(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各組の出力段に流れるインダクタ電流が互いに一致するように前記誤差信号を補正して各組毎の誤差信号を生成する電流平衡回路をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
前記誤差増幅回路と前記スイッチ制御回路は、半導体装置に集積化されており、前記出力段は、前記半導体装置に外付けされていることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の電源装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、第1従来例の電源装置100では、電源電圧Vccの供給を受けて動作する制御部107に対して、電源電圧Vccよりも高い入力電圧Viを基準とする電圧信号VswHを直接入力することができず、Vi基準の電圧信号VswHをVcc基準の電圧信号VswH’に変換するレベルシフタ110が必要であった(
図17を参照)。
【0007】
一方、第2従来例の電源装置200では、第1従来例の課題を解消し得るものの、微小な両端電圧ΔV(数mV)を増幅するために設けられたアンプ209の出力特性に応じてインダクタ電流ILの波形と増幅信号DETの波形が一致しなくなり、電流モード制御の安定性が低下するという問題があった(
図18を参照)。
【0008】
本発明は、本願の発明者により見出された上記の問題点に鑑み、回路規模の増大を抑えつつ電流モード制御の安定性を高めることのできる電源装置、及び、これを用いた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る電源装置は、インダクタ電流をスイッチング制御して入力電圧から出力電圧を生成する出力段と、前記出力電圧とその目標値との誤差に応じた誤差信号を生成する誤差増幅回路と、前記誤差信号が小さくなるように前記出力段の駆動制御を行うスイッチ制御回路と、を有し、前記スイッチ制御回路は、前記インダクタ電流に応じた検出信号を増幅して増幅検出信号を生成するアンプと、前記増幅検出信号よりも振幅の大きいランプ信号を生成するランプ信号生成部と、前記増幅検出信号と前記ランプ信号とを足し合わせて基準信号を生成する加算部と、前記誤差信号と前記基準信号とを比較して比較信号を生成するコンパレータと、クロック信号と前記比較信号に応じてスイッチ制御信号を生成するロジック部と、前記スイッチ制御信号に応じて前記出力段の駆動制御を行うドライバと、を含む構成(第1の構成)とされている。
【0010】
なお、第1の構成から成る電源装置において、前記ランプ信号生成部は、前記入力電圧が高いほど前記ランプ信号の上昇傾きを大きくする構成(第2の構成)にするとよい。
【0011】
また、第1または第2の構成から成る電源装置において、前記ランプ信号生成部は、前記ランプ信号をゼロよりも高い信号値にバイアスする構成(第3の構成)にするとよい。
【0012】
また、第1〜第3いずれかの構成から成る電源装置は、前記クロック信号を生成する発振回路をさらに有する構成(第4の構成)にするとよい。
【0013】
また、第4の構成から成る電源装置において、前記発振回路は、前記出力電圧の変動を抑制するように前記クロック信号の発振周波数を可変制御する構成(第5の構成)にするとよい。
【0014】
また、第1〜第5いずれかの構成から成る電源装置において、前記誤差増幅回路は、非反転入力端が参照電圧の印加端に接続されたオペアンプと、前記出力電圧の印加端と前記オペアンプの反転入力端との間に接続された抵抗と、前記オペアンプの反転入力端と出力端との間に接続されたキャパシタと、を含む構成(第6の構成)にするとよい。
【0015】
また、第1〜第5いずれかの構成から成る電源装置において、前記誤差増幅回路は、非反転入力端が参照電圧の印加端に接続された電流アンプと、前記出力電圧を分圧して前記電流アンプの反転入力端に出力する分圧回路と、前記電流アンプの出力端と接地端との間に接続されたキャパシタと、を含む構成(第7の構成)としてもよい。
【0016】
また、第1〜第7いずれかの構成から成る電源装置において、前記検出信号は、センス抵抗またはインダクタ抵抗を利用して検出される構成(第8の構成)にするとよい。
【0017】
また、第1〜第8いずれかの構成から成る電源装置において、前記出力段は、降圧型、昇圧型、または、昇降圧型である構成(第9の構成)にするとよい。
【0018】
また、第1〜第9いずれかの構成から成る電源装置において、前記誤差増幅回路と前記スイッチ制御回路は、半導体装置に集積化されており、前記出力段は、前記半導体装置に外付けされている構成(第10の構成)にするとよい。
