(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6138328
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B66C 17/00 20060101AFI20170522BHJP
B66C 7/04 20060101ALI20170522BHJP
B66C 7/08 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
B66C17/00
B66C7/04
B66C7/08
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-204816(P2016-204816)
(22)【出願日】2016年10月19日
【審査請求日】2016年10月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516313944
【氏名又は名称】岩倉 伸治
(74)【代理人】
【識別番号】100157107
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 健司
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 伸治
【審査官】
今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−185781(JP,U)
【文献】
米国特許第02416352(US,A)
【文献】
米国特許第02905806(US,A)
【文献】
実開平07−040671(JP,U)
【文献】
特開昭63−060892(JP,A)
【文献】
特開2012−056492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 5/00 − 11/26
B66C 17/00 − 17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2本の角筒状の走行レールと、
一方の端部が天井、壁、梁、柱のいずれかに固定され、他方の端部が前記角筒状の走行レールの上面、側面、下面のいずれかの面に固定される支持部材と、
前記対向する2本の角筒状の走行レールのそれぞれに沿って走行可能に設けられ、かつ走行体が前記角筒状の走行レールの上面上を走行する2つの走行装置と、
前記2つの走行装置の間に架設される横行レールと、
前記横行レールに沿って走行可能に設けられた巻上装置を備え、
前記走行装置が、
上部の一方に突設するように軸支した走行体を設けた、一対の吊持部材を備え、
前記一対の吊持部材を前記角筒状の走行レールの両側面から挟み込むように、かつ前記走行体が前記角筒状の走行レールの上面上を走行するように吊持したものであることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
対向する2本の角筒状の走行レールと、
一方の端部が天井、壁、梁、柱のいずれかに固定され、他方の端部が前記角筒状の走行レールの上面、側面、下面のいずれかの面に固定される支持部材と、
前記対向する2本の角筒状の走行レールのそれぞれに沿って走行可能に設けられ、かつ走行体が前記角筒状の走行レールの上面上を走行する2つの走行装置と、
前記2つの走行装置の間に架設される横行レールと、
前記横行レールに沿って走行可能に設けられた巻上装置を備え、
前記走行装置が、
上部の一方に突設するように軸支した走行体を設けた、吊持部材を備え、
前記走行体が、前記角筒状の走行レールの上面幅と同等または上面幅よりもわずかに広い幅を有し、かつ両端にフランジ部を備えるものであり、
前記吊持部材を前記角筒状の走行レールの一方の側面から吊持したものであることを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
前記走行装置が、
前記走行体を備えた走行機構とともに、
前記2本の角筒状の走行レールの間隔が変化した際に前記横行レールの端部を突出させて逃がすようにする調整機構を備えているものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記調整機構が、
前記走行機構の下方に設けられた枠体であり、
さらに、前記枠体を構成する縦枠材または/および下枠材に、前記横行レールを走行させるための走行体を設けたものであることを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記支持部材が、
板状部材、L字状部材、角筒部材から選ばれる一種または二種以上の部材から構成されるものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記走行体が、
ベアリングを介して車軸に回転可能に軸支した金属製の車輪であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場や倉庫などに設置されているホイストなどの巻上装置を備えた搬送装置に関するものである。
