特許第6138436号(P6138436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138436
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20170522BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20170522BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20170522BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20170522BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20170522BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20170522BHJP
   H01M 2/34 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   H01M10/052
   H01M10/0568
   H01M10/0569
   H01M4/131
   H01M4/1391
   H01M10/0587
   H01M2/34 A
【請求項の数】18
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-177188(P2012-177188)
(22)【出願日】2012年8月9日
(65)【公開番号】特開2014-35925(P2014-35925A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101823
【弁理士】
【氏名又は名称】大前 要
(72)【発明者】
【氏名】戸出 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】南 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】藤原 豊樹
(72)【発明者】
【氏名】能間 俊之
【審査官】 小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−034893(JP,A)
【文献】 特開2007−180015(JP,A)
【文献】 特開2007−165125(JP,A)
【文献】 特開2001−143702(JP,A)
【文献】 特開2000−156246(JP,A)
【文献】 特開2012−114079(JP,A)
【文献】 特開2007−095656(JP,A)
【文献】 特開2013−097973(JP,A)
【文献】 特開2010−176980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052
H01M 2/34
H01M 4/131
H01M 4/1391
H01M 10/0568
H01M 10/0569
H01M 10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の正極と、
帯状の負極と、
前記正極と前記負極がセパレータを介して巻回された扁平状電極体と、
非水溶媒を含む非水電解質と、
開口部を有し、前記扁平状電極体及び前記非水電解質を収容する外装缶と、
前記開口部を封口する封口体と、を備え、電池容量が21Ah以上である一つの非水電解質二次電池であって、
前記正極は、正極芯体と、前記正極芯体上に形成されたリチウム含有遷移金属複合酸化物を含む正極活物質層と、を有し、
前記負極は、負極芯体と、前記負極芯体上に形成された負極活物質層と、を有し、
前記非水溶媒は、エチレンカーボネートを25℃、1気圧基準で30〜70体積%含み、
前記非水電解質は、リチウムビスオキサレートボレートを含み、
前記非水電解質中のリチウムビスオキサレートボレートの含有量は、0.05〜0.20モル/リットルであり、
前記正極活物質層の充填密度が2.0〜2.8g/mlであり、
前記正極は、前記正極の幅方向における一方の端部に、前記正極の長手方向に沿って、前記正極活物質層が形成されずに前記正極芯体が露出した正極芯体露出部を有し、
前記負極は、前記負極の幅方向における一方の端部に、前記負極の長手方向に沿って、前記負極活物質層が形成されずに前記負極芯体が露出した負極芯体露出部を有し、
前記正極芯体において前記正極活物質層が形成されていない部分であって前記正極活物質層と連続する領域には、絶縁性無機粒子、導電性無機粒子及び結着剤を含む正極保護層が形成されており、
前記扁平状電極体の一方の端部には巻回された前記正極芯体露出部が設けられ、他方の端部には巻回された前記負極芯体露出部が設けられ、
前記正極芯体露出部に正極集電板が接続され、
前記負極芯体露出部に負極集電板が接続され、
前記封口体には非水電解質注液孔が形成され、前記非水電解質注液孔は封止されており

