特許第6138300号(P6138300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6138300有機オプトエレクトロニックデバイス及びそれをカプセル化する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138300
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】有機オプトエレクトロニックデバイス及びそれをカプセル化する方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20170522BHJP
   H05B 33/06 20060101ALI20170522BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170522BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20170522BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   H05B33/04
   H05B33/06
   H05B33/14 A
   H05B33/12 E
   H05B33/10
【請求項の数】22
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-22663(P2016-22663)
(22)【出願日】2016年2月9日
(62)【分割の表示】特願2013-504364(P2013-504364)の分割
【原出願日】2011年4月1日
(65)【公開番号】特開2016-105418(P2016-105418A)
(43)【公開日】2016年6月9日
【審査請求日】2016年2月10日
(31)【優先権主張番号】1001522
(32)【優先日】2010年4月12日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510225292
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(72)【発明者】
【氏名】トニ、マンドロン
(72)【発明者】
【氏名】ベルナール、アバンチュリエ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリア、ド、ジローラモ
【審査官】 本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−524473(JP,A)
【文献】 特開2003−282238(JP,A)
【文献】 特開2003−282239(JP,A)
【文献】 特開2003−282241(JP,A)
【文献】 特開2001−284041(JP,A)
【文献】 特表2012−504304(JP,A)
【文献】 特開2007−080569(JP,A)
【文献】 特開2006−120635(JP,A)
【文献】 特開平11−329754(JP,A)
【文献】 特開2001−284042(JP,A)
【文献】 特開2006−244946(JP,A)
【文献】 特開2009−037799(JP,A)
【文献】 特開2008−235089(JP,A)
【文献】 特開2005−038842(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/113177(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50 − 51/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機オプトエレクトロニックデバイス(2)であって、前記デバイスが、密封カプセル化多層構造(1、101、201)で被覆した少なくとも一個の活性発光区域(5)を有する発光ユニット(4)、及び前記各活性区域に隣接する電気的接続区域(6)を含んでなり、前記カプセル化構造が、内部多層(F1/C1)を包含する、n(n≧1)個の無機フィルム(F1、...、Fn)/感光性重合体層(C1、...、Cn)多層を含んでなり、前記フィルム(F1)が、前記各活性区域を覆い、液相で堆積した層C1が上に載っており、前記感光性重合体層の各層(C1、...、Cn)がフォトリソグラフィーレジストに基づき、パターンを有し、隣接する前記接続区域の手前で途切れる少なくとも一個の構造化された包み込み部分(10、110、210、211、212)において、前記活性区域の周縁部(5a)の周りに伸びることにより、前記無機フィルム(F1、...、Fn)を覆い、n≧2の場合、前記各層(C2、...、Cn)が、すぐ下にある前記多層の前記層(C1、...、Cn−1)を包み込む構造になっているので、前記各層(C1、...、Cn)が前記フィルム(F1、...、Fn)を不動態化し、下方の前記活性区域の側部を、この層(C1、...、Cn)のパターン化に使用する溶剤及び現像溶液から保護する、デバイス(2)。
【請求項2】
前記各フィルム(F1、...、Fn)が、原子層堆積(ALD)膜またはプラズマ強化化学蒸着(PECVD)膜であり、式AlxOy、SiOx、SixNy、SiOxNy、ZnSe、Sbの化合物及び透明導電性酸化物(TCO)化合物からなる群から選択される少なくとも一種の無機化合物に基づく、請求項1に記載のデバイス(2)。
【請求項3】
前記透明導電性酸化物(TCOs)の少なくとも一つが、金属と組み合わされてなる、請求項2に記載のデバイス(2)
【請求項4】
