特許第6138220号(P6138220)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6138220連結エレベータカゴ及びそれを使用したエレベータシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6138220
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】連結エレベータカゴ及びそれを使用したエレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/02 20060101AFI20170522BHJP
   B66B 9/10 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   B66B11/02 T
   B66B9/10
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-233855(P2015-233855)
(22)【出願日】2015年11月30日
【審査請求日】2016年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】592040826
【氏名又は名称】住友不動産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108327
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】和泉沢 忠晴
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】土屋 直人
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−052888(JP,A)
【文献】 米国特許第01946982(US,A)
【文献】 特開2007−022669(JP,A)
【文献】 特開平03−147691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/02
B66B 9/00− 9/193
B66B 1/00− 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3台以上の複数のエレベータカゴが上下それぞれ一つの連続した部材の連結バーに回転可能に固定してあり、上連結バーは、各エレベータカゴの上部の角に固定されており、下連結バーは上部連結バーが固定されている対角位置に回転可能に固定してあり、いずれか一方の端部に位置するエレベータカゴの背面にエレベータカゴの姿勢を規制するためのガイド体が設けてあり、連結バーの角度に関わらず各エレベータカゴを水平状態に維持することが可能である連結エレベータカゴ。
【請求項2】
請求項1記載の連結エレベータカゴを運行するエレベータシステムであって、縦列状態の連結エレベータカゴが上昇下降する空間が並列してあり、この2つの空間には連結エレベータカゴの背面に設けたガイド体を収容するガイドレールが設置してあり、連結エレベータカゴが横列状態となる乗込階の下側に前記2つの空間に連絡し、連結エレベータカゴの列の方向を縦または横に移行するための移行空間が設けてあり、2つの空間の上部には連絡路が設けてあり、連結エレベータカゴを昇降及び縦横に移行させるエンドレスの駆動体が設けてあり、移行空間には、縦列の連結エレベータカゴを横列に移行させるための駆動装置が設けてあるエレベータシステム。
【請求項3】
請求項1記載の連結エレベータカゴを運行するエレベータシステムであって、縦列状態の連結エレベータカゴが上昇下降する空間、この空間には連結エレベータカゴの背面に設けたガイド体を収容するガイドレールが設置してあり、エレベータカゴが上昇下降する空間の基部の連結エレベータカゴが横列状態となる乗込階の下側に連結エレベータカゴの列の方向を縦または横に移行するための移行空間が設けてあり、連結エレベータカゴを昇降及び縦列、または横列に移行させる駆動装置が設けてあるエレベータシステム。
【請求項4】
請求項1記載の連結エレベータカゴを運行するエレベータシステムであって、縦列状態の連結エレベータカゴが上昇下降する2つの空間が並列してあり、この2つの空間には連結エレベータカゴの背面に設けたガイド体を収容するガイドレールが設置してあり、連結エレベータカゴが横列状態となる乗込階の下側に連結エレベータカゴの列の方向を縦または横に移行するための移行空間が設けてあり、連結エレベータカゴを昇降及び縦横に移行させる駆動装置が設けてあり、一方の連結エレベータカゴが乗込階において横列で停止しているとき、他方の連結エレベータカゴは縦列で最上階で停止するエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のエレベータカゴを連結して同時に複数のエレベータカゴを上昇、下降させる連結エレベータカゴ及び連結エレベータカゴを使用したエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
