(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138411
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ジアリールカーボネートおよびポリカーボネートの調製プロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 68/02 20060101AFI20170522BHJP
C07C 69/96 20060101ALI20170522BHJP
C07C 68/08 20060101ALI20170522BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20170522BHJP
【FI】
C07C68/02 A
C07C69/96 Z
C07C68/08
!C07B61/00 300
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2011-74771(P2011-74771)
(22)【出願日】2011年3月30日
(65)【公開番号】特開2011-207881(P2011-207881A)
(43)【公開日】2011年10月20日
【審査請求日】2014年3月28日
(31)【優先権主張番号】10158364.9
(32)【優先日】2010年3月30日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・オームス
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ブラン
【審査官】
土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−053564(JP,A)
【文献】
特表2004−507621(JP,A)
【文献】
特開2007−023034(JP,A)
【文献】
特表平06−502215(JP,A)
【文献】
特開2002−173530(JP,A)
【文献】
特開2001−247518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 68/02
C07C 68/08
C07C 69/96
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアリールカーボネートの調製プロセスであって、
(a)塩素と一酸化炭素との反応によりホスゲンを調製する工程、
(b)酸化アルミニウム、アルミノシリケート、金属酸化物、金属酸塩、硬質材料、混合水酸化物、金属塩、金属ハロゲン化物、金属アルコキシドおよび金属フェノキシドから選択される触媒および不活性有機溶媒の存在下で、工程(a)で形成されたホスゲンと少なくとも1つのモノフェノールを反応させて少なくとも1つのジアリールカーボネートと塩化水素を形成し、前記ホスゲン化が液相中でのホスゲン化である工程であって、前記硬質材料が、一般式
AxByCzDw
[式中、
Aは、元素周期律表(IUPAC表記法)の3〜10、13および14族の元素であり、
Bは、酸素以外の、13、14、15および16族の元素であり、
Cは、14および15族の元素であり、
Dは、14および15族の元素であり、
xは、1〜4、
yは、1〜4、
zは、0〜4、
wは、0〜4であり、
ここで、A、B、CおよびDの各々は、異なった族由来のものであるか、または異なった周期由来の同一の族であり、ただし、Bが炭素であってzおよびwが同時に0であるときには、Aはアルミニウムでない]
の金属様特性(セラミック前駆物質)を有する、工程、
(c)工程(b)で形成されたジアリールカーボネートを単離し、かつ仕上げる工程、
(d)工程(b)で形成された塩化水素を単離する工程、
(e)塩化水素の水溶液を調製する工程、
(f)ガス拡散電極を酸素減極陰極として用いることによって、(e)からの塩化水素水溶液の少なくとも一部を電気化学的に酸化して塩素とし、水を形成する工程、
(g)工程(f)で調製した塩素の少なくとも一部を、工程(a)でのホスゲンの調製に再循環させる工程
を含む、プロセス。
【請求項2】
ホスゲンと少なくとも1つのモノフェノールの反応が、触媒と溶媒の存在下でのホスゲンと少なくとも1つのモノフェノールの反応で少なくとも1つのジアリールカーボネートと塩化水素を形成することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
工程(b)で形成された塩化水素の単離が、塩化水素の精製を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
塩化水素の精製が凍結による精製を含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
塩化水素の水溶液の精製をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
塩化水素水溶液の精製が行われた後に、工程(f)での溶液の電気化学的酸化を行う、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
塩化水素水溶液の精製が、蒸気および/または活性炭での処理を用いた塩化水素水溶液の揮散を含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
塩化水素水溶液の精製が、イオン交換器により塩化水素水溶液から鉄化合物、シリコン化合物および/またはアルミニウム化合物を除去することを含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項9】
工程(d)により形成された塩化水素の単離が、液化によるホスゲンの分離を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
工程(e)での塩化水素水溶液の調製が、塩化水素水溶液中の塩化水素の吸収を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
塩化水素水溶液が、15〜20重量%の濃度を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
工程(f)での塩化水素水溶液の電気化学的酸化が、陽極空間と陰極空間がイオン交換膜で分離されている電解セル中での塩化水素水溶液の電気化学的酸化を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
工程(f)での塩化水素水溶液の電気化学的酸化が、陽極空間と陰極空間が隔膜で分離されている電解セル中での塩化水素水溶液の電気化学的酸化を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
陰極が硫化ロジウムを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
工程(f)での電気化学的酸化の前に、白金金属群からの金属イオンの塩化水素水溶液への添加をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
ホスゲンの反応が、工程(b)でホスゲンとフェノールが反応してジフェニルカーボネートを形成することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
ホスゲンの反応が、ジアリールカーボネートとビスフェノールが反応してオリゴカーボネート/ポリカーボネートとモノフェノールを形成し、ホスゲンとの反応のために生じたモノフェノールを使用して工程(b)でジフェニルカーボネートを形成することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
形成された少なくとも1つのジアリールカーボネートが、ジフェニルカーボネートである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記触媒が、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、マグネシウムアルミニウムハイドロタルサイト、塩化チタン、塩化ジルコニウム、塩化アルミニウムおよびチタンフェノキシドから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の存在下にホスゲンと少なくとも1つのモノヒドロキシ化合物(モノフェノール)からのジアリールカーボネートの連続調製プロセスに関するものであり、またポリカーボネートの調製のための、そのプロセスの使用に関するものである。反応中に生じた塩化水素は、電気化学的酸化により塩素に変換され、その塩素は、ホスゲンの調製に再循環される。特に、該プロセスは、ジフェニルカーボネート調製プロセスにおいて形成される塩化水素の利用を含んでいる(DPC法)。
【背景技術】
【0002】
ジアリールカーボネート、特にジフェニルカーボネートは、アルカリと触媒の存在下に、不活性溶媒中でモノフェノールの相界面ホスゲン化反応(ショッテン・バウマン反応)によって調製できることが知られている。ここで、アルカリ水はホスゲンまたは塩化カルボン酸エステルの部分加水分解を生じさせ、また大量の塩化ナトリウムが副生物として得られ、また溶媒および触媒を回収しなければならないので、溶媒および水酸化ナトリウムの使用は不利である。
【0003】
この理由のために、直接ホスゲン化プロセスにおいて、アルカリを用いることなく、また溶媒を用いることなく、触媒の存在下に、モノフェノールとホスゲンの反応によるジアリールカーボネート特にジフェニルカーボネートの調製が試みられ、またおおむね、文献に記載されてきた。
【0004】
可溶性触媒を用いた無溶媒でのプロセスの提案が、US2837555、US3234263およびUS2362865に記載されている。
【0005】
反応混合物の仕上げを実質的に容易にさせる不均一な不溶性触媒を使用する提案がなされてきた。このようにして、EP516355A2は、特に、アルミノシリケートなどの支持体に適用される三フッ化アルミニウムを推奨している。しかしながら、フッ化アルミニウムの合成は、フッ素またはフッ化水素酸の取り扱いのために、非常に複雑でかつ高価である。
【0006】
さらに、WO91/06526には、本明細書に記載される反応用触媒としての多孔質支持体上の金属塩が記載されている。そのような触媒上でのフェノールの完全連続ホスゲン化反応は、気相でのみ可能であるが、このことにより、相対的に高い反応温度と敏感なクロロホルム酸エステルの分解の危険を生じることになる。液相中でのこれらの触媒を用いたフェノールのホスゲン化反応は、熱い液体のフェノールが活性触媒構成成分を洗い出してしまうので、明らかに行うことができない。
