【文献】
Liu X-F. et al.,CAPC negatively regulates NF-κB activation and suppresses tumor growth and metastasis. ,Oncogene,2011年 8月 8日,Vol. 31, No. 13,pp. 1673-82.
【文献】
Wood, CE. et al.,dentification of novel developmental and differentiation markers in the breast.,Cancer Research,2010年 4月15日,Vol. 70, No. 8, Supp.1 ,Abstract Number: 4220
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
予測および診断される乳癌が原発性および転移性ヒト乳癌を含み、かつ前記予測および診断が、乳癌の感受性と、治療、医療、原発性または転移性乳癌のための治療の有効性および評価ならびに乳癌またはその転移のリスク評価を包含する、請求項1又は2に記載の利用方法。
予測および診断される乳癌が原発性および転移性ヒト乳癌を含み、かつ前記予測および診断が、乳癌の感受性と、治療、医療、原発性または転移性乳癌のための治療の有効性および評価ならびに乳癌またはその転移のリスク評価を包含する、請求項4〜10のいずれか1項に記載の予測および診断キット。
【実施例】
【0027】
以下の本文で、本発明の応用例に関するいくつかの詳細な説明を行う。必要な場合には、図を利用する。こうした例に言及される通常の分子生物学の方法に関する実験の詳細については記載しない。そうした方法については、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版、J.Sambrookeら編)のプロトコルに厳密に従った。我々の実験では、このユーザーマニュアルのバイオ試薬に関するプロトコルが遵守される。こうした例に言及されるパーセンテージが明らかにされていない場合は、すべて重量パーセンテージ(w.t.%)である。
【0028】
核酸
実施例のサンプルはすべて、患者の署名した同意書の受領後に取得されている。サンプルを取得した医療研究所の規則を厳格に遵守した。腫瘍組織の生検サンプルを正常組織と比較した。手術由来のリンパ節サンプルの取得後直ちにRNA抽出を行うか、あるいは、サンプルを液体窒素中またはRNAlater(Ambion)中で保存した。末梢血サンプル、髄サンプルまたは尿サンプルは20分間(4000rpm、4℃)遠心分離した。上清をさらに10分間(13000rpm、4℃)遠心分離した。その後直ちにRNA抽出を行うか、あるいはサンプルを低温(−20〜−80℃)下で保存した。
【0029】
実施例1 ヒト組織におけるCST1発現
実施例の正常組織はすべて本発明者らと共同した医学研究所から取得した。他のサンプルは市販品を購入し、対応する法規制を遵守した。様々なヒト組織サンプルにおけるCST1 mRNAの発現をHG−U95AV Human GeneChip Array(Affymetrix)で測定した。ユーザーマニュアルのプロトコルに従う。CST1 mRNAの発現の定量は、β−アクチンの蛍光検量線により行った。結果を
図2に示す。CST1は、唾液腺を除き正常組織に発現していない。この発見からCST1が、正常組織において低バックグラウンドという優れた診断バイオマーカーの要件の1つに適合することが証明される。
図2の結果からはさらに、CST1が乳癌腫瘍細胞株HCC1937、SK−BR−3およびMCF−7において過剰発現し、正常乳房組織細胞株Hs578Bstにおいて発現しないことが示される。こうした結果は、CST1が乳癌の有望なバイオマーカーであることを示す。
【0030】
実施例2 乳癌腫瘍および腫瘍隣接組織におけるCST124、CST1、CST2およびCST4の発現
蛍光色素をプローブとして用いたリアルタイムqPCRを使用して、20個の乳癌腫瘍サンプルおよびそのそれぞれの腫瘍隣接組織におけるCST124、CST1、CST2およびCST4のmRNAの発現を測定した。RNA抽出にはトリゾール試薬を使用した。mRNAの逆転写は、市販されているキットを用いてユーザーマニュアルに従い行った。cDNAのPCR増幅のプライマーは、表1にまとめてある。蛍光色素は、SYBR Green、Eve GreenおよびLC Green等である。