高層大型ビルのエレベータシステムでは、目的の階に到達するのに要する時間を短縮するため、行き先階を低層、中層、高層などのいくつかにバンク分けすることがおこなわれている。そのため、多数のエレベータシャフトが必要となり、平面計画においてエレベータシャフトが占める面積が大きくなり、工事費もかさむものとなっていた。
従来のエレベータシステムでは、1つのエレベータシャフトに1台のエレベータカゴが昇降して利用者を目的階に運ぶものであり、輸送能力が限られていた。輸送能力をあげるものとして、図8に例示するエレベータのカゴを上下に連結したダブルデッキエレベータが知られており、1台分の平面面積の輸送能力は通常のエレベータに比較して概略2倍が見込まれ、スペース効率や運転効率の両面で大きな力を発揮するものと期待されている。
しかし、2つのエレベータカゴが常に上下の位置関係であるため、乗降場所が上下2階に分かれており、目的階に到達するためには、乗ろうとするエレベータカゴが目的階で停止するかを確認する必要があり、また、乗り場階に停止しているエレベータカゴが目的の階に停止しない場合、階を移動しなければならず不便であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−262479号公報
【特許文献2】特許第2732722号公報
【特許文献3】特許第5646047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダブルデッキエレベータシステムでは、乗降階が上下2階に分かれることから、目的の階の乗り場を間違えると、別の乗り場階に移動しなければならずエレベータに乗り込むのに余計な時間を消費することになる。
そこで、本発明は、複数のエレベータカゴが連結されて同時に運転されるものでありながら、ビルのエントランスなどの乗込階においては、エレベータカゴが横一列に整列できるようにし、同じ乗り場階から乗降することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
複数のエレベータカゴが一列に並べてあり、各エレベータカゴは、上下の連結バーに回転可能に固定してあり、上連結バーは、各エレベータカゴの上部の角に固定されており、下連結バーは上部連結バーが固定されている対角位置に回転可能に固定してあり、連結バーの角度に関わらず各エレベータカゴを水平状態に維持することが可能である連結エレベータカゴである。
【0006】
前記の連結エレベータカゴが走行するエレベータシステムであって、縦列状態の連結エレベータカゴが上昇下降する空間、この空間には連結エレベータカゴの背面に設けたガイド体を収容するガイドレールが設置してあり、連結エレベータカゴが横列状態となる乗込階の下側に連結エレベータカゴの列の方向を縦または横に移行するための移行空間が設けてあり、連結エレベータカゴを昇降及び縦横に移行させる駆動装置が設けてある連結エレベータカゴを運行するエレベータシステムである。
また、同様に、縦列状態の連結エレベータカゴが上昇下降する2つの空間、この2つの空間には連結エレベータカゴの背面に設けたガイド体を収容するガイドレールが設置してあり、連結エレベータカゴが横列状態となる乗込階の下側に連結エレベータカゴの列の方向を縦または横に移行するための移行空間が設けてあり、連結エレベータカゴを昇降及び縦横に移行させる駆動装置が設けてあり、一方の連結エレベータカゴが乗込階において横で停止しているとき、他方の連結エレベータカゴは縦列で最上階で停止するように連結エレベータカゴを運行するエレベータシステムである。
【発明の効果】
【0007】
ビルのエントランス等のエレベータへの乗込階においては、連結エレベータカゴであるのでエレベータカゴを水平状態で横一列に並べることができ、利用者は、一つのエレベータホールから複数の目的階のエレベータカゴに乗込むことが可能であり、また、乗込階において複数の行き先階へのエレベータカゴを選択することができ、公知のダブルデッキエレベータシステムに比較して利用者のストレスを減少させることができるとともに、利用者を効率よく目的階に搬送することができ、待ち時間が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の連結エレベータカゴの基本概念図。
図2】連結エレベータカゴの姿勢維持装置の一例を示す平面図及び側面図。
図3】連結エレベータカゴの姿勢維持装置の他の例を示す平面図及び側面図。
図4】連結エレベータカゴを使用したエンドレス駆動体を使用したエレベータシステムの一例を示す概念図。
