【実施例】
【0022】
<構成>以下、構成について説明する。
【0023】
自動車などの車両には、車室内の温度調節を行うための空気調和装置(以下、空調装置という)が設けられている。
【0024】
図1は空調装置1の全体構成を示す系統図であり、この空調装置1は、冷媒2(冷却媒体)を循環させるようにしたループ状の冷媒流路3を備えており、この冷媒流路3の途中には、圧縮機4、凝縮器5、膨張弁6、蒸発器7が順に備えられ、これらによって冷媒サイクルが構成される。
【0025】
ここで、上記した圧縮機4は、冷媒2を吸引して圧縮するコンプレッサである。
【0026】
上記した凝縮器5は、圧縮機4で圧縮された冷媒2が持つ熱を放熱して凝縮するコンデンサである。冷媒2の熱は、熱交換によって車両の前部から取入れられる外気8(走行風など)などへ放出される。
【0027】
凝縮器5には、凝縮器5で凝縮された冷媒2を気液分離する液体タンク5a(レシーバドライヤー)や、この液体タンク5aで液化された冷媒2を更に凝縮する補助凝縮器5b(サブコンデンサ)などが付設される。
【0028】
上記した膨張弁6は、凝縮器5で凝縮された冷媒2を減圧すると共に流量を調節して蒸発器7の出口温度を制御する減圧機構である(以下、膨張弁には減圧弁も含まれるのとする)。
【0029】
上記した蒸発器7は、膨張弁6などの減圧機構で減圧された冷媒2を蒸発させるエバポレータである。蒸発器7は、車室に設置された空調ユニット9の内部に配置されて、空調ユニット9内を流れる空調用空気10から蒸発潜熱を奪うことにより、空調用空気10を除湿すると共に冷却する。
【0030】
そして、
図2〜
図4は、上記した蒸発器7の具体的な構造を示すものである。
【0031】
蒸発器7は、第1エバポレータ11と第2エバポレータ12とを備えており、第1エバポレータ11と第2エバポレータ12とは、一体のエバポレータ本体13として構成され、それぞれが、ほぼ同様の構造を備えたものとされる。
【0032】
即ち、第1エバポレータ11および第2エバポレータ12は、それぞれ上下に隔ててほぼ平行に配設された筒状のアッパタンク11a,12aおよびロワタンク11b,12b(
図6参照)と、ほぼ上下方向へ延びてこれらのアッパタンク11a,12aとロワタンク11b,12bとの間をそれぞれ連通する複数本の伝熱チューブ11c,12c(
図5参照)とを備えている。これにより、第1エバポレータ11および第2エバポレータ12は、面状または面格子状とされて、空調ユニット9内部の空気通路を覆うように設置することが可能となる。
【0033】
また、上記した複数本の伝熱チューブ11c,12cは、それぞれ、間を空調用空気10が通過し得るように、(アッパタンク11a,12aおよびロワタンク11b,12bの軸線方向へ)互いに間隔を有してほぼ平行に配設されている。複数本の伝熱チューブ11c,12cの間には、空調用空気10に対する熱交換効率を高めるための冷却フィン11d,12d(
図5参照)が取付けられている。
【0034】
そして、
図5は、蒸発器7の外部接続部14周辺が分かるように、
図2とは反対側から見た蒸発器7の斜視図である。なお、
図2〜
図4と、この
図5とでは、バイパス流路16の位置が異なるものとされている。即ち、
図2〜
図4では、バイパス流路16が、アッパタンク11a,12a間の上部の位置に配置されているのに対し、
図5では、バイパス流路16が、第1エバポレータ11のアッパタンク11aの、外側部の位置に配置されている。これらは、どちらであっても良い。
【0035】
そして、
図6〜
図8の概略図に示すように、アッパタンク11a,12aとロワタンク11b,12bとの内部を仕切部21によって任意の数(の千鳥状)に仕切ることにより、第1エバポレータ11および第2エバポレータ12の内部で、冷媒2が上下に折返しながら流れるようにする(複数パス化する)ことができる。これによって、空調用空気10に対する熱交換効率を向上し、或いは、調整することができる。
【0036】
例えば、
