(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
実装部品の小型化のニーズはより一層高まり、パッケージのサイズを小さくすることができ、半導体装置の小型化・軽量化を図ることができる技術がますます重要となってきている。
【0003】
そのような技術として、WLP(ウエハレベルパッケージ)が開発されている。WLPにおいては、半導体ウエハ上に形成された回路の配線、電極形成、樹脂封止まで行ない、その後、ダイシングを行なう。さらに近年では、高集積化、より多くの外部接続等が要求されており、そのような要求を満たすものとして、eWLB(Embedded Wafer Level Ball Grid Array)が開発されてきている。
このパッケージの作製方法では、半導体チップを支持基板上に接着フィルムを用いて貼着し、その半導体チップを封止する手法が取られる。
【0004】
しかしながら、接着フィルムは、封止工程等においては半導体チップを支持基板に固着させる必要があり、一方、封止後は支持基板とともに半導体チップから除去する必要があった。このように、接着フィルムには相反する特性が要求されていた。
【0005】
特許文献1には、熱収縮フィルムからなる基材の両表面に粘着層が形成され、100℃以下で高い収縮率を示す熱収縮フィルムが開示されている。
特許文献2には、支持フィルムの片面又は両面に樹脂層Aが形成されており、支持フィルムは、20〜200℃における線熱膨張係数が3.0×10
−5/℃以下である半導体用接着フィルムを、リードフレーム裏面に貼り付けて保護し、封止後に引き剥がす方法が開示されている。この支持フィルムは、200℃で2時間加熱した際の加熱収縮率が0.15%以下であると記載されている。
【0006】
特許文献3には、収縮性フィルム層と、該収縮性フィルム層の収縮を拘束する拘束層とが積層された積層シートが開示されている。収縮性フィルム層の主収縮方向の熱収縮率が、70〜180℃において30〜90%であると記載されている。
【0007】
特許文献4には、40〜180℃の温度範囲において3〜90%の熱収縮率を示す熱収縮性フィルムを用いたダイシング用表面保護シートが開示されている。そして、このダイシング用表面保護シートを用いた加工方法が記載されている。樹脂モールドの際に用いることについては記載されていない。
【0008】
特許文献5には、ウレタンポリマーと(メタ)アクリル系ポリマーの複合フィルム層を含む基材の少なくとも一方の面に、発泡剤を含有した熱膨張性粘着層が形成された加熱剥離型粘着シートが開示されている。加熱剥離型粘着シートの150℃における熱収縮率が97%以上であることが記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
本実施形態の接着フィルム10は、
図1に示すように、基材層12と、自己剥離性接着層14とが積層されてなる。
【0018】
[基材層12]
基材層12は、流れ方向の熱収縮率(MD方向の熱収縮率)と、流れ方向に直交する方向の熱収縮率(TD方向の熱収縮率)とが以下の条件を満たす。
【0019】
(1)150℃で30分間加熱後
0.4 ≦ |MD方向の熱収縮率/TD方向の熱収縮率| ≦2.5
MD方向の熱収縮率とTD方向の熱収縮率の平均 ≦2%
(2)200℃で10分間加熱後
0.4 ≦ |MD方向の熱収縮率/TD方向の熱収縮率| ≦2.5
MD方向の熱収縮率とTD方向の熱収縮率の平均 ≧3%
【0020】
150℃で30分間加熱することにより、半導体チップの封止工程における、基材層12として用いられる樹脂フィルムの熱収縮性を判断することができる。
半導体装置の製造方法において、封止工程での温度は最大150℃程度であり、樹脂フィルムの熱収縮は、ある程度の加熱時間で収束する。150℃における基材層である樹脂フィルムの熱収縮は、30分間加熱することによりほぼ収束する。したがって、150℃で30分間加熱したときの基材層12である樹脂フィルムの熱収縮率が、前記(1)の条件を満たすことにより、半導体チップの封止工程において、支持基板から接着フィルム10が剥離することを抑制していると判断することができる。
【0021】
200℃で10分間加熱することにより、封止した半導体チップ(パッケージ)を支持基板から剥離する工程における、基材層12として用いられる樹脂フィルムの熱収縮性を判断することができる。