図5】連結エレベータカゴを横列から縦列に移行させるエレベータシステムの他の例の概念図。
図6】連結エレベータカゴを横列から縦列に移行させるエレベータシステムの他の例の概念図。
図7】2つの連結エレベータカゴを運行させるエレベータシステムの概念図。
図8】公知のダブルデッキエレベータの概念図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示すように、連結エレベータカゴ10は、複数のエレベータカゴ1(A1・・・A5)を間隔を空けて並列させ、各エレベータカゴA1・・・A5を上下の連結バー21、22で連結したものである。各エレベータカゴA1・・・A5は、上下の連結バー21、22にピン3等で回転可能に取り付けられている。
図1(1)は、エレベータカゴA1・・・A5が横一列の状態であり、建物のエントランス階などの乗込階Fにおいてはこの横一列の状態で利用者が行き先階に応じてエレベータカゴA1・・・A5に同時に乗込み可能である。
【0010】
各エレベータカゴA1・・・A5の左上角が、上連結バー21にピン3等で回転可能に取り付けてあり、左上角の対角位置のエレベータカゴA1・・・A5の右下角が下連結バー22に同様に回転可能に取り付けてある。この上下の連結バー21、22は、エレベータカゴA1・・・A5の表側もしくは裏側のどちらかに設ける。上下の連結バー21、22をエレベータカゴの表裏両面に設けることによって上下の連結バー21、22が傾斜した状態などにおいてエレベータカゴゴA1・・・A5の安定性を高めることができる。
【0011】
連結エレベータカゴ10は、図1(1)の横一列の状態で、両端のエレベータカゴA1、A5がロープや駆動ベルト等で吊り下げられて保持されている。この連結エレベータカゴ10を上昇、下降させるためには縦一列に連結エレベータカゴの配列を移行させる必要がある。連結エレベータカゴ10の横一列と縦一列の中間状態を図1(2)に示す。右端のエレベータカゴA1が鉛直上方向に引き上げられて上昇し、その他のエレベータカゴA2・・・A5は連結バー21、22によってエレベータカゴA1の上下連結バー21、22の固定点3を軸として回転し、上下連結バー21、22が斜めとなるが、エレベータカゴA2・・・A5の水平は維持される。
図1(3)に示すように、上下の連結バー21、22が90度回転すると、連結エレベータカゴ10は、各エレベータカゴA1・・・A5が縦一列に配列された状態となる。
【0012】
エレベータカゴA1・・・A5が横一列から縦一列に移行する過程において、各エレベータカゴA1・・・A5はそれぞれのカゴの対角位置において上下の連結バー21、22に回転可能に取り付けてあり、上下の連結バー21、22が傾斜した状態であっても、右端のエレベータカゴが水平に維持されていれば、その他のエレベータカゴも水平に維持されることになる。
【0013】
連結エレベータカゴ10の各エレベータカゴA1・・・A5は、図2に示すように従来のエレベータカゴと同様に箱体であり、端部のエレベータカゴA1の背面中央には、エレベータカゴA1を水平に維持するための鉛直に延びるガイド部材11が固定してある。このガイド部材11の断面は矩形、円形、または楕円形でもよく、断面形状は限定されない。このガイド部材11はエレベータが上下動する空間4の壁面42に設けられたガイド部材11の断面と同じ空間を有するガイドレール5に嵌合され、エレベータカゴA1の姿勢はガイドレール5によって規制された状態で上昇、下降する。ガイド部材11が設けられた端部のエレベータカゴA1は、その姿勢が規制されるので傾斜することなく常にエレベータカゴA1の床面が水平状態に維持され、上下の連結バー21、22で相互に連結されている他のエレベータカゴA2〜A5も同様に水平に維持される。
【0014】
図3に示す他のエレベータカゴ姿勢維持装置は、エレベータカゴ1の背面側の上部の両側にガイド部材11が設けてあり、このガイド部材11を収容可能な平行なガイドレール5、5が空間4の壁面42に固定してある。2つのガイド部材11がガイドレール5に嵌合させてあり、エレベータカゴ1は水平に維持されているので、エレベータカゴA1は水平に維持され、上下の連結バー21、22で連結一体化されている他のエレベータカゴA2・・・A5も同様に水平に維持される。
【0015】
ガイド部材11とガイドレール5の接触面に摩擦力が発生し、連結エレベータカゴ10の円滑な移動を妨げる恐れがあるので、摩擦力を減少させるためにガイド部材11を低摩擦係数の材料とするか、または、低摩擦係数の材料の被覆を設けるなどする。
ガイドレール5またはガイド部材11にローラー(図示しない)を設置し、ガイド部材11に作用する摩擦力を軽減することも可能である。
【0016】
連結エレベータカゴ10を運行させるエレベータシステムについて以下に説明する。