前記各フィルム(F1、...、Fn)が、ALD膜であり、少なくとも一種の酸化アルミニウムAlxOyに基づき、前記各層(C1、...、Cn)の前記少なくとも一つの包み込み部分(10、110、210、211、212)が、前記フィルムの周囲を越えて前記発光ユニット(4)に伸びる、請求項2または3に記載のデバイス(2)。
【請求項5】
前記少なくとも一種の酸化アルミニウムAlxOyが、SiOx、SixNy、またはSiOxNyの化合物と組み合わされてなる、請求項4に記載のデバイス(2)
【請求項6】
前記各フィルム(F1’)が、ALD膜であり、少なくとも一種の透明導電性酸化物(TCO)に基づき、前記各層(C1、...、Cn)の前記少なくとも一つの包み込み部分(10)が、伸びてこのフィルムの周囲と接触する、請求項2または3に記載のデバイス(2)。
【請求項7】
前記少なくとも一種の透明導電性酸化物(TCO)が、式ZnOの酸化亜鉛またはZnO:Alの薄膜と組み合わされてなる、請求項6に記載のデバイス(2)
【請求項8】
前記デバイス(2)、前記活性区域(5)により規定される少なくとも一個のカラーマイクロディスプレイが形成され、前記カラーマイクロディスプレイの各画素に対応する各カラードットに対向して設けられたカラーフィルター(R、G、B)または色変化手段を含んでなる請求項1に記載のデバイス(2)。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のデバイス(2)をカプセル化する方法であって、
a)内部無機フィルム(F1)を前記少なくとも一つの活性区域(5)上に、原子層堆積(ALD)により、またはプラズマ強化化学蒸着(PECVD)により堆積させる工程であって、前記内部無機フィルム(F1)が、少なくとも一種の無機化合物及び透明導電性酸化物(TCO)に基づく工程、
b)前記発光ユニット(4)を、液相で、スピンコーティングにより、堆積させた内部の感光性重合体層(C1)で覆うことで、前記層が連続的に前記各フィルム(F1)及び隣接する接続区域(6)を覆う工程、
c)前記層(C1)を、発光ユニットの予め設定した領域で、前記層(C1)を露光放射線から選択的にマスキングして露光させ、一方で、前記露光に続いて、前記フィルム(F1)で覆われた前記各活性区域の上、及び前記各隣接活性区域の前記包み込み部分からある距離だけ離れて位置する前記少なくとも一つの包み込み部分(10、110、210、211、212)の中で重合し、他方、前記接続区域を含む前記ユニットの前記区域の残り全体にわたって解重合し、前記重合した層(C1)が前記フィルム(F1)及び前記活性区域をカプセル化し、工程d)の際にそれらを保護する工程、および次いで
d)前記重合した層(C1)を、浴中に、例えば水酸化テトラメチルアンモニウムの浴中に、浸漬することにより現像し、次いで(F2、…Fn)/感光性重合体層(C2、…Cn)多層が堆積され、各フィルム(F2、…Fn)が前記層(C1、…Cn−1)上に堆積され、重合した層(C2、…Cn)が前記層(C1、...Cn−1)を包み込む工程、
を連続的に含んでなる、方法。
【請求項10】
前記少なくとも一種の無機化合物が、式AlxOy、SiOx、SixNy、SiOxNy、ZnSe、Sbの化合物及からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも一種の前記透明導電性酸化物(TCO)が、金属と組み合わされてなる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
事前に前記内部無機フィルム(F1)上に、接着促進剤を堆積させる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記接着促進剤が、シランである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程a)において、前記無機フィルム(F1)が、前記発光ユニット(4)の外部電極上に堆積される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記層(C1、...、Cn)には、ポジ型フォトリソグラフィーレジストに基づく層を使用し、工程c)で、前記活性区域の上にある前記層(C1、...、Cn)が、前記周縁部(5a)に面し、かつ、越えるマスク(9)により選択的にマスクされるので、この層が露光から保護され、前記少なくとも一つの対応する包み込み部分(10、110、210、211、212)を含めて重合したままになり、これとは対照的に、この層(C1、...、Cn)の残りの部分では、この露光により解重合し、溶解する、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
式AlxOy、SiOx、SixNy、SiOxNy、ZnSe及びSbの化合物からなる群から選択された少なくとも一種の誘電体無機化合物が、工程a)で堆積される前記フィルム(F1、...、Fn)に使用され、工程d) に続いて、前記層(C1、...、Cn)の前記少なくとも一つの包み込み部分(10、110、210、211、212)が、発光ユニット(4)の上で、このフィルムの周囲を越えて伸びる、請求項9〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも一種の透明導電性酸化物(TCO)が、工程a)で堆積されるべき前記フィルム(F1’)に使用され、工程d) に続いて、このフィルムが、前記活性区域(5)の上に載る突き出た重合層(C1、...、Cn)をマスクとして使用し、湿式エッチングされ、この層の前記少なくとも一つの包み込み部分(10)が伸びてこのフィルムの周囲と接触し、このフィルムがその他の所では前記ユニット(4)から除去される、請求項9〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも一種の透明導電性酸化物(TCO)が、式ZnOの酸化亜鉛またはZnO:Alの薄膜と組み合わされてなる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
