特許第6138416号(P6138416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6138416ガス化炉装置、石炭ガス化複合発電設備及びガス化炉装置の均圧方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138416
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ガス化炉装置、石炭ガス化複合発電設備及びガス化炉装置の均圧方法
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/46 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   C10J3/46 M
   C10J3/46 L
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-27417(P2012-27417)
(22)【出願日】2012年2月10日
(65)【公開番号】特開2013-163760(P2013-163760A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2014年8月11日
【審判番号】不服2015-22161(P2015-22161/J1)
【審判請求日】2015年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】羽有 健太
(72)【発明者】
【氏名】品田 治
(72)【発明者】
【氏名】柴田 泰成
【合議体】
【審判長】 川端 修
【審判官】 豊永 茂弘
【審判官】 原 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−271073(JP,A)
【文献】 特開昭61−246290(JP,A)
【文献】 特開昭63−86795(JP,A)
【文献】 特開2001−26789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素含有燃料のガス化を行うガス化炉と、
前記ガス化炉を格納している圧力容器と、
前記ガス化炉と前記圧力容器との間に設けられ、加圧用ガスを充満させた圧力保持部と、
前記圧力容器の内部で前記ガス化炉に接続され、前記ガス化炉の内部と前記圧力保持部の内部とを連通させて均圧させる均圧部と、を備え、
前記ガス化炉の周壁は、周壁缶水を流す水冷壁を有しており、
前記均圧部は、
前記圧力保持部内で下向きに開口する開口出口を備え、該開口出口の下方に配置されたダスト受け皿を備え、前記ガス化炉内の炉内ガス温度が前記水冷壁内を流れる前記周壁缶水の温度よりも高く、かつ、前記圧力保持部内の温度よりも高い領域において、前記ガス化炉に接続され
前記ガス化炉をタワー型にして前記均圧部を最上部近傍に設けたことを特徴とするガス化炉装置。
【請求項2】
前記ダスト受け皿は、前記ガス化炉の外周部を囲むようにして前記圧力保持部の内部に環状に設けられていることを特徴とする請求項に記載のガス化炉装置
【請求項3】
請求項1または2に記載のガス化炉装置を備えていることを特徴とする石炭ガス化複合発電設備。
【請求項4】
周壁に周壁缶水を流す水冷壁を有し、炭素含有燃料のガス化を行うタワー型のガス化炉と、
前記ガス化炉を格納している圧力容器と、
前記ガス化炉と前記圧力容器との間に設けられ、加圧用ガスを充満させた圧力保持部と
前記圧力保持部内で下向きに開口する開口出口及び該開口出口の下方に配置されたダスト受け皿を有する均圧部とを備え、
前記ガス化炉内の炉内ガス温度が前記水冷壁内を流れる前記周壁缶水の温度よりも高く、かつ、前記圧力保持部内の温度よりも高い領域であって、前記ガス化炉の最上部近傍で、前記ガス化炉の内部と前記圧力保持部の内部とを連通させて前記圧力容器の内部で均圧させることを特徴とするガス化炉装置の均圧方法。
【請求項5】
前記ダスト受け皿は、前記ガス化炉の外周部を囲むようにして前記圧力保持部の内部に環状に設けられていることを特徴とする請求項に記載のガス化炉装置の均圧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば石炭ガス化炉装置等のように、炭素含有燃料をガス化する装置に適用されるガス化炉装置に係り、特に、炉内とアニュラス部のような圧力保持部内との差圧変化を抑制するガス化炉装置、石炭ガス化複合発電設備及びガス化炉装置の均圧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭等の炭素含有燃料をガス化する炭素含有燃料ガス化装置に適用されるガス化炉が知られている。このようなガス化炉には、タワー型やクロスオーバ型と呼ばれる二重壁を有する反応器がある。