詳しくは、搬送装置を構成する部材や部品に従前の搬送装置のような重量物を用いることなく、支持部材を固定できる場所であれば天井、壁、梁、柱など設置場所を選ぶことなくどこにでも簡単に設置をすることができる搬送装置に関するものである。
また、走行体がずれたり蛇行したりすることなく走行レール上をスムースに走行させることができる搬送装置に関するものである。
さらに、従前に比べて単純な構造であり、軽量かつ強度の高い構造を持つ調整機構を設けることによって、対向する2本の走行レールを並行に設置できないような場所(2本の走行レール間の間隔が変化するような場所)であっても、横行レール(ホイストなどの巻上装置を走行させるレール)の移動をスムースに行わせることができる搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、工場や倉庫の天井などに走行レールおよびホイストなどの巻上装置を設置して、工業製品や農産物などを搬送する搬送装置が用いられている。
そして従前の搬送装置は、特許文献1〜4に示すように、走行レールとしていわゆるH鋼を用いたものが一般的な構造となっている。
具体的には、特許文献1の第1図、特許文献2の
図3、特許文献3の
図6に示すように、天井にH鋼を固定して、係るH鋼のフランジ部分を走行レールとして用いて車輪を走行させるようにしたものが一般的となっている。また、特許文献4の
図1、3に示すように、設置場所となる壁や天井などに足場を設けて、係る足場にH鋼(符号16、27)および走行レール(符号11、21)を敷設して、ホイストなどの巻上装置が走行する横行レールを走行レールに沿って移動させるようにしたものも開発されている。
【0003】
さらに、従前の搬送装置においては、横行レールの移動をスムースに行うことを目的とした調整機構についても特許文献5〜7に示すような機構が開発されている。
具体的には、特許文献5の
図3〜6、特許文献6の
図2、
図6、
図7、特許文献7の
図3、
図4に示すように、走行レールと横行レールとを回転構造を持つ部材で連結した構造が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−60892号公報
【特許文献2】特開2002−128461号公報
【特許文献3】特開2008−30895号公報
【特許文献4】特開2009−202982号公報
【特許文献5】実開平7−12382号公報
【特許文献6】特開平7−76489号公報
【特許文献7】特開2000−233888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら従前の搬送装置はいずれも走行レールにH鋼という非常に重い重量物を用いていることから、H鋼を天井に固定する構造(特許文献1〜3)や、足場を設けて係る足場にH鋼を固定する構造(特許文献4)を採用するためには、固定部分や足場部分を相当な強度を有する構造としなければならず、構造が複雑になったり、固定部分や足場部分が大掛かりなものになってしまったりするという問題があった。
また、場所によっては十分な強度を確保できない場合もあり、設置そのものができないという問題もあった。
【0006】
さらに、そもそもH鋼のフランジ部分は車輪などを走行させるような設計にはなっていないことから、特許文献2〜4の搬送装置のようにH鋼のフランジ部分を走行レールとする搬送装置では、表面(走行面)が粗かったり、傾斜状や曲面状となっていたりするため、走行中に車輪が跳ねたり蛇行したりする場合があり、スムースな搬送ができなくなるという問題もあった。
【0007】
また、調整機構についても、従前の調整機構はいずれも回転構造を持つ部材で走行レールと横行レールを連結した構造のものであることから、間隔を調整する際(横行レールが2本の走行レール間の間隔が変化する箇所を移動する際)には、どうしても回転部分(例えば、特許文献5においては連結軸25や28など、特許文献6においては球面ベッド522など、特許文献7においては回転ナット12など)に負荷がかかることになり、長期に渡る使用では回転運動がスムースに行かなくなったり、あるいは回転部分が破損したりしてしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、部材や部品にH鋼のような重量物を用いることがなく、天井、壁、梁、柱など支持部材を固定できる場所があればどこにでも簡単な構造で設置をすることができる搬送装置の提供を目的とするものである。
【0009】
また、走行体が跳ねたり、ずれたり、蛇行したりすることなく走行レール上を走行することができる搬送装置の提供を目的とするものである。
【0010】