前記正極保護層に含まれる前記結着剤の総質量は、前記正極保護層に含まれる前記絶縁性無機粒子の総質量よりも小さく、前記正極保護層に含まれる前記導電性無機粒子の質量割合よりも大きい非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記絶縁性無機粒子の平均粒径は0.1〜10μmであり、
前記正極保護層の厚みは、20μm以上で且つ前記正極活物質層の厚みの80%以下である請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記負極は、前記負極の幅方向における他方の端部に、前記負極の長手方向に沿って、前記負極芯体上に前記負極活物質層が形成されない領域を有し、
前記負極芯体上に前記負極活物質層が形成されない領域と、前記正極芯体の間に、前記正極保護層が設けられた請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
帯状の正極と、
帯状の負極と、
前記正極と前記負極がセパレータを介して巻回された扁平状電極体と、
非水溶媒を含む非水電解質と、
開口部を有し、前記扁平状電極体及び前記非水電解質を収容する外装缶と、
前記開口部を封口する封口体と、を備え、
前記正極は、正極芯体と、前記正極芯体上に形成されたリチウム含有遷移金属複合酸化物を含む正極活物質層と、を有し、
前記負極は、負極芯体と、前記負極芯体上に形成された負極活物質層と、を有し、
前記非水溶媒は、エチレンカーボネートを25℃、1気圧基準で30〜70体積%含み
記正極活物質層の充填密度が2.0〜2.8g/mlであり、
前記正極は、前記正極の幅方向における一方の端部に、前記正極の長手方向に沿って、前記正極活物質層が形成されずに前記正極芯体が露出した正極芯体露出部を有し、
前記負極は、前記負極の幅方向における一方の端部に、前記負極の長手方向に沿って、前記負極活物質層が形成されずに前記負極芯体が露出した負極芯体露出部を有し、
前記正極芯体において前記正極活物質層が形成されていない部分であって前記正極活物質層と連続する領域には、絶縁性無機粒子及び結着剤を含む正極保護層が形成されており、
前記絶縁性無機粒子の平均粒径は0.1〜10μmであり、
前記扁平状電極体の一方の端部には巻回された前記正極芯体露出部が設けられ、他方の端部には巻回された前記負極芯体露出部が設けられ、
前記正極芯体露出部に正極集電板が接続され、
前記負極芯体露出部に負極集電板が接続され、
電池容量が21Ah以上であり、
前記封口体に非水電解質注液孔が形成され、前記非水電解質注液孔は封止された一つの非水電解質二次電池の製造方法であって、
前記非水電解質注液孔から前記外装缶に、リチウムビスオキサレートボレートを含み、リチウムビスオキサレートボレートの含有量が0.05〜0.20モル/リットルである前記非水電解質を注入する注入工程と、
前記注入工程の後、前記非水電解質注液孔を封止する工程を有する非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記正極保護層は、導電性無機粒子を含む請求項4に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記正極保護層に含まれる前記結着剤の総質量は、前記正極保護層に含まれる前記絶縁性無機粒子の総質量よりも小さく、前記正極保護層に含まれる前記導電性無機粒子の質量割合よりも大きい請求項5に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記正極保護層の厚みは20μm以上である請求項4〜6のいずれかに記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項8】
前記負極は、前記負極の幅方向における他方の端部に、前記負極の長手方向に沿って、前記負極芯体上に前記負極活物質層が形成されない領域を有し、
前記負極芯体上に前記負極活物質層が形成されない領域と、前記正極芯体の間に、前記正極保護層が設けられた請求項4〜7のいずれかに記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項9】
前記正極芯体上に前記正極活物質層を形成し前記正極活物質層を圧縮した後、前記正極芯体上に正極保護層を設ける請求項4〜8のいずれかに記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項10】
前記注入工程において、前記非水電解質はジフルオロリン酸リチウムを含み
記注入工程において、前記非水電解質中のジフルオロリン酸リチウムの含有量は0.01〜0.10モル/リットルである請求項4〜9のいずれかに記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項11】
前記負極において、前記負極の幅方向における他方の端部では、前記負極芯体上に前記負極活物質層が形成されている請求項4〜7のいずれかに記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項12】
前記注入工程において、前記非水電解質はフルオロエチレンカーボネート及びγ―ブチロラクトンの少なくとも一方を含む請求項4〜11のいずれかに記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項13】