【0007】
したがって、触媒を非常に容易に分離でき、かつ不純物が粗反応生成物中に残らないという大きな利点を有する非担持触媒が提案されてきた。それにより、この仕上げは、実質的に単純化されている。
【0008】
このようにして、液相(EP757029、EP791574)中および気相(EP808821)中での、活性炭素(EP483632)、酸化アルミニウム(EP635477)、アルミノシリケート(EP635476)、金属酸化物(EP645364)、メタレート(EP691326)、硬質材料(EP722930)および混合水酸化物(DE102008050828)などの不均一触媒の存在下、ならびに金属塩(US634622)、芳香族窒素複素環(D−A2447348)および有機リン化合物(US−5136−077)などの均一触媒の存在下でのモノフェノールのホスゲン化反応によるジアリールカーボネートの調製プロセスが、記述されてきた。
【0009】
ジアリールカーボネートの合成後、使用したモノフェノールと場合により触媒の混合物として、または適切な場合、合成に使用された有機溶媒、例えばクロロベンゼン中での溶液の形状で、ジアリールカーボネートが分離される。
【0010】
高純度のジアリールカーボネートを得るために、蒸留および/または結晶化による精製を行うことができる。例えば、溶媒をジアリールカーボネートから分離する、連続接続されている1つ以上の蒸留塔を利用して精製を行う。
【0011】
例えば、蒸留の際の塔底の温度が、150〜310℃、好ましくは、160〜230℃であるような方法で、この精製段階を行うことができる。この蒸留を行うために採用される圧力は、特に、1〜1000ミリバール、好ましくは5〜100ミリバールである。
【0012】
このように精製されたジアリールカーボネートは、特に高い純度(GC>99.5%)と非常に良好なエステル交換挙動を有しており、その結果、そこから、非常に高品質なポリカーボネートを続いて調製することができる。
【0013】
溶融エステル交換法による芳香族オリゴカーボネート/ポリカーボネートの調製のためにジアリールカーボネートを使用することが、文献で公知であり、また例えば、Encyclopedia of Polymer Science,Vol.10(1969),Chemistry and Physics of Polycarbonates,Polymer Reviews,H.Schnell,Vol.9,John Wiley and Sons,Inc.(1964),pp.50/51、またはUS5340905に記載されている。
【0014】
例えば、(塩酸)水溶液の市販または他の化学製品の合成に使用することにより、フェノールの直接ホスゲン化によるジフェニルカーボネートの調製時に形成される塩化水素を、利用することができる。しかし、得られた塩化水素の量を、全体として常に市販すること、または他の合成に使用することができるとは限らない。さらに、塩化水素をあらかじめ適当に精製するときにのみ、塩化水素を合成に使用できる。一方、市販は、塩化水素または塩酸を、長距離にわたり輸送する必要がないときにのみ、通常経済的になる。
【0015】
したがって、得られた塩化水素の最も一般的に可能な使用方法の1つは、PVC生成における原料としての使用であり、そこでは、エチレンが、塩化水素により酸塩化されて、二塩化エチレンを形成する。しかし、通常は、対応する生成操作が、ジアリールカーボネートの生成プラントの直接近傍にあるわけではないので、この操作様式は、一般的に可能ではない。例えば、アルカリを用いた中和の後などの塩化水素の処分は、経済的観点および環境保護的観点から魅力的ではない。
【0016】
したがって、塩化水素のリサイクルプロセスおよび塩化水素が得られるジフェニルカーボネート生成プロセスへの塩素の再循環は、操作の望ましい様式である。
【0017】
電気化学的リサイクルプロセスの論評が、「12th International Forum Electrolysis in Chemical Industry − Clean and Efficient Processing Electrochemical Technoogy for Synthesis,Separation,Recycle and Environmental Improvement,October 11−15,1998,Sheraton Sand Key,Clearwater Beach,FL」に発表されている、Dennie Turin Mahによる「Chlorine Regeneration from Anhydrous Hydrogen Chloride」の論説に記載されている。
【0018】
電気化学的酸化により塩化水素をリサイクルして塩素および水素を形成することは、LU88569およびEP1112997に記載されている。不利な点は、現状の低収率とポリカーボネート生成プロセスでは利用のない水素の生成である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
好ましい実施態様の詳細な記述
先に引用された先行技術からの報告により、本明細書に記載されるプロセルに対して、高純度でかつ好収率で製品を提供し、またポリカーボネート生成から生じる副生物の最大リサイクルにより、水処理プラントにおける環境汚染または排水問題の減少を達成するジアリールカーボネート生成プロセスを提供する。特に、該リサイクルにおいて、最少のエネルギー投入と、その結果の資源保護の方法で、塩化水素から塩素への変換を行うものある。
【0020】
酸素消費陰極を利用する電気化学的酸化により、この塩化水素を塩素に再変換し、ホスゲンの調製に利用するときには、特に、塩化水素を有利に再使用できることが見出された。
【0021】
適切な場合、活性炭を用いた単純な処理後、触媒の存在下でのモノフェノールとホスゲンの反応によるジアリールカーボネートの連続調製において得られる塩化水素は、複雑な精製なしに水溶液として電気化学的酸化に直接通過されて塩素と水に変換され得、塩素はホスゲンの調製に再循環される。
【課題を解決するための手段】
【0022】
したがって、モノフェノールおよびジハロゲン化カルボニルからのジアリールカーボネートの調製プロセスが提供され、それは、ガス拡散電極を陰極として利用した電解により、形成されたハロゲン化水素がハロゲンに変換され、またこれが、単離後また一酸化炭素との反応により、続いてモノフェノールと使用できるジハロゲン化カルボニルに順次変換されてジアリールカーボネートを生成する、プロセスである。ジアリールカーボネートとビスフェノールのエステル交換による無溶媒のポリカーボネートの調製において遊離されるモノフェノールは、ジアリールカーボネートの調製に再使用できる。さらに、本特許出願は、調製されたジアリールカーボネートが、ポリカーボネートの調製に使 用されるプロセスを提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
全プロセスは実施するのに柔軟で、簡単であり、また高純度で製品を提供し、またそれは、再使用により環境汚染を同時に減少させる全プロセスに対して、特別に重要であり、以下のプロセス工程(
図1参照);
(a)塩素と一酸化炭素との反応によりホスゲンを調製する工程、
(b)触媒と場合により有機溶媒の存在下で、工程(a)で形成されたホスゲンと少なくとも1つのモノフェノールを反応させて少なくとも1つのジアリールカーボネートと塩化水素を形成する工程、
(c)工程(b)で形成されたジアリールカーボネートを単離し、かつ仕上げる工程、
(d)工程(b)で形成された塩化水素を単離し、かつ必要により精製する工程、
(e)塩化水素の水溶液(塩酸)を調製する工程、
(f)必要により塩化水素の水溶液を精製する工程、
(g)(e)または(f)からの塩化水素水溶液の少なくとも一部を電気化学的に酸化して塩素とし、水を形成する工程、
(h)工程(g)で調製した塩素の少なくとも一部を、工程(a)でのホスゲンの調製に再循環させる工程
を含み、工程(g)中の電気化学的酸化を、ガス拡散電極を用いて行う。
【0024】
ガス拡散電極を、酸素消費陰極として用いた電解を行うことにより、塩素に加えてジアリールカーボネートまたはポリカーボネートの調製に使用されない水素を生成する古典的な電解に比べて、エネルギー消費が削減される。
【0025】
特に好ましい実施態様においては、工程(c)で調製されたジアリールカーボネートの少なくとも一部がビスフェノールと反応し、オリゴカーボネート/ポリカーボネートとモノフェノールを形成する(エステル交換反応)。エステル交換反応で形成されたモノフェノールは、さらなる好ましい実施態様においては、工程(b)で再び使用できる。
【0026】
該プロセスは、ジアリールカーボネートの調製、およびジアリールカーボネートの調製のための出発材料としてのホスゲンの合成のための塩素を回収するために、塩化水素水溶液の電解のプロセスである。
【0027】
本プロセスの第1工程(a)において、塩素と一酸化炭素との反応によりホスゲンを調製する。ホスゲンの合成は、充分に公知であり、また例えば、Ullmanns Enzyklopaedie der industriellen Chemie,3rd edition,volume 13,pages 494−500に記載されている。工業規模では、ホスゲンは主として、好ましくは触媒として活性炭上で一酸化炭素と塩素を反応させることにより調製される。強い発熱気相反応が、一般的には、シェルアンドチューブ反応器中で、少なくとも250℃〜最大600℃までの温度で起こる。反応熱は、種々の方法で、例えば、WO03/072237に記載されているように、流体熱伝導媒体を利用して除去できるか、または例えば、US4764308に開示されているように、蒸気発生用の反応熱の同時利用で、二次冷却回路中で気化冷却により除去できる。
【0028】
工程(a)で形成されるホスゲンは、次のプロセス工程(b)で少なくとも1つのモノフェノールと反応し、少なくとも1つのジアリールカーボネートを形成する。この後、プロセス工程(b)も、ホスゲン化としてもよい。該反応は、塩化水素を副生物として形成する。
【0029】
同様に、ジアリールカーボネートの合成は、先行技術から充分に知られており、一般的には、モノフェノールが、ホスゲンに対して化学量論的に過剰で使用される。通常、ホスゲン化反応(b)は、液相で起こり、ホスゲンとモノフェノールが溶融して、必要により溶媒中で溶解することも可能である。好ましい溶媒は、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、対応するクロロトルエン、またはクロロキシレンなどの塩素化芳香族炭化水素、トルエン、キシレンおよびモノフェノールそれ自体である。
【0030】
特に好ましいことは、溶媒として、溶融モノフェノールを使用することである。