一般に、ガス化炉装置を構成しているガス化炉及び熱交換器を収納する圧力容器には、窒素ガス等の不活性ガスを充満させて高圧を維持した環状空間(以下、「アニュラス部」と呼ぶ)が設けられている。すなわち、ガス化炉装置は、炉内ガスが通過する化炉壁と、該化炉壁の外側に設けられて圧力を保持する圧力容器とにより構成されている。そして、化炉壁と圧力容器との間には、炉内の高温ガスから圧力容器を保護するため、不活性ガスを充満させたアニュラス部が設けられている。
【0003】
従来のガス化炉装置には、たとえば下記の特許文献1に開示されているように、炉内とアニュラス部とを直接均圧させる手段として、炉内とアニュラス部との間を連通させる炉内均圧管が設けられている。この炉内均圧管は、炉内とアニュラス部との間を直接均圧させることにより、炉内とアニュラス部内との差圧が変動してもガス化運転を安定して継続できるようにしたものである。すなわち、炉内均圧管は、化炉壁保護のため、炉内の圧力とアニュラス部内との圧力差(差圧)が大きくならないように抑制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−68812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のガス化炉装置において、炉内のガス温度(以下、「炉内ガス温度」と呼ぶ)がアニュラス部内の温度(以下、「アニュラス温度」と呼ぶ)よりも低い箇所で均圧させた場合には、アニュラス部へ流出した炉内ガスが不活性ガスより低温となるため、アニュラス部内に自然対流を生じさせ、この結果、アニュラス部へ向けて炉内ガスが連続的に流出することとなる。すなわち、炉内ガスが複数の熱交換器を通過した炉内の下流側では、炉内ガス温度と周壁缶水温度とが逆転するので、炉内ガス温度がアニュラス温度よりも低い領域が形成される。
【0006】
たとえば、周壁缶水温度が350℃程度であり、エコノマイザーの給水温度が230℃程度の場合には、エコノマイザー下流の炉内ガス温度が250℃程度となる。このため、このようなエコノマイザー下流領域では、周壁缶水温度と略同じ温度のアニュラス温度と比較して、炉内ガス温度がアニュラス温度より低くなる。
また、アニュラス部内へ炉内ガスが流出する際には、炉内のダストもガス流に随伴して同時に流出することになる。このような随伴ダストの流出は、圧力容器の信頼性やプラントの運転継続に支承をきたす可能性があり、清掃作業にも手間が掛かることとなるから、炉内ガスの流出量を低減することが望まれる。
【0007】
このような背景から、炭素含有燃料をガス化するガス化炉装置においては、アニュラス部に流出する炉内ガスに起因してアニュラス部内に生じる自然対流を抑制し、アニュラス部内へ流出する炉内ガス量及び随伴ダスト量を低減することが望まれる。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、アニュラス部に流出する炉内ガスに起因したアニュラス部内の自然対流を抑制し、アニュラス部内へ流出する炉内ガス量及び随伴ダスト量の低減を可能にしたガス化炉装置、石炭ガス化複合発電設備及びガス化炉装置の均圧方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明の参考例に係るガス化炉装置の均圧構造は、炭素含有燃料のガス化を行うガス化炉と、前記ガス化炉を格納している圧力容器と、前記ガス化炉と前記圧力容器との間に設けられ、加圧用ガスを充満させた圧力保持部と、前記圧力容器の内部で前記ガス化炉に接続され、前記ガス化炉の内部と前記圧力保持部の内部とを連通させて均圧させる均圧部と、を備え、前記ガス化炉の周壁は、周壁缶水を流す水冷壁を有しており、前記均圧部は、前記ガス化炉内の炉内ガス温度が前記水冷壁内を流れる前記周壁缶水の温度よりも高く、かつ、前記圧力保持部内の温度よりも高い領域において、前記ガス化炉に接続されたことを特徴とするものである。
【0009】
このようなガス化炉装置の均圧構造によれば、ガス化炉内の炉内ガス温度が圧力保持部内の温度よりも高い領域に、ガス化炉に接続されてガス化炉の内部と圧力保持部の内部とを連通させる均圧部を設けたので、圧力保持部へ流出する炉内ガスが加圧用ガスより高温となり、自然対流を生じにくくなる。この結果、均圧部においては、圧力保持部に向けた炉内ガスの連続的な流出が抑制され、同時に、炉内ガスの流れとともに流出する随伴ダスト量も低減できる。
