特許第6138166号(P6138166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6138166高分散能力を有する鉱物材料粉末および前記鉱物材料粉末の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138166
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】高分散能力を有する鉱物材料粉末および前記鉱物材料粉末の使用
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20170522BHJP
   C09C 1/02 20060101ALI20170522BHJP
   C09C 3/04 20060101ALI20170522BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20170522BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20170522BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20170522BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20170522BHJP
   C08L 27/00 20060101ALI20170522BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20170522BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170522BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20170522BHJP
   C01F 11/18 20060101ALN20170522BHJP
   D21H 21/00 20060101ALN20170522BHJP
   C08K 3/26 20060101ALN20170522BHJP
   A61K 8/19 20060101ALN20170522BHJP
【FI】
   C09D17/00
   C09C1/02
   C09C3/04
   C09C3/08
   C08L101/00
   C08J3/22CER
   C08J3/22CEZ
   C08L23/00
   C08L27/00
   C09D201/00
   C09D7/12
   !C08L101/16
   !C01F11/18
   !D21H21/00
   !C08K3/26
   !A61K8/19
【請求項の数】29
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2014-557033(P2014-557033)
(86)(22)【出願日】2013年2月14日
(65)【公表番号】特表2015-512968(P2015-512968A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】EP2013052940
(87)【国際公開番号】WO2013120934
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2014年10月7日
(31)【優先権主張番号】12156090.8
(32)【優先日】2012年2月17日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/601,677
(32)【優先日】2012年2月22日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブランシャール,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】エルゴイアン,ジャン−ピエール
(72)【発明者】
【氏名】カルス,ビート
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】スペーン、ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ブルナー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ゴノン,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ティンクル,ミヒャエル
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0167531(US,A1)
【文献】 特開昭56−074162(JP,A)
【文献】 特開平11−349846(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0155055(US,A1)
【文献】 国際公開第2005/075353(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01713725(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第00027996(EP,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1918072(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 17/00
C09C 1/02
C09C 3/04
C09C 3/08
D21H 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕鉱物材料を調製する方法であって:
a)水性懸濁物またはスラリ中での少なくとも1つの粉砕ステップにおいて鉱物材料を、鉱物材料が0.6μmから1.5μmの重量中央粒径d50を有するまで湿式粉砕するステップであって、少なくとも1つの粉砕ステップにおいて関連する、アクリル系添加剤またはポリリン酸塩から選択される粉砕剤が存在しないステップ、
b)乾燥物の50重量%から70重量%の間の固体含有率を得るためにステップa)の水性懸濁物またはスラリを高濃縮または脱水するステップであって、鉱物質が0.6μmから1.5μmの重量中央粒径d50を有するステップ、
c)99.8%の固体含有率を有する鉱物質を得るためにステップa)またはb)の水性懸濁物またはスラリを乾燥させるステップであって、前記関連する粉砕剤が存在しないステップ、
d)ステップc)の生成物を少なくとも1つの脂肪族カルボン酸によって表面処理するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
ステップd)の後に脱凝集ステップe)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa)が、固体含有率が10重量%から40重量%である少なくとも1つの粉砕ステップおよび必須のステップb)を含み、粉砕ステップにおいて前記関連する粉砕剤は存在しない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
鉱物材料が大理石、チョーク、ドロマイト、カルサイト、石灰石、マグネシウムヒドロキシド、タルク、石膏、チタン(IV)ジオキシドまたはこれの混合物を含む群より選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップb)における高濃縮(up−concentration)が機械式および/もしくは加熱高濃縮ならびに/またはこれの組合せ、好ましくは遠心分離によって行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
ステップc)の乾燥が噴霧、スプレー乾燥、回転オーブンにおける乾燥、ポンドにおける乾燥(drying in a pond)、ジェット乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥、流動スプレー乾燥またはファウンテンノズル乾燥を含む群より選択される手段によって、好ましくはスプレー乾燥によって行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
ステップd)の少なくとも1つの脂肪族カルボン酸がブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキドン酸、ヘンエイコサン酸(heneicosylic acid)、ベヘン酸、リグノセリン酸、ならびに/またはこれの混合物を含む群より選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法によって得られる鉱物材料。
【請求項9】
紙、塗料、コーティング、熱可塑性または熱硬化性樹脂、ゴム、食品、食品パッケージ、化粧品、医薬品、コンクリートまたはモルタルにおける、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法によって得られる鉱物材料の使用。
【請求項10】
熱可塑性ポリマーがポリオレフィン、ハロゲン化ポリマー樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂およびこれの組合せを含む群より選択され、熱硬化性樹脂が可撓性ポリウレタンフォーム、ポリアミド樹脂およびこれの組合せを含む、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
ハロゲン化ポリマー樹脂が好ましくはPVC、後塩素化ポリ塩化ビニルPVCC、ポリフッ化ビニリデンPVDFまたはこれの混合物を含む群より選択される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
ポリオレフィン樹脂が好ましくはポリエチレンのホモポリマーおよび/もしくはコポリマー(架橋または非架橋ポリエチレン)および/もしくはポリプロピレンならびに/またはこれの混合物を含む群より選択される、請求項10に記載の使用。
【請求項13】
中間ポリマー生成物がマスターバッチ、化合物、ドライブレンドまたは粒状物を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法によって得られる鉱物材料の使用。
【請求項14】
請求項8に記載の鉱物材料を含むコーティング。
【請求項15】
請求項8に記載の鉱物材料を含むコンクリートまたはモルタル。
【請求項16】
請求項8に記載の鉱物材料を含むマスターバッチ、化合物、ドライブレンドまたは粒状物を含む中間ポリマー生成物。