【0031】
好ましい別の実施態様において、ホスゲン化反応は、気相で起こる。気相ホスゲン化反応は、例えば、US5831111に記載されている。
【0032】
本プロセスに適するモノフェノール類は、式(I)のフェノールであり、
式中
Rは、水素、ハロゲンまたは分岐もしくは非分岐C
1〜C
9アルキルラジカル、C
1〜C
9アルコキシラジカルもしくはC
1〜C
9アルコキシカルボニルラジカルである。
【0033】
よって、フェノール、クレゾ−ル、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、p−n−オクチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−n−ノニルフェノールおよびp−イソノニルフェノールなどのアルキルフェノール、p−クロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、p−ブロモフェノール、2,4,6−トリブロモフェノールなどのハロゲン化フェノール、アニソールおよびメチルまたはフェニルサリチル酸エステルが好ましい。フェノールが特に好ましい。
【0034】
不均一触媒および均一触媒の両方が、本プロセスに使用できる。
【0035】
不均一触媒としては、活性炭(EP483632)、酸化アルミニウム(EP635477)、アルミノシリケート(EP635476)、金属酸化物(EP645364)、金属酸塩(EP691326)、硬質材料(EP722930)および混合水酸化物(DE102008050828)が、液相中(EP757029、EP791574)および気相中(EP808821)の双方で、使用可能である。
【0036】
均一触媒としては、金属塩、それらのアルコキシド、芳香族窒素複素環または有機リン化合物を使用できる。
【0037】
1つ以上の活性化または不活性化触媒を使用できる。
【0038】
プロセスの工程b)に適当な触媒は;
a)BET法により求められる表面積が200〜3000m
2/gで、かつのこぎり屑および他の廃材、麦わら、ある種の石炭、くるみの殻、ミネラル油タール、リグニン、多糖類、ポリアクリロニトリル、骨、褐炭もしくは硬質炭からの泥炭またはコークス製品、好ましくは、木、セルロース、リグニン、瀝青炭または褐炭、泥炭または硬質炭コークスから生成された活性炭、
b)次の一般式のゼオライト群から選択されるアルミノシリケート
M
2/nO・xSiO
2・Al
2O
3・yH
2O
式中、
Mは、プロトンまたはメンデレーフ周期律表の元素の金属カチオンなどのカチオン、
nは、カチオンの原子価、
xはSiO
2:Al
2O
3のモル比、ここで
xは、1.0〜50.0また
yは0〜9であってもよく、
またはALPOおよびSAPOなどのゼオライト様化合物、またはカオリン、蛇紋石、モンモリロナイトおよびベントナイトタイプもしくは「支柱のある粘土」のシート状ケイ酸塩、またはSiO
2/A1
2O
3沈殿触媒、
c)BET法により求められる表面積が2〜500m
2/gである酸化アルミニウムまたはγ酸化アルミニウム、
d)BET法により求められる表面積が2〜500m
2/gである周期律表IVB群の金属酸化物、例えば、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムの酸化物、
e)一般式A
xB
yO
zのメタレート、
式中、
Aは、1価、2価または3価の金属カチオンであり、
Bは、3価、4価、5価および/または6価の金属カチオンであり、
xは、1〜4、
yは、1または2
zは、3、6、7または9である、
f)一般式
A
xB
yC
zD
w
の金属様特性(セラミック前駆物質)を有する硬質材料、
式中
Aは、元素周期律表(IUPAC表記法)の3〜10、13および14群の元素であり、
Bは、酸素を除外して、13、14、15および16群の元素であり、
Cは、14および15群の元素であり、
Dは、14および15群の元素であり、
xは、1〜4、
yは、1〜4、
zは、0〜4、
wは、0〜4であり、
ここで、A、B、CおよびDの各々は、異なった群由来のものであるか、または異なった周期由来の同一の群の場合でもよく、ただし、Bが炭素でzおよびwが同時に0であるときには、Aはアルミニウムでないとする、
g)一般式(III)の混合水酸化物[M(II)
1−xM(III)
xM(IV)
y(OH)
2]A
n−z/n・mH
2O (III)
式中、
M(II)は、2価の金属カチオン、
M(III)は、3価の金属カチオン、
M(IV)は、4価の金属カチオン、
xは、0.1〜0.5、
yは、0〜0.5、
zは、1+y、
mは、0〜1、
Aは、OH
−、NO
3−、CO
32−、SO
42−、CrO
42−またはCl
−などの無機アニオン、
nは、1〜2である、
h)芳香族複素環窒素塩基およびそれらの塩、例えばピリジン、イミダゾールおよびピリジンHCl塩
i)AlCl
3、AlF
3、ZrCl
4、TiCl
4、VCl
3、VCl
4またはTi(OC
6H
5)
4などの金属塩、金属ハロゲン化物、金属アルコキシドおよび金属フェノキシド、
j)均一なまたは必要に応じて、ポリマーに結合した有機リン化合物である。
【0039】
均一触媒は、JP695219、WO91/06526、US5424473およびEP516355に記載されているように、必要に応じて、不活性担体に適用することもできる。
【0040】
新規なプロセスで固定床として好ましく使用される酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウムおよびマグネシウムアルミニウムハイドロタルサイト、ならびに均一触媒として使用される塩化チタン、塩化ジルコニウム、塩化アルミニウムおよびチタンフェノキシド、好ましい。
【0041】
特に好ましいのは、酸化アルミニウムおよび四塩化チタンである。
【0042】
触媒は、完全には連続でない操作様式において、モノヒドロキシ化合物の量に対して、0.5〜100重量%の量で使用されるか、または、完全に連続の操作様式の場合に、時間当たりの触媒gに対して、モノヒドロキシ化合物の0.1〜20gの空間速度で使用される。
【0043】
液状もしくはガス形状で、または必要により、プロセス工程b)での不活性溶媒中での溶液として、ホスゲンを使用することができる。
【0044】
新規なプロセスの工程b)で、必要により使用され得る不活性有機溶媒は、例えば、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンおよびクロロトルエンであり、フェノール自体が好ましい。
【0045】
気相中でのホスゲン化反応が選択される場合には、反応を、フェノールの沸点を超えて行い、好ましくは、180〜500℃の温度で、0.5〜5秒の平均接触時間で行うことが好ましい。
【0046】
液相中でのホスゲン化反応においては、20〜240℃の温度と1〜約50バールの圧力が通常設定される。液相でのホスゲン化反応を1以上の段階で行うことができ、フェノールは一般的に化学量論的に過剰で使用することができる。
【0047】
フェノールおよびホスゲンを、例えば、固定床(不均一)上で向流もしくは並流で通過させるか、または混合物を反応させて望みのジアリールカーボネートおよび塩化水素を形成する1つ以上の反応蒸留塔もしくは気泡搭(均一)を経由させて、静的混合素子により結合できる。適当な混合素子が設けられている反応塔から離れて、撹拌機を備えた反応槽も使用できる。静的混合素子から離れて、特定の動的混合素子を使用することもできる。適当な静的および動的混合素子は、先行技術から公知である。
【0048】
工程(b)のホスゲン化反応後、ホスゲン化反応中に形成されたジアリールカーボネートが、工程(c)で分離される。最初に、反応混合物を、当業者に公知の方法で、ホスゲン化反応から液体生成物流およびガス状生成物流に分離することにより達成される。液体生成物流は、本質的にジアリールカーボネートと、適切な場合には、溶媒と少ない割合の未反応ホスゲンを含んでいる。ガス状生成物流は、本質的には、塩化水素ガス、未反応ホスゲンおよび少量の任意の溶媒および不活性ガス、例えば、窒素および一酸化炭素からなる。工程(c)の液体流は、続いて、仕上げ、好ましくは、ホスゲンおよび適切な場合には、溶媒を続いて分離する蒸留による仕上げに送られる。さらに、必要な場合には、形成されたジアリールカーボネートの仕上げを、工程(c)で行う。このことは、例えば、得られたジアリールカーボネートを、蒸留または結晶化などの当業者で公知の方法で精製することにより達成される。
【0049】
ホスゲンとフェノールの反応において得られた塩化水素は、工程(g)で塩化水素水溶液の電気化学的酸化に干渉し得る有機構成成分を一般的に含んでおり、その結果、イオン交換膜または触媒的に活性な材料の汚染または損傷の場合には、電極のイオン交換膜および触媒的に活性な材料を含む全体のユニットを置き換えなければならないから、工程(d)中で必要とされ得る塩化水素の精製が求められ得る。そのような有機構成成分は、例えば、ホスゲン、モノフェノールまたは、ジアリールカーボネート調製時に使用される溶媒、例えば、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼンまたはp−ジクロロベンゼンを含んでいる。電解を膜プロセスで行う場合には、これらの有機構成成分により、または鉄化合物、シリコン化合物もしくはアルミニウム化合物などの無機不純物により、イオン交換膜の機能が損傷されることもありうる。不純物もイオン交換膜上に沈着することもあり得るし、それにより電解電圧を高めることになる。この電解時に、ガス拡散電極を陰極として使用する場合には、ガス拡散電極の触媒も、無機不純物または有機不純物により不活性化され得る。さらにこれらの不純物が集電器上に沈着し得、それによりガス拡散電極と集電器の間の接触を阻害し、その結果電圧が上昇し得る。隔膜プロセスが塩化水素の電解に使用される場合には、上記した有機および無機構成成分は、グラファイト電極および/または隔膜上に沈着し得、このようにして同様に電解電圧が増加し得る。
【0050】
したがって、工程(b)のホスゲン化反応中で生成した塩化水素は、さらなるプロセス工程(d)でガス状生成物流から分離される。工程(c)でのジフェニルカーボネートの単離で得られたガス状生成物流を工程(d)で処理してホスゲンを分離し、工程(e)による水溶液としての塩化水素は、必要により工程(f)による精製後、工程(g)による電気化学的酸化に送られ得る。
【0051】
工程(d)中での塩化水素の単離は、最初にガス状生成物流からホスゲンを分離することにより行われる。例えば、直列に接続された1つ以上の冷却器において、ホスゲンの液化を行うことによりホスゲンを分離する。液化は、−15〜−40℃の範囲の温度で行われることが好ましい。さらに、任意量のモノフェノールなどの有機不純物を、この低温への冷却によりガス状生成物流から除去できる。