図3に示すように、CST1は、腫瘍と腫瘍隣接組織とにおいて検査した全遺伝子の中で発現差が最も大きい。
【0031】
【表1】
【0032】
実施例3 乳癌腫瘍および腫瘍隣接組織におけるCST1のスプライス1および2の発現
蛍光色素をプローブとして用いたリアルタイムqPCRを使用して、20個の乳癌腫瘍サンプルおよびそのそれぞれの腫瘍隣接組織におけるACTB遺伝子のmRNAの発現を測定した。
図4に示すように、ACTB遺伝子のクロスポイント値(CP:cross point)は近い。次に、蛍光色素をプローブとして用いたリアルタイムqPCRを使用して、20個の乳癌腫瘍サンプルおよびそのそれぞれの腫瘍隣接組織におけるCST1の2つのスプライスのmRNAの発現を測定した。PCRのプロトコルおよびプライマー設計は実施例2のそれと同一である。
図5に示すように、腫瘍および腫瘍隣接組織においてスプライス2よりスプライス1の方が発現差が大きいことから、乳癌の診断バイオマーカーとしてスプライス1の方がスプライス2より有利であることが示される。
【0033】
実施例4 乳癌腫瘍および腫瘍隣接組織および正常組織におけるCST1のスプライス1の発現
乳癌腫瘍、腫瘍隣接組織および正常組織におけるCST1のスプライス1の発現をリアルタイムPCRにより定量した。PCRプライマーの配列を配列番号1および配列番号2に示す。増幅産物の配列を配列番号50に示す。
図6に示すように、CST1のスプライス1は乳癌腫瘍組織において過剰発現する一方、その発現は腫瘍隣接組織および正常組織において比較的に低い。腫瘍におけるスプライス1の発現の中央値は正常組織のそれより15.6倍高い。癌性腫瘍は、223.20をカットオフ値として使用すれば、正常組織と区別することができ、これを乳癌診断の基準値として提案する。
【0034】
実施例5 乳癌および乳腺炎の患者の生検サンプルにおけるCST1のスプライス1の発現
手術由来のサンプルおよび生検由来のサンプルは、生検サンプルにおける癌細胞の割合にばらつきがあるので差が大きい。このため、乳癌または乳腺炎の患者由来の40の生検サンプルを、リアルタイムPCRを使用して検査した。PCRプライマーの配列を配列番号1〜2に示す。
図7に示すように、乳癌サンプルにおけるCST1のスプライス1の発現は乳腺炎サンプルにおけるより高い。乳癌のCST1発現の中央値は乳腺炎のそれより11.0倍高い。癌性腫瘍は、120.66コピーをカットオフ値として使用すれば、乳腺炎の組織と区別することができ、これを乳癌診断の基準値として提案する。
【0035】
実施例6 乳癌転移のあるおよび乳癌転移のないリンパ節サンプルにおけるCST1のスプライス1の発現
我々は、様々な大きさの乳癌転移がある30のリンパ節サンプルを集めた。乳癌転移を含まない30のリンパ節サンプルは、検出不能なリンパ節転移を回避するため初期乳癌患者由来である。これらのリンパ節サンプルにおけるCST1のスプライス1の発現の定量のため、リアルタイムPCRを利用した。PCRプライマーの配列を配列番号1および配列番号2に示す。増幅産物の配列を配列番号50に示す。
図8に示すように、乳癌転移を含むリンパ節サンプルにおけるCST1のスプライス1の発現は、転移を含まないリンパ節サンプルより高い。転移サンプルにおけるスプライス1の発現の中央値は、転移を含まないサンプルより6.3倍高い。82.45コピーをカットオフ値として定義する場合、乳癌転移を含まない2例がスプライス1の発現陽性と検出される。慎重に組織学的研究を行ったところ、これら2つのサンプルに非常に小さな乳癌転移が発見された。本実施例から、CST1のスプライス1の発現検査は82.45コピーをカットオフ値として用いて転移例を区別するだけでなく、組織学的解析より感度が高いことも示される。
【0036】
実施例7 乳癌患者、乳腺炎患者および健常者の血清中の無細胞RNAにおけるCST1のスプライス1の発現