半導体装置の製造方法において、封止工程での温度は最大150℃程度であるため、本実施形態では、支持基板からの剥離工程では150℃を超える温度で加熱する。封止工程と異なり、支持基板からの剥離は短時間で行われることが望ましい。したがって、封止工程よりも高温である200℃で10分間加熱したときの基材層12である樹脂フィルムの熱収縮率が、前記(2)の条件を満たすことにより、支持基板からパッケージを剥離する際に、支持基板から接着フィルム10が容易に剥離すると判断することができる。
【0022】
上記の「|MD方向の収縮率/TD方向の収縮率|」は、MD方向の収縮率とTD方向の収縮率の比の絶対値を示しており、0.4以上、2.5以下、好ましくは0.6以上、2.5以下であることにより、MD方向の収縮率とTD方向の収縮率に方向依存性がなく、等方性である。
等方性であることにより、基材層12の収縮率の異方性による応力が発生し難いため、封止工程において、反りが少なく、封止樹脂の漏れ及び反りを抑制することができる。また、剥離工程において、反りが少なく、パッケージの損傷を防止することができるほか、剥離も容易になる。
【0023】
そして、150℃で30分間加熱後の「MD方向の熱収縮率とTD方向の熱収縮率の平均」が2%以下、好ましくは1.8%以下である。これにより、半導体チップの封止工程において、基材層12の熱収縮による自己剥離性接着層14の剥離を抑制することができる。
【0024】
一方、200℃で10分間加熱後の「MD方向の熱収縮率とTD方向の熱収縮率の平均」が3%以上、好ましくは3.5%以上である。これにより、支持基板からのパッケージの剥離工程において、基材層12の熱収縮による自己剥離性接着層14の剥離を促進することができる。
また、基材層12が熱収縮し、基材層12の端部の接着強度が低下すれば剥離しやすくなる効果もある。さらに、基材層12が熱収縮する際に発生する応力で、剥離を促進することもできる。
【0025】
したがって、上記の条件を満たす基材層12は、後述する半導体装置の製造方法において、実装工程や樹脂モールド工程時の温度では収縮せず、耐熱性および接着性を発揮することができ、そして、樹脂モールド後に半導体チップを支持体から剥離する工程において収縮させることが可能となるため、易剥離性を発揮することができる。本実施形態の接着フィルム10は、半導体装置製造用接着フィルムとして好適に用いることができる。
【0026】
本実施形態において、基材層12の180℃の貯蔵弾性率E'は、1.0E+6以上、2.0E+8以下、好ましくは5.0E+6以上、2.0E+8以下とすることができる。
この範囲であれば、基材としての適切な剛性を備え、さらに端部から自己剥離性接着層14の剥離が可能となり、これらのバランスに優れる。
【0027】
本実施形態において、基材層12は、1層または2層以上の多層構造から構成することができる。基材層12全体としての熱収縮率が上記の条件を満たすように構成される。
【0028】
基材層12を構成する樹脂としては、上記の条件を満たす、耐熱性の高い樹脂を用いることができ、例えばポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂等を挙げることができる。これらのうちでは、ポリエステル系樹脂またはポリアミド系樹脂が好ましく、ポリエステル系樹脂としては、特開2009−172864号公報の0026段落〜0036段落に記載のものを用いることができ、ポリアミド系樹脂としては、国際公開2012/117884号パンフレットに記載されている公知のものを使用することができる。
【0029】
本実施形態においては、ポリエステル系樹脂が特に好ましく、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、アモルファスポリエチレンテレフタレート等を挙げることができる。
基材層12は樹脂フィルムの形態で用いることができる。
【0030】
基材層12となる樹脂フィルムは、耐熱性の高い樹脂を、結晶化を阻害しつつフィルム化することにより、非晶質または低結晶性のフィルムとして得ることができる。例えば、樹脂を溶融した後に急冷する方法、融点を超える温度で熱処理を施す方法、配向結晶化しないように延伸する方法等を挙げることができる。主となる成分以外の共重合成分を適宜選択し、コモノマーで結晶化を阻害することもできる。