【請求項17】
請求項8に記載の鉱物材料を含む熱可塑性ポリマー。
【請求項18】
請求項8に記載の鉱物材料を含む熱可塑性ポリマー生成物。
【請求項19】
ポリオレフィン、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ハロゲン化ポリマー樹脂およびこれの組合せを含む群より選択される少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む、請求項18に記載の熱可塑性ポリマー生成物。
【請求項20】
ハロゲン化ポリマー樹脂が好ましくはPVC、後塩素化ポリ塩化ビニルPVCC、ポリフッ化ビニリデンPVDFまたはこれの混合物より選択される、請求項19に記載の熱可塑性ポリマー生成物。
【請求項21】
鉱物材料が1phrから200phrの、好ましくは約5phrから約19phrの、なおさらに好ましくは約6phrから約18phrの、なおさらに好ましくは約7phrから約17phrの量で存在する、請求項20に記載の熱可塑性PVC生成物。
【請求項22】
押出試料でISO 179/1eAに従って測定した10kJ/mから約140kJ/mのシャルピー衝撃強さを有する、請求項21に記載の熱可塑性PVC生成物。
【請求項23】
約20から約60の、好ましくは40から約60の、なおさらに好ましくは約42から約55の60°光沢度[−]を有する、請求項21または22に記載の熱可塑性PVC生成物。
【請求項24】
形材、例えば窓用形材、パイプおよび工業用形材、例えばケーブルもしくはワイヤ用導管(conducts)、壁、天井もしくは外装用パネル、ワイヤ絶縁体、繊維、シート、フィルムおよび不織布を含む群より選択される、請求項18から23のいずれかに記載の熱可塑性ポリマー生成物。
【請求項25】
窓用形材、パイプ、工業用形材、例えばケーブルもしくはワイヤ用導管(conducts)、壁、天井もしくは外装用パネル、ワイヤ絶縁体、繊維および不織布を含む群より選択される、請求項20から23のいずれかに記載の熱可塑性PVC生成物。
【請求項26】
請求項8に記載の鉱物材料を含む熱可塑性可塑化PVC生成物。
【請求項27】
請求項8に記載の鉱物材料を含む熱可塑性プラスチゾル生成物。
【請求項28】
請求項8に記載の鉱物材料を含むポリウレタン、フォームポリウレタン、不飽和ポリエステル樹脂を含む熱硬化性ポリマー。
【請求項29】
バイオプラスチックまたは生分解性ポリマーである、請求項17に記載の熱可塑性ポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系添加剤または他の粉砕補助添加剤を含まない湿潤工程による鉱物材料粉末調製物に関し、および必須ではない疎水化処理後の前記鉱物材料の使用に関するものである。優れた分散特性を有する前記鉱物材料。
【0002】
本発明はさらに、このように加工された鉱物材料の鉱物充填剤としての、特に紙、塗料、コーティング、熱可塑性または熱硬化性樹脂、ゴム、食品、食品パッケージ、化粧品、医薬品およびコンクリートまたはモルタルにおける鉱物充填剤としての使用に関する。
【0003】
本発明はポリオレフィンまたはPVC樹脂のような、特にプラスチックの製造に、および特に熱可塑性樹脂に関する。
【背景技術】
【0004】
今日、高価な樹脂の一部は、コストを低減するためにより安価な充填剤および/または顔料材料に定期的に置き換えられ、同時に非充填材料の機械的および/または光学特性の改善が試みられている。
【0005】
ポリオレフィンのような熱可塑性ポリマー中に存在する充填剤の量は概して、約0.1重量%から約70重量%の範囲にあるのに対して、各種PVCのような熱可塑性樹脂においては、充填剤は約1phrから約200phrの量で存在する。例えばケーブル台などの特定の用途においては、充填剤は400phrに達することさえあり得る。phrは、重量に関してパーツ・パー・ハンドレッド樹脂(arts per undred esins)の意味を有する。このような量は概して、熱可塑性ポリマーの通常加工を考慮している。
【0006】
前記充填剤は、天然または合成炭酸カルシウム、ドロマイト、マグネシウムヒドロキシド、カオリン、タルク、石膏またはチタン(IV)ジオキシドから頻繁に選択され、ポリマーマトリクスに直接、化合物、乾燥ブレンド、マスターバッチまたは粒状物の形で包含されている。
【0007】
しかし、分散剤を含む当分野で公知の方法によって調製された微粉末は、乾燥後に凝集体を形成する傾向が強い。このような凝集体は、ポリマーマトリクス、塗料、コーティングまたはモルタルのような最終混合物に十分に分散することが難しくなる。このような分散上の問題を克服するために、乾燥後凝集した粒子は、前記凝集体を破砕して分散を促進するための脱凝集ステップを受けることが多い。しかし、前記脱凝集ステップは必ずしも十分でなく、従ってこのような材料の分散も十分ではなく、最終製品の欠陥や望ましくない影響を及ぼす。
【0008】
鉱物材料は、高い固体含有率での湿式粉砕を可能にするために、分散剤と混合されることが多い。現行の従来技術は、凝集体の問題を克服する試みを提供しようとしている。ポリマーマトリクスへの添加を容易にして、分散を良好にするために、微細鉱物材料からマスターバッチが作製される。幾つかの用途において、鉱物充填剤は場合により表面処理される。
【0009】
WO00/20336は、1つもしくは複数の脂肪酸または1つもしくは複数のこれの塩もしくは混合物で場合により処理された超微細天然炭酸カルシウムおよびポリマー組成物用レオロジー調節剤としてのこれの使用について記載している。比表面積は、ISO規格4652によるBET法に従って測定して14m/gから30m/gである。
【0010】
WO03/066692は、熱可塑性樹脂中で鉱物材料を再分散させるためのマスターバッチで使用される結合剤について記載している。
【0011】
WO2005/075353は、天然微粒子炭酸塩であって、湿式粉砕中に用いられる分散剤が最小化されまたは後の段階で洗浄によって除去され、続く脱水により、表面含水率がおよそ0.2重量%に低下した生成物が得られる、天然微粒子炭酸塩について記載している。分散剤化学薬品の残存量は、炭酸塩の乾燥重量に基づいて0.05重量%を超えない。炭酸塩が疎水化表面処理剤によって表面コーティングされる場合、第2の加熱ステップが使用される。第2の加熱ステップは、表面処理ステップの前および/または間に行ってよい。表面処理剤は、脂肪族カルボン酸を含んでよい。
【0012】
WO2010/030579は、検出可能な遊離ステアリン酸を少量有するか、または全く有さないステアリン酸処理炭酸カルシウムについて記載している。炭酸カルシウムを処理する方法は、炭酸カルシウム、水およびステアリン酸の組合せを含み、水の量は総重量に対して少なくとも0.1重量%である。
【0013】
US2004/097616は、処理済み微粒子炭酸カルシウムについて記載している。前記処理は2段階で行われる。第1の処理(前処理)ステップは、少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン(polydialkysiloxane)による処理を含み、第2のステップは10個を超える炭素原子を含有する少なくとも1つの脂肪酸による処理を含み、2つのステップを同時に行うことができる。
【0014】
本発明者らは、驚くべきことに分散の問題に直面して、いずれの分散剤も使用することなく該方法に完全に沿って粉砕鉱物材料を調製することにより、最終組成物での分散の問題を解決できることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第00/20336号
【特許文献2】国際公開第03/066692号
【特許文献3】国際公開第2005/075353号
【特許文献4】国際公開第2010/030579号
【特許文献5】米国特許公開出願第2004/097616号明細書
【発明の概要】
【0016】
従って本発明の目的は、粉砕天然鉱物材料、ならびに良好な分散能力および前記鉱物材料の最大約99.8重量%の固体含有率を有し、アクリル系添加剤またはポリリン酸塩または他の粉砕補助添加剤を用いない湿潤工程で調製される、前記粉砕天然鉱物材料の調製方法であり、このようなアクリル系添加剤または他の粉砕補助添加剤は、WO03/066692またはEP−A−0380430のような従来技術から当業者に公知である。
【0017】
本発明のさらなる態様は、熱可塑性樹脂、例えばポリオレフィンまたはPVC樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、または熱硬化性樹脂、例えばポリウレタンフォーム(例えば可撓性ポリウレタンフォーム)、ゴム、不飽和ポリエステルまたは加硫ゴムにおける良好な分散能力を備えた粉砕天然鉱物材料を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる態様は、本発明の鉱物材料を含む熱可塑性ポリマー生成物に関する。
【0019】
本発明の別の態様は、本発明の鉱物材料を含む熱硬化性ポリマー生成物に関する。
【0020】
本発明のなおさらなる態様は、熱可塑性樹脂、例えばポリオレフィン、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ハロゲン化ポリマー樹脂およびこれの組合せにおける本発明の鉱物材料の使用に関する。
【0021】
本発明のまた別の態様において、ハロゲン化ポリマー樹脂は、好ましくはPVC、後塩素化ポリ塩化ビニルPVCC、ポリフッ化ビニリデンPVDFまたはこれの混合物を含む群より選択される。
【0022】
本発明のなおさらなる態様は、熱可塑性PVC生成物に関し、本発明の鉱物材料は約1phrから200phrの、好ましくは約5phrから約19phrの、なおさらに好ましくは約6phrから約18phrの、およびなおさらに好ましくは約7phrから約17phrの量で存在し、熱可塑性PVC生成物は、押出試料でISO 179/1eAに従って測定した10kJ/m2から約140kJ/m2のシャルピー衝撃強さを有する。さらに熱可塑性PVC生成物は、約20から約60の、好ましくは約40から約60の、なおさらに好ましくは約42から55の60°光沢度[−]を有する。
【0023】
本発明のなおさらなる態様は、本発明の鉱物生成物ならびにこのような熱可塑性ポリマー生成物または熱硬化性材料から生成された中間および/または最終生成物の使用に関する。
【0024】
本発明の鉱物材料を含むこのような熱可塑性ポリマー生成物は、ポリオレフィン、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ハロゲン化ポリマー樹脂およびこれの組合せを含む群より選択される少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む。
