(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記架橋剤が、グルタルアルデヒド、マロンジアルデヒドおよびゲニピンからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項1に記載のセリシンハイドロゲルの調製方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、セリシンハイドロゲルの調製方法と使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、カイコシルクフィブロイン欠失型突然変異品種の蚕繭(中国農業科学院蚕業研究所より購入、該品種の資源は中国農業科学院蚕業研究所国家蚕資源保存センタにて保存)を原材料として使用し、抽出純化によりセリシン水溶液を作成し、化学架橋剤(アルデヒドおよびゲニピン)を使用して架橋することにより、細胞適合性と細胞接着性、高架橋率、高速ゲル化性を備え、機械的特性が良好で、性質が安定し、蛍光特性を備えたセリシンハイドロゲルを調製するものである。
【0008】
該材料は、一種の新型の生体材料であり、成長因子、薬物および細胞の担体として、皮膚の損傷、筋肉の損傷、血管の損傷、神経の損傷、心筋の損傷を含むがこれらに限定されない、多種の軟組織損傷の修復および疾病の治療に用いることができる。
【0009】
上述の技術課題を解決するため、本発明は、以下のステップを含むセリシンハイドロゲルの調製方法を提供する。
【0010】
1)カイコシルクフィブロイン欠失型突然変異品種の蚕繭を量り取り、LiBrまたはLiCl水溶液によって抽出し、透析、純化によって、分解されていない質量百分率濃度0.1〜4%のセリシン水溶液を得る。
【0011】
2)ステップ1)で得られたセリシン水溶液を濃縮して質量百分率濃度1.5〜10.0%とし、濃縮後のセリシン水溶液に対して架橋剤を加え(セリシン水溶液1mL毎に架橋剤2〜100μLを加える)、十分に混合した後、4〜45℃に保持して5秒〜36時間反応させ、ハイドロゲルを得る。
【0012】
好適には、前記架橋剤は、グルタルアルデヒド、マロンジアルデヒドおよびゲニピンからなるグループから選択される。
【0013】
好適には、前記架橋剤の質量百分率濃度は0.1〜25%である。
【0014】
好適には、前記ステップ1)におけるセリシン水溶液調製方法は、以下のステップを含む。
【0015】
1)カイコシルクフィブロイン欠失型突然変異品種の蚕繭を量り取り、蚕繭を剪断して砕片とし、水洗し、水分を除去する。
【0016】
2)ステップ1)で得られた蚕繭砕片を濃度6〜8mol/LのLiBrまたはLiCl水溶液中に浸し(蚕繭砕片1g毎に、6〜8mol/LのLiBrまたはLiCl水溶液20〜100mL)、25〜50℃で5〜24時間置く。
【0017】
3)ステップ2)で得られた溶液を遠心分離して不溶性物質を分離除去し、清澄溶液を得る。
【0018】
4)ステップ3)で得られた清澄溶液中に、4分の1の体積の1mol/L、pH8.0〜11.0のTris−HCl緩衝溶液を加え、超純水中で透析し、セリシン水溶液を得る。
【0019】
5)ステップ4)で得られたセリシン水溶液を遠心分離して沈殿物を除去し、濃縮して質量百分率濃度1.5〜10%のセリシン水溶液とし、使用まで冷蔵庫で保存する。
【0020】
好適には、セリシンハイドロゲルの調製方法は、以下のステップを含む。
【0021】
1)カイコシルクフィブロイン欠失型突然変異品種の蚕繭を量り取り、蚕繭を剪断して1cm
2の砕片とし、3回洗浄し、水分を除去する。
【0022】
2)ステップ1)で得られた蚕繭砕片を濃度6mol/LのLiBr水溶液中に浸し(蚕繭砕片1g毎に、LiBr水溶液40mL)、35℃の水槽に24時間置き、セリシンを溶解させる。
【0023】
3)ステップ2)で得られた溶液を3500rpmで遠心分離して不溶性物質を分離除去し、清澄溶液を得る。
【0024】
4)ステップ3)で得られた清澄溶液中に、4分の1の体積の1mol/L、pH9.0のTris−HCl緩衝溶液を加え、透析を行い、セリシン水溶液を得る。
【0025】
5)ステップ4)で得られたセリシン水溶液を遠心分離して沈殿物を除去し、濃縮して質量百分率濃度1.5〜10%のセリシン水溶液とし、使用まで4℃で保存する。
【0026】
6)上記で得られたセリシン水溶液中にグルタルアルデヒドを加え(セリシン水溶液1mL毎に質量百分率濃度25%のグルタルアルデヒドを2〜100μL)、十分に混合した後、37℃で5分置き、ハイドロゲルを得る。
【0027】
本発明は、更に、セリシンハイドロゲルの生体医用材料における使用方法を提供する。該セリシンハイドロゲルは、以下の方面で使用できる。
【0028】
1)該セリシンハイドロゲルは、血管、表皮、筋肉、皮膚および神経組織の損傷の修復を含むがそれらに限定されない、多種の損傷の修復および疾病の治療に用いることができる。
【0029】
2)該セリシンハイドロゲルは、工具細胞と結合して、対応する治療因子を包むことによって、組織の修復に使用できる。
【0030】
3)該セリシンハイドロゲルは、成長因子、薬物および細胞の担体とすることができる。
【0031】
本発明は、更に、以下のステップを含む、セリシン凍結乾燥足場の調製方法を提供する。
【0032】
1)上記で得られたセリシンハイドロゲルを0℃以下に置き、冷凍させる。