基材層12の層厚は、通常500μm以下(例えば、1〜500μm)を選択し、好ましくは1〜300μm程度、より好ましくは5〜250μm程度である。基材層に用いる樹脂フィルムは単層であってもよく多層体であってもよい。
【0031】
[自己剥離性接着層14]
本実施形態において、自己剥離性接着層14に含まれる接着剤は、熱を与えることで接着力が低下ないし喪失する接着剤である。150℃以下では剥離せず、150℃を超える温度で剥離する材料を選択することができる。例えば、半導体装置の製造工程中に半導体素子が支持板から剥離しない程度の接着力を有していることが好ましい。
【0032】
自己剥離性接着層14に含まれる接着剤としては、気体発生成分を含むもの、熱膨張性の微小球を含むもの、熱によって接着剤成分が架橋反応することで接着力が低下するものなどが好ましい。
例えば、気体発生成分としては、アゾ化合物、アジド化合物、メルドラム酸誘導体などが好適に用いられる。また、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム等の無機系発泡剤や、塩フッ化アルカン、ヒドラジン系化合物、セミカルバジド系化合物、トリアゾール系化合物、N−ニトロソ系化合物等の有機系発泡剤を含むものも用いられる。気体発生成分は、接着剤(樹脂)に添加されていてもよく、樹脂に直接結合されていてもよい。
【0033】
熱膨張性の微小球としては、ガス化して熱膨張性を示す物質を殻形成物質内に内包させたものを用いることができる。エネルギーによって架橋反応し接着力が低下するものとしては、重合性オリゴマーを含有し、これが重合架橋することによって接着力が低下するもの等が使用できる。これらの成分は、接着剤(樹脂)に添加することができる。
気体が発生する温度、熱膨張性の微小球が熱膨張する温度、架橋反応する温度が、150℃を超える温度になるように設計すればよい。
接着剤を構成する樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を挙げることができる。
【0034】
本実施形態の接着フィルム10は、
図1(ii)に示すように、基材層12の、自己剥離性接着層14に対向する面の裏面上に、さらに接着層16が積層されていてもよい。
【0035】
(接着層16)
接着層16を構成する接着剤としては、従来公知の接着剤が使用できる。本実施形態の接着フィルムを、ウエハサポートシステムやセラミックコンデンサや半導体装置の製造に用いる場合、支持基板を再利用する観点から糊残りが少ない接着剤が好ましい。特に、感圧接着剤を用いると、接着工程や剥離工程の作業性に優れ、さらに糊残りが少ないことから、半導体装置の歩留まりを向上させることができる。
【0036】
感圧接着剤の例として、天然ゴムやポリイソブチレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、NBRなどのゴム系ポリマーをベースポリマーに用いたゴム系感圧接着剤;シリコーン系感圧接着剤;ウレタン系感圧接着剤;アクリル系感圧接着剤等を挙げることができる。母剤は1種、又は2種以上の成分で構成してもよい。特に好ましくは、アクリル系感圧接着剤である。
【0037】
アクリル系感圧接着剤の製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合及び各種ラジカル重合などの公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる接着性樹脂は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
【0038】
本実施形態の接着フィルムは、半導体装置の製造、部材の仮止め等に用いることができ、特に、e−WLBに好適に用いることができる。
以下、
図1(i)の接着フィルム10を用いた半導体装置の製造方法について説明する。
【0039】
<半導体装置の製造方法>
本実施形態の半導体装置の製造方法は以下の工程を有する。
工程(a):支持基板20上に、接着フィルム10を、自己剥離性接着層14が支持基板20側となるように貼着する(