無細胞RNAを市販されているキットにより抽出した。50例の乳癌患者、30例の乳腺炎患者および30例の健常者の血清中の無細胞RNAにおけるCST1のスプライス1の発現をリアルタイムPCRにより定量した。PCRプライマーの配列を配列番号1および配列番号2に示す。増幅産物の配列を配列番号50に示す。
図9に示すように、乳癌サンプルにおけるスプライス1の発現の中央値は、乳腺炎サンプルより8.8倍高く、健常者サンプルより32倍高い。65.32コピーをカットオフ値とすると、癌と炎症および健常者とを区別することができる。
図10は、本検査の受信者動作特性(ROC:receiver operating characteristic)曲線であり、CST1のスプライス1の発現が乳癌診断のマーカーとして感度および特異性が高いことを示す。曲線下面積(AUC:area under the curve)は0.987であり、非侵襲的乳癌診断の特異的マーカーとしてのCST1のスプライス1を実証する値である。
【0037】
実施例8 LCRによる、乳癌患者、乳腺炎患者および健常者の血清中の無細胞RNAにおけるCST1のスプライス1の発現
無細胞RNAを市販されているキットにより抽出した。50例の乳癌患者、30例の乳腺炎患者および30例の健常者の血清中の無細胞RNAにおけるCST1のスプライス1の発現をLCRにより定量した。LCRプライマーの配列を配列番号1および配列番号2に示す。増幅産物の配列を配列番号50に示す。
図11に示すように、癌サンプルにおけるCST1のスプライス1の蛍光の相対発光量(RLU:relative light unit)は、乳腺炎サンプルおよび正常サンプルより高く、中央値はそれぞれ12.38倍および40.12倍高い。18.51RLUをカットオフとして設定すれば、癌は区別される。
【0038】
実施例9 tSDAによる、乳癌患者、乳腺炎患者および健常者の血清中の無細胞RNAにおけるCST1のスプライス1の発現
無細胞RNAを市販されているキットにより抽出した。50例の乳癌患者、30例の乳腺炎患者および30例の健常者の血清中の無細胞RNAにおけるCST1のスプライス1の発現をtSDAにより定量した。tSDAプライマーの配列を配列番号1および配列番号2に示す。増幅産物の配列を配列番号50に示す。
図12に示すように、癌サンプルにおけるCST1のスプライス1の発現は乳腺炎サンプルおよび正常サンプルより高く、中央値はそれぞれ41.38倍および42.86倍高い。24.81RLUをカットオフとして設定すれば、癌は区別される。
【0039】
実施例10 NASBAによる、乳癌患者、乳腺炎患者および健常者の血清中の無細胞RNAにおけるCST1のスプライス1の発現
無細胞RNAを市販されているキットにより抽出した。50例の乳癌患者、30例の乳腺炎患者および30例の健常者の血清中の無細胞RNAにおけるCST1のスプライス1の発現をNASBAにより定量した。プライマーの配列を配列番号1および配列番号2に示す。増幅産物の配列を配列番号50に示す。
図13に示すように、癌サンプルにおける蛍光のRLUは乳腺炎サンプルおよび正常サンプルより高く、中央値はそれぞれ18倍および18.87倍高い。22.93のRLUをカットオフとして設定すれば、癌は区別される。
【0040】
実施例11 乳癌患者末梢血中のCST1のスプライス1の発現、およびその細胞学検査との比較
乳癌患者の血液から赤血球および血小板を除去して末梢血を得、そこからRNAを抽出した。CST1のスプライス1の発現をリアルタイムPCRにより定量した。プライマーの配列を配列番号1および配列番号2に示す。増幅産物の配列を配列番号50に示す。その結果を乳腺炎患者および健常者の血液サンプル中のスプライス1の発現と比較した。スプライス1の高発現は癌細胞の存在指標となる。そして、細胞学検査をゴールドスタンダードとして使用して癌細胞の存在を確認した。結果は
図14にまとめてある。細胞診断による乳癌はすべてスプライス1の発現検査により特定される。細胞学検査により判定された、乳癌を含まない一部の例は、後で転移を含む例であると確認されている。これは(The)、CST1のスプライス1が細胞診より感度の高い乳癌診断法であることを意味する。
【0041】
実施例12 乳癌患者の髄におけるCST1のスプライス1の発現、およびその細胞学検査との比較