【0033】
2)冷凍したセリシンハイドロゲルを真空冷凍乾燥させ、セリシン凍結乾燥足場を得る。
【0034】
本発明は、更に、セリシン凍結乾燥足場の生体医用材料における使用方法を提供する。
【0035】
本発明は、更に、セリシンハイドロゲルの蛍光標識プローブ材料における使用方法を提供する。
【発明の効果】
【0037】
本発明の有利な効果は以下の通りである。
【0038】
1)セリシンの良好な天然特性を保持しながら、従来の抽出方法で得られなかった分解されていない高い生体特性を備えたセリシンを得るという難題を克服した。(従来のセリシンは、野生型の蚕の蚕繭に由来し、高温高圧法やアルカリ法といった従来の抽出法を用いて処理されていたために、セリシンの分解が深刻でゲル化特性に乏しく、また、臭化リチウム溶液抽出法を用いてセリシンをフィブロインから分離するのが困難だった。)
【0039】
2)本発明の方法によれば、セリシンの抽出効率は90%以上である。
【0040】
3)本発明は、初めて、分解されていないセリシン水溶液とアルデヒドまたはゲニピン等の架橋剤を用いてハイドロゲルを作成したので、調製方法が簡単で、実施し易い。
【0041】
4)本発明は、初めて、三次元構造の良好な機械的特性を備えた純粋なセリシン足場を調製し、また、初めて、注射可能な純粋セリシンハイドロゲルを調製した。(本発明前には、注射可能な純粋セリシン三次元ハイドロゲルは世界になく、一般に、セリシンとその他の材料を単純に混合して、ゼラチン、ポリビニルアルコール、キトサン等の複合生物材料が調製されていた。)
【0042】
5)本発明の方法によって調製したセリシンハイドロゲルは、独特の性質を備えている。本発明の方法によって抽出された完全なセリシンペプチドはセリシンの良好な天然特性を保持しており、該セリシン水溶液は、架橋剤(アルデヒド、ゲニピンなど)の作用下で容易に架橋しゲル化する。本発明の方法によって調製されたセリシンハイドロゲルは、従来のハイドロゲルの特徴(多孔性、分解可能性等)だけでなく、次のような多くの独自の優れた特性を備えている。(I)良好な生体適合性を備え、多種の細胞を担持し、細胞の接着と増殖を支持できる。(II)注射可能性とin situゲル化特性を備え、注射によって該材料を体内に移植できるため、該方法は、手術と比べて、有機体の傷が明らかに小さい。(III)自己蛍光特性を備え、体内におけるリアルタイム追跡が可能である。(IV)良好な機械的特性を備えている。(セリシンハイドロゲルは、組織工学に広く用いられているアルギン酸塩ハイドロゲルよりも機械的特性が優れている。)(V)分解生成物がpH値を中性化する強い緩衝能力を備えているため、該材料を薬物または成長因子の担体として使用する場合、薬物または成長因子等がpH環境の影響で変性失活するのを防ぐことができる。(VI)分解速度がpH値と相関する。(VII)良好な薬物遅延放出能力を備え、良好な薬物担体である。
【0043】
6)本発明の方法によって得られるセリシンハイドロゲルは、架橋率とゲル化時間がいずれも調節可能であり(必要に応じたin situゲル化を実現できる)、架橋材の用量や種類、または、セリシン水溶液の濃度等の条件を変えることにより、ハイドロゲルの架橋率とゲル化速度を調節することができる。
【0044】
7)本発明の方法によって得られるセリシンハイドロゲルは、用途が広く、様々な形状のゲルとすることができ、また、凍結乾燥により、様々な形状および孔径の多孔生体足場とすることができる。
【0045】
8)該セリシンハイドロゲルは、良好な生体適合性と細胞接着性を備え、多種の細胞の生存と増殖を支持できる。薬物に対し良好な制御放出作用を備えている。セリシンハイドロゲル、および、それを凍結乾燥して得られた三次元多孔セリシン生体足場は、細胞外基質として、細胞の成長と栄養物質交換の促進を支持できる。関連する実験の結果によれば、該セリシンハイドロゲルは、血管、表皮、筋肉、皮膚、神経等の組織の損傷および疾病の治療を含むがそれらに限定されない用途に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明をより良く理解するため、以下に、具体的実施例を参照して本発明の主要な内容を説明する。但し、本発明の内容は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0048】
セリシンハイドロゲルの調製方法は、以下のステップを含む。
【0049】
一.蚕繭の選択
カイコシルクフィブロイン欠失型突然変異品種の蚕繭(中国農業科学院蚕業研究所より購入、該品種の資源は中国農業科学院蚕業研究所国家蚕資源保存センタにて保存)を原材料として選択し使用した。主要化学成分はセリシン。
【0050】
二.セリシンの抽出と分離
【0051】
1)カイコシルクフィブロイン欠失型突然変異品種の蚕繭(中国農業科学院蚕業研究所提供のもを購入)1gを量り取り、蚕繭を剪断して1cm
2の砕片とし、清浄なビーカーに入れ、超純水を用いて3回洗浄し、3500rpmの遠心分離で5分間水分を除去した。
【0052】
2)ステップ1)で得られた蚕繭砕片に30〜60mLの濃度6mol/LのLiBr水溶液を加え、該ビーカーを35℃の恒温水槽に入れて24時間置き、セリシンを溶解させた。
【0053】
3)ステップ2)で得られた溶液を遠心分離管に移し、3500rpmで5分間遠心分離して不溶性物質を除去し、清澄溶液を得た。
【0054】
