特許第6138323号(P6138323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6138323
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】複層塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/36 20060101AFI20170522BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20170522BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20170522BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20170522BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170522BHJP
   C09D 161/28 20060101ALI20170522BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20170522BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20170522BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20170522BHJP
   C09D 175/08 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   B05D1/36 B
   B05D7/14 P
   B05D7/24 302P
   B05D7/24 302S
   B05D7/24 302T
   B05D7/24 302U
   C09D5/00 D
   C09D7/12
   C09D161/28
   C09D163/00
   C09D133/04
   C09D175/04
   C09D175/08
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-138235(P2016-138235)
(22)【出願日】2016年7月13日
【審査請求日】2016年11月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 景太朗
(72)【発明者】
【氏名】多田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】津田 裕久
(72)【発明者】
【氏名】勝田 英明
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−320303(JP,A)
【文献】 特開2002−285044(JP,A)
【文献】 特開2009−046564(JP,A)
【文献】 特開2010−168524(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/008879(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00−7/26
C09D1/00−10/00
C09D101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物上に、下記特徴のプライマー塗料組成物(A)による未硬化塗膜を形成し、該未硬化塗膜上に、下記特徴の上塗塗料組成物(B)による上塗塗膜を形成し、両塗膜を同時に乾燥する複層塗膜形成方法。
プライマー塗料組成物(A):エポキシ樹脂(a1)、防錆顔料(a2)、着色顔料(a3)及び体質顔料(a4)を含有する組成物であって、エポキシ樹脂(a1)の固形分合計100質量部を基準にして、防錆顔料(a2)を1〜70質量部、着色顔料(a3)を40〜150質量部及び体質顔料(a4)を40〜150質量部含有する塗料組成物
上塗塗料組成物(B):アクリル樹脂(b1)、及び活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)を含有する組成物であって、アクリル樹脂(b1)と活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)の固形分合計100質量部を基準にして、アクリル樹脂(b1)を60〜80質量部、活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)を20〜40質量部の比率で含有する塗料組成物。
【請求項2】
プライマー塗料組成物(A)が、エポキシ樹脂(a1)の固形分合計100質量部を基準にして、シランカップリング剤(a5)を0.1〜10質量部含有する請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項3】
プライマー塗料組成物(A)が、エポキシ樹脂(a1)の固形分合計100質量部を基準にして、体質顔料(a4)の少なくとも一部としてタルクを0.1〜30質量部含有する請求項1又は2に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項4】
上塗塗料組成物(B)が、アクリル樹脂(b1)と活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)の固形分合計100質量部を基準にして、メラミン樹脂(b3)を1〜15質量部含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項5】
上塗塗料組成物(B)が、アクリル樹脂(b1)と活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)の固形分合計100質量部を基準にして、ポリエーテルポリオールを0.1〜30質量部含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法を用いて複層塗膜を形成する工程を含む、該複層塗膜を有する建設機械又は産業機械の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗物上にプライマー塗料組成物による未硬化塗膜を形成し、該未硬化塗膜上に上塗塗料組成物をウェットオンウェット塗装する方法、及び該方法を用いて得られた、仕上り性、防食性、耐候性及び耐薬品性に優れる塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
被塗物上にプライマー塗料組成物を塗装した後、プライマー塗料組成物を乾燥させずに上塗り塗料組成物を塗装し、その後に2種類の塗膜を同時に乾燥させることによって、工程を短縮できるウェットオンウェットという塗装方法がある。
【0003】
最近では、ブルドーザー、油圧ショベル、ホイールローダ等の建設機械又は産業用機械の塗装においても工程短縮のためウェットオンウェット塗装方法が使用されている。しかし建設機械又は産業用機械のウェットオンウェット塗装方法には、下記1〜3の課題があった。
【0004】
1.塗膜の乾燥に際して、被塗物の熱容量が大きく乾燥炉の熱が十分に伝達せず塗膜の硬化性が十分でない。その為、乾燥工程が少ないウェットオンウェットによる塗装方法では、仕上り性及び防食性に優れた塗装物品を得ることは容易ではなかった。
【0005】
2.建設機械又は産業用機械は、垂直部位が多い為、ウェットオンウェット塗装によって未硬化塗膜がタレることがあり、部位によって仕上り性が安定しない。
【0006】
3.建設機械又は産業用機械は戸外で使用される為、塗膜硬度、防食性及び耐候性等が要求される等の課題がある。
【0007】