リアルタイムPCRを利用して、乳癌患者の髄サンプルにおけるCST1のスプライス1の発現を定量した。プライマーの配列を配列番号1および配列番号2に示す。増幅産物の配列を配列番号50に示す。その結果を健常髄サンプルと比較した。スプライス1の高発現は、癌および癌転移の存在の指標となる。そして、細胞学検査をゴールドスタンダードとして使用して癌細胞の存在を確認した。
図15に示すように、組織学的陽性サンプルの95%がCST1のスプライス1の発現検査により特定された。発現検査は、組織学的検査より高い陽性率を有することから、感度がより高いことが示唆される。
【0042】
実施例13 CST1のスプライス1の発現によるpTNM分類
様々なpTNMステージの80例の乳癌患者(IおよびIIが30例、IIIおよびIVが50例)の無細胞RNAを市販されているキットにより抽出した。TMAを利用して、スプライス1の発現を検査した。プライマーの配列を配列番号1および配列番号2に示す。増幅産物の配列を配列番号50に示す。
図16に示すように、ステージIIIおよびIVのサンプルのRLUはステージIおよびIIのサンプルより高く、中央値は15倍高い。この結果から、CST1のスプライス1の発現がpTNM分類のマーカーであることが証明される。
【0043】
実施例14 乳癌治療のモニタリングにおけるCST1のスプライス1の発現の利用
リアルタイムPCRを利用して、乳癌患者(化学療法を受けている6例および放射線療法を受けている4例)の血液中のCST1のスプライス1の発現を定量した。プライマーの配列を配列番号1および配列番号2に示す。増幅産物の配列を配列番号50に示す。治療の評価のためスプライス1の発現をモニターした。表2に示すように、治療が効果的な患者では、CST1のスプライス1の発現が療法を継続するに従い減少し、腫瘍の大きさが小さくなることがイメージングにより観察された。治療が効果的でない患者の場合、CST1のスプライス1の発現が療法を継続するに従い増加し、腫瘍の大きさが大きくなることがイメージングにより観察された。CST1のスプライス1の発現を、療法の有効性の判断基準として、および癌発育のリアルタイムモニタリングのマーカーとして利用することを提唱する。
【0044】
【表2】
【0045】
実施例15 乳癌患者のCST1のスプライス1の発現による予後
乳癌患者血液中のCST1のスプライス1の発現をリアルタイムPCRにより定量した。プライマーの配列を配列番号1および配列番号2に示す。増幅産物の配列を配列番号50に示す。癌の予後を手術から1ヶ月後、3ヶ月後および1年後に評価した。表3に示すように、癌再発の症例が2例あり、CST1のスプライス1の発現が増加し、CST1のスプライス1の発現が1000コピーに達したとき、イメージングにより転移が確認された。残りの3例では、イメージングによる再発の証拠、またはCST1発現の増加が観察されなかった。こうした一貫性は、乳癌の予後マーカーとしてのCST1のスプライス1の発現の有効性を立証する。
【0046】
【表3】
【0047】
実施例16 CST1のスプライス1の、TaqMan
(登録商標)プローブを用いたリアルタイムPCR測定用の検査キット
本キットは以下を含む。1)PCRプライマー:5’−tctcaccctcctctcctg−3’(配列番号1)および5’−ttatcctatcctcctccttgg−3’(配列番号2)。2)プローブ:5’−FAM−ctccagctttgtgctctgcctct−TAMRA−3’(配列番号3)。
【0048】
キットには、以下:RNA抽出試薬、逆転写試薬、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、緩衝液、塩化マグネシウム溶液、DNAポリメラーゼ、CST1のスプライス1の増幅産物の配列(配列番号51)を含む組換えプラスミド標準物質(
図1に示すようなもの。プライマーは5’−gggctccctgcctcgggctctcac−3’(配列番号22)および5’−acggtctgttgcctggctcttagt−3’(配列番号23)である)、陽性対照(乳癌細胞株HCC1937)および陰性対照(乳房組織細胞株Hs578Bst)の1以上を含めてもよい。
【0049】