【0019】
また、第1〜第10いずれかの構成から成る電源装置は、前記出力段と前記スイッチ制御回路を複数組有し、各組のスイッチ制御回路は、互いに異なる位相で、各々に対応する出力段の駆動制御を行う構成(第11の構成)にするとよい。
【0020】
また、第11の構成から成る電源装置は、各組の出力段に流れるインダクタ電流が互いに一致するように前記誤差信号を補正して各組毎の誤差信号を生成する電流平衡回路をさらに有する構成(第12の構成)にするとよい。
【0021】
また、本発明に係る電子機器は、第1〜第12いずれかの構成から成る電源装置と、前記電源装置から出力電圧の供給を受けて動作する負荷と、を有する構成(第13の構成)とされている。
【0022】
なお、第13の構成から成る電子機器において、前記負荷は、演算処理装置またはメモリである構成(第14の構成)にするとよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、回路規模の増大を抑えつつ電流モード制御の安定性を高めることのできる電源装置、及び、これを用いた電子機器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
図1は、電源装置Xの第1実施形態を示す図である。本構成例の電源装置Xは、半導体装置1と、これに外付けされる種々のディスクリート部品(Nチャネル型MOS[metal oxide semiconductor]電界効果トランジスタN11及びN12、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタN21及びN22、インダクタL1及びL2、センス抵抗R1及びR2、並びに、キャパシタCo)と、を有する。
【0026】
トランジスタN11のドレインは、入力電圧Viの印加端に接続されている。トランジスタN11のソースとトランジスタN12のドレインは、いずれもインダクタL1の第1端に接続されている。トランジスタN12のソースは、接地端に接続されている。トランジスタN11及びN12のゲートは、それぞれ、ゲート信号G11及びG12の印加端に接続されている。インダクタL1の第2端は、センス抵抗R1を介して出力電圧Voの印加端に接続されている。これらのディスクリート部品(N11、N12、L1、及び、R1)は、インダクタ電流IL1をスイッチング制御して入力電圧Viから出力電圧Voを生成する降圧型の出力段OS1を形成している。
【0027】
トランジスタN21のドレインは、入力電圧Viの印加端に接続されている。トランジスタN21のソースとトランジスタN22のドレインは、いずれもインダクタL2の第1端に接続されている。トランジスタN22のソースは、接地端に接続されている。トランジスタN21及びN22のゲートは、それぞれ、ゲート信号G21及びG22の印加端に接続されている。インダクタL2の第2端は、センス抵抗R2を介して出力電圧Voの印加端に接続されている。これらのディスクリート部品(N21、N22、L2、及び、R2)は、インダクタ電流IL2をスイッチング制御して入力電圧Viから出力電圧Voを生成する降圧型の出力段OS2を形成している。
【0028】
なお、出力電圧Voの印加端と接地端との間には、負荷Zと並列に、出力平滑用のキャパシタCoが接続されている。
【0029】
半導体装置1は、スイッチ制御回路10及び20と、誤差増幅回路30と、発振回路40と、を集積化したモノリシック半導体集積回路装置(いわゆるマルチフェイズ型スイッチングレギュレータIC)である。
【0030】
スイッチ制御回路10は、出力電圧Voと内部基準電圧(目標値に相当)が等しくなるように生成された誤差信号Vcompに応じてゲート信号G11及びG12を生成することにより、出力段OS1の駆動制御を行う回路ブロックであって、ドライバ11と、RSフリップフロップ12と、コンパレータ13と、電流アンプ(gmアンプ)14と、ランプ信号生成部15と、加算部16と、を含む。
【0031】
ドライバ11は、スイッチ制御信号S12に応じてゲート信号G11及びG12を生成することにより、出力段OS1の駆動制御を行う。より具体的に述べると、ドライバ11は、スイッチ制御信号S12がハイレベルであるときには、上側のトランジスタN11をオンとして、下側のトランジスタN12をオフとするように、逆に、スイッチ制御信号S12がローレベルであるときには、上側のトランジスタN11をオフとして、下側のトランジスタN12をオフとするように、ゲート信号G11及びG12を生成する。
【0032】