4)ステップ3)で得られた清澄溶液中に、4分の1の体積のTris−HCl緩衝溶液(1mol/L、pH9.0)を加えた。
【0055】
5)ステップ4)の溶液を、前処理した透析袋(MWCO3500)中に移し、その後、透析袋の両端をクリップで挟み、超純水を入れたビーカーの中に置いた。該ビーカーを攪拌器上に置き、3時間に1回水を換えながら48時間ゆっくり攪拌して透析した。
【0056】
6)ステップ5)の透析後のセリシン水溶液を遠心分離管に移し、4000rpmで5分間遠心分離して沈殿物を除去した。
【0057】
7)セリシン水溶液を再度透析袋に入れ、透析袋の両端をクリップで挟み、透析袋を質量百分率濃度20%のPEG6000溶液中に置き、セリシン水溶液が所望の濃度となるまで濃縮した(質量百分率濃度2.0%以上)。
【0058】
8)タンパク質濃度測定にはBSA法とセリシン水溶液乾燥法を使用した。
【0059】
9)タンパク質の分子量測定を行った(SDS−PAGE参照)。10〜15μLのセリシン水溶液を採取して分子量測定に用い、残りは使用まで4℃で冷蔵庫に保存した。
【0060】
三.ハイドロゲルの調製
【0061】
1.濃縮後のセリシン水溶液を、超純水を用いて質量百分率濃度2.0%に調整した。
【0062】
2.セリシン水溶液1mL毎に質量百分率濃度25%のグルタルアルデヒトを22μL加えた。
【0063】
3.十分混合した後、37℃で5分間置き、ハイドロゲルを得た。
【0064】
四.実験分析
【0065】
1.セリシンのゲル化時間と架橋率の分析
セリシン水溶液と質量百分率濃度25%のグルタルアルデヒトとを、体積比100:2.2で、室温下で、セリシンハイドロゲルに調製し、ゲル化時間と架橋率を観測、記録した。
【0066】
図2は、セリシン濃度の低下に従って、架橋に必要な時間が長くなることを示している。ゲル化時間の調節にセリシン濃度を利用できることがわかる。
【0067】
図3よれば、セリシン水溶液のグルタルアルデヒドによる架橋は、0.5時間後には基本的に架橋が完了し、その後、架橋率は比較的安定した状態に保たれることが示されている。
【0068】
2.セリシンハイドロゲルの多孔構造
セリシンハイドロゲルを三種類の異なる温度下(それぞれ−20℃、−80℃、−196℃)で凍結乾燥させ、走査電子顕微鏡で観察した。
図1に示すように、セリシンハイドロゲルを−196℃、−80℃、−20℃の冷凍温度で処理後、凍結乾燥させて得られたセリシン三次元多孔生体足場の孔径は、それぞれ、約20μm、300μm、700μmだった。冷凍温度が低いと、三次元多孔生体足場の孔径も小さくなった。また、三次元多孔生体足場には大量の微小孔が存在し、細胞外基質として、細胞の成長を支持し栄養物質の交換を促進することが可能である。
【0069】
3.セリシンハイドロゲルとアルギン酸塩ハイドロゲルとの力学特性の比較分析
一定の規格の円柱型ハイドロゲル塊を作成し、小型万能試験機(Instron5848 MicroTester,Instron,USA)を利用して常温におけるセリシンハイドロゲルの力学特性を測定した。
【0070】
図4A、
図4Bに示すように、セリシンハイドロゲル(質量百分率濃度2%)は、組織工学の研究に広く用いられている材料であるアルギン酸塩ハイドロゲル(質量百分率濃度それぞれ2%および4%、ハイドロゲル中に等質量の高分子量および低分子量のアルギン酸塩を含有する)と比較して、更に優れた機械的特性を備えている。アルギン酸塩ハイドロゲルは、1mLのアルギン酸塩水溶液に40μLのCa
2SO
4懸濁液(0.21g/mL)を加えて混合することによって作成された。
【0071】
4.異なるpH環境下でのセリシンハイドロゲルの分解速度
分解に対するpH環境の影響を知るために、セリシンハイドロゲルを異なるpH値(pH3.0、pH5.0、pH7.4、pH11.0)のPBS溶液中に浸し、毎日1回PBS溶液を交換し、異なる時間で取り出し、乾燥し、重量を量った。結果を
図5に示す。
【0072】
図5によれば、セリシンハイドロゲルは、初めの5日間は分解速度が比較的速く、5日経過後はセリシンハイドロゲルの分解速度は緩慢になった。ハイドロゲルの分解はpH値との相関性があり、pH11.0のアルカリ性条件下での分解速度が最も速く、15日後には完全に分解した。pH3.0の酸性条件下での分解速度が最も緩やかであり、53日時点での分解率が30%前後に過ぎなかった。
【0073】
セリシンハイドロゲル分解生成物の環境pHに対する影響を試験するため、ゲルの外部の緩衝溶液を交換せず、対応する時点で該緩衝溶液のpH値を測定した。結果を
図6に示す。
【0074】
図6によれば、セリシンハイドロゲル分解生成物は外部の緩衝溶液のpH値を中性化できる特性があることがわかる。
【0075】
5.セリシンハイドロゲルの膨張率に対するpH値の影響
セリシンハイドロゲルを凍結乾燥し、重量を量り、三種類の異なるpH値(pH3.0、pH7.4、pH11.0)のPBS溶液中に浸し、異なる時点で取り出し、以下の公式に従って吸水膨張率を測定した(式中で、Wsは膨張状態での重量、Wdは乾燥重量である)。
【0076】
図7によれば、セリシンハイドロゲルは、初めの3時間で膨張率が大幅に上昇し、2週間後は基本的に安定している。pH7.4およびpH11.0の環境下で、膨張率が最大で26倍に達した。pH3.0の条件下では、最大膨張率は21倍だった。
【0077】