典型的な手順では、サンプル、対照および標準物質をPCRにより増幅する。標準物質のCP値を標準物質の濃度に対してプロットし、データフィッティングにより校正式を得る。遺伝子の定量はCP値を検量線と比較して行う。
【0050】
実施例17 CST1のスプライス1の、蛍光色素を用いたリアルタイムPCR測定用の検査キット
以下のプライマーの少なくとも一対を含むべきである。[1]5’−tctcaccct−cctctcctg−3’(配列番号1);5’−ttatcctatcctcctccttgg−3’(配列番号2)。[2]5’−ccctgggagaacagaaggtcc−3’(配列番号4);5’−ggtggtggctggtgcgaat−3’(配列番号5)。[3]5’−cattcgcaccagccaccac−3’(配列番号6);5’−agaagcaa−gaaggaaggagggag−3’(配列番号7)。[4]5’−cagcgtgcccttcacttcg−3’(配列番号8);5’−cggtctgttgcctggctctta−3’(配列番号9)。[5]5’−cattcgcaccagcca−ccac−3’(配列番号10);5’−cagggctatagaagcaagaaggaa−3’(配列番号11)。[6]5’−ggtacagcgtgcccttcacttc−3’(配列番号12);5’−cggtctgttgcctggctctta−3’(配列番号13)。[7]5’−gagaacagaaggtccctggtgaa−3’(配列番号14);5’−ggtggtggctggtgcgaat−3’(配列番号15)。[8]5’−tgggtacagcgtgcccttca−3’(配列番号16);5’−cggtctgttgcctggctctta−3’(配列番号17)。[9]5’−ccctgggagaacagaaggtcc−3’(配列番号18);5’−tggtggctggtgcgaatgg−3’(配列番号19)。[10]5’−ttccctgggag−aacagaaggtcc−3’(配列番号20);5’−tggtgg−ctggtgcgaatgg−3’(配列番号21)。
【0051】
キットには、以下:内部マーカーβ−アクチンのプライマー5’−aagatcattgctcctcctg−3’(配列番号32)、5’−cgtcatactcctgcttgc−3’(配列番号33)、RNA抽出試薬、逆転写試薬、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、緩衝液、塩化マグネシウム溶液、DNAポリメラーゼおよび蛍光色素(SYBR Greenなど)の1以上を含めてもよい。
【0052】
実施例18 NASBAに基づくCST1のスプライス1の発現の検査キット
本キットは以下を含む。1)プライマー:5’−aattctaatacgactca−ctatagggtctcaccctcctctcctg−3’(配列番号34)および5’−ttatcctatcctcctccttgg−3’(配列番号2)。2)プローブ:5’−FAM−ctccagctttgtgctctgcctct−ダブシル−3’(配列番号3)。
【0053】
キットには以下:RNA抽出試薬、逆転写試薬、RNAの蛍光色素(Ribo−Greenなど)、T4 RNAポリメラーゼ、リボヌクレアーゼH、トリ骨髄性白血病ウイルス(AMV)逆転写酵素、リボヌクレオチド三リン酸(NTP)およびdNTPの1以上を含めてもよい。
【0054】
実施例19 TMAに基づくCST1のスプライス1の発現の検査キット
本キットは以下を含む。1)プライマー:5’−aattctaatacgactcactatagggtctcaccctcctctcctg−3’(配列番号34)および5’−ttatcctatcctcctccttgg−3’(配列番号2)。2)プローブ:5’−FAM−ctccagctttgtgctctgcctct−ダブシル−3’(配列番号3)。
【0055】
キットには、以下:RNA抽出試薬、逆転写試薬、RNAの蛍光色素(Ribo−Greenなど)、T4 RNAポリメラーゼ、リボヌクレアーゼH、トリ骨髄性白血病ウイルス(AMV)逆転写酵素、NTPおよびdNTPの1以上を含めてもよい。
【0056】
実施例20 LCRに基づくCST1のスプライス1の発現の検査キット