特許文献1には、ウェットオンウェットでの塗装方法であって、該下塗り塗料組成物が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物及び表面調整剤を含んでおり、該上塗り塗料組成物が、アクリル樹脂、イソシアネート化合物及び表面調整剤を含んでおり、前記下塗り塗料組成物の表面張力の値(γ1)から、前記上塗り塗料組成物の表面張力の値(γ2)を差し引いた値Δγ(γ1−γ2)が2〜8mN/mである方法が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、特許文献1の条件に加えて、前記下塗り塗膜および上塗塗膜がラメラ長4mm以下を有することを特徴とする塗膜形成方法が開示されている。
【0009】
しかし、特許文献1〜2に記載された塗膜形成方法で得た塗装物品は、仕上り性、防食性、耐候性、耐薬品性のいずれかが不十分であり改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開2013/24784号パンフレット
【特許文献2】特開2014−151257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、被塗物上にプライマー塗料組成物による未硬化塗膜を形成し、該未硬化塗膜上に、上塗塗料塗膜を形成し、両塗膜を同時に乾燥する複層塗膜形成方法によって、仕上り性、防食性、耐候性及び耐薬品性に優れる塗装物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、鋭意検討した結果、上記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、
1.被塗物上に、下記特徴のプライマー塗料組成物(A)による未硬化塗膜を形成し、該未硬化塗膜上に、下記特徴の上塗塗料組成物(B)による上塗塗膜を形成し、両塗膜を同時に乾燥する複層塗膜形成方法。
【0014】
プライマー塗料組成物(A):エポキシ樹脂(a1)、防錆顔料(a2)、着色顔料(a3)及び体質顔料(a4)を含有する組成物であって、エポキシ樹脂(a1)の固形分合計100質量部を基準にして、防錆顔料(a2)を1〜70質量部、着色顔料(a3)を40〜150質量部及び体質顔料(a4)を40〜150質量部含有する塗料組成物
上塗塗料組成物(B):アクリル樹脂(b1)、及び活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)を含有する組成物であって、アクリル樹脂(b1)と活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)の固形分合計100質量部を基準にして、アクリル樹脂(b1)を60〜80質量部、活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)を20〜40質量部の比率で含有する塗料組成物、
2.プライマー塗料組成物(A)が、エポキシ樹脂(a1)の固形分合計100質量部を基準にして、シランカップリング剤(a5)を0.1〜10質量部含有する1項に記載の複層塗膜形成方法、
3.プライマー塗料組成物(A)が、エポキシ樹脂(a1)の固形分合計100質量部を基準にして、体質顔料(a4)の少なくとも一部としてタルクを0.1〜30質量部含有する1項又は2項に記載の複層塗膜形成方法、
4.上塗塗料組成物(B)が、アクリル樹脂(b1)と活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)の固形分合計100質量部を基準にして、メラミン樹脂(b3)を1〜15質量部含有する1〜3項のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法、
5.上塗塗料組成物(B)が、アクリル樹脂(b1)と活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)の固形分合計100質量部を基準にして、ポリエーテルポリオールを0.1〜30質量部含有する1〜4項のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法、
6.1〜5項のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法を用いて塗装された建設機械又は産業機械、に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、プライマー塗料組成物による未硬化塗膜を形成し、該未硬化塗膜上に、上塗塗料塗膜を形成し、両塗膜を同時に乾燥する複層塗膜形成方法、所謂、ウェットオンウェットによって、仕上り性、防食性、耐候性及び耐薬品性の全てに優れた塗装物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、被塗物上に、特定のプライマー塗料組成物(A)による未硬化塗膜を形成し、該未硬化塗膜上に、特定の上塗塗料組成物(B)による上塗塗膜を形成し、両塗膜を同時に乾燥する複層塗膜形成方法、及び塗装物品に関する。以下、詳細に述べる。
【0017】
プライマー塗料組成物(A)
プライマー塗料組成物(A)は、エポキシ樹脂(a1)、防錆顔料(a2)、着色顔料(a3)及び体質顔料(a4)を含有する組成物であって、エポキシ樹脂(a1)の固形分合計100質量部を基準にして、防錆顔料(a2)を1〜70質量部、着色顔料(a3)を40〜150質量部及び体質顔料(a4)を40〜150質量部含有する塗料組成物である。
【0018】
エポキシ樹脂(a1)
本発明で使用するエポキシ樹脂(a1)は、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られる芳香族系のエポキシ樹脂が好ましい。
【0019】
該芳香族系のエポキシ樹脂の形成のために用いられるポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン[水添ビスフェノールF]、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン[水添ビスフェノールA]、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどを挙げることができる。
【0020】
また、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂(a1)としては、中でも、ビスフェノールAから誘導される下記式の樹脂が好適である。
【0021】
【化1】
【0022】
ここで、n=0〜8で示されるものが好適である。
かかるエポキシ樹脂(a1)の市販品としては、例えば、jER828EL、jER1001、jER1002、jER1003、jER1004、jER1007(以上、三菱化学株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0023】
AER−6003、AER−6071、AER−6072、AER−6097、AER−ECN1273など(以上、旭化成ケミカルズ株式会社、商品名)、EPICLON−N−740−80M、EPICLON−FQ−065−Pなど(以上、大日本インキ化学工業株式会社、商品名)などが挙げられる。
【0024】
エポキシ樹脂(a1)としては、変性エポキシ樹脂を好適に使用することができる。変性エポキシ樹脂としては、例えば、ウレタン変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂、アクリル変性エポキシ樹脂、ポリエステル変性エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0025】
これらの変性エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、アラキード9201N、アラキード9203N、アラキード9205、アラキード9208、モデピクス401(以上、荒川化学工業株式会社製、商品名)、EPICLON H−405−40、EPICLON H−304−40、EPICLON H−403−45、EPICLON H−408−40(以上、DIC株式会社製、商品名)、エポキー811、エポキー872、エポキー891、(以上、三井化学株式会社、商品名)などが挙げられる。