さらに、従前に比べて単純な構造であり、軽量かつ強度の高い構造を持つ調整機構を設けることによって、対向する2本の走行レールを並行に設置できない場所でも、ホイストなどの巻上装置が走行する横行レールの移動をスムースに行うことができる搬送装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る搬送装置は、対向する2本の角筒状の走行レールと、一方の端部が天井、壁、梁、柱のいずれかに固定され、他方の端部が角筒状の走行レールの上面、側面、下面のいずれかの面に固定される支持部材と、対向する2本の角筒状の走行レールのそれぞれに沿って走行可能に設けられ、かつ走行体が角筒状の走行レールの上面上を走行する2つの走行装置と、2つの走行装置の間に架設される横行レールと、横行レールに沿って走行可能に設けられた巻上装置を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項2に係る搬送装置は、走行装置が、上部の一方に突設するように軸支した走行体を設けた、一対の吊持部材を備え、一対の吊持部材を角筒状の走行レールの両側面から挟み込むように、かつ走行体が角筒状の走行レールの上面上を走行するように吊持したものであることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3に係る搬送装置は、走行装置が、上部の一方に突設するように軸支した走行体を設けた、吊持部材を備え、走行体が、角筒状の走行レールの上面幅と同等または上面幅よりもわずかに広い幅を有し、かつ両端にフランジ部を備えるものであり、吊持部材を前記角筒状の走行レールの一方の側面から吊持したものであることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項4に係る搬送装置は、走行装置が、走行体を備えた走行機構とともに、2本の角筒状の走行レールの間隔が変化した際に横行レールの端部を突出させて逃がすようにする調整機構を備えているものであることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項5に係る搬送装置は、調整機構が、走行機構の下方に設けられた(横行レールの端部を収納する収納)枠体であり、さらに、枠体を構成する縦枠材または/および下枠材に、横行レールを走行させるための走行体を設けたものであることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項6に係る搬送装置は、支持部材が、板状部材、L字状部材、角筒部材から選ばれる一種または二種以上の部材から構成されるものであることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項7に係る搬送装置は、走行体が、ベアリングを介して車軸に回転可能に軸支した金属製の車輪であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の搬送装置によれば、走行レールに軽量かつ強度の高い角筒状の部材を用いているので、部材・部品にH鋼のような重量物を用いたり、大掛かりな固定部分や足場部分を設けたりすることなく、天井、壁、梁、柱など支持部材を固定できる場所があればどこにでも簡単な構造で搬送装置を設置することができる。また、走行体が跳ねたり、ずれたり、蛇行したりすることなく走行レール上を走行させることができる。
【0019】
本発明の請求項2、3に係る搬送装置によれば、走行装置を特定の構造とすることによって、走行体が走行レール上で跳ねたり、ずれたり、蛇行したりすることをより有効に防止することができる。
【0020】
本発明の請求項4、5に係る搬送装置によれば、従前に比べて単純な構造であり、軽量かつ強度の高い構造を持つ調整機構を設けることによって、対向する2本の走行レールを並行に設置できない場所でも、ホイストなどの巻上装置が走行する横行レールの移動をスムースに行わせることができる。
【0021】
本発明の請求項6に係る搬送装置によれば、支持部材が板状部材、L字状部材、角筒部材から選ばれる一種または二種以上の部材から構成されるものであるので、軽量かつ強度の高い走行レールを用いることと相俟って、天井、壁、梁、柱など支持部材を固定できる場所があればどこにでも簡単な構造で設置をすることができる。
【0022】
本発明の請求項7に係る搬送装置によれば、走行体に、ベアリングを介して車軸に回転可能に軸支した金属製の車輪を用いることによって、荷重に対する耐久性や長期に渡る使用に対する耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の搬送装置の全景を示す模式図である。
【
図2】本発明の搬送装置に用いられる走行装置の一の実施形態の構造を簡単に示した模式図(
図1の走行装置の構造を拡大した模式図)である。
【
図3】本発明の搬送装置に用いられる実際の走行装置の一の実施形態を正面から見た状態を示す斜視図である。
【
図4】
図3の走行装置を上方から見た状態を示す斜視図である。
【
図5】走行レールを、支持部材によって倉庫の壁面や壁面を構成する柱や梁に支持する形態の一例を示す模式図である。
【
図6】走行レールを、支持部材によって納屋の壁面や壁面を構成する柱や梁に支持する形態の一例を示す模式図である。
【
