。
【0044】
第2ポリッシュ工程(精密研磨)においては、ガラス基板に研磨加工が再度実施され、ガラス基板の両主表面上に残留した微小欠陥等が解消される(ステップS34)。ガラス基板の両主表面は鏡面状に仕上げられることによって所望の平坦度に形成され、ガラス基板の反りも解消される。第2ポリッシュ工程においては、遊星歯車機構を利用した両面研磨装置が使用される。たとえば、スウェードまたはベロアを素材とする軟質ポリッシャである研磨パッドを用いて研磨が行なわれる。研磨剤としては、第1ポリッシュ工程で用いた酸化セリウムよりも微細な、一般的なコロイダルシリカを主成分とするスラリーが用いられる。
【0045】
ここで、図4を参照して、両面研磨装置2000の概略構成について説明する。図4は、研磨工程に用いられる両面研磨装置2000の部分斜視図である。
【0046】
両面研磨装置2000は、上定盤(上側砥石保持定盤)300と、下定盤(下側砥石保持定盤)400と、上定盤300の下定盤400に対向する側(ガラス基板側)の下面に取り付けられた上側研磨パッド310と、下定盤400の上定盤300に対向する側(ガラス基板側)の上面に取り付けられた下側研磨パッド410と、を備える。
【0047】
上側研磨パッド310および下側研磨パッド410は、ガラス基板1の両主表面を研磨加工するための加工工具である。上定盤300と下定盤400とは、キャリア500の公転方向に対して互いに反対方向に回転するようになっている。上定盤300と下定盤400との間に形成される隙間に、キャリア500が配置される。ディスク状のガラス基板1は、このキャリア500に複数枚保持される。なお、キャリア500の詳細構造については、後述する。
【0048】
第2ポリッシュ工程(ステップS34)において、上側研磨パッド310および下側研磨パッド410の表面の洗浄が行なわれてもよい。上側研磨パッド310および下側研磨パッドの表面の洗浄は、研磨工程(ステップS30)中の任意の工程において行なわれてもよく、研磨工程(ステップS30)中の任意の工程間に行なわれてもよく、または、研磨工程(ステップS30)の終了後に行なわれてもよい。
【0049】
ガラス基板1の両主表面を一回または複数回研磨加工した後に、両面研磨装置2000において上側研磨パッド310および下側研磨パッド410の表面の洗浄が行なわれる。上側研磨パッド310および下側研磨パッド410の表面は、一回もしくは複数回の研磨を行なう毎に定期的に洗浄されてもよく、または、不定期的に洗浄されてもよい。
【0050】
(化学強化工程)
ガラス基板が洗浄された後、化学強化処理液にガラス基板を浸漬することによって、ガラス基板の両主表面に化学強化層を形成する(ステップS40)。ガラス基板1が洗浄された後、300℃に加熱された硝酸カリウム(70%)と硝酸ナトリウム(30%)との混合用液などの化学強化処理液中に、ガラス基板1を30分間程度浸漬することによって、化学強化を行なう。
【0051】
ガラス基板1に含まれるリチウムイオン、ナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンは、これらのイオンに比べてイオン半径の大きなカリウムイオン等のアルカリ金属イオンによって置換される(イオン交換法)。
【0052】
イオン半径の違いによって生じる歪みより、イオン交換された領域に圧縮応力が発生し、ガラス基板1の両主表面が強化される。たとえば、ガラス基板1の両主表面において、ガラス基板1表面から約5μmまでの範囲に化学強化層を形成し、ガラス基板1の剛性を向上させてもよい。以上のようにして、図1に示すガラス基板1に相当するガラス基板が得られる。
【0053】
ガラス基板1に対しては、両主表面上における取り代が0.1μm以上0.5μm以下のポリッシュ処理がさらに施されてもよい。化学強化工程を経た後にガラス基板1の主表面上に残留している付着物が除去されることによって、ガラス基板1を用いて製造される磁気ディスクにヘッドクラッシュが発生することが低減される。また、ポリッシュ処理における両主表面上の取り代を0.1μm以上0.5μm以下とすることによって、化学強化処理によって発生した応力の不均一性が表面に現れることもなくなる。本実施の形態におけるガラス基板の製造方法としては、以上のように構成される。
【0054】
なお、第1ポリッシュ工程(粗研磨)と第2ポリッシュ工程(精密研磨)との間に、化学強化工程を施してもかまわない。