【0010】
上記の発明において、前記ガス化炉をタワー型にして前記均圧部を最上部近傍に設けることが好ましく、これにより、圧力保持部内における均圧部の上部空間が小さくなる。この結果、自然対流を形成可能な均圧部上部の領域が小さくなり、対流範囲を最小限に抑えることができる。
【0011】
この場合、前記均圧部は、前記圧力保持部内で下向きに開口する開口出口を備え、該開口出口の下方に配置されたダスト受け皿を備えていることが好ましく、これにより、通常運転中に炉内ガスとともに圧力保持部へ流出した随伴ダストをダスト受け皿に回収することができる。なお、均圧部の開口出口は、均圧部を形成する配管等を下方へ向けて折曲することにより、ダスト受け皿の近傍まで延在させることが望ましい。
また、この場合のダスト受け皿は、前記ガス化炉の外周部を囲むようにして前記圧力保持部の内部に環状に設けられていることが好ましく、これにより、回収した随伴ダストが圧力保持部の下部へこぼれ落ちることを防止できる。
【0012】
本発明に係るガス化炉装置は、炭素含有燃料のガス化を行うガス化炉と、前記ガス化炉を格納している圧力容器と、前記ガス化炉と前記圧力容器との間に設けられ、加圧用ガスを充満させた圧力保持部と、前記圧力容器の内部で前記ガス化炉に接続され、前記ガス化炉の内部と前記圧力保持部の内部とを連通させて均圧させる均圧部と、を備え、前記ガス化炉の周壁は、周壁缶水を流す水冷壁を有しており、前記均圧部は、前記圧力保持部内で下向きに開口する開口出口を備え、該開口出口の下方に配置されたダスト受け皿を備え、前記ガス化炉内の炉内ガス温度が前記水冷壁内を流れる前記周壁缶水の温度よりも高く、かつ、前記圧力保持部内の温度よりも高い領域において、前記ガス化炉に接続され、前記ガス化炉をタワー型にして前記均圧部を最上部近傍に設けたことを特徴とするものである。また、本発明に係るガス化炉装置は、前記ダスト受け皿は、前記ガス化炉の外周部を囲むようにして前記圧力保持部の内部に環状に設けられていることを特徴とするものであってもよい。
【0013】
このようなガス化炉装置によれば、ガス化炉内の炉内ガス温度が圧力保持部内の温度よりも高い領域に、ガス化炉に接続されてガス化炉の内部と圧力保持部の内部とを連通させる均圧部を備えているので、圧力保持部へ流出する炉内ガスが加圧用ガスより高温となり、自然対流を生じにくくなる。この結果、均圧部においては、圧力保持部に向けた炉内ガスの連続的な流出が抑制され、同時に、炉内ガスの流れとともに流出する随伴ダスト量も低減できる。
【0014】
本発明に係る石炭ガス化複合発電設備は、上述のガス化炉装置を備えていることを特徴とするものである。
【0015】
このような石炭ガス化複合発電設備によれば、上述のガス化炉装置を備えているので、ガス化炉装置の均圧部においては、圧力保持部に向けた炉内ガスの連続的な流出が抑制され、同時に、炉内ガスの流れとともに流出する随伴ダスト量も低減できる。
【0016】
本発明に係るガス化炉装置の均圧方法は、周壁に周壁缶水を流す水冷壁を有し、炭素含有燃料のガス化を行うタワー型のガス化炉と、前記ガス化炉を格納している圧力容器と、前記ガス化炉と前記圧力容器との間に設けられ、加圧用ガスを充満させた圧力保持部と、前記圧力保持部内で下向きに開口する開口出口及び該開口出口の下方に配置されたダスト受け皿を有する均圧部とを備え、前記ガス化炉内の炉内ガス温度が前記水冷壁内を流れる前記周壁缶水の温度よりも高く、かつ、前記圧力保持部内の温度よりも高い領域であって、前記ガス化炉の最上部近傍で、前記ガス化炉の内部と前記圧力保持部の内部とを連通させて前記圧力容器の内部で均圧させることを特徴とするものである。
【0017】
このようなガス化炉装置の均圧方法によれば、ガス化炉内の炉内ガス温度が圧力保持部内のアニュラス温度よりも高い領域で、ガス化炉の内部と圧力保持部の内部とを連通させるようにしたので、圧力保持部へ流出した炉内ガスが自然対流を生じにくくなる。この結果、ガス化炉の内部と圧力保持部の内部とが連通する部分においては、圧力保持部に向けた炉内ガスの連続的な流出が抑制され、同時に、炉内ガスの流れとともに流出する随伴ダスト量も低減できる。
【0018】
上記の均圧方法において、前記ガス化炉をタワー型にし、前記ガス化炉の最上部近傍で前記ガス化炉の内部と前記圧力保持部の内部とを連通させることが好ましく、これにより、圧力保持部内における均圧部の上部空間をさくすることができる。この結果、自然対流を形成可能な均圧部上部の領域が小さくなり、対流範囲を最小限に抑えることができる。
【0019】