【0026】
上記、エポキシ樹脂(a1)は、重量平均分子量が好ましくは20000以上であり、さらに好ましくは20000〜60000の範囲内が適している。
【0027】
本発明の明細書における数平均分子量又は重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した数平均分子量又は重量平均分子量を、標準ポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。具体的には、ゲルパーミュエーションクロマトグラフとして、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G−4000HXL」「TSKgel G−3000HXL」「TSKgel G−2500HXL」及び「TSKgel G−2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min及び検出器RIの条件下で測定することができる。
【0028】
防錆顔料(a2)
プライマー塗料組成物(A)には、防食性の向上を目的として防錆顔料(a2)を含有する。このような防錆顔料(a2)は、例えば、酸化亜鉛、亜リン酸塩化合物、リン酸塩化合物、モリブテン酸塩系化合物、ビスマス化合物、金属イオン交換シリカなどが挙げられる。
【0029】
上記亜リン酸塩化合物の亜リン酸カルシウム系として、EXPERT NP−1000、EXPERT NP−1020Cが挙げられ、亜リン酸塩化合物の亜リン酸アルミニウム系として、EXPERT NP−1100、EXPERT NP−1102(以上、東邦顔料製、商品名)等が挙げられる。
【0030】
上記リン酸塩化合物には、金属化合物で処理されたトリポリリン酸2水素アルミニウムが挙げられる。上記金属化合物としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、マンガン、ビスマス、コバルト、スズ、ジルコニウム、チタニウム、ストロンチウム、銅、鉄、リチウム、アルミニウム、ニッケル、及びナトリウムの塩化物、水酸化物、炭酸化物、硫酸物等が挙げられる。
【0031】
前記金属化合物で処理されたトリポリリン酸2水素アルミニウムの市販品としては、K−WHITE140、K−WHITE Ca650、K−WHITE450H、K−WHITE G−105、K−WHITE K−105、K−WHITE K−82(以上、テイカ社製、商品名)等が挙げられる。
【0032】
前記モリブテン酸塩系化合物の市販品としては、例えば、LFボウセイ M−PSN、LFボウセイ MC−400WR、LFボウセイ PM−300、PM−308(以上、キクチカラー社製、商品名)等が挙げられる。
【0033】
前記ビスマス化合物としては、例えば、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、ケイ酸ビスマス及び有機酸ビスマス等を用いることができる。
【0034】
前記金属イオン交換シリカとしては、例えば、カルシウムイオン交換シリカ、マグネシウムイオン交換シリカが挙げられる。これらの金属イオン交換シリカは、必要に応じてリン酸で変性して、リン酸変性金属イオン交換シリカとすることもできる。上記カルシウムイオン交換シリカは、微細な多孔質のシリカ担体にイオン交換によって、カルシウムイオンが導入されたシリカ微粒子である。カルシウムイオン交換シリカの市販品としては、SHIELDEX(シールデックス、登録商標)C303、SHIELDEXAC−3、SHIELDEXC−5(以上、いずれもW.R.Grace&Co.社製)、サイロマスク52(富士シリシア社製)などを挙げることができる。
【0035】
上記マグネシウムイオン交換シリカは、微細な多孔質のシリカ担体にイオン交換によって、マグネシウムイオンが導入されたシリカ微粒子である。マグネシウムイオン交換シリカの市販品としては、サイロマスク52M(富士シリシア社製)、ノビノックスACE−110(SNCZ社製・フランス)が挙げられる。なおこれらの防錆顔料(a2)の中でも特に、亜リン酸カルシウムが、仕上り性、防食性の面から好ましい。
【0036】
プライマー塗料組成物(A)における防錆顔料(a2)の配合量は、エポキシ樹脂(a1)の固形分100質量部を基準にして、防錆顔料(a2)を1〜70質量部、好ましくは2〜40質量部、さらに好ましくは5〜30質量部であることが、塗料安定性、防食性、耐チッピング性の面から好ましい。
【0037】
着色顔料(a3)
着色顔料(a3)としては、チタン白、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、カーボンブラック、黒鉛(グラファイト)、鉄黒(アイアンブラック)、紺青、群青、コバルトブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスロンブルー、黄鉛、合成黄色酸化鉄、透明べんがら、ビスマスバナデート、チタンイエロー、亜鉛黄(ジンクエロー)、モノアゾイエロー、オーカー、モノアゾイエロー、ジスアゾ、イソインドリノンイエロー、金属錯塩アゾイエロー、キノフタロンイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、べんがら、透明べんがら、モノアゾレッド、モノアゾレッド、無置換キナクリドンレッド、アゾレーキ(Mn塩)、キナクリドンマゼンダ、アンサンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドンマゼンダ、ペリレンレッド、ジケトピロロピロールクロムバーミリオン、塩素化フタロシアニングリーン、臭素化フタロシアニングリーン、その他;ピラゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンオレンジ、ジオキサジンバイオレット、ペリレンバイオレットなどが挙げられる。
【0038】
例えば、チタン白の市販品は、「タイピュアR−100」「タイピュアR−101」「タイピュアR−102」「タイピュアR−103」「タイピュアR−104」「タイピュアR−105」「タイピュアR−108」「タイピュアR− 900」「タイピュアR−902」「タイピュアR−960」「タイピュアR−706」「タイピュアR−931(以上、デュポン社、商品名)、「タイペークCR−93」「タイペークCR−95」「タイペークCR−97(以上、石原産業株式会社、商品名)、「JR−301」「JR−403」「JR−405」「JR−600A」「JR−605」「JR−600E」「JR805」「JR−806」「JR−701」「JR−901」(以上、テイカ株式会社、商品名)などが挙げられる。
【0039】
プライマー塗料組成物(A)における着色顔料(a3)の配合量は、エポキシ樹脂(a1)の固形分100質量部を基準にして、着色顔料(a3)を40〜150質量部、好ましくは45〜130質量部、さらに好ましくは50〜100質量部であることが、塗料安定性、耐候性、耐チッピング性の面から好ましい。
【0040】
体質顔料(a4)
上記体質顔料(a4)としては、例えば、クレー、シリカ、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、珪藻土、炭酸マグネシウムアルミニウムフレーク、雲母フレークなどを挙げることができる。
【0041】
プライマー塗料組成物(A)における体質顔料(a4)の配合量は、エポキシ樹脂(a1)の固形分合計100質量部を基準にして、体質顔料(a4)を40〜150質量部、好ましくは50〜120質量部、さらに好ましくは55〜110質量部であることが、塗料安定性、仕上り性、耐チッピング性の面から好ましい。
【0042】