工程d)に続いて、前記重合層(C1、...、Cn)を乾式エッチング操作を使用してエッチングし、前記層の厚さを減少させる、請求項9〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記乾式エッチング操作が、反応性イオンエッチング(RIE)法または酸素プラズマである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
工程d)に続いて、低温で外部無機バリヤーフィルム(Fe)を一致するように堆積させ、前記フィルムが、前記活性区域(5)の上に載り、前記対応する層(C1、...、Cn)の全て及びその隣接接続区域(6)を覆い、この層の前記少なくとも一つ包み込み部分(10、110、210、211、212)を外部から分離するように製造される、請求項9〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記一致する堆積が、少なくとも一種の誘電体化合物の原子層堆積(ALD)またはプラズマ強化化学蒸着(PECVD)により製造される、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄いフィルムを含んでなる密封カプセル化(encapsulation)により周囲の空気から保護される、有機オプトエレクトロニックデバイス、例えばディスプレイ、照明または信号デバイス、及びそのようなデバイスをカプセル化する方法に関する。本発明は、特に有機発光ダイオード(OLED)を含んでなるデバイス、例えばマイクロディスプレイ、に応用される。
【背景技術】
【0002】
有機オプトエレクトロニックデバイス、例えばOLED、有機光電池を含んでなるデバイス及び有機TFTを含んでなるデバイスは、それらの敏感な構成部品が雰囲気の気体状化学種(主として酸素及び水蒸気)から確実に保護されるように、カプセル化する必要があることが分かっている。これは、好適な保護がなされていない場合、デバイスが続いて劣化し、この劣化が、OLEDの場合には、主として非発光性のブラックスポットとなって現れる危険性があるためであり、このスポットは、実際、ダイオードの中に水蒸気が浸透し、カソード(またはアノード)/有機フィルムの界面を劣化させた結果生じたものである。
【0003】
このカプセル化は、典型的には、特に水の透過性が低い特殊な接着剤を使用して有機デバイスに接着したガラスキャップを使用して達成される。一般的に、基材とキャップとの間には、固体の水分ゲッターを加え、デバイスの寿命を増加させる。
【0004】
特定の用途には、但し、コストを下げるためにも、バリヤーとして作用する薄いフィルムが開発されており、その役割は、キャップ/ゲッターアセンブリーに匹敵する、すなわち下にあるデバイスを湿分の攻撃から保護することである。一般的に、これらのバリヤーフィルムは、酸化物、窒化物またはオキシ窒化物であるか、または、特定の場合、つまり発光装置がバリヤーフィルムが透明でなければならない上部発光構造でない限り、薄い金属フィルムでよい。
【0005】
これらの薄いフィルムは、標準的な真空堆積方法、例えば化学的蒸着(CVD)、所望によりプラズマ強化化学蒸着(RECVD)、原子層堆積(ALD、ALCVDと呼ばれることもある)、または蒸発及びスパッタリングを含む物理的蒸着(PVD)方法、により堆積させる。バリヤーを製造する場合、CVD及び具体的にはALD技術が特に好ましいが、これは、これらの技術が、低温技術であり、110℃未満であることが最も多く、緻密で、ピンホールがほとんど無く、100%一致し、OLEDと相性がよいバリヤーフィルムを与えるためである。例えばALDにより低温で堆積したAlの、ピンホール密度が38/cmまで低いフィルムが得られている。それにも関わらず、マイクロディスプレイ用途には、このピンホール密度は高すぎ、これは、面積45mmのマイクロディスプレイを考えると、上記の密度は1マイクロディスプレイあたり17個のピンホールにつながり、すなわちOLEDディスプレイ上に17個のダークスポットが現れる可能性があるからである。実際、製造方法に固有のこれらのダークスポットは顕微鏡的であっても、それらの存在は、画像が好適な光学系により拡大されるOLEDデバイスでは受け容れられず、さらに薄膜カプセル化の際のデバイスの表面上にある好ましくない粒子の存在による、追加の「外部の」ダークスポットもさらに考慮する必要がある。
【0006】
その上、ALDにより堆積させたAlも、Al(OH)に加水分解する傾向があるので、水から長期間保護することが必要である。従って、より化学的に不活性で、より安定した無機材料、例えば低温PECVDにより堆積させたSiO、SiまたはSiO、を使用して、そのようなAlフィルムが形成するバリヤーを耐久性良く不動態化することが求められており、その不動態化により、これらのAlフィルムにおける残留ピンホールも充填することができる。
【0007】
変形として、これらのALD堆積させたAlフィルムを、上記の好ましくない粒子の欠点を軽減すると考えられる「平にする」重合体に基づく比較的厚い有機フィルムで、これらの粒子を、有機及び無機フィルムの交互の多層、例えばVitexから市販されているBarix(商品名)で被覆することにより、不動態化することが求められている。この解決策の欠点の一つは、気相「フラッシュ」蒸発方法(すなわち、モノマーの蒸発、基材上への凝縮、次いでUV硬化)を使用することであるり、この方法では、時間に関して比較的損失が大きい。
【0008】