図7】走行レールを、支持部材を柱などからアーム状に伸ばすことによって支持する形態の一例を示す模式図である。
【
図8】本発明の搬送装置に用いられる走行装置の別の実施形態の構造を簡単に示した模式図である。
【
図9】本発明の搬送装置に用いられる走行装置のさらに別の実施形態の構造を簡単に示した模式図である。
【
図10】
図3の走行装置のうち、調整機構を有さない方の走行装置を側方から見た状態を示す斜視図である。
【
図11】
図3の走行装置のうち、調整機構を有する方の走行装置を側方から見た状態を示す斜視図である。
【
図12】本発明の搬送装置に用いられる調整機構の別の実施形態の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。
【0025】
(基本構造)
まず、本発明の搬送装置の構成を
図1〜12に基づいて説明する。本発明の搬送装置1は、対向する2本の角筒状の走行レール2(2a、2b)と、支持部材3と、2つの走行装置4(4a、4b)と、横行レール5と、巻上装置6を主要部品として構成されている。
次に、各構成要件を説明する。
【0026】
(走行レール)
本発明の搬送装置1に用いられる走行レール2は、上記および
図1〜4に示すとおり、角筒状(四角筒状)である必要がある。このように走行レール2に角状(四角状)かつ筒状の部材を用いることによって強度を維持しつつ軽量化を図ることができ、また天井、壁、梁、柱など支持部材3を固定できる場所があればどこにでも簡単に設置をすることができる搬送装置を実現することができるのである。また、角筒状の走行レール2とすることによって、後記する走行体9を平らで凹凸がない角筒状の上面7上で走行させることができることになるため、従前のH鋼を用いた場合のような走行体が走行レール上で跳ねたり、ずれたり、蛇行したりする現象を防止することができ、走行体9をスムースに走行させることができるのである。
なお、本発明の搬送装置1においては走行レール2の角筒状の上面7を走行体9の走行面とすることから、2つの走行装置4a、4bや横行レール5をスムースに走行、移動させるために、対向する2本の走行レール2a、2bは支持部材3によって同じ高さ(走行レール2a、2bの角筒状の上面7が同一面上)になるように設置する(支持する)必要がある。
【0027】
(支持部材)
本発明の搬送装置1に用いられる支持部材3は、板状部材、L字状部材、角筒部材から選ばれる一種または二種以上の部材から構成されるものである。本発明の搬送装置1は、上記のとおり、軽量な角筒状の走行レール2を用いるものであることから、板状部材、L字状部材、角筒部材を組み合わせることによって、天井、壁、梁、柱などどのような場所にでも走行レール2を支持することができることになるのである。
なお、支持の形態(板状部材、L字状部材、角筒部材を組み合わせ方)としては、例えば
図5〜7に示す形態が挙げられる。具体的には、倉庫の壁面や壁面を構成する柱や梁に支持する形態(
図5)や納屋の壁面や壁面を構成する柱や梁に支持する形態(
図6)などを挙げることができる。このように板状部材、L字状部材、角筒部材を組み合わせることによって、天井、壁、梁、柱などが複雑に入り組んでいる場所や、太さや凹凸など、形状が一定していない梁、柱がある場所(特に、
図6に示すような場所)などにおいても、走行レール2を設置することができるのである。さらに、走行レール2が軽量であることから、近傍に柱や梁などがない場所であっても、
図7に示すように、板状部材、L字状部材、角筒部材を組み合わせて柱などからアーム状に伸ばすように支持部材を構成することによって走行レール2を支持することもできるのである。
【0028】
(走行装置)
本発明の搬送装置1に用いられる2つの走行装置4(4a、4b)は、走行体9が走行レール2の角筒状の上面7上を走行する走行機構8を備えるものであり、対向する2本の走行レール2a、2bのそれぞれに、かつ並走するように設けられているものである。また、横行レール5を2つの走行装置4a、4bの間に架設するためのものでもある。
なお、本発明の搬送装置1に用いられる走行装置4は、上記の機能を有するものであれば各種の構造を採用することができる。そしてその中でも、
図1〜4に示すような、上部の一方に突設するように軸支した走行体9aを設けた2つの吊持部材10a、10bを用い、係る一対の吊持部材10a、10bを角筒状の走行レール2の両側面11a、11bから挟み込むように、かつ走行体9aが走行レール2の角筒状の上面7上を走行するように吊持する構造とすれば、走行装置自体の軽量化を図りつつ、走行体(車輪)が走行レール上で跳ねたり、ずれたり、蛇行したりすることを防止することができるので好適である。
【0029】
また、