また、上記タルクの市販品としては、「シムゴン」「タルクMS」「MICRO ACE SG−95」「MICRO ACE P−8」「MICRO ACE P−6」「MICRO ACE P−4」「MICRO ACE P−3」「MICRO ACE P−2」「MICRO ACE L−1」「MICRO ACE K−1」「MICRO ACE L−G」「MICRO ACE S−3」「NANO ACE D−1000」(以上、日本タルク株式会社、商品名)、「Pタルク」「PHタルク」「PSタルク」「TTKタルク」「TTタルク」「Tタルク」「STタルク」「ハイトロン」「ハイトロンA」「ミクロライト」「ハイラック」「ハイミクロンHE5」(以上、竹原化学工業株式会社、商品名)等の市販品が挙げられる。
【0043】
特に、プライマー塗料組成物(A)におけるエポキシ樹脂(a1)の固形分100質量部を基準にして、体質顔料(a4)の少なくとも一部として、タルクを0.1〜30質量部、好ましくは3〜25質量部、さらに好ましくは7〜20質量部含有することが、仕上り性、耐チッピング性の面から好ましい。
【0044】
上記炭酸カルシウムの市販品としては、ナノコートS−25、MCコートS−10(以上、丸尾カルシウム株式会社、商品名)、カシグロス(ニチゴー・モビニール社製)、ネオライトSS、ネオライトSA−200(以上、竹原工業株式会社、商品名)などが挙げられる。硫酸バリウムの市販品としては、硫酸バリウム100、バリタBF−1(以上、堺化学工業社製)等が挙げられる。
【0045】
プライマー塗料組成物(A)におけるエポキシ樹脂(a1)の固形分合計100gあたりの、上記防錆顔料(a2)、上記着色顔料(a3)及び上記体質顔料(a4)の吸油量の合計(注)は、ウェットオンウェットによる塗装によって、仕上り性、防食性、耐候性及び耐薬品性に優れた塗装物品を得る観点から、好ましくは16〜50ml、さらに好ましくは20〜43ml、さらに特に好ましくは25〜40mlである。
(注)吸油量の合計:エポキシ樹脂(a1)の固形分合計100gに対し、顔料Xが10g、顔料Yが20g、顔料Zが30g配合されているとする。
【0046】
顔料Xの吸油量(注1)がX(ml/100g)、顔料Yの吸油量がY(ml/100g)、顔料Zの吸油量がZ(ml/100g)であった場合、吸油量の合計は、下記式のようになる。
【0047】
吸油量の合計=[X×(10/100)]+[Y×(20/100)]+[Z×(30/100)] ・・・式となる。
【0048】
吸油量:各顔料の吸油量は、煮あまに油法(JIS K 5101−13−2)に記載された方法に従って求めた吸油量値(ml/100g)である。
【0049】
また、プライマー塗料組成物(A)には、必要に応じて、シランカップリング剤(a5)、紫外線吸収剤、光安定剤、レオロジーコントロール剤、消泡剤、顔料分散剤、表面調整剤、界面活性剤、硬化剤、硬化触媒、増粘剤、防腐剤、凍結防止剤などを配合することができる。
【0050】
シランカップリング剤(a5)
本発明に用いるプライマー塗料組成物(A)には、防食性向上を目的としてシランカップリング剤(a5)を配合できる。上記シランカップリング剤(a5)としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−(β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;β−カルボキシルエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(N−カルボキシメチルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシル基含有シランカップリング剤などが挙げられる。
【0051】
これらの中でもアミノ基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤が、防食性向上の為に望ましい。また、これらのシランカップリング剤は、単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。
【0052】
なおシランカップリング剤(a5)の市販品としては、KBM−402、KBM−403、KBM−502、KBM−503、KBM−603、KBE−903、KBM−603、KBE−602、KBE−603(以上、信越シリコーン社製、商品名)などを挙げることができる。
【0053】
本発明においてシランカップリング剤(a5)を配合する場合には、シランカップリング剤(a5)の配合割合は、エポキシ樹脂(a1)の固形分100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは0.8〜3.5質量部であることが、仕上り性、防食性の点から好ましい。
【0054】
上塗塗料組成物
上塗塗料組成物は、アクリル樹脂(b1)、及び活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)を含有する組成物であって、アクリル樹脂(b1)と活性メチレンポリイソシアネート化合物(b2)の固形分合計100質量部を基準にして、アクリル樹脂(b1)を60〜80質量部、ポリイソシアネート化合物(b2)を20〜40質量部の比率で含有する塗料組成物である。
【0055】
アクリル樹脂(b1)
上記アクリル樹脂(b1)は、水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体(b11)及びその他のラジカル重合性不飽和単量体(b12)の混合物を共重合することによって製造できる。
【0056】
上記水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体(b11)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及びこれ以外に、プラクセルFM1、プラクセルFM2、プラクセルFM3、プラクセルFA1、プラクセルFA2、プラクセルFA3(以上、ダイセル化学社製、商品名、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル類)などが挙げられる。
【0057】
なお本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル又はメタクリロイル」を意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を意味する。
【0058】
上記その他のラジカル重合性不飽和単量体(b12)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体;例えば、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基含有不飽和単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のC1〜C18のアルキル又はシクロアルキルエステル類;スチレンなどの芳香族ビニルモノマー類;(メタ)アクリル酸アミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジn−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、
下記の式(1)で表されるN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド基含有不飽和単量体;等の(メタ)アクリルアミド系単量体が挙げられる。
【0059】
【化2】
【0060】
式(1)
(式(1)中、Rは、炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表す)
上記式(1)で表されるN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド基含有不飽和単量体としては、例えば、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキソキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソヘキソキシメチル(メタ)アクリルアミドを挙げることができる。
【0061】