【0055】
(洗浄工程)
次に、ガラス基板は洗浄される(ステップS50)。ガラス基板の両主表面が洗剤、純水、オゾン、IPA(イソプロピルアルコール)、またはUV(ultraviolet)オゾンなどによって洗浄されることによって、ガラス基板の両主表面に付着した付着物が除去され。
【0056】
その後、ガラス基板1の表面上の付着物の数が、光学式欠陥検査装置等を用いて検査される。
【0057】
(磁気薄膜形成工程)
化学強化処理が完了したガラス基板(図1に示すガラス基板1に相当)の両主表面(またはいずれか一方の主表面)に対し、磁性膜が形成されることにより、磁気薄膜層2が形成される。磁気薄膜層は、Cr合金からなる密着層、CoFeZr合金からなる軟磁性層、Ruからなる配向制御下地層、CoCrPt合金からなる垂直磁気記録層、C系からなる保護層、およびF系からなる潤滑層が順次成膜されることによって形成される。磁気薄膜層の形成によって、図2に示す磁気ディスク10に相当する垂直磁気記録ディスクを得ることができる。
【0058】
本実施の形態における磁気ディスクは、磁気薄膜層から構成される垂直磁気ディスクの一例である。磁気ディスクは、いわゆる面内磁気ディスクとして磁性層等から構成されてもよい。
【0059】
(キャリア500)
次に、図5から図7を参照して、上述した研削/研磨工程中の第2ポリッシュ工程において用いられる両面研磨装置2000に採用されるキャリア500の詳細構造について説明する。図5は、本実施の形態におけるキャリア500を示す平面図、図6は、本実施の形態におけるキャリアの寸法関係を示す平面図、図7は、ガラス基板1の平面図である。
【0060】
図5を参照して、本実施の形態におけるキャリア500は、円盤形状の本体510を有し、厚さは、約0.30mm〜2.2mmであり、保持するガラス基板1の厚さよりも薄い厚さが選択される。キャリア500の直径は、約430mmである。本体510には、アラミド繊維、FRP(ガラスエポキシ)、PC(ポリカーボネート)等が用いられる。
【0061】
キャリア500には、ガラス基板1を保持する貫通保持孔520が23箇所設けられている。本実施の形態では、貫通保持孔520は、キャリア500の中心位置C1の近傍に配置される一つの第1貫通保持孔520Cと、この第1貫通保持孔520Cの周りに環状に配置される22個の第2貫通保持孔520Pとを有している。本実施の形態では、第2貫通保持孔520Pは、2重の環状となるように配列され、内環状ラインr1上に、貫通保持孔520Pが等間隔で8個配列され、外環状ラインr2上に、貫通保持孔520Pが等間隔で14個配列されている。貫通保持孔520の直径は、約66.5mmである。
【0062】
ここで、図6を参照して、第1貫通保持孔520Cの中心位置C2は、ガラス基板1の直径をDmmとし、キャリア500の中心位置C1から第1貫通保持孔520Cの中心位置C2までの距離をrmmとした場合に、[(D/4)≦r≦(D/2)]の関係式を満足する位置(図中Sで示す領域)に設けられている。
【0063】
本実施の形態では、ガラス基板1の直径Dは65mmであることから、第1貫通保持孔520Cの中心位置C2は、16.25mm≦r≦32.5mmの位置に設けられることになる。
【0064】
本実施の形態における両面研磨装置2000は、上定盤300と下定盤400との間に、5枚のキャリア500を環状に配置する。キャリア500の外周面には、ギヤが設けられているが、ギヤの図示は省略する。また、キャリア500の半径は、ギヤの歯先円で測定した場合の寸法を意味する。
【0065】
ここで、図8および図9を参照して、キャリア500の中心位置C1と第1貫通保持孔520Cの中心位置C2とが重なる場合、つまり、第1貫通保持孔520Cをキャリア500の中心に設けた場合の両面研磨装置2000について説明する。図8は、第1貫通保持孔520Cをキャリア500の中心に設けた場合のキャリア500を示している。
【0066】
この図8に示すキャリア500を用いて、両面研磨装置2000によりガラス基板1の両面研磨を行なった場合には、図9に示すように、両面研磨装置2000の駆動時に、中心に配置されたガラス基板1は、下研磨パッド410の同じ位置である中帯領域BL1を集中的に通過することになる。
【0067】