【0052】
さらに、または代替として、冷溶媒または溶媒/ホスゲン混合物を利用して、1つ以上の段階でガス流からホスゲンを洗い出すことができる。この目的に適当な溶媒は、例えば、既にホスゲン化反応に使用したクロロベンゼンおよびo−ジクロロベンゼンである。この目的のためには、溶媒または溶媒/ホスゲン混合物の温度は、−15〜−46℃の範囲である。
【0053】
ガス状生成物流から単離されたホスゲンを、工程(b)でのホスゲン化反応に送り返すことができる。
【0054】
続いて、工程(d)で塩化水素を精製し、未反応モノフェノールなどの有機不純物の割合を減少させることができる。モノフェノールの物理特性にもよるが、例えば、塩化水素を1つ以上の冷却トラップを通過させるという、例えば凍結によりこれを行うことができる。
【0055】
工程(d)に供給され得る塩化水素の精製の好ましい実施態様において、塩化水素流を直列に接続された2つの熱交換機を経由して通過させ、凝固点にもよるが、分離すべきモノフェノールを例えば−40℃で凍結させる。熱交換機を交互に操作し、ガス流は、既に凝固したモノフェノールを、ガス流が最初に通過した熱交換機中で融解させる。ジアリールカーボネートの調製のために、モノフェノールを再使用できる。冷凍機用の従来の熱伝導媒体、例えば、フリゲン(Frigens)グループ由来の化合物が供給されている下流の第2熱交換機中では、後者が析出するように、モノフェノールの凝固点下でガスを冷却する。融解および結晶化操作が実行された後にガス流と冷却流を切り替え、その結果、熱交換機の機能は逆転する。このようにして塩化水素を含むガス流を、好ましくは500ppm以下、特に好ましくは50ppm以下、非常に好ましくは20ppm以下のモノフェノール含量に激減させることができる。
【0056】
代替として、US6719957に記載されているように、直列に接続した2つの熱交換機中で塩化水素の精製を行うことができる。ここで、5〜20バール、好ましくは10〜15バールの圧力まで塩化水素を圧縮し、圧縮されたガス状の塩化水素を、20〜60℃好ましくは30〜50℃の温度で、第1熱交換機に送り込む。ここにおいて、該塩化水素は、第2熱交換機由来の冷塩化水素によって−10〜−30℃の温度に冷却される。これにより、廃棄処分または再使用に送られ得る有機構成成分の濃縮が行われる。第1熱交換機中に導入された塩化水素は、−20〜0℃の温度にて後者を通過し、また第2熱交換機中で−10〜−30℃の温度に冷却される。第2熱交換機中で形成された濃縮物は、さらなる有機構成成分と少量の塩化水素からなる。塩化水素の損失を避けるために、第2熱交換機から流出する濃縮物は分離および蒸発ユニットに供給される。これは、例えば、塩化水素が濃縮物から放出され、第2熱交換機に再循環される蒸留塔であってもよい。第1熱交換機に押し出された塩化水素を再循環することもできる。第2熱交換機中で冷却され、かつ有機構成成分のない塩化水素が、−10〜−30℃の温度で第1熱交換機中に導入される。
【0057】
10〜30℃に加熱した後、有機構成成分のない塩化水素は、第1熱交換機を出る。
【0058】
代替的なプロセスにおいて、必要により工程(d)に設けられた塩化水素の精製は、活性炭上での残留モノフェノールなどの有機不純物の吸着により行われる。ここで、例えば過剰のホスゲンを除去した後、塩化水素を0〜5バール好ましくは0.2〜2バールの圧力で活性炭床上または活性炭床を通過させる。流速および滞留時間は、当業者に公知の方法において不純物の含量と適合する。同様に、他の適当な吸着材、例えばゼオライト上で、有機不純物の吸着を行うことができる。
【0059】
さらなる代替的なプロセスにおいて、塩化水素の蒸留を必要により工程(d)に設けられ得る塩化水素の精製に設けることができる。これはガス状の塩化水素の濃縮後に行われる。濃縮された塩化水素の蒸留において、精製された塩化水素を、蒸留からの塔頂生成物として取り去り、そのような蒸留で慣例であり、かつ当業者に公知である圧力、温度などの条件下で蒸留を行う。
【0060】
分離されまた必要により工程(d)により精製された塩化水素から、塩化水素水溶液を工程(e)にて調製する。この目的のために塩化水素を、適当な吸収媒体を添加して吸収塔中で行われる塩化水素断熱的吸収へ送ることが好ましい。好ましい実施態様においては、該吸収媒体は、20重量%までの、好ましくは16〜18重量%の範囲の濃度を有する塩化水素の水溶液(塩酸)を含んでいる。代替として、低濃度の塩酸または脱イオン水または水蒸気凝縮物も使用できる。濃塩酸生成のための塩酸水中での塩化水素の断熱的吸収は、先行技術から既に公知である。例えば、網目板またはパッキングなどの質量移送素子を備えた吸収塔の下部に塩化水素流を導入することにより、吸収を行う。吸収媒体は、質量移送素子上にある吸収塔の上部中へ導入される。塩化水素ガスは、質量移送素子上の吸収媒体に向流で吸収、すなわち溶解される。
【0061】
工程(f)での塩酸水の任意の精製は、特に長期間の電解操作の場合に、イオン交換膜もしくは触媒的活性材料を汚染するかまたは損傷し、電圧上昇を導き、それにより置き換え、ひいてはプロセスの経済性に悪影響を与える有機不純物の除去を意図したものである。有機構成成分を除去するために、WO02/18675は、活性炭および適用な場合には追加的にイオン交換樹脂、例えば、モレキュラーシーブによる塩酸の精製を提案している。
【0062】
吸収塔の塔頂を出るガス流、蒸気は、通例のプロセスにおいては、90〜120℃、好ましくは105〜109℃の範囲の温度において、本質的に水蒸気からなっている。さらに、塩化水素、窒素および一酸化炭素などの不活性ガス、ならびに水や残留量の有機構成成分といまだ反応していないホスゲンも存在している。水、塩酸および有機構成成分などの濃縮可能な成分を分離するために、また濃縮熱を消散させるために、ガス状塔頂流を濃縮ユニットへ送るのが好ましい。この濃縮ユニットは、例えば1つ以上の直列に接続した冷却水操作のセルアンドチューブ熱交換機からなる。塩酸水相から濃縮可能な有機構成成分を分離するために、この濃縮システムからの流出液体は、その後分離器に送られることが好ましい。この分離器は静的相分離機であることが好ましい。この分離器中の適当な分離素子によって、有機相および水相の分離が可能となる。分離された有機相は適当な使用のために送られる。有機不純物中で消費されてきた塩酸相を吸収塔の上部に再循環できる。
【0063】
吸収塔の低領域に流出する塩化水素水溶液(塩酸)を、必要な場合には、本目的のために適した冷却装置により冷却し、必要により工程(f)により精製し、続いて工程(g)による電気化学的酸化に送る。一般的に約24〜30重量%、好ましくは27〜30重量%の濃度を有し、以下濃塩酸とするこの塩酸は、好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.005重量%以下の含有量の有機構成成分を有する。この塩酸のホスゲン含有量は、好ましくは0.1〜0.0001重量%であるが、0.0001重量%未満であってもよい。
【0064】
したがって、特にホスゲン含有量と、適当な場合では有機構成成分の割合をさらに削減するために、塩化水素水溶液を必要により工程(f)での精製に供する。当業者に公知の方法で、例えば循環式蒸発器または蒸気注入のいずれかが設けられた充填塔に濃塩酸を導入することにより、塔中での揮散を利用して、これを行うことができる。揮散塔からの蒸気は吸収塔に再循環し得るが、塔から出た液体は、適当な場合冷却機により、精製された濃塩酸として工程(g)による塩酸電解に送られる。別の揮散塔中で揮散を行う代わりに、好ましくは吸収塔下に置かれた揮散部分に直接蒸気を注入することにより、吸収塔それ自体でも行うことができる。吸収塔中での揮散の代わりに、吸収塔の下流に置かれた熱交換機を利用した部分蒸留により、塩化水素中の有機不純物の含有量も削減できる。
【0065】
さらに、塩化水素水溶液を、鉄化合物、アルミニウム化合物および/またはシリコン化合物を必要により工程(f)で除去するために、精製に供する。キレートイオン交換器によって鉄化合物、アルミニウム化合物および/またはシリコン化合物の除去を行うことが好ましい。そのようなイオン交換器は、商業的に入手可能である。
【0066】
このようにして、例えばRoam&Haas社からのAmberjet4400CIタイプまたはLANXESS社からのLewatit M500のイオン交換機により、イオン化合物の除去を行うことができる。イオン除去用の塩酸の濃度は、少なくとも8重量%であることが好ましい。
【0067】
難溶性化合物としての沈殿と続く濾過によって、イオン含有化合物も除去できる。
【0068】
工程(g)による電気化学的酸化の前に、白金金属群、好ましくは白金および/またはパラジウムからの金属イオンを塩化水素水溶液に添加することができる。
【0069】
工程(e)による塩化水素水溶液の調製後、および適当な場合、工程(f)による塩化水素水溶液の精製後、塩化水素を電解セルへ送る。工程(g)による塩酸の電気化学的酸化を膜プロセスにより行う。
【0070】
WO97/24320によれば、とりわけ、固体電解質システム、例えば、イオン交換膜の片面に配列された陰極を有するNafion(登録商標)薄膜を使用することができる。陰極は、例えば、ガス拡散電極である。陰極の触媒活性材料はイオン交換膜中に組み入れられるか、またはイオン交換膜に適用することができる。
【0071】
陰極として、ガス拡散電極を用いた塩化水素の水溶液の電気化学的酸化は、例えば、WO00/73538およびWO02/18675に記載されている。ここで、硫化ロジウムは、陰極での酸素の還元用触媒として使用されている。WO02/18675によると、この触媒は、塩酸中に不純物として存在し、かつ例えば合成の先行段階に由来し得る有機構成成分に対する抵抗が大きい。有機構成成分は、イオン交換膜を経由して陽極空間から陰極空間へと移動する。
【0072】
陽極空間および陽極空間からなる2室電解セル中で、または陽極空間、陰極空間および陽極空間と陰極空間の間の電解質空間からなる3室電解セル中の薄膜プロセスにより、工程(g)での塩酸の電気化学的酸化を行うことができる。2室電解セルを選択することが好ましい。薄膜プロセスにおいては、陽極空間がイオン交換膜(以下、簡略のために膜という)、特にカチオン交換膜により陰極空間から分離されている。膜からの電極(陽極および陰極)の距離は、0〜3mmが好ましく、0〜2mmが特に好ましい。適当なイオン交換膜、例えば、スルホン酸基を有する単一層のイオン交換膜は、商業的に入手可能である。例えば、DuPont社からのNafion(登録商標)117タイプの膜を使用することが可能である。