これらのラジカル重合性不飽和単量体の配合割合は、構成するラジカル重合性不飽和単量体の総量を基準として、水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体(b11)が1〜40質量%、好ましくは5〜30質量%、そしてその他のラジカル重合性不飽和単量体(b12)が60〜99質量%、好ましくは70〜95質量%の範囲であることが好ましい。
【0062】
アクリル樹脂(b1)は、上記の水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体(b11)、その他のラジカル重合性不飽和単量体(b12)を混合し、例えば、重合開始剤の存在下で、窒素などの不活性ガスの存在下で約50℃〜約300℃、好ましくは約60℃〜250℃に保持された有機溶剤中で、約1時間〜約24時間、好ましくは約2時間〜約10時間、ラジカル重合反応させることによって得ることができる。
【0063】
ポリエステル樹脂で変性されたポリエステル樹脂変性アクリル樹脂も使用できる。ポリエステル樹脂変性アクリル樹脂の製造は、従来から公知の製造方法によって製造でき、例えば、重合性不飽和基を有するポリエステル樹脂と、これと共重合可能なアクリル樹脂(b1)との共重合による方法が挙げられる。なお上塗塗料組成物(B)にポリエステル樹脂変性アクリル樹脂を使用することによって、防食性の向上を図ることができる。
【0064】
また、アクリル樹脂(b1)の一部として、ポリエステル変性アクリル樹脂を使用する場合、アクリル樹脂とポリエステル変性アクリル樹脂の割合は、アクリル樹脂/ポリステル変性アクリル樹脂=70部〜100部/0部〜30部、特に、アクリル樹脂/ポリステル変性アクリル樹脂=70部〜80部/20部〜30部の割合であることが好ましい。
【0065】
上記ラジカル重合反応に用いられる有機溶剤としては、例えば、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコールなどのアルコール類、エチレングリコールモノブチルエーテル、メチルカルビトール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングルコールモノメチルエーテル、エチレングルコールモノエチルエーテル、エチレングルコールモノブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類などが好適に使用できる。また、これ以外にも任意選択で、例えば、キシレン、トルエンなどの芳香族類、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ペンチル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどのエステル類も併用することができる。
【0066】
ラジカル重合反応に用いる重合開始剤として、例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウリルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル 、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
【0067】
得られたアクリル樹脂(b1)の重量平均分子量は、3,000〜50,000、特に4,000〜15,000の範囲が好ましく、酸価は1〜20mgKOH/gの範囲、水酸基価は40〜200mgKOH/gの範囲が適している。
【0068】
活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)
活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)は、活性メチレン化合物をブロック剤として、ポリイソシアネート化合物の遊離のイソシアネート基を封鎖したブロック化ポリイソシアネート化合物である。
【0069】
活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)は、ブロックポリイソシアネート化合物のなかでは比較的低温での反応性に優れたブロックポリイソシアネート化合物であり、例えば、80℃以上、好ましくは90℃以上の温度に加熱することにより、活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物とアクリル樹脂等ポリオールが反応することで塗膜の架橋が進行する。
【0070】
ポリイソシアネート化合物としては、具体的には例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
【0071】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0072】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−又は1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0073】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0074】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート、例えば、ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
【0075】
また、ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDI等を挙げることができる。
【0076】
防食性、耐候性の観点から、上記のポリイソシアネート化合物としては、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物及びこれらの誘導体であることが好ましい。
【0077】
ブロック剤である活性メチレン化合物は、分子中に活性メチレン基を含有する化合物であり、具体的には例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の化合物を挙げることができる。
【0078】
これらのブロック剤である活性メチレン化合物のうち、低温硬化性と貯蔵安定性等の観点から、マロン酸ジプロピル等が好ましい。
【0079】
活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)の数平均分子量は、3,000以下、特に100〜1,500の範囲内であることが好ましい。
【0080】
必要に応じて硬化性向上の目的で有機錫化合物等を、硬化触媒として使用することができる。
【0081】
なお、アクリル樹脂(b1)と活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)との固形分合計100質量部を基準にして、固形分量で、アクリル樹脂(b1)60〜80質量部、好ましくは65〜75質量部、活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)20〜40質量部、好ましくは25〜35質量部の範囲であることが、塗料安定性と塗膜硬度の面から好ましい。
【0082】
本発明に使用する上塗塗料組成物には、仕上り性及び耐候性向上の目的から硫酸バリウム(b3)を含有することができる。硫酸バリウム(b3)の平均粒子径は、0.01〜5μm、特に0.05〜1μmの範囲内であることが好ましい。
【0083】
硫酸バリウム(b3)の市販品としては、バリファインBF−20(堺化学工業社製、商品名、平均粒子径0.03μm)、BARIACE B−30(堺化学工業社製、商品名、平均粒子径0.3μm)、SPARWITE W−5HB(Sino−Can社製、商品名、硫酸バリウム粉末、平均粒子径:1.6μm)が挙げられる。なお本明細書において、平均粒子径は、UPA−EX250(商品名、日機装株式会社製、動的光散乱法による粒度分布測定装置)を用いて測定される。
【0084】