帯状の正極と、
帯状の負極と、
前記正極と前記負極がセパレータを介して巻回された扁平状電極体と、
非水溶媒を含む非水電解質と、
開口部を有し、前記扁平状電極体及び前記非水電解質を収容する外装缶と、
前記開口部を封口する封口体と、を備え、
前記正極は、正極芯体と、前記正極芯体上に形成されたリチウム含有遷移金属複合酸化物を含む正極活物質層と、を有し、
前記負極は、負極芯体と、前記負極芯体上に形成された負極活物質層と、を有し、
前記非水溶媒は、エチレンカーボネートを25℃、1気圧基準で30〜70体積%含み、
前記正極活物質層の充填密度が2.0〜2.8g/mlであり、
前記正極は、前記正極の幅方向における一方の端部に、前記正極の長手方向に沿って、前記正極活物質層が形成されずに前記正極芯体が露出した正極芯体露出部を有し、
前記負極は、前記負極の幅方向における一方の端部に、前記負極の長手方向に沿って、前記負極活物質層が形成されずに前記負極芯体が露出した負極芯体露出部を有し、
前記正極芯体において前記正極活物質層が形成されていない部分であって前記正極活物質層と連続する領域には、絶縁性無機粒子及び結着剤を含む正極保護層が形成されており、
前記絶縁性無機粒子の平均粒径は0.1〜10μmであり、
前記扁平状電極体の一方の端部には巻回された前記正極芯体露出部が設けられ、他方の端部には巻回された前記負極芯体露出部が設けられ、
前記正極芯体露出部に正極集電板が接続され、
前記負極芯体露出部に負極集電板が接続され、
前記封口体に非水電解質注液孔が形成され、前記非水電解質注液孔は封止された電池駆動自動車用の一つの非水電解質二次電池の製造方法であって、
前記非水電解質注液孔から前記外装缶に、リチウムビスオキサレートボレートを含み、リチウムビスオキサレートボレートの含有量が0.05〜0.20モル/リットルである前記非水電解質を注入する注入工程と、
前記注入工程の後、前記非水電解質注液孔を封止する工程を有する非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項14】
前記負極において、前記負極の幅方向における他方の端部では、前記負極芯体上に前記負極活物質層が形成されている請求項13に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項15】
前記注入工程において、前記非水電解質はフルオロエチレンカーボネート及びγ―ブチロラクトンの少なくとも一方を含む請求項13又は14に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項16】
帯状の正極と、
帯状の負極と、
前記正極と前記負極がセパレータを介して巻回された扁平状電極体と、
非水溶媒を含む非水電解質と、
開口部を有し、前記扁平状電極体及び前記非水電解質を収容する外装缶と、
前記開口部を封口する封口体と、を備え、
前記正極は、正極芯体と、前記正極芯体上に形成されたリチウム含有遷移金属複合酸化物を含む正極活物質層と、を有し、
前記負極は、負極芯体と、前記負極芯体上に形成された負極活物質層と、を有し、
前記非水溶媒は、エチレンカーボネートを25℃、1気圧基準で30〜70体積%含み、
前記正極活物質層の充填密度が2.0〜2.8g/mlであり、
前記正極は、前記正極の幅方向における一方の端部に、前記正極の長手方向に沿って、前記正極活物質層が形成されずに前記正極芯体が露出した正極芯体露出部を有し、
前記負極は、前記負極の幅方向における一方の端部に、前記負極の長手方向に沿って、前記負極活物質層が形成されずに前記負極芯体が露出した負極芯体露出部を有し、
前記正極芯体において前記正極活物質層が形成されていない部分であって前記正極活物質層と連続する領域には、絶縁性無機粒子、導電性無機粒子及び結着剤を含む正極保護層が形成されており、
前記扁平状電極体の一方の端部には巻回された前記正極芯体露出部が設けられ、他方の端部には巻回された前記負極芯体露出部が設けられ、
前記正極芯体露出部に正極集電板が接続され、
前記負極芯体露出部に負極集電板が接続され、
前記封口体には非水電解質注液孔が形成され、前記非水電解質注液孔は封止されており、
前記正極保護層に含まれる前記結着剤の総質量は、前記正極保護層に含まれる前記絶縁性無機粒子の総質量よりも小さく、前記正極保護層に含まれる前記導電性無機粒子の質量割合よりも大きい、電池駆動自動車用の一つの非水電解質二次電池の製造方法であって、
前記非水電解質注液孔から前記外装缶に、リチウムビスオキサレートボレートを含み、リチウムビスオキサレートボレートの含有量が0.05〜0.20モル/リットルである前記非水電解質を注入する注入工程と、
前記注入工程の後、前記非水電解質注液孔を封止する工程を有する非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項17】
前記負極において、前記負極の幅方向における他方の端部では、前記負極芯体上に前記負極活物質層が形成されている請求項16に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項18】
