(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱源としてレーザー光を用いた方法によって、微細な部分へのはんだ付けが非接触で可能となった。しかし、急加熱が行われることから、はんだボールの発生やフラックスの飛散の発生が顕著に起こるようになった。
【0005】
はんだボールの発生やフラックスの飛散の発生は、前述したはんだごてを用いるはんだ付け方法と同様に、レーザー光を用いたはんだ付け方法においても、予備加熱によって抑制することが可能である。しかし、予備加熱による処理時間が付加されるため、作業時間が延びてしまい生産効率が低下する問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、予備加熱を必要とせず、はんだボールの発生及びフラックスの飛散の発生を抑制できるレーザーはんだ付け用はんだ組成物およびそれを用いた
実装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のようなレーザーはんだ付け用はんだ組成物およびそれを用いたプリント配線基板を提供するものである。
すなわち、本発明のレーザーはんだ付け用はんだ組成物は、(A)ロジン系樹脂と、(B)カルボン酸類と、(C)溶剤と、を少なくとも含有するフラックスと、(D)はんだ粉末とを含有し、前記(C)成分が、(C1)沸点が280℃以上321℃以下、かつ、粘度が30℃において12Pa・s以上80Pa・s以下である溶剤を含有
し、前記(A)成分の配合量は、前記フラックス100質量%に対して、30質量%以上50質量%以下であり、前記(B)成分の配合量は、前記フラックス100質量%に対して、0.1質量%以上5質量%以下であり、前記(C)成分の配合量は、前記フラックス100質量%に対して、30質量%以上60質量%以下であり、前記(C1)成分の配合量は、前記フラックス100質量%に対して、2質量%以上40質量%以下であり、前記フラックスと前記(D)成分との配合比率(質量比)が5:95〜11:89であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明のレーザーはんだ付け用はんだ組成物においては、前記(C1)成分が、テルペン骨格を有する炭素数5以上の環状アルカン型アルコールであることが好ましい。
【0009】
本発明のレーザーはんだ付け用はんだ組成物においては、前記(C1)成分が、イソボルニルシクロヘキサノールであることが好ましい。
【0010】
本発明のレーザーはんだ付け用はんだ組成物においては、前記(C1)成分の配合量は、前記フラックス100質量%に対して、
12質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0011】
本発明のレーザーはんだ付け用はんだ組成物においては、
前記フラックスが、さらにチクソ剤を含有し、前記チクソ剤の配合量は、フラックス100質量%に対して、10質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の
電子部品のプリント配線基板
への実装方法は、前記レーザーはんだ付け用はんだ組成物を用い、レーザー光を用いて電子部品をプリント配線基板に実装
することを特徴とする
方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、予備加熱を必要とせず、はんだボールの発生及びフラックスの飛散の発生を抑制できるレーザーはんだ付け用はんだ組成物およびそれを用いた
実装方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のレーザーはんだ付け用はんだ組成物は、以下説明するフラックスと、以下説明する(D)はんだ粉末とを含有するものである。
【0015】
[フラックス]
本発明のレーザーはんだ付け用はんだ組成物に用いるフラックスは、はんだ組成物における前記(D)成分以外の成分であり、(A)ロジン系樹脂と、(B)カルボン酸類と、(C)溶剤と、を少なくとも含有するものである。
【0016】
上記フラックスの配合量は、はんだ組成物100質量%に対して、5質量%以上35質量%以下であることが好ましく、7質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、8質量%以上11質量%以下であることが特に好ましい。フラックスの配合量が5質量%未満の場合(はんだ粉末の含有量が95質量%を超える場合)には、バインダーとしてのフラックスが足りないため、フラックスとはんだ粉末とを混合しにくくなる傾向にあり、他方、フラックスの含有量が35質量%を超える場合(はんだ粉末の含有量が65質量%未満の場合)には、得られるはんだ組成物を用いた場合に、十分なはんだ接合を形成できにくくなる傾向にある。
【0017】
[(A)ロジン系樹脂]
本発明のフラックスに用いる(A)ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、水素添加ロジン及びこれらの誘導体等のロジン類が挙げられるが、これらの変性物であるロジン系変性樹脂も挙げられる。
