特許第6138233号(P6138233)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6138233クエン酸のテトラヒドロフルフリル及び/又はアルキル置換テトラヒドロフルフリルエステルを含有する組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138233
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】クエン酸のテトラヒドロフルフリル及び/又はアルキル置換テトラヒドロフルフリルエステルを含有する組成物
(51)【国際特許分類】
   C08K 5/1535 20060101AFI20170522BHJP
   C08K 5/11 20060101ALI20170522BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20170522BHJP
   C08L 1/12 20060101ALI20170522BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20170522BHJP
   C08L 33/00 20060101ALN20170522BHJP
   C08L 101/00 20060101ALN20170522BHJP
   C07D 307/12 20060101ALN20170522BHJP
【FI】
   C08K5/1535
   C08K5/11
   C08L67/00
   C08L1/12
   C08L27/06
   !C08L33/00
   !C08L101/00
   !C07D307/12
【請求項の数】2
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-503304(P2015-503304)
(86)(22)【出願日】2013年3月14日
(65)【公表番号】特表2015-518469(P2015-518469A)
(43)【公表日】2015年7月2日
(86)【国際出願番号】US2013031438
(87)【国際公開番号】WO2013148255
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年3月10日
(31)【優先権主張番号】61/618,030
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】カヴァナー, モーリーン エー.
(72)【発明者】
【氏名】レヴァンドフスキ, ケヴィン エム.
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭41−003189(JP,B1)
【文献】 特開2003−082158(JP,A)
【文献】 米国特許第06403825(US,B1)
【文献】 国際公開第2011/082052(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D307/00−307/94
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式(I):
【化1】

[式中、
基はそれぞれ、アルキル、テトラヒドロフルフリル基、又はアルキル置換テトラヒドロフルフリル基であり、少なくとも1個のRがテトラヒドロフルフリル基又はアルキル置換テトラヒドロフルフリル基であり、
は、水素又はアシル基である]
の少なくとも2種類の異なるクエン酸エステルを含む、組成物。
【請求項2】
a)式(I):
【化2】

[式中、
基はそれぞれ、アルキル、テトラヒドロフルフリル基、又はアルキル置換テトラヒドロフルフリル基であり、少なくとも1個のRがテトラヒドロフルフリル基又はアルキル置換テトラヒドロフルフリル基であり、
は、水素又はアシル基である]
の少なくとも1種類のクエン酸エステルと、
b)式(II):
【化3】

[式中、
はそれぞれアルキルであり、
は、水素又はアシル基である]
の少なくとも1種類のクエン酸エステルと、
を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2012年3月30日出願の米国特許仮出願第61/618,030号に基づく利益を主張するものであり、その開示内容の全容を本明細書に援用するものである。
【0002】
(発明の分野)
1又は2以上のクエン酸のテトラヒドロフルフリル及び/又はアルキル置換テトラヒドロフルフリルエステルを含有する組成物及び物品を提供する。
【背景技術】
【0003】
クエン酸の各種のエステルが知られており、例えば、国際特許出願公開第WO 2011/082052号(マイヤース(Myers)ら)、米国特許出願公開第2011/0046283号(グラス(Grass)ら)、並びに米国特許第4,710,532号(ハル(Hull)ら)、同第5,026,347号(パテル(Patel)、同第6,403,825号(フラッピアー(Frappier)ら)、同第5,102,926号(ロスら(Ross)ら、及び同第7,166,654号(フジタ(Fujita)ら)に述べられるように各種のポリマー材料の可塑剤として使用されている。これらのエステルは、一般的にクエン酸と石油系アルコールから調製されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
クエン酸のテトラヒドロフルフリルエステル、アルキル置換テトラヒドロフルフリルエステル、又はその両方を含む組成物が提供される。クエン酸のテトラヒドロフルフリル及び/又はアルキル置換テトラヒドロフルフリルエステルは再生可能資源から製造することが可能であり、例えば各種のポリマー材料の可塑剤として使用することができる。クエン酸のテトラヒドロフルフリル及び/又はアルキル置換テトラヒドロフルフリルエステルは一般的に低臭であり、親水性ポリマー材料などの各種のポリマー材料と高い相溶性を有し、ポリマー材料のホットメルト加工においてしばしば用いられる温度で使用することができる。
【0005】
第1の態様では、式(I)の少なくとも2種類の異なるクエン酸エステルを含有する組成物が提供される。
【0006】
【化1】
【0007】
式(I)において、R基はそれぞれ、アルキル、テトラヒドロフルフリル又はアルキル置換テトラヒドロフルフリルであり、少なくとも1個のRがテトラヒドロフルフリル又はアルキル置換テトラヒドロフルフリル基である。R基は、水素又はアシルである。
【0008】
第2の態様では、(a)式(I)の少なくとも1種類のクエン酸エステルと、
【0009】
【化2】

式(II)の少なくとも1種類のクエン酸エステルとを含有する組成物が提供される。
【0010】
【化3】
【0011】
式(I)において、R基はそれぞれ、アルキル、テトラヒドロフルフリル又はアルキル置換テトラヒドロフルフリルであり、少なくとも1個のRがテトラヒドロフルフリル又はアルキル置換テトラヒドロフルフリル基である。R基は、水素又はアシルである。式(II)において、R基はそれぞれアルキルであり、R基は水素又はアシルである。
【0012】
第3の態様では、式(III)の少なくとも1種類のクエン酸エステルを含有する組成物が提供される。
【0013】
【化4】
【0014】
式(III)において、R基はそれぞれ、テトラヒドロフルフリル又はアルキル置換テトラヒドロフルフリル基である。R基は、水素又はアシルである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
少なくとも1種類のクエン酸のテトラヒドロフルフリル及び/又はアルキル置換テトラヒドロフルフリルエステルを含む組成物が提供される。これらのクエン酸のエステルは、クエン酸をテトラヒドロフルフリルアルコール及び/又はアルキル置換テトラヒドロフルフリルアルコールと反応させることによって生成することができる。クエン酸及びアルコールはいずれも植物系材料(すなわち再生可能材料)であってよい。クエン酸のテトラヒドロフルフリル及び/又はアルキル置換テトラヒドロフルフリルエステルは、親水性でポリマー材料の可塑剤として機能しうるものなど、各種のポリマー材料と相溶性を有している。
【0016】
「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」なる語は、互換可能に使用される。
【0017】
「及び/又は」なる語は、例えば、「A及び/又はB」なる表現がAのみ、Bのみ、又はA及びBの両方を指すように、一方又は両方を意味する。
【0018】
「アルキル」なる語は、アルカンの一価のラジカルのことを指す。適当なアルキル基は、20個以下の炭素原子、16個以下の炭素原子、12個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、4個以下の炭素原子、又は3個以下の炭素原子を有するものでよい。これらのアルキル基は、直鎖状、分枝鎖状、環状、又はこれらの組み合わせであってよい。直鎖状アルキル基は、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子をしばしば有する。分子鎖状アルキル基は、3〜20個の炭素原子、3〜10個の炭素原子、又は3〜6個の炭素原子をしばしば有する。環状アルキル基は、3〜20個の炭素原子、5〜20個の炭素原子、6〜20個の炭素原子、5〜10個の炭素原子、又は6〜10個の炭素原子をしばしば有する。