時間に関してあまり損失が大きくない他の堆積技術、例えば液相堆積、を使用することは考えにくく、これは液相堆積が、下にある発光ユニットのフィルムを溶解させ易い溶剤を含む重合体溶液を必要とするためである。
【発明の概要】
【0009】
本発明の一つの目的は、上記の欠点を軽減しながら、発光ユニットの信頼性及び耐久性のある保護を低コストで与える、有機オプトエレクトロニックデバイス、例えばOLEDディスプレイ、照明または信号デバイス、を提供することであり、このデバイスは、密封カプセル化多層構造で被覆した少なくとも一個の活性発光区域を有する発光ユニット、及び該または各活性区域に隣接する電気的接続区域を含んでなり、カプセル化構造は、内部多層F1/C1を包含する、n(n≧1)個の無機フィルムF1、...、Fn/感光性重合体層C1、...、Cn多層を含んでなり、フィルムF1は、該または各活性区域を覆い、液相中で堆積した層C1が上に載っている。
【0010】
この目的には、本発明によるデバイスは、該または各層C1、...、Cnが(フォトリソグラフィーにより)パターン化され、隣接する接続区域の手前で途切れる少なくとも一個の構造化された包み込み部分で、該または各活性区域の周縁部の周りに伸びることにより、フィルムF1、...、Fnを覆い、n≧2の場合、該または各層C2、...、Cnは、すぐ下にある多層の層C1、...、Cn−1を包み込む構造になっているので、該または各層C1、...、CnがフィルムF1、...、Fnを不動態化し、下方の該または各活性区域を、この層C1、...、Cnのパターン化に使用する溶剤及び現像溶液から横方向で保護する。
【0011】
以下に説明するように、このパターン化された構造は、発光ユニットの該または各活性区域の該または各感光性層を完全に包み込み(すなわち構造は、この活性区域の外側面だけでなくその側面もカプセル化する)、フォトリソグラフィーを使用して、すなわちマスクを使用する感光性層の局所的露光、及びこの層の現像により、精密に得られ、このパターンにより、各活性区域を包み込む少なくとも一つの部分を構造化し、従って自由に残しておかなければならない隣接する電気的接続区域に対して、及び隣接する活性区域を包み込む部分に対しても、精密に配置することが可能となる。
【0012】
有利には、該または各感光性層C1、...、Cnは、ポジ型フォトリソグラフィーレジストに基づくことができる。「ポジ型レジスト」の表現は、知られているように、堆積物の上に重合し、マスクを通してUVに選択的に露光された部分が解重合し、次いで現像の際に溶解するレジストを意味する。変形として、このレジストは、ネガ型レジストでもよい(すなわち、その露光した区域が重合し、現像の際に不溶になる)。
【0013】
本発明のもう一つの特徴により、該または各フィルムF1、...、Fnは、該または各活性区域上に、原子層堆積(ALD)またはプラズマ強化化学蒸着(PECVD)により堆積させることができ、式Al、SiO、Si、SiO、ZnSe、Sbの化合物及び所望により金属、例えばアルミニウム、と組み合わせた透明導電性酸化物(TCO)からなる群から選択される少なくとも一種の無機化合物に基づく。
【0014】
本発明の第一態様により、該または各フィルムF1、...、Fnは、ALDにより堆積され、少なくとも一種の酸化アルミニウムAlに基づき、所望により式SiO、SiまたはSiOの化合物と組み合わされ、該または各層C1、...、Cnの該少なくとも一つの包み込み部分は、このフィルムの周囲を越えて発光ユニットに伸びることができる。
【0015】
本発明の第二態様により、該または各フィルムF1、...、Fnは、ALDにより堆積され、少なくとも一種の透明導電性酸化物(TCO)に基づき、所望により金属、例えば式ZnOの酸化亜鉛またはZnO:Alの薄膜と組み合わされ、該または各層C1、...、Cnの該少なくとも一つの包み込み部分は、伸びてこのフィルムの周囲と接触することができる。
【0016】
第一及び第二態様の両方に関して、該または各感光性層C1、...、Cnは、有利には酸化アルミニウムまたは酸化亜鉛に基づくフィルムF1、...、Fnの優れた不動態性により、湿式堆積させることができ、そのフィルムは、予備カプセル化を付与することが分かる。
【0017】
有利なことに、該または各活性区域を分離している該または各層C1、...、Cnは、それ自体、外部の無機誘電体バリヤーフィルムで覆うことができ、そのバリヤーフィルムは、該または各活性区域の上に載り、その全てまたはその対応する最後の層C1、...、Cn及びその隣接する接続区域を覆い、この層の該少なくとも一つの包み込み部分を外部から分離する。
【0018】
本発明のもう一つの態様により、該デバイスは、保護プレート(できれば、発光ユニットにより放射される光に対して透明な材料、例えばガラスまたはプラスチックから製造される)を備え、このプレートは、該または各活性区域の上に載るカプセル化構造に接着剤により圧力下で接着し、該または各活性区域を包み込む該部分は刻み目を付けられ、例えば規則正しい銃眼形状を与えられ、このユニットに対する包み込み部分の接着に悪影響を与えずに、接着剤と、発光ユニットの2個の隣接する包み込み部分の間に位置する区域との間の接触を最大にする。
【0019】
本発明の態様の変形により、該または各層C1、...、Cnはパターン化され、その該少なくとも一つの包み込み部分が、連続的に該または各活性区域の該縁部を越えて活性区域をカプセル化する突き出た周囲部分、及びこの突き出た部分からある距離だけ離れた位置にあり、この部分を取り囲む少なくとも一つの補助的な周囲の包み込み部分を含んでなり、複数の補助部分の場合、互いに取り囲み、該外側の誘電体バリヤーフィルムがこれらの補助部分を覆い、互いに平行にある基材の平面に対して直角な複数の表面を形成し、その表面は、活性区域に向かう水蒸気の横方向の浸透に対して多くの障害物を形成する。