RSフリップフロップ12は、クロック信号CLK1と比較信号S11に応じてスイッチ制御信号S12を生成するロジック部に相当する。より具体的に述べると、RSフリップフロップ12は、セット端(S)に入力されるクロック信号CLK1の立上りエッジをトリガとしてスイッチ制御信号S12をハイレベルにセットし、リセット端(R)に入力される比較信号S11の立上りエッジをトリガとしてスイッチ制御信号S12をローレベルにリセットする。
【0033】
コンパレータ13は、反転入力端(−)に印加される誤差信号Vcompと非反転入力端(+)に印加される基準信号V12とを比較して比較信号S11を生成する。従って、比較信号S11は、基準信号V12が誤差信号Vcompよりも低いときにローレベルとなり、逆に、基準信号V12が誤差信号Vcompよりも高いときにハイレベルとなる。
【0034】
電流アンプ14は、センス抵抗R1の両端電圧ΔV1(インダクタ電流IL1に応じた検出信号に相当)を増幅して電流信号I1(増幅検出信号に相当)を生成する。このように、インダクタ電流IL1を検出するための手段として、センス抵抗R1を利用する構成であれば、トランジスタN11のオン抵抗を利用する構成(
図15)と異なり、入力電圧Viと電源電圧Vccとが異なる場合でもレベルシフタが不要となる。
【0035】
ランプ信号生成部15は、スイッチ制御信号S12に応じて鋸波形のランプ信号V11を生成する。
【0036】
加算部16は、電流信号I1(より正確には電流信号I1をI/V変換して得られる電圧信号V10)とランプ信号V11とを足し合わせて基準信号V12を生成する。
【0037】
スイッチ制御回路20は、出力電圧Voと内部基準電圧(目標値に相当)が等しくなるように生成された誤差信号Vcompに応じてゲート信号G21及びG22を生成することにより、出力段OS2の駆動制御を行う回路ブロックであって、ドライバ21と、RSフリップフロップ22と、コンパレータ23と、電流アンプ(gmアンプ)24と、ランプ信号生成部25と、加算部26と、を含む。
【0038】
ドライバ21は、スイッチ制御信号S22に応じてゲート信号G21及びG22を生成することにより、出力段OS2の駆動制御を行う。より具体的に述べると、ドライバ21は、スイッチ制御信号S22がハイレベルであるときには、上側のトランジスタN21をオンとして、下側のトランジスタN22をオフとするように、逆に、スイッチ制御信号S22がローレベルであるときには、上側のトランジスタN21をオフとして、下側のトランジスタN22をオフとするように、ゲート信号G21及びG22を生成する。
【0039】
RSフリップフロップ22は、クロック信号CLK2と比較信号S21に応じてスイッチ制御信号S22を生成するロジック部に相当する。より具体的に述べると、RSフリップフロップ22は、セット端(S)に入力されるクロック信号CLK2の立上りエッジをトリガとしてスイッチ制御信号S22をハイレベルにセットし、リセット端(R)に入力される比較信号S21の立上りエッジをトリガとしてスイッチ制御信号S22をローレベルにリセットする。
【0040】
コンパレータ23は、反転入力端(−)に印加される誤差信号Vcompと非反転入力端(+)に印加される基準信号V22とを比較して比較信号S21を生成する。従って、比較信号S21は、基準信号V22が誤差信号Vcompよりも低いときにローレベルとなり、逆に、基準信号V22が誤差信号Vcompよりも高いときにハイレベルとなる。
【0041】
電流アンプ24は、センス抵抗R2の両端電圧ΔV2(インダクタ電流IL2に応じた検出信号に相当)を増幅して電流信号I2(増幅検出信号に相当)を生成する。
【0042】
ランプ信号生成部25は、スイッチ制御信号S22に応じて鋸波形のランプ信号V21を生成する。
【0043】
加算部26は、電流信号I2(より正確には電流信号I2をI/V変換して得られる電圧信号V20)とランプ信号V21とを足し合わせて基準信号V22を生成する。
【0044】
誤差増幅回路30は、出力電圧Voとその目標値との誤差に応じた誤差信号Vcompを生成する。
【0045】
発振回路40は、互いに位相の異なるクロック信号CLK1及びCLK2を生成する。また、発振回路40は、出力電圧Voの変動を抑制するようにクロック信号CLK1及びCLK2の発振周波数を可変制御する機能を備えている。
【0046】
図2は、電源装置Xの出力動作を説明するためのタイミングチャートであり、上から順に、出力電流Io、出力電圧Vo、クロック信号CLK1及びCLK2、誤差信号Vcomp、基準信号V12(実線)及びV22(破線)、並びに、スイッチ制御信号S12及びS22が描写されている。
【0047】
第1実施形態の電源装置Xは、2組の出力段OS1及びOS2とスイッチ制御回路10及び20を有し、各組のスイッチ制御回路10及び20は、