ガラス基板1が、下側研磨パッド410の同じ位置である中帯領域BL1を集中的に通過することは、研磨工程において、下側研磨パッド410上のガラス基板1が通過する部分に、下側研磨パッド410の偏摩耗が生じ、下定盤400の中帯領域における下側研磨パッド410の硬度が低下することとなる。
【0068】
下定盤400の中帯領域BL1における下側研磨パッド410の硬度が低下すると、硬度が低下した領域をガラス基板1が通過する際に、ガラス基板1が傾斜、沈降して、ガラス基板の端面形状が不均一になる。このことは、下側研磨パッド410に限らず、上側研磨パッド310においても同様の現象が生じる。
【0069】
一方、図5に示した本実施の形態おけるキャリア500は、第1貫通保持孔520Cの中心位置C2は、キャリア500の中心位置C1からずれた位置となるように設けられている。
【0070】
これにより、第1貫通保持孔520Cにより保持されたガラス基板1は、両面研磨装置2000によりガラス基板1の両面研磨を行なった場合でも、上側研磨パッド310および側研磨パッド410の同じ位置を通過することが抑制される。
【0071】
その結果、上側研磨パッド310および下側研磨パッド410の偏摩耗の発生を抑制して、上側研磨パッド310および下側研磨パッド410の硬度の低下を防止することが可能となる。これにより、両面研磨を行なった場合でも、ガラス基板1が傾斜、沈降することなく、ガラス基板の端面形状を均一に保つことが可能となる。
【0072】
(実施例)
上記情報記録媒体用ガラス基板の製造方法の各実施例および各比較例について以下説明する。以下に示す各実施例および各比較例においては、図3に示すS33の「第1ポリッシュ工程(粗研磨)」までは、上記した説明のとおり実施した。ガラス基板の枚数は、1条件あたり合計115枚である。
【0073】
実施例1および実施例2には、キャリア500の中心位置C1から第1貫通保持孔520Cの中心位置C2までの距離をrmmが、20mmのものを用いた。一方、比較例1には、キャリア500の中心位置C1に第1貫通保持孔520Cの中心位置C2を設けたキャリアを用い、比較例2には、rが16.25mm以下である15mmのものを用いた。
【0074】
また、実施例2には、図10に示すように、第1貫通保持孔520Cの周りに環状に配置される第2貫通保持孔520pよりも、キャリア500の半径方向の内側の位置において、貫通保持孔520よりも直径が小さい補助貫通孔520Mを有するガラス基板1を用いた。このガラス基板には、補助貫通孔520Mを4つ設けた。補助貫通孔520Mの直径は、26mm、キャリア500の中心位置C1から補助貫通孔520Mの中心位置までの距離は50mmである。
【0075】
この補助貫通穴520Mは、キャリア500の中心位置C1からずれた位置に1個の第1貫通保持孔520Cのみを設けた場合には、キャリア500の重心位置がずれ、研磨中にキャリア500に歪が生じ、上側研磨パッド310および下側研磨パッド410に傷を生じさせるおそれがある。そこで、キャリア500の重心位置が、キャリア500の中心位置となる位置に、補助貫通孔520Mを設けるとよい。これにより、キャリア500の歪による上側研磨パッド310および下側研磨パッド410への傷の発生を抑制することができる。
【0076】
なお、各実施例および各比較例においては、第2ポリッシュ工程で用いられる両面研磨装置により、予め本試験で使用するガラス基板とは別のガラス基板を用いた事前加工が行なわれ、上下研磨パッドが固有の傾向を示す条件を整えた上で第2ポリッシュ工程を実施した。具体的には、本試験を行う前に、各実施例および各比較例で用いられているキャリアを使用し、それぞれ累計加工時間が略合計40時間となるよう、本試験で使用する両面研磨装置を用いて事前のガラス基板加工を行なった。事前加工には、上記S33工程までの手順で作成されるガラス基板と同様のガラス基板を使用した。事前加工により、その実施例・比較例のキャリアに固有である、研磨パッドへの摩耗が見られるようになる。
【0077】
(ガラス基板の端面計測)
図11に、実施例1,2および比較例1,2における評価結果を示す。実施例1,2および比較例1,2によって得られたガラス基板に対して、触針式表面計測機を使用し、ガラス基板の端面部分の形状として、ガラス基板の中心から半径方向に、R1(22.25mm)の点と、R2(27.25mm)の点と、R3(31.25mm)の点とにおけるガラス基板の高さを計測し、R1とR2との高さを結んだ線を基準線として、R3位置の高さの相対的な変位量を解析した。この解析結果が、±0.18μm以内のものを良品と判定した。