【0019】
「アシル」なる語は、式−(CO)Rの一価の基を指し、式中、Rはアルキル基であり、(CO)はカルボニル基(すなわち二重結合により酸素原子と結合した炭素原子)を示す。アルキル基Rは、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子をしばしば有する。アシル基の一例として、アセチル基−(CO)CHがある。
【0020】
「テトラヒドロフルフリル基」なる語は、2−テトラヒドロフルフリル基:
【0021】
【化5】

を指すか、
3ーテトラヒドロフルフリル基:
【0022】
【化6】

を指すか、
又は2−テトラヒドロフルフリル基及び3−テトラヒドロフルフリル基の両方を指す。アスタリスク記号は、テトラヒドロフルフリル基の、クエン酸エステル化合物の残りの部分との結合部位を示す。
【0023】
「アルキル置換テトラヒドロフルフリル基」なる語は、少なくとも1個のアルキル基で置換された2−テトラヒドロフルフリル基又は3−テトラヒドロフルフリル基のいずれかのことを指す。アルキル置換基の数はしばしば1〜3個の範囲である。テトラヒドロフルフリル基の適当なアルキル置換基は、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子をしばしば有する。アルキルは、5員環の任意の適当な炭素原子に位置しうるが、しばしば4位又は5位にある。特定の実施形態では、アルキル置換基は、5−メチル−2ーテトラヒドロフルフリルにおけるようにメチルである。
【0024】
「THF基」なる語は、テトラヒドロフルフリル基、アルキル置換テトラヒドロフルフリル基、又はこの両方を指して用いられる場合がある。
【0025】
「THFクエン酸エステル」なる語は、1個、2個、又は3個のテトラヒドロフルフリル基、アルキル置換テトラヒドロフルフリル基、又はこれらの組み合わせを有するクエン酸エステルのことを指す。
【0026】
「クエン酸のアルキルエステル」なる語は、「トリ(アルキル)クエン酸エステル」なる語と互換可能に用いられ、3個のアルキル基を有するクエン酸エステルのことを指す。より詳細には、本化合物は、3個の式−(CO)ORの基を有するクエン酸エステルである(式中、Rはアルキル基である)。アルキル基は、20個以下の炭素原子、16個以下の炭素原子、12個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、4個以下の炭素原子、又は3個以下の炭素原子を有するものでよい。これらのアルキル基は、直鎖状、分枝鎖状、環状、又はこれらの組み合わせであってよい。
【0027】
「クエン酸エステル」なる語は、(a)1又は2以上のTHFクエン酸エステル、及び(b)必要に応じて存在してもよい任意のトリ(アルキル)クエン酸エステルのことを指す。
【0028】
「ポリマー材料」なる語は、任意のホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどのことを指す。
【0029】
第1の態様では、式(I)の少なくとも2種類の異なるTHFクエン酸エステルを含有する組成物が提供される。
【0030】
【化7】
【0031】
式(I)において、R基はそれぞれ、アルキル、テトラヒドロフルフリル又はアルキル置換テトラヒドロフルフリルであり、少なくとも1個のRがテトラヒドロフルフリル又はアルキル置換テトラヒドロフルフリル基である。R基は、水素又はアシルである。アルキル、テトラヒドロフルフリル、アルキル置換テトラヒドロフルフリル、及びアシル基は上記に定義したものと同様である。
【0032】
1個のTHF基(すなわちテトラヒドロフルフリル基及び/又はアルキル置換テトラヒドロフルフリル基)を有するTHFクエン酸エステルは、モノ(THF)ジ(アルキル)クエン酸エステルと呼ぶことができる。モノ(THF)ジ(アルキル)クエン酸エステルは、THF(すなわち式(I)の1個のR基がテトラヒドロフルフリル及び/又はアルキル置換テトラヒドロフルフリル基)と同等の1個のR基と、アルキルと同等の2個のR基を有する。2個のTHF基を有するTHFクエン酸エステルは、ジ(THF)モノ(アルキル)クエン酸エステルと呼ぶことができる。ジ(THF)モノ(アルキル)クエン酸エステルは、THFと同等の2個のR基とアルキルと同等の1個のR基を有する。3個のTHF基を有するTHFクエン酸エステルは、トリ(THF)クエン酸エステルと呼ぶことができる。トリ(THF)クエン酸エステルは、THFと同等の3個のR基を有する。
【0033】
この第1の態様では、組成物は、少なくとも2種類の異なるTHFクエン酸エステルを含有する。モノ(THF)ジ(アルキル)クエン酸エステルを、ジ(THF)モノ(アルキル)クエン酸エステル、トリ(THF)クエン酸エステル、又はこれら両方と組み合わせることができる。同様に、ジ(THF)モノ(アルキル)クエン酸エステルを、モノ(THF)ジ(アルキル)クエン酸エステル、トリ(THF)クエン酸エステル、又はこれら両方と組み合わせることができる。
【0034】
式(I)の少なくとも2種類の異なるTHFクエン酸エステルを有する組成物は、1〜75重量%のモノ(THF)ジ(アルキル)クエン酸エステル、1〜75重量%のジ(THF)モノ(アルキル)クエン酸エステル、及び1〜75重量%のトリ(THF)クエン酸エステルを含有しうる。式(I)の少なくとも2種類の異なるTHFクエン酸エステルを有する特定の具体的な組成物は、1〜50重量%のモノ(THF)ジ(アルキル)クエン酸エステル、10〜75重量%のジ(THF)モノ(アルキル)クエン酸エステル、及び1〜50重量%のトリ(THF)クエン酸エステルを含有する。より具体的な組成物は、10〜50重量%のモノ(THF)ジ(アルキル)クエン酸エステル、30〜70重量%のジ(THF)モノ(アルキル)クエン酸エステル、及び10〜50重量%のトリ(THF)クエン酸エステルを含有する。特定の更により具体的な組成物は、15〜35重量%のモノ(THF)ジ(アルキル)クエン酸エステル、35〜65重量%のジ(THF)モノ(アルキル)クエン酸エステル、及び15〜35重量%のトリ(THF)クエン酸エステルを含有する。重量%の値は、組成物中のクエン酸エステルの全重量(すなわち少なくとも1個のTHF基を有するクエン酸エステルと、トリ(THF)クエン酸エステルなどの存在しうる他の任意のクエン酸エステルを合わせたもの)に基づいたものである。
【0035】
第2の態様では、(a)式(I)の少なくとも1種類のTHFクエン酸エステルと、
【0036】
【化8】

式(II)の少なくとも1種類のトリ(アルキル)クエン酸エステルとを含有する組成物が提供される。
【0037】
【化9】
【0038】
式(I)において、R基はそれぞれ、アルキル、テトラヒドロフルフリル、又はアルキル置換テトラヒドロフルフリルである。少なくとも1個のR基はテトラヒドロフルフリル又はアルキル置換テトラヒドロフルフリル基である。R基は、水素又はアシルである。式(II)において、R基はそれぞれアルキルであり、R基は水素又はアシルである。アルキル、テトラヒドロフルフリル、アルキル置換テトラヒドロフルフリル、及びアシル基は上記に定義したものと同様である。
【0039】
この態様では、式(II)のトリ(アルキル)クエン酸エステルを式(I)の少なくとも1種類のTHFクエン酸エステルと組み合わせることができる。すなわち、トリ(アルキル)クエン酸エステルを、モノ(THF)ジ(アルキル)クエン酸エステル、ジ(THF)モノ(アルキル)クエン酸エステル、トリ(THF)クエン酸エステル、又はこれらの組み合わせと組み合わせることができる。
【0040】
特定の具体的な組成物は、0.5〜75重量%の式(II)のトリ(アルキル)クエン酸エステル、及び25〜99.5重量%の式(I)のTHFクエン酸エステルを含有する。特定のより具体的な組成物は、1〜60重量%のトリ(アルキル)クエン酸エステル、及び40〜99重量%のTHFクエン酸エステルを含有する。特定の更により具体的な組成物は、10〜60重量%のトリ(アルキル)クエン酸エステル及び40〜90重量%のTHFクエン酸エステル、又は10〜40重量%のトリ(アルキル)クエン酸エステル及び60〜90重量%のTHFクエン酸エステルを含有する。重量%の値は、組成物中のクエン酸エステルの全重量%に基づいたものである。
【0041】
第2の態様の特定の実施形態では、トリ(アルキル)クエン酸エステルは、トリ(THF)クエン酸エステルと混合される。特定のこうした組成物は、10〜90重量%のトリ(THF)クエン酸エステル及び10〜90重量%のトリ(アルキル)クエン酸エステルを含有する。特定のより具体的な組成物は、20〜80重量%のトリ(THF)クエン酸エステル及び20〜80重量%のトリ(アルキル)クエン酸エステルを含有する。特定のより具体的な組成物は、40〜60重量%のトリ(THF)クエン酸エステル及び40〜60重量%のトリ(アルキル)クエン酸エステルを含有する。これらの実施形態におけるTHFクエン酸エステルは主にトリ(THF)クエン酸エステルであるが、いずれの組成物も0〜10重量%のジ(THF)モノ(アルキル)クエン酸エステル、モノ(THF)ジ(アルキル)クエン酸エステル、又はこれらの組み合わせを含有しうる。重量%の値は、組成物中のクエン酸エステルの全重量%に基づいたものである。