図2で示したように、互いに異なる位相で、各々に対応する出力段OS1及びOS2の駆動制御を行う。各組の出力段OS1及びOS2は、負荷Zに対して並列に接続されており、各々の出力を足し合わせることで、入力電圧Vinから所望の出力電圧Voutが生成される。
【0048】
このように、マルチフェイズ型の電源装置Xであれば、負荷Zに大きな電流を出力することができるので、消費電流の大きい負荷Z(CPU[central processing unit]、GPU[graphics processing unit]、ないしは、メモリなど)の電源として好適に用いることができる。
【0049】
なお、
図2では、出力電流Ioの急上昇に起因して出力電圧Voが急低下したとき、発振回路40によってクロック信号CLK1及びCLK2の発振周波数が高められている。このような構成とすることにより、出力電圧Voの変動を抑制することが可能となる。
【0050】
図3は、ランプ信号生成部15及び加算部16の一構成例を示す図である。本構成例のランプ信号生成部15は、充電電流生成回路151と、キャパシタ152と、定電圧源153と、スイッチ154及び155と、インバータ156と、を含む。
【0051】
充電電流生成回路151は、キャパシタ152の充電電流Iaを生成する回路ブロックであり、抵抗a1〜a3と、定電流源a4と、pnp型バイポーラトランジスタa5と、npn型バイポーラトランジスタa6と、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタa7及びa8と、を含む。
【0052】
抵抗a1及びa2は、入力電圧Viの印加端と接地端との間に直列接続されている。トランジスタa5のエミッタは、トランジスタa6のベースに接続されている。トランジスタa5のコレクタは、接地端に接続されている。トランジスタa5のベースは、抵抗a1及びa2の接続ノード(分圧電圧Va(=α×Vi、ただしαは分圧比)の印加端)に接続されている。定電流源a4は、電源電圧Vccの印加端とトランジスタa6のベースとの間に接続されている。トランジスタa6のエミッタは、抵抗a3を介して接地端に接続されている。トランジスタa6のコレクタは、トランジスタa7のドレインに接続されている。トランジスタa7及びa8のソースは、いずれも電源電圧Vccの印加端に接続されている。トランジスタa7及びa8のゲートは、いずれもトランジスタa7のドレインに接続されている。トランジスタa8のドレインは、充電電流Iaの出力端に相当する。
【0053】
分圧回路(a1及びa2)で生成された分圧電圧Vaは、エミッタフォロワ(a4〜a6)を介して抵抗a3に印加される。その結果、抵抗a3(抵抗値:Ra3)には、分圧電圧Va(延いては入力電圧Vi)に応じた可変電流Ib(=Va/Ra3)が流れる。この可変電流Ibがカレントミラー(a7及びa8)でミラーされることにより、充電電流Ia(=β×Ib、ただしβはミラー比)が生成される。従って、充電電流Iaの電流値は、入力電圧Viに比例して変化する。言い換えれば、入力電圧Viが高いほどランプ信号V11の上昇傾きが大きくなる。
【0054】
キャパシタ152は、充電電流Iaによって充電される容量性素子であり、その充電電圧が第1端からランプ信号V11として出力される。
【0055】
定電圧源153(起電圧:VB)は、キャパシタ152の第2端と接地端との間に接続されている。
【0056】
スイッチ154は、充電電流生成回路151の出力端とキャパシタ152の第1端との間に接続されており、スイッチ制御信号S12に応じてオン/オフされる。より具体的に述べると、スイッチ154は、スイッチ制御信号S12がハイレベルであるときにオンとなり、スイッチ制御信号S12がローレベルであるときにオフとなる。
【0057】
スイッチ155は、キャパシタ152の両端間に接続されており、反転スイッチ制御信号S12Bに応じてオン/オフされる。より具体的に述べると、スイッチ155は、反転スイッチ制御信号S12Bがハイレベルであるときにオンとなり、反転スイッチ制御信号S12Bがローレベルであるときにオフとなる。
【0058】
インバータ156は、スイッチ制御信号S12を論理反転させて反転スイッチ制御信号S12Bを生成する。
【0059】
また、本構成例の加算部16は、バッファ161と、抵抗162と、を含む。バッファ161の入力端は、ランプ信号生成部15の出力端に接続されている。バッファ161の出力端は、抵抗162を介して電流アンプ14の出力端とコンパレータ13の非反転入力端(+)に接続されている。バッファ161の第1電源端は、電源電圧Vccの印加端に接続されている。バッファ161の第2電源端は、接地端に接続されている。
【0060】
電流アンプ14で生成される電流信号I1は、抵抗162を介してバッファ161の第2電源端に流れ込む。従って、抵抗162(抵抗値:R162)の両端間には、電流信号I1に応じた電圧信号V10(=I1×R162)が発生し、この電圧信号V10がランプ信号V11に足し合わされて基準信号V12が生成される。
