(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138342
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】クラッチを備えたコンプレッサシステム
(51)【国際特許分類】
F04B 35/00 20060101AFI20170522BHJP
F16H 25/12 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
F04B35/00 B
F16H25/12 D
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-508125(P2016-508125)
(86)(22)【出願日】2014年4月15日
(65)【公表番号】特表2016-516935(P2016-516935A)
(43)【公表日】2016年6月9日
(86)【国際出願番号】EP2014057570
(87)【国際公開番号】WO2014170298
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2015年11月19日
(31)【優先権主張番号】102013006861.4
(32)【優先日】2013年4月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr−Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】フーバ ネーメト
(72)【発明者】
【氏名】ゲルゲリー ボーカ
【審査官】
新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/136168(WO,A2)
【文献】
特開2008−256210(JP,A)
【文献】
特開2010−096244(JP,A)
【文献】
特表2011−522163(JP,A)
【文献】
中国実用新案第2436679(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 35/00
F16H 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用車に圧縮空気を供給するためのコンプレッサシステムであって、該コンプレッサシステムが、コンプレッサ(1)と、クラッチ(2)と、補助装置(3)とを備えており、コンプレッサシステムが、商用車の原動機(5)によって入力軸(4)を介して駆動可能であり、コンプレッサ(1)が、クラッチ(2)によって原動機(5)から完全に切離し可能であるコンプレッサシステムにおいて、
入力軸(4)に対して同軸的に中空軸(6)が配置されており、該中空軸(6)が、クラッチ(2)を介して入力軸(4)に結合可能であり、これによって、それぞれコンプレッサ(1)に設けられたシリンダ(7a)内で往復動可能な少なくとも1つのピストン(8a)が駆動されており、
コンプレッサ(1)が、少なくとも2つのシリンダ(7a,7b)を有しており、該シリンダ(7a,7b)が、その内部で往復動可能なそれぞれ1つのピストン(8a,8b)を備えており、少なくとも一方のピストン(8a)が、中空軸(6)の外周面に配置された1つの円筒状の偏心的なエレメント(9a)を介して駆動されていて、少なくとも他方のピストン(8b)が、入力軸(4)を介して駆動されていることを特徴とする、商用車に圧縮空気を供給するためのコンプレッサシステム。
【請求項2】
円筒状の偏心的なエレメント(9a)が、中空軸(6)に一体的に成形されている、請求項1記載のコンプレッサシステム。
【請求項3】
円筒状の偏心的なエレメント(9a)が、中空軸(6)に外嵌可能である、請求項1記載のコンプレッサシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つのピストン(8a)にコネクティングロッドピン(10a)を介して結合されたコネクティングロッド(11a)が、円筒状の偏心的なエレメント(9a)に接触している、請求項1記載のコンプレッサシステム。
【請求項5】
コンプレッサ(1)が、単段式のコンプレッサ、二段式のコンプレッサまたは二段よりも多い段式のコンプレッサとして形成されている、請求項1記載のコンプレッサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用車に圧縮空気を供給するためのコンプレッサシステムであって、該コンプレッサシステムが、コンプレッサと、クラッチと、補助装置とを備えており、コンプレッサシステムが、商用車の原動機によって入力軸を介して駆動可能であり、コンプレッサが、クラッチによって原動機から完全に切離し可能であるコンプレッサシステムに関する。
【0002】
発明の背景
近年の商用車は、圧縮空気により運転することができる種々異なる部分システムを有している。これらの部分システムには、たとえば圧縮空気運転式の常用ブレーキやエアサスペンションが含まれている。これらの部分システムへの圧縮空気の供給を確保するために、通常、商用車には、圧縮空気供給装置が設けられている。この圧縮空気供給装置はコンプレッサを有している。このコンプレッサは、商用車の原動機によって機械的に駆動される。商用車の内部における圧縮空気の需要は、通常、コンプレッサの持続運転を必要とするほどではないので、コンプレッサと原動機との切離しを可能にするために、原動機とコンプレッサとの間にクラッチが設けられていてよい。このことは所望されている。なぜならば、圧縮空気が必要とされない場合にもしくは既存の圧縮空気リザーブがある程度の期間にわたって消費器に対する圧縮空気の需要を満たすことができる場合に節約することができるエネルギが、コンプレッサの運転によって消費されてしまうからである。