図2(a))。
工程(b):接着フィルム10の基材層12上に半導体チップ22を搭載する(
図2(b))。
工程(c):半導体チップ22と接着フィルム10を覆うように封止層24を形成し、150℃以下の温度で封止層24を硬化させて、支持基材付き半導体チップモールドを形成する(
図2(c))。
工程(d):150℃を超える温度に加熱して、自己剥離性接着層14の接着力を低下させ、支持基材付き半導体チップモールドから支持基板20を除去する(
図3(d))。
工程(e):接着フィルム10を除去し、半導体チップモールドを得る(
図3(e))。
【0040】
本実施形態においては、さらに以下の工程を有していてもよい。
工程(f):最外面に形成されたパッド(不図示)と、露出した半導体チップ22と該パッドとを電気的に接続する配線(不図示)と、を備える配線層26を、半導体チップモールドの露出面に形成する(
図3(f))。
工程(g):パッド上にバンプ28を形成する(
図3(g))。
以下、工程順に説明する。
【0041】
(工程(a))
まず、支持基板20上に、接着フィルム10を、自己剥離性接着層14が支持基板20側となるように貼着する(
図2(a))。自己剥離性接着層14面上には保護フィルムが貼付けられていてもよく、当該保護フィルムを剥がし、自己剥離性接着層14の露出面を支持基板20表面に貼着することができる。
支持基板12としては石英基板、ガラス基板等を挙げることができる。
【0042】
(工程(b))
次いで、支持基板20上に貼着された、接着フィルム10の基材層12上に半導体チップ22を搭載する(
図2(b))。
【0043】
半導体チップとしては、例えば、IC,LSI,発光ダイオード、受光素子等を挙げることができる。基材層12の表面は、半導体チップ22との接着性を付与するために、表面処理が施されていてもよい。
なお、本実施形態においては基材層12上に半導体チップ22を搭載する態様によって示すが、基材層12上に積層された接着層16上に半導体チップ22を搭載することもできる。
【0044】
(工程(c))
半導体チップ22と接着フィルム10を覆うように封止層24を形成し、150℃以下の温度で封止層24を硬化させて、支持基材付き半導体チップモールドを形成する(
図2(c))。
封止層24の形成に用いる封止材は、特に限定されず、エポキシ樹脂を主成分として、シリカ充填材等を加えた熱硬化性成形材料等の一般的に使用されるものを用いることができる。
【0045】
封止方法としては、低圧トランスファー方式があるが、射出成形、圧縮成形、注型等による封止を行うこともできる。封止層24で封止後、150℃以下の温度で加熱することによって硬化させ、半導体チップ22が封止された、支持基材付き半導体チップモールドが得られる。
【0046】
接着フィルム10の基材層12は、150℃で30分間加熱後において、上記のような熱収縮性を有しており、150℃以下の硬化温度では自己剥離性接着層14の剥離を抑制することができる。
【0047】
(工程(d))
半導体チップ22を封止した後、150℃を超える温度に加熱して、自己剥離性接着層14の接着力を低下させ、支持基材付き半導体チップモールドから支持基板20を除去する(
図3(d))。
【0048】
接着フィルム10の基材層12は、200℃で10分間加熱後において、MD方向の熱収縮率とTD方向の熱収縮率の平均が3%以上であり、当該加熱温度によって熱収縮が大きくなる。そのため、基材層12の熱収縮による応力の増加が顕著となり、自己剥離性接着層14の接着性を低下させることができる。
【0049】
(工程(e))
支持基板20を除去した後、さらに接着フィルム10を除去し、半導体チップモールドを得る(
図3(e))。
接着フィルム10から、半導体チップモールドを剥離する場合には、基材層12の材質にあわせて適宜選択できる。機械的に剥離してもよいし、基材層12表面の接着力を低下させて剥離してもよい。
【0050】
また、基材層12上に図示しない他の接着層16を有している場合、接着層16としては、半導体チップ22の材料や、製造工程の条件にあわせて、一般的に用いられている接着剤を用いることができるが、自己剥離性接着層14に用いる接着剤のように、熱エネルギーによって接着力が低下する自己剥離性の接着剤を用いてもよい。自己剥離性の接着剤を用いる場合、支持基板12を接着する面に用いる接着剤と同じ強さの熱エネルギーもしくはより大きな熱エネルギーで接着力を低下させることができる。