【0061】
図4は、基準信号V12の生成動作(電圧信号V10とランプ信号V11の加算動作)を説明するためのタイミングチャートであり、上から順に、スイッチ制御信号S12、インダクタ電流IL1、電圧信号V10、ランプ信号V11、及び、基準信号V12が描写されている。
【0062】
スイッチ制御信号S12がハイレベルに立ち上げられると、インダクタ電流IL1が徐々に大きくなり、これに伴って電圧信号V10も高くなる。このとき、ランプ信号生成部15では、スイッチ154がオンされて、スイッチ155がオフされる。その結果、充電電流Iaによるキャパシタ152の充電動作が開始されて、ランプ信号V11が上昇し始める。そして、加算部16では、電圧信号V10とランプ信号V11とが足し合わされて基準信号V12が生成される。
【0063】
なお、基準信号V12の生成動作に際しては、電圧信号V10よりもランプ信号V11の方が支配的となるように、ランプ信号V11の振幅Bが電圧信号V10の振幅Aよりも大きく設定されている。このような構成とすることにより、電流アンプ14の出力特性に起因してインダクタ電流IL1と電流信号I1(延いては電圧信号V10)に波形の不一致が生じたとしても、安定した電流モード制御を実現することが可能となる。また、電圧信号V10よりも振幅の大きいランプ信号V11が支配的になるので、ノイズの影響も受けにくくなる。
【0064】
一方、基準信号V12が誤差信号Vcompを上回り、スイッチ制御信号S12がローレベルに立ち下げられると、インダクタ電流IL1が徐々に小さくなり、これに伴って電圧信号V10も低くなる。このとき、ランプ信号生成部15では、スイッチ154がオフされて、スイッチ155がオンされる。その結果、キャパシタ152が放電されて、ランプ信号V11が所定のバイアス値VBまで急峻に低下する。このように、ランプ信号V11を常にゼロよりも高くバイアスしておくことにより、仮に電流信号I1が電流アンプ14に引き込まれる状況となっても、基準信号V12がゼロに張り付いてしまわないので、電流モード制御の安定性をさらに高めることが可能となる。
【0065】
なお、ランプ信号生成部25及び加算部26の構成は、上記と同様であるため、重複した説明を割愛する。
【0066】
図5は、入力電圧Viの急変時における出力電圧Voの安定化動作を説明するためのタイミングチャートであり、上から順に、入力電圧Vi、誤差信号Vcomp、基準信号V12(実線)及びV22(破線)、スイッチ制御信号S12及びS22、並びに、出力電圧Voが描写されている。
【0067】
本図で示すように、基準信号V12及びV22の上昇傾き(すなわちランプ信号V11及びV21の上昇傾き)は、入力電圧Viに比例しているので、入力電圧Viが高くなると、基準信号V12及びV22がより早いタイミングで誤差信号Vcompを上回ることになる。例えば、入力電圧Viが高くなれば、スイッチ制御信号S12及びS22のハイレベル期間が短くなり、出力電圧Voが低く抑えられる。逆に、入力電圧Viが低くなれば、スイッチ制御信号S12及びS22のハイレベル期間が長くなり、出力電圧Voが十分に高められる。このように、ランプ信号V11及びV21の上昇傾きを入力電圧Viに比例させることにより、入力電圧Viの急変動が生じた場合であっても、出力電圧Voの変動を抑制することが可能となる。
【0068】
図6は、電流アンプ14の一構成例を示す図である。本構成例の電流アンプ14は、オペアンプ141と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ142と、抵抗143(抵抗値:Rx)と、カレントミラー144と、を含む。
【0069】
オペアンプ141の非反転入力端(+)は、センス抵抗R1の第1端(インダクタL1側)に接続されている。オペアンプ141の反転入力端(−)は、トランジスタ142のソースと抵抗143の第1端に接続されている。抵抗143の第2端は、センス抵抗R1の第2端(負荷Z側)に接続されている。オペアンプ141の出力端は、トランジスタ142のゲートに接続されている。トランジスタ142のドレインは、カレントミラー144の入力端に接続されている。カレントミラー144の出力端は、電流信号I1の出力端に相当する。
【0070】
オペアンプ141は、センス抵抗R1の両端電圧ΔV1(=IL1×R1)と、抵抗143の両端電圧Vx(=Ix×Rx)が一致するように、トランジスタ142の導通度を制御する。つまり、抵抗143に流れる電流Ixは、センス抵抗R1に流れるインダクタ電流IL1に応じた電流値(=IL1×(R1/Rx))となる。この電流Ixがカレントミラー144でミラーされることにより、電流信号I1(=γ×Ix、ただしγはミラー比)が生成される。