【0025】
最終熱可塑性ポリマー生成物は、形材、例えば窓用形材、パイプおよび工業用形材、例えばケーブルもしくはワイヤ用導管(conducts)、壁、天井もしくは外装用パネル、ワイヤ絶縁体;繊維および不織布、キャストフィルム、例えば通気性フィルム、ラフィア、二軸延伸ポリプロピレンフィルムもしくはインフレーションフィルム、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)または直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)もしくはポリプロピレン(PP)またはこれの混合物から作製された単層もしくは多層フィルムである。混合物は混合層を示す。しかし最終生成物だけでなく、中間生成物も調製され得る。このような中間生成物は、押出ステップ、例えば射出成形、ブロー成形またはキャスティングを含む方法によって作製された生成物ならびに得られた生成物、例えばシート、フィルムまたはボトルおよび形材を含む。本明細書で言及した方法は単に例証目的であり、このため本発明をこれらの方法に限定しないとして理解されるものとする。
【0026】
マスターバッチ、化合物、ドライブレンドまたは粒状物などの中間生成物ならびに他の種類の最終生成物、例えば不織繊維、スパンレイド繊維、モノまたはマルチフィラメント生成物は、本発明に含まれる。
【0027】
本発明をここでさらに記載する。
【0028】
鉱物材料は概して、採石場から採掘された材料であり、ある程度は、合成法によっても調製される。
【0029】
採石場から採掘された鉱物材料は、これの最終使用目的に従ってさらに加工される。基本的に、採掘された岩石は最初にジョークラッシャーなどによるサイズリダクションを受けてから、次の粉砕工程に入る。このような摩砕または粉砕工程は概して、乾式または湿式で行われ、ゆえにまた乾式摩砕もしくは粉砕または湿式摩砕または粉砕と名付けられ、このような工程は当業者に公知である。
【0030】
概して、関連する加工剤は、湿式粉砕中の粘度を改善するために、湿式粉砕中に存在する。粘度に影響するこのような関連する加工剤は当業者に公知であり、有機または無機材料、化学薬品または分子の中で見出すことができる。
【0031】
本発明の粉砕鉱物材料は、以下のステップを含む方法によって得られる:
a)水性懸濁物またはスラリ中での少なくとも1つの粉砕ステップにおいて鉱物材料を、該鉱物材料が0.1μmから1.5μmの、好ましくは0.4μmから1.1μmの、より好ましくは0.6μmから0.9μmの、最も好ましくは0.8μmの重量中央粒径d50を有するまで湿式粉砕するステップであって、該少なくとも1つの粉砕ステップにおいて関連する加工剤が存在しないステップ、
b)乾燥物の50重量%から70重量%の間の、好ましくは55重量%から65重量%の、最も好ましくは60重量%の固体含有率を得るためにステップb)の水性懸濁物またはスラリを場合により高濃縮(up−concentrating)または脱水するステップであって、前記鉱物質が0.1μmから1.5μmの、好ましくは0.4μmから1.1μmの、より好ましくは0.6μmから0.9μmの、最も好ましくは0.8μmの重量中央粒径d50を有するステップ、
c)99.8%の固体含有率を有する鉱物質を得るためにステップa)またはb)の水性懸濁物またはスラリを乾燥させるステップであって、関連する加工剤が存在しないステップ、
d)ステップc)の生成物を少なくとも1つの脂肪族カルボン酸によって場合により表面処理するステップ。
【0032】
しかしある場合においては、ステップd)で得た生成物の脱凝集を行うことが望ましいことがある。
【0033】
従って、本発明による方法は、ステップd)の生成物の脱凝集のステップe)を含むことを特徴とする。
【0034】
本発明の方法は、ステップa)における、固体含有率が10重量%から40重量%、好ましくは20重量%から30重量%である少なくとも1つの粉砕ステップおよび必須のステップb)をなおさらに含んでよく、該粉砕ステップにおいて関連する加工剤は存在しない。
【0035】
上に挙げた方法で使用される鉱物材料は、いずれかの天然もしくは合成炭酸カルシウムまたは大理石、チョーク、ドロマイト、カルサイト、石灰石、マグネシウムヒドロキシド、タルク、石膏、チタン(IV)ジオキシドまたはこれの混合物を含む群より選択される材料を構成する炭酸カルシウムであることができる。
【0036】
上記の方法の湿式微粉砕は、例えばUS5,533,678またはUS5,873,935に記載されているような当業者に公知の方法によって行うことができる。
【0037】
上記の方法における必須ではない高濃縮(up−concentration)または脱水ステップは、当業者に公知の手段によって、例えば機械式および/もしくは加熱高濃縮ならびに/またはこれの組合せによって行われる。
【0038】
機械式高濃縮または脱水は、遠心分離によってまたはフィルタプレスによって行うことができる。例えば熱によるまたはフラッシュ冷却による溶媒蒸発のような加熱高濃縮法によって行うことができる。好ましくは、本発明の高濃縮ステップは、遠心分離によって行われる。
【0039】
上記の方法における乾燥ステップは、当業者に公知の手段によって行われ、例えば噴霧、スプレー乾燥、回転オーブンにおける乾燥、ポンドにおける乾燥(drying in a pond)、ジェット乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥、流動スプレー乾燥またはこの目的に好適な他の手段、例えばファウンテンノズル乾燥の群より選択でき、好ましくはスプレー乾燥によって行われる。
【0040】
脱水または乾燥ステップから生じた乾燥鉱物質生成物の必須ではない表面処理は、予熱材料を用いてピンミルにおいて、アトライタミル、セルミルにおいて、スピードミキサにおいて、ドライ・メルト・コーティングにおいて、流動床または他のいずれのこの目的に好適であり当業者に公知である装置において行うことができる。
【0041】
必須ではない表面処理ステップは、乾燥ステップの後に、または表面処理生成物が乾燥ステップ後に添加される乾燥ステップ中に代替手段として、および乾燥ステップの前または間に代替方法にて行うことができる。
【0042】
前記必須ではない処理は、鉱物質の約0.01重量%から約4重量%の量の、好ましくは約0.02重量%から約2重量%の量の、より好ましくは約0.03重量%から約1重量%の量の表面処理生成物を用いて行われる。
【0043】
前記表面処理生成物は、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキドン酸、ヘンエイコサン酸(heneicosylic acid)、ベヘン酸、リグノセリン酸、これのエステルおよび/もしくは塩ならびに/またはこれの混合物を含む群より選択される少なくとも1つの脂肪族カルボン酸である。
【0044】
本発明の意味の範囲内で、少なくとも1つの脂肪族カルボン酸は、炭素および水素で構成される直鎖または線状鎖、分枝鎖、飽和、不飽和または脂環式有機化合物を指す。前記有機化合物は、炭素骨格の末端に位置するカルボキシル基をさらに含有し、炭素骨格はエステルの場合、C1−C9アルコール、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、i−プロパノール、ブタノール、i−ブタノール、ペンタノール、i−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、i−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、i−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、i−オクタノール、1−ノナノール、2−ノナノール、i−ノナノールおよびこれの混合物を含む群より選択されるモノアルコールによってエステル化されている。
【0045】
上記の方法によってこのように得た生成物は、少なくとも1つの脂肪族カルボン酸によって場合によりコーティングされた鉱物材料であり、未処理の鉱物材料は、0.1μmから1.5μmの、好ましくは0.4μmから1.1μmの、より好ましくは0.6μmから0.9μmの、最も好ましくは0.8μmの中央粒径d50を有する。
【0046】
前記未処理の鉱物材料はさらに、3m/gから13m/gの、好ましくは4m/gから12m/gの、より好ましくは5m/gから10m/gの、なおさらに好ましくは6m/gから9m/gの、なおさらに好ましくは7m/gから8m/gのBET/N比表面積を有する。前記方法は、Brunauer,St.,Emmett,P.H.,Teller,E.(1938):Adsorption of Gases in Multimolecular Layers,J.Am.Chem.Soc.,60,309によって記載されている。
【0047】
これに加えて、上記の方法によって得た場合によりコーティングされた鉱物材料は、6μm以下の、例えば約5.9μmから約1.8μmの、好ましくは約5μmから約1.8μmの、より好ましくは約4μmから約2.5μmのトップカットd98を有する。
【0048】
少なくとも1つの脂肪族カルボン酸によってコーティングされた本発明の鉱物材料の表面積は、当業者に公知のコーティング技法、例えば高温流動床スプレーコーティング、高温湿式コーティング、溶媒補助コーティングまたは自己組織化コーティングなどによって適用された少なくとも1つの脂肪族カルボン酸に接触可能であるまたは暴露された鉱物材料の表面積を指し、これにより鉱物材料粒子の表面上に脂肪族カルボン酸の単層が形成される。この点で、接触可能な表面積の完全飽和に必要である脂肪族カルボン酸の量は単層濃度として定義されることに留意されたい。このためより高い濃度を選んで、これにより鉱物材料粒子の表面に2層化または多層化構造を形成できる。このような単層濃度は、Papirer、SchultzおよびTurchiの刊行物(Eur.Polym.J.Vol.20,No.12,pp 1155−1158,1984)に基づいて当業者がただちに計算できる。
【0049】
先に記載したように、本発明の一態様は、最終混合物、例えばポリマーマトリクス、塗料、コーティングまたはモルタルにおける良好な分散能力を有する鉱物材料を提供することである。
【0050】
本発明のさらなる態様は、紙、塗料、コーティング、熱可塑性または熱硬化性樹脂、ゴム、食品、食品パッケージ、化粧品、医薬品、モルタルまたはコンクリートにおける、本発明の方法によって得た鉱物充填剤の使用である。
【0051】