【0051】
半導体チップモールドから接着フィルム10を除去する方法は、接着フィルム10の、半導体チップモールドを接着する面に用いた接着剤にあわせて適宜選択できる。機械的に剥離してもよいし、接着剤の接着力を低下させて剥離してもよい。
【0052】
(工程(f)および(g))
次いで、得られた半導体チップモールドの露出面に、配線層26を形成する(
図3(f))。
【0053】
配線層26は、最外面に形成された外部接続端子であるパッド(不図示)と、露出した半導体チップ22と該パッドとを電気的に接続する配線(不図示)と、を備える。配線層26は、従来公知の方法によって形成することができ、多層構造であってもよい。
【0054】
そして、配線層26のパッド上にバンプ28を形成し、半導体装置を得ることができる。バンプ28としては、はんだバンプや金バンプ等を挙げることができる。はんだバンプは、例えば、予め整形されたはんだボールを、配線フィルムの外部接続端子であるパッド上に配置し、加熱してはんだを溶融させる(リフローする)ことにより形成することができる。金バンプは、ボールボンディング法,めっき法,Auボール転写法等の方法により形成することができる。
その後、ダイシングにより個片に切断される。
【0055】
以上のように、本実施形態の接着フィルム10を、半導体装置の製造方法に用いることにより、実装工程や樹脂モールド工程時の温度では耐熱性および接着性を有し、樹脂モールド後に半導体チップを支持体から剥離する工程においては易剥離性を発揮するので、簡便な方法で半導体装置を製造することができる。したがって、本実施形態の接着フィルム10を用いた半導体装置の製造方法は、生産性に優れ、製品の歩留まりを改善することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【0057】
本実施形態の接着フィルム10を、基材層12の表面に自己剥離性接着層14が積層された態様によって説明したが、本発明の効果を損なわない範囲で、基材層12と自己剥離性接着層14の間に、例えば凹凸吸収層、衝撃吸収層、易接着層等が形成されていてもよい。ここで凹凸とは5〜300μm程度のことである。
【0058】
本実施形態の接着フィルム10を、基材層12の表面に接着層16が積層された態様を示したが、本発明の効果を損なわない範囲で、基材層12と接着層16の間に、例えば凹凸吸収層、衝撃吸収層、易接着層等が形成されていてもよい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0060】
(自己剥離性評価方法)
支持基板20として、100mm正方の角板(SUS304)、接着フィルム10として製造例で得られた両面接着フィルム、半導体チップ22として直径80mmの円板(Niメッキ付鉄製)からなる積層体を用い、支持基板20の自己剥離性評価を行った。
100mm正方の角板(SUS304)(支持基板20)に、接着フィルム10の、自己剥離性接着層14面側を貼り付けた。そして、半導体チップ22としての直径80mmの円板(Niメッキ付鉄製)を両面接着テープ(接着フィルム10)の別の接着層に貼り付け、積層体とした。この積層体に測定用治具を取り付け、支持基板20の剥離性評価を行った。なお、実施例においては、支持基板20と接着フィルム10との界面の自己剥離性の試験中に、半導体チップ22と接着フィルム10との界面で剥離が生じるのを防ぐため、測定用として補強用両面テープ(製品名:P-223、日東電工社製)を用いた。
測定用サンプルをヒートブロックの上に設置し、所定の時間加熱した後、引張試験機にて自己剥離性評価を行った。
図4のように治具を用いて積層体を固定し、実施例に記載の処理を施した後、引張試験機にてフックを上方へ引っ張ることで自己剥離性の評価を下記基準にしたがって行った。引張試験機は磁石付きL字治具を用いており、引張強度が50N以上で磁石が外れる構造である。磁石が外れた場合は、剥離しないと評価した。
○:剥離(加熱60秒以内)、△:剥離(加熱180秒以内)、×:剥離しない
【0061】
(貯蔵弾性率測定方法)