【0078】
また、実施例1,2および比較例1,2において、各50枚のガラス基板に対して、端面計測を行ない、良品の割合を調査し、86%以上のガラス基板が、±0.18μm以内のものを評価「A」として合格とし、86%未満の場合には、評価「C」として不合格とした。
【0079】
端面計測の結果、図11に示すように、実施例1および実施例2においては、評価「A」が得られた。比較例1および比較例2においては、評価「C」であった。
【0080】
このように、端面計測の結果、比較例1および比較例2では、端面形状が悪く、実施例1および実施例2においては、端面形状が良好となった。比較例1および比較例2では、上側研磨パッド310および下側研磨パッド410の中帯領域BL1を、キャリアの中心に保持されたガラス基板が繰り返し通過することにより、中帯領域BL1の偏摩耗が進行する。その結果、上側研磨パッド310および下側研磨パッド410の中帯領域BL1における上側研磨パッド310および下側研磨パッド410の硬度が低下することとなる。
【0081】
上側研磨パッド310および下側研磨パッド410の中帯領域BL1の硬度低下により、硬度が低下した領域をガラス基板1が通過する際に、ガラス基板1が傾斜、沈降して、ガラス基板の端面形状が不均一になったものと考えられる。
【0082】
一方、実施例1および実施例2においては、ガラス基板の中帯領域BL1を通過する頻度が減り、中帯領域BL1における上側研磨パッド310および下側研磨パッド410の偏摩耗が抑制される。その結果、ガラス基板1の傾斜、沈降が軽減されて、ガラス基板の端面形状の改善が図られたと考えられる。
【0083】
実施例1および実施例2で使用した研磨定盤について、本加工後に上下の研磨パッドの平均厚みを計測した。厚み計測は上側研磨パッドと下側研磨パッドについて、内周付近、中帯領域、外周付近について2か所ずつ、計6か所をそれぞれ測定し、更に上側研磨パッドと下側研磨パッドの平均値を求めた。
【0084】
図11に示すように、実施例1と比較し、実施例2では上側研磨パッド310および下側研磨パッド410の摩耗が平均値で約15μm小さかった。これは、実施例2の場合には、補助貫通孔520Mを設けることにより、キャリア500の中心位置C1に、キャリア500の重心位置が補正されることで、キャリア500に生じる鉛直方向の歪が、実施例1のキャリア500に比べて低減され、上側研磨パッド310および下側研磨パッド410への傷の発生が抑制されたためである。
【0085】
さらに、上記実施例1−2、および、比較例1−2によって得られたガラス基板に対して、図3に示す、化学強化工程(S40)、洗浄工程(S50)、および磁気薄膜形成工程(S60)を実施し、情報記録媒体を得た。
【0086】
この情報記録媒体を、ハードドライブに組み込み、リードライト試験を行なった。比較例1−2によって得られたガラス基板を用いた情報記録媒体は、情報記録媒体の外周付近で、記録不可能なエリアが発生した。一方、実施例1−2によって得られたガラス基板を用いた情報記録媒体は、情報記録媒体の外周付近でも、良好な記録が可能であった。
【0087】
なお、上記実施例は、第2ポリッシュ工程(精密研磨)S34に本発明を適用した場合について説明しているが、第1ポリッシュ工程(粗研磨)S33に本発明を適用した場合であっても、または、第1ポリッシュ工程(粗研磨)S33および第2ポリッシュ工程(精密研磨)S34の両工程に本発明を適用した場合であっても、同様の作用効果を得ることが可能である。
【0088】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0089】
1A 表主表面、1B 裏主表面、1C 内周端面、1D 外周端面、1H 孔、2 磁気薄膜層、10 磁気ディスク、300 上定盤、310 上側研磨パッド、310g,410g 溝、400 下定盤、410 下側研磨パッド、500 キャリア、510 本体、520 貫通保持孔、520C 第1貫通保持孔、520P 第2貫通保持孔、520M 補助貫通孔、2000 両面研磨装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11