【0020】
本発明の他の特徴によれば、該オプトエレクトロニックデバイスは、多数の活性区域、例えばマイクロディスプレイ、を含んでなることができ、その区域は、全てフィルムF1、...、Fn、及び層C1、...、Cnが上に載っており、それぞれ下方の該縁部を越えているが、各隣接活性区域の該隣接する包み込み部分からある距離だけ離れており、外部の無機誘電体フィルムが所望により、活性区域の各層またはそれぞれの最後の層の上に載り、それらの隣接する接続区域も覆っている。
【0021】
有利には、このデバイスは、活性区域により限定された少なくとも一個のカラーマイクロディスプレイを形成することができ、該カラーマイクロディスプレイの各画素に対応するカラードットに対向して設けられたカラーフィルターまたは色変化手段を含んでなる。
【0022】
さらに有利には、このデバイスは、その側部の少なくとも一方に、発光ユニットを被覆した基材を含んでなり、該発光ユニットは、内部及び外部の少なくとも2個の電極を含んでなるOLEDユニットであり、電極の間に発光構造が挟まれており、少なくともその一方が、放射される光に対して透明であり、カプセル化構造は、外部電極を覆っている。
【0023】
本発明によれば、例えば上に規定するようなデバイスをカプセル化する方法は
a)内部無機フィルムF1を該少なくとも一つの活性区域上に、例えば該発光ユニットの外部電極上に、原子層堆積(ALD)により、またはプラズマ強化化学蒸着(PECVD)により、堆積させる工程であって、このフィルムF1が、式Al、SiO、Si、SiO、ZnSe、Sbの化合物及び所望により金属と組み合わせた透明導電性酸化物(TCO)の化合物からなる群から好ましくは選択される少なくとも一種の無機化合物に基づく工程、
b)発光ユニットを、液相で堆積させた内部の感光性重合体層C1で覆うことで、該層が連続的に該または各フィルムF1及び隣接する接続区域も覆う工程であって、接着促進剤、例えばシラン、を所望により、このフィルムF1上に前もって堆積させる工程、
c)層C1を、発光ユニットの予め設定した領域で、露光放射線から選択的にマスキングして露光させ、一方で、この露光に続いて、フィルムF1で覆われた該または各活性区域の上、及び該または各隣接活性区域の包み込み部分からある距離だけ離れて位置する該少なくとも一つの包み込み部分の中で重合し、他方、該または各接続区域を含むユニットの区域の残り全体にわたって解重合し、重合した層C1がフィルムF1及び該または各活性区域をカプセル化し、工程d)の際にそれらを保護する工程、
d)重合した層C1を、浴中に、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の浴中に、浸漬することにより現像する工程であって、所望により、層C1を追加露光する工程、及び次いで
e)これらの工程a)〜d)を所望により少なくとも一回繰り返し、少なくとも一つの他の無機フィルムF2、...、Fn/感光性重合体層C2、...、Cn多層を堆積させる工程であって、該または各フィルムF2、...、Fnが、層C1、...、Cn−1上に堆積し、該または各重合層C2、...、Cnが層C1、...、Cn−1を包み込む工程
を連続的に含んでなる。
【0024】
工程a)は、好ましくはALDにより行い、低温堆積により、下方表面にできるだけ近いマイクロ−またはナノ−レリーフに従う、高密度の、非常に低い透過性を有するフィルムを得ることができる。
【0025】
このALDにより堆積させたフィルムは、極性または非極性溶剤、例えばエタノール、水、アセトン及び光レジスト現像剤/剥離剤、例えばTMAH及びROR、を使用できる。
【0026】
工程b)に関しては、どのようなコーティング技術、例えばスピンコーティングまたはディップコーティング、を使用しても行うことができる。
【0027】
好ましくは、層C1、...、Cn用の感光性重合体には、ポジ型フォトリソグラフィーレジストを使用し、工程c)で、該または各活性区域の上にある該または各感光性層は、該周縁部に面し、かつ、越えるマスクにより選択的にマスクされるので、この層が、それによって露光から保護され、該少なくとも一つの対応する包み込み部分を含めて重合したままになり、これとは対照的に、この層の残りの部分では、この露光により解重合し、溶解する。
【0028】
上記の本発明の第一態様により、式Al、SiO、Si、SiO、ZnSe、Sbの化合物からなる群から選択された少なくとも一種の誘電体無機化合物は、工程a)で堆積されるべき該または各フィルムF1、...、Fnに使用され、工程d) に続いて、該または各層C1、...、Cnの該少なくとも一つの包み込み部分は、発光ユニットの上でこのフィルムの周囲を越えて伸びる。
【0029】
上記の本発明の第二態様により、金属、例えば式ZnOの酸化亜鉛またはZnO:Alの薄膜と所望により組み合わされた少なくとも一種の透明導電性酸化物(TCO)は、工程a)で堆積されるべき該または各フィルムF1、...、Fnに使用され、工程d) に続いて、このフィルムは、該または各活性区域の上に載る突き出た重合層C1、...、Cnをマスクとして使用し、湿式エッチングされ、この層の該少なくとも一つの包み込み部分が伸びてこのフィルムの周囲と接触し、このフィルムは、その他の所ではユニットから除去される。
【0030】
本発明の他の特徴により、工程d)に続いて、該または各重合層C1、...、Cnを乾式エッチング操作、例えば反応性イオンエッチング(RIE)法または酸素プラズマ、を使用してエッチングし、該層の厚さを減少させ、従ってマイクロディスプレイの画素間のクロストークの問題に関する規格に適合させることができる。
【0031】