【0042】
第2の態様の他の実施形態では、組成物は、異なるTHFクエン酸エステルの混合物を含有する。特定のこうした組成物は、0〜50重量%のトリ(THF)クエン酸エステル、1〜75重量%のジ(THF)モノ(アルキル)クエン酸エステル、5〜75重量%のモノ(THF)ジ(アルキル)クエン酸エステル、及び0.5〜75重量%のトリ(アルキル)クエン酸エステルを含有する。特定のより具体的な組成物は、1〜40重量%のトリ(THF)クエン酸エステル、5〜60重量%のジ(THF)モノ(アルキル)クエン酸エステル、10〜60重量%のモノ(THF)ジ(アルキル)クエン酸エステル、及び1〜60重量%のトリ(アルキル)クエン酸エステルを含有する。特定の更により具体的な組成物は、1〜30重量%のトリ(THF)クエン酸エステル、10〜60重量%のジ(THF)モノ(アルキル)クエン酸エステル、20〜60重量%のモノ(THF)ジ(アルキル)クエン酸エステル、及び1〜50重量%のトリ(アルキル)クエン酸エステルを含有する。更なる他の組成物は、1〜20重量%のトリ(THF)クエン酸エステル、10〜40重量%のジ(THF)モノ(アルキル)クエン酸エステル、20〜60重量%のモノ(THF)ジ(アルキル)クエン酸エステル、及び1〜40重量%のトリ(アルキル)クエン酸エステルを含有する。重量%の値は、組成物中のクエン酸エステルの全重量%に基づいたものである。
【0043】
第3の態様では、式(III)の少なくとも1種類のトリ(THF)クエン酸エステルを含有する組成物が提供される。
【0044】
【化10】
【0045】
式(III)において、R基はそれぞれ、テトラヒドロフルフリル又はアルキル置換テトラヒドロフルフリル基である。R基は、水素又はアシルである。テトラヒドロフルフリル、アルキル置換テトラヒドロフルフリル、及びアシル基は上記に定義したものと同様である。
【0046】
式(III)のトリ(THF)クエン酸エステルは単独で使用するか(例えば組成物中の唯一のクエン酸エステルとして)、又はトリ(THF)クエン酸エステルではない式(I)の1又は2以上のTHFクエン酸エステル及び/又は式(II)の1又は2以上のトリ(アルキル)クエン酸エステルと組み合わせることができる。特定の実施形態では、トリ(THF)クエン酸エステルは組成物中の唯一のクエン酸エステルである。他の実施形態では、トリ(THF)クエン酸エステルは組成物中の唯一のTHFクエン酸エステルであるが、式(II)の少なくとも1種類のトリ(アルキル)クエン酸エステルと組み合わされる。このような組成物は、10〜90重量%の式(III)のトリ(THF)クエン酸エステル及び10〜90重量%の式(II)のトリ(アルキル)クエン酸エステル、20〜80重量%の式(III)のトリ(THF)クエン酸エステル及び20〜80重量%の式(II)のトリ(アルキル)クエン酸エステル、又は40〜60重量%の式(III)のトリ(THF)クエン酸エステル及び40〜60重量%の式(II)のトリ(アルキル)クエン酸エステルを含有しうる。
【0047】
式(I)又は式(III)の各種のTHFクエン酸エステル、及び式(II)の各種のトリ(アルキル)クエン酸エステルは、強酸触媒の存在下でアルコールをクエン酸と反応させることによって調製することができる。強酸触媒としては、これらに限定されるものではないが、硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、及びこれらの混合物が挙げられる。この反応は、灌流条件下又は約80℃〜160℃の範囲の温度でしばしば行われる。ヘプタン、トルエンなどの有機溶媒がこの反応にしばしば用いられる。所望の反応生成物に応じて、アルコールはTHFアルコール(すなわちROHがテトラヒドロフルフリルアルコール、アルキル置換テトラヒドロフルフリルアルコール、又はこれらの混合物である)、アルキルアルコール(すなわち式ROHのアルコールであり、式中、Rは上記に定義したアルキルである)、又はこれらの混合物である。この反応を反応スキームAに示す。
【0048】
【化11】
【0049】
トリ(THF)クエン酸エステルは、テトラヒドロフルフリルアルコール(すなわちテトラヒドロフラン−2−メタノール若しくはテトラヒドロフラン−3−メタノール)、又はアルキル置換テトラヒドロフルフリルアルコール(例えば5−メチルーテトラヒドロフランー2−メタノール)を使用して調製することができる。トリ(THF)クエン酸エステルに完全に変換するためにはクエン酸1モル当たり3モル以上のテトラヒドロフルフリルアルコールがしばしば用いられる。
【0050】
反応スキームAの代わりに、式(I)の各種のTHFクエン酸エステルは、式(III)のトリ(アルキル)クエン酸エステルとテトラヒドロフルフリルアルコール及び/又はアルキル置換テトラヒドロフルフリルアルコールとのエステル交換反応によって調製することもできる。例えば、トリ(メチル)クエン酸エステル又はトリ(エチル)クエン酸エステルを、アルコールROH(式中、Rはテトラヒドロフルフリル又はアルキル置換フルフリルである)とエステル交換させることができる。
【0051】
トリ(アルキル)クエン酸エステルは、アルキルアルコールを用いて調製することができる。トリ(アルキル)クエン酸エステルへの完全な変換を実現するためにはクエン酸1モル当たり3モル以上のアルキルアルコールがしばしば用いられる。特定のトリ(アルキル)クエン酸エステルが、例えば、バーテラス・スペシャルティーズ社(Vertellus Specialties, Inc.)(米国、ノースカロライナ州、グリーンズボロ)よりCITROFLEXの商品名で市販されている。
【0052】
モノ(THF)ジ(アルキル)クエン酸エステル及びジ(THF)モノ(アルキル)クエン酸エステルは、THFアルコール(すなわちテトラヒドロフルフリルアルコール及び/又はアルキル置換テトラヒドロフルフリルアルコール)をアルキルアルコールと組み合わせて使用することで調製することができる。THFアルコールの量に対するアルキルアルコールの量を変えることで異なるクエン酸エステルの混合物を生成することができる。この生成物は、モノ(THF)ジ(アルキル)クエン酸エステルとジ(THF)モノ(アルキル)クエン酸エステルの混合物をしばしば含有している。更に、この生成物は、少なくとも一定量のトリ(アルキル)クエン酸エステル及び少なくとも一定量のトリ(THF)クエン酸エステルをしばしば含んでいる。
【0053】
クエン酸及びTHFアルコールはいずれも再生可能材料から生成することができる。クエン酸はしばしば、各種のカビ(例えばクロコウジカビ(アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger))によって糖から生成される。THFアルコールは五炭糖(すなわち5個の炭素原子を有する糖)から生成することができる。五炭糖は脱水によりフルフラール(すなわち2−フラルデヒド又はフルフラルデヒド)とし、フルフラールを水素化してフルフリルアルコールとすることができる。フルフリルアルコールは、ニッケル触媒により更に水素化してテトラヒドロフルフリルアルコールとすることができる。テトラヒドロフルフリルアルコールの調製法は、参考文献であるHoydonckxら、Furfural and Derivatives,Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Wiley−VCH Verlag GmbH & Co.,pp.285〜313(2012)に更に述べられている。
【0054】
各種のTHFクエン酸エステル又はトリ(アルキル)クエン酸エステルを反応スキームBに示されるように更に反応させることによってヒドロキシル基をアシルオキシ基に置換することができる。添加する反応物質は、アルキルカルボン酸(示されるようなR−(CO)OH)、アルキル無水物(R−(CO)O(CO)−R)、又はアルキル酸塩化物(R−(CO)Cl)(式中、Rはアルキルである)でよい。アルキル基は、20個以下の炭素原子、16個以下の炭素原子、12個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、4個以下の炭素原子、又は3個以下の炭素原子を有するものでよい。これらのアルキル基は、直鎖状、分枝鎖状、環状、又はこれらの組み合わせであってよい。この反応はしばしば約80℃〜120℃の範囲の温度で行われる。
【0055】
【化12】
【0056】
