特許第6138415号(P6138415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • 6138415-ベルト張力確認用治具 図000002
  • 6138415-ベルト張力確認用治具 図000003
  • 6138415-ベルト張力確認用治具 図000004
  • 6138415-ベルト張力確認用治具 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138415
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ベルト張力確認用治具
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/12 20060101AFI20170522BHJP
   G01L 5/04 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   F16H7/12 A
   G01L5/04 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-14299(P2012-14299)
(22)【出願日】2012年1月26日
(65)【公開番号】特開2013-155758(P2013-155758A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年12月23日
【審判番号】不服2016-9468(P2016-9468/J1)
【審判請求日】2016年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100187311
【弁理士】
【氏名又は名称】小飛山 悟史
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100139000
【弁理士】
【氏名又は名称】城戸 博兒
(72)【発明者】
【氏名】河西 広之
(72)【発明者】
【氏名】下釜 竜太郎
【合議体】
【審判長】 冨岡 和人
【審判官】 阿部 利英
【審判官】 中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−159136(JP,U)
【文献】 特開2000−321158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H7/00-7/24,G01L5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトの張力を確認するためのベルト張力確認用治具であって、
ベース部材と、前記ベース部材に取り付けられ、前記ベルトが掛けられる第1のベルト掛け部及び第2のベルト掛け部と、を備え、
前記第1のベルト掛け部は、少なくとも二個備えられると共に、前記ベース部材上の位置が固定され、
前記第2のベルト掛け部は、前記ベース部材上で前記第1のベルト掛け部から離間する方向に移動可能に保持され、
前記ベース部材には、前記ベース部材上で前記方向における前記第2のベルト掛け部の位置を調整するためのアジャスタボルトが設けられており、
前記第1のベルト掛け部及び前記第2のベルト掛け部を含む前記ベルトが掛けられる全てのベルト掛け部は、駆動手段により回転駆動されないものであり、
いずれかの前記ベルト掛け部の間の部位のベルトが、手や指で張力を確認されるものであって、何らの力測定器も備えないものであることを特徴とするベルト張力確認用治具。
【請求項2】
前記第1のベルト掛け部及び前記第2のベルト掛け部は、回転可能なプーリであることを特徴とする請求項1に記載のベルト張力確認用治具。
【請求項3】
前記ベース部材には、前記第1のベルト掛け部を固定して取り付けるための取付部が複数箇所に設けられており、
前記第1のベルト掛け部は、その取付位置を前記複数箇所の取付部の間で変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のベルト張力確認用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト張力の確認に用いられるベルト張力確認用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジン等に取り付けられるベルトに対して、各種の張力計を使用したベルト張力の確認が行われて来た。例えば、特許文献1には、カバー内のベルトに対して張力計を押し当てるための点検孔を設けることで、カバーを取り外すことなくベルトの張力を確認するための機構が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−56545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ベルト張力確認の際、場所によっては張力計を入れるためのスペースが十分になく、作業者によるベルト張力の確認が困難になるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、作業者が適切なベルト張力を確認することができるベルト張力確認用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ベルトの張力を確認するためのベルト張力確認用治具であって、ベース部材と、ベース部材に取り付けられ、ベルトが掛けられる第1のベルト掛け部及び第2のベルト掛け部と、を備え、第1のベルト掛け部は、少なくとも二個備えられると共に、ベース部材上の位置が固定され、第2のベルト掛け部は、ベース部材上で第1のベルト掛け部から離間する方向に移動可能に保持され、ベース部材には、ベース部材上で方向における第2のベルト掛け部の位