【0003】
一般的に公知の先行技術に基づき明らかであるように、近年の商用車には、しばしばクラッチが設けられている。このクラッチは、エネルギの節約のために、コンプレッサを原動機から完全に切り離すことができる。これは、コンプレッサのクランクシャフトの出力側へのハイドロリックポンプの従来の配置時に、コンプレッサと同時にハイドロリックポンプも原動機から切り離されてしまうことを意味している。そうなると、これによって、たとえば、商用車に用いられるパワーステアリングの形態の操舵アシストをもはや利用することができなくなってしまう。しかしながら、このことは、安全性の理由から許容することができない。
【0004】
この問題を解決するために、種々異なる択一的な手段が知られている。考えられる1つの解決手段は、コンプレッサの接続が切られている場合に操舵アシストをオフにすることにある。この変更手段は、コンプレッサの連結が主にアウトバーン(高速道路)では解除されてよいという前提に基づいている。この区間では、カーブの曲率が小さいため、操舵アシストは必ずしも必要とならない。しかしながら、たとえば避(よ)けるための操舵操作が実施されなければならない場合には、操舵補助が存在しておらず、コンプレッサが接続されなければならなくなる。
【0005】
別の可能性は、操舵アシストを純粋に電気的に運転することにある。この場合には、原動機により機械的に駆動される操舵補助ポンプはもはや存在しておらず、このポンプが固有の電動モータを必要としている。このことは、原理的に実現可能であるものの、電動モータが約50kWの大きな出力を提供しなければならない。したがって、付加的に、スペースも重量も相応に必要となってしまう。
【0006】
さらに、独国特許出願公開第102008003957号明細書に基づき、コンプレッサを原動機から連結解除することを可能にするクラッチを備えたコンプレッサが明らかである。コンプレッサが原動機から切り離されている場合には、コンプレッサに直列に接続されている補助装置をも運転することができない。
【0007】
独国特許出願公開第102009023869号明細書に基づき、商用車に圧縮空気を供給するためのコンプレッサシステムと、このようなコンプレッサシステムを運転する方法とが明らかである。商用車は原動機を有していて、この原動機によってパワートレーンを介して駆動される。このパワートレーンから、伝動装置を介してコンプレッサシステムのためのドライブトレーンが分岐される。コンプレッサシステムは、コンプレッサと、補助装置、同明細書ではハイドロリックポンプとを有している。コンプレッサシステムは全体としてドライブトレーンによって駆動される。ハイドロリックポンプを駆動するための副出力部材が、歯車伝動装置を介して提供される。この歯車伝動装置とコンプレッサとの間には、クラッチが配置されている。このクラッチは、ハイドロリックポンプの運転に影響を与えることなく断続することができる。このコンプレッサシステムには、並列な構造に基づき、比較的多くの構成スペースが利用されるという欠点がある。さらに、歯車伝動装置と伝動装置とが、付加的な構成スペースを必要とするだけでなく、コンプレッサシステム全体の重量をも大幅に増加させてしまう。
【0008】
発明の開示
したがって、本発明の課題は、コンプレッサシステムを改良して、原動機からのコンプレッサの完全な切離しと同時に補助装置の運転が、多大な機械的な手間を要することなく、構成スペースおよび重量を節約して可能となるようにすることである。
【0009】
この課題は、請求項1の上位概念部に記載のコンプレッサシステムを起点として、請求項1の特徴部に記載の特徴に結び付けて解決される。本発明の有利な改良態様は、後続の従属請求項から明らかである。
【0010】
本発明によれば、入力軸に対して同軸的に中空軸が配置されており、この中空軸が、クラッチを介して入力軸に結合可能であり、これによって、それぞれコンプレッサに設けられたシリンダ内で往復動可能な少なくとも1つのピストンが、少なくとも間接的に駆動されている。言い換えると、入力軸が中空軸を通って延びていて、好ましくはハイドロリックポンプであってよい補助装置を駆動する。したがって、この補助装置は、クラッチ位置に関係なく、原動機によって入力軸を介して駆動される。これに対して、コンプレッサの少なくとも1つのピストンは、クラッチを介して断続可能となる。したがって、コンプレッサが原動機から完全に切離し可能となり、これによって、エネルギを節約することができる。さらに、コンプレッサシステムが、線形の構造および同軸的な軸配置に基づき、特に構成スペースと重量とを節約している。
【0011】
少なくとも1つのピストンが、中空軸の外周面に配置された1つの円筒状の偏心的なエレメントを介して駆動されていると、特に好適である。この円筒状の偏心的なエレメントは、好ましくはカムである。
【0012】
円筒状の偏心的なエレメントが、中空軸の一部を成していると、さらに好適である。言い換えると、中空軸が、この軸の外側半径に比べて、より大きな半径と偏心的な幾何学形状とを有するただ1つの区分を有している。
【0013】
本発明は、円筒状の偏心的なエレメントが、中空軸に外嵌可能であるという技術的な教示を含んでいる。円筒状の偏心的なエレメントと中空軸との間には、好ましくはプレス嵌めが存在している。しかしながら、円筒状の偏心的なエレメントを中空軸の外周面に接着するかまたは溶接することも可能である。