本発明の他の特徴により、工程d)に続いて、及び所望により該乾式エッチング操作に続いて、低温で外部無機バリヤーフィルムを一致するように堆積させることができ、該フィルムは、該または各活性区域の上に載り、対応する層C1、...、Cnの全て及びその隣接接続区域を覆い、この層の該少なくとも一つ包み込み部分を外部から分離し、この一致した堆積は、少なくとも一種の誘電体化合物の原子層堆積(ALD)またはプラズマ強化化学蒸着(PECVD)により好ましくは製造される。
【0032】
このようにして得られるカプセル化構造は、堅牢で一体的なカプセル化を形成し、バリヤー多層の厚さが特に重要である特殊な場合(特に、画素間のクロストークを防止するために多層が十分に薄いマイクロディスプレイの場合)、上記の乾式エッチング操作により層C1、...、Cnを薄くすることにより、マイクロディスプレイの各画素を分離する距離及び対応するカラーフィルターを、少なくともバリヤー多層で、完全に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の他の利点、特徴及び詳細は、例としてのみ提供される添付の図面を参照しながら、記載する下記の説明から明らかとなる。
図1】特に誘電体フィルムF1を覆う発光ユニットをポジ型レジスト層C1で被覆する工程b)後の、製造中における、本発明の第一態様によるマイクロディスプレイを含んでなるデバイスの模式断面図である。
図2】層C1を露光する工程c)を示す、図1におけるデバイスの模式断面図である。
図3】層C1を現像する工程d)後の、図2におけるデバイスの模式断面図である。
図4】露光し、現像した層C1を乾式エッチングする後続の工程を示す、図3におけるデバイスの模式断面図である。
図5】乾式エッチング工程後に層C1上に無機バリヤーフィルムを堆積する工程の結果を示す、図4におけるデバイスの模式断面図である。
図6】本発明の該第一態様による製造方法の最後における、図5におけるデバイスにカラーフィルターを備えた透明な保護キャップを接着する最終工程の後を示す、図4におけるデバイスの模式断面図である。
図7】4個のマイクロディスプレイを含んでなるデバイスの2個のフィールドの部分的な模式上面図であり、本発明の一つの代表的な態様によりパターン化された感光性層C1の包み込み部分が、隣接するマイクロディスプレイに対して、該マイクロディスプレイの一つに関して示されている。
図8】パターン化された感光性層の代表的な突き出た境界を、このマイクロディスプレイの活性区域に対して示す、図7に示す本発明の代表的な態様によるデバイスのマイクロディスプレイの模式上面図である。
図9】パターン化された感光性層の銃眼構造を有する包み込み境界部分を、このマイクロディスプレイの活性区域に対して示す、図8に例示する本発明の態様の一変形によるデバイスのマイクロディスプレイの部分的な模式上面図である。
図10】ユニット全体にわたって堆積させた導電性フィルムF1’を覆うポジ型レジストの露光した層C1を現像する工程d)の後の製造中における、本発明の第二態様によるマイクロディスプレイを含んでなるデバイスの模式断面図である。
図11】このフィルムF1’を湿式エッチングして上の層C1から選択的に除去する後続の工程の後の、図10におけるデバイスの模式断面図である。
図12】該湿式エッチング工程の後に、この層C1上に無機バリヤーフィルムを堆積させる工程の後の、図11におけるデバイスの模式断面図である。
図13】放射される波長の関数として、光学定数n及びkの2本の曲線をそれぞれ示す、本発明の第二態様による導電性無機フィルムF1’の光学特性に関するグラフである。
図14】無機フィルムF1を上に載せたこのマイクロディスプレイを覆う感光性層C1に関して、活性区域を連続的に越える包み込み部分からある距離だけ離れた、及び周囲にある2個の補助的包み込み部分を示す、本発明のもう一つの代表的態様によるデバイスのマイクロディスプレイの模式上面図である。
図15】該層C1の上に載る外部無機バリヤーフィルムに接着した透明保護キャップをさらに示す、図14におけるマイクロディスプレイの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
これらの図に例示された多層カプセル化構造1、101、201は、例えば、発光オプトエレクトロニックデバイス2の外部放射表面を覆い、デバイスの敏感な構成部品を、周囲の空気中にある水分及び酸素から保護する。
【0035】
例示されたオプトエレクトロニックデバイス2は、例えば、OLEDマイクロディスプレイであり、知られているように、活性区域5及び電気的接続区域6を含んでなる発光ユニット4で被覆した、シリコンから典型的に製造される基材3を含んでなる。発光ユニット4は、2個の内部及び外部電極(図示せず)を有し、それらの間に発光構造(図示せず)が挟まれており、電極の少なくとも一方(この例では外部電極、例えばカソード)は、放射される光に対して透明であるか、または半透明であり、該光を、活性区域5を経由してデバイス2の外側に向けて放射させる。
【0036】
外部電極は、好ましくは金属、例えば銀、アルミニウムまたはサマリウム、からなるが、これは、これらの材料の可視領域における透明性、及び小さな厚さ(外部電極は、厚さが例えば10nm〜30nmである)における導電性による。一般的にキャッピング層と呼ばれる追加層を外部電極上に配置するのが有利であるが、このインデックスブレーキング(index-breaking)層は、OLED放射構造の光取り出し係数を改良するように作用する。例えば、外部電極と同じ様式で、ディスプレイの寸法を有するマスクを通して蒸発したSiO層でよい。OLED放射構造は、例えば電極から到達する電子及び正孔を移動させるように設計された有機フィルム多層からなり、その電子及び正孔は、再結合して励起子を発生、そして発光する。
【0037】
特に図6で分かるように、カプセル化構造1は、本発明の第一態様により、下記のものを含むことができる。