図6の場合、第1エバポレータ11のアッパタンク11aの内部(3分点の位置)を2つの仕切部21で3つの空間に仕切ると共に、ロワタンク11b,12bの内部(中央部)を1つの仕切部21で2つの空間に仕切ることにより、冷媒2を3回折返しさせるようにしている(4パス化)。
【0037】
また、第2エバポレータ12のアッパタンク12aの内部を1つの仕切部21で2つの空間に仕切ると共に、ロワタンク12bの内部を仕切らないようにすることにより、冷媒2を1回折返しさせるようにしている(2パス化)。
【0038】
よって、これらを合計すると、エバポレータ本体13の内部(中央部)で冷媒2を6パスさせることが可能となる。そして、この場合には、往路と復路とが共に複数パスとなっているため、外部接続部14と連通部15とが同じアッパタンク11a,12a側に位置されることになるので、即ち、外部接続部14と連通部15とが同じ高さに設置されるので、バイパス流路16は、ほぼアッパタンク11a,12aに沿って延びるバイパスチューブ16aに対して、連通部15で合流する合流部16bを設けたものとされる。
【0039】
また、例えば、
図7および
図8の場合、第1エバポレータ11および第2エバポレータ12のアッパタンク11a,12aの中央部よりも一側寄りの部分をそれぞれ1つの仕切部21で2つの空間に仕切ると共に、ロワタンク11b,12bの中央部よりも他側寄りの部分をそれぞれ1つの仕切部21で2つの空間に仕切ることにより、冷媒2を2回折返しさせるようにしている(3パス化)。
【0040】
よって、これらを合計すると、エバポレータ本体13の内部で冷媒2を6パスさせることが可能となる。そして、この場合には、往路と復路とが共に奇数パスとなっているため、外部接続部14がアッパタンク11a,12a側に位置されると共に、連通部15がロワタンク11b,12b側に位置されることになるので、即ち、外部接続部14と連通部15とが図中上下に分かれるので、バイパス流路16は、
図7に示すように、アッパタンク11a,12aに沿って延びるバイパスチューブ16aと、エバポレータ本体13の他側に沿って下方へ延びる取回部16cと、連通部15で合流する合流部16bとを有するものとされるか、または、
図8に示すように、アッパタンク11a,12aに沿って延びるバイパスチューブ16aに、第2エバポレータ12のアッパタンク12aなどへ直接合流される直接合流部16dなどが設けられたものとされることになる。
【0041】
但し、上記したような冷媒2のパス構成はこれに限るのではない。
【0042】
なお、バイパス流路16は、例えば、内部にオリフィスを有するチューブなどを用いたり、オリフィスと同じ効果を有するように小径化されたキャピラリーチューブを用いたり、これらを組合せたものを用いたりすることができる。このバイパス流路16は、アッパタンク11a,12aの近傍に平行に設置される。即ち、上記したように、アッパタンク11a,12aの間や、アッパタンク11aの側部などに沿って配設される。
【0043】
更に、
図9に示すように、このような蒸発器7には、アルミニウムなどの熱伝導率の高い金属板を、プレスによって、アッパタンク11a,12aの一部を構成する凸状開口部22(バーリング穴)と、ロワタンク11b,12bの一部を構成する凸状開口部23(バーリング穴。
図12、
図13参照)と、伝熱チューブ11c,12cの一部を構成する凹溝部24とを互いに繋がるように形成して成る積層プレート25を、凹溝部24間に伝熱チューブ11c,12cが形成されるように一対、背中合わせに組合せて単位モジュール26を構成し、この単位モジュール26を、アッパタンク11a,12aおよびロワタンク11b,12bの延設方向に対し複数枚積層固定することによって構成された積層型のものなどが存在する(積層型蒸発器)。
【0044】
この場合、積層プレート25は、第1エバポレータ11と第2エバポレータ12との一方または両方を形成するものとすることができる。この場合には、第1エバポレータ11と第2エバポレータ12との両方を同時に形成するものとしている。
【0045】