【0073】
グラファイトを含む電極、グラファイトからなり得る陽極を用いて、薄膜プロセスによる塩酸の電解を行うことができる。
【0074】
好ましい実施態様において、酸素減極陰極としてガス拡散電極を用いて、薄膜プロセスによって工程(g)における塩化水素の水溶液の電気化学的酸化を行う。ここで、電解セルは、2室または3室のいすれかから構成されるが、2室から構成されるのが好ましい。陰極半電池に、酸素含有ガス、例えば、酸素、空気または酸素の濃い空気を送る。酸素は、ガス拡散電極で還元されて水を形成する。陽極半電池には、塩化水素水溶液が供給され、陽極において塩化水素が酸化されて塩素になる。陽極半電池および陰極半電池は、カチオン交換膜によって互いに分離されている。陰極としてガス拡散電極を用いた塩化水素の電解は、例えばWO00/73538に記載されている。
【0075】
電解セルは、DE10347703Aに記載されているように、非金属材料または金属材料のいずれかを含むことができる。電解セル用の適当な金属材料は、例えば、チタン、チタン合金、例えばチタン−パラジウム合金である。ここで、陽極半セルおよび陰極半セル用半シェル、電流分配器および電力リード線は、チタンまたはチタン合金で作られる。
【0076】
例えば、DE10234806Aに記述されているように陽極を形成できる。ここで、陽極は、貴金属酸化物、例えば酸化ルテニウムを被覆した金属、好ましくはチタンからなる。さらに、DE10200072Aに記述されているように、チタン陽極は、貴金属酸化物の被覆を行う前にプラズマまたはフレーム溶射によりチタン陽極に適用される炭化チタンまたはホウ化チタンの中間層を有することができる。DE10234806Aによると、金属陽極は、電解の間に形成されるガスの通路用開口部を有し、該開口部は、形成されたガスをイオン交換膜から外方に対面する金属陽極側へ放出するガイド構造を有することが好ましい。ここで、該開口部の全断面積は、陽極の高さと幅により形成される面積の20〜70%の範囲であるべきである。金属陽極は、波状のジグザグまたは直角の断面を有することもできる。陽極の深さは、少なくとも1mmにするべきである。金属電極の高さと幅により形成された面積に対して、金属陽極の電気化学的活性面積の比は、少なくとも1.2とするべきである。特定の実施態様において、金属陽極は2つの隣接した拡張金網を含むことができ、イオン交換膜に対面している該拡張金網は、イオン交換膜から外方に対面する拡張金網よりも精密に構造化される。さらに、より精密に構造化された拡張金網は、平らに巻き取られ、より粗雑に構造化された拡張金網は、支柱が陰極の方に傾き、かつガイド構造として役立つように配置される。代替として、陽極も拡張金網からなり得る。陽極は、15〜70%の自由面積を基本的には有するべきである。拡張金網の厚みは、個々の電解セル(セル素子)の2極性接続の場合に、電解槽に対するさらなる電気的抵抗がないように選択されるべきである。電気抵抗は、本質的に陽極の電気的接触、例えば、陽極と陽極半セルの背面との間の電流供給接続素子の数に依存している。
【0077】
ガス拡散電極による電解において、市販のイオン交換膜により陽極空間および陰極空間を分離することができる。例えば、DuPont社のNafion(登録商標)324またはNafion(登録商標)117のイオン交換膜を使用することができる。WO05/12596に記載されているように、ガス拡散電極に面した側に滑らかな表面構造を有する薄膜を使用することが好ましい。薄膜の滑らかな表面構造により、250g/cm
2の圧力と60℃の温度下で接触面積が薄膜の幾何面積の少なくとも50%になるように、ガス拡散電極および薄膜を並列に並べることができる。
【0078】
ガス拡散電極が適用される陰極電流分配器は、DE10203689Aに記載されているように構成されることが好ましい。これは5%より大きく65%未満の自由面積を有する。電流分配器の厚みは少なくとも0.3mmである。それは拡張金網、メッシュ、織布、発泡体、不織布、金属製のスロットシートまたは多孔板を含むことができる。陰極電流分配器は、メッシュ長さ4〜8mm、メッシュ幅3〜5mm、支柱幅0.4〜1.8mmおよび厚み0.4〜2mmを有する拡張金網からなることが好ましい。さらに、陰極電流分配器は、第1拡張金網に対する担体として第2拡張金網を有することができる。担体としての第2拡張金網は、メッシュ長さ10〜40mm、メッシュ幅5〜15mm、支柱幅2〜5mmおよび厚み0.8〜4mmを有することが好ましい。担体として、好ましくはワイヤ厚み1〜4mmおよびメッシュ開口7〜25mmを有するメッシュも使用することができる。さらに、好ましくは開口面積60%未満かつ厚み1〜4mmを有する多孔質金属シートまたはスロットされた金属シートが担体として使用できる。陰極電流分配器用の材料として、例えば、チタンまたはチタン−パラジウムなどの貴金属含有チタン合金を使用できる。電流分配器が拡張金網である場合には、これを巻き取っておくことが好ましい。
【0079】
ガス拡散電極としては、適当な触媒が設けられた市販のガス拡散電極を使用できる。WO00/73538によると、適当な触媒は、ロジウムおよび/または少なくとも1つの硫化ロジウムもしくはロジウムと少なくとも1つの硫化ロジウムの混合物を含んでいる。EP931857Aによると、ロジウムおよび/または酸化ロジウムまたはそれらの混合物も使用できる。ガス拡散電極は、導電性織布、紙、または炭素で構成される不織布を含むことが好ましく、織布、紙または不織布は、炭素含有触媒層を有する片側に、またガス拡散電極を有するもう一方の側に設けられる。触媒は担体、好ましくは担体構造に連結されたポリテトラフルオロエチレン粒子が集積された炭素担体に適用されることが好ましい。ガス拡散電極は、炭素とポリテトラフルオロエチレン粒子を、炭素対PTFE比が例えば50:50で含むことが好ましい。例えば、ガス拡散電極をイオン交換膜に堅固に接合しないように、ガス拡散電極を配置できる。ガス拡散電極と電流分配器とイオン交換膜の間の接触は、加圧接触により確立されることが好ましく、すなわち、ガス拡散電極、電流分配器およびイオン交換膜を共に加圧する。DE10148600Aに記載されているように、ガス拡散電極を集電器に接続できる。
【0080】
ガス拡散電極を用いた膜プロセスによる塩酸の電解は、通常40〜70℃の温度で行われる。陽極空間における塩化水素水溶液の濃度は、10〜20重量%、好ましくは12〜17重量%である。例えば、陰極空間における圧力よりも高い陽極空間における圧力でセルを操作できる。このことにより、カチオン交換膜はガス拡散電極上に押しつけられ、ここで次に電流分配器上に押しつけられる。代替として、DE10138214Aに記載されるような電解セルの構造を選択できる。陽極および/または電流分配器は、例えば、各半セルの背面壁にバネで接合されて弾性的に搭載される。このセルの組み立てはゼロギャップ配列を形成し、そこでは、陽極はイオン交換膜に直接接触し、イオン交換膜は順にガス拡散電極に直接接触し、またこのガス拡散電極は順に電流分配器に直接接触する。弾性的搭載が、陽極、膜、ガス拡散電極および電流分配器を共に加圧する。
【0081】
電解プロセスの好ましい実施態様において、DE10152275Aに記載されているように電解セルをスタートアップさせるときには、陽極半素子には5〜20重量%強の塩化水素が満たされ、そこでは、塩酸は少なくとも10ppmの遊離の塩素を含み、またスタートアップ時の塩酸の濃度は5重量%超になる。陽極空間を経由する塩酸の体積流は、電解の最初で塩酸が0.05〜0.15cm/秒の速度で陽極空間を流れるように設定される。電解は、0.5〜2kA/m
2の電流密度で始まり、また5〜25分の時間間隔で各場合において0.5〜1.5kA/m
2で増加する。好ましくは、4〜7kA/m
2の規定された電流密度が達成された後、塩酸の体積流は、塩酸が0.2〜0.4cm/sの速度で陽極半素子を流れるように設定される。
【0082】
DE10138215Aに記載されているように、セル電位を低下させるために陰極室中の高められた圧力で電解セルが操作されることにより、電解セルの特に有利な操作様式を行うことができる。陽極空間と陰極空間の間の差圧は、0.01〜1000ミリバールとなるべきであり、また陰極空間での酸素圧は、少なくとも絶対的に1.05バールとなるべきである。
【0083】
したがって、次のプロセス工程(h)において、工程(g)で調製された塩素の少なくとも一部が工程(a)でのホスゲンの調製に再循環される。再循環の前に、冷却装置、例えばシェルアンドチューブ熱交換機により、単一段階または多段階冷却操作で塩素を冷却および乾燥することが好ましい。例えば、質量移動素子を備えた吸収塔中での適当な乾燥剤によって乾燥を行うことができる。適当な乾燥剤は、例えばDE10235476Aに記載されているように、モレキュラーシーブ、または吸湿性吸着材、例えば硫酸のいずれかであってもよい。1以上の段階で乾燥を行うことができる。第1段階では、乾燥すべき塩素を相対的に低い濃度、好ましくは70〜80%、特に好ましくは75〜80%の硫酸と接触させる、2段階で乾燥させることが好ましい。第2段階では、好ましくは88〜96%、特に好ましくは92〜96%の高い濃度の硫酸により、残留水分を塩素から除去する。このようにして乾燥され、また好ましくは100ppm以下、特に好ましくは20ppm以下の残留水分含量の塩素を液滴沈殿分離装置に通過させて、その中にまだ存在する硫酸液滴を除去することができる。
【0084】
塩素と塩化水素の損失が塩素−塩化水素の回路に起こるので、本プロセスの操作循環様式は、工程(a)でのホスゲン調製のための工程(g)における電解により調製される塩素に加えて、提供されるさらなる部分量の塩素を必要とする。さらなる部分量の塩素の提供は、外部源、例えば塩化ナトリウム水溶液の電解からの元素状の塩素の形状で行うことができる。しかし、発生する塩素および塩化水素の損失は、外部源、例えば塩化水素がガス状副生物として得られるイソシアネート生成プラント(例えば、MDI、TDI)から、部分量の塩化水素を提供することにより埋め合わせることもできる。外部源、例えば塩化水素水溶液を副生物として得る生成プロセスからの塩化水素水溶液の形状での部分量の塩化水素は、塩酸の約30重量%強で電解に供給されることが好ましい。代替的に、より低濃度の塩酸を工程(e)によって塩化水素の吸収に供給できる。
【0085】
工程b)でのジアリールカーボネートの調製に、ホスゲンを再使用できる。
【0086】
少なくとも1つのビスフェノールを用いて工程(b)で調製されるジアリールカーボネートのエステル交換反応によって、オリゴカーボネート/ポリカーボネートと工程b)で順に使用できるモノフェノールが生成される。
【0087】
本プロセスに適当なビスフェノールは、式(II)のジヒドロキシジアリールアルカンである。