前記注入工程において、前記非水電解質はフルオロエチレンカーボネート及びγ―ブチロラクトンの少なくとも一方を含む請求項16又は17に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関し、詳しくは非水電解質二次電池のサイクル特性の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)などの二次電池を駆動電源とする電池駆動自動車が普及しつつあるが、電池駆動自動車には高出力・高容量な二次電池が必要である。
【0003】
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池は、高いエネルギー密度を有し、高容量である。また、電極芯体の両面に活物質層を設けた正負電極板を、セパレータを介して巻回ないし積層した電極体は、正負電極板の対向面積が大きく、大電流を取り出しやすい。このため、積層電極体や巻回電極体を用いた非水電解質二次電池は、上記用途に利用されている。
【0004】
ここで、特許文献1は、高出力電池において、電流を安定して取り出すための集電構造に関する技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-086780号公報
【0006】
特許文献1は、両端のそれぞれから、第1電極芯体及び第2電極芯体が、それぞれ複数枚直接重なり合った状態で突出した扁平状電極体と、前記第1電極芯体が複数枚直接重なり合った状態で突出した第1電極芯体集合領域であって、前記第1電極芯体の積層面に平行な一方の面に配置され、抵抗溶接された第1集電板と、を備える非水電解質二次電池において、前記第1集電板が取り付けられた領域と離間した他の領域に、前記直接重なり合い積層された第1電極芯体同士が溶融接着された第1電極芯体溶融接着部が形成されている技術を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車載用の電池には、集電構造の改良以外に、サイクル特性や生産性等を向上させる必要がある。しかしながら、上記特許文献1は、このような点について、何ら考慮がなされていない。
【0008】
本発明は、上記に鑑み、サイクル特性に優れた高容量な非水電解質二次電池を高い生産性で提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、正極と、負極と、を備える電極体と、非水溶媒を含む非水電解質と、を備える非水電解質二次電池において、前記正極は、正極芯体と、前記正極芯体上に形成された正極活物質層と、を有し、前記非水溶媒は、エチレンカーボネートを25℃、1気圧基準で30〜70体積%含み、前記非水電解質は、リチウムビスオキサレートボレートを含み、前記正極活物質層の充填密度が2.0〜2.8g/mlであることを特徴とする。
【0010】
この構成では、非水溶媒がエチレンカーボネートを30体積%以上含んでおり、これにより放電特性が高まる。また、非水電解質にリチウムビスオキサレートボレート(LiB(C)を含んでおり、これによりサイクル特性が高まる。
【0011】
しかしながら、エチレンカーボネートとリチウムビスオキサレートボレートとによって、非水電解質の粘性が高くなっており、正極板への浸透性が低くなっている。本発明では、上記非水電解質に組み合わされる正極板は、正極活物質層の充填密度が2.8g/ml以下であり、正極活物質層に十分な空隙が確保されている。したがって、上記のような粘性の高い非水電解質を用いても、浸透性が悪くなることがない。
【0012】
なお、エチレンカーボネートの含有量が多すぎると、非水電解質の粘性が高くなりすぎるので、上記正極を用いても浸透性が悪くなる。このため、エチレンカーボネートの含有量の上限は、70体積%とする。
【0013】
また、正極活物質層の充填密度を小さくし過ぎると、電池容量の低下を招くので、正極活物質層の充填密度の下限は、2.0g/mlとする。
【0014】
なお、正極活物質層の充填密度は、例えば、以下のようにして求めることができる。正極板を10cmに切り出し、電極板10cmの質量A(g)、正極板の厚みC(cm)を測定する。次いで、芯体10cmの質量B(g)、および芯体厚みD(cm)を測定する。そして、次の式から充填密度を求める。
充填密度(g/ml)=(A―B)/〔(C−D)×10cm
【0015】
また、リチウムビスオキサレートボレートの含有量が過少であると、十分な効果が得られないおそれがあり、他方、リチウムビスオキサレートボレートによる効果が上限に達する以上に添加すると、コスト高を招く。このため、リチウムビスオキサレートボレートの含有量は、0.05〜0.20モル/リットルであることが好ましい。
【0016】
なお、リチウムビスオキサレートボレートの好ましい含有量の範囲は、組立後かつ初回充電前の非水電解質二次電池中の非水電解質を基準としたものである。このような基準を設けた理由は、リチウムビスオキサレートボレートを含む非水電解質二次電池を充電すると、その含有量が徐々に低下してしまうからである。これは。充電時にリチウムビスオキサレートボレートの一部が負極上の被膜形成に消費されてしまうことが原因であると推察される。
【0017】
上記構成において、前記非水電解質はさらに、ジフルオロリン酸リチウムを含む構成とすることができる。
【0018】