半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムの基材フィルム層部分を切断し、長方形(MD方向:30mm、TD方向:10mm)の試料を作製した。動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社製:形式:RSA−III)を用いて、0〜300℃までの貯蔵弾性率(機械方向)を測定した。測定周波数は、1Hzとし、歪みは0.01〜0.3%とした。
【0062】
(基材フィルムの熱収縮率の測定方法)
基材フィルムを正方形(MD方向:15cm、TD方向:15cm)に切断し、パンチでスポット(MD方向:10cm、TD方向:10cm)を基材フィルムに開け、試料を作製した。2次元測定機((株)ミツトヨ製:形式:CRYSTAL*μV606)を用いて、基材フィルムに開けられたスポット間隔を測定した。測定後、試料を所定温度のオーブン内にサンプルを静置した。所定時間後に該サンプルをオーブンから取り出し、スポット間隔を測定した。加熱前後での熱収縮率(%)を以下の式に基づいて、MD方向、TD方向について算出した。試料10枚について測定しその基材フィルムの熱収縮率とした。但し式中のL
0は加熱前のスポット間隔、Lは加熱後のスポット間隔を示す。
熱収縮率(%)=100×(L−L
0)/L
0【0063】
(製造例1)
500mL4口フラスコにメチルマロン酸(東京化成工業(株)製)100g及び無水酢酸100gを装入した。98%硫酸0.5gを続けて装入した後、滴下漏斗にてメチルエチルケトン75gを1時間かけて滴下した。室温にて24時間攪拌した後、酢酸エチル200g及び蒸留水300gを加えて分液ロートで有機層の抽出を行った。得られた有機層をエバポレーターで溶媒を留去することで、2−エチル−2,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオンが75g得られた。H
1NMR(300MHz)を測定したところ、以下のようなピークが得られた。δ=1.04−1.12(m,3H),1.57−1.61(m,3H),1.71(s,1.12H),1.77(s,1.92H),1.95−2.16(m,2H),3.53−5.65(m,1H)
【0064】
(製造例2)
500mL4口フラスコに製造例1で合成した2−エチル−2,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン92g及びジメチルホルムアミド100gを装入した。炭酸カリウム95gを続けて装入した後、滴下漏斗にて4−クロロメチルスチレン97gを1時間かけて滴下した。40℃にて24時間攪拌した後、酢酸エチル400gを加えヌッチェで生成した固体を濾別した。蒸留水300mLを用いて、分液ロートで2回洗浄を行った後、エバポレーターで溶媒を留去することで、5−(p−スチリルメチル)−2−エチル−2,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオンが132g得られた。H
1NMR(300MHz)を測定したところ、以下のようなピークが得られた。δ=0.43(t,8.1Hz,1.6H),0.83(s,1.3H),0.94(t,8.1Hz,1.4H),1.27(q,8.1Hz,1.2H),1.57(s,1.7H),1.75(s,3H),1.80(q,8.1Hz,0.8H),3.31(s,2H),5.22(d,12.0Hz,1H),5.70(d,19.5Hz,1H),6.65(dd,12.0,19.5Hz,1H),7.16(d,9.0Hz,2H),7.31(d,9.0Hz,2H)
【0065】
(製造例3)
重合反応機に脱イオン水150重量部、重合開始剤として4,4'−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド(大塚化学(株)製、商品名:ACVA)を0.625重量部、アクリル酸−2−エチルヘキシル62.25重量部、アクリル酸−n−ブチル18重量部、及びメタクリル酸メチル12重量部、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル3重量部、メタクリル酸2重量部、及びアクリルアミド1重量部、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート〔日本油脂(株)製、商品名:ADT−250〕1重量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(エチレンオキサイドの付加モル数の平均値:約20)の硫酸エステルのアンモニウム塩のベンゼン環に重合性の1−プロペニル基を導入したもの〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕0.75重量部を装入し、攪拌下で70〜72℃において8時間乳化重合を実施し、アクリル系樹脂エマルションを得た。