置を調整するためのアジャスタボルトが設けられている第1のベルト掛け部及び第2のベルト掛け部のうち少なくとも一方は、ベース部材上で第1のベルト掛け部及び第2のベルト掛け部が離間する方向に移動可能に保持され、ベース部材には、ベース部材上で方向における第2のベルト掛け部の位置を調整するためのアジャスタボルトが設けられており、第1のベルト掛け部及び第2のベルト掛け部は、駆動手段により回転駆動されないものであり、いずれかのベルト掛け部の間の部位のベルトが、手や指で張力を確認されるものであって、何らの力測定器も備えないものであることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るベルト張力確認用治具によれば、ベルトが掛けられた状態で第1のベルト掛け部や第2のベルト掛け部を互いに離間する方向に移動させることにより、ベルトの張力を任意に調整することができる。従って、このベルト張力確認用治具によれば、作業者が確認すべきベルト張力を実現することができる。よって、ベルト付近に張力計の入るスペースが十分にない場合であっても、作業者は適切なベルト張力を当該治具で確認しながらベルトを張ることが可能になる。
【0008】
上記ベルト張力確認用治具において、第1のベルト掛け部及び第2のベルト掛け部は回転可能なプーリであってもよい。
この場合、第1のベルト掛け部及び第2のベルト掛け部にベルトを掛けた後に、これらを回転させることでベルトを馴染ませて張りを均一にすることができるので、より正確なベルト張力の確認を行うことができる。
【0009】
上記ベルト張力確認用治具において、ベース部材には、第1のベルト掛け部を固定して取り付けるための取付部が複数箇所に設けられており、第1のベルト掛け部は、その取付位置を複数箇所の取付部の間で変更可能に構成されていてもよい。
この場合、第1のベルト掛け部の取付位置を変更して、治具におけるベルトの取付状態を実際のエンジン等におけるベルトの取付状態に近づけることにより、更に正確なベルト張力の確認を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業者が適切なベルト張力を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るベルト張力確認用治具の一実施形態を示す正面図である。
図2】(a)ベースプレートを示す図である。(b)アジャスタボルト支持部を示す側面図である。
図3】スライド式プーリの位置調節機構を説明するための分解図である。
図4】ベルトの取付状態の他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るベルト張力確認用治具の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態に係るベルト張力確認用治具1は、作業者によるベルト張力の確認に用いられる治具である。ベルト張力確認用治具1に取り付けられるベルト2としては、車両のエンジンに用いられるタイミングベルト等の無端ベルトが挙げられる。
【0014】
ベルト張力確認用治具1は、ベースプレート(ベース部材)3、固定式プーリ(第1のベルト掛け部)4〜6、及びスライド式プーリ(第2のベルト掛け部)7を備えている。
【0015】
図2(a)はベースプレート3を示す正面図である。図1及び図2(a)に示されるように、金属製のベースプレート3は、縦長方形板状の部材であり、このベースプレート3に4個のプーリ4〜7が取り付けられている。各プーリ4〜7は、各プーリ4〜7の中心を通り、ベースプレート3に垂直な軸を回転中心軸として回転可能に構成されている。
【0016】
ベースプレート3の中央には開口3aが設けられ、この開口3aに手を入れることで持ち運びが容易になる。また、開口3aを設けることにより治具の軽量化が図られる。
【0017】
ベースプレート3には、固定式プーリ4〜6をボルト止めするための取付穴(取付部)3b〜3fが形成されている。5つの取付穴3b〜3fのうち、取付穴3b,3cは固定式プーリ4を取り付けるための穴である。固定式プーリ4は、取付穴3d,3eの間で取付位置を変更可能に構成されている。取付穴3b,3cは、図1,2に示すベースプレート正面から見て開口3aの左上に設けられている。以後、図1,2に示すベースプレート正面を基準として、「上」「下」「左」「右」の語を用いる。
【0018】
取付穴3b〜3fのうち、開口3aの左下に設けられた取付穴3d,3eは固定式プーリ5を取り付けるための穴である。固定式プーリ4は、取付穴3b,3cの間で取付位置を変更可能に構成されている。開口3aの右下に設けられた取付穴3fは、固定式プーリ6を取り付けるための穴である。なお、取付穴3b〜3fの位置や数は、図2(a)に示すものに限られず、必要に応じて変更することができる。
【0019】
また、ベースプレート3には、スライド式プーリ7を左右方向で移動可能に取り付けるためのスライド用取付穴(取付部)3gが形成されている。左右方向に延在するスライド用取付穴3gは、図2(a)に示すベースプレート正面から見て開口3aの右上に設けられている。
【0020】
スライド式プーリ7は、ベースプレート3上でスライド式プーリ7及び固定式プーリ4〜6が離間する方向に移動可能(位置調節可能)に取り付けられている。ここで、図3は、スライド式プーリ7の位置調節機構を説明するための分解図である。
【0021】
図1図3に示されるように、スライド用取付穴3gの右端には、スライド用取付穴3gより上下幅の大きい切り欠き部3hが形成されている。すなわち、スライド用取付穴3gの右端は切り欠き部3hと連通している。
【0022】