非水電解質にジフルオロリン酸リチウム(LiPO)を含ませると、低温出力特性が高まるように作用するので好ましい。
【0019】
ジフルオロリン酸リチウムの含有量が過少であると、十分な効果が得られないおそれがあり、他方、ジフルオロリン酸リチウムによる効果が上限に達する以上に添加すると、コスト高を招く。このため、ジフルオロリン酸リチウムの含有量は、0.01〜0.10モル/リットルとすることが好ましい。
【0020】
なお、ジフルオロリン酸リチウムの好ましい含有量の範囲は、組立後かつ初回充電前の非水電解質二次電池中の非水電解質を基準としたものである。このような基準を設けた理由は、ジフルオロリン酸リチウムを含む非水電解質二次電池を充電すると、その含有量が徐々に低下してしまうからである。これは。充電時にジフルオロリン酸リチウムの一部が負極上の被膜形成に消費されてしまうことが原因であると推察される。
【0021】
電池容量が大きくなると、その分使用する正極活物質量が増加し、正極への非水電解質の浸透性が低下しやすい。しかしながら、本発明の構成を採用することにより、正極への非水電解質の浸透性を高めることができるので、電池容量が21Ah以上と高容量な非水電解質二次電池に本発明を適用すると、その効果が大きい。
【0022】
ここで、本発明において、電池容量とは、電池を21Aの定電流で電圧が4.1Vとなるまで充電し、その後定電圧4.1Vで1.5時間充電を行い、その後定電流21Aで電圧が2.5Vとなるまで放電したときの放電容量(初期容量)を意味する。なお、充放電は全て25℃条件で行うものとする。
【0023】
上記構成において、前記正極は、前記正極活物質層が形成されずに前記正極芯体が露出した正極芯体露出部を有し、前記正極芯体露出部であって前記正極活物質層と連続する領域には、絶縁性無機粒子と導電性無機粒子とを有する正極保護層が形成されている構成とすることができる。
【0024】
上記構成では、正極芯体露出部には、絶縁性無機粒子と導電性無機粒子とを有する正極保護層が正極活物質層と連続して形成されており、この正極保護層により正極活物質層への非水電解質の浸透性がさらに高まる。また、この正極保護層は導電性無機粒子と絶縁性無機粒子とを含んでおり、正極芯体よりも導電性が低いので、正極保護層と負極芯体等とが導電性異物の混入によって内部短絡が生じた場合に、弱い内部短絡電流を流し続けることができ、これにより電池を安全な状態へと移行させることができる。
【0025】
この正極保護層の導電性は、導電性無機粒子と、絶縁性無機粒子と、の混合比により制御することができる。また、正極保護層は、粒子相互間及び粒子と正極芯体とを密着させる結着剤を含んでいることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、サイクル特性に優れた非水電解質二次電池を高い生産性で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明にかかる非水電解質二次電池の斜視図である。
図2図2は、本発明にかかる非水電解質二次電池に用いる電極体を示す図である。
図3図3は、実施の形態1にかかる非水電解質二次電池に用いる正負電極板を示す平面図である。
図4図4は、実施の形態2にかかる非水電解質二次電池に用いる正負電極板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施の形態1)
以下に、本発明に係る角形電池をリチウムイオン二次電池に適用した場合について、図面を用いて説明する。図1は、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池を示す図であり、図2は、リチウムイオン二次電池に用いる電極体を示す図であり、図3は、実施の形態1にかかる非水電解質二次電池に用いる正負電極板を示す平面図である。
【0029】
図1に示すように、本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池は、開口部を有する角形の外装缶1と、外装缶1の開口部を封止する封口体2と、封口体2から外部に突出した正負極外部端子5,6と、を有している。
【0030】
また、図3に示すように、電極体を構成する正極板20は、帯状の正極芯体の長手方向に沿った少なくとも一方端が露出した正極芯体露出部22aと、正極芯体上に形成された正極活物質層21と、を有している。また、負極板30は、帯状の負極芯体の長手方向に沿った一方端が露出した第1の負極芯体露出部32aと、負極芯体上に形成された負極活物質層31と、を有している。
【0031】
電極体10は、正極と負極とが、ポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレータを介して巻回されてなる。図2に示すように、電極体10の一方端部から正極芯体露出部22aが、電極体10の他方端部から負極芯体露出部32aが、それぞれ突出するように構成されており、正極芯体露出部22aには正極集電板14が、負極芯体露出部32aには負極集電板15がそれぞれ取り付けられている。
【0032】
