【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のガス化炉装置において、炉内のガス温度(以下、「炉内ガス温度」と呼ぶ)がアニュラス部内の温度(以下、「アニュラス温度」と呼ぶ)よりも低い箇所で均圧させた場合には、アニュラス部へ流出した炉内ガスが不活性ガスより低温となるため、アニュラス部内に自然対流を生じさせ、この結果、アニュラス部へ向けて炉内ガスが連続的に流出することとなる。すなわち、炉内ガスが複数の熱交換器を通過した炉内の下流側では、炉内ガス温度と周壁缶水温度とが逆転するので、炉内ガス温度がアニュラス温度よりも低い領域が形成される。
【0006】
たとえば、周壁缶水温度が350℃程度であり、エコノマイザーの給水温度が230℃程度の場合には、エコノマイザー下流の炉内ガス温度が250℃程度となる。このため、このようなエコノマイザー下流領域では、周壁缶水温度と略同じ温度のアニュラス温度と比較して、炉内ガス温度がアニュラス温度より低くなる。
また、アニュラス部内へ炉内ガスが流出する際には、炉内のダストもガス流に随伴して同時に流出することになる。このような随伴ダストの流出は、圧力容器の信頼性やプラントの運転継続に支承をきたす可能性があり、清掃作業にも手間が掛かることとなるから、炉内ガスの流出量を低減することが望まれる。
【0007】
このような背景から、炭素含有燃料をガス化するガス化炉装置においては、アニュラス部に流出する炉内ガスに起因してアニュラス部内に生じる自然対流を抑制し、アニュラス部内へ流出する炉内ガス量及び随伴ダスト量を低減することが望まれる。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、アニュラス部に流出する炉内ガスに起因したアニュラス部内の自然対流を抑制し、アニュラス部内へ流出する炉内ガス量及び随伴ダスト量の低減を可能にしたガス化炉装置
、石炭ガス化複合発電設備及び
ガス化炉装置の均圧方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明
の参考例に係るガス化炉装置の均圧構造は、炭素含有燃料のガス化を行うガス化炉と、前記ガス化炉を格納している圧力容器と、前記ガス化炉と前記圧力容器との間に設けられ、加圧用ガスを充満させた圧力保持部と、前記圧力容器の内部で前記ガス化炉に接続され、前記ガス化炉の内部と前記圧力保持部の内部とを連通させて均圧させる均圧部と、を備え、前記ガス化炉の周壁は、周壁缶水を流す水冷壁を有しており、前記均圧部は、前記ガス化炉内の炉内ガス温度が前記水冷壁内を流れる前記周壁缶水の温度よりも高く、かつ、前記圧力保持部内の温度よりも高い領域において、前記ガス化炉に接続されたことを特徴とするものである。
【0009】
このようなガス化炉装置の均圧構造によれば、ガス化炉内の炉内ガス温度が圧力保持部内の温度よりも高い領域に、ガス化炉に接続されてガス化炉の内部と圧力保持部の内部とを連通させる均圧部を設けたので、圧力保持部へ流出する炉内ガスが加圧用ガスより高温となり、自然対流を生じにくくなる。この結果、均圧部においては、圧力保持部に向けた炉内ガスの連続的な流出が抑制され、同時に、炉内ガスの流れとともに流出する随伴ダスト量も低減できる。
【0010】
上記の発明において、前記ガス化炉をタワー型にして前記均圧部を最上部近傍に設けることが好ましく、これにより、圧力保持部内における均圧部の上部空間が小さくなる。この結果、自然対流を形成可能な均圧部上部の領域が小さくなり、対流範囲を最小限に抑えることができる。
【0011】
この場合、前記均圧部は、前記圧力保持部内で下向きに開口する開口出口を備え、該開口出口の下方に配置されたダスト受け皿を備えていることが好ましく、これにより、通常運転中に炉内ガスとともに圧力保持部へ流出した随伴ダストをダスト受け皿に回収することができる。なお、均圧部の開口出口は、均圧部を形成する配管等を下方へ向けて折曲することにより、ダスト受け皿の近傍まで延在させることが望ましい。
また、この場合のダスト受け皿は、前記ガス化炉の外周部を囲むようにして前記圧力保持部の内部に環状に設けられていることが好ましく、これにより、回収した随伴ダストが圧力保持部の下部へこぼれ落ちることを防止できる。