上記の均圧方法において、前記均圧部は、前記圧力保持部内で下向きに開口する開口出口を備え、該開口出口の下方に配置されたダスト受け皿を備えていることが好ましく、これにより、通常運転中に炉内ガスとともに圧力保持部へ流出した随伴ダストをダスト受け皿に回収することができる。なお、均圧部の開口出口は、均圧部を形成する配管等を下方へ向けて折曲することにより、ダスト受け皿の近傍まで延在させることが望ましい。
また、この場合のダスト受け皿は、前記ガス化炉の外周部を囲むようにして前記圧力保持部の内部に環状に設けられていることが好ましく、これにより、回収した随伴ダストが圧力保持部の下部へこぼれ落ちることを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
上述した本発明によれば、炭素含有燃料をガス化するガス化炉装置においては、アニュラス部に流出する炉内ガスに起因してアニュラス部内に生じる自然対流を抑制し、アニュラス部内へ流出する炉内ガス量及び随伴ダスト量を低減することが可能になる。従って、圧力容器の耐久性や信頼性が向上し、ガス化炉装置を備えたプラントの安定した運転継続が可能になる。
また、アニュラス部へ流出した随伴ダストをダスト受け皿に回収できるので、清掃作業に要する手間も低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るガス化炉装置、石炭ガス化複合発電設備及びガス化炉装置の均圧方法の一実施形態として、タワー型のガス化装置に適用した構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るガス化炉装置、石炭ガス化複合発電設備及びガス化炉装置の均圧方法の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示す実施形態のガス化炉装置1は、石炭等の炭素含有燃料をガス化するタワー型のガス化炉装置である。このガス化炉装置1は、炭素含有燃料のガス化を行うガス化炉3と、ガス化炉3を格納している圧力容器5と、ガス化炉3と圧力容器5との間に加圧用ガスとして不活性ガスを充満させたアニュラス部7とを備えている。なお、アニュラス部7は、窒素ガス等の加圧用ガスを充満させて高圧を維持した圧力保持部であり、ガス化炉装置1の場合は環状空間となる。
【0023】
タワー型のガス化炉3は、微粉炭(石炭)等の炭素含有燃料を略筒状の炉内で燃焼させるなどしてガスを生成する。この生成ガスは、化炉内部を下方から上方へ向けて流れ、上端部の化炉出口3aから炉外へ流出する炉内ガスである。なお、ガス化炉3の周壁は、炉内ガスを冷却するための周壁缶水を流す水冷壁となっている。
ガス化炉3内の中段付近から上段出口付近までの領域には、下方から上方へ向けて流れる炉内ガスが通過するように、複数台の熱交換器9が直列に設置されている。この熱交換器9は、炉内ガスの顕熱を利用して蒸気を発生させるものである。なお、図示の構成例では、ガス化炉3の下方から上方へ順番に、エバポレータ9a、第2蒸気ヒーター9b、第1蒸気ヒーター9c及びエコノマイザー9dが直列に配置されているが、これに限定されることはない。
【0024】
圧力容器5は、ガス化炉3の化炉壁外側にアニュラス部7となる環状の空間を形成している。このアニュラス部7は、窒素ガス等の不活性ガスを充満させて高圧を維持した空間であり、ガス化炉3の全周を覆うように設けられている。すなわち、ガス化炉3の化炉壁と圧力容器5との間には、高温で炉内を流れる炉内ガスから圧力容器5を保護するため、不活性ガスを充満させたアニュラス部7設けられている。
【0025】
そして、本実施形態のガス化炉装置1では、炉内ガス温度がアニュラス温度よりも高い領域に、ガス化炉3に接続されてガス化炉3の内部とアニュラス部7の内部とを連通させる均圧管11が設けられている。この均圧管11は、ガス化炉3の内部とアニュラス部7の内部とを連通させているので、均圧管11の内部が均圧部13となる。なお、炉内ガス温度は、ガス化炉3の内部における生成ガスのガス温度であり、アニュラス温度は、アニュラス部7の内部における環境温度(不活性ガスの温度)である。
【0026】
炉内ガス温度がアニュラス温度よりも高い領域に均圧部1を設けるのは、アニュラス部7へ流出する炉内ガスが不活性ガスより高温となり、アニュラス部7内において自然対流を生じにくいためである。すなわち、炉内ガス温度がアニュラス温度よりも高い領域で均圧させると、アニュラス部7に流出した炉内ガスは、アニュラス部7の内部で自然対流が生じにくくなる。