【0071】
なお、電流アンプ24の構成は、上記と同様であるため、重複した説明を割愛する。
【0072】
図7は、誤差増幅回路30の第1構成例を示す図である。第1構成例の誤差増幅回路30は、オペアンプ31と、抵抗32と、キャパシタ33と、を含む。なお、オペアンプ31は、半導体装置1に集積化されており、抵抗32とキャパシタ33は、半導体装置1に外付けされている。
【0073】
オペアンプ31の非反転入力端(+)は、所定の参照電圧Vrefの印加端に接続されている。抵抗32は、出力電圧Voの印加端とオペアンプ31の反転入力端(−)との間に接続されている。キャパシタ33は、オペアンプ31の反転入力端(−)と出力端との間に接続されている。すなわち、オペアンプ31、抵抗32、及び、キャパシタ33は、積分回路を形成している。抵抗32及びキャパシタ33には、各々と並列に位相補償回路(抵抗とキャパシタの直列回路)を接続してもよい。
【0074】
第1構成例の誤差増幅回路30では、その出力特性に影響を与える要因として、オペアンプ31の製造ばらつき(±10%程度)よりも、外付けのディスクリート部品である抵抗32及びキャパシタ33の製造ばらつき(±1%程度)が支配的となる。従って、誤差増幅回路30であれば、その出力特性(周波数特性)がばらつきにくいので、精度の高い出力帰還制御を実現することが可能となる。
【0075】
図8は、誤差増幅回路30の第2構成例を示す図である。第2構成例の誤差増幅回路30は、電流アンプ(gmアンプ)34と、抵抗35及び36と、キャパシタ37と、位相補償回路38とを含む。なお、電流アンプ34は、半導体装置1に集積化されており、他の回路要素35〜38は、いずれも半導体装置1に外付けされている。
【0076】
電流アンプ34の非反転入力端(+)は、所定の参照電圧Vrefの印加端に接続されている。抵抗35は、出力電圧Voの印加端と電流アンプ34の反転入力端(−)との間に接続されている。抵抗36は、電流アンプ34の反転入力端(−)と接地端との間に接続されている。すなわち、抵抗35及び36は、出力電圧Voを分圧して電流アンプ34の反転入力端(−)に出力する分圧回路を形成している。なお、抵抗35には、これと並列にキャパシタを接続してもよい。キャパシタ37と位相補償回路38(抵抗とキャパシタの直列回路)は、いずれもオペアンプ31の出力端と接地端との間に接続されている。
【0077】
このように、誤差増幅回路30としては、
図7の積分回路型だけでなく、より一般的なgmアンプ型を用いることもできる。
【0078】
図9は、発振回路40の一構成例を示す図である。本構成例の発振回路40は、オシレータ41と、定電流源42と、ローパスフィルタ43と、定電圧源44と、電流アンプ45と、カレントミラー46と、を含む。
【0079】
オシレータ41は、バイアス電流IBに応じてクロック信号CLK1及びCLK2の発振周波数を可変制御する。より具体的に述べると、オシレータ41は、バイアス電流IBが大きいほど、クロック信号CLK1及びCLK2の発振周波数を高める。なお、バイアス電流IBは、固定バイアス電流IBxと可変バイアス電流IByとの合算電流である。
【0080】
定電流源42は、一定の基準バイアス電流IBxを生成する。
【0081】
ローパスフィルタ43は、出力電圧Voにローパスフィルタ処理(平滑化処理)を施して出力電圧Vo1を生成する。
【0082】
定電圧源44は、出力電圧Voに一定のオフセット電圧Vofsを足し合わせて出力電圧Vo2を生成する。
【0083】
電流アンプ45は、非反転入力端(+)に印加されている出力電圧Vo1と反転入力端(−)に印加されているVo2との差分に応じた可変バイアス電流IBzを生成する。より具体的に述べると、電流アンプ45は、出力電圧Vo1が出力電圧Vo2よりも高いほど、可変バイアス電流IBzを増大させる。
【0084】
カレントミラー46は、可変バイアス電流IBzをミラーして可変バイアス電流IByを生成する。
【0085】
図10は、出力電圧Voの急変時における周波数可変動作を説明するためのタイミングチャートであり、上から順に、出力電圧Vo、出力電圧Vo1、出力電圧Vo2、バイアス電流IB、並びに、クロック信号CLK1及びCLK2が描写されている。
【0086】
出力電圧Voが一定に維持されているときには、出力電圧Vo2が出力電圧Vo1を上回った状態に維持されるので、可変バイアス電流IByはゼロとなり、バイアス電流IBは、固定バイアス電流IBxと一致する。このとき、クロック信号CLK1及びCLK2の発振周波数は通常値となる。
【0087】