6.異なるpH値条件下でのセリシンハイドロゲルの水飽和度
セリシンハイドロゲルを−80℃で1晩冷凍した後、低温真空乾燥機中で乾燥させ、凍結乾燥させたサンプルの重量を量り、異なるpH値(pH3.0、pH7.4、pH11.0)の脱イオン水中に48時間浸した。その後、吸水膨張したサンプルを取り出し、表面の水分を除去後、直ちに重量を量り、サンプルの乾燥重量に対するサンプルの吸水膨張後の重量を計算することによって、サンプルの水飽和度を得た。
【0078】
図8によれば、異なるpH値(3.0、7.4、11.0)条件下でのセリシンハイドロゲルの水飽和度は、pH11.0のアルカリ性条件におけるセリシンの吸水量が
1275%、pH3.0の酸性条件におけるセリシンハイドロゲルの吸水量が860%であった。
【0079】
7.セリシンの示差走査熱量測定法による分析
示差走査熱量測定法を利用して(測定装置にはNETZSCH STA 449 F3,Germanyを採用)、セリシンハイドロゲルの相変化時の溶融点の変化を測定した。測定流速は60mL/minとし、昇温範囲は40〜550℃にプログラムし、毎分10℃昇温させた。
【0080】
図9は、異なる処理を行ったセリシンサンプルの熱分解を示すグラフである。(I)は純セリシン凍結乾燥粉末、(II)はグルタルアルデヒドと濃塩酸で処理したセリシン、(III)はエタノールで処理したセリシン、(IV)はグルタルアルデヒドで架橋したセリシンハイドロゲルを示している。(I)の分解温度は321.7℃、(II)の分解温度は394.0℃、(IV)の分解温度は314.4℃、(III)の分解温度は208.3℃および398.3℃であった。
【0081】
8.セリシンハイドロゲルおよびセリシンの赤外線スペクトル分析
フーリエ変換赤外分光光度計(Nexus,Thermal Nicolet, USA)を利用してセリシンハイドロゲルの4000〜650cm
−1にある特性ピークの測定を行った。
【0082】
図10によれば、グルタルアルデヒドを用いて架橋したセリシンハイドロゲル中のセリシンの二次構造に明確な変化がなく、セリシンハイドロゲルは天然セリシンの構造を非常に良好に保持できることが分かる。(a)はエタノールで処理したセリシン、(b)はグルタルアルデヒドと濃塩酸で処理したセリシン、(c)はグルタルアルデヒドで架橋したセリシンハイドロゲル、(d)は純セリシン凍結乾燥粉末を示している。
【0083】
特性ピークamide Iとamide IIから、曲線(c)と曲線(d)が基本的に同じであることが見て取れ、これは、セリシンハイドロゲル中のポリペプチドの二次構造が純セリシンのものと類似していることを意味し、また、セリシンハイドロゲルがセリシンの天然構造を非常に良く維持していることを意味している。
【0084】
9.ヒト臍帯静脈内皮細胞の、セリシンハイドロゲル組と対照組における、細胞接着性(ECV304細胞を使用)と細胞生存性(EA.hy926細胞を使用)の測定
【0085】
1)まず、セリシン水溶液を架橋剤と混合した後、プラスチックの細胞培養皿に敷いた。安定してゲル化されるのを待って、セリシンハイドロゲルの敷かれた細胞培養皿を滅菌PBSで3回洗浄し、更に75%エタノールに1時間浸し、最後に滅菌PBSで1回洗浄した後、使用まで4℃の冷蔵庫に保存した。
【0086】
2)細胞培養フラスコから集めた細胞を懸濁し、吹散し、1)で前処理した培養皿に播種した。セリシンハイドロゲルの敷かれていない細胞培養皿を対照とした。細胞培養用の培地はDMEM
低グルコース培地とし、細胞培養器に入れて細胞を培養した(37℃、CO
2濃度5%、湿度100%)。
【0087】
3)
図14Aは、播種後4時間および8時間の二つの時点における未接着の細胞数の計数によって得たものであり、最初に播種した細胞総数と未接着の細胞数との差が播種した細胞総数に占める割合を細胞接着率とした。
図14Bは、MTT法によって測定した、細胞播種後2.5日および4.5日後の細胞の生存性である。
【0088】
図14は、セリシンハイドロゲルが、ヒト臍帯静脈内皮細胞に対し良好な細胞接着性を有し、かつ、細胞の生存と増殖を支持できることを示している。セリシンハイドロゲルが良好な生体適合性と細胞接着性を備えていることが分かる。
【実施例2】
【0089】
本実施例におけるセリシン
ハイドロゲルの調製方法は、以下を除いて、実施例1の調製方法と同じである。
【0090】
1.セリシン水溶液1mL毎に質量百分率濃度25%のグルタルアルデヒトを100μL加えた。
【0091】
2.十分混合した後、37℃で0.5時間置き、セリシンハイドロゲルを得た。
【実施例3】
【0092】
本実施例におけるセリシン
ハイドロゲルの調製方法は、以下を除いて、実施例1の調製方法と同じである。
【0093】
1.セリシン水溶液1mL毎に質量百分率濃度25%のグルタルアルデヒトを2μL加えた。
【0094】
2.十分攪拌混合した後、37℃で0.5時間置き、セリシンハイドロゲルを得た。
【実施例4】
【0095】
本実施例におけるセリシン
ハイドロゲルの調製方法は、以下を除いて、実施例1の調製方法と同じである。
【0096】
1.セリシン水溶液1mL毎に質量百分率濃度2%のゲニピン水溶液を0.25mL加えた。
【0097】
2.十分攪拌混合した後、37℃で2時間置き、セリシンハイドロゲルを得た。
【実施例5】
【0098】
一.セリシン凍結乾燥足場の調製