さらに本発明は、前記鉱物材料の製造方法および熱可塑性樹脂、例えばポリオレフィンもしくはPVC樹脂または熱硬化性樹脂における前記鉱物材料の使用、ならびに本発明の鉱物材料を含むこのような熱可塑性もしくは熱硬化性材料で作られた中間および/もしくは最終生成物について示す。最後に、本発明は、前記鉱物材料を含む熱可塑性樹脂、例えばポリオレフィンもしくはPVC樹脂または熱硬化性樹脂についても示す。
【0052】
熱可塑性ポリマーはさらに、ポリオレフィン、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ハロゲン化ポリマー樹脂、バイオプラスチック、生分解性ポリマーまたはこれの組合せを含む群より選択される。
【0053】
熱硬化性樹脂は、可撓性ポリウレタンフォームおよび不飽和ポリエステルから選ばれるが、これに限定されない。
【0054】
ポリマー樹脂がハロゲン化ポリマー樹脂である場合、ハロゲン化ポリマー樹脂は、好ましくはPVC、可塑化PVC、非可塑化PVC、後塩素化ポリ塩化ビニルCPVC、ポリフッ化ビニリデンPVDFまたはこれの混合物を含む群より選択される。
【0055】
PVCから最終生成物が作製できるようになる前には、これに限定されるわけではないが、熱安定剤、UV安定剤、潤滑剤、可塑剤、加工助剤、衝撃改質剤、熱改質剤、充填剤、難燃剤、殺生物剤、膨張剤、発煙抑制剤および場合により顔料などの添加剤を包含させることによって、PVCを化合物または乾燥ブレンドに変換することが常時必要である。
【0056】
熱可塑性PVC樹脂中の鉱物質充填剤の量は、約1phrから約200phrの範囲である。熱可塑性PVC窓用形材において、鉱物材料の量は、約1phrから約20phrの、好ましくは約5phrから約19phrの、なおさらに好ましくは約6phrから約18phrの、なおさらに好ましくは約7phrから約17phrの範囲である。
【0057】
本発明の意味における「phr」という用語は、「パーツ・パー・ハンドレッド樹脂」を意味する。特に100部のポリマーを使用する場合、他の成分の量は、このポリマーの100重量部に基づいて表される。
【0058】
本発明の鉱物質充填剤は、熱可塑性PVC窓用形材中に含まれる場合、熱可塑性PVC樹脂中に熱可塑性材料に対して4phr以上の量で、好ましくは少なくとも9phrの、少なくとも10phrの、少なくとも11phrの、少なくとも12phrの、少なくとも13phrの、少なくとも14phrの、少なくとも15phrの、少なくとも16phrの、少なくとも17phrの、少なくとも18phrの、または少なくとも19phrの量で存在することができる。
【0059】
このような熱可塑性PVC樹脂は、これの機械または光学特性、例えば加工性、光沢性および/または衝撃強さが影響を受けないか、またはごくわずか、即ち業界および/または顧客に許容される偏差限度内で受けるという利点を有する。
【0060】
重要な副次的効果は、200phrまでの量のポリマー樹脂の置き換えによって、最終熱可塑性PVC部品がよりコスト効率的に製造できることである。このため当業者は、最終生成物に熱可塑性のより低いポリマー材料を使用することによって、最終生成物、例えば形材、例えば窓用形材、パイプ、工業用形材、例えばケーブルもしくはワイヤ用導管(conducts)、壁、天井もしくは外装用パネル、ワイヤ絶縁体、繊維および不織布のコストが著しく低減されることを容易に認識する。
【0061】
しかし最終生成物だけでなく、中間生成物も調製され得る。このような中間生成物は、押出ステップ、例えば射出成形、ブロー成形またはキャスティングを含む方法によって作製された生成物ならびに得られた生成物、例えば形材、シート、フィルムまたはボトルを含む。本明細書で言及する方法は単に例証目的であり、このため本発明をこれらの方法に限定しないとして理解されるものとする。
【0062】
PVCはさらに、これの対応する最終生成物または用途によって、剛性PVC、可塑化PVCおよびプラスチゾルに分類することができる。剛性PVCは概して、形材、例えば1phrから約12phrの鉱物充填剤を含む窓用形材に、1phrから100phrまでの鉱物充填剤を含むサイディングに、1phrから60phrまでの鉱物充填剤を含む管またはパイプに使用される。可塑化PVCは概して、約1phrから200phrまでの鉱物充填剤を含む床板に、約1phrから150phrまでの鉱物充填剤を含むケーブル用導管(conducts)に使用される。プラスチゾルは概して、約1phrから200phrまでの量の鉱物充填剤を含む自動車下部材料に使用される。このため鉱物充填剤、例えばCaCOは概して、約1phrから約200phrの量で用いられる。特定の用途、例えば形材、例えば窓用形材では、この量は概して約1phrから約20phrの範囲である。上記の充填剤の量は固定されているわけではないため、上限値をなお10から50%まで上下に変更してもよい。
【0063】
ポリマー樹脂がスチレン樹脂である場合、ポリマー樹脂は好ましくは、汎用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−ブタジエンコポリマー、クレイトン(商標)型のブロックコポリマー、スチレン−アクリロニトリル型の樹脂、アクリレート−ブタジエン−スチレン樹脂、メチルメタクリレートスチレンコポリマーおよびこれの混合物を含む群より選択される。
【0064】
ポリマー樹脂がアクリル樹脂である場合、ポリマーは好ましくはポリメチルメタクリレート(methyl polymethyacrylate)である。
【0065】
ポリマー樹脂がポリオレフィン樹脂である場合、ポリオレフィン樹脂は、好ましくはポリエチレンのホモポリマーおよび/もしくはコポリマー(架橋または非架橋ポリエチレン)および/もしくはプロピレンならびに/またはこれの混合物を含む群より選択される。ポリエチレンはさらにHDPE、LDPE、LLDPEに細分され得る。
【0066】
ポリマーがポリエステル樹脂である場合、ポリマー樹脂は、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)および/またはポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネートならびにフタレートエステル、例えばイソフタレートエステルを含む熱可塑性樹脂を含む群より選択される。
【0067】
本発明の状況では、バイオプラスチックは、原油画分に由来する化石燃料プラスチックではなく、再生可能なバイオマス源、例えば植物油脂、トウモロコシ、デンプン、エンドウマメデンプンまたは微生物相に由来するプラスチックの形態である。すべてではないが一部のバイオプラスチック、例えばポリ乳酸プラスチック(PLA)またはポリヒドロキシアルカノエートバイオプラスチック(PHA)は、生分解するように設計されている。通例、アミロースまたはアミロペクチン(amylosepectin)から成るデンプンベースバイオプラスチックは、生分解性ポリエステルとブレンドされることが多い。これらのブレンドは主にデンプン/ポリカプロラクトン(PCLブレンド)またはデンプン/ポリブチレンアジペート−co−テレフタレートである。他のバイオプラスチックまたは生分解性バイオプラスチックについては、文献および/またはインターネットでさらに記載されている。
【0068】
熱可塑性樹脂の好ましい実施形態は、ポリビニルクロリドより選択される。
【0069】
好ましくは、ポリビニルクロリド樹脂は、ポリビニルクロリドホモポリマーまたはビニルクロリドと共重合性エチレン性不飽和モノマーとのコポリマーを含む。最終PVC生成物の用途に応じて、適切なK値が選ばれる。K値は、PVC溶液の粘度の測定値に基づくPVCの分子量の尺度である。K値は通例、35から80の範囲に及ぶ。低いK値は分子量が低いことを示し(加工が容易であるが、特性が劣っている。)、高いK値は分子量が高いことを示す(加工が難しいが、優れた特性を有する。)。
【0070】
本発明における使用に好適なポリビニルクロリド樹脂は、多種多様の販売元から入手できる。例えばイネオス・クロル・アメリカ、信越、ベストリット(Vestolit)、LVM、アイスコンデル(Aiscondel)、シレス、ソルビン、アルケマまたはビノリットからのポリビニルクロリドである。
【0071】
好ましい実施形態において、熱可塑性PVC樹脂組成物は本発明の鉱物質材料を4phrから約19phrの量で含む。熱可塑性PVC樹脂組成物は、最終熱可塑性PVCポリマー生成物、例えば窓用形材の作製に概して使用されるさらなる添加剤を含んでよい。このような添加剤は、例えばポリマー生成物の耐衝撃性、溶融弾性、安定性および耐酸化性を向上させる目的で添加してよい。熱可塑性PVC樹脂組成物は、安定剤、衝撃改質剤、潤滑剤、加工助剤、顔料およびこれの組合せを含む群より選択される少なくとも1つの成分をさらに含んでよい。
【0072】
一実施形態において、本発明の鉱物材料を1phrから20phrの量で含む熱可塑性PVC樹脂組成物は、少なくとも1つの安定剤をさらに含む。このような安定剤は、当分野で公知であり、Baerlocherまたはクロンプトン社などの製造者から提供される。安定剤は通例、Pb含有安定剤、Sn含有安定剤、Ca−Zn含有安定剤、有機ベース安定剤OBS(登録商標)、Ca−有機ベース安定剤、Ba−Zn含有安定剤またはこれの組合せより選択される。
【0073】
特定の一実施形態において、本発明の鉱物材料を1phrから20phrの量で含む熱可塑性PVC樹脂組成物は、Ca−Zn含有安定剤を1phrから6phrの、好ましくは2phrから5phrの、より好ましくは3phrから4phrの量でさらに含む。特定の実施形態において、Ca−Zn含有安定剤の量は3.5phrである。このようなPVC組成物は、窓用形材の製造に使用される。
【0074】
本発明に好適なCa−Zn含有安定剤は、幅広い種類の供給者から入手可能である。例えばReagens Deutschland GmbH製のスタビロックス(Stabilox)CZ 2913 GNがある。
【0075】
この代わりにもしくは加えて、安定剤は有機スズ安定剤から選択してもよい。例えばメチルスズ、逆エステルスズおよびスズメルカプチドがある。このような有機スズ安定剤は、幾つかのクラスの化合物を含む。スズメルカプチドは、ジアルキル−スズビス(イソチオグリコレート)とモノアルキル−スズトリス(イソチオグリコレート)とのブレンドを含む。
【0076】
添加してよい他の有機スズ安定剤はジアルキルスズカルボキシレートエステルを含み、これの最も一般的なものは、ジアルキルスズマレエートエステル、例えばジアルキルスズマレエートオクトエートである。
【0077】
有機スズ安定剤が熱可塑性PVC樹脂に添加される場合、前記有機スズ安定剤は、好ましくは0.5phrから約2phrの量で添加される。
【0078】