これを9重量%アンモニア水で中和(pH=7.0)し、固形分42.5重量%のアクリル系接着剤Sとした(アクリル系接着剤Sは感圧接着剤)。
【0066】
(製造例4)
500mLの4口フラスコに、製造例2で合成した5−(p−スチリルメチル)−2−エチル−2,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン15g、アクリル酸ブチル20g、アクリル酸2−エチルヘキシル63g、メタクリル酸2g及び酢酸エチル100gを加えて室温にて混合した。さらに、2,2'−アゾビスバレロニトリル0.2gを加えて、75℃まで昇温した後、10時間攪拌を続けることで、分子量30万のアクリル系接着剤Aを得た(アクリル系接着剤Aは自己剥離性の接着剤)。示差走査熱量分析((株)島津製作所製、DSC−60)によりガラス転移点を測定したところ、14℃であった。
【0067】
(製造例5)
製造例3で得られたアクリル系接着剤S100重量部を採取し、さらに9重量%アンモニア水を加えてpH9.5に調整した。次いで、エポキシ系架橋剤〔日本触媒化学工業(株)製、商品名:ケミタイトPz−33〕0.8重量部を添加して接着剤塗工液を得た。
【0068】
得られた接着剤塗工液を、表面が離型処理されたPETフィルム(離型フィルム)上にアプリケータを用いて乾燥皮膜の厚さが10μmの厚みになるように塗工した後、120℃で5分間加熱して塗工液を乾燥させ、感圧接着層付きPETフィルムを得た。次いで、基材層12である収縮性PETフィルム(テフレックスFT−50、厚さ50μm、帝人デュポンフィルム株式会社製)の両面に、感圧接着層が収縮性PETフィルム側となるように貼り付けた。
さらに60℃にて3日間養生することで両面接着フィルム1とした(離型フィルム/感圧接着層/基材フィルム/感圧接着層/離型フィルム)。
【0069】
(製造例6)
製造例4で得られたアクリル系接着剤A 100重量部及びエポキシ化合物(三菱ガス化学(株)製、TETRAD−C)2重量部、酢酸エチル50重量部を加えて接着剤塗工液とした。
得られた接着剤塗工液を、表面が離形処理されたPETフィルム(離型フィルム)上にアプリケータを用いて乾燥皮膜の厚さが10μmの厚みになるように塗工した後、120℃で5分間加熱して塗工液を乾燥させ、自己剥離性接着層付きPETフィルムを得た。次いで、基材層12である収縮性PETフィルム(テフレックスFT−50、厚さ50μm、帝人デュポンフィルム株式会社製)の一方の面に、自己剥離性接着層が収縮性PETフィルム側となるように貼り付けた。
さらに、製造例3で得られたアクリル系接着剤S100重量部を採取し、さらに9重量%アンモニア水を加えてpH9.5に調整した。次いで、エポキシ系架橋剤〔日本触媒化学工業(株)製、商品名:ケミタイトPz−33〕0.8重量部を添加して接着剤塗工液を得た。
得られた接着剤塗工液を、表面が離形処理されたPETフィルム(離型フィルム)上にアプリケータを用いて乾燥皮膜の厚さが10μmの厚みになるように塗工した後、120℃で5分間加熱して塗工液を乾燥させ、感圧接着層付きPETフィルムを得た。次いで、収縮性PETフィルム上の、自己剥離性接着層を備える面とは反対側の面に、感圧接着層が収縮性PETフィルム側となるように貼り付けた。
さらに60℃にて3日間養生することで両面接着フィルム2とした(離型フィルム/自己剥離性接着層/基材フィルム/感圧接着層/離型フィルム)。
【0070】
(製造例7)
基材フィルムをPETフィルム(ルミラー、厚さ50μm、東レ株式会社製)に変更した以外は、製造例6と同様にして、両面接着フィルム3を得た(離型フィルム/自己剥離性接着層/基材フィルム/感圧接着層/離型フィルム)。