この電極体10は、非水電解質とともに上記外装缶1内に収容され、正極集電板14及び負極集電板15がそれぞれ、封口体2と絶縁した状態で封口体2から突出した外部端子5,6と電気的に接続され、電流が外部に取り出される構造である。
【0033】
この非水電解質は、非水溶媒と、これに溶解された電解質塩とを含んでいる。そして、非水溶媒は、エチレンカーボネートを25℃、1気圧条件で30〜70体積%含み、非水電解質は、電解質塩としてのリチウムビスオキサレートボレートを含んでいる。エチレンカーボネートにより放電特性が高められ、リチウムビスオキサレートボレートにより、サイクル特性が高められている。
【0034】
また、正極活物質層の充填密度が2.0〜2.8g/mlとなっており、正極活物質層の空隙が十分に確保されている。30体積%以上のエチレンカーボネートとリチウムビスオキサレートボレートとによって、非水電解質の粘性が高くなっているが、正正極活物質層の充填密度が2.0〜2.8g/mlであるために、正極活物質層への非水電解質の浸透性が悪くなることがない。
【0035】
また、電池容量が21Ah以上の高容量の電池においては、非水電解質の浸透性が顕著に低くなり易いので、本発明をこのような電池に適用することが好ましい。
【0036】
次に、上記構造のリチウムイオン二次電池の作製方法について説明する。
【0037】
<正極板の作製>
リチウム含有ニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.35Co0.35Mn0.3)からなる正極活物質と、アセチレンブラックまたはグラファイト等の炭素系導電剤と、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)からなる結着剤とを、質量比88:9:3の割合で量り採り、これらをN−メチル−2−ピロリドンからなる有機溶剤等に溶解させた後、混合し、正極活物質スラリーを調製する。
【0038】
次に、ダイコーターまたはドクターブレード等を用いて、帯状のアルミニウム箔(厚さが20μm)からなる正極芯体22の両面に、この正極活物質スラリーを均一な厚みで塗布する。ただし、正極芯体22の長手方向に沿う一方の端部(両面ともに同一方向の端部)にはスラリーを塗布せず、その芯体を露出させて、正極芯体露出部22aを形成する。
【0039】
この極板を乾燥機内に通して上記有機溶剤を除去し、乾燥極板を作製する。この乾燥極板を、ロールプレス機を用いて圧延する。この後、所定のサイズに裁断して、正極板20を作製する。
【0040】
<負極板の作製>
黒鉛からなる負極活物質と、スチレンブタジエンゴムからなる結着剤と、カルボキシメチルセルロースからなる増粘剤とを、質量比98:1:1の割合で量り採り、これらを適量の水と混合し、負極活物質スラリーを調製する。
【0041】
次に、ダイコーターまたはドクターブレード等を用いて、帯状の銅箔(厚さが12μm)からなる負極芯体32の両面に、この負極活物質スラリーを均一な厚さで塗布する。ただし、負極芯体32の長手方向に沿う一方の端部にはスラリーを塗布せず、その芯体を露出させて、負極芯体露出部32aを形成する。
【0042】
この極板を乾燥機内に通して水分を除去し、乾燥極板を作製する。その後、この乾燥極板を、ロールプレス機により圧延し、所定のサイズに裁断して、負極板30を作製する。
【0043】
<電極体の作製>
上記正極と負極とポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータとを、図3に示すように、正極芯体露出部22aと負極芯体露出部32aと、が巻回方向に対し互いに逆向きに突出し、且つ、異なる活物質層間にはオレフィン樹脂製のセパレータが介在するように3つの部材を位置合わせし重ね合わせ、巻き取り機により巻回し、絶縁性の巻き止めテープを設け、その後プレスして扁平状の電極体を完成させる。
【0044】
<集電板と封口体との接続>
一方面側に突出した凸部(図示せず)が2つ、離間して設けられたアルミニウム製の正極集電板14及び銅製の負極集電板15をそれぞれ1つと、一方面側に突出した凸部が1つ設けられたアルミニウム製の正極集電板受け部品(図示せず)及び銅製の負極集電板受け部品(図示せず)をそれぞれ2つ準備する。この正極集電板14、負極集電板15、正極集電板受け部品、及び負極集電板受け部品の凸部を囲うように、絶縁テープを貼り付ける。
【0045】
封口体2に設けられた貫通穴(図示せず)の内面、及び貫通穴の周囲の電池外側表面にガスケット(図示せず)を配置し、封口体2に設けた貫通穴の周囲の電池内側表面に絶縁部材(図示せず)を配置する。そして、封口板2の電池内側表面に位置する絶縁部材上に、上記正極集電板14を封口体2の貫通穴と集電板に設けられた貫通穴(図示せず)とが重なるように位置させる。その後、鍔部(図示せず)と、挿入部(図示せず)と、を有する正極外部端子5の挿入部を、電池外側から封口体2の貫通穴および集電板の貫通穴に挿通させる。この状態で挿入部の下部(電池内側部)の径を広げて、正極集電板14と共に正極外部端子5を封口体2にカシメ固定する。
【0046】
負極側についても同様にして、負極集電板15と共に負極外部端子6を封口体2にカシメ固定する。これらの作業により各部材が一体化されると共に、正負電極集電板14,15と正負電極外部端子5,6とが、それぞれ通電可能に接続される。また、正負電極外部端子5,6が封口体2と絶縁された状態で封口体2から突出した構造となる。