加えてまたはこの代わりに、必要ならばさらなる添加剤、例えば潤滑剤、ステアリン酸カルシウムおよび/またはチタンジオキシドなどの顔料を添加してよい。このようなさらなる添加剤は好ましくは、本発明の鉱物材料を含む熱可塑性PVC樹脂組成物中に少なくとも0.1phrの量で、好ましくは約0.01phrから約9phrの量で、好ましくは約0.5phrから約5phrの量で存在する。
【0079】
本発明での使用に好適な潤滑剤、ステアリン酸カルシウムおよび/またはチタンジオキシド、例えばチリン(Tyrin)7000、パラロイドKM366、Durastrenght 340、Realube AIS、Realube 3010、クロノスCL2220、ティオナ(Tiona)168は、多様な供給者、例えばBaerlocher、Chemson、イカ、Reagens、Akdeniz Kimya、クロノス、デュポン、ハンツマンおよび他の多くから入手できる。有用な潤滑剤、内部ならびに外部潤滑剤は当分野で公知であり、表1から選択できる。
【0080】
表1の内容は、単に例証するためのものであり、これらの潤滑剤を限定するとして解釈されないものとする。
【0081】
【表1】
【0082】
ここで本発明を実施例および図面によってさらに説明するが、実施例および図面は本発明の範囲を限定しないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1a】従来技術の方法によって得た未処理CaCOのSEM写真を示す。乾燥後および脱凝集前に、大型の凝集体がなお存在するため、最終生成物ではCaCOの分散があまり均一ではない。
図1b】本発明の方法によって得た未処理CaCOのSEM写真を示す。乾燥後および脱凝集前に、凝集体はほとんど存在しないため、最終生成物ではCaCOの良好な分散能力が促進される。
図2a】従来技術の2個のCaCO3マスターバッチが、CaCO3濃度が全ポリマーの20重量%の本発明のマスターバッチと比較されている、表7によるインフレーションフィルム試料の写真を示す。
図2b】従来技術のCaCO3マスターバッチが、CaCO3濃度が全ポリマーの10重量%の本発明のマスターバッチと比較されている、表7によるインフレーションフィルム試料の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0084】
測定方法
別途指摘しない限り、本発明で挙げるパラメータは後述する測定方法に従って測定する。
【0085】
重量中央粒径d50
本発明を通じて、d50は重量による重量中央粒径であり、粒子の50重量%がより粗くまたはより細かくなるような様式で粒子を表している。
【0086】
重量中央粒径は沈降法によって測定した。沈降法は重量測定分野における沈降挙動の分析である。測定は、Micromeritics Instrument Corporation製のSedigraph(商標)5100を用いて行う。方法および機器は当業者に公知であり、充填剤および顔料の粒径を日常的に決定するためによく使用されている。測定は0.1重量%Na4P2O7水溶液中で行う。高速撹拌機および超音波を使用して試料を分散させた。
【0087】
比表面積(BET)
比表面積は、ISO 9277に従って窒素およびBET法を使用して測定した。
【0088】
シャルピー衝撃強さ
シャルピーノッチ付き衝撃強さは、縦方向の押出物から切り出したVノッチ押出試料に対して、179−1:2000に従い、条件1fCおよび1eAによって測定した。測定条件:23℃±2℃および50%±10%相対湿度。試験片は、ISO 3167 Typ Aに記載されているように押出によって作製した。
【0089】
含水率
無機鉱物材料中の含水率は、熱重量分析(TGA)によって決定する。TGA分析方法によって、質量の損失に関する情報が高い精度で提供されるが、TGA分析方法は周知であり、「Principles of Instrumental analysis」,fifth edition,Skoog,Holler,Nieman,1998(first Ed.1992)in Chapter 31,pages 798−800および当業者に公知の他の多くの一般に公知の参考文献に記載されている。本発明において、熱重量分析は、Mettler Toledo TGA 851を使用して、500mg±50mgの試料に基づいて、105℃から400℃の走査温度で、70ml/分の気流中20℃/分の速度にて行った。
【0090】
PVCのK値:PVC溶液の粘度の測定値に基づくPVCの分子量の尺度。K値は通例、35から80の範囲に及ぶ。低いK値は分子量が低いことを示し(加工が容易であるが、特性が劣っている。)、高いK値は分子量が高いことを示す(加工が難しいが、優れた特性を有する。)。概して、特定のPVC樹脂のK値は、樹脂製造者によって、パッケージまたは添付技術データシートのどちらかによって提供されている。
【0091】
Brookfield(商標)粘度
混合物の粘度は、No.5スピンドルを備えたBrookfield(商標)(モデルDV−II+)粘度計を使用して、30℃にて10rpmおよび100rpmで測定した。
【0092】
表面光沢
表面光沢は、ISO 2813:1994に従って、Byk Spectro Guide Sphere Glossを使用して、平面から60°の角度にて測定した。光沢値は、n回の測定の平均値を計算することによって決定する。現在の構成では、n=10である。
【0093】
試験1:試料の作製および試験(剛性PVC)
【0094】
【表2】
【0095】
試験2における比較例の構成要素C1、C1’、C2ならびに本発明の実施例E1およびE2は、当業者に公知の通例の熱間/冷間混合方法を使用して先に混合し、Krauss−Maffei可塑化ユニットL/D 32を装備したGottfert押出ラインにて、スクリュー直径がそれぞれ30mmの異方向回転平行二軸押出機によって押出を行った。
【0096】
試験2:試料の作製および試験
【0097】
【表3】
【0098】
試験1における比較例の構成要素C1、C1’、C2ならびに本発明の実施例E1およびE2は、当業者に公知の通例の熱間/冷間混合方法を使用して先に混合し、Krauss−Maffei KMD 2−90形材押出ラインL/D 22にて、スクリュー直径がそれぞれ90mmの異方向回転平行二軸押出機によって押出を行った。
【0099】
比較例C1、C1’およびC2のCaCOは、以下の特徴を有する従来技術のCaCOである。CaCOは天然起源である。BET表面積は7.9m/gであり、平均粒径d50は0.94μmである。CaCOは、当業者に公知であり、US5,533,678またはUS5,873,935に記載されているような粉砕法に従って、湿式粉砕工程中に分散剤を使用して調製し、50重量%/50重量%の量のC18/C16の工業用脂肪酸混合物を1重量%用いて処理した。このような工業用脂肪酸混合物は、これのC18/C16量を約30重量%−70重量%/70重量%−30重量%まで、ならびにこれの炭素鎖長をC14からC20までを変化させることができる。
【0100】
本発明の実施例E1およびE2のCaCOは、本発明の方法に従って、ゆえに湿式粉砕中に関連する加工助剤を用いずに調製して、乾燥後に50重量%/50重量%の量のC18/C16の工業用脂肪酸混合物を1重量%用いて表面処理した。
【0101】
試験1
E1は、比較例C1と同じ量(8phr)の本発明のCaCOによってシャルピー耐衝撃性(ISO 179/1fC)を10%上昇させる。本発明のCaCOの量がより多い(16phr)E2では、押出形材のシャルピー衝撃強さ(ISO 179/1fC)は、C1またはC1’のシャルピー衝撃強さよりもなお約10%高く、CaCOが同量の16phrである比較例C2より20%も高い。本発明によって提供されるCaCO含有率が上昇するにつれトルクが低下するので、プラスの影響を及ぼす押出機のトルクにさらなる変化を見出すことができる。トルクがより低いということは第一に、エネルギー消費がより低いが、押出中のポリマーマトリクスに付与される応力も低いことを意味する。
【0102】
E1(8phr)およびE2(16phr)の60°光沢度[−]は、比較例C1(8phr)およびC2(16phr)よりも、8phrにて約35%、16phrにて約60%と、著しく改善している。さらなる光学特性、例えば白色度(L値を参照のこと)は負になるほど影響を受けず、赤色度/黄色度値(a/b値を参照のこと)は許容範囲内にとどまっているため、本発明によって与えられる全体的な利益が示されている。注目に値するのは、本発明の鉱物充填剤を含む熱可塑性PVC樹脂によって光沢度およびシャルピー衝撃強さが改善されると共に、窓用形材などの最終生成物を形成するときに必要なトルクが低下するように、加工性がより良好になることである。
【0103】
試験2
E1は、比較例C1と同じ量(8phr)の本発明のCaCOによって、シャルピー耐衝撃性(ISO 179/1eA)を約100%上昇させる。本発明のCaCOの量がより多いと(16phr)、押出形材に対するシャルピー衝撃強さ(ISO 179/1eA)は、C1、C1’およびC2のシャルピー衝撃強さよりもなお100%以上高い。本発明によって提供されるCaCO含有率が上昇するにつれトルクが低下するので、プラスの影響を及ぼす押出機のトルクにさらなる変化を見出すことができる。トルクがより低いということは第一に、エネルギー消費がより低いが、押出中のポリマーマトリクスに付与される応力も低いことを意味する。最終的な光学特性、例えば光沢度および黄色度は許容範囲内であるため、本発明によって与えられる全体的な利益が示され、注目に値するのは、物理的特性および光学特性に負の影響を及ぼすことなく、PVCポリマーの少なくとも8phrが充填剤によって置換されることである。
【0104】
E1(8phr)およびE2(16phr)の60°光沢度[−]は、比較例C1(8phr)およびC2(16phr)よりも、8phrにて約30%、16phrにて約10%と、著しく改善している。さらなる光学特性、例えば白色度(L値を参照のこと)は負になるほど影響を受けず、赤色度/黄色度値(a/b値を参照のこと)は許容範囲内にとどまっているため、本発明によって与えられる全体的な利益が示されている。注目に値するのは、本発明の鉱物充填剤を含む熱可塑性PVC樹脂によって光沢度およびシャルピー衝撃強さが改善されると共に、窓用形材などの最終生成物を形成するときに必要なトルクが低下するように、加工性がより良好になることである。
【0105】