切り欠き部3hには、アジャスタボルト支持板8の凸部8aが嵌め込まれる。アジャスタボルト支持板8は、スライド式プーリ7の位置を調節するためのアジャスタボルト9を支持する部材である。アジャスタボルト支持板8の側面図を図2(b)に示す。図1図3に示されるように、アジャスタボルト支持板8は、ベースプレート3の裏側に突出するように固定され、中央の貫通孔8bにアジャスタボルト9が挿通される。
【0023】
アジャスタボルト9は、アジャスタボルト支持板8に対して回転自在に支持されている。アジャスタボルト9の軸部9aには、ネジ溝が形成されており、アジャスタボルト支持板8の貫通孔8bに挿通されて先端側が突出している。貫通孔8bから突出した軸部9aの先端側は、プーリ連結部10の雌ネジ穴10a内に嵌め込まれている。
【0024】
プーリ連結部10は、スライド式プーリ7に連結されており、スライド式プーリ7と一体に移動する部材である。プーリ連結部10は、スライド用取付穴3gを通じてスライド式プーリ7に連結される連結軸10bを有している。スライド式プーリ7は、スライド用取付穴3gに挿通された連結軸10bと連結されることで、ベースプレート3上に取り付けられている。
【0025】
プーリ連結部10の雌ネジ穴10aは左右方向に貫通している。雌ネジ穴10aに螺合したアジャスタボルト9の軸部9aを回転させることで、ネジの作用によりプーリ連結部10が軸部9aの延在方向(左右方向)に移動する。これにより、アジャスタボルト9を回転させることで、プーリ連結部10と連結されたスライド式プーリ7を移動させて任意の位置に調整することができる。
【0026】
アジャスタボルト支持板8、アジャスタボルト9、及びプーリ連結部10は、スライド式プーリ7の位置調節機構として機能する。なお、スライド式プーリ7の位置調節機構は、上述したものに限られず、プーリ7を移動させて任意の位置に保持可能な種々の機構を採用することができる。
【0027】
以上説明したベルト張力確認用治具1によれば、ベルト2を固定式プーリ4〜6及びスライド式プーリ7に掛けた状態でアジャスタボルト9を回すことにより、図1の矢印T方向(右方向)にスライド式プーリ7を移動させて、ベルト2の張力を任意に調整することができる。従って、ベルト張力確認用治具1によれば、ベルト2の張力を正確に調整することにより、作業者が確認すべきベルト張力を実現することができる。なお、ベルト2の張力は、張力計を用いて調整しても良い。
【0028】
ベルト張力確認用治具1によれば、例えば図1の矢印Aが示す部位を手や指で確認することで、作業者は適切なベルト張力を体感することができる。従って、ベルト張力確認用治具1によれば、適切なベルト張力を手や指で確認しながら、エンジン等にベルトを取り付けることができるので、ベルト付近に張力計の入るスペースが十分にない場合であっても適切な張力でベルトを張ることができる。
【0029】
また、ベルト張力確認用治具1では、ベルト2を掛ける部材として回転可能なプーリを用いているので、ベルト2を掛けた後に各プーリを回転させることでベルトを馴染ませて張りを均一にすることができ、より正確なベルト張力の確認を行うことができる。
【0030】
更に、ベルト張力確認用治具1のベースプレート3は、固定式プーリ4,5を取り付けるための取付穴3b〜3eを複数箇所に設けているので、固定式プーリ4,5はベースプレート3上の取付位置を変更することができる。
【0031】
ここで、図4は、ベルトの取付状態(レイアウト)の他の例を説明するための図である。図4に示すベルト張力確認用治具1では、取付穴3bの左側(ベースプレート3外側)に位置する取付穴3cに固定式プーリ4を取り付け、取付穴3dの右側(ベースプレート3内側)に位置する取付穴3eに固定式プーリ5を取り付けている。そして、このベルト張力確認用治具1では、ベルト2を固定式プーリ4,5及びスライド式プーリ7の三点に掛ける構成としている。
【0032】
図1及び図4に示されるように、ベルト張力確認用治具1によれば、固定式プーリ4,5の取付位置を変更することで、治具におけるベルト2の取付状態を実際のエンジン等におけるベルトの取付状態に近づけることができる。従って、ベルト張力確認用治具1によれば、ベルト2を実際のベルト取付状態に近い取付状態とすることで、更に正確なベルト張力の確認を行うことができる。なお、ベルト張力確認用治具1におけるベルト2の取付状態(レイアウト)は図1図4に示すものに限られず、様々な変形が可能である。
【0033】
また、ベルト張力確認用治具1は、適切なベルト張力を作業者に体得させるためのスキルアップの道具としても用いることができる。
【0034】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、ベースとなる部材の形状はプレート状に限られず、ブロック状その他の形状であってもよい。持ち運びの良さや安定性に優れた材質や形状であることが好ましい。
【0035】
また、プーリの数や位置は図1図4に示すものに限られない。プーリの数は、二個や三個であってもよく、五個以上であってもよい。更に、固定式プーリを備えず、全て移動可能なスライド式プーリとしてもよい。この場合、ベース部材に対するスライド式プーリの取付位置を変更可能に構成してもよい。また、ベース部材に設けられる取付部は穴状のものに限られず、棒状やボス形状のものであってもよい。
【0036】
更に、ベルト2を掛けるベルト掛け部が必ずしも回転可能なプーリである必要はない。ベルト掛け部としては、ローラや回転不能な棒状部材も採用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1…ベルト張力確認用治具 2…ベルト 3…ベースプレート(ベース部材) 3a…開口 3b-3f…取付穴(取付部) 3g…スライド用取付穴(取付部) 3h…切り欠き部 4-6…固定式プーリ(第1のベルト掛け部) 7…スライド式プーリ(第2のベルト掛け部) 8…アジャスタボルト支持板 9…アジャスタボルト 10…プーリ連結部
図1
図2
図3
図4