上塗塗料組成物(B)における硫酸バリウム(b3)の配合量は、アクリル樹脂(b1)と活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)の固形分合計100質量部を基準にして、1〜50質量部、特に5〜45質量部、さらに特に10〜40質量部であることが好ましい。
【0085】
ポリエーテルポリオール
本発明に使用する上塗塗料組成物には、必要に応じて、さらに仕上り性等の
向上を目的として、ポリエーテルポリオールを使用することができる。
【0086】
上記ポリエーテルポリオールとしては、多価アルコール、多価フェノール、多価カルボン酸類などの活性水素含有化合物にアルキレンオキサイドが付加した化合物が挙げられる。
【0087】
上記活性水素含有化合物としては、例えば、水、多価アルコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、シクロヘキシレングリコール等の2価のアルコール、グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール、ペンタメチルグリセリン、ペンタグリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、1,2,3,4−ペンタンテトロール、2,3,4,5−ヘキサンテトロール、1,2,4,5−ペンタンテトロール、1,3,4,5−ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ソルビタン等の4価アルコール、アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグリセリン等の5価アルコール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース、アロース等の6価アルコール、蔗糖等の8価アルコール、ポリグリセリン等);多価フェノール類[多価フェノール(ピロガロール、ヒドロキノン、フロログルシン等)、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールスルフォン等)];ポリカルボン酸[脂肪族ポリカルボン酸(コハク酸、アジピン酸等)、芳香族ポリカルボン酸(フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等)]等;及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0088】
特に一分子中に少なくとも3個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオールを形成するのに用いられる3価以上のアルコールとして好ましいものは、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトール等である。
【0089】
上記ポリエーテルポリオールは、通常アルカリ触媒の存在下、前記活性水素含有化合物にアルキレンオキサイドを、常法により常圧又は加圧下、60〜160℃の温度で付加反応を行うことにより得られる。上記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが挙げられる。
【0090】
ポリエーテルポリオールの中でも特に好ましい一例として、下記の式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0091】
【化3】
【0092】
式(2)
(式(2)において、l、m及びnは、それぞれ独立して1以上の整数で、かつl+m+n=3〜15、並びに(AO)l、(AO)、及び(AO)の各Aは、それぞれ同一又は相異なってもよいエチレン基及び/又はプロピレン基を表す)
ポリエーテルポリオールの市販品としては、例えばサンニックスGP−600、サンニックスGP−1000、エクセノール430、エクセノール385SO、エクセノール450ED、エクセノール500ED、エクセノール750ED(以上、旭硝子株式会社、商品名)、アデカポリエーテル(アデカ株式会社、商品名)、アクトコールT−1000(三井化学株式会社、商品名)等を挙げることができる。このようなポリエーテルポリオールの数平均分子量は、3,000未満、好ましくは90〜2,000、さらに好ましくは500〜1,500である。
【0093】
上塗塗料組成物(B)においてポリエーテルポリオールを配合する場合、その配合量は、アクリル樹脂(b1)と活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)の固形分合計100質量部を基準にして、0.1〜30質量部、好ましくは1〜20質量部、さらに好ましくは3〜15質量部の範囲であることが、仕上り性に優れた塗膜を得ることができる点から好ましい。
【0094】
また、上塗塗料組成物(B)には、必要に応じて、着色顔料、体質顔料、防錆顔料、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、顔料分散剤、表面調整剤、界面活性剤、硬化触媒、増粘剤、防腐剤、凍結防止剤などを配合することができる。
【0095】
上記防錆顔料は、前記防錆顔料(a2)が使用でき、例えば、酸化亜鉛、亜リン酸塩化合物、リン酸塩化合物などが挙げられる。上記着色顔料は、前記着色顔料(a3)に挙げた顔料が使用でき、例えば、二酸化チタン、ベンズイミダゾロンイエロー、べんがらなどが挙げられる。上記体質顔料は、前記体質顔料(a4)に挙げた体質顔料が使用でき、例えば、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、クレーなどが挙げられる。
【0096】
上記レオロジーコントロール剤は、塗料の流動性を制御して、仕上り性を向上させることを目的とする。レオロジーコントロール剤として、粘土鉱物(例えば、金属ケイ酸塩、モンモロリロナイト)、アクリル(例えば、分子中にアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのポリマー、オリゴマーからなる構造を含むもの)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、アマイド(高級脂肪酸アマイド、ポリアマイド、オリゴマー等)、ポリカルボン酸(分子中に少なくとも2つ以上のカルボキシル基を有する誘導体を含む)、セルロース(ニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースエーテル等種々の誘導体を含む)、及びウレタン(分子中にウレタン構造を含むポリマー、オリゴマー等)、ウレア(分子中にウレア構造を含むポリマー、オリゴマー等)、ウレタンウレア(分子中にウレタン構造とウレア構造を含むポリマー、オリゴマー等)などを挙げることができる。
【0097】
レオロジーコントロール剤の市販品としては、例えば、ディスパロン6900(楠本化成(株)製)、チクゾールW300(共栄社化学(株))等のアマイドワックス;ディスパロン4200(楠本化成(株)製)等のポリエチレンワックス;CAB(セルロース・アセテート・ブチレート、イーストマン・ケミカル・プロダクツ社製)、HEC(ヒドロキシエチルセルロース)、疎水化HEC、CMC(カルボキシメチルセルロース)等のセルロース系のレオロジーコントロール剤;BYK−410、BYK−411、BYK−420、BYK−425(以上、ビックケミー(株)社製)等のウレタンウレア系のレオロジーコントロール剤;フローノンSDR−80(共栄社化学(株))等の硫酸エステル系アニオン系界面活性剤;フローノンSA−345HF(共栄社化学(株))等のポリオレフィン系のレオロジーコントロール剤;フローノンHR−4AF(共栄社化学(株))等の高級脂肪酸アマイド系のレオロジーコントロール剤;が挙げられる。
【0098】
なおレオロジーコントロール剤を配合する場合、その配合量は、アクリル樹脂(b1)と活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)の固形分合計100質量部を基準にして、0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜15質量部、さらに好ましくは0.9〜5質量部の範囲が、塗料安定性、仕上り性の点などから望ましい。