HO−Z−OH (II)
式中、Zは6〜30の炭素原子を有し、かつ1つ以上の芳香基を含む2価の有機ラジカルである。本プロセスの工程a)に使用できる化合物の例は、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシビフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、およびそれらのアルキル化、環アルキル化および環ハロゲン化誘導体などのジヒドロキシジアリールアルカアンである。
【0088】
好ましいビスフェノールは、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA(BPA))、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス[2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0089】
特に好ましいビスフェノールは、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA(BPA))、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0090】
適当なビスフェノールは、例えば、US299835A、US3148172A、US2991273A、US3271367A、US4982014AおよびUS2999846A、独国公開文献では、DE1570703A、DE2063050A、DE2036052A、DE2211956AおよびDE3832396A、仏国特許テキストでは、FR1561518A、研究論文では、H. Schnell, Chemistry and Physics of Polycarbonates, Interscience Publishers, New York 1964, p. 28ff; p.102ff;およびD.G. Legrand, J.T. Bendler, Handbook of Polycarbonate Science and Technology, Marcel Dekker New York 2000, p. 72ffに記載されている。
【0091】
ホモポリカーボネートの調製の場合には1つのビスフェノールのみを使用するが、コポリカーボネートの調製の場合には複数のビスフェノールを使用する。非常にクリーンな原料を用いることが望ましいが、使用されるビスフェノール類を、合成において添加される全ての他の薬品および助剤と同様に、合成、取り扱いおよび貯蔵に由来する不純物で汚染されてもよいことは言うまでもない。
【0092】
事実上全ての公知のビスフェノール類に対して本プロセスを使用できることを、ここで強調しておく。
【0093】
少量の連鎖停止剤および分岐剤の使用により、意図的にかつ制御された方法でポリカーボネート類を改質できる。適当な連鎖停止剤および分岐剤は、文献から公知である。幾つかは、例えば、DE−A3833953に記述されている。好ましい連鎖停止剤は、フェノール、またはアルキルフェノール類、特に、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、イソオクチルフェノール、クミルフェノール、それらのクロロカルボン酸エステル、またはモノカルボン酸の酸クロライド、またはこれらの連鎖停止剤の混合物である。好ましい連鎖停止剤は、フェノール、クミルフェノール、イソオクチルフェノールおよびパラ−tert−ブチルフェノールである。
【0094】
分岐剤として適当な化合物の例は、3個超、好ましくは3個または4個のヒドロキシ基を有する芳香族化合物または脂肪族化合物である。3個以上のフェノール性ヒドロキシ基を有する特に適当な例は、フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタンである。
【0095】
分岐剤として適当な他の3官能性化合物の例は、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、シアヌル酸クロライドおよび3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールである。
【0096】
特に好ましい分岐剤は、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールおよび1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンである。
【0097】
使用されるビスフェノールに対して0.05〜2モル%の同時に使用してもよい分岐剤を、ビスフェノールと共に導入できる。
【0098】
0.1ppm未満の量のアルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンは許容可能だが、第1工程用の反応成分、つまり、エステル交換反応、すなわちビスフェノールとジアリールカーボネートはアルカリ金属イオンもアルカリ土類金属イオンもないということを、確認するべきである。ビスフェノールおよびジアリールカーボネートを再結晶化、洗浄または蒸留することにより、そのような純度を有するビスフェノールとジアリールカーボネートを得ることができる。本プロセスにおいて、ビスフェノールおよびジアリールカーボネート中のアルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンの含量が、<0.1ppmであるべきである。
【0099】
溶融状態でのビスフェノールとジアリールカーボネートのエステル交換反応は、好ましくは2段階で行われる。第1段階では、常圧下で、80〜250℃、好ましくは100〜230℃、特に好ましくは120〜190℃で、0〜5時間、好ましくは、0.25〜3時間にわたって、ビスフェノールとジアリールカーボネートを溶融する。触媒添加後、真空(2mmHgまで減圧)をかけ、温度を昇温し(260℃まで)、そしてモノフェノールを留去することによりビスフェノールとジアリールカーボネートからオリゴカーボネートを調製する。このように調製されたオリゴカーボネートは、重量平均分子量Mw(ジクロロメタンまたはフェノール/o−ジクロロベンゼンの等重量の混合物における相対的溶液粘度測定により求められ、光散乱でキャリブレートされる)が、2000〜18000、好ましくは、4000〜15000の範囲となる。ここでモノフェノールの主要部分(80%)は、該プロセスから除去される。
【0100】
重縮合の第2段階において、ポリカーボネートを、圧力が<2mmHgにおいて、温度をさらに250〜320℃、好ましくは270〜295℃に昇温して調製する。モノフェノールの残留物はここで回収される。<5%、好ましくは、<2%、特に好ましくは<1%のモノフェノールの損失が、ポリカーボネートとポリカーボネート中に残留するモノフェノールの末端基によって、ここで発生する。これらの損失は、ジアリールカーボネートの調製用にモノフェノールの適当な量で埋め合わせる必要がある。
【0101】
本プロセスの目的のために、ポリカーボネートを形成するためのビスフェノールとジアリールカーボネートのエステル交換反応のための触媒は、全ての無機または有機塩基性化合物であり、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、バリウム、マグネシウムの水酸化物、炭酸塩、ハロゲン化物、フェノキシド、ジフェノキシド、フッ化物、酢酸塩、リン酸塩、リン水素塩、ホウ酸塩、水酸化テトラメチルアンモニウム、酢酸テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウムテトラフェニルホウ酸塩、フッ化テトラフェニルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルホウ酸塩、水酸化ジメチルジフェニルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウムなどの窒素およびリン塩基、1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]デセ−5−エン、7−フェニル−1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]デセ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]デセ−5−エン、7,7’−ヘキシリデンジ−1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]デセ−5−エン、7,7’−デシリデンジ−1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]デセ−5−エン、7,7’−ドデシリデンジ−1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]デセ−5−エンなどのDBU、DBNまたはグアニジンシステム、またはホスファゼン塩基P
1−t−O
ct=tert−オクチルイミノトリス(ジメチルアミノ)ホスホラン、ホスファゼン塩基P
1−t−Butyl=tert−ブチルイミノトリス(ジメチルアミノ)ホスホラン、BEMP=2−tert−ブチルアミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチルパーヒドロ−1,3,2−ジアザ−2−ホスホランなどのホスファゼンである。
【0102】
これらの触媒は、ビスフェノール1モルに対して、10
−2〜10
−8モルの量で使用される。
【0103】
該触媒を、互いに組み合わせて使用してもよい(それらの2つ以上)。
【0104】
アルカリ金属/アルカリ土類金属触媒を使用するときには、後でアルカリ金属/アルカリ土類金属触媒を添加することが有利でありうる(例えば、第2段階で重縮合におけるオリゴカーボネート合成後)。例えば、アルカリ金属/アルカリ土類金属触媒を固体としてまたは溶液として水、フェノール、オリゴカーボネートまたはポリカーボネートに添加できる。
【0105】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属触媒の同時使用は、反応物質に対する上記の純度要求とは矛盾しない。
【0106】
例えば、撹拌槽、薄膜蒸発器、流下膜式蒸発器、撹拌槽のカスケード、押出機、混練機、単純な円盤反応器および高粘度円盤反応器中で、バッチ様式または好ましくは連続で、本プロセスにおいてのポリカーボネートを形成するためのビスフェノールとジアリールカーボネートの反応を行うことができる。
【0107】