本組成物のいずれも、ポリマー材料を更に含むことができる。適当なポリマー材料は、1又は2以上のTHFクエン酸エステルを含む本組成物と相溶性を有する(すなわち混和する)ものが選択される。相溶性は、ポリマー材料とTHFクエン酸エステルとの混合物から調製したフィルムのヘイズ値によって測定することができる。ヘイズ値の測定に適した方法の1つを、実施例のセクションに含まれる試験方法3(全透過率、ヘイズ値、及び透明度の測定法)で述べる。低いヘイズ値(例えば5未満、4未満、3未満、2未満、又は1未満)は一般的に相溶性成分を含む混合物と関連している。
【0057】
一般的にTHFクエン酸エステルは、ポリマー材料に可溶である場合にそのポリマー材料と相溶性を有するものとみなされる。ポリマー材料とTHFクエン酸エステルとの相溶性は、ポリマー材料とTHFクエン酸エステルとの溶解度パラメータを計算することによって測定することもできる。2つの材料の溶解度パラメータの値が近いほど、これらの材料が相溶性を有する傾向が高くなる。溶解度パラメータは、ベルメアズ(Belmares)らによる論文(Belmaresら、J.Comp.Chem.,24(15),1813(2004))に述べられる、カルギ・ソフトウェア社(Culgi Software)(オランダ、ライデン)よりCULGIの商品名で市販されるソフトウェアで実行される一般的手順を用いて計算することができる。各種のTHFクエン酸エステルの溶解度パラメータは、しばしば、7〜13cal0.5/cm1.5の範囲、8〜12cal0.5/cm1.5の範囲、又は9〜12cal0.5/cm1.5の範囲である。THFクエン酸エステルとポリ乳酸などの各種の材料との溶解度パラメータは、トリ(アルキル)クエン酸エステルと同程度に一致させるか又はそれよりも高くてよい。
【0058】
THFクエン酸エステルと組み合わせるのに適したポリマー材料は一般的に親水性である。ポリマー材料の例としては、各種の脂肪族ポリエステル(例えばポリ乳酸)、セルロースエステル、ポリ塩化ビニルなどの各種の熱可塑性ポリマー、及びポリ(メチルメタクリレート)などの各種のアクリルポリマーが挙げられる。ポリマー材料の他の例としては、接着剤組成物中に含まれるもののような各種のエラストマーポリマーが挙げられる。エラストマーポリマーはしばしば、少なくとも1種類のアルキル(メタ)アクリレート、及び場合により(メタ)アクリル酸などの極性モノマーを用いて生成されるポリマーなどのアクリルポリマーである。
【0059】
脂肪族ポリエステルは、1又は2以上の脂肪族ヒドロキシカルボン酸の脱水重縮合反応によって生成することができる。ヒドロキシカルボン酸の例としては、これらに限定されるものではないが、L乳酸、D乳酸、グリコール酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシペンタン酸、3−ヒドロキシペンタン酸、5−ヒドロキシペンタン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0060】
また、脂肪族ポリエステルは、脂肪族ポリカルボン酸(すなわち2個以上のカルボン酸基を有する化合物)及び脂肪族ポリオール(すなわち2個以上のヒドロキシル基を有する化合物)を含有する混合物の脱水重縮合反応によって形成することもできる。ポリカルボン酸の例としては、これらに限定されるものではないが、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカンニ酸、ドデカンニ酸、及びこれらの無水物が挙げられる。ポリオールの例としては、これらに限定されるものではないが、エチレングリコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。適当なポリカルボン酸はしばしば2個のカルボン酸基を有するものであり、適当なポリオールはしばしば2個のヒドロキシル基を有するものである。
【0061】
脂肪族ポリエステルは、ポリ乳酸系樹脂(PLA系樹脂)でありうる。PLA系樹脂の特定の例は、L乳酸、D乳酸、又はこれらの混合物から生成することができる。PLA系樹脂の他の例は、L乳酸、D乳酸、又はこれらの混合物と少なくとも1種類の脂肪族ヒドロキシカルボン酸(乳酸以外)との組み合わせから調製することができる。更なる他のPLA系樹脂は、L乳酸、D乳酸、又はこれらの混合物から調製されるコポリマーである。ラクチドは、ヒドロキシカルボン酸などのヒドロキシル基を有する化合物の存在下で開環重合反応に供することができる乳酸の環状ダイマーである。適当なヒドロキシルカルボン酸としては、これらに限定されるものではないが、グリコール酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシペンタン酸、3−ヒドロキシペンタン酸、5−ヒドロキシペンタン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、又はこれらの混合物が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸の例は、上記に列記したものと同様である。1又は2以上の具体例において、PLA系樹脂は、(1)L乳酸、D乳酸、又はこれらの混合物と、(2)グリコール酸とのコポリマーである。
【0062】
PLA系樹脂の他の例は、(1)乳酸(例えばD乳酸、L乳酸、又はこれらの混合物)、(2)脂肪族ポリカルボン酸(すなわち少なくとも2個のカルボン酸基を有する化合物)、及び(3)脂肪族ポリオール(すなわち少なくとも2個のヒドロキシル基を有する化合物)の組み合わせを用いて調製することができる。更なる他のPLA系樹脂は、(1)ラクチド(例えばDーラクチド、Lーラクチド、又はこれらの混合物)、(2)脂肪族ポリカルボン酸、及び(3)脂肪族ポリオールの組み合わせを用いて調製することができる。適当なポリカルボン酸及びポリオールは、上記に列記したものと同様である。
【0063】
PLA系樹脂はしばしば、乳酸単位(すなわちポリマー材料中に存在する乳酸の残基)及びヒドロキシカルボン酸単位などの他の必要に応じて存在する単位(すなわちポリマー材料中に存在するヒドロキシカルボン酸の残基)、ポリカルボン酸単位(すなわちポリマー材料中に存在するポリカルボン酸の残基)、並びにポリオール単位(すなわちポリマー材料中に存在するポリオールの残基)を含有する。これらのPLA系樹脂はしばしば、少なくとも50重量%の乳酸単位を含有する。例えばPLA系樹脂は、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、又は少なくとも98重量%の乳酸単位を含有しうる。
【0064】
適当なPLA系樹脂が、ネイチャーワークス社(NatureWorks,LLC)(米国、ミネソタ州、ミネトンカ)よりINGEO(例えばINGEO 4032D、INGEO 4043D、及びINGEO 4060D)の商品名で市販されている。
【0065】
PLA系樹脂は組成物中の唯一のポリマー材料として使用するか、又は別のポリエステル樹脂、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらのコポリマー)などの別のポリマー材料と組み合わせることができる。多くの実施形態において、ポリマー材料の少なくとも50重量%はPLA系樹脂である。例えば、ポリマー材料は、50〜95重量%のPLA系樹脂と5〜50重量%の別のポリエステル及び/又はポリオレフィン、60〜95重量%のPLA系樹脂と5〜40重量%の別のポリエステル及び/又はポリオレフィン、又は75〜95重量%のPLA系樹脂と5〜25重量%の別のポリエステル及び/又はポリオレフィンを含みうる。
【0066】
他の実施形態では、ポリマー材料はセルロースエステルである(すなわちセルロースとカルボン酸との反応生成物)。セルロースエステルの例としては、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、三プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、三酪酸セルロース、及び酢酸酪酸セルロースが挙げられる。存在するヒドロキシル基の数に応じて溶解度の異なる各種のセルロースエステルを調製することができる。各種のセルロースエステルが、イーストマン社(Eastman)(米国、テネシー州、キングスポート)より市販されている。
【0067】
更なる他の実施形態では、ポリマー材料は、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂である。ポリ塩化ビニルは重合させてホモポリマー又はコポリマーを生成することができる。コポリマーの生成に適したコモノマーとしては、例えば、2〜10個の炭素原子又は2〜6個の炭素原子を有するものなどのエチレン性不飽和オレフィン(例えばエチレン及びプロピレン)、2〜10個の炭素原子又は2〜6個の炭素原子又は2〜6個の炭素原子を有するカルボン酸などのカルボン酸のビニルエステル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及び2ーエチルヘキサン酸ビニルエステル)、ビニルハライド(例えばフッ化ビニル、フッ化ビニリデン、及び塩化ビニリデン)、ビニルエーテル(例えばビニルメチルエーテル及びビニルブチルエーテル)、ビニルピリジン、及び不飽和酸(例えばマレイン酸、フマル酸)が挙げられる。
【0068】