【0047】
<集電板の取り付け>
扁平状電極体の正極11の芯体露出部の一方面に、上記正極集電板14を、凸部が正極芯体露出部22a側となるようにしてあてがう。そして、上記正極集電板受け部品を1つ、凸部が正極芯体露出部22a側となるように、且つ正極集電板14の1つの凸部と正極集電板受け部品の凸部とが対向するようにして、正極芯体露出部22aにあてがう。この後、正極集電板14の凸部の裏側、及び正極集電板受け部品の凸部の裏側に一対の溶接用電極を押し当て、一対の溶接用電極に電流を流して、正極集電板14および正極集電板受け部品を正極芯体露出部22aに抵抗溶接する。
【0048】
次いで、もう1つの正極集電板受け部品を、凸部が正極芯体露出部22a側となるように、且つ正極集電板14のもう1つの凸部と正極集電板受け部品の凸部とが対向するようにして、正極芯体露出部22aにあてがう。この後、正極集電板14の凸部の裏側、及び正極集電板受け部品の凸部の裏側に一対の溶接用電極を押し当て、一対の溶接用電極に電流を流して、2点目の抵抗溶接を行う。これらの作業により、正極集電板14及び正極集電板受け部品が正極芯体露出部22aに固定される。
【0049】
負極12についても同様にして、上記負極集電板15及び上記負極集電板受け部品を第1の負極芯体露出部32aに抵抗溶接する。
【0050】
<非水電解質の調製>
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比3:7の割合(1気圧、25℃と換算した場合における)で混合した非水溶媒に、電解質塩としてのLiPF6を1.0M(モル/リットル)の割合で溶解したものをベース電解液となす。このベース電解液に、0.3質量%のビニレンカーボネートと、0.1モル/リットルのリチウムビスオキサレートボレート(LiB(C)を添加して、非水電解質となす。
【0051】
<電池の組み立て>
封口体2と一体化された電極体10を外装缶1内に挿入して外装缶1の開口部に封口体2を嵌合し、封口体2の周囲と外装缶1の接合部をレーザ溶接し、封口体2に設けられた非水電解質注入孔(図示せず)から所定量の上記非水電解質を注入した後、この非水電解質注入孔を密閉する。
【0052】
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2にかかる非水電解質二次電池に用いる正負電極板を示す平面図である。本実施の形態は、図4に示すように、正極板20は、正極芯体露出部22aの正極活物質層21近傍には、正極保護層23が、正極活物質層21と連続して設けられている構成であり、負極板30は、帯状の負極芯体の長手方向に沿った両方端が露出した負極芯体露出部32a・32bと、負極芯体上に形成された負極活物質層31と、を有している構成であること以外は、上記実施の形態1と同様である。このため、相違点以外の構成についての説明は省略する。
【0053】
生産性向上の観点から、正負電極板の作製の際に、1枚の電極板よりも幅広の電極芯体を用い、複数枚分の活物質層等を同時形成した後、所定幅・長さに裁断して、複数枚の電極板を得ることが行われている。ここで、リチウム含有遷移金属複合酸化物を正極活物質として用いた正極板の場合、正極活物質層21上で裁断しても正極活物質層21から活物質が剥がれる等の問題が生じないので、このような裁断方法が採用される。
【0054】
他方、炭素材料を負極活物質として用いた負極板の場合、活物質層上や活物質層と芯体露出部との境界で裁断すると、活物質層から活物質が剥がれてしまうおそれがある。当該剥がれ落ち材料は、導電性の異物となって正負電極の内部短絡を引き起こすおそれがある。このため、導電性異物が生じないように、負極活物質層相互間に芯体露出部を設け、この芯体露出部で裁断を行う。このため、得られる負極板は、負極活物質層31の両側に、負極芯体露出部32a・32bが形成された構造となる。
【0055】
この場合、導電性の高い正極芯体と負極芯体とが対向配置されることになり、この芯体対向領域で短絡が生じると、大電流が流れて電池が破裂等に至る危険性がある。このため、図4に示すように、正極活物質層21に連続する正極芯体露出部22aに正極芯体よりも導電性の低い層(正極保護層)23を設けて、大電流が流れることを防止する構成を採用することが好ましい。この正極保護層23は、正極活物質層21への非水電解質の浸透を促進する層としても機能する。
【0056】
すなわち、本実施の形態によると、実施の形態1よりも注液性に優れた非水電解質二次電池を、実施の形態1よりも高い生産性で提供できる。
【0057】
ここで、正極保護層としては、無機粒子と、結着剤と、を含んでなる構成とすることが好ましい。無機粒子としては、黒鉛粒子や炭素粒子のような導電性無機粒子や、ジルコニア、アルミナ、チタニア等の絶縁性無機粒子(絶縁性金属酸化物粒子)を用いることができる。また、結着剤としては、アクリロニトリル系結着剤、フッ素系結着剤等を用いることができる。
【0058】
ここで、正極保護層が導電性無機粒子を含む場合には、芯体が対向する領域で導電性異物による内部短絡が生じた場合に、弱い内部短絡電流を流し続けることができ、これにより電池を安全な状態へと移行させることができる。導電性を制御するために、導電性無機粒子と絶縁性無機粒子とを混合することもできる。