本発明の鉱物材料を、1phrから20phrの、好ましくは約5phrから約19phrの、なおさらに好ましくは約6phrから約18phrの、およびなおさらに好ましくは約7phrから約17phrの量で含み、さらに添加剤、例えば安定剤、衝撃改質剤、潤滑剤、加工助剤、顔料およびこれの組合せを先に記載した量で含む熱可塑性PVC樹脂組成物を含む熱可塑性PVCポリマー生成物は、ISO 179/1eAに従って押出試料で測定した80kJ/mから150kJ/mの、好ましくは100kJ/mから140kJ/mの23℃におけるシャルピー衝撃強さを有する。
【0106】
本発明の鉱物材料を、1phrから20phrの、好ましくは約5phrから約19phrの、なおさらに好ましくは約6phrから約18phrの、およびなおさらに好ましくは約7phrから約17phrの量で含み、さらに添加剤、例えば安定剤、衝撃改質剤、潤滑剤、加工助剤、顔料およびこれの組合せを先に記載した量で含む熱可塑性PVC樹脂組成物を含む熱可塑性PVCポリマー生成物は、ISO 179/1fCに従って押出試料で測定した50kJ/mから80kJ/mの、好ましくは50kJ/mから70kJ/mの23℃におけるシャルピー衝撃強さを有する。
【0107】
「シャルピー衝撃強さ」という用語は、本発明の意味の範囲内で、曲げ衝撃下で試験片を破壊するために必要な単位面積当たりの運動エネルギーを指す。試験片は単純支持ばりとして保持され、振子によって衝撃を受ける。振子によるエネルギー損失は、試験片によって吸収されたエネルギーと等しくなる。
【0108】
本発明による鉱物質を含むさらなる実施形態をここで示す。
【0109】
不飽和ポリエステル樹脂での使用
本発明の鉱物材料は、圧縮成形で主に使用する成形繊維強化ポリエステル材料である、シート・モールディング・コンパウンド(SMC)またはバルク・モールディング・コンパウンド(BMC)を提供するために、不飽和ポリエステル樹脂に加工される。SMCの製造には、概して2つのステップが必要である。第1のステップは熱硬化性樹脂を提供することより成り、第2のステップ(変換操作)はSMC圧縮として公知であり、熱間プレス成形である。前記変換操作の間に、温度の上昇と機械的圧力との組合せが作用して、金型にSMCが充填され、熱硬化性樹脂が架橋される。
【0110】
長さ2から3cm、直径約100μmのチョップドガラス繊維を含む不飽和ポリエステル樹脂を本発明の鉱物材料と混合すると、シート状延性非粘着性SMCが得られる。充填熱硬化性樹脂の品質は主に、組成物のレオロジーに強く影響を受ける、ガラス繊維と充填不飽和ポリエステル樹脂との接触に依存し、従って本発明の鉱物充填剤の良好な分散能力に依存している。
【0111】
本発明による前記鉱物材料は、好ましくは約0.1μmから約1.5μmの、好ましくは約0.4μmから約1.1μmの、より好ましくは約0.6μmから約0.9μmの、最も好ましくは0.8μmの中央粒径を有する未処理CaCOであり、BET/N比表面積は該未処理鉱物材料で測定され、3m/gから13m/gの、好ましくは6m/gから10m/gの、より好ましくは7m/gから8m/gの量である。
【0112】
本発明による鉱物材料は、6μm以下の、例えば約5.9μmから約1.8μmの、好ましくは約5μmから約1.8μmの、より好ましくは約4μmから約2.5μmのトップカットd98を有する。
【0113】
本発明によるCaCOの使用量は、約10重量%から約75重量%、好ましくは約15重量%から約60重量%、より好ましくは約20重量%から約50重量%である。ガラス繊維の量は、約5重量%から約45重量%、好ましくは約10重量%から約40重量%、より好ましくは約15重量%から約35重量%含まれる。不飽和ポリエステル樹脂は、約5重量%から約35重量%、好ましくは約10重量%から約30重量%、より好ましくは約10重量%から約20重量%に達する。
【0114】
SMCは、他の化合物、例えば収縮を防止するための添加剤、難燃剤、架橋促進剤、例えば過酸化物、着色料、顔料、導電性材料およびその他多数を通常の量でさらに含んでよい。
【0115】
一実施形態により、不飽和ポリエステル樹脂75kg(Palapreg P18−03、DSM製)、低収縮添加剤50kg(Parapleg H 852−03、DSM製)および本発明による未処理CaCO 250kgを混合し、該CaCOは1.5μmの平均粒径d50および6μmのトップカットd98および3.8m/gのBET比表面積を有していた。該配合物のBrookfield(商標)粘度を2時間後、30℃にて10rpm(回転/分)および100rpmでNo.5スピンドルを使用して測定し、表3にまとめる。
【0116】
【表4】
【0117】
本発明のCaCOを含む充填不飽和ポリエステル樹脂のBrookfield(商標)粘度は、ペーストの非常に良好な品質を示し、結果として、不飽和ポリエステルペーストによるガラス繊維の良好な濡れ効果をもたらした。前記ガラス繊維充填不飽和ポリエステル樹脂を用いた成形後に得られたSMCおよびBMCは、高い表面品質および良好な機械特性を与えた。
【0118】
可撓性ポリウレタンフォームでの使用
本発明の鉱物材料で可撓性ポリウレタンフォームを作製した。
【0119】
ポリウレタンフォームは概して、水の存在下でポリオールをイソシアネートと反応させて可撓性ポリウレタンフォームを形成するステップを含む方法によって調製される。ポリオールとしては、例えばプロピレンオキシドまたはエチレオキシドをグリセリン、トリメチロールプロパンまたはジエチレングリコールに添加することによって得られるポリエーテルポリオールが挙げられるが、ベースとなるポリオールの種類は重要ではない。ポリオールは好ましくは10から100の、好ましくは20から80の、より好ましくは30から55のOH値を有する。
【0120】
可撓性ポリウレタンフォームにおける本発明による鉱物材料を良好に分散させるために、本発明の鉱物材料を他の成分と混合する前にポリオールマトリクス中に導入する。
【0121】
上述の方法で使用される鉱物材料は、いずれかの天然もしくは合成炭酸カルシウムまたは大理石、チョーク、ドロマイト、カルサイト、石灰石、マグネシウムヒドロキシド、タルク、石膏、チタン(IV)ジオキシドまたはこれの混合物を含む群より選択される材料を構成する炭酸カルシウムであることができる。
【0122】
本発明による前記鉱物材料は、好ましくは約0.1μmから約1.5μmの、好ましくは約0.4μmから約1.1μmの、より好ましくは約0.6μmから約0.9μmの、最も好ましくは0.8μmの中央粒径を有する未処理CaCOであり、BET/N比表面積は未処理鉱物材料で測定され、3m/gから13m/gの、好ましくは4m/gから12m/gの、より好ましくは5m/gから10m/gの、なおさらに好ましくは6m/gから9m/gの、なおさらに好ましくは7m/gから8m/gの量に達する。本発明の方法によって得た前記未処理鉱物材料は、6μm以下の、例えば約5.9μmから約1.8μmの、好ましくは約5μmから約1.8μmの、より好ましくは約4μmから約2.5μmのトップカットd98を有する。
【0123】
本発明によるCaCOの使用量は、約10重量%から約75重量%、好ましくは約15重量%から約60重量%、より好ましくは約20重量%から約45重量%である。
【0124】
一実施形態により、可撓性ポリウレタンフォームは、表4に示す成分を混合することによって調製した。
【0125】
【表5】
【0126】
可撓性ポリウレタンフォームの調製は以下の手順に従って行った:
220ml密閉式ガラス瓶中に、トルエンジイソシアネート(TDI)を最低6時間にわたって室温で保管した後に秤量した。秤量後、瓶を閉め、室温にて保管した。
【0127】
800mlポリエチレン瓶中に、以下の成分、界面活性剤、ポリオール、水、アミン触媒、スズベース触媒を記載順に秤量した。これらの試薬はすべて、取扱う少なくとも6時間前に室温にて保管したことに留意されたい。
【0128】
高剪断ディスクを装備したGRENIER−CHARVETミキサを用いてポリエチレン瓶を撹拌した。撹拌は渦が生じるのに十分な速度で行った。
【0129】
ガラス瓶中で先に調製したTDIを次にポリエチレン瓶中にすべて空けて、同時にストップウォッチを作動させた(t=実験の0)。反応媒体を20秒間激しく混合した後、ポリエチレン瓶の中身を正方形(辺20cm)の形の紙箱中に速やかに、また完全に加えた。膨張開始のクリームタイムと、可撓性ポリウレタンフォームの膨張終了時に対応するライズタイムとを測定した。
【0130】
立ち上り終了時に、このように調製したポリウレタンフォーム試料を100℃の通風式オーブンに15分間導入した。硬化終了時に、ポリウレタンフォーム試料を少なくとも24時間保管してから、各種の物理化学および機械特性を測定するために切断した。表5に示す値は、可撓性ポリウレタンフォーム試料5個の測定値の平均である。
【0131】
試験を行って300から500gの間のポリウレタンフォームを得た。フォームの組成物に炭酸カルシウムを導入した場合、炭酸カルシウムはポリオールの後および水の前にポリエチレン瓶に導入されている。本発明のCaCOは、組成物への導入前に、組成物で使用するポリオールの一部に分散させた。ポリオール中の炭酸カルシウムの濃度は、40から50重量%の間であった。本実施例で使用した本発明のCaCOは、平均粒径d50=1.4μm、5μmに等しいトップカットd98および5m/gに等しいBET比表面積を有していた。
【0132】
分散物(CaCO 45重量%)の粘度をBrookfield(商標)粘度計を用いて23℃に測定すると、3800mPa.sに等しかった。
【0133】
【表6】
【0134】
LLDPEマスターバッチでの使用
本発明の鉱物材料でポリオレフィンのマスターバッチを作製する。特に、処理した形の本発明の鉱物材料を直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)に配合する。LLDPEは約10重量%から約80重量%の量で存在し、本発明の処理済み鉱物材料は約90重量%から約20重量%の量で存在する。好ましくは、LLDPEは20重量%から約50重量%の量で存在し、本発明による処理済み鉱物材料は80重量%から約50重量%の量で存在する。より好ましくは、LLDPEは25重量%から約45重量%の量で存在し、本発明による処理済み鉱物材料は85重量%から約60重量%の量で存在し、最も好ましくは、マスターバッチは30重量%から40重量%のLLDPEおよび70重量%から約60重量%の本発明による処理済み鉱物材料で構成され、中央粒径d50は未処理鉱物材料で決定されたが、約0.1μmから約1.5μm、好ましくは約0.4μmから約1.1μm、より好ましくは約0.6μmから約0.9μm、最も好ましくは0.8μmの値を有し、BET/N比表面積は未処理鉱物材料で測定され、3m/gから13m/g、好ましくは6m/gから10m/g、より好ましくは7m/gから8m/gに達する。
【0135】