<エレベータシステム1>
図4に示すように、エレベータカゴA1・・・A5からなる連結エレベータカゴ10が上昇、下降する平行な移動空間4A、4Bと連結エレベータカゴ10を横列から縦列に移行させる移行空間41が、乗込階Fの下側に設けてあり、移動空間4A、4Bの上部には、エンドレスの駆動体6を通すと共に、駆動体6を駆動する駆動源のモータMを設置する連絡路4Cが設けてある。
また、乗込階Fにおいては、連結エレベータカゴ10AのエレベータカゴA1・・・A5は、横一列となっており、利用者は希望の行き先階のエレベータカゴA1・・・A5を選択して乗込む。図で右端のエレベータカゴA1が最上階のn階に行くとすると、A2は(n−1)階に停止する。
【0017】
この連結エレベータカゴ10Aを上昇、下降させると共に横列の姿勢から縦列に移行させるための駆動源となるベルトやチェーン等からなるエンドレスの駆動体6が移動空間4A、4Bと移行空間41に設けたガイドレール5に沿って配設してあり、このエンドレスの駆動体6に駆動力を与える駆動源であるモータMは、移動空間4A、4Bの上部に設けてある連絡路4Cに設置してある。
駆動体6は連結エレベータカゴ10Aの左端のエレベータカゴA5に連結してある。駆動体6のエレベータカゴA5への連結部は、従来のエレベータシステムと異なり、上下方向のみでなく、連結エレベータカゴ10を横列から縦列に変換させる必要があるため、駆動体6がエレベータカゴに力を伝える方向(引張方向)が自在となるように回転自在としてある。
【0018】
連結エレベータカゴ10Aの移動方向をガイドするガイドレール5にはエレベータカゴA1に設けてあるガイド体(図示しない)が嵌合されており、連結エレベータカゴ10は、ガイドレール5に沿って上下動する。
駆動体6は乗込階Fの下部においては、半円形のガイドレール5A内を走行するか、間隔をあけて曲線状に配置したローラガイド(図示しない)でガイドさせるか、ガイドレール5A内には間隔をおいてプーリ(図示しない)が設置してあって駆動体6の曲線走行をガイドする。一部のプーリをテンションプーリとし、連結エレベータカゴ10が横列から縦列に移行する際に駆動体6の余剰長さを吸収させる。
【0019】
駆動体6によって連結エレベータカゴ10Aを上昇方向に引き上げると、駆動体6はエンドレスであるので、他方の連結エレベータカゴ10Bは下降を始める。
連結エレベータカゴ10Aの右端のエレベータカゴA1が最上階に達したときに、他方の連結エレベータカゴ10Bの一番下のエレベータカゴB5が乗り込み階Fで水平となる。
【0020】
連結エレベータカゴ10A、10Bの各エレベータカゴは、上下の連結バー21、22で一体化されており、駆動体6によって一体で上昇、下降するものである。乗込階Fにおける連結エレベータカゴ10Aは、横列状態であり、徐々に縦列状態に移行してゆき、縦一列となって上昇して目的階に達する。利用者は、乗込階Fで選択したエレベータカゴが到達した階においてエレベータを降りる。
横列から縦列に移行する途中においては、各エレベータカゴは、水平状態に維持された状態で利用者が不快に感じる加速度を感知しないように緩やかにおこなう。
駆動体6が循環移動するので、2つの連結エレベータカゴ10A、10Bが同時に運転され、一方が上昇するときに他方が下降するので効率的に利用者を目的に運ぶことができる。
【0021】
<エレベータシステム2>
図5(1)〜(3)に示すように、連結エレベータカゴ10が上昇、下降する移動空間4と連結エレベータカゴ10を横列から縦列に移行させる移行空間41が乗込階Fの下部に設けてある。
図5(1)は、連結エレベータカゴ10の各エレベータカゴA1〜A5が1階エレベータホールなどの乗込階Fにおいて横一列で停止している状態を示しており、利用者は、すべてのエレベータカゴA1・・・A5に同時に乗降可能である。
【0022】
右端のエレベータカゴA1には、ガイド部材11が設けてあり、このガイド部材11と壁面42に設けたガイドレール5によってエレベータカゴA1の姿勢が規制されるのでエレベータカゴA1は水平状態で上昇、下降する。
連結エレベータカゴ10を上昇、下降させるためのロープやベルトなどの駆動体61がガイド部材11に連結してあり、連結エレベータカゴ10を上昇、下降させる。駆動体61は、ロープやベルトの他にチェーンを採用することができる。
【0023】
連結エレベータカゴ10の左端のエレベータカゴA5の下部にはロープやベルトからなる駆動体62が連結具54を介して連結してある。連結具54に連結された駆動体62は、連結エレベータカゴ10が水平の状態においてはエレベータカゴA5が降下しないように図示しないドラム等に巻きまわされてドラムがロックされているので、連結エレベータカゴ10は水平に保持されている。
連結エレベータカゴ10が上昇を開始すると駆動体62のロックが解除されてエレベータカゴA5の動きに合わせてドラムから繰り出されていく。