実施例1によって得られたハイドロゲルをそれぞれ迅速に−20℃、−80℃、−196℃に置いて24時間冷凍後に取り出し、サンプルを低温真空乾燥機中に置いて乾燥させ(乾燥時間はサンプルの大きさによって決められた)、三種類の孔径の異なるセリシン凍結乾燥足場を得た。孔径は、それぞれ、316nm、167nm、20.56nmであった。
【0099】
二.実験分析
【0100】
1.異なる温度下でのセリシン三次元多孔生体足場の微細構造
セリシンハイドロゲルを3種類の異なる温度(−20℃、−80℃、−196℃)で冷凍し乾燥させた後、走査電子顕微鏡下で観察した。
【0101】
図1に示すように、セリシンハイドロゲルを−196℃、−80℃、−20℃の冷凍温度で処理後に凍結乾燥して得たセリシン三次元多孔生体足場の孔径は、それぞれ、約20μm、300μmおよび700μmであった。冷凍温度が低くなると、三次元多孔生体足場の孔径はそれに応じて小さくなった。また、三次元多孔生体足場には大量の微小孔が存在し、細胞外基質として、細胞の成長を支持し栄養物質の交換を促進することが可能である。
【0102】
2.セリシン導管および凍結乾燥セリシンハイドロゲルの自己蛍光測定
蛍光顕微鏡(Olympus IX71,Japan)を利用して、異なる波長条件におけるセリシンハイドロゲルの微視構造を観察した。
【0103】
図11に示すように、セリシンハイドロゲル凍結乾燥足場は、励起波長の異なる光源の励起によって、それぞれ、赤色蛍光、緑色蛍光、青色蛍光等を発するのが見られた。
【実施例6】
【0104】
一.セリシンハイドロゲルおよびその凍結乾燥足場の蛍光標識プローブとしての使用
1.本実施例におけるセリシン溶液の調製方法は、実施例1の調製方法と同じであり、ハイドロゲルと凍結乾燥足場の調製方法は、実施例1、4、5の調製方法と同じである。
【0105】
2.調製したセリシンハイドロゲルと凍結乾燥足場は、異なる波長の励起光の下で、異なる蛍光を発した。波長510〜550nmの励起下では材料は赤色の光を発し、波長330〜386nmの励起下では材料は青色の光を発し、波長420nmの励起光の励起下では材料は緑色の光を発した。
【0106】
3.セリシンハイドロゲルおよびその凍結乾燥足場を動物体内に移植し、小動物画像システムを用いてリアルタイム追跡できた(材料の蛍光信号によって測定)。セリシンハイドロゲルと凍結乾燥足場は、蛍光標識プローブとして使用可能であった。
【0107】
二.実験分析
【0108】
1.セリシン導管とセリシン凍結乾燥足場の自己蛍光測定
蛍光顕微鏡(Olympus IX71,Japan)を利用して、異なる波長条件におけるセリシンハイドロゲルの微視構造を観察した。
図11に示すように、セリシンハイドロゲル凍結乾燥足場は、励起波長の異なる光源の励起によって、材料が、それぞれ、赤色蛍光、緑色蛍光、青色蛍光等を発するのが見られた。
【0109】
2.小動物画像システムによるマウスの体内に注射したセリシンハイドロゲルの追跡分析
小動物画像システム(Xenogen IVIS Lumina II, Caliper Life Sciences, USA)を利用し、セリシンハイドロゲルのマウスの皮下、筋肉、腹腔への注射後の状態を観察した。
【0110】
図12に示すように、セリシンハイドロゲルは良好な自己蛍光特性を備え、ハイドロゲルは動物体内でリアルタイム追跡可能である。
【実施例7】
【0111】
一.西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)をモデル薬物とする、セリシンハイドロゲルの制御放出の測定
【0112】
1.西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)溶液(2μg/μL)4μLを取り、質量百分率濃度2%のセリシン水溶液500μLと混合した。
【0113】
2.1に対して質量百分率濃度25%のグルタルアルデヒド11μLを加え、室温に0.5時間放置し、4℃の冷蔵庫に入れて24時間置いた。
【0114】
3.サンプル中にPBS(pH7.4)1mLを加え、37℃に保持した。
【0115】
4.0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、18および20日時点で、上澄液を注意深く取り出し、新たに1mLのPBS(pH7.4)を加えた。
【0116】
5.酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)を用いて上澄液中のHRP含有量を測定し、薬物装荷量に対する各時点の上澄液中の累計のHRP含有量の比率を計算して薬物の累計放出率を得た。
【0117】
二.実験分析
測定ステップについては、上記「一」のステップ「1、2、3、4、5」を参照されたい。
セリシンハイドロゲルのHRP放出分析を行った。
図13に示すように、24時間以内の薬物(HRP)放出は27.97%であり、3日で約50%に、14日で83.77%に、20日で85.37%に達した。この結果により、セリシンハイドロゲルが、薬物担体として良好な制御放出作用を備えていることが分かる。
【実施例8】
【0118】
一.セリシンハイドロゲル上でのヒト皮膚表皮細胞(HaCaT)の培養
【0119】
1)質量百分率濃度2%のセリシン水溶液1.5mLと質量百分率濃度25%のグルタルアルデヒド33μLを細胞培養皿中に入れて混合し、培養皿に敷いた。安定にゲル化するのを待って、セリシンハイドロゲルの敷かれた細胞培養皿を、滅菌PBSで3回洗浄し、更に75%エタノールに1時間浸し、最後に滅菌PBSで1回洗浄した後、使用まで4℃の冷蔵庫に保存した。