鉱物材料は、いずれかの天然もしくは合成炭酸カルシウムまたは大理石、チョーク、ドロマイト、カルサイト、石灰石、マグネシウムヒドロキシド、タルク、石膏、チタン(IV)ジオキシドまたはこれの混合物を含む群より選択される材料を構成する炭酸カルシウムであることができる。
【0136】
上記のようなLLDPEマスターバッチのフィルタ圧値FPVを決定するためにフィルタ圧試験を行い、従来技術の鉱物材料を含むマスターバッチのFPVと比較した。30重量%のLLDPEをキャリア樹脂として使用したマスターバッチの例を表6に示す。
【0137】
本明細書に記載するようなフィルタ圧試験によって、LLDPE中に分散した鉱物材料の本事例におけるフィルタ圧値が得られる。フィルタ圧値FPVは、フィルタ1グラム当たりの圧力の上昇として定義される。この試験は、マスターバッチ中の鉱物材料の分散品質および/または過度に粗い粒子もしくは凝集体の存在を決定するために行う。低いフィルタ圧値は分散が良好で材料が微細であることを示し、高いフィルタ圧値は分散が不良で材料が粗粒または凝集していることを示す。
【0138】
フィルタ圧試験は市販のCollin Pressure Filter Test,Teach−Line FT−E20T−ISで、標準EN 13900−5に従って行った。使用したフィルタタイプは14μmおよび25μmであり、押出を200℃にて行った。
【0139】
試験を行ったマスターバッチは、密度が0.919g/cm、190℃におけるMFR2.16が6.0g/10分の、Dow製のLLDPE(Dowlex 2035 G)30重量%および従来技術による処理済みCaCOまたは本発明の方法に従って作製した処理済みCaCO 70重量%で構成されていた。
【0140】
【表7】
【0141】
本発明によるCaCOは、マスターバッチを作製した場合に、従来技術1から3のCaCOに勝る有益な特性を明らかに示している。孔径14μmのフィルタに対する圧力は、従来技術のCaCOによって分散が不良であるためおよび/またはCaCO粒子が粗いためにフィルタの目詰まりが起きることを示しているのに対して、本発明によるCaCOは目詰まりを起こさないため、該孔径のフィルタによって圧力が著しく蓄積されることもなく、ゆえに好都合な特性である、ポリマーマトリクス中のCaCO粒子の分散の改善が良好に示されている。
【0142】
これに加えてさらに、前記充填LLDPEマスターバッチから、当業者に公知の手段によってインフレーションフィルムを作製した。本発明によるCaCOを含む前記インフレーションフィルムの試料および従来技術のCaCOを含むインフレーションフィルムの試料を以下の表7で比較する。各種量の充填マスターバッチをさらにLLDPE(Dowlex 5056G)と混合して、これらの混合物からインフレーションフィルムを作製した。
【0143】
【表8】
【0144】
70%MB発明は、LLDPE Dowlex 2035G 30重量%および本発明によるCaCO3 70重量%の70重量%マスターバッチを示し、処理済みCaCOは0.8μmの中央粒径d50、3μmのトップカットd98および6m/gのBET比表面積を有する。
【0145】
70%MA PA1は、LLDPE Dowlex 2035 30重量%および従来技術の粉砕表面処理CaCO 70重量%の、アクリル系分散剤を含む70重量%マスターバッチを示し、該表面処理剤はステアリン酸であり、該CaCOは1.6μmの中央粒径d50および6μmのトップカットd98を有する。
【0146】
70%MA PA2は、LLDPE Dowlex 2035 30重量%および従来技術の粉砕表面処理CaCO 70重量%の、アクリル系分散剤を含む70重量%マスターバッチを示し、該表面処理剤はステアリン酸であり、該CaCOは0.8μmの中央粒径d50、5μmのトップカットd98および10m/gのBET比表面積を有する。
【0147】
表7の本発明の実施例2、3および6からわかるように、破断時引張強度ならびに落槍衝撃は著しく改善され、同時にフィルム厚は従来技術の比較例4、5および7と比べて低減された。実施例1は非充填のLLDPE Dowlex 5056Gである。
【0148】
言及したLLDPEが唯一のLLDPEというわけではなく、他のLLDPEポリマー同様に、本発明のCaCOを含むマスターバッチの製造への使用に好適であることは、本発明の範囲に含まれる。
【0149】
従って本発明のCaCOを含むマスターバッチは、インフレーションフィルムだけでなく、パイプ、管またはホースの押出に、シート押出に、次に熱形成するためのキャストフィルムおよび当業者に公知の他の加工品にも使用できる。
【0150】
PPマスターバッチでの使用
本発明による鉱物質のまた別の実施形態をここで示す。本発明の鉱物材料でポリオレフィンのマスターバッチを作製する。特に、処理された形の本発明の鉱物材料は、ポリプロピレン(PP)に配合される。PPは約10重量%から約80重量%の量で存在し、本発明の処理済み鉱物材料は約90重量%から約20重量%の量で存在する。好ましくは、PPは20重量%から約50重量%の量で存在し、本発明による処理済み鉱物材料は80重量%から約50重量%の量で存在する。より好ましくは、PPは25重量%から約45重量%の量で存在し、本発明による処理済み鉱物材料は85重量%から約60重量%の量で存在し、最も好ましくは、マスターバッチはPP 30重量%から40重量%および本発明による処理済み鉱物材料70重量%から約60重量%で構成され、中央粒径d50は未処理鉱物材料で決定されたが、約0.1μmから約1.5μm、好ましくは約0.4μmから約1.1μm、より好ましくは約0.6μmから約0.9μm、最も好ましくは0.8μmの値を有し、BET/N比表面積は未処理鉱物材料で測定され、4m/gから15m/g、好ましくは6m/gから10m/g、より好ましくは7m/gから8m/gの量に達する。
【0151】
好適なPP材料は、これに限定されるわけではないが:Total Petrochemicalsより入手可能な、25g/10分のメルト・フロー・レートを有するPPH 9099ホモポリマーポリプロピレン;Total Petrochemicalsより入手可能な、35g/10分のメルト・フロー・レートを有するPPH 10099ホモポリマーポリプロピレン;Total Petrochemicalsより入手可能な、25g/10分のメルト・フロー・レートを有するLumicene MR 2001ホモポリマーポリプロピレン;LyondellBasellから入手可能な、25g/10分のメルト・フロー・レートを有するMoplen HP462R ポリプロピレン;LyondellBasellから入手可能な、34g/10分のメルト・フロー・レートを有するMoplen HP561R ポリプロピレン;Borealisから入手可能な27g/10分のメルト・フロー・レートを有するHG455FBホモポリマーポリプロピレンを含む市販製品である。
【0152】
鉱物材料は、いずれかの天然もしくは合成炭酸カルシウムまたは大理石、チョーク、ドロマイト、カルサイト、石灰石、マグネシウムヒドロキシド、タルク、石膏、チタン(IV)ジオキシドまたはこれの混合物を含む群より選択される材料を構成する炭酸カルシウムであることができる。
【0153】
上記のようなPPマスターバッチのフィルタ圧値FPVを決定するためにフィルタ圧試験を行い、従来技術の鉱物材料を含むマスターバッチのFPVと比較した。
【0154】
本明細書に記載するようなフィルタ圧試験によって、20g/10分のMFRを有するポリプロピレンホモポリマーであるBorealis HF 136 MOを用いて試験した、分散した鉱物材料の本事例におけるフィルタ圧値が得られる。フィルタ圧値FPVは、フィルタ1グラム当たりの圧力の上昇として定義される。この試験は、マスターバッチ中の鉱物材料の分散品質および/または過度に粗い粒子もしくは凝集体の存在を決定するために行う。低いフィルタ圧値は分散が良好で材料が微細であることを示し、高いフィルタ圧値は分散が不良で材料が粗粒または凝集していることを示す。
【0155】
フィルタ圧試験は市販のCollin Pressure Filter Test,Teach−Line FT−E20T−ISで、標準EN 13900−5に従って行った。使用したフィルタタイプは14μmであり、押出を230℃にて行った。試験したマスターバッチは、25重量%の、25g/10分の230℃におけるMFR 2.16を有するPPで構成されていた。
【0156】
これに加えてさらに、前記充填PPマスターバッチを溶融押出法で使用して、当業者に公知の手段によって繊維およびフィラメントおよび連続フィラメント不織布を形成した。
【0157】
公知の技術、例えば紡糸またはステープルファイバのための連続フィラメント紡績および不織法、例えばスパンボンド製造およびメルトブロー製造により、繊維およびフィラメントは溶融ポリマーを小型オリフィスを通じて押出すことによって形成される。概して、このように形成された繊維またはフィラメントは、次に延伸または伸長されて、分子配向が誘発され、結晶性に影響を及ぼし、結果として直径が縮小され、物性が改善される。
【0158】
スパンメルトは、熱可塑性ポリマーから直接不織ウェブ(布)を製造することの総称である。スパンメルトは2つの工程(スパンレイドおよびメルトインフレーション)および両方の組合せを含む。この方法において、ポリマー細粒が溶融され、溶融したポリマーは、複数の連続ポリマーフィラメントを生成する紡糸口金アセンブリを通じて押出される。次にフィラメントは急冷および延伸され、収集されて不織ウェブを形成する。多少の残存温度によってフィラメントが相互に付着することがあるが、このような付着は結合の主な方法と見なすことはできない。結合ステップによって収集された連続フィラメントのウェブから有用な生成物を形成するために利用できる方法が幾つかあり、該結合ステップとしては、これに限定されるわけではないが、カレンダ加工、水流交絡、ニードリングおよび/または化学薬品もしくは接着剤による結合が挙げられる。スパンレイド法(スパンボンドとしても公知)は、より強度の高い不織布を与えるという利点を有する。第2の成分の同時押出は、通例、追加の特性または結合能力を与えるために、幾つかのスパンレイド法で使用されている。
【0159】
メルトインフレーションウェブ形成において、低粘度ポリマーが紡糸口金を出るときに、高速気流中に押出される。これにより溶融物が散乱され、これを固化して、分解して繊維状ウェブとする。
【0160】
当業者には、方法または異なる方法による布を組合せてある所望の特徴を持つ複合布を製造することが公知である。この例は、SMSとして最も知られている積層布を製造するために、スパンボンドおよびメルトインフレーションを組合せることであり、SMSはスパンボンド布の2枚の外層およびメルトインフレーション布の内層を表すものである。加えて、これらの方法のどちらかまたは両方を、ステープル・ファイバ・カーディング法または不織ステープル・ファイバ・カーディング法から得た接着布と、いずれの構成においても組合せてよい。記載したこのような積層布において、層は概して、上に挙げた結合ステップの1つによって、少なくとも部分的に固化される。