本プロセスの芳香族ポリカーボネートは、ジクロロメタンまたはフェノール/o−ジクロロベンゼンの同重量の混合物中での相対的溶液粘度測定により求められ、光散乱でキャリブレートされる重量平均分子量Mwで18000〜80000、好ましくは19000〜50000とするべきである。
【0108】
ポリカーボネートを形成するためのビスフェノールとジアリールカーボネートのエステル交換反応中で除去され、かつそこから単離されるモノフェノール類を精製し、その後モノフェノール類をジアリールカーボネート合成に使用することが有利である。エステル交換反応過程で単離された粗モノフェノール類において、エステル交換反応条件および蒸留条件にもよるが、とりわけジアリールカーボネート、ビスフェノール、サリチル酸、イソプロペニルフェノール、フェニルフェノキシベンゾエート、キサントン、ヒドロキシモノアリールカーボネートが混入され得る。例えば、蒸留または再結晶化という通常の精製プロセスによって精製を行うことができる。モノフェノール類の純度は、>99%、好ましくは、>99.8%、特に好ましくは、>99.95%である。
【0109】
ホスゲン合成のための塩素を回収するために、ジアリールカーボネートの調製で得られる塩化水素水溶液の電気化学的酸化を用いて、ジアリールカーボネートおよびポリカーボネートを調製する本統合プロセスの利点としては、ディーコンプロセスによる触媒酸化と比較してより簡単な操作であり、また伝統的な電解法と比較して水素の生成を避けてより高い電流収率となる。
【0110】
塩酸の電気化学的酸化と組み合わせて、ジアリールカーボネートとポリカーボネートを調製することによって、工程(e)の約17%の濃度を有する塩酸から約30%の塩酸を含む濃塩酸の生成の結果として、さらに必要により、他の用途用回路から濃塩酸を取り出す機会を提供する。この濃塩酸の1つの可能な用途は食糧部門にある。この目的のために、本プロセスにより生成される濃塩酸は、先行技術で公知のように例えば活性炭床上での精製後の吸収により、食品産業用の充分に高純度なものに高めることができる。
【0111】
適当な場合、ジアリールカーボネート調製時に得られる塩化水素の他の可能な用途、例えば、PVC生成におけるエチレンジクロライド調製の出発原料としての用途などに、ジアリールカーボネートおよびポリカーボネート調製の本プロセスを組み合わせることができる。
【0112】
例は、ジフェニルカーボネートの調製を用いたプロセス、およびジフェニルカーボネート調製プロセスに再び使用可能なホスゲンの合成のために、生じた塩化水素の塩素への電気化学的酸化を説明している。ポリカーボネートの調製において得られるフェノールは、ジフェニルカーボネート調製に再循環される。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【
図1】
図1は、得られた塩化水素とフェノールの再循環を用いたポリカーボネートの調製統合プロセスを示している。
【
図2】
図2は、ジアリールカーボネート(ジフェニルカーボネート、DPC)の調製および得られた塩化水素の再循環統合プロセスを示している。
【
図3】
図3は、不均一触媒の存在下でのフェノールの直接ホスゲン化によるジフェニルカーボネートの調製プロセスを示している。
【0114】
以下の参照数字を
図3中に使用する。
I フェノール用貯蔵タンク
II ホスゲン用貯蔵タンク
III、IV 熱交換機
V、VIII 反応器
VI;IX 脱ガス器
VII 向流装置
X、XI、XII 蒸留塔
XIII 製品容器
XIV 精製プラント(HCl吸収)
【実施例】
【0115】
実施例は、ジフェニルカーボネートの調製で得られる塩化水素の塩素への電気化学的酸化により塩素をホスゲンに変換し、ポリカーボネートの調製で形成されたフェノールをジフェニルカーボネートの調製に再循環して、ジフェニルカーボネート調製プロセスに再使用できる(DPCプロセス)(
図2)本プロセスを説明している(
図1)。
【0116】
ジアリールカーボネートの調製の第1段階において(
図2)、塩素11は一酸化炭素10と反応しホスゲン13を形成する。続く第2段階において、段階1からのホスゲン13はモノフェノール14(例えば、フェノール)と反応し、ジアリールカーボネート(例えば、ジフェニルカーボネートDPC)と塩化水素の混合物15を形成し、それは第3段階で、利用されるジアリールカーボネート16と精製4に供されるHClガス17に分離される。精製されたHClガス18は、HCl吸収5へ送られる。
【0117】
得られた濃塩酸26が放出され、また必要により塩酸溶液の精製5’後、電気化学的酸化6に送られる。電解段階はガス拡散電極を用いたODC電解であり、そこでは酸素は陰極側上で反応物質として使用され、また亜硫酸ロジウム触媒が使用される。
【0118】
電解セル6に送られた塩酸27の濃度は14〜15重量%のHClであり、また電解セル6から流出する塩酸28の濃度は11〜13重量%のHClである。塩酸流28は、HCl吸収段階5からの濃塩酸26と混合され、電解セル6に送り返される。
【0119】
段階6で消費された酸素は、外部源24からの酸素により置き換えられる。電解セルの陰極空間中で消費されない酸素25は循環され、また外部源24からの新鮮な酸素と混合される。
【0120】
陰極空間で同様に得られた約2重量%強の塩酸流29をHCl吸収段階5に送り、また過剰のガス状塩化水素に対する吸収媒体として役立つ。
【0121】
このようにして電解段階6から得られたガス混合物30は、濃硫酸21(96%強)により乾燥される(段階7)。
【0122】
精製段階8から得られた塩素ガス11は、ホスゲン合成1に直接再使用可能である。この工程で得られた酸素含有流23は、段階6で使用される(電解)。
【0123】
段階6で調製された塩素30を、冷却装置例えばシェルアンドチューブ熱交換機により単一段階または多段階で冷却し、乾燥する。
【0124】
例えば、質量移動素子が設けられた吸収塔中の適当な乾燥剤により乾燥7を行う。例えば、DE10235476Aに記載されているように、適当な乾燥剤はモレキュラーシーブまたは例えば硫酸などの吸湿性吸着材のいずれかであってもよい。1段階以上で乾燥を行うことができる。乾燥は2段階で行うことが好ましく、乾燥すべき塩素を第1段階で好ましくは70〜80%、特に好ましくは75〜80%の相対的に低い濃度を有する硫酸に接触させる。第2段階において、好ましくは88〜96%、特に好ましくは92〜96%の高い濃度を有する硫酸によって塩素から残留湿気を除去する。このように乾燥され、かつ好ましくは100ppm以下、特に好ましくは20ppm以下の残留湿気含量を有する塩素22を、液滴沈殿分離装置を経由して通過させ、そこにまだ残っている任意の硫酸液滴を除去する。
【0125】
乾燥された塩素ガス流22は、続いて塩素精製8に供される。
【0126】
非常に純粋な塩素11が外部源12からの塩素によって補完され、またホスゲン1の調製に送り返される(段階1)。
【0127】
実施例1a〜h
フェノールの直接ホスゲン化によるジフェニルカーボネートの調製
【0128】
1a)γ−Al
2O
3の存在下でのフェノールのホスゲン化によるジフェニルカーボネート
【0129】
本プロセスを行うために使用された装置および含まれる流れを、
図3中に概略的に示す。
【0130】
新鮮なおよび/または実施例3に記載されているようなポリカーボネートの調製から回収された41.12重量部/時のフェノール1を加熱された容器Iから取り出し、常圧下の熱交換機III(60℃)を経由して、塔頂から60℃に加熱されまた蒸留塔Xの塔頂から取り出されたフェノール14との混合が起きる充填された向流塔VIIに送りこまれる。脱ガス装置VIおよびIXから始まるオフガス流15がVIIを経由して流れた後、混合物11(フェノール/ホスゲンの重量比が約97/3)が塔底に送りこまれる。貯蔵タンクIIから、熱交換機IV(170℃)により予備加熱された21.93重量部/時のホスゲン3が11と共に、150体積部のγ−酸化アルミニウムが充填され、かつ170℃に加熱された反応器Vに向流で導入される。
【0131】
フェノール、フェニルクロロフォルメート、ジフェニルカーボネートおよび副生物を56.1/0.8/42.8/0.3の比で含有する、反応器の底で抜け出る生成物5を、脱ガス器VIによってオフガス6(フェノール、ホスゲン、塩化水素および炭酸ガスの重量比=2.5/15.8/81.1/0.6)および塔底物質7(フェノール、フェニルクロロフォルメート、ジフェニルカーボネートおよび副生物の重量比=55.8/0.9/43.0/0.3)に分離する。
【0132】
塔底物質7中に存在するフェニルクロロフォルメートは、同様にγ−酸化アルミニウム(150体積部)で充填された後反応器VIII中で、180℃にて存在するフェノール(可能な限り追加のフェノールの添加後(1’または14’))との後反応により、ジフェニルカーボネートに変換される。
【0133】
脱ガス器IXによって反応器の底で取り出された生成物8(フェノール、ジフェニルカーボネートおよび副生物の重量比=55.4/44.3/0.3)を、オフガス9(フェノール/塩化水素)および塔底物質10(フェノール、ジフェニルカーボネートおよび副生物の重量比=55.2/44.5/0.3)に分離する。
【0134】
塔底物質10を第1蒸留塔Xに送りこみ、約80℃/16mバール(12mm)で、57.7重量部/時のフェノールと塔底物質19(フェノール、ジフェニルカーボネートおよび副生物の重量比=0.3/99.1/0.6)に分離する。塔底物質19を、まだ存在するフェノール(0.14重量部)が塔頂で除去されかつ第1塔Xの上部に戻る第2蒸留塔XIに導入する。塔底で取り去られた生成物22(ジフェニルカーボネート/副生物の重量比=88.6/11.4)は、170℃/12mmで第3蒸留塔XIIにて塔頂生成物21(2.3重量部/時のジフェニルカーボネート)に分離され、それは第2塔XIの下部および塔底物質23(高沸点副生物)に再循環される。第2塔XIのガス空間から横での放出により、製品容器XIII中に充填される46.6重量部/時の生成物20(ジフェニルカーボネート、フェノールの重量比=99.8/0.2)を生成する。
【0135】
オフガス流6および9は組み合わされて15(フェノール、塩化水素、炭酸ガスの重量比=5.8/93.6/0.6)を形成し、フェノールを経由して向流装置VIIに通される。塔頂に抜け出るオフガス15’は精製プラントXIVでの凍結により、フェノールから遊離される。
【0136】
1b)反応蒸留塔でのTiCl
4存在下でのフェノールのホスゲン化
【0137】
49.9重量部/時の融解されたフェノールおよび0.25重量部/時のTiCl
4を、塔頂から常圧下で160℃に自動温度調節され、かつ各々が18体積部を占める10枚のプレートを有する反応蒸留塔に計量し、また同時に、同じ温度に加熱された25.1重量部/時のホスゲンを塔底へ向流で導入する。