【0120】
2)細胞培養フラスコから集めた細胞を懸濁し、吹散し、1)で前処理した培養皿に播種した。セリシンハイドロゲルの敷かれていない培養皿を対照とした。細胞培養用の培地は1640培地とし、細胞培養器に入れて細胞を培養した(37℃、CO
2濃度5%、湿度100%)。
【0121】
3)0、1、3日時点で、Olympus IX71顕微鏡を用いて、普通光下で、細胞を撮影した。
【0122】
二.実験分析
ヒト皮膚表皮細胞(HaCaT)をセリシンハイドロゲル組と対照組で比較分析した。
1640培地を用いて細胞培養を行った。測定ステップは、上記測定ステップ「1、2、3」を参照されたい。
【0123】
図16は、対照組(0日、1日、3日)、およびセリシンハイドロゲル組(0日、1日、3日)に対してそれぞれ播種されたヒト皮膚表皮細胞の接着と増殖の状態を、電子顕微鏡下で観察したものである。この実験結果は、セリシンハイドロゲルが、ヒト皮膚表皮細胞の接着と生存および増殖を良好に支持できることを示し、更にセリシンハイドロゲルが表皮組織の修復に適用可能であることを証明している。スケールバーは50μmである。
【実施例9】
【0124】
一.セリシンハイドロゲル上でのマウス筋細胞(C2C12)の培養
【0125】
1)まず質量百分率濃度2%のセリシン水溶液1.5mLと質量百分率濃度25%のグルタルアルデヒド33μLを細胞培養皿中に入れて混合し、培養皿に敷いた。安定にゲル化するのを待って、セリシンハイドロゲルの敷かれた細胞培養皿を、滅菌PBSで3回洗浄し、更に75%エタノールに1時間浸し、最後に滅菌PBSで1回洗浄した後、使用まで4℃の冷蔵庫に保存した。
【0126】
2)細胞培養フラスコから集めた細胞を懸濁し、吹散し、1)で前処理した培養皿に播種した。セリシンハイドロゲルの敷かれていない培養皿を対照とした。細胞培養用の培地は1640培地とし、細胞培養器に入れて細胞を培養した(37℃、CO
2濃度5%、湿度100%)。
【0127】
3)0、1、3日時点で、Olympus IX71顕微鏡を用いて、普通光下で、細胞を撮影した。
【0128】
二.実験分析
マウス筋細胞(C2C12)をセリシンハイドロゲル組と対照組で比較分析した。
測定ステップは、上記測定ステップ「1、2、3」を参照されたい。
【0129】
図17は、対照組(0日、1日、3日)、およびセリシンハイドロゲル組(0日、1日、3日)に対してそれぞれ播種されたマウス筋細胞の接着と増殖の状態を、電子顕微鏡下で観察したものである。この実験結果は、セリシンハイドロゲルが、マウス筋細胞の接着と生存および増殖を良好に支持できることを示し、更にセリシンハイドロゲルが筋肉組織の修復に適用可能であることを証明している。スケールバーは50μmである。
【実施例10】
【0130】
一.セリシンハイドロゲル上でのヒト胎児腎臓細胞(HEK293)の培養
【0131】
1)まず質量百分率濃度2%のセリシン水溶液1.5mLと質量百分率濃度25%のグルタルアルデヒド33μLを細胞培養皿中に入れて混合し、培養皿に敷いた。安定にゲル化するのを待って、セリシンハイドロゲルの敷かれた細胞培養皿を、滅菌PBSで3回洗浄し、更に75%エタノールに1時間浸し、最後に滅菌PBSで1回洗浄した後、使用まで4℃の冷蔵庫に保存した。
【0132】
2)細胞培養フラスコから集めた細胞を懸濁し、吹散し、1)で前処理した培養皿に播種した。セリシンハイドロゲルの敷かれていない培養皿を対照とした。細胞培養用の培地は1640培地とし、細胞培養器に入れて細胞を培養した(37℃、CO
2濃度5%、湿度100%)。
【0133】
3)0、1、3日時点で、Olympus IX71顕微鏡を用いて、普通光下で、細胞を撮影した。
【0134】
二.実験分析
ヒト胎児腎臓細胞(HEK293)をセリシンハイドロゲル組と対照組で比較分析した。
測定ステップは、上記測定ステップ「1、2、3」を参照されたい。
【0135】
図18は、対照組(上から下にそれぞれ、0日、1日、3日)、およびセリシンハイドロゲル組(上から下にそれぞれ、0日、1日、3日)に対してそれぞれ播種されたヒト胎児腎臓細胞の接着と増殖の状態を、電子顕微鏡下で観察したものである。この実験結果は、セリシンハイドロゲルが、ヒト胎児腎臓細胞の接着と生存および増殖を良好に支持できることを示している。さらに、HEK293は良好な工具細胞であり、該セリシンハイドロゲルが工具細胞と結合して対応する治療因子を包むことで、組織の修復に適用可能であることを証明している。
【実施例11】
【0136】
一.セリシンハイドロゲル上でのヒト胎児皮膚繊維芽細胞(CCC−ESF−1)の培養
【0137】
1)まず質量百分率濃度2%のセリシン水溶液1.5mLと質量百分率濃度25%のグルタルアルデヒド33μLを細胞培養皿中に入れて混合し、培養皿に敷いた。安定にゲル化するのを待って、セリシンハイドロゲルの敷かれた細胞培養皿を、滅菌PBSで3回洗浄し、更に75%エタノールに1時間浸し、最後に滅菌PBSで1回洗浄した後、使用まで4℃の冷蔵庫に保存した。
【0138】
2)細胞培養フラスコから集めた細胞を懸濁し、吹散し、1)で前処理した培養皿に播種した。セリシンハイドロゲルの敷かれていない培養皿を対照とした。細胞培養用の培地は1640培地とし、細胞培養器に入れて細胞を培養した(37℃、CO