ロジン系変性樹脂としては、ディールス・アルダー反応の反応成分となり得る上記のロジン類の不飽和有機酸変性樹脂((メタ)アクリル酸等の脂肪族の不飽和一塩基酸、フマル酸、マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸等の脂肪族不飽和二塩基酸、桂皮酸等の芳香族環を有する不飽和カルボン酸等の変性樹脂)及びこれらの変性物等のアビエチン酸やその変性物を主成分とするものが挙げられる。これらのロジン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
上記(A)ロジン系樹脂の配合量は、フラックス100質量%に対して、30質量%以上50質量%以下であることが好ましく、40質量%以上45質量%以下であることがより好ましい。(A)ロジン系樹脂の配合量が前記下限未満では、はんだ付ランドの銅箔面の酸化を防止してその表面に溶融はんだを濡れやすくする、いわゆるはんだ付性が低下し、はんだボールが生じやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、フラックス残さ量が多くなる傾向にある。
【0019】
[(B)カルボン酸類]
本発明のフラックスに用いる(B)カルボン酸類としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸などの他に、その他の有機酸が挙げられる。これらのカルボン酸は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、プチリック酸、バレリック酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、グリコール酸などが挙げられる。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、ジグリコール酸などが挙げられる。
【0020】
その他の有機酸としては、ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、ピコリン酸などが挙げられる。
【0021】
上記(B)カルボン酸類の配合量は、フラックス100質量%に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。(B)カルボン酸類の配合量が前記下限未満では、はんだボールが生じやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、フラックスの絶縁性が低下する傾向にある。
【0022】
[(C)溶剤]
本発明のフラックスに用いる(C)成分の溶剤には、(C1)沸点が280℃以上321℃以下、かつ、粘度が30℃において12Pa・s以上80Pa・s以下である溶剤を含有する。このうち、(C1)成分の30℃における粘度は、20Pa・s以上75Pa・s以下が好ましく、30Pa・s以上70Pa・s以下がより好ましく、55Pa・s以上67Pa・s以下が特に好ましい。なお、粘度はB型粘度計(プログラマブルレオメータDV−III、ブルックフィールド社製)を用いて測定できる。
急加熱が行われるレーザーはんだ付けでは、従来、はんだボールの発生やフラックスの飛散が生じていた。これは、レーザー照射による急加熱によって、粘度が低下したフラックスがはんだ粉末の溶融よりも先にパッド外に流れ出すことによって生じているものと推察される。また、フラックスがパッド外に流れ出すときに、未溶融のはんだ粉末を一緒に流している。
本発明のはんだ組成物では、(C1)成分として、上記高粘度かつ高沸点の溶剤を用いているので、はんだボールの発生及びフラックスの飛散の発生を抑制できる。
その理由としては、溶剤に高粘度のものを使用することによって、レーザー照射による加熱時に、はんだ組成物がパッド上に残りやすくなるためと推察される。また、溶剤に高沸点のものを使用することによって、フラックスが流動性を持つ温度が上昇し、沸点の低い溶媒を用いたはんだ組成物よりもはんだ合金の溶融が進行するため、はんだボールが抑制され、更に溶剤の突沸が抑制されるため、フラックスの飛散が抑制されるものと推察される。
この(C1)成分としては、テルペン骨格を有する炭素数5以上の環状アルカン型アルコールであることが好ましい。このうち、(C1)成分が、イソボルニルシクロヘキサノールであることが特に好ましい。例えば日本テルペン化学株式会社製のテルソルブMTPHが挙げられる。
【0023】
上記(C1)成分の配合量は、フラックス100質量%に対して、2質量%以上40質量%以下であることが好ましく、7質量%以上35質量%以下であることがより好ましく、12質量%以上30質量%以下であることが特に好ましい。(C1)成分の配合量が前記下限未満では、はんだボールが発生するおそれや、フラックスの飛散が発生するおそれがあり、他方、前記上限を超えると、はんだ組成物の溶融時に残るフラックスの残渣中に溶剤が残存し、フラックスの残渣が軟化する。そのためフラックスの残渣が粘着性を有し、空気中を漂う埃や粉塵を付着してしまい漏電の不具合を生じるおそれがある。
【0024】
本発明のフラックスに用いる(C)成分の溶剤では、前記(C1)成分と、これ以外の溶剤(C2)とを併用してもよい。このような溶剤(C2)としては、アルコール系溶媒など公知の溶剤を適宜用いることができる。
例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ヘキシルジグリコール、1,5−ペンタンジオール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、2−エチルヘキシルジグリコール、オクタンジオール、フェニルグリコール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルが挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