PVC樹脂はしばしば、少なくとも50%の塩化ビニル単位(すなわちポリマー材料中に存在する塩化ビニルモノマーの残基)を含有する。例えば、ポリ塩化ビニル樹脂は、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、又は少なくとも98重量%の塩化ビニル残基を含有する。
【0069】
PVC樹脂は、オキシケム社(OxyChem)(米国、テキサス州、ダラス)よりOXYVINYLSの商品名で、フォルモサ・プラスチックス社(Formosa Plastics)(米国、ニュージャージー州、リビングストン)よりFORMOLONの商品名で、又はポリワン社(PolyOne)(米国、オハイオ州、エイボンレイク)よりGEONの商品名で市販されている。
【0070】
更なる別の実施形態では、熱可塑性ポリマー材料は、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)又はそのコポリマーである。コポリマーは、メタクリル酸メチルと、各種のアルキル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル酸などの各種の必要に応じて用いられるモノマーとの混合物から調製される。PMMAは、ルーサイト・インターナショナル社(Lucite International)(米国、テネシー州、メンフィス)よりELVACITEの商品名で、また、アルケマ社(Arkema)(米国、ペンシルベニア州、ブリストル)よりPLEXIGLASの商品名で市販されている。
【0071】
本組成物を使用して接着剤組成物を提供することができる。このような組成物では、ポリマー材料はエラストマー材料である。エラストマー材料はしばしば、例えば1又は2以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーを用いて生成されるものなどのアクリルポリマーである。アクリルポリマーはしばしば、1又は2以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、例えば(メタ)アクリル酸、ヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレートモノマー、又はこれらの混合物などの少なくとも1種類の極性モノマーとから生成されるコポリマーである。
【0072】
任意の適当な分子量を、クエン酸エステルと組み合わされるポリマー材料に用いることができる。重量平均分子量はしばしば、少なくとも1,000g/モル、少なくとも10,000g/モル、少なくとも20,000g/モル、少なくとも50,000g/モル、少なくとも100,000g/モル、又は少なくとも200,000g/モルである。重量平均分子量は、100万g/モル以下、800,000グラム/モル以下、600,000グラム/モル以下、40,000グラム/モル以下でありうる。例えば、ポリマー材料は、10,000g/モル〜100万g/モルの範囲、20,000g/モル〜600,000g/モルの範囲、50,000g/モル〜500,000g/モルの範囲、又は10,000g/モル〜100,000g/モルの範囲の重量平均分子量を有しうる。
【0073】
1又は2以上のクエン酸エステル(すなわち1又は2以上のTHFクエン酸エステル及び任意の必要に応じて用いられるトリ(アルキル)クエン酸エステル)を含有する組成物を、ポリマー材料の可塑剤として使用することができる。可塑剤はしばしば、ポリマー材料をより可撓性とし、より柔軟、及びより加工性を高く(すなわちより加工しやすく)するためにポリマー材料に加えられる。より詳細には、ポリマー材料への可塑剤の添加によって得られる混合物は、ポリマー材料単独と比較してより低いガラス転移温度を一般的に有する。ポリマー材料のガラス転移温度は、1又は2以上のクエン酸エステルを添加することによって少なくとも30℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、又は少なくとも70℃低くすることができる。この温度変化(すなわち低下)は、ポリマー材料に添加される可塑剤の量と相関を有する傾向がある。可撓性の増大、伸び率の増大、及び加工性の増大に通常つながるのはこうしたガラス転移温度の低下である。
【0074】
特定の実施形態では、複数のクエン酸エステルを含むことが有利である。異なるクエン酸エステルとポリマー材料との混合物はしばしば、式(III)のトリ(THF)クエン酸エステルのみを用いた組成物よりも低い粘度を有する組成物を与えることができる。別の言い方をすると、式(I)の2以上のTHFクエン酸エステルを含有する組成物、又は式(I)のTHFクエン酸エステル及び式(II)のトリ(アルキル)クエン酸エステルを含有する組成物は、式(III)のトリ(THF)クエン酸エステルのみを含む組成物よりも低い粘度をしばしば有する。更に、式(I)の2以上のTHFクエン酸エステルを含有する組成物、又は式(I)のTHFクエン酸エステル及び式(II)のトリ(アルキル)クエン酸エステルを含有する組成物は、式(III)のトリ(THF)クエン酸エステルのみを含む組成物よりも高い伸び率(すなわち破断点伸び率)をしばしば有する。
【0075】
これに対して、式(III)のトリ(THF)クエン酸エステルは、式(II)のモノ(THF)ジ(アルキル)クエン酸エステル及びジ(THF)モノ(アルキル)クエン酸エステルよりも高い沸点を有する傾向がある。すなわち、トリ(THF)クエン酸エステルの使用は、他のTHFクエン酸エステルよりも組成物の経時安定性を高めうる。更に、ポリマー材料とトリ(THF)クエン酸エステルとの混合物は、式(II)のモノ(THF)ジ(アルキル)クエン酸エステル及びジ(THF)モノ(アルキル)クエン酸エステルと比較してより高い弾性率を有しうる。
【0076】
トリ(THF)クエン酸エステル、ジ(THF)モノ(アルキル)クエン酸エステル、及びモノ(THF)ジ(アルキル)クエン酸エステルの効果は異なりうることから、伸び率、弾性率、ガラス転移温度、及び経時安定性などの特性は、組成物に含まれる1又は2以上のTHFクエン酸エステルの選択によって変えることができる。すなわち、特定の用途に応じて、所望の特性を与えるために可塑剤を選択することができる。
【0077】
ポリマー材料及び1又は2以上のクエン酸エステルの両方を含む組成物はしばしば、組成物の全重量に対して少なくとも1重量%のクエン酸エステルを含有する。組成物のクエン酸エステルの含有量が1重量%未満、又は5重量%未満である場合には、クエン酸エステルの添加効果は検出されない場合がある。例えば、ガラス転移温度にはほとんど変化がないか又は極めてわずかな変化しか見られない可能性がある。組成物は例えば少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、又は少なくとも25重量%のクエン酸エステルを含みうる。組成物中のクエン酸エステルの量は、組成物の全重量に対して99重量%以下でありうる。上限値はしばしば、クエン酸とポリマー材料との相溶性によって決定される。組成物の特定の例は、95重量%以下、75重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、又は20重量%以下のクエン酸エステルを含みうる。
【0078】
熱可塑性ポリマー材料を含む組成物は、組成物の全重量に対して1〜95重量%のクエン酸エステル及び5〜99重量%のポリマー材料を含有しうる。この組成物の特定の例は、5〜95重量%のクエン酸エステル及び5〜95重量%のポリマー材料、5〜75重量%のクエン酸エステル及び25〜95重量%のポリマー材料、5〜50重量%のクエン酸エステル及び50〜95重量%のポリマー材料、5〜30重量%のクエン酸エステル及び70〜95重量%のポリマー材料、又は5〜20重量%のクエン酸エステル及び80〜95重量%のポリマー材料を含有する。
【0079】
接着剤として使用するためのエラストマーポリマー材料を含む組成物は、組成物の全重量に対して70〜99重量%のポリマー材料及び1〜30重量%のクエン酸エステルを含有しうる。この組成物の特定の例は、75〜99重量%のポリマー材料及び1〜25重量%のクエン酸エステル、80〜99重量%のポリマー材料及び1〜20重量%のクエン酸エステル、又は80〜95重量%のポリマー材料及び5〜20重量%のクエン酸エステルを含有する。
【0080】
他の任意の必要に応じて用いられる成分を組成物に加えることができる。このような必要に応じて用いられる成分としては、アンチブロッキング剤、増摩剤、充填剤、核形成剤、熱安定剤、光安定剤、潤滑剤、顔料、着色料、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、溶融強度改善剤、衝撃改質剤などが挙げられる。これらの更なる必要に応じて用いられる成分のいずれかの使用が、特定の用途に適した組成物を提供するうえで望ましい場合がある。
【0081】