2濃度5%、湿度100%)。
【0139】
3)0、1、3日時点で、Olympus IX71顕微鏡を用いて、普通光下で、細胞を撮影した。
【0140】
二.実験分析
図19は、ヒト胎児皮膚繊維芽細胞(CCC−ESF−1)をセリシンハイドロゲル組と対照組で比較分析したものである。
細胞は、1640培地を使用して培養した。測定ステップは、上記測定ステップ「1、2、3」を参照されたい。
【0141】
図19は、対照組(0日、1日、3日)、およびセリシンハイドロゲル組(0日、1日、3日)に対してそれぞれ播種されたヒト胎児皮膚繊維芽細胞の接着と増殖の状態を、電子顕微鏡下で観察したものである。この実験結果は、該セリシンハイドロゲルが、ヒト胎児皮膚繊維芽細胞の接着と生存および増殖を良好に支持できることを示している。さらに、該セリシンハイドロゲルが、皮膚組織の修復に適用可能であることを証明している。スケールバーは50μmである。
【実施例12】
【0142】
一.セリシンハイドロゲル上でのマウス小グリア細胞(BV2)の培養
【0143】
1)まず質量百分率濃度2%のセリシン水溶液1.5mLと質量百分率濃度25%のグルタルアルデヒド33μLを細胞培養皿中に入れて混合し、培養皿に敷いた。安定にゲル化するのを待って、セリシンハイドロゲルの敷かれた細胞培養皿を、滅菌PBSで3回洗浄し、更に75%エタノールに1時間浸し、最後に滅菌PBSで1回洗浄した後、使用まで4℃の冷蔵庫に保存した。
【0144】
2)細胞培養フラスコから集めた細胞を懸濁し、吹散し、1)で前処理した培養皿に播種した。セリシンハイドロゲルの敷かれていない培養皿を対照とした。細胞培養用の培地はDMEM/F12培地とし、細胞培養器に入れて細胞を培養した(37℃、CO
2濃度5%、湿度100%)。
【0145】
3)0、1、3日時点で、Olympus IX71顕微鏡を用いて、普通光下で、細胞を撮影した。
【0146】
二.実験分析
マウス小グリア細胞(BV2)をセリシンハイドロゲル組と対照組で比較分析した。
細胞は、DMEM/F12培地を使用して培養した。測定ステップは、上記測定ステップ「1、2、3」を参照されたい。
【0147】
図20は、対照組(上から下にそれぞれ、0日、1日、3日)、およびセリシンハイドロゲル組(上から下にそれぞれ、0日、1日、3日)に対してそれぞれ播種されたマウス小グリア細胞の接着と増殖の状態を、電子顕微鏡下で観察したものである。この実験結果は、セリシンハイドロゲルが、マウス小グリア細胞の接着と生存および増殖を良好に支持できることを示している。さらに、該セリシンハイドロゲルが、神経組織の修復に適用可能であることを証明している。スケールバーは50μmである。
【実施例13】
【0148】
一.セリシンハイドロゲル上でのマウス膵島内皮細胞(MS1)の培養
【0149】
1)まず質量百分率濃度2%のセリシン水溶液1.5mLと質量百分率濃度25%のグルタルアルデヒド33μLを細胞培養皿中に入れて混合し、培養皿に敷いた。安定にゲル化するのを待って、セリシンハイドロゲルの敷かれた細胞培養皿を、滅菌PBSで3回洗浄し、更に75%エタノールに1時間浸し、最後に滅菌PBSで1回洗浄した後、使用まで4℃の冷蔵庫に保存した。
【0150】
2)細胞培養フラスコから集めた細胞を懸濁し、吹散し、1)で前処理した培養皿に播種した。セリシンハイドロゲルの敷かれていない細胞培養皿を陰性対照とした。細胞培養用の培地はDMEM低グルコース培地とし、細胞培養器に入れて細胞を培養した(37℃、CO
2濃度5%、湿度100%)。
【0151】
3)0、1、3日時点で、Olympus IX71顕微鏡を用いて、普通光下で、細胞を撮影した。
【0152】
二.実験分析
マウス膵島内皮細胞(MS1)をセリシンハイドロゲル組と照組で比較分析した。
【0153】
細胞は、DMEM低グルコース培地を使用して培養した。測定ステップは、上記測定ステップ「1、2、3」を参照されたい。
【0154】
図21は、対照組(0日、1日、3日)、およびセリシンハイドロゲル組(0日、1日、3日)に対してそれぞれ播種されたマウス膵島内皮細胞の接着と増殖の状態を、電子顕微鏡下で観察したものである。この実験結果は、セリシンハイドロゲルが、マウス膵島内皮細胞の接着と生存および増殖を良好に支持できることを示している。さらに、該セリシンハイドロゲルが、血管の修復に適用可能であることを証明している。スケールバーは50μmである。
【実施例14】
【0155】
一.セリシンハイドロゲル上でのラットシュワン細胞(RSC926)の培養
【0156】
1)まず質量百分率濃度2%のセリシン水溶液1.5mLと質量百分率濃度2%のゲニピン水溶液600μLを細胞培養皿中に入れて混合し、培養皿に敷いた。安定にゲル化するのを待って、セリシンハイドロゲルの敷かれた細胞培養皿を、75%エタノールに1時間浸し、エタノールを除去し、最後に滅菌PBSで1回洗浄した後、使用まで4℃の冷蔵庫に保存した。
【0157】
2)細胞培養フラスコから集めた細胞を懸濁し、吹散し、1)で前処理した培養皿に播種した。セリシンハイドロゲルの敷かれていない培養皿を陰性対照とした。細胞培養用の培地はDMEM
低グルコース培地とし、細胞培養器に入れて細胞を培養した(37℃、CO
2濃度5%、湿度100%)。
【0158】
3)播種後、1、2日時点で、Olympus IX71顕微鏡を用いて、普通光下で、細胞を撮影した。