図1〜4に示す走行装置4a、4b(一対の吊持部材10a、10bを角筒状の走行レール2の両側面11a、11bから挟み込む形態の走行装置)を採用する場合には、走行レール2の角筒状の上面7を走行する走行体9aに加えて、走行レール2の角筒状の側面11を走行する走行体9bを対向するように吊持部材10a、10bに設けることもできる。このように、走行レール2の角筒状の上面7を走行する走行体9aに加えて、走行レール2の両側面を走行体9bで挟み込みながら、走行装置4a、4bを走行させるようにすれば、よりスムースかつ確実に走行装置4a、4bを走行レール2に沿って走行させることができるので好適である。なお、係る走行体9bを設ける際には、対向する走行体9bの間隔を調節する調整孔12を吊持部材10a、10bに設けておけば、使用する走行レール2の幅に合わせて、対向する走行体9bの間隔を容易に変更することができるので好適である。
【0030】
さらに、走行装置4の別の構造として、
図8や
図9のように、走行レール2の角筒状の上面7の幅と同等または上面7の幅よりもわずかに広い幅を有し、かつ両端にフランジ部13を備えた構造の走行体9cを用い、係る走行体9cを上部の一方に突設するように軸支した吊持部材10cを1つ用い、この吊持部材10cを角筒状の一方の側面11aから吊持した構造を採用することもできる。
ここで、
図1〜4の構造の走行装置4a、4bを採用する際は、一対の吊持部材10a、10bを走行レール2の両側面11a、11bから挟み込むように吊持することになるため、支持部材3は角筒状の走行レール2の上面7(具体的には上面7の中央部分)を支持する構造となるが、
図8、9の構造の走行装置4cを採用する際は、吊持部材10cを角筒状の走行レール2の一方の側面11aから吊持することになるため、支持部材3は角筒状の走行レール2の他方の側面11bを支持する形態(
図8)や角筒状の走行レール2の下面14を支持する形態(
図9)を採用することになる。
【0031】
走行体9の構造としては特に限定されるものではなく、単純な車輪構造のものだけでなく、タイヤ構造やクローラ構造など各種の構造の走行体を採用することができる。さらに、走行体9の材質についても特に限定されるものではなく、金属やゴムなど各種の材質を採用することができる。そしてその中でも、走行装置4および巻上装置6を含む横行レール5の荷重に対する耐久性や長期に渡る使用に対する耐久性などの観点から、ベアリングを介して車軸に回転可能に軸支した金属製の車輪構造(金属製のベアリングを内蔵した金属製の車輪構造)を採用することが好ましい。
【0032】
(横行レール、巻上装置)
本発明の搬送装置1に用いられる横行レール5は、
図1に示すように、2つの走行装置4a、4bの間に架設されるものであり、巻上装置6を走行させるためのものである。なお、横行レール5を走行装置4a、4bに架設するための構造については特に限定されるものではなく各種の構造を採用することができる。そしてその中でも、
図1〜4や
図8〜12に示すように、走行装置4の下方(具体的には、吊持部材10の下方部分)に枠体15を設けて、係る枠体15内に横行レール5を設置することで2つの走行装置4a、4bの間に横行レール5を架設する構造とすれば、軽量化を図りつつ、横行レール5の移動をスムースに行わせることができるので好適である。
なお、横行レール5の形状については巻上装置6が横行レール5に沿って走行できるものであれば特に限定されるものではなく、各種の形状を採用することができる。そして、その中でも、走行レール2と同様の角筒状の形状とすれば、軽量化を図りつつ、走行レール2と部品の共通化を図ることができるので好適である。
さらに、横行レールについては、
図4、6、10〜12に示すように、2本の横行レール5a、5bを連結部材16で連結する形態とすれば、強度をより向上させることができるので好適である。
【0033】
また、本発明の搬送装置1に用いられる巻上装置6は、コンテナなどの搬送物を持ち上げるためのものであり、ホイストなどが各種の巻上機構が挙げられる。
【0034】
(調整機構)
なお、本発明の搬送装置1に用いられる走行装置4には、走行機構8に加えて、対向する2本の走行レール2の間隔が変化した際においても、横行レール5の移動をスムースにするための調整機構17を設けることができる。
そしてこのような調整機構17としては、2本の角筒状の走行レール2の間隔が変化した際に横行レール5の端部を突出させて逃がすようにする機構が挙げられる。
具体的には、
図10〜12に示すように、角筒状の横行レール5の一方の端部5aを一の走行装置4aの枠体15内に固定する(
図10)とともに、他の走行装置4bの枠体15を構成する縦枠材15aまたは/および下枠材15bに走行体9dを設け、係る走行体9dに横行レール5を載せることによって、係る走行体9d上で横行レール5の下面を走行させる(
図11、12)機構が挙げられる。このような機構とすれば、走行レール2の間隔が変化した際においても横行レール5の他方の端部5aを他の走行装置4bの枠体15内において突出させて逃がすようにすることができることから、横行レール5の走行レール2上における移動をスムースにすることができるので好適である。また、軽量かつ強度の高い構造を持つ調整機構とすることができるとともに、走行機構に用いる走行体と部品の共通化を図ることができるので好適である。
なお、調整機構17には、上記走行体9dに加えて、