更に、各種のTHFクエン酸エステルを、石油系のもの(すなわち再生可能材料に基づいたものではない可塑剤)などの1又は2以上の他の種類の可塑剤と組み合わせて使用することができる。可塑剤の特定の例としては、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、及びフタル酸ベンジルブチルなどの各種のフタル酸エステル;アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、及びアジピン酸ジイソデシルなどの各種のアジピン酸エステル;リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸2−エチルヘキシルジフェニル、リン酸トリオクチル、及びリン酸トリクレシルなどの各種のリン酸エステル;トリメリット酸トリス−2−エチルヘキシル、及びトリメリット酸トリオクチルなどの各種のトリメリット酸エステル;各種のセバシン酸エステル及びアゼライン酸エステル;並びに各種のスルホン酸エステルが挙げられる。可塑剤の他の例としては、プロパンジオール又はブタンジオールとアジピン酸との縮合反応により生成することができるポリエステル可塑剤が挙げられる。
【0082】
乾燥混合、溶融混合、又は適当な溶媒(例えばポリマー及び1又は2以上のクエン酸エステルの両方を溶解する溶媒)の存在下での混合などの前記ポリマー材料と前記1又は2以上のクエン酸エステルとを混合するのに適した任意の方法を用いることができる。混合は、例えば、溶融押出成形機、混練押出成形機、ロールミル、高剪断力ミキサー、二軸コンパウンダー、又は当該技術分野において知られる他の任意のプロセス装置を用いて行うことができる。混合に必要な条件は当業者には一般的に周知のものである。
【0083】
混合方法の1つの例では、ポリマー材料と1又は2以上のクエン酸エステルとは所定の重量比で混合した後、溶融押出することができる。別の例では、ポリマー材料と1又は2以上のクエン酸エステルとを、所定の重量比で混合した後、ペレットに成形する。このペレットを型成形及び/又は押出プロセス法で使用して各種の物品を作製することができる。
【0084】
任意の適当な物品を混合物から成形することができる。物品の特定の例は、射出成形、圧縮成形などのプロセスによって作製された成形物品である。物品の他の例は、紡糸法(例えば溶融紡糸法)により成形された繊維である。物品の更なる他の例は、溶媒含有混合物からのキャスティング、溶融圧縮、溶融押出などによって作製されたフィルムである。
【0085】
物品の一部のものは接着性物品である。別の言い方をすると、本明細書で述べる組成物は、接着剤組成物とすることができる。接着剤組成物は、液体の状態に接着剤組成物を溶融することによって表面に塗布することができる。例えば、溶融押出法によりテープ支持体などの基材上に接着剤層を形成することができる。
【0086】
押出法は、組成物中のポリマー材料を少なくともある程度配向させる傾向がある。これにより、溶媒キャスト又は圧縮成形されたものではなく、押出成形された組成物では弾性率が高くなりうる。弾性率は縦方向に延伸することによって更に高めることができる。延伸はポリマー材料の更なる配向をもたらす傾向がある。
【0087】
本組成物から作製されたポリマーフィルムは、任意の所望の厚さを有しうる。フィルムはしばしば視覚的に透明である。フィルムは、実施例のセクションで述べる試験方法3(全透過率、ヘイズ値、及び透明度の測定法)を用いた場合に、5%未満のヘイズ値、少なくとも90%に等しい透過率、及び少なくとも90%に等しい透明度を有しうる。このようなフィルム試料のヘイズ値はしばしば5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、又は1%未満である。透過率及び透明度はいずれもしばしば、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも98%、又は少なくとも99%である。低いヘイズ値(例えば5%未満)、高い透過率(例えば90%超)、及び高い透明度(例えば90%超)は、ポリマー材料と可塑剤(例えばTHFクエン酸エステル)との高い相溶性を一般的に示す。
【0088】
特定の物品は、植物系であるか、生分解性であるか、又はその両方であるポリマー材料を用いて作製される。例えば、THFクエン酸エステルと組み合わされるポリマー材料を、セルロース系材料又はポリ(乳酸系)材料とすることができる。このような組成物は、可塑剤及びポリマー材料を石油資源ではなく植物から得ることができるためにしばしば望ましい。別の言い方をすると、これらの組成物は環境に優しいと考えられ、再生可能な資源から誘導することができる。
【0089】
一部の従来の可塑剤(例えばフタル酸ジエチルなどの各種のフタル酸エステル)は、その比較的高い揮発性のために物品の外表面へと移動して蒸発する傾向を有している。これらの従来の可塑剤が可塑剤を含有するポリマーフィルムなどの物品から蒸発すると、物品はその最初の可撓性と比較して可撓性が低下しうる。更に、引っ張り強度、引き裂き強度、及び破断点伸び率などの他の特性も悪影響を受けうる。このような変化を生じた物品は、低い経時安定性を示すものとして特徴付けられる傾向を有する。
【0090】
フタル酸エステル(例えばフタル酸ジエチル)及び市販のトリ(アルキル)クエン酸エステル(例えば、バーテラス社(Vertellus)(米国、ノースカロライナ州、グリーンズボロ)よりCITROFLEXの商品名で市販されるトリ(アルキル)クエン酸エステル)と異なり、THFクエン酸エステルは揮発性が低い傾向にあり、それらを含有する物品は高い経時安定性を有しうる。別の言い方をすれば、THFクエン酸エステルは、多くの従来の可塑剤と同様のガラス転移温度の低下をもたらす一方で高い経時安定性を有しうるものである。各種の可塑剤の揮発性を、高温に曝露した組成物の重量損失を監視することによって比較することができる。例えば、クエン酸エステルは、100℃に最大96時間加熱した場合の重量損失が、2重量%未満、1重量%未満、0,8重量%未満、0.6重量%未満、又は0.5重量%未満でありうる。可塑剤としてTHFクエン酸エステルを用いて作製されたポリマーフィルムは、通常の使用条件下では可塑剤の損失が最小限に抑えられるか又はまったくない。
【0091】
多くの一般的に用いられているフタル酸エステルと比較して、式(I)のTHFクエン酸エステルは、親水性ポリマー材料との相溶性がより高い傾向にあり、揮発性はより低い傾向にあり、ガラス転移温度を低下させるうえでより効果的である傾向を有する。多くの市販のトリ(アルキル)クエン酸エステルと比較して、THFクエン酸エステルは一般的に、親水性ポリマー材料との相溶性が幾分高く、揮発性がより低く、ガラス転移温度を低下させる効果は同等である。
【0092】
全体的に見て、THFクエン酸エステルは、セルロース系ポリマー材料及びポリ(乳酸)系ポリマー材料などの各種の再生可能なポリマー材料を含む各種のポリマー材料の可塑剤として効果的に使用することができる。
【0093】
組成物及び物品として各種の項目が提供される。
【0094】
項目1は、少なくとも2種類の異なる式(I)のクエン酸エステルを含有する組成物である。
【0095】
【化13】
【0096】
式(I)において、Rはそれぞれ、アルキル、テトラヒドロフルフリル基、又はアルキル置換テトラヒドロフルフリル基であり、少なくとも1個のRがテトラヒドロフルフリル基又はアルキル置換テトラヒドロフルフリル基であり、Rは水素又はアシル基である。
【0097】
項目2は、ポリマー材料を更に含む、項目1の組成物である。
【0098】
項目3は、前記ポリマー材料が再生可能な資源から調製されるか、生分解性であるか、又はその両方である、項目2の組成物である。
【0099】
項目4は、前記ポリマー材料が、脂肪族ポリエステル、セルロースエステル、ポリ塩化ビニル、又はアクリルポリマーを含む熱可塑性ポリマーである、項目2又は3の組成物である。
【0100】
項目5は、前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸系樹脂である、項目4の組成物である。
【0101】
項目6は、前記ポリマー材料がエラストマーポリマーである、項目2又は3の組成物である。
【0102】
項目7は、組成物の全重量に対して5〜50重量%の式(I)のクエン酸エステル、及び50〜95重量%の前記ポリマー材料を含む、項目2〜6のいずれか1つの組成物である。
【0103】
項目8は、項目2〜7のいずれか1つの組成物を含む物品である。
【0104】
項目9は、(a)式(I)の少なくとも1種類のクエン酸エステルと、
【0105】
【化14】

式(II)の少なくとも1種類のクエン酸エステルとを含有する組成物である。
【0106】
【化15】
【0107】
式(I)において、R基はそれぞれ、アルキル、テトラヒドロフルフリル又はアルキル置換テトラヒドロフルフリルであり、少なくとも1個のRがテトラヒドロフルフリル又はアルキル置換テトラヒドロフルフリル基である。R基は、水素又はアシルである。式(II)において、R基はそれぞれアルキルであり、R基は水素又はアシルである。
【0108】
項目10は、ポリマー材料を更に含む、項目9の組成物である。
【0109】
項目11は、前記ポリマー材料が再生可能な資源から調製されるか、生分解性であるか、又はその両方である、項目10の組成物である。