【0059】
また、無機粒子として、正極芯体材料とのコントラストが大きな材料を用いると、保護層の形成不良を視覚的な手段で検知することができるという利点がある。例えば、正極芯体として純アルミニウムやアルミニウム合金を用い、無機粒子が黒鉛粒子を含む場合には、両者のコントラストが大きくなる。
【0060】
無機粒子の平均粒径は、0.1〜10μmであることが好ましい。また、生産性やエネルギー密度の観点から、正極保護層の幅は、正極芯体露出部の幅の10〜50%であることが好ましい。また、生産性の観点から、正極保護層の厚みは、正極活物質層の厚み以下とすることが好ましく、20μm以上で且つ正極活物質層の厚みの80%以下とすることがより好ましい。
【0061】
次に、正極保護層の作製方法について説明する。実施の形態1と同様にして、正極の乾燥極板を作製する。この乾燥極板を、ロールプレス機を用いて圧延する。この後、正極活物質層21に連続する正極芯体露出部22aに、絶縁性無機粒子としてのアルミナを53質量部と、導電性無機粒子兼着色剤としてのカーボンを2質量部と、結着剤としてのポリビニリデンフルオライド(PVDF)を9質量部と、溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドンを36質量部と混合した正極保護層スラリーを塗布し、乾燥して、正極保護層23を形成する。この後、所定のサイズに裁断して、正極板20を作製する。
【0062】
(追加事項)
正極活物質としては、例えばリチウム含有ニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNiCoMn、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)、リチウム含有コバルト複合酸化物(LiCoO)、リチウム含有ニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウム含有ニッケルコバルト複合酸化物(LiCoNi1−x)、リチウム含有マンガン複合酸化物(LiMnO)、スピネル型マンガン酸リチウム(LiMn)、またはこれらの酸化物に含まれる遷移金属の一部を他の元素(例えば、Ti,Zr,Mg,Al等)で置換した化合物等のリチウム含有遷移金属複合酸化物を単独で、あるいは二種以上を混合して用いることができる。
【0063】
また、負極活物質としては、例えば天然黒鉛、カーボンブラック、コークス、ガラス状炭素、炭素繊維、あるいはこれらの焼成体等の炭素材料を単独で、あるいは二種以上を混合して用いることができる。
【0064】
また、非水溶媒としては、エチレンカーボネートに加えて、例えば、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート等の環状カーボネートや、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン等のリチウム塩の溶解度が高い高誘電率溶媒と、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジオキソラン、2−メトキシテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸エチル等のカルボン酸エステル等の低粘性溶媒と、を混合させて用いることができる。さらに、前記高誘電率溶媒や低粘性溶媒をそれぞれ二種以上の混合溶媒とすることもできる。
【0065】
また、電解質塩としては、リチウムビスオキサレートボレートやジフルオロリン酸リチウムに加えて、例えばLiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiAsF、LiClO4、Li10Cl10、Li12Cl12、LiB(C)F、LiP(C、LiP(C、LiP(C)F等のリチウム塩(ベース電解質塩)を1種以上混合して用いることができる。非水電解質における電解質塩の合計濃度は、0.5〜2.0M(モル/リットル)であることが好ましい。
【0066】
また、非水電解質に、ビニレンカーボネート、シクロヘキシルベンゼン、tert−アミルベンゼン等の公知の添加剤を添加することもできる。
【0067】
セパレータとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンやこれらの混合物ないし積層物等のオレフィン樹脂からなる微多孔膜を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明によると、高容量な非水電解質二次電池を高い生産性で提供することができる。よって、本発明の産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0069】
1 外装缶
2 封口体
5,6 電極端子
10 電極体
14 正極集電板
15 負極集電板
20 正極板
21 正極活物質層
22a 正極芯体露出部
23 正極保護層
30 負極板
31 負極活物質層
32a・32b 負極芯体露出部
図1
図2
図3
図4