一方、出力電圧Voが急低下したときには、出力電圧Vo2が一時的に出力電圧Vo1を下回るので、可変バイアス電流IByが生成されて、バイアス電流IBが増大される。その結果、クロック信号CLK1及びCLK2の発振周波数は、通常値よりも高められるので、出力電圧Voの変動を抑制することが可能となる。
【0088】
次に、マルチフェイズ型の電源装置Xに追加することが望ましい電流平衡回路50について、
図11を参照しながら詳細に説明する。
【0089】
図11は、電流平衡回路50の一構成例を示す図である。本構成例の電流平衡回路50は、各組の出力段OS1及びOS2に各々流れるインダクタ電流IL1及びIL2が互いに一致するように誤差信号Vcompを補正して、各組毎の誤差信号Vcomp1及びVcomp2を生成する回路ブロックであり、抵抗51及び52(抵抗値:R51及びR52)と、カレントミラー53〜56と、を含む。
【0090】
電流アンプ14は、加算部16に電流信号I1(∝IL1)を出力する経路とは別に、電流平衡回路50に電流信号I1を出力する経路を備えている。同様に、電流アンプ24は、加算部26に電流信号I2(∝IL2)を出力する経路とは別に、電流平衡回路50に電流信号I2を出力する経路を備えている。
【0091】
抵抗51の第1端は、誤差信号Vcompの印加端に接続されている。抵抗51の第2端は、誤差信号Vcomp1の印加端として、コンパレータ13の反転入力端(−)に接続されている。誤差信号Vcomp1は、抵抗51に流れる平衡電流IBAL1に応じて誤差信号Vcompを補正した電圧信号となる。例えば、抵抗51の第1端から第2端に至る向きを平衡電流IBAL1の正方向として定義した場合、Vcomp1=Vcomp−IBAL1×R51という演算式を用いて算出することができる。
【0092】
抵抗52の第1端は、誤差信号Vcompの印加端に接続されている。抵抗52の第2端は、誤差信号Vcomp2の印加端として、コンパレータ23の反転入力端(−)に接続されている。誤差信号Vcomp2は、抵抗52に流れる平衡電流IBAL2に応じて誤差信号Vcompを補正した電圧信号となる。例えば、抵抗52の第1端から第2端に至る向きを平衡電流IBAL2の正方向として定義した場合、Vcomp2=Vcomp−IBAL2×R52という演算式を用いて算出することができる。
【0093】
カレントミラー53〜56は、電流信号I1と電流信号I2との差分演算を行って平衡電流IBAL1及びIBAL2を生成するように適宜組み合わされている。より具体的に述べると、ノードPから接地端に向けた電流信号I1を引き込むカレントミラー53と電源端からノードPに電流信号I2を流し込むカレントミラー54を組み合わせることにより、平衡電流IBAL1(=I1−I2)が生成されている。また、ノードQから接地端に向けた電流信号I2を引き込むカレントミラー56と電源端からノードQに電流信号I1を流し込むカレントミラー55を組み合わせることにより、平衡電流IBAL2(=I2−I1)が生成されている。
【0094】
ここで、I1>I2(IL1>IL2)である場合には、IBAL1>0、IBAL2<0となり、Vcomp>Vcomp1、Vcomp<Vcomp2となる。すなわち、相対的に大きいインダクタ電流IL1が流れているフェイズの誤差信号Vcomp1が引き下げられて、相対的に小さいインダクタ電流IL2が流れているフェイズの誤差信号Vcomp2が引き上げられる。その結果、インダクタ電流IL1を小さくしてインダクタ電流IL2を大きくするように帰還制御が働く。
【0095】
逆に、I1<I2(IL1<IL2)である場合には、IBAL1<0、IBAL2>0となり、Vcomp<Vcomp1、Vcomp>Vcomp2となる。すなわち、相対的に大きいインダクタ電流IL2が流れているフェイズの誤差信号Vcomp2が引き下げられて、相対的に小さいインダクタ電流IL1が流れているフェイズの誤差信号Vcomp1が引き上げられる。その結果、インダクタ電流IL2を小さくしてインダクタ電流IL1を大きくするように帰還制御が働く。
【0096】
従って、電源装置Xは、最終的に、インダクタ電流IL1及びIL2が互いに一致した電流平衡状態に至る。
【0097】
例えば、負荷Zに対して10Aの出力電流Ioを供給する場合、出力段OS1及びOS2に各々5Aのインダクタ電流IL1及びIL2が均等に流れるのであれば、出力段OS1及びOS2を形成するディスクリート部品として、それぞれ5Aの電流出力に対応した部品を選定すれば足りる。しかしながら、例えば、出力段OS1に8Aのインダクタ電流IL1が流れて、出力段OS2に2Aのインダクタ電流IL2しか流れない状態が生じ得るのであれば、このようなインダクタ電流IL1及びIL2の偏りを考慮に入れて、最大8Aの電流出力に対応した部品選定を行わねばならず、不要なコストアップが生じる。また、コストアップを避けるために5Aの電流出力にのみ対応した部品を選定していた場合には、重大な事故(ディスクリート部品の損傷や発煙・発火など)に繋がる恐れがある。