−例えば酸化物Alに基づき、有利には温度110℃未満で堆積させ、OLED構造を劣化から保護し、典型的には85℃で、厚さ10nm〜30nm(例えば25nm)に堆積させ、所望によりPECVD SiまたはSiO(例えばALD Al/SiまたはALDAl/SiO)と組み合わされるか、または一種以上のAl/ZnO多層(全ての多層はできればALDにより製造する)の多層に基づく、好ましくはALDによりOLEDユニットの各活性区域5の上に堆積した、「予備カプセル化の」内部、無機誘電体フィルムF1;
−例えば「TELR-P002」または「JSR420」を基剤とし、フィルムF1で覆われた各活性区域5を包み込み、このフィルムF1の周囲を連続的に越えるが、隣接する接続区域6及び隣接する活性区域5を包み込む他の重合体層C1からある距離だけ離れている、重合体層C1、例えばポジ型フォトレジスト;
−OLEDユニット全体(接続区域6を含む)を連続的に覆い、例えば、好ましくはAl、Si、Al/Si、またはSiO(温度110℃未満で堆積させ、典型的には、85℃で厚さ10nm〜30nm、例えば25nm)から製造される、外部の無機誘電体バリヤーフィルムFe;
−内側で、各マイクロディスプレイ画素の対応するカラードットに面して配置されたR、G、B光学カラーフィルターを備えており、UV硬化性接着剤8(好ましくは、アクリレートまたはエポキシ)を使用して圧力下でマイクロディスプレイに接合している、保護キャップ7(例えばガラスまたはプラスチック製)。
【0038】
図1は、接続区域6を含めて、スピンコーティングによる、OLEDユニット全体に対するポジ型レジストの層C1の堆積(厚さが典型的には300nm〜1μm)を例示するが、マイクロディスプレイ活性区域5は、前もって無機フィルムF1で被覆しておき、HMDS接着促進剤(厚さ約1nm、加熱炉中、100℃、30s以上で得られる) を、所望によりスピンコーティングの前に堆積させる。レジストは、有機OLEDデバイスと相容性がある焼き付け温度で焼き付け、その温度は、小分子OLEDには110℃未満であり、重合体OLED(重合体発光ダイオードではPLEDとも呼ぶ)には140℃未満にすべきである。
【0039】
図2は、マイクロディスプレイの活性区域5を越えるが、隣接する導体パッドを含んでなる接続区域6が不足している点から層C1を露光し、接続区域6を後に続くバックエンドの接続に自由に残して置くが、これは、この活性区域5の上に載り、それを越え、それによってUV放射線に対する露光により引き起こされるレジストの解重合を防止するフォトリソグラフィーマスク9によるものであることを示す。
【0040】
図7に例示するように、許容される最大面積は、露光層C1の構造化された突き出た部分10のそれぞれについて確実に限定されていることに注意し、その部分は、各マイクロディスプレイ活性区域5の周縁部5aとマスク9の周縁部(これは、この部分10の最終縁部を限定する)との間の距離(xi、i=0、...、3)によって示される。特に、距離xiは、水蒸気が拡散によりデバイス中に横方向で浸透するのを防止する重要な役割を果たし、この浸透を遅らせるためにできるだけ大きくなければならない。この距離xiは、同じステッパーフィールド及び隣接するフィールドに含まれる他のマイクロディスプレイの位置に応じても選択する必要がある。従って、様々な距離xiは異なっていてよい。さらに、特定のフィールドを鋸でさいの目に切ることができ、図7に示すこの例では、このさいの目に切ることは、4個のマイクロディスプレイ間で行うことができ、すなわち、この場合、距離xiは、鋸引きの幅を考慮しなければならない
【0041】
有利には、フィールドあたり4個のディスプレイを含んでなる設計の場合、これらの距離に対する下記の寸法上の制約が考慮され得る。
【数1】
【0042】
図3は、現像工程(例えば、TMAH現像液の浴に浸漬することによる)の結果を示すが、層C1は、このように活性区域5から離れた予め設定された距離で選択的に溶解し、活性区域5で重合状態を維持し、活性区域5を包み込み、この活性区域5の構成部品を現像液の浴から保護する。この現像液は、特に接続区域6の導体パッドを自由にする効果がある。この現像工程に続いて、層C1は焼き付けることができ、所望により、様々な状態におけるレジストの長期間安定性に応じて、層C1の追加の露光を行うことができる。
【0043】
この段階で、または次に記載するエッチング工程の後で、残留するポジ型レジストの全てを(やはり、UVランプを使用し、例えば365nmで)露光する新しい工程を行うことができる。露光線量は、例えば60mW〜100mWでよく、レジスト厚さに応じて調節することができる。これは、そのような工程が、表面ブリスターが現れるのを制限することにより、デバイスの耐久性を改良できることが観察されているためである。
【0044】
図4は、反応性イオンエッチング(RIE)法または有利には酸素(O)プラズマを使用して残留層C1を乾式エッチングし、この層の全体的な厚さを減少させ、該厚さをマイクロディスプレイの規格に合うようにする工程を示す。感光性層C1が最初にこれらの規格にとって厚すぎるように選択されている場合、例えば初期厚さが1μm以上(例えばレジスト「JSR420」に対して1.3μm)である場合、この工程により、現在のマイクロディスプレイの世代に対して、この乾式エッチング工程により、この厚さを約0.5μmに下げることができる。この乾式エッチング工程を使用してカプセル化による厚さを制御することにより、吸収性を制御することもできることが分かる。
【0045】