また、積層型の蒸発器7では、上記した仕切部21は、積層プレート25に対して、部分的に凸状開口部22、23を設けないようにする(凸状開口部22、23の代わりに凸状閉口部(エンボス部)とすることによって簡単に設けることができる。
【0046】
蒸発器7の外周部には、シール部材28が取付けられる。
【0047】
そして、例えば、
図6〜
図8に示すような、第1エバポレータ11と第2エバポレータ12とを並設して成るエバポレータ本体13を備えると共に、エバポレータ本体13が、その一側に少なくとも冷媒2を供給可能な外部接続部14を有し、他側に第1エバポレータ11と第2エバポレータ12とを連通可能な連通部15を有し、更に、エバポレータ本体13の一側から他側へ延びて、第1エバポレータ11をパイパス可能なバイパス流路16を有する蒸発器7に対して、この実施例のものでは、以下のような構成を備えるようにしている。
【0048】
(構成1)
例えば、上記したバイパス流路16の出口部に、第1エバポレータ11からの冷媒2の流れに対してバイパス流路16からの冷媒2を平行に合流させる整流用合流部31を設けるようにする。
【0049】
(補足説明1)
ここで、バイパス流路16の出口部とは、例えば、
図6、
図7および
図10に示すような合流部16bや、
図8および
図11に示すような直接合流部16dや、
図12または
図13に示すような屈曲形状部32cや屈曲用部材32dを取付けたものがある。これらについては後述する。
【0050】
平行とは、
図6、
図7および
図10や、
図8および
図11のように、第1エバポレータ11からの冷媒2の流れに対してバイパス流路16からの冷媒2がほぼ平行状態で合流することを意味している。
【0051】
(構成2)
また、例えば、上記したバイパス流路16の出口部に、第1エバポレータ11からの冷媒2の流れに対してバイパス流路16からの冷媒2を0度よりも大きく90度よりも小さい角度を有して合流させる整流用合流部31を設けるようにしても良い。
【0052】
(補足説明2)
ここで、0度よりも大きく90度よりも小さい角度を有してとは、文字通り、
図12または
図13に示すように、第1エバポレータ11からの冷媒2の流れに対してバイパス流路16からの冷媒2が0度よりも大きく90度よりも小さい角度αで合流することを意味している。
【0053】
(構成3)
より具体的には、上記した整流用合流部31が、バイパス流路16からの冷媒2の流れを、第1エバポレータ11からの冷媒2の流れに対して、平行に合流、または、0度よりも大きく90度よりも小さい角度を有して合流するよう方向変更可能な方向変更部とする。
【0054】
(補足説明3)
ここで、上記した方向変更部は、
図6、
図7、
図10、
図11に示すように、合流部16bを冷媒2の流れと平行になるように屈曲して成る屈曲形状部32aとすることができる。
【0055】
また、方向変更部は、
図8に示すように、直接合流部16dの端面を閉塞すると共に、外部接続部14側の側面に、冷媒2の流れと平行(または0度よりも大きく90度よりも小さい角度の方向)に向くような開口部やノズル部を設けてなる側部吹出口部32bとすることができる。
【0056】
更に、方向変更部は、
図12に示すように、取回部16cの終端部近傍を、連通部15側へ向けて0度よりも大きく90度よりも小さい角度に屈曲して成る屈曲形状部32cとすることができる。
【0057】
或いは、方向変更部は、
図13に示すように、取回部16cの終端部近傍に、上記した屈曲形状部32cと同様の形状をした別部材による屈曲用部材32dを取付けたものとすることができる。この場合、連通部15は、屈曲用部材32dを接続可能な大きさとなるよう若干拡大される。
【0058】
なお、
図12、
図13については、後述する。
【0059】
(構成4)
上記した整流用合流部31が、連通部15内に設けられるようにすることができる(連通部内整流用合流部)。
【0060】
(補足説明4)
ここで、上記した(連通部内)整流用合流部31は、
図6、
図7、
図10に示すようなものとされる。