【0159】
二.実験分析
ラットシュワン細胞(RSC926)をセリシンハイドロゲル組と対照組で比較分析した。
細胞は、DMEM低グルコース培地を使用して培養した。測定ステップは、上記測定ステップ「1、2、3」を参照されたい。
【0160】
図22は、対照組(1日、2日)、およびセリシンハイドロゲル組(1日、2日)に対してそれぞれ播種された
ラットシュワン細胞の接着と増殖の状態を、電子顕微鏡下で観察したものである。この実験結果は、セリシンハイドロゲルが、ラットシュワン細胞(RSC926)の接着と生存および増殖を良好に支持できることを示している。さらに、該セリシンハイドロゲルが、末梢神経損傷の修復に適用可能であることを証明している。スケールバーは100μmである。
【実施例15】
【0161】
一.セリシンハイドロゲル上でのラット心筋細胞(H9C2)の培養
【0162】
1)まず質量百分率濃度2%のセリシン水溶液1.5mLと質量百分率濃度2%のゲニピン水溶液600μLを細胞培養皿中に入れて混合し、培養皿に敷いた。安定にゲル化するのを待って、セリシンハイドロゲルの敷かれた細胞培養皿を、75%エタノールに1時間浸し、エタノールを除去し、最後に滅菌PBSで1回洗浄した後、使用まで4℃の冷蔵庫に保存した。
【0163】
2)細胞培養フラスコから集めた細胞を懸濁し、吹散し、1)で前処理した培養皿に播種した。セリシンハイドロゲルの敷かれていない培養皿を陰性対照とした。細胞培養用の培地はDMEM
低グルコース培地とし、細胞培養器に入れて細胞を培養した(37℃、CO
2濃度5%、湿度100%)。
【0164】
3)播種後、1日時点で、Olympus IX71顕微鏡を用いて、普通光下で、細胞を撮影した。
【0165】
二.実験分析
ラット心筋細胞(H9C2)をセリシンハイドロゲル組と対照組で比較分析した。
細胞は、DMEM低グルコース培地を使用して培養した。測定ステップは、上記測定ステップ「1、2、3」を参照されたい。
【0166】
図23は、対照組(1日)、およびセリシンハイドロゲル組(1日)に対してそれぞれ播種された
ラット心筋細胞の接着と増殖の状態を、電子顕微鏡下で観察したものである。この実験結果は、セリシンハイドロゲルが、ラット心筋細胞(H9C2)の接着と生存および増殖を良好に支持できることを示している。さらに、該セリシンハイドロゲルが、心筋組織損傷の修復に適用可能であることを証明している。スケールバーは100μmである。
【実施例16】
【0167】
一.セリシンハイドロゲル上でのヒト臍帯静脈内皮細胞の培養(細胞接着実験にはECV304細胞を使用、細胞生存性実験にはEA.hy926細胞を使用)
【0168】
1)まず質量百分率濃度2%のセリシン水溶液1.5mLと質量百分率濃度25%のグルタルアルデヒド33μLを細胞培養皿中に入れて混合し、培養皿に敷いた。安定にゲル化するのを待って、セリシンハイドロゲルの敷かれた細胞培養皿を、滅菌PBSで3回洗浄し、更に75%エタノールに1時間浸し、最後に滅菌PBSで1回洗浄した後、使用まで4℃の冷蔵庫に保存した。
【0169】
2)細胞培養フラスコから集めた細胞を懸濁し、吹散し、1)で前処理した培養皿に播種した。セリシンハイドロゲルの敷かれていない培養皿を対照とした。細胞培養用の培地はDMEM
低グルコース培地とし、細胞培養器に入れて細胞を培養した(37℃、CO
2濃度5%、湿度100%)。
【0170】
3)細胞播種後4時間および8時間の2つの時点で、PBS(pH7.4)を用いて未接着の細胞をそっと洗い落とし、細胞計数盤を用いて計数した。最初に播種した細胞数と未接着の細胞数の差の、最初に播種した細胞総数に対する比率を、細胞の接着率とした。
【0171】
4)細胞播種後2.5日および4.5日で、MTT法を用いて播種された細胞の生存性を測定した。
0日、1日、3日時点で、Olympus IX71顕微鏡を用いて、普通光下で、細胞を撮影した。
【0172】
5)播種後2日時点で、それぞれローダミンファロイジンと4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドールを用いて播種した細胞を染色し、その後、共焦点レーザー走査顕微鏡(iNikon AlSi,Japan)を用いて観察、撮影した。
【0173】
二.実験分析
図15Aおよび
図15Bは、ヒト臍帯静脈内皮細胞の接着と増殖の状態を、普通の電子顕微鏡および共焦点レーザー
走査顕微鏡下で観察したものである。
図15Aは、ヒト臍帯静脈内皮細胞をそれぞれ対照組(0日、1日、4.5日、7.5日)と、セリシンハイドロゲル組に播種したもの(0日、1日、4.5日、7.5日)の普通電子顕微鏡写真である。
図15Bは、ヒト臍帯静脈内皮細胞をそれぞれ対照組とセリシンハイドロゲル組に播種したものの1日後の共焦点顕微鏡写真である。この実験結果は、セリシンハイドロゲルが、ヒト臍帯静脈内皮細胞の接着と生存および増殖を良好に支持できることを示している。さらに、該セリシンハイドロゲルが、血管等の組織損傷の修復に適用可能であることを証明している。スケールバーは50μmである。
【0174】
その他、詳細に説明しなかった部分は、従来技術である。上述の実施例により本発明を詳細に説明したが、これらは本発明の実施例の一部であり、実施例の全てではない。当業者であれば、本実施例に基づき、創造性なしにその他の実施例を得ることができるが、それらの実施例も全て本発明の保護範囲に属する。