【0099】
複層塗膜形成方法
本発明の複層塗膜形成方法は、被塗物上に、前記のプライマー塗料組成物(A)
による未硬化塗膜を形成し、該未硬化塗膜上に、前記の上塗塗料組成物(B)による上塗塗膜を形成し、両塗膜を同時に乾燥して塗膜を形成する方法である。
【0100】
なお上記被塗物としては、冷延鋼板、黒皮鋼板、合金化亜鉛メッキ鋼板、電
気亜鉛メッキ鋼板等が挙げられる。これらは必要に応じて、ショットブラスト、表面調整、表面処理などを施したものであってもよい。
【0101】
前記のプライマー塗料組成物(A)の塗装は、例えば、浸漬塗り、刷毛塗り、
ロール刷毛塗り、スプレーコート、ロールコート、スピンコート、ディップコート、バーコート、フローコート、静電塗装、エアレス塗装、電着塗装、ダイコート等の塗装方法によって行うことができる。乾燥膜厚は、通常10μm〜150μm、好ましくは30μm〜80μmの範囲内が適している。
【0102】
プライマー塗料組成物(A)の塗膜を形成した後は、必要に応じて、常温でのセッティング又は予備加熱を施す。
【0103】
上記プライマー塗料組成物(A)による未硬化塗膜上への、前記の上塗塗料組成物(B)の塗装は、例えば、浸漬塗り、刷毛塗り、ロール刷毛塗り、スプレーコート、ロールコート、スピンコート、ディップコート、バーコート、フローコート、静電塗装、エアレス塗装、電着塗装、ダイコート等の塗装方法によって行うことができる。乾燥膜厚は、通常、10μm〜150μm、好ましくは30μm〜80μmの範囲内が適している。次いで、常温〜160℃で10〜120分間、好ましくは60〜120℃で20〜90分間乾燥して、複層塗膜を得ることができる。
【実施例】
【0104】
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0105】
プライマー塗料組成物の製造
製造例No.1 プライマー塗料組成物No.1の製造例
以下の工程1〜工程2によって、プライマー塗料組成物No.1を得た。
【0106】
工程1:
アラキード9205(注1)を50部(固形分)、EXPERT NP1000(注4)20部、タイピュアR−902(注6)70部、LAKABAR SF(注8)40部、ネオライトSA−200(注10)70部に、スワゾール1000(コスモ石油株式会社製、芳香族炭化水素系溶媒)を適量加え、サンドミルにて分散し、顔料分散ペーストを得た。
【0107】
工程2:
上記にて得た顔料分散ペーストに、アラキード9205(注1)を50部(固形分)、ディスパロンA603−20X(注13)1部を配合し、スワゾール1000(コスモ石油株式会社製、芳香族炭化水素系溶媒)を加えて攪拌し、固形分を調整することによって固形分70%のプライマー塗料組成物No.1を得た。
【0108】
製造例No.2〜10 プライマー塗料組成物No.2〜No.10の製造例
表1の配合内容とする以外は、製造例No.1と同様にして、プライマー塗料組成物No.2〜No.10を得た。
【0109】
【表1】
【0110】
比較製造例No.1〜4 プライマー塗料組成物No.11〜No.14の製造例
表2の配合内容とする以外は、製造例1と同様にして、プライマー塗料組成物No.11〜No.14を得た。
【0111】
【表2】
【0112】
(注1)アラキード9205:荒川化学株式会社、商品名、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量3万、ガラス転移温度84℃
(注2)アラキード9201N:荒川化学株式会社、商品名、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量5万、ガラス転移温度94℃
(注3)アラキード9203N:荒川化学株式会社、商品名、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量3万、ガラス転移温度84℃
(注4)EXPERT NP1000:東邦顔料工業株式会社、商品名、塩基性亜リン酸カルシウム、吸油量40ml/100g
(注5)K−WHITE 140:キクチカラー株式会社、商品名、トリポリリン酸2水素アルミニウム、吸油量32ml/100g
(注6)タイピュアR−902:デュポン株式会社、商品名、チタン白、吸油量16ml/100g
(注7)タイペークCR−93:石原産業株式会社、商品名、チタン白、吸油量20ml/100g
(注8)LAKABAR SF:LAKAVISUTH(ラカヴィッシュ)社製、商品名、硫酸バリウム粉末、平均粒子径10.4μm、吸油量10ml/100g
(注9)バリファインBF−20:堺化学工業社製、商品名、平均粒子径0.03μmの硫酸バリウム、吸油量24ml/100g
(注10)ネオライトSA−200:竹原化学工業株式会社、商品名、炭酸カルシウム、吸油量32ml/100g
(注11)Tタルク:竹原化学社製、商品名、タルク、平均粒子径9.0μm、吸油量27ml/100g
(注12)KBM−403:信越化学株式会社、商品名、エポキシ基含有シランカップリング剤
(注13)ディスパロン A603−20X:楠本化成株式会社、商品名、増粘剤
上塗塗料組成物の製造
製造例No.17 アクリル樹脂溶液の製造
スワゾール1000(コスモ石油株式会社製、芳香族炭化水素系溶媒)28部、トルエン85部、スチレン41.6部、n−ブチルアクリレート6.9部、イソブチルメタクリレート19部、プラクセルFM−3(注14)15部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート17部、アクリル酸0.5部、ジ−tert−ブチルハイドロパーオキサイド8部を窒素ガス下で110℃において反応させて、固形分質量濃度45%のアクリル樹脂溶液を得た。得られたアクリル樹脂は、酸価3.9mgKOH/g、水酸基価94.9mgKOH/g、重量平均分子量11,000であった。
(注14)プラクセルFM−3:ダイセル化学工業株式会社製、商品名、2−ヒドロキシエチルアクリレートのε−カプロラクトン変性ビニルモノマー
製造例No.18 ポリエステル変性アクリル樹脂溶液の製造(特開平8−302204号公報に準ずる)
攪拌装置、温度計、冷却管および窒素ガス導入管を備えた4ツ口フラスコに、ベッコゾール P−470−70(DIC社製、商品名、大豆油系長油アルキド樹脂)143部、及びミネラル・スピリット 457部を仕込んで、100℃にまで昇温した。
【0113】
次いで、スチレン200部、イソブチルメタクリレート489部、2−エチルヘキシルアクリレート106部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート100部、メタクリル酸5部、ミネラル・スピリット200部、「ソルベッソ100」300部、ベンゾイルパーオキシド10部からなる混合物を4時間にわたって滴下した。
【0114】
滴下終了後も同温度で8時間反応させることによって、固形分質量濃度50%のポリエステル変性アクリル樹脂溶液を得た。得られたポリエステル変性アクリル樹脂は、酸価2.5mgKOH/g、重量平均分子量9,000であった。
【0115】
製造例No.11 上塗塗料組成物No.1の製造例
製造例No.17で得たアクリル樹脂溶液を75部(固形分)、タイペークCR−93(注7)12部、ホスターパームエローH−3G(注15)12部、Bayferrox4905(注16)12部、TINUVIN292(注17)1部及びデュラネートMF−K60X(注18)25部を配合し、スワゾール1000(コスモ石油株式会社製、芳香族炭化水素系溶媒)で固形分を調整した混合物を、ボールミルに仕込み6時間攪拌分散することによって固形分60%の上塗塗料組成物No.1を得た。
【0116】
製造例No.12〜16 上塗塗料組成物No.2〜No.6の製造例
表3の配合内容とする以外は、製造例No.11と同様にして上塗塗料組成物No.2〜No.6を得た。