【0110】
項目12は、前記ポリマー材料が、脂肪族ポリエステル、セルロースエステル、ポリ塩化ビニル、又はアクリルポリマーを含む熱可塑性ポリマーである、項目10又は11の組成物である。
【0111】
項目13は、前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸系樹脂である、項目12の組成物である。
【0112】
項目14は、前記ポリマー材料がエラストマーポリマーである、項目10又は11の組成物である。
【0113】
項目15は、組成物の全重量に対して5〜50重量%の式(I)のクエン酸エステルと式(II)のクエン酸エステルとの合計量、及び50〜95重量%の前記ポリマー材料を含む、項目10〜14のいずれか1つの組成物である。
【0114】
項目16は、項目10〜15のいずれか1つの組成物を含む物品である。
【0115】
項目17は、式(III)の少なくとも1種類のクエン酸エステルを含有する組成物である。
【0116】
【化16】
【0117】
式(III)において、R基はそれぞれ、テトラヒドロフルフリル又はアルキル置換テトラヒドロフルフリル基である。R基は、水素又はアシルである。
【0118】
項目18は、ポリマー材料を更に含む、項目17の組成物である。
【0119】
項目19は、前記ポリマー材料が再生可能な資源から調製されるか、生分解性であるか、又はその両方である、項目18の組成物である。
【0120】
項目20は、前記ポリマー材料が、脂肪族ポリエステル、セルロースエステル、ポリ塩化ビニル、又はアクリルポリマーを含む熱可塑性ポリマーである、項目18又は19の組成物である。
【0121】
項目21は、前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸系樹脂である、項目20の組成物である。
【0122】
項目22は、前記ポリマー材料がエラストマーポリマーである、項目18又は19の組成物である。
【0123】
項目23は、組成物の全重量に対して5〜50重量%の式(I)のクエン酸エステルと式(II)のクエン酸エステルとの合計量、及び50〜95重量%の前記ポリマー材料を含む、項目18〜22のいずれか1つの組成物である。
【0124】
項目24は、項目18〜23のいずれか1つの組成物を含む物品である。
【0125】
項目25は、前記組成物が接着剤組成物である、項目6、16、又は24のいずれかの物品である。
【0126】
項目26は、前記接着剤組成物がホットメルト加工可能である、項目25の物品である。
【実施例】
【0127】
実施例において使用するすべての重量及び比率(%)は、特に断らないかぎりは重量に基づくものである。
【0128】
無水酢酸は、シグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich)(米国、ミズーリ州、セントルイス)より入手することができる。
【0129】
ブイ・ダブリュー・アール社(VWR)(米国、ペンシルベニア州、ウェストチェスター)よりアセトンを入手した。
【0130】
アルコールとして、イソブタノール、nーブタノール(1−ブタノール)、及びTHFアルコールと呼ぶテトラヒドロフルフリルアルコールを、アルファ・エイサー社(Alfa Aesar)(米国、マサチューセッツ州、ワードヒル)より入手した。
【0131】
イーストマン・ケミカル社(EastmanChemical Company)(米国、テネシー州、キングスポート)より商品名CA−398−3及びCA−398−30の酢酸セルロースを入手した。CA−398−3及びCA−398−30の数平均分子量は、それぞれ30,000g/モル及び50,000g/モルである。
【0132】
バーテラス・パフォーマンス・マテリアルズ社(VertellusPerformance Materials)(米国、ノースカロライナ州、グリーンズボロ)及び/又はアルファ・エイサー社(Alfa Aesar)(米国、マサチューセッツ州、ワードヒル)より商品名CITROFLEX 2(クエン酸トリエチル)、CITROFLEX 4(クエン酸トリ−n−ブチル)、及びCITROFLEX A−4(クエン酸アセチルトリ−n−ブチル)のトリ(アルキル)クエン酸エステルを入手した。
【0133】
アルファ・エイサー社(Alfa Aesar)(米国、マサチューセッツ州、ワードヒル)よりクエン酸を入手した。
【0134】
フタル酸ジエチルは、シグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich)(米国、ミズーリ州、セントルイス)より入手することができる。
【0135】
ブイ・ダブリュー・アール社(VWR)(米国、ペンシルベニア州、ウェストチェスター)より酢酸エチルを入手した。
【0136】
アルドリッチ・ケミカル社(米国、ウィスコンシン州、ミルウォーキー)よりメタンスルホン酸を入手した。
【0137】
アルドリッチ・ケミカル社(米国、ウィスコンシン州、ミルウォーキー)より製品番号18958−8として重量平均分子量約62,000g/モルのポリ(塩化ビニル)を入手した。
【0138】
ネイチャーワークス社(NatureWorks, LLC)(米国、ミネソタ州、ミネトンカ)より商品名PLA 4032Dのポリ乳酸を入手した。
【0139】
試験方法
試験方法1A:示差走査熱量計(DSC)を用いたガラス転移温度の測定
約5〜7mgのポリマーフィルム試料を、ティー・エー・インスツルメンツ社(TA Instruments)(米国、デラウェア州、ニューカッスル)より入手可能なフタのある個別の標準的アルミニウムDSCパンに入れた。次いでこのパンを示差走査熱量計(ティー・エー・インスツルメンツ社(TA Instruments)より販売されるモデルQ2000 DSC)のオートサンプラーに入れた。各分析では、試料の入ったパンを、反対側のポストの空の基準パンとともに、封入されたDSCセル内の示差ポストの1つに置いた。各試料を−20℃〜250℃の温度範囲にわたって加熱−冷却−加熱プロファイルに供した。プロファイルの第2の加熱工程においてガラス転移ピークの中心温度(ピークの半分の高さ)をガラス転移温度(Tg)として記録した。
【0140】
試験方法1B:示差走査熱量計(DSC)を用いたガラス転移温度の測定
各試料を−20℃〜210℃の温度範囲にわたる加熱−冷却−加熱プロファイルに供した点以外は試験方法1Aと同様にして試料を試験した。
【0141】
試験方法2:フィルムの物理特性の測定
エム・ティー・エス・システムズ社(MTS SystemsCorporation)(米国、ミネソタ州、エデンプレイリー)よりSINTECHとして市販される引張試験装置を使用してフィルムの伸び率(%)及び弾性率を測定した。この試験の試料は、幅2.54cm、長さ15cmのものとした。初期のジョー間隔5.1cm、及びクロスヘッド速度12.7cm/分を用いた。
【0142】
試験方法3:全透過率、ヘイズ値、及び透明度の測定
ビー・ワイ・ケー・ガードナー・ユー・エス・エー社(BYK-GardnerUSA)(米国、メリーランド州、コロンビア)よりHAZE−GARD PLUS(モデル4725)の商品名で市販されるヘイズ計を使用して、光透過率(%)(全透過率)、ヘイズ値、及び透明度の3つの光学的パラメータについて各フィルムを測定した。測定する部分に油分、汚れ、埃、又は指紋がないように15cm×15cmの試料片をフィルムから切り取った。次いで各試料をヘイズ計のヘイズポートにわたして手で取り付け、測定を行った。各光学的パラメータを測定して記録した。全透過率を下記各表に「透過率」として示す。
【0143】
試験方法4:フィルムの重量損失の測定
各フィルム試料について25mmの円形片を打ち抜き、初期重量を記録した。各試料を100℃のオーブンに4、24、48、及び96時間入れ、オーブンから取り出した後の重量を記録した。各試料は各時間について2重で測定を行い、重量損失率(%)の平均を求めた。
【0144】
試験方法5:ガスクロマトグラフ分析
試料からの約100mgの生成物を100mLの容量フラスコ中に秤量した。試料をジクロロメタンで100mLの目盛りまで希釈した。次いで試料をオートサンプラーのバイアルに入れ、テフロンコーティングされたキャップで密封した。以下の条件にしたがって試料を分析した。
【0145】
【表1】
【0146】
GCピーク面積比を求めることによって、試料中のトリ(THF)クエン酸エステル、ジ(THF)モノ(アルキル)クエン酸エステル、モノ(THF)ジ(アルキル)クエン酸エステル、及びトリ(アルキル)クエン酸エステルの相対量を示した。
【0147】
試験方法6:クエン酸エステルの熱重量分析(TGA)
クエン酸エステルの重量損失をTGAにより測定した。約30〜50mgの試料を標準的アルミニウムパンに入れ、ティー・エー・インスツルメンツ社(TA Instruments)(米国、デラウェア州、ニューカッスル)より市販されるモデルTGA2950を使用して10℃/分の速度で500℃に加熱した。200℃及び250℃での各試料の重量損失を測定した。
【0148】
(実施例1〜4)