キットは、4つのプライマー:5’−agtatctgagtaccctgctgctcctgc−3’(配列番号35)、5’−accctagctgtggccctggcctggag−3’(配列番号36)、5’−catagactcatgggacgacg−3’(配列番号37)、5’−acaccgggaccggacctc−3’(配列番号38)を含む。プライマーはすべて、5’末端にヘプタン標識を有する。
【0057】
キットには、以下:RNA抽出試薬、逆転写試薬、T4 DNAリガーゼおよびdNTPの1以上を含めてもよい。
【0058】
実施例21 tSDAに基づくCST1のスプライス1の発現の検査キット
キットは以下を含む。1)CST1 B1のプライマー:5’−tgggtacagc−gtgcccttcactt−3’(配列番号39)、CST1 S1のプライマー:5’−ccgctcgagtacagcgtgcccttcacttcgc−3’(配列番号40)、CST1 B2のプライマー:5’−caacggtctgttgcctggctctta−3’(配列番号41)およびCST1 S2のプライマー:5’−gacctcgaggttgcctggctcttagtacccg−3’(配列番号42)。2)プローブ:5’末端に
32P標識を有する5’−gtgctcgagtcagcgagtataacaagg−ccaccaaagatgactac−3’(配列番号3)。
【0059】
キットには、以下:RNA抽出試薬、逆転写試薬、dCTPαS、dATP、dGTP、dTTP、BsobI酵素、exo−Bca酵素の1以上を含めてもよい。
【0060】
(2)タンパク質
組換えシスタチンSN、ウサギ抗シスタチンSN抗体はNOVUS Biologicalsから購入した。マウス抗ヒトシスタチンSNモノクローナル抗体(配列番号54に示した配列に対して特異的認識を行う)はR&Dから購入した。TMB溶液Aおよびペルオキシダーゼ溶液Bを含むTMBオキシダーゼ基質は、Kirkegaard & Perry Laboratories Inc.から購入した。
【0061】
血清調製の典型的な手順を以下の通り記載する。全血サンプルを周囲温度下2時間または4℃下一晩保存し、その後サンプルを20分間(1000g)遠心分離する。上清を集めて検査を行うか、または−20℃もしくは−80℃下保存する。凍結および解凍の繰り返しは避けるべきである。血漿サンプルは以下のプロトコルにより調製する。EDTAまたはヘパリンなどの抗凝固剤を添加した血液サンプルを15分間(2〜8℃、1000g)遠心分離し、上清を集めて検査を行うか、または−20℃もしくは−80℃下保存する。凍結および解凍の繰り返しは避けるべきである。血清サンプルおよび血漿サンプルは、検査前にPBS緩衝液(0.1M、pH7.0〜7.2)を用いて10倍希釈する。
【0062】
実施例22 乳癌細胞株および健常ヒト血清におけるシスタチン発現
高発現のCST1のmRNAを含む乳癌細胞株HCC1937(レーン1〜2)およびMCF−7(レーン3〜4)と健常ヒト血清S1(レーン5〜6)およびS2(レーン7〜8)とをSDS−PAGE(15%)により解析した。タンパク質をニトロセルロース膜に転写し、コーティング溶液(5%スキムミルク粉末および0.1%TWEEN−20)とインキュベートし、その後膜をポリクローナル抗シスタチンSN抗体と一晩インキュベートした。次いで膜を、0.1%TWEEN−20を含むPBSで3回洗浄し、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ−抗ウサギIgG溶液と37℃下1時間インキュベートし、0.1%TWEEN−20を含むPBSで4回洗浄し、PBSで1回洗浄し、比色検出用のTMBペルオキシダーゼ指示薬で処理した。β−アクチンを内部標準として使用した。
図17に示すように、16kDaのタンパク質がレーン1〜4で観察された一方、レーン5〜8ではあまり観察されなかった。シスタチンSN発現は乳癌細胞において異常に高いと結論される。
【0063】
実施例23 乳癌患者および健常者の血清中のシスタチンSN発現
健常者(レーン1〜2)および乳癌患者(レーン3〜6)の血清を、実施例22に記載されているようにSDS−PAGEおよび免疫ブロットにより解析した。
図18に示すように、レーン3〜6に検出されたシスタチンSNはレーン1〜2より非常に高かったことから、シスタチンSN発現は乳癌患者血清中で異常に高いことが示された。