【0014】
少なくとも1つのピストンにコネクティングロッドピンを介して結合されたコネクティングロッドが、円筒状の偏心的なエレメントに接触していると、特に好適である。したがって、中空軸の回転運動が、円筒状の偏心的なエレメントと、このエレメントに接触しているコネクティングロッドと、コネクティングロッドピンとを介して、少なくとも1つのピストンの並進運動に変換される。
【0015】
好適な態様によれば、コンプレッサが、少なくとも2つのシリンダを有しており、これらのシリンダが、その内部で往復動可能なそれぞれ1つのピストンを備えており、少なくとも2つのピストンが、中空軸の外周面にタンデムに配置されたそれぞれ1つの円筒状の偏心的なエレメントを介して駆動されている。しかしながら、3つ、4つまたは4つよりも多くのシリンダを備えたコンプレッサを前述した形式と同様に駆動することも可能である。
【0016】
別の好適な態様によれば、コンプレッサが、少なくとも2つのシリンダを有しており、これらのシリンダが、その内部で往復動可能なそれぞれ1つのピストンを備えており、少なくとも一方のピストンが、中空軸の外周面に配置された1つの円筒状の偏心的なエレメントを介して駆動されていて、少なくとも他方のピストンが、入力軸を介して駆動されている。このためには、入力軸が、コネクティングロッドが作用する箇所に、好ましくはクランクを有している。これによって、入力軸の回転運動を少なくとも1つのピストンの並進運動に変換することができる。
【0017】
さらに、コンプレッサが、単段式のコンプレッサ、二段式のコンプレッサまたは二段よりも多い段式のコンプレッサとして形成されていることが提案される。
【0018】
以下に、本発明を改良する更なる手段を本発明の好適な実施の形態の記述と一緒に図面に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】1つのピストンを備えたコンプレッサを有する、商用車に圧縮空気を供給するための本発明に係るコンプレッサシステムの概略図である。
【
図2】2つのピストンを備えたコンプレッサを有する第2の実施の形態に係るコンプレッサシステムの概略図である。
【
図3】2つのピストンを備えたコンプレッサを有する第3の実施の形態に係るコンプレッサシステムの概略図である。
【0020】
好適な実施の形態の詳細な説明
図1に示したコンプレッサシステムは、主として、原動機5により駆動される入力軸4から成っている。この入力軸4は補助装置3を駆動する。入力軸4に対して同軸的に中空軸6が配置されている。この中空軸6は入力軸4にクラッチ2を介して結合可能である。入力軸4を中空軸6に結合するクラッチ2が接続されると、中空軸6が、短期間の始動段階の後、入力軸4と同じ速度で回転させられる。中空軸6は、その外周面に配置された1つの円筒状の偏心的なエレメント9aと、この円筒状の偏心的なエレメント9aに配置されたコネクティングロッド11aとを介して、シリンダ7a内で往復動可能なピストン8aを駆動する。このピストン8aはコネクティングロッド11aにコネクティングロッドピン10を介して結合されている。
【0021】
図2によれば、コンプレッサシステムは、2つのシリンダ7a,7bを備えたコンプレッサ1を有している。両シリンダ7a,7bの各々には、その内部で往復動可能なそれぞれ1つのピストン8a,8bが配置されている。両ピストン8a,8bは、中空軸6の外周面にタンデムに配置された2つの円筒状の偏心的なエレメント9a,9bを介して駆動されている。両方の円筒状の偏心的なエレメント9a,9bは、互いに180°だけずらされている。
【0022】
図3には、コンプレッサシステムの別の実施の形態が示してある。このコンプレッサシステムは、2つのシリンダ7a,7bを備えたコンプレッサ1を有している。一方のピストン8aは、中空軸6の外周面に配置された1つの円筒状の偏心的なエレメント9aを介して駆動されている。他方のピストン8bは、入力軸4を介して直接駆動されている。このためには、入力軸4が、コネクティングロッド11bが作用する箇所にクランク12を有している。したがって、切断されたクラッチ位置において、入力軸4を介して、補助装置3だけでなく、コンプレッサ1のピストン8bも駆動される。他方のピストン8aはクラッチ2を介して断続可能となる。
【0023】
本発明は、前述した複数の好適な実施の形態に限定されるものではない。それどころか、以下の特許請求の範囲の保護範囲に一緒に含まれる複数の変化形態も可能である。たとえば、任意の個数のピストン8を備えたコンプレッサ1を有するコンプレッサシステムを使用することも可能である。
【0024】
補足的に述べておくと、「有する・含まれる」と記載したからといって、別のエレメントまたはステップが除外されるものではなく、「1つの」と記載したからといって、複数個が除外されるものではない。さらに付言しておくと、上述した複数の実施の形態のうちの1つを参照しながら説明した特徴またはステップが、上述した別の実施の形態の別の特徴またはステップに組み合わされて使用されてもよい。特許請求の範囲における符号は、限定と見なすべきものではない。
【符号の説明】
【0025】
1 コンプレッサ
2 クラッチ
3 補助装置
4 入力軸
5 原動機
6 中空軸
7a,7b シリンダ
8a,8b ピストン
9a,9b 円筒状の偏心的なエレメント
10a,10b コネクティングロッドピン
11a,11b コネクティングロッド
12 クランク