【0071】
(製造例8)
基材フィルムをPETフィルム(AD−50、厚さ50μm、帝人デュポンフィルム株式会社製)に変更した以外は、製造例6と同様にして、両面接着フィルム4を得た(離型フィルム/自己剥離性接着層/基材フィルム/感圧接着層/離型フィルム)。
【0072】
(製造例9)
基材フィルムをPETフィルム(テイジンテトロンフィルムG2−50、厚さ50μm、帝人デュポンフィルム株式会社製)に変更した以外は、製造例6と同様にして、両面接着フィルム5を得た(離型フィルム/自己剥離性接着層/基材フィルム/感圧接着層/離型フィルム)。
【0073】
(製造例10)
【0074】
基材フィルムをPETフィルム(エンブレットS−50、厚さ50μm、ユニチカ株式会社製)に変更した以外は、製造例6と同様にして、両面接着フィルム6を得た(離型フィルム/自己剥離性接着層/基材フィルム/感圧接着層/離型フィルム)。
【0075】
(実施例1)
100mm正方の角板(SUS304)に、直径84mmの円形に切った両面接着フィルム2から離型フィルムを剥離し、自己剥離性接着層側を貼り付けた。その後、直径80mmの円板(Niメッキ付鉄製)を両面接着フィルム2の感圧接着層に貼り付け、積層体とした。
この積層体に
図4のように測定用治具を取り付け、測定用サンプルとした。
図4のようにヒートブロックにて210℃で60秒間加熱を行い、自己剥離性接着層と100mm正方の角板とが接着している部分が剥離しているのを確認した後、引張試験機にて剥離性評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0076】
(実施例2)
100mm正方の角板(SUS304)に、直径86mmの円形に切った両面接着フィルム2から離型フィルムを剥離し、自己剥離性接着層側を貼り付けた。その後、直径80mmの円板(Niメッキ付鉄製)を両面接着フィルム2の感圧接着層に貼り付け、積層体とした。
この積層体に
図4のように測定用治具を取り付け、測定用サンプルとした。
図4のようにヒートブロックにて210℃で60秒間加熱を行い、自己剥離性接着層と100mm正方の角板とが接着している部分が剥離しているのを確認した後、引張試験機にて剥離性評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0077】
(実施例3)
両面接着フィルム3を用いた以外は実施例1と同様にして測定用サンプルを得た。
図4のようにヒートブロックにて210℃で60秒間加熱したが、自己剥離性接着層と100mm正方の角板とが接着している部分は剥離していなかった。さらに120秒間加熱し(合計180秒間加熱)、自己剥離性接着層と100mm正方の角板とが接着している部分が剥離しているのを確認した。その後、引張試験機にて剥離性評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0078】
(比較例1)
100mm正方の角板(SUS304)に、直径84mmの円形に切った両面接着フィルム1から離型フィルムを剥離し、一方の感圧接着層側を貼り付けた。その後、直径80mmの円板(Niメッキ付鉄製)を両面接着フィルム1の他方の面に貼り付け、積層体とした。
この積層体に
図4のように測定用治具を取り付け測定用サンプルとした。
図4のようにヒートブロックにて210℃で60秒間加熱したが、感圧接着層と100mm正方の角板とが接着している部分は剥離していなかった。さらに120秒間加熱したが(合計180秒間加熱)、感圧接着層と100mm正方の角板とが接着している部分は剥離していなかった。その後、引張試験機にて剥離性評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0079】
(比較例2〜4)
両面接着フィルム4〜6を用い、自己剥離性接着層を100mm正方の角板(SUS304)に貼り付けた以外は比較例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
この出願は、2013年8月29日に出願された日本出願特願2013−178515号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。