テトラヒドロフルフリルアルコール(THFアルコール)、クエン酸、1−ブタノール(BuOH)、メタンスルホン酸(MSA)、及びトルエンの混合物を加熱還流した。各成分の量を表1に示す。生成した水をディーン・スタークトラップで回収した。反応終了(4〜6時間)後、混合物を冷却してから飽和重炭酸ナトリウム水溶液及び食塩水で洗浄した。次いでRotoベーパライザー中、真空下で有機相を濃縮した。次いで粗生成物を機械的に攪拌し、高真空(0.8mm Hg(0.11kPa))下で75℃に加熱してテトラヒドロフルフリルクエン酸エステルを黄色又は橙色の油状物として得た。
【0149】
実施例1〜4で生成した生成物の比を、試験方法5にしたがってガスクロマトグラフィーで求めた。結果を表2に示す。
【0150】
【表2】
【0151】
(実施例5)
実施例1のトリ(THF)クエン酸エステル(20.34g,45mmol)、無水酢酸(5.05g,49mmol)、及びメタンスルホン酸(0.030g,0.31mmol)を100℃に3時間加熱した。混合物を冷却し、酢酸エチル(100mL)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。次いで有機層を真空下で濃縮した。粗油状物を、ヘキサン中の酢酸エチルの勾配(50%〜85%)を用いてカラムクロマトグラフィーによりシリカゲル上で精製して最終生成物を黄色油状物として得た(収量17.27g)。
【0152】
(実施例6)
テトラヒドロフルフリルアルコール(585.70g,5.7mol)、クエン酸(600.00g,3.1mol)、イソブタノール(415.80g,5.6mol)、メタンスルホン酸(5.00g,52mmol)、及びトルエン(1675mL)の混合物を加熱還流した。生成した水をディーン・スタークトラップで回収した。11時間後、混合物を冷却してから飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥し、Rotoベーパライザー中、真空下で濃縮した。次いで粗生成物を攪拌し、高真空(0.3mmHg(0.04kPa))下で17時間、80℃に加熱することによってテトラヒドロフルフリルクエン酸エステルを黄色油状物として得た(収量934.58g)。生成した生成物の相対量(実施例のすべてのクエン酸エステルの重量比率(%))をガスクロマトグラフィーを用いて測定し(試験方法5)、表2に示した。
【0153】
【表3】
【0154】
クエン酸エステルの熱重量分析
上記に述べたTGA法(試験方法6)を用いて実施例1〜6を分析した。その結果を2種類の市販のトリ(アルキル)クエン酸エステル(CITROFLEX 2及びCITROFLEX 4)と比較した。200℃及び250℃における重量損失率(%)を表3に示す。
【0155】
【表4】
【0156】
溶解度パラメータ
各種のクエン酸エステルの溶解度パラメータを、ベルメアズ(Belmares)らにより述べられ(Belmaresら、J.Comp.Chem.,25(15),1814(2004))、カルギ社(Culgi BV)(P.O.Box 252,2300AG オランダ、ライデン)より市販されるCULGIソフトウェアで実行される一般的手順を用いた分子動力学的シミュレーションにより求めた。結果を表4に示し、カースト(Karst)及びヤン(Yang)によって報告されるポリ乳酸の溶解度パラメータ(Karst,D.and Yang,Y.,J.Appl.Poly.Sci.,96,416〜422(2005))と比較した。
【0157】
【表5】
【0158】
実施例7〜11及び比較例C1〜C5
酢酸セルロース(CA−398−30)をアセトンに固形分20重量%で溶解することにより酢酸セルロース組成物をそれぞれ調製した。表5に示す可塑剤を組成物に一定量加えて、全固体組成物(酢酸セルロース及び可塑剤)に対して20重量%の可塑剤となるようにした。各組成物を均一となるまで混合した(約1時間)。0.05mmのポリプロピレン支持体フィルム上にこの溶液をナイフコーティングすることにより各溶液からフィルムを調製した。キャスティングした各フィルムを室温で2分間、次いで70℃に設定したオーブン中で15分間乾燥させた。冷却後、乾燥したフィルムを支持体フィルムから剥離して表5に示す最終的な厚さとした。
【0159】
比較例C1〜C5は、可塑剤を加えないか(C1)、フタル酸ジエチルを加えるか(C2)、CITROFLEX 2を加えるか(C3)、CITROFLEX 4を加えるか(C4)、又はCITROFLEX A4を加えて(C5)調製した。
【0160】
各フィルムのTgを試験方法1Aにしたがって測定し、全透過率(透過率)、ヘイズ値、及び透明度を試験方法3にしたがって測定した。結果を表5に示す。
【0161】
実施例12〜16及び比較例C6〜C10
酢酸セルロースをCA−398−3とした点以外は実施例7〜11及びC1〜C5の手順にしたがって酢酸セルロースフィルムを調製し、試験を行った。結果を表5に示す。
【0162】
実施例17〜21及び比較例C11〜C15
酢酸セルロースをCA−398−3とCA−398−30の重量基準で50/50の混合物とした点以外は実施例7〜11及びC1〜C5の手順にしたがって酢酸セルロースフィルムを調製し、試験を行った。結果を表5に示す。
【0163】
【表6】
【0164】
実施例22及び比較例C16〜C17
酢酸セルロース(CA−398−30)を押出成形機のホッパー内で表6に示す可塑剤と配合することによって各組成物を調製し、20重量%の可塑剤を含有する組成物とした。各組成物を溶融温度230℃、設定ダイ温度221℃で2軸押出成形機から押出して、表6に示される最終的なフィルム厚さとした。各フィルム試料を、試験方法3にしたがって全透過率、ヘイズ値、及び透明度について、試験方法1A及び2にしたがって物理特性について試験した。結果を表6に示す。
【0165】
【表7】
【0166】
実施例23〜31及び比較例C18〜C19
ポリ乳酸(PLA 4032D)を80℃に設定したオーブン中で2時間乾燥した。80重量%のポリ乳酸と20重量%の表7に示されるクエン酸エステル可塑剤とを含有する組成物を、温度200〜210℃、100回転/分(rpm)の混合速度で溶融プロセッサー(シー・ダブリュー・ブラベンダー・インスツルメンツ社(C.W. Brabender Instruments Company)(米国、ニュージャージー州、ハッケンサック)より販売されるBrabender ATR Plasti−Corder)内で混ぜ合わせた。
【0167】
5ミル(0.127mm)のシムを備えた、設定温度200℃、クランプ力24,000ポンド(10,886kg)の熱プレス機(Carver 2699、カーバー社(Carver Inc.)米国)上で、2枚のポリイミドフィルムの間で3.5gの上記組成物をプレスすることによりフィルムを調製した。プレスした各フィルムの厚さを表7に示す。試験方法2及び3を用いて全透過率、ヘイズ値、透明度、破断点伸び率、及び弾性率について各フィルムを試験した。これらの結果を表7に示す。ガラス転移温度を試験方法1Bにしたがって測定した。フィルムの重量損失を試験方法4にしたがって測定した。結果を表8に示す。
【0168】
【表8】

ND:測定せず。
【0169】
【表9】

ND:測定せず。
【0170】
実施例32〜35及び比較例C20〜C22
ポリ乳酸(PLA 4032D)を、押出成形に先だって65℃に設定した乾燥機中に24時間置いた。乾燥したPLAを表9に示される種類及び量の可塑剤と配合することにより各組成物を調製した。次いで各組成物を溶融温度176℃、ダイ温度176℃で2軸押出成形機から押出した。厚さ0.01〜0.09mmの範囲のフィルムが得られ、各フィルム試料を上記に述べた方法を用いて全透過率、ヘイズ値及び透明度、破断点伸び率、並びに弾性率について試験した。ガラス転移温度を試験方法1Aにしたがって測定した。結果を表9に示す。
【0171】
【表10】
【0172】
実施例36〜38及び比較例C23〜C24
PLAを溶融押出ししたフィルム試料を縦方向(MD)及び横方向(CD)の両方に配向させた(すなわち延伸した)。各フィルム試料を63.5mm×63.5mm四方に切断した。各フィルムをKARO IVラボラトリー延伸機(ブルックナー・テクノロジー・ホールディング(Brueckner Technology Holding)、ドイツ)に入れ、55℃に30秒間加熱し、31.8mm/秒の速度で延伸した後、55℃でアニーリングして101.6mm×101.6mmの比を有するフィルムを得た。試験方法2にしたがって各フィルムを縦方向(MD)及び横方向(CD)の両方で試験した。結果を表10に示す。
【0173】
【表11】
【0174】
実施例39〜42及び比較例C25
表10に示される量のPVC(ポリ(塩化ビニル))、可塑剤、及びテトラヒドロフランの混合物を室温で12時間振盪した。約5.0gの各溶液をアルミニウムパンに注ぎ、真空(0.5mm Hg(0.07kPa))下、室温で24時間乾燥した。比較例25はPVCのみを含有する(可塑剤は加えない)。試料はいずれも透明なフィルムであった。各試料のガラス転移温度を試験方法1Bにしたがって測定し、表11に示す。
【0175】
【表12】