【0061】
(構成5)
また、上記した整流用合流部31が、第1エバポレータ11または第2エバポレータ12の内部に設けられるようにすることもできる(エバポレータ内整流用合流部)。
【0062】
(補足説明5)
ここで、上記した(エバポレータ内)整流用合流部31は、
図8、
図11、および、
図12に示すようなものとされる。
【0063】
この場合、
図8、
図11では、(エバポレータ内)整流用合流部31は、第2エバポレータ12の内部に設けられている。
【0064】
また、
図12では、(エバポレータ内)整流用合流部31は、第1エバポレータ11の内部に設けられている。
【0065】
なお、
図13では、整流用合流部31は、第1エバポレータ11と連通部15との間に跨るように設けられている。
【0066】
そして、
図12、
図13の場合、第1エバポレータ11の最終段の伝熱チューブ11cを、第1エバポレータ11の他の部分(伝熱チューブ11cなど)から隔離して成る隔離伝熱チューブ35にして、バイパス流路16の取回部16cとして使用させるようにしている。この隔離伝熱チューブ35は、第1エバポレータ11のアッパタンク11aの内部を仕切部21(凸状閉口部)によって仕切ることによって構成される。
【0067】
なお、
図12、
図13に示すように、隔離伝熱チューブ35のロワタンク11bとの接続部分(屈曲形状部32cや屈曲用部材32dよりも下側の部分)については、冷媒2が流入しないように塞いでおくようにする(閉塞部35a)。
【0068】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0069】
この実施例では、バイパス流路16を流れる冷媒2は、第1エバポレータ11からの冷媒2の流れに対して平行に合流、または、0度よりも大きく90度よりも小さい角度を有して合流されることとなる。
【0070】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0071】
(効果1)
バイパス流路16の出口部に、第1エバポレータ11からの冷媒2の流れに対してバイパス流路16からの冷媒2を平行に合流させる整流用合流部31を設けたことにより、冷媒2の合流をよりスムーズに行わせて、整流用合流部31の流動抵抗を少なくし、冷媒2の流れを良くすることで、圧力損失の上昇を抑制することができる。
【0072】
(効果2)
バイパス流路16の出口部に、第1エバポレータ11からの冷媒2の流れに対してバイパス流路16からの冷媒2を0度よりも大きく90度よりも小さい角度を有して合流させる整流用合流部31を設けたことにより、冷媒2の合流をよりスムーズに行わせて、整流用合流部31の流動抵抗を少なくし、冷媒2の流れを良くすることで、圧力損失の上昇を抑制することができる。
【0073】
(効果3)
整流用合流部31が、バイパス流路16からの冷媒2の流れを、第1エバポレータ11からの冷媒2の流れに対して、平行に合流、または、0度よりも大きく90度よりも小さい角度を有して合流するよう方向変更可能な方向変更部であることにより、バイパス流路16からの冷媒2の流れを、方向変更部によって、第1エバポレータ11からの冷媒2の流れに対し、平行に合流、または、0度よりも大きく90度よりも小さい角度を有して合流するように強制的に方向変更させることができるようになる。
【0074】
(効果4)
整流用合流部31が、連通部15内に設けられたことにより、連通部15内で、冷媒2を平行に合流、または、0度よりも大きく90度よりも小さい角度を有して合流させることができるようになる。
【0075】
(効果5)
整流用合流部31が、第1エバポレータ11または第2エバポレータ12の内部に設けられたことにより、第1エバポレータ11または第2エバポレータ12の内部で冷媒2を平行に合流、または、0度よりも大きく90度よりも小さい角度を有して合流させることができるようになる。
【0076】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。