連結エレベータカゴ10が上の階から乗込階Fに下降する際は、下降に同期させて駆動体62が引上げられて巻取りがおこなわれる。右端のエレベータカゴA1が乗込階Fに達すると、駆動体62は、左端のエレベータカゴA5が引き上げられて縦列状態の連結エレベータカゴ10は横列に変換される。
【0024】
連結エレベータカゴ10の各エレベータカゴA1・・・A5は、上下の連結バー21、22で一体化されており、駆動体61、62によって一体で上昇、下降するものである。乗込階Fにおける連結エレベータカゴ10は、横列状態であり、徐々に縦列状態に移行してゆき、縦一列となって上昇して目的階に達する。利用者は、乗込階Fで選択したエレベータカゴが到達した階においてエレベータを降りる。
横列から縦列に移行する途中においては、各エレベータカゴA1〜A5は、水平状態に維持された状態で利用者が不快に感じる加速度を感知しないように緩やかにおこなう。
【0025】
横列から縦列に、また、その逆の縦列から横列に移行させる場合、図6に示すように、右端のエレベータカゴA1を上昇させずに停止状態としておき、左端のエレベータカゴA5に連結されている駆動体62を下降させ、上下の連結バー21、22をエレベータカゴA5の固定点3を軸に回転させることによって連結エレベータカゴ10を縦列に移行させ、連結エレベータカゴ10を上昇させる駆動体61を稼働させて連結エレベータカゴ10を上昇させる運転形態とすることも可能である。
この時、駆動体62をガイドローラやプーリ等によって円形などの曲線状となるようにするのが好ましい。
【0026】
上部階から連結エレベータカゴ10が下降する場合は、縦列の連結エレベータカゴ10の最上部のエレベータカゴA1が乗込階Fに達したところで停止させ、駆動体62を作動させて左端のエレベータカゴA5を引き上げることによって横列から縦列に移行させた時とは逆に縦列状態の連結エレベータカゴ10を横列状態に移行させ、各エレベータカゴA1・・・A5の扉を開けて利用者がエレベータカゴから降りることができるようにする。
乗込階Fにおける連結エレベータカゴ10の停止状態を安定させるために、ストッパーがエレベータカゴの下側に突出するようにしてもよい。
【0027】
<エレベータシステム3>
図7に示すエレベータシステムは、2つの連結エレベータカゴ10A、10Bを交互に昇降させるものであり、連結エレベータカゴが昇降する通路空間が平行に設けてある。
一方の連結エレベータカゴ10Aが乗込階Fにおいて横列状態のとき、他方の連結エレベータカゴ10Bは、縦列状態で最上部に位置している。
横列から縦列に移行した連結エレベータカゴ10Aの上昇に同期して連結エレベータカゴ10Bが下降し、乗込階Fに到達した連結エレベータカゴ10Bを縦列から横列に移行させる。
乗込階Fにおいて連結エレベータカゴ10Aの右端に位置するエレベータカゴA5が上昇して最上階に到達するが、他方の連結エレベータカゴ10Bの右端のエレベータカゴB1は最上階には到達せず、左端のエレベータカゴB5が最上階に到達することになり、利用する連結エレベータカゴ10A、10Bのどちらが乗込階F到達しているかによって、最上階に到達するエレベータカゴが右端、または左端に変わるので、利用者にどちらの連結エレベータカゴ10A、10Bが乗込階Fに呈しているのかを利用者に自動的に伝達する手段をエレベータシステムに具備させるのが好ましい。
【符号の説明】
【0028】
1 (A1...A5、B1...B5) エレベータカゴ
10 連結エレベータカゴ
11 ガイド体
21 上部連結バー
22 下部連結バー
3 ピン(固定点)
4 エレベータカゴ昇降空間
41A エレベータカゴ昇降空間
41B エレベータカゴ昇降空間
5 ガイドレール
6、61、62 駆動体
F 乗込階
M 駆動源
【要約】
【課題】複数のエレベータカゴが連結されて同時に運転するエレベータにおいて、乗込階においては、エレベータカゴが横一列に整列され、利用者が複数の行先階を選択可能にする。
【解決手段】複数のエレベータカゴが横一列に並べてあり、各エレベータカゴA1−A5は上下の連結バー21、22に回転可能に固定してある。上連結バー21は、各エレベータカゴA1−A5の上部の角に回転可能に固定され、下連結バー22は上部連結バー21の固定位置の対角位置に固定してある。端部のエレベータカゴA1の姿勢を水平に規制すると、連結バー回転可能に取り付けてあるエレベータカゴA2−A5も水平に維持される。利用者は、乗込階Fにおいて複数の行き先階を選択することができ、ダブルデッキエレベータの不便さが解消される。また、横一列の連結エレベータカゴ10を縦一列に移行させて上昇させるので、効率よくエレベータを運行することができる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8