「TELR-P002」レジストを厚さ300nm〜400nmにスピンコーティングした場合、この層をエッチングにより厚さ150nm〜250nmにできることが立証されている。重合体厚さを下げることにより、このレジストを焼き付ける所望により行う工程で、より容易に脱気することにより、デバイスの耐久性を改良することもできるが、この工程は以下に記載する。従って、2枚の無機フィルム及び中間の重合体層により形成されたバリヤーアセンブリーは、総厚400nm未満、または300nm未満、さらには200未満に製造することができ、それでも非常に効果的である。そのような厚さにより、放射構造とカラーフィルターとの間の距離を最少に抑え、それによって異なった色の隣接する画素間のクロストークを防止することができる。
【0046】
エッチング工程は、所望により2つの分離したエッチング工程を含んでなり、より等方性の高い、従ってより均質な重合体層を得ることができる。
【0047】
この時点で、重合体層の少なくとも部分的な脱気を可能にして、デバイスの耐久性を改良するために、焼き付け工程を行うことができる。この焼き付けの温度は、上記のように、OLED構造と相容れる必要がある。焼き付けは、例えば、温度80℃〜100℃で、1分間〜24時間の長さ、例えば2時間、で行うことができる。
【0048】
図5は、後に続く、層C1上の外部誘電体バリヤーフィルムFeの、低温における一致した堆積工程(好ましくはALDまたはPECVDによる)の結果を示し、層C1の突き出た部分10を密封し、それによってこの層C1を通る水の横方向拡散を防止する。
【0049】
図6は、上記のように、マイクロディスプレイ用の保護パッケージの例を示し、キャップ7がR、G、Bカラーフィルターを備えている。
【0050】
図8は、本発明によるマイクロディスプレイを包み込む感光性層C1の突き出た周囲部分10に可能な幾何学的構造を示し、この突き出た部分10は、一定幅を有する長方形の輪郭を有する一方で、図9における変形は、例えば切手のような銃眼構造を有する長方形の包み込み部分110を示し、さいの目切りにより分離されるべき個別のマイクロディスプレイ間の、その後に続くキャップ7の接着剤8の所定の区域における接着を最適化し、そこで、マイクロディスプレイの活性区域5を包み込む層C1が水蒸気の拡散を十分に遅延させ、OLEDユニット4に十分に接着させるのに十分な幅の突出部分を残しながら、層C1が除去される。
【0051】
その製作を図10〜12に示す、本発明の第二態様によるマイクロディスプレイカプセル化構造101と、図1〜6に例示する構造との実質的な差は、無機誘電体フィルムF1の代わりに、透明な別の無機フィルムF1’をALDにより堆積させる点であるが、このフィルムは、好ましくはZnOまたはZnO:Alから製造されるので、導電性である。
【0052】
そのようなALDにより堆積させた透明導電性酸化物に基づくこのフィルムF1’は、特に下記の3つの利点を有する。
−このフィルムは、LEDユニットの構成部品を劣化させないように、100℃未満の温度で堆積させることができ、
図13に示すように、光学定数n及びk(Woolmamシステムを使用して測定したSavannah 200フィルム)のグラフは、このフィルムF1’が、特にその定数nが可視領域で高い(その平均値は実質的に2に等しい)ので、優れた下層を形成することを示し、さらに
−ALD堆積は、高品質のカプセル化を行うのに貢献する。
【0053】
図10から分かるように、このフィルムF1’は、OLEDユニット4の表面全体(接続区域6を含む)を覆うように堆積させてから、感光性層C1の被覆、露光及び現像をおこない、その層C1は、本発明の第一態様における層C1と同様に、活性区域5に対して突き出る。
この最初の導電性フィルムF1’被覆は、フィールドと接続区域6を短絡させる効果があることが分かる。
【0054】
次に、図11で分かるように、フィルムF1’を湿式エッチングする後続の工程(例えば、脱イオン水で希釈したHClを基剤とする酸溶液による)を行い、重合した層C1を越える区域から (従って、特に接続区域6から) フィルムF1’を選択的に除去し、この湿式エッチングは、該層C1をマスクとして使用する。
【0055】
次に、図12で分かるように、無機バリヤーフィルムFe (例えばALDにより堆積させるAlフィルム) を、層C1上で、OLEDユニット全体の上に、本発明の第一態様と同様に堆積させる。
【0056】
図14及び15に例示する、本発明の変形によるカプセル化構造201の感光性層C1は、マイクロディスプレイの活性区域5を覆い(その活性区域5は、外部電極を形成するカソードリング5bにより取り囲まれ、例えば図1〜6に示す配置と同様に、無機フィルムF1が上に載り)、活性区域5を連続的に越える中央包み込み部分210から、好適なフォトリソグラフィーマスクにより、ある距離だけ離れて、およびその周りに、周方向に形成された2個の補助的包み込み部分211及び212を有する。より詳しくは、図15で、これらの補助的部分211及び212は、同じ高さのレリーフ(図15における例では長方形断面を有する)を形成し、中央部分210と同じ高さを有し、これらの補助的部分211及び212は、それらの上部211a、212a、及びそれらの側壁211b、212bの両方を被覆する、外部誘電体バリヤーフィルムFe(本発明を制限しない例により、ALDにより堆積したAlに基づく)により、それらの基底部で、一つに接続されている。
【0057】
さらに、図15に例示するように、透明保護キャップ7が、層C1の上に載る外部無機バリヤーフィルムFeに接着しており、フォトリソグラフィーにより得られるこれらの2つの補助的包み込み部分211及び212が、補助的部分211及び212の側壁211b及び212bを覆う外部フィルムFeのバリヤー界面の数が増加することにより、外部水蒸気の拡散による横方向浸透をさらに最少に抑える(図15の例では4つの側壁)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15