図11、12に示すように縦枠材15aに走行体9eを設けて、係る走行体9e上で横行レール5の側面を走行させることもできる。このように、横行レール5の下面を走行させる走行体9dに加えて、横行レール5の側面を走行させる走行体9eを設ければ、よりスムースかつ確実に横行レール5を走行させることができるので好適である。
【0035】
次に、上記の構成である搬送装置1の動作および作用を次に説明する。
まず、搬送装置を設置する場所に応じて、
図5〜7に示すように、支持部材3を用いて(板状部材、L字状部材、角筒部材から選ばれる一種または二種以上の部材を組み合わせて)、角筒状の走行レール2a、2bを対向するように支持し、設置する。なお、走行装置4に
図1〜4の構造のものを用いる場合には走行レール2の角筒状の上面7(具体的には上面7の中央部分)を支持することによって設置し、走行装置4に
図8の構造のものを用いる場合には角筒状の他方の側面11bを支持することによって設置し、走行装置4に
図9の構造のものを用いる場合には角筒状の下面14を支持することによって設置する。
【0036】
次に、走行体9aが走行レール2の角筒状の上面7上を走行するように、走行装置4を走行レール2に設置する。なおこの際、吊持部材に
図4に示す吊持部材10(走行体9aに加えて走行体9bを備えた吊持部材)を用いる場合には、走行体9bが走行レール2の角筒状の側面11に沿って走行するように、調整孔12を用いて対向する走行体9bの間隔を調整の上、走行装置4を走行レール2に設置する。
【0037】
次に、走行装置4の枠体15の中に横行レール5を設置する。なおこの際、段落[0034]に記載のとおり、横行レール5の一方の端部5aを一の走行装置4aの枠体15内に固定するとともに、横行レール5の他方の端部5aを他の走行装置4bの枠体15内の走行体9dの上に載せるようにして設置する。なお、調整機構17に
図11、12に示す走行体9eを併用する場合には、係る走行体9eが横行レール5の側面に接触するように設置する。
【0038】
最後に、横行レール5に巻上装置6を設置して、搬送装置1の設置を完了することになる。
【0039】
そして、走行装置4a、4bによる走行レール2a、2b上の走行と巻上装置6の横行レール5上の走行を組み合わせるとともに、巻上装置6の巻上機能を用いることによって、搬送物を工場や倉庫などにおいて自在に移動させることになる。
【0040】
従って、本発明の搬送装置は、走行レールに軽量かつ強度の高い角筒状の部材を用いているので、部材・部品にH鋼のような重量物を用いることがなく、天井、壁、梁、柱など支持部材を固定できる場所があればどこにでも簡単な構造で設置をすることができることになる。
また、走行レールに角筒状のものを用いており、走行装置も特定の構造を採用しているので、走行体が跳ねたり、ずれたり、蛇行したりすることなく、走行装置を走行レール上においてスムースに走行させることができる。
さらに、単純な構造であり、軽量かつ強度の高い構造を持つ調整機構を設けているので、対向する2本の走行レールを並行に設置できない場所(2本の走行レール間の間隔が変化するような場所)であっても、横行レール(ホイストなどの巻上装置を走行させるレール)の移動をスムースに行わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の搬送装置は、工場や倉庫などにおける荷物の搬送に用いることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 搬送装置
2 走行レール
2a 走行レール
2b 走行レール
3 支持部材
4 走行装置
4a 走行装置
4b 走行装置
4c 走行装置
5 横行レール
6 巻上装置
7 角筒状の上面
8 走行機構
9 走行体
9a 走行体
9b 走行体
9c 走行体
9d 走行体
9e 走行体
10 吊持部材
10a 吊持部材
10b 吊持部材
10c 吊持部材
11 角筒状の側面
11a 角筒状の一方の側面
11b 角筒状の他方の側面
12 調整孔
13 フランジ部
14 走行レールの下面
15 枠体
15a 縦枠体
15b 下枠体
16 連結部材
17 調整機構
【要約】
【課題】部材・部品にH鋼のような重量物を用いることがなく、天井、壁、梁、柱など支持部材を固定できる場所があればどこにでも簡単な構造で設置をすることができ、走行体が跳ねたり、ずれたり、蛇行したりすることなく、走行装置を走行レール上においてスムースに走行させることができる搬送装置が望まれていた。
【解決手段】本発明に係る搬送装置は、対向する2本の角筒状の走行レールと、一方の端部が天井、壁、梁、柱のいずれかに固定され、他方の端部が角筒状の走行レールの上面、側面、下面のいずれかの面に固定される支持部材と、対向する2本の角筒状の走行レールのそれぞれに沿って走行可能に設けられ、かつ走行体が角筒状の走行レールの上面上を走行する2つの走行装置と、2つの走行装置の間に架設される横行レールと、横行レールに沿って走行可能に設けられた巻上装置を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1