【0064】
実施例24 競合ELISAにより測定された、乳癌患者および健常者の血清中のシスタチンSN発現。
ELISAプレートを5μg/mLのシスタチンSN溶液でコートし、3%BSAで再充填した。血清サンプルをシスタチンSNモノクローナル抗体と混合し(1:2000)、混合物をプレートで1時間(37℃)インキュベートした。ELISAプレートをTBS緩衝液(154mMのNaCl、10mMのトリス−HCl、pH7.5)で洗浄し、HRP標識ヤギ−抗ウサギIgG(0.08μg/mL)により37℃下1時間インキュベートした。プレートを再びTBSにより洗浄した。最後にマイクロプレートリーダーにより定量的検出のため、プレートをo−フェニレンジアミンで処理した。健常者由来の20の血清サンプルおよび乳癌患者由来の30の血清サンプルを処理した。
図19に示すように、健常血清のシスタチンSN濃度の中央値は1.7ng/mLである一方、乳癌患者のそれは4.1ng/mLに達する。乳癌サンプルは、3.25ng/mLがカットオフ値であれば、区別可能である。
【0065】
実施例25 二重抗体サンドイッチELISAにより測定された、乳癌患者および健常者の血清中のシスタチンSN発現
ELISAプレートを5μg/mLのマウス−抗ヒトシスタチンSNモノクローナル抗体でコートし、3%BSA溶液で再充填した。血清サンプルをプレートで1時間(37℃)インキュベートし、TBS緩衝液で洗浄した。このプレートでビオチン標識ウサギ−抗シスタチンSNポリクローナル抗体(1:1000)をインキュベートした。プレートをTBS洗浄し、ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ基質複合体を添加し、これをさらに1時間インキュベートし、TBS緩衝液で洗浄した。プレートにTMBを加え、比色シグナルをマイクロプレートリーダーにより測定した。健常者由来の20の血清サンプルおよび乳癌患者由来の30の血清サンプルを検査した。
図20に示すように、健常血清のシスタチンSN濃度の中央値は0.525ng/mLである一方、乳癌患者のそれは2.99ng/mLに達する。乳癌サンプルは、1.48ng/mLがカットオフ値であれば、区別可能である。
【0066】
実施例26 乳癌マーカーとしての血清中のシスタチンSNとCEAとの感度および特異性の比較
シスタチンSN発現を実施例25で測定したプロトコル準じて測定した。CEAは、市販されている検査キットを使用して測定した。30の健常血清サンプルおよび乳癌患者由来の30の血清サンプルを検査し、結果を
図21にまとめてある。シスタチンSNおよびCEAのAUC値はそれぞれ0.994および0.833であるから、感度および特異性に関する場合、シスタチンSNは乳癌マーカーとしてCEAより有利であることが示される。
【0067】
実施例27 シスタチンSNの定量用の検査キット(競合ELISA)
1.キットの組成
以下:シスタチンSN、マウス−抗ヒトシスタチンSNモノクローナル抗体、HRP標識ヤギ−抗ウサギIgG、酵素基質(o−フェニレンジアミン)を含めるべきである。
【0068】
キットは、以下:再充填溶液(3%BSA)、TBS緩衝液(154mMのNaClおよび10mMのトリス−HCl、pH7.5)を含んでもよい。
【0069】
2.ガイドライン
ELISAプレートを5mg/mLのシスタチンSNでコートする。次いでプレートを3%BSA溶液で再充填する。血清サンプルおよび抗シスタチンSNモノクローナル抗体を混合し(1:2000)、プレートで1時間(37℃)インキュベートする。プレートをPBSで洗浄し、HRP標識ヤギ−抗ウサギIgG(0.08μg/mL)を添加し、1時間インキュベート(37℃)する。プレートに0.4mg/mLのo−フェニレンジアミンを加えた。測定にはマイクロプレートリーダーを使用する。
【0070】
実施例28 シスタチンSNの定量用の検査キット(二重抗体サンドイッチELISA)
1.キットの組成
以下:シスタチンSN標準物質(1%BSAを含むPBSTを用いて一連の溶液を作製する。濃度は、たとえば10、5、2.5、1、0.5および0.25ng/mLとする)、マウス−抗ヒトシスタチンSNモノクローナル抗体、ビオチン標識ウサギ−抗シスタチンSNポリクローナル抗体、ストレプトアビジン基質複合体、TMBペルオキシダーゼ基質を含めるべきである。