【0117】
【表3】
【0118】
比較製造例No.5〜9 上塗塗料組成物No.7〜No.11の製造例
表4の配合内容とする以外は、製造例No.11と同様にして、上塗塗料組成物No.7〜No.11を得た。
【0119】
【表4】
【0120】
(注15)ホスターパームエローH−3G:クラリアント社製、商品名、ハンザエロー系黄色顔料
(注16)Bayferrox 4905:Lanxess株式会社、商品名、
赤色顔料
(注17)TINUVIN292:BASF株式会社、商品名、光安定化剤
(注18)デュラネートMFK−60X:旭化成ケミカル株式会社製、商品名、活性メチレンブロックポリイソシアネート
(注19)ブロックポリイソシアネート化合物(BN−1):以下のようにして合成したブロックポリイソシアネート化合物
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去された溶媒用の簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分約100%、イソシアネート基含有率21.8%)1610部、「ユニオックスM−550」(日油社製、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、平均分子量,約550)275部及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.9部を仕込み、よく混合して、窒素気流下、130℃で3時間加熱した。
【0121】
次いで、上記反応容器に、酢酸エチル550部及びマロン酸ジイソプロピル1150部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、上記反応容器にナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液14部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は約0.1モル/kgであった。上記反応容器に4−メチル−2−ペンタノール3110部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、ブロックポリイソシアネート化合物(BN−1)溶液4920部を得た。簡易トラップには、イソプロパノールが585部含まれていた。ブロックポリイソシアネート化合物(BN−1)溶液の固形分濃度は約60%であった。
(注20)スーパーベッカミンL166:DIC株式会社製、商品名、アルキル化メラミン樹脂、重量平均分子量1500
(注21)アクトコールT−1000:三井化学社製、商品名、ポリエーテルポリオール、数平均分子量1,000
(注22)デュラネートTPA−B80:旭化成ケミカル株式会社製、商品名、MEKオキシムブロックポリイソシアネート
(注23)スミジュールBL3175:住化バイエルウレタン株式会社、商品名、MEKオキシムブロックポリイソシアネート
(注24)スミジュールBL3575:住化バイエルウレタン株式会社、商品名、ピラゾールブロックポリイソシアネート
<複層塗膜形成塗板の作成>
実施例No.1 複層塗膜形成塗板No.1の作成
下記の工程1〜工程3によって、複層塗膜形成塗板No.1を得た。
【0122】
工程1:冷間圧延鋼板(大きさ0.8×70×150mm、パルボンド#3020)に製造例No.1で得られたプライマー塗料組成物No.1を用い、乾燥膜厚が45μmになるようにスプレー塗装にて垂直塗装し、25℃で3分間セッティングした。
【0123】
工程2:次いでプライマー塗膜上に、製造例No.11で得られた上塗塗料組成物No.1を用い、乾燥膜厚が40μmになるようにスプレー塗装にてウェットオンウェットで垂直塗装をして、上塗塗膜を形成した。
【0124】
工程3:工程1〜工程2によって得られた塗膜を、25℃で10分間セッティングした後、120℃で20分間加熱乾燥させて複層塗膜形成塗板No.1を得た。
【0125】
実施例No.2〜15 複層塗膜形成塗板No.2〜No.15の作成
工程1のプライマー塗料組成物と工程2の上塗塗料組成物を表5の塗料とする以外は、実施例No.1と同様にして、複層塗膜形成塗板No.2〜No.15を得た。
【0126】
比較例No.1〜9 複層塗膜形成塗板No.16〜No.24の作成
工程1のプライマー塗料組成物と工程2の上塗塗料組成物を表6の塗料とする以外は、実施例No.1と同様にして、複層塗膜形成塗板No.16〜No.24を得た。
【0127】
塗膜性能試験
各複層塗膜形成塗板を用い、後記の試験条件に従って塗膜性能試験に供した。結果を表5及び表6に併せて示す。
【0128】
【表5】
【0129】
【表6】
【0130】
性能評価
(注25)仕上り性:実施例及び比較例によって得た複層塗膜形成塗板の塗面外観を目視で評価した。
【0131】
○は、上塗塗膜とプライマー塗膜の混層もなく平滑性が良好で問題なし
△は、上塗塗膜とプライマー塗膜が混層しており、うねり、ツヤビケ及びチリ肌から選ばれる少なくとも1種の仕上り性の低下がやや見られる、
×は、上塗塗膜とプライマー塗膜の混層が著しく、うねり、ツヤビケ、チリ肌から選ばれる少なくとも1種の仕上り性の低下が著しい。
(注26)鉛筆硬度:実施例及び比較例によって得た複層塗膜形成塗板を、JIS K 5600−5−4に準じて、試験塗板面に対し約45°の角度に鉛筆の芯を当て、芯が折れない程度に強く試験塗板面に押し付けながら前方に均一な速さで約10mm動かした。塗膜が破れなかったもっとも硬い鉛筆の硬度記号を鉛筆硬度とした。
(注27)防食性:実施例及び比較例によって得た複層塗膜形成塗板に、ナイフでクロスカット傷を入れ、これをJIS Z−2371に準じて120時間耐塩水噴霧試験を行い、ナイフ傷からの錆、フクレ幅によって以下の基準で評価した。
◎は、錆、フクレの最大幅が、カット部から2mm未満(片側)、
○は、錆、フクレの最大幅が、カット部から2mm以上でかつ3mm未満(片側)、
△は、錆、フクレの最大幅が、カット部から3mm以上でかつ4mm未満(片側)、
×は、錆、フクレの最大幅が、カット部から4mm以上(片側)。
(注28)耐候性:実施例及び比較例によって得た複層塗膜形成塗板を、JIS B−7533に規定されたサンシャインカーボンアーク灯式耐光性及び耐候性試験において、照射時間が最大1,200時間となるまで試験を行った。試験板の塗膜において、試験前の光沢に対する光沢保持率が80%となる照射時間を測定した。
【0132】
◎は、照射時間が1,200時間となっても光沢保持率が80%以上である
○は、光沢保持率が80%を割る照射時間が1,000時間以上、かつ1,200時間未満、
△は、光沢保持率が80%を割る照射時間が800時間以上、かつ1,000時間未満、
×は、光沢保持率が80%を割る照射時間が800時間未満
(注29)耐薬品性:
実施例及び比較例によって得た複層塗膜形成塗板の裏面及び端面をシールし、5%水酸化ナトリウム水溶液に塗板を24時間(23℃)浸漬し、塗膜外観を評価した。
【0133】
○:変色やフクレなどがない
△:変色またはフクレのいずれかがみられる
×:著しい変色または著しいフクレがみられる
【産業上の利用可能性】
【0134】
ウェットオンウェットによる塗装によって、仕上り性、防食性、耐候性及び耐薬品性に優れる塗装物品を提供できる。
【要約】
【課題】 ウェットオンウェット塗装によって、仕上り性、防食性、耐候性、耐チッピング性に優れる塗装物品を提供すること。
【解決手段】 被塗物上に、特定のプライマー塗料組成物(A)による未硬化塗膜を形成し、該未硬化塗膜上に、特定の上塗塗料組成物(B)による上塗塗膜を形成し、両塗膜を同時に乾燥する複層塗膜形成方法。
プライマー塗料組成物(A):エポキシ樹脂(a1)、防錆顔料(a2)、着色顔料(a3)及び体質顔料(a4)を含有する塗料組成物
上塗塗料組成物(B):アクリル樹脂(b1)及び活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(b2)を含有する塗料組成物
【選択図】なし