【0138】
滞留反応器中でジフェニルカーボネートを形成するためにフェノールと存在するフェニルクロロフォルメートの反応後、フェニルクロロフォルメートおよびジフェニルカーボネートを3:97の重量比で含む(フェノール転化率69.5%、選択率99.6%)塔底で抜け出る生成物を単離し、脱ガスによりオフガスおよび塔底物質に分離する。
【0139】
反応蒸留プラントの塔頂で抜け出るオフガス流を脱ガスからのオフガスと組み合わせて、凍結により少量のホスゲンとフェノールから遊離する。
【0140】
ホスゲン転化率を、過剰エタノールとの反応によるオフガス流中に設けられたガスマウス中のホスゲン含量と、エチルクロロフォルメートおよび形成されたジエチルカーボネートと未反応のホスゲン量の相関関係を求めることにより測定した。
【0141】
1c)反応蒸留塔でのTiCl
4存在下でのフェノールのホスゲン化
【0142】
187.3重量部/時の融解されたフェノールおよび0.42重量部/時のTiCl
4を、塔頂から常圧下で150℃に自動温度調節され、かつ各々が43体積部を占める20枚のプレートを有する反応蒸留塔に計量し、また同時に、同じ温度に加熱された62.7重量部/時のホスゲンを塔底へ向流で導入する。
【0143】
滞留反応器中でジフェニルカーボネートを形成するためにフェノールと存在するフェニルクロロフォルメートおよびフェノールの反応後、フェノール、フェニルクロロフォルメート、ジフェニルカーボネートおよび副生物(重量比=31.7/5.2/62.8/0.3)(ホスゲン転化率83.5%、フェノール転化率64.8%、選択率99.7%)を含む塔底で抜け出る生成物を単離し、脱ガスによりオフガスおよび塔底物質に分離する(フェノール、ジフェニルカーボネートおよび副生物の重量比=29.2/70.4/0.4)。
【0144】
蒸留により、99.8%のジフェニルカーボネートが得られる。
【0145】
反応蒸留プラントの塔頂で抜け出るオフガス流を脱ガスからのオフガスと組み合わせて、凍結により少量のホスゲンとフェノールから遊離する。
【0146】
1d)反応性蒸留塔中でのAlCl3存在下でのフェノールのホスゲン化
【0147】
399.0重量部/時の融解されたフェノールおよび0.61重量部/時のAlCl
3を、塔頂から常圧下で150℃に自動温度調節され、かつ各々が43体積部を占める20枚のプレートを有する反応蒸留塔に計量し、また同時に、同じ温度に加熱された100.0重量部/時のホスゲンを塔底へ向流で導入する。
【0148】
滞留反応器中でジフェニルカーボネートを形成するためにフェノールと存在するフェニルクロロフォルメートの反応後、フェノール、フェニルクロロフォルメート、ジフェニルカーボネートおよび副生物(重量比=60.7/3.5/34.8/0.6)(ホスゲン転化率71.6%、フェノール転化率35.4%、選択率99%)を含む塔底で抜け出る生成物を単離し、脱ガスによりオフガスおよび塔底物質に分離する(フェノール、ジフェニルカーボネートおよび副生物の重量比=59.6/39.6/0.8)。
【0149】
オフガスを反応蒸留プラントの塔頂から出たオフガス流と組み合わせて、凍結により少量のホスゲンとフェノールから遊離する。
【0150】
172℃/22mバールでの蒸留により、純度99.7%のジフェニルカーボネートが得られる。
【0151】
1e)気泡搭縦列中でのZrCl4存在下でのフェノールのホスゲン化
【0152】
同じ温度に加熱された24.8重量部/時のホスゲンを、常圧下3時間にわたり塔底からガスフリットを経由して、直列に接続されかつ160℃に自動温度設定されまた各々が141.0重量部の融解したフェノールと0.88重量部/時のZrCl
4を充填した100体積部を有する2本の気泡搭中に導入する。
【0153】
滞留反応器中でジフェニルカーボネートを形成するためにフェノールと存在するフェニルクロロフォルメートの反応後、フェニルクロロフォルメートおよびジフェニルカーボネートを2:98の重量比(フェノール転化率83.4%、選択率98.3%)で含む第1気泡搭からの反応混合物を単離し、脱ガスによりオフガスおよび塔底物質に分離し、それらは蒸留により分離される。
【0154】
第1気泡搭の塔頂で抜け出るオフガス流を、ガスフリットを経由して第2気泡搭中に導入する。3時間後の第2気泡搭でのフェノール転化率は22.0%である。
【0155】
1f)気泡搭カスケードでのTiCl
4存在下でのフェノールのホスゲン化
【0156】
0.71重量部のTiCl
4を使用すること以外は、1e)に記述したように直接ホスゲン化を行った後、第1気泡搭中の反応混合物は、フェニルクロロフォルメートとジフェニルカーボネートを0.6:99.4の重量比で含んでいる(フェノール転化率80.2%、選択率99.5%)。第2気泡搭中のフェノール転化率は12.3%である。
【0157】
1g)気泡搭カスケードでのTi(OC
6H
5)
4存在下でのフェノールのホスゲン化
【0158】
1.57重量部のTi(OC
6H
5)
4を使用すること以外は、1e)に記述したように直接ホスゲン化を行った後、第1気泡搭中の反応混合物は、フェニルクロロフォルメートとジフェニルカーボネートを0.7:99.3の重量比で含んでいる(フェノール転化率81.5%、選択率99.4%)。第2気泡搭中のフェノール転化率は17.4%である。
【0159】
1h)気相でのTiCl
4存在下でのフェノールのホスゲン化
【0160】
同じ温度に加熱された25.0重量部/時の融解されたフェノール、0.61重量部/時のTiCl
4および同時に12.5重量部/時のホスゲンを、常圧において塔頂から235℃に自動温度設定され、かつグラスウールを充填した管状反応器中に計量する。
【0161】
滞留反応器中でジフェニルカーボネートを形成するためにフェノールと存在するフェニルクロロフォルメートの反応後、フェニルクロロフォルメートおよびジフェニルカーボネートを重量比0.6:99.4(ホスゲン転化率87%、フェノール転化率59.8%、選択率99.9%)で含む塔底で抜け出る生成物を単離し、脱ガスによりオフガスおよび塔底物質に分離する。
【0162】
例えば、凍結により少量のホスゲンとモノフェノール不純物の除去後、触媒の存在下モノフェノールとホスゲンの反応によるジアリールカーボネートの連続調製において得られた塩化水素を、複雑な精製をすることなく、必要により活性炭で処理後、電気化学的酸化に送る。
【0163】
実施例2
酸素による電気化学的酸化によるジフェニルカーボネートの調製からの塩化水素の再循環
【0164】
a)ガス拡散電極を酸素消費陰極として用いた塩化水素の電気化学的酸化
【0165】
ジフェニルカーボネート1の精製からの8.16重量部/時の塩化水素流を、HCl吸収に送る。この目的のために、電解由来の塩酸中で消費された陽極液酸流28の副流を、HCl吸収からの塩酸26中に通す。塩酸中で消費され、かつ12.2重量%のHCl濃度を有する32.1重量部/時の陽極液酸28をHCl吸収に送る。このHCl吸収ユニットは、消費された陽極液酸流28の残余と組み合わされ、かつ電解セル中に送り返される30重量%強の塩酸26を生成する。2.96重量部/時の消費された陽極液酸流28は、陽極液酸回路(図示されていない)から放出される。
【0166】
電解は、55℃で5kA/m
2の電流密度と1.39Vの電圧で行われる。パラジウムで安定化されたチタンが陽極および陰極材料として使用される。10.1重量部/時の塩素が、DENORA, Germanyからの酸化ルテニウムを塗布した陽極で生じる。陽極半シェルおよび陰極半シェルは、DUPONT社からのイオン交換膜Nafion324によって分離される。陰極として、硫化ロジウム担持触媒を含むETEK社からの酸素消費電極を使用する。酸素は、陰極半素子に向けて100%の過剰で、すなわち9.17重量部/時の量で供給される。酸素が電解に向けて再循環され;フィード量の1%のパージ流れが電解の下流で放出される。陽極半セルの圧力は、陰極半セルの圧力より高い。差圧は200mバールである。8.8重量部/時の縮合物流れが陰極半セルから得られる。
【0167】
電解ユニットは615個の電解セグメントを含み、各素子は、陽極の場合には陽極半シェル、酸素消費電極の場合にはイオン交換膜および陰極半シェルを含む。
【0168】
実施例3
ポリカーボネートの調製
【0169】
4.5重量部/時のフェノール/時に溶解された65.5%のテトラフェニルホスホニウムフェノキシド/時を含む0.52重量部/時のテトラフェニルホスホニウムフェノキシドのフェノール付加物に加えて、1a)または1b)に記述されているように調製される4425重量部/時のジフェニルカーボネートと4175重量部/時のビスフェノールAを含む8600重量部/時の溶融混合物を、レザバーから熱交換機を経由してポンプで送り、190℃に加熱し、12バールおよび190℃の滞留カラムを経由して搬送する。平均滞留時間は50分である。
【0170】
その後該溶融物は、減圧バルブを経由して200mバールの圧力下にある分離器中に導入される。流出した溶融物を、同様に200mバールである流下膜式蒸発器中で189℃に再加熱し、また受器中に集める。20分の滞留時間後、溶融物を次の同様に組み立てられた3つの段階にポンプで送られる。第2/第3/第4段階での条件は、100/74/40バール、218/251/276℃および20/10/10分である。形成されたオリゴマーは、1.09の相対粘度を有する。全ての蒸気は、圧力制御器を経由して減圧下にあるカラム中に送られ、また濃縮物として放出される。
【0171】
その後オリゴマーは、取りつけられたバスケット反応器中で278℃、3.0ミリバール、滞留時間45分にてさらに縮合されて、より高分子量の生成物となる。相対粘度は、1.195である。蒸気は濃縮される。
【0172】
150重量部/時の溶融物の副流は、さらなるバスケット反応器中に導入される溶融流からギヤポンプにより分岐されて、0.185重量部/時の5%強のリン酸水と混合され、長さと直径の比が20である静的ミキサーにより撹拌され、また主溶融流中に再び導入される。その流れが組み合わされた直後、リン酸はさらなる静的ミキサーにより、全溶融流中に均一に分配される。
【0173】
このように処理された溶融物を、284℃、0.7ミリバール、平均滞留時間130分にてさらなるバスケット反応器中でプロセス条件に供し、放出かつペレット化する。
【0174】
蒸気は真空プラント中で濃縮されて、その下流になる。
【0175】
得られたポリカーボネートは、以下の特性を有する;相対粘度1.201/フェノール性OH255[ppm]/DPC71[ppm]/BPA6[ppm]/フェノール56[ppm]。
【0176】
実施例1a〜hに記述されたように、留去されたフェノールを工程b)のジフェニルカーボネートの調製に再循環できる。