この結果、アニュラス部7に向けた炉内ガスの連続的な流出は抑制され、同時に、炉内ガスの流れとともに流出する炉内の随伴ダスト量も低減する。すなわち、均圧管11を通過してアニュラス部7へ流出する炉内ガス量が少なくなるので、この炉内ガスの流れに乗ってアニュラス部7へ流出するチャー等の随伴ダスト量も減少する。
【0027】
ところで、ガス化炉装置1のガス化炉3をタワー型にした場合には、上述した均圧部13を最上部近傍に設けることが望ましい。この場合、最も上段に位置して最も下流側となるエコノマイザー9dを通過した炉内ガスの温度が周壁缶水温度より高くなるように設定されており、従って、炉内ガス温度はアニュラス温度よりも高くなる。
このように、均圧部13を、エコノマイザー9dの下流側で化炉出口3aの近傍となる最上部に配置すれば、アニュラス部7内における均圧部13の上部空間が小さくなる。すなわち、炉内ガスの自然対流は均圧管11の出口より上方に形成されるので、自然対流を形成可能な均圧部上部の領域が小さく(短く)なり、対流範囲を最小限に抑えることができる。
【0028】
また、上述した均圧管11の内部に形成される均圧部13は、均圧管11を折曲することによりアニュラス部7内で下向きに開口する開口出口11aを備えている。そして、この開口出口11aの下方には、ダスト受け皿15が配置されている。このダスト受け皿15は、ガス化炉装置1の通常運転中に炉内ガスとともにアニュラス部7へ流出した随伴ダストを回収し、ガス化炉3の下部まで落下する流ことを防止している。この場合、均圧部13の開口出口11aは、均圧管11をダスト受け皿15の近傍まで延在させて設けることが望ましい。
【0029】
また、上述したダスト受け皿15は、ガス化炉3の外周部を囲むようにしてアニュラス部7の内部に環状に設けることが望ましい。このような環状の受け皿15は、回収した随伴ダストがアニュラス部7の下部へこぼれ落ちることの防止に有効である。
【0030】
このように、上述したガス化炉装置1によれば、炭素含有燃料のガス化を行うガス化炉3と、ガス化炉3を格納している圧力容器5と、ガス化炉3と圧力容器5との間に不活性ガスを充満させたアニュラス部7とを備え、ガス化炉3内の炉内ガス温度がアニュラス部7内のアニュラス温度よりも高い領域で、ガス化炉3の内部とアニュラス部7の内部とを連通させて均圧させる均圧方法の実施が可能となり、アニュラス部7へ流出した炉内ガスが自然対流を生じにくくなる。
【0031】
従って、ガス化炉3の内部とアニュラス部7の内部とが連通する部分においては、アニュラス部7に向けた炉内ガスの連続的な流出が抑制され、同時に、炉内ガスの流れとともに流出する随伴ダスト量も低減できる。このようなガス化炉装置1の均圧方法は、特にガス化炉3をタワー型とし、均圧部13となるガス化炉3の内部とアニュラス部7の内部との連通部分をタワーの最上部近傍に設けることで、アニュラス部7の内部における対流形成領域を小さくすることが可能になる。
【0032】
このように、上述した本実施形態によれば、炭素含有燃料をガス化するガス化炉装置1においては、アニュラス部7に流出する炉内ガスに起因してアニュラス部7の内部に生じる自然対流を抑制し、アニュラス部7の内部へ流出する炉内ガス量及び随伴ダスト量を低減することが可能になる。従って、圧力容器5の耐久性や信頼性が向上し、ガス化炉装置1を備えたプラントの安定した運転継続が可能になる。また、アニュラス部7へ流出した随伴ダストをダスト受け皿15に回収できるので、ガス化炉3内の清掃作業に要する手間も低減することができる。
【0033】
上述したガス化炉装置1は、石炭ガス化複合発電設備に適用することができる。石炭ガス化複合発電設備は、ガス化炉装置1で石炭をガス化した燃料でガスタービンを運転し、ガスタービンの出力で発電機を駆動して発電する。さらに、ガスタービンから排出される高温の排ガス(ガスタービンの排熱)を排熱回収ボイラに導入して蒸気を生成し、この蒸気で運転される蒸気タービンの出力でも発電機を駆動して発電するので、効率のよい発電設備と言われている。
【0034】
ところで、上述した実施形態では、タワー型のガス化炉3に適用して説明したが、ガス化炉内の炉内ガス温度がアニュラス部内のアニュラス温度よりも高い領域に均圧部を設けることについては、タワー型に限定されることはなく、たとえばクロスオーバ型のガス化炉等にも適用可能である。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 ガス化炉装置
3 ガス化炉
5 圧力容器
7 アニュラス部(圧力保持部)
9 熱交換器
11 均圧管
11a 開口出口
13 均圧部
15 ダスト受け皿
図1