【0098】
これに対して、電流平衡回路50を備えた電源装置Xであれば、インダクタ電流IL1及びIL2を互いに一致させることができるので、上記の課題を解消することができる。特に、負荷ZとしてCPUやGPUなどの演算処理装置が接続される場合には、瞬間的に大電流(100A程度)が消費されるので、インダクタ電流IL1及びIL2の平衡制御は非常に重要となる。
【0099】
<第2実施形態>
図12は、電源装置Xの第2実施形態を示す図である。第2実施形態の電源装置Xは、インダクタ電流IL1及びIL2を検出するための手段として、インダクタ抵抗DCR1及びDCR2を利用する構成とされている。本構成を採用する場合には、インダクタL1及びL2と並列に、それぞれ、抵抗R11及びキャパシタC1、並びに、抵抗R21及びキャパシタC2を接続し、キャパシタC1及びC2の両端間電圧を電流アンプ14及び24にそれぞれ入力すればよい。また、インダクタL1及びL2の温度特性をキャンセルする手段として、キャパシタC1及びC2と並列に抵抗R12及びR22(例えばサーミスタ)を接続してもよい。
【0100】
<第3実施形態>
図13は、電源装置Xの第3実施形態を示す図である。第3構成例の電源装置Xは、出力段OS2とスイッチ制御回路20を省略したシングルフェイズ型とされている。このように、先に説明した種々の構成は、マルチフェイズ型だけでなく、シングルフェイズ型にも適用することが可能である。
【0101】
<デスクトップパソコンへの適用例>
図14は、電源装置Xを搭載したデスクトップパソコンYの一構成例を示す外観図である。本構成例のデスクトップパソコンYは、本体ケースY10と、液晶モニタY20と、キーボードY30と、マウスY40と、を有する。
【0102】
本体ケースY10は、中央演算処理装置Y11、メモリY12、光学ドライブY13、及び、ハードディスクドライブY14などを収納する。
【0103】
中央演算処理装置Y11は、ハードディスクドライブY14に格納されたオペレーティングシステムや各種のアプリケーションプログラムを実行することにより、デスクトップパソコンYの動作を統括的に制御する。
【0104】
メモリY12は、中央演算処理装置Y11の作業領域(例えばプログラムの実行に際してタスクデータを格納する領域)として利用される。
【0105】
光学ドライブY13は、光ディスクのリード/ライトを行う。光ディスクとしては、CD[compact disc]、DVD[digital versatile disc]、及び、BD[Blu-ray disc]などを挙げることができる。
【0106】
ハードディスクドライブY14は、筐体内に密閉された磁気ディスクを用いてプログラムやデータを不揮発的に格納する大容量補助記憶装置の一つである。
【0107】
液晶モニタY20は、中央演算処理装置Y11からの指示に基づいて映像を出力する。
【0108】
キーボードY30及びマウスY40は、ユーザの操作を受け付けるヒューマンインタフェイスデバイスの一つである。
【0109】
上記構成から成るデスクトップパソコンYにおいて、先述の電源装置Xは、消費電流の大きい負荷Z(中央演算処理装置Y11やメモリY12など)への電力供給手段として、好適に用いることが可能である。
【0110】
<その他の変形例>
なお、上記では、本発明の適用対象として、デスクトップパソコンYを例に挙げたが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、様々な電子機器(ノートパソコンやゲーム機など)に広く適用することが可能である。
【0111】
また、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【0112】
例えば、上記実施形態では、出力段に含まれる上側トランジスタとして、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタN11及びN21を用いた構成を例示して説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタを用いても構わない。
【0113】
また、上記実施形態では、降圧型の出力段を用いた構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、昇圧型の出力段や昇降圧型の出力段を用いても構わない。
【0114】
このように、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。