【0012】
本発明に係るガス化炉装置は、炭素含有燃料のガス化を行うガス化炉と、前記ガス化炉を格納している圧力容器と、前記ガス化炉と前記圧力容器との間に設けられ、加圧用ガスを充満させた圧力保持部と、前記圧力容器の内部で前記ガス化炉に接続され、前記ガス化炉の内部と前記圧力保持部の内部とを連通させて均圧させる均圧部と、を備え、前記ガス化炉の周壁は、周壁缶水を流す水冷壁を有しており、前記均圧部は、
前記圧力保持部内で下向きに開口する開口出口を備え、該開口出口の下方に配置されたダスト受け皿を備え、前記ガス化炉内の炉内ガス温度が前記水冷壁内を流れる前記周壁缶水の温度よりも高く、かつ、前記圧力保持部内の温度よりも高い領域において、前記ガス化炉に接続され
、前記ガス化炉をタワー型にして前記均圧部を最上部近傍に設けたことを特徴とするものである。
また、本発明に係るガス化炉装置は、前記ダスト受け皿は、前記ガス化炉の外周部を囲むようにして前記圧力保持部の内部に環状に設けられていることを特徴とするものであってもよい。
【0013】
このようなガス化炉装置によれば、ガス化炉内の炉内ガス温度が圧力保持部内の温度よりも高い領域に、ガス化炉に接続されてガス化炉の内部と圧力保持部の内部とを連通させる均圧部を備えているので、圧力保持部へ流出する炉内ガスが加圧用ガスより高温となり、自然対流を生じにくくなる。この結果、均圧部においては、圧力保持部に向けた炉内ガスの連続的な流出が抑制され、同時に、炉内ガスの流れとともに流出する随伴ダスト量も低減できる。
【0014】
本発明に係る石炭ガス化複合発電設備は、
上述のガス化炉装置を備えていることを特徴とするものである。
【0015】
このような石炭ガス化複合発電設備によれば、
上述のガス化炉装置を備えているので、ガス化炉装置の均圧部においては、圧力保持部に向けた炉内ガスの連続的な流出が抑制され、同時に、炉内ガスの流れとともに流出する随伴ダスト量も低減できる。
【0016】
本発明に係るガス化炉装置の均圧方法は、周壁に周壁缶水を流す水冷壁を有し、炭素含有燃料のガス化を行う
タワー型のガス化炉と、前記ガス化炉を格納している圧力容器と、前記ガス化炉と前記圧力容器との間に設けられ、加圧用ガスを充満させた圧力保持部と
、前記圧力保持部内で下向きに開口する開口出口及び該開口出口の下方に配置されたダスト受け皿を有する均圧部とを備え、前記ガス化炉内の炉内ガス温度が前記水冷壁内を流れる前記周壁缶水の温度よりも高く、かつ、前記圧力保持部内の温度よりも高い領域
であって、前記ガス化炉の最上部近傍で、前記ガス化炉の内部と前記圧力保持部の内部とを連通させて前記
圧力容器の内部で均圧させることを特徴とするものである。
【0017】
このようなガス化炉装置の均圧方法によれば、ガス化炉内の炉内ガス温度が圧力保持部内のアニュラス温度よりも高い領域で、ガス化炉の内部と圧力保持部の内部とを連通させるようにしたので、圧力保持部へ流出した炉内ガスが自然対流を生じにくくなる。この結果、ガス化炉の内部と圧力保持部の内部とが連通する部分においては、圧力保持部に向けた炉内ガスの連続的な流出が抑制され、同時に、炉内ガスの流れとともに流出する随伴ダスト量も低減できる。
【0018】
上記の均圧方法において、前記ガス化炉をタワー型にし
、前記ガス化炉の最上部近傍
で前記ガス化炉の内部と前記圧力保持部の内部とを連通させることが好ましく、これにより、圧力保持部内における均圧部の上部空間を
小さくすることができる。この結果、自然対流を形成可能な均圧部上部の領域が小さくなり、対流範囲を最小限に抑えることができる。
【0019】
上記の均圧方法において、前記均圧部は、前記圧力保持部内で下向きに開口する開口出口を備え、該開口出口の下方に配置されたダスト受け皿を備えていることが好ましく、これにより、通常運転中に炉内ガスとともに圧力保持部へ流出した随伴ダストをダスト受け皿に回収することができる。なお、均圧部の開口出口は、均圧部を形成する配管等を下方へ向けて折曲することにより、ダスト受け皿の近傍まで延在させることが望ましい。
また、この場合のダスト受け皿は、前記ガス化炉の外周部を囲むようにして前記圧力保持部の内部に環状に設けられていることが好ましく、これにより、回収した随伴ダストが圧力保持部の下部へこぼれ落ちることを防止できる。