【0161】
ポリプロピレンポリマー樹脂のスパンボンド布を製造するための方法は、当分野において周知であり、市販されている。2つの代表的な方法は、Lurgi法およびReifenhauser法として公知である。
【0162】
Lurgi法は、紡糸口金オリフィスを通じた溶融ポリマーの押出、これに続く新たに形成された押出フィラメントの空気による急冷、ベンチュリ管を通じた吸引による延伸に基づいている。形成の後に、フィラメントをコンベヤベルト上に分配して不織ウェブを形成する。
【0163】
Reifenhauser法は、フィラメントの急冷区域が密閉され、急冷気流が加速されているため、気流中へのフィラメントの連行がより効率的に行われるという点で、Lurgi法とは異なる。
【0164】
上記のシステムにおいて、不織布は概して、約25から40グラム/10分のメルト・フロー・インデックスを有するポリプロピレン樹脂を使用して製造する。Lurgiラインを使用してポリプロピレン不織布を製造した。押出機温度は、230℃から250℃の間である。4個のスピンビームには、溶融ポンプと、それぞれ直径0.8ミリメートルのオリフィス600個を含む紡糸口金が装備されている。押出されたフィラメントから不織布が形成される。コンベヤベルト速度を20メートル/分に調整して、水流交絡を用いて不織ウェブを接合した。水流交絡はスピンレースとしても公知であり、高圧水ジェットを用いて繊維を緩いウェブへと交絡させることにより、前記繊維間の摩擦力によってまとめた布を生成する方法である。幅100cmの最終的な接合不織ウェブは、385g/mの布重量を有する。
【0165】
本発明によるCaCOを含む前記不織布の試料および従来技術のCaCOを含む不織布の試料を以下の表8および9で比較する。各種量の充填マスターバッチをさらなるポリプロピレン(PP HF420FB、Borealis製のMFR 19g/10分(230℃、2.16kg、ISO 1133)のホモポリプロピレン)と混合して、これらの混合物から不織布を作製した。
【0166】
測定方法
別段の指示がない限り、本発明で挙げるパラメータは後述する測定方法に従って測定する。
【0167】
フィラメント試料で行った測定
タイター、即ち線密度[dtex]はEN ISO 2062に従って測定してよく、10,000m紡糸1グラムの重量に相当する。25または100メートルの試料を0.5cN/texの予張力で標準リールに巻き付け、分析用天秤で秤量する。次に10,000m紡糸長当たりのグラム数を計算する。
【0168】
靭性は、破断荷重および線密度から計算して、tex(テックス)当たりのセンチニュートン[cN/tex]で表す。試験は動力計で一定の引張速度で行い、本試験に適用可能な規格はEN ISO 5079およびASTM D 3822である。
【0169】
破断荷重および破断時伸び:破断荷重は、紡糸を破断させるために印加が必要とされる力である。これはニュートン[N]で表される。破断時伸びは、紡糸をこれの破断点まで引っ張ることによって生じた長さの増加である。これは紡糸の最初の長さのパーセンテージ[%]として表される。
【0170】
比引張強さは、靭性[cN/tex]と破断時伸び[%]の平方根の積である。
【0171】
不織試料で行った測定
単位面積当たりの布重量または質量[g/m]は、EN ISO 9864に従って測定する。
【0172】
ジオテキスタイルの引張特性は、EN ISO 10319に従って、幅200mmおよび長さ100mmの広幅ストリップを引張試験機で使用して測定する。引張強度[kN/m]および最大荷重伸び[%]は縦方向(MD)および横方向(CD)で測定する。EN ISO 10319によるエネルギー値は、引張強度(MD+CD)/2によって計算する。
【0173】
静的貫入抵抗(CBR試験)[kN]は、EN ISO 12236に従って測定する。本方法は、ジオシンセティックスに平端プランジャを押し通すために必要な力を測定することによる貫入抵抗の決定を規定している。
【0174】
【表9】
【0175】
【表10】
【0176】
70%MB発明1は、25g/10分のMFR(230℃、2.16kg、ISO 1133)を有するメタロセンホモポリプロピレンである、Total Petrochemicals製のPP Lumicene MR 2001 28重量%、加工・熱安定剤である、BASF製のIrgastab FS 301 2重量%および本発明によるCaCO 70重量%の、70重量%マスターバッチを示し、処理済みCaCOは0.8μmの中央粒径d50、3μmのトップカットd98および6m/gのBET比表面積を有する。
【0177】
70%MB発明2は、MFR 19g/10分(230℃、2.16kg、ISO 1133)を有するホモプロピレンである、Borealis製のPP HF420FB 28重量%、加工・熱安定剤である、BASF製のIrgastab FS 301 2重量%および本発明によるCaCO 70重量%の、70重量%マスターバッチを示し、処理済みCaCOは0.8μmの中央粒径d50、3μmのトップカットd98および6m/gのBET比表面積を有する。
【0178】
70%MA PA1は、MFR 25g/10分(230℃、2.16kg、ISO 1133)を有するメタロセンホモポリプロピレンである、Total Petrochemicals製のPP Lumicene MR 2001 28重量%、加工・熱安定剤である、BASF製のIrgastab FS 301 2重量%および従来技術の湿式粉砕表面処理CaCO 70重量%の、70重量%マスターバッチを示し、CaCOは1.7μmの中央粒径d50および6μmのトップカットd98を有する。
【0179】
70%MA PA2は、MFR 25g/10分(230℃、2.16kg、ISO 1133)を有するメタロセンホモポリプロピレンである、Total Petrochemicals製のPP Lumicene MR 2001 28重量%、加工・熱安定剤であるBASF製のIrgastab FS 301 2重量%および従来技術の湿式粉砕表面処理CaCO 70重量%の、70重量%マスターバッチを示し、CaCOは1.7μmの中央粒径d50および6μmのトップカットd98を有する。
【0180】
表8の本発明の実施例2からわかるように、引張特性、とりわけ靭性および比引張強さは、比較例3および5と比べて著しく改善している。表9の本発明の実施例2および4は、比較例5と比べて同じ改善を示している。実施例1は、非充填ポリプロピレンPP HF420FBである。
【0181】
言及したポリプロピレンが唯一のポリプロピレンというわけではなく、他のPPポリマーもしくはPEポリマーまたはPPおよびPEポリマーのミックスが好適であると共に、本発明のCaCOを含むマスターバッチの製造に使用されることは、本発明の範囲に含まれる。
【0182】
本発明によるCaCOを含むポリプロピレンマスターバッチは、モノフィラメント、テープ、マルチフィラメントの製造に使用できる。このようなフィラメントは、スパンボンド(spundbond)またはメルトインフレーションのどちらかであることが可能であり、下に挙げるような不織物をただちに作製することができる。
【0183】
衛生用品(乳児用紙おむつ、女性用衛生用品、成人失禁用、介護用パッド
拭き取り用品(医療用拭き取り用品、工業用拭き取り用品、家庭用拭き取り用品)
農業用織物(作物保護、キャピラリーマット、温室用遮光材、根用、管理用および種子用ブランケット)
ジオテキスタイル(道路/鉄道建設、ダム/水路ライニング、下水ライニング、土壌安定化、排水施設、ゴルフ場/運動場表面、屋根材、断熱材)
医療用(フェイスマスク、ヘッドウェア、靴カバー、使い捨て衣服、創傷包帯、滅菌補助用具)
濾過(空気フィルタ、液体フィルタ、ティーバッグ、コーヒーフィルタ)
技術用(ケーブルラッピング、フロッピー(登録商標)・ディスク・ライナー)
自動車(ヘッドライナー、断熱ドアパネル、空気フィルタ、バッテリセパレータ、フロア被覆材)
室内装飾材料(人工皮革)
家庭用(壁被覆材、テーブル装飾材、フロア被覆材)
【0184】
コンクリートでの使用
表10は、従来技術の充填剤と比べた標準コンクリート混合物中の各種の量での本発明の鉱物材料の使用を示す。
【0185】
【表11】
【0186】
詳細な実施形態において、本発明のCaCOは、0.8μmの中央粒径d50、3μmのトップカットd98および6m/gのBET表面積を有する未処理天然粉砕CaCOであり、EN 196−1規格で定義されているような標準砂SAN099、セメントCEM I 42.5N(CEM099)と、各種量のCaCO充填剤と混合したが、CaCO充填剤の0重量%、10重量%および15重量%はセメント結合剤の重量に基づいている。コンクリート混合物は、同じ作業性を得るのに適した量の水をさらに含んでいた。本実施例は、添加剤をさらに用いずに調製した。コンクリート混合物は、986mlの同一体積を有する。前記体積は:[砂質量]/[砂密度]+[セメント質量]/[セメント密度]+[水体積]として計算する。
【0187】
もちろん、当分野で周知の他の添加剤を、本発明の範囲を逸脱することなく、コンクリートミックスに添加することができる。例えば水還元剤、遅延剤、加速剤、超可塑剤、腐食阻害剤、顔料、界面活性剤、空気連行剤および当業者に周知の他の添加剤を添加することができる。
【0188】
表10によるコンクリート混合物を調製する方法および結果の評価は、同一出願人の米国特許出願公開US2012/0227632の記載に従って行う。
【0189】
PA1は、1.4μmの中央粒径d50、5μmのトップカットd98および5.5m/gのBET表面積を有する従来技術の未処理天然粉砕CaCOを示す。
【0190】
IN1は、本発明の未処理天然粉砕CaCO3を示し、該CaCO3は0.8μmの中央粒径d50、3μmのトップカットd98および6m/gのBET表面積を有する。
【0191】
Refは、CaCOを全く含まないコンクリート混合物基準を示す。
【0192】
Rcは、同一出願人のUS2012/0227632に記載した方法およびEN 196−1に従って実施した、コンクリート試料の24時間および28日間の養生後の圧縮強度測定値としても公知の、圧縮抵抗を示す。本発明のCaCOでは、従来技術と比べた安定性は24時間後に、充填剤10重量%では約25%、充填剤15重量%では約270%上昇した。28日後、安定性は、従来技術の充填剤と比べて、充填剤10重量%では約50%、充填剤15重量%では約100%上昇した。
図1a
図1b
図2a
図2b