【0071】
キットは以下:コーティング溶液(0.05MのNaHCO
3、pH9.0)、再充填溶液(3%BSA)、1%BSAを含むPBST緩衝液、PBST緩衝液(0.05%TWEEN−20を含むPBS)および停止液(2N H
2SO
4)を含んでもよい。
【0072】
2.ガイドライン
マウス−抗ヒトシスタチンSNモノクローナル抗体を5μg/mLの濃度で希釈用緩衝液に溶解し、これをELISAプレートに加える。プレートを4℃下一晩インキュベートする。残留液体を捨て、PBST緩衝液を使用してプレートを3回、合計9分間洗浄する。プレートの穴に200μLの再充填溶液を加え、プレートを4℃下または37℃下1時間インキュベートする。残留液体を捨て、PBST緩衝液を使用してプレートを3回、合計9分間洗浄する。ブランク、標準物質、サンプルのサンプル穴を指定する。ブランクの穴、標準物質の穴およびサンプルの穴にそれぞれ100μLのPBS、シスタチンSN標準物質溶液および血清/血漿サンプルを加える。プレートを2時間(37℃)インキュベートする。残留液体を捨てる。100μLのビオチン標識ウサギ−抗シスタチンSNポリクローナル抗体溶液(PBST−BSA緩衝液で1:200の比率に希釈)を加える。プレートを1時間(37℃)インキュベートし、各穴の残留液体を捨てる。プレートをPBST緩衝液で3回(合計9分)洗浄する。各穴にストレプトアビジン基質複合体を加え、プレートを1時間(37℃)インキュベートする。プレートを各サイクル1〜2分で5サイクル洗浄する。各穴に50μLのペルオキシダーゼ基質溶液を加え、プレートを暗所に入れておく。約15分して標準物質の穴が青色のグラデーションを示したら、50μLの停止液を加えて反応を停止する(色が青から黄に変化する)。マイクロプレートリーダー(405nm)を使用してOD値を検査する。標準物質のODを濃度に対してプロットして検量線およびR
2値を得る(R
2が0.95より高い場合、検量線の妥当性が確認される)。シスタチンSN濃度をサンプルの穴のOD値および校正式により算出する。
【0073】
実施例29 乳癌のpTNM分類のためのシスタチンSNの利用
80例の乳癌患者(ステージTが20例、ステージNが30例およびステージMが30)の血清サンプルを、実施例28に記載したプロトコル/キットを使用して検査した。表4にまとめたように、癌発育が継続するに従いシスタチンSN発現が増加する。この結果から、シスタチンSNのpTMN分類への利用が示される。
【0074】
【表4】
【0075】
実施例30 シスタチンSNレベルによる転移の検出
乳癌患者(転移なし)由来の20の血清サンプルおよび転移のある乳癌由来の30の血清サンプルを実施例28に言及したプロトコルにより検査した。表5に示すように、転移性乳癌患者由来のシスタチンSNレベルは、転移のない患者のそれより高いことから、シスタチンSNが乳癌転移のマーカーであることが証明される。
【0076】
【表5】
【0077】
実施例31 化学療法(CT)−内分泌療法の併用療法の効果を評価するためのシスタチンSN
2885例の乳癌患者(N0またはN1)をAC(ドキソルビシン+シクロホスファミド)またはAT(ドキソルビシン+パクリタキセル)で治療した。内分泌療法は、ホルモン受容体(HR)レベルに基づき選択した。シスタチンSNは、実施例28のプロトコルを用いて測定した。データ解析について776例の有効性が確認され、そのシスタチンSN濃度の中央値は4.06ng/mLである。それから76ヶ月にわたり無増悪生存率(PFS:prognosis−free survival)を記録した。
図22に示すように、シスタチンSN発現が中央値より高い患者は20%のPFSを有する一方、残りの患者は約60%のPFSを有する。この結果から、シスタチンSNが本療法の有効性評価の指標となることが証明される。
【0078】
上記の例により極めて詳細に本発明が考察された。これらの例は、実際の実施要件に適合するように組み合わせてもよい点に留意されたい。当該分野の研究者にとって交換、改変および変更は必要かつ容易であり、したがって本発明の一部をなすものとする。