また、本発明のフラックスに用いる(C2)成分の溶剤では、沸点が140℃以上275℃未満、かつ、粘度が30℃において1.0Pa・s以上30Pa・s以下の溶剤を併用してもよい。このような溶剤としては、ヘキシルカルビトール、ブチルカルビトール、ターピネオール、ジヒドロターピネオールなどが挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。例えば日本テルペン化学株式会社製のテルソルブDTO−210、テルソルブTHA−90、テルソルブTHA−70、東新化成工業株式会社製のハイモールPM、日産化学工業株式会社製のファインオキソコールN140などが挙げられ、これらを2種類以上混合して適宜使用することができる。
【0026】
更に、(C2)成分としては、沸点が150℃より低くない、いわゆる可塑剤とすることができる、(メタ)アクリル酸エステル、フタル酸エステル、脂肪族二塩基酸エステルも挙げられる。
【0027】
上記(C)成分の合計配合量は、フラックス100質量%に対して、30質量%以上65質量%以下であることが好ましく、40質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上50質量%以下であることが特に好ましい。(C)溶剤の合計含有量が前記範囲内であれば、得られるはんだ組成物の粘度を適正な範囲に適宜調整できる。
【0028】
[その他の成分]
本発明に用いるフラックスには、前記(A)ロジン系樹脂、前記(B)カルボン酸類および前記(C)溶剤の他に、必要に応じて、添加剤を加えることができる。添加剤としては、つや消し剤、発泡剤、消泡剤、カオリン、エアロジール(日本アエロジル社製)、有機ベントナイト、硬化ひまし油、ガラスフリット等のチクソ剤を例示できる。これらの添加剤の配合量は、フラックス100質量%に対して、5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、10質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
【0029】
本発明に用いるフラックスには、非解離性のハロゲン化化合物からなる非解離型活性剤を含有させてもよく、非解離性のハロゲン化化合物としてはハロゲン原子が共有結合により結合した非塩系の有機化合物が挙げられる。ハロゲン化化合物としては、塩素化物、臭素化物、フッ化物のように塩素、臭素、フッ素の各単独元素の共有結合による化合物でもよいが、その3者の任意の2つ又は全部のそれぞれの共有結合を有する化合物でもよい。これらの化合物は、水性溶媒に対する溶解性を向上させるために、例えばハロゲン化アルコールのように水酸基等の極性基を有することが好ましい。ハロゲン化アルコールとしては、例えば2,3−ジブロモプロパノール、2,3−ジブロモブタンジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、トリブロモネオペンチルアルコール等の臭素化アルコール、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,4−ジクロロ−2−ブタノール等の塩素化アルコール、3−フルオロカテコール等のフッ素化アルコール、その他のこれらに類する化合物が挙げられる。
非解離型活性剤の配合量は、フラックス100質量%に対して、0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましく、1質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。
【0030】
更に他の活性剤を併用することもでき、これにはアミン類、アミン塩類(エチレンジアミン等のポリアミン、シクロヘキシルアミン、ジエチルアミン等のアミンの有機酸塩や無機酸塩(塩酸、硫酸等の鉱酸塩))、アミノ酸類(グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、バリン等)、アミド系化合物等が挙げられる。具体的にはジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、これらのアミンの臭化水素酸塩等が挙げられる。
【0031】
[フラックスの製造]
本発明のフラックスを製造するには、(A)ロジン系樹脂、これと併用するその他の樹脂、(B)カルボン酸類、および必要に応じて他の活性剤、添加剤を、(C)溶剤に溶解すればよい。
【0032】
[(D)はんだ粉末]
本発明のレーザーはんだ付け用はんだ組成物に用いる(D)はんだ粉末は、無鉛のはんだ粉末のみからなることが好ましいが、有鉛のはんだ粉末であってもよい。このはんだ粉末におけるはんだ合金としては、スズを主成分とする合金が好ましい。また、この合金の第二元素としては、銀、銅、亜鉛、ビスマス、アンチモンなどが挙げられる。さらに、この合金には、必要に応じて他の元素(第三元素以降)を添加してもよい。他の元素としては、銅、銀、ビスマス、アンチモン、アルミニウム、インジウムなどが挙げられる。
無鉛のはんだ粉末としては、具体的には、Sn/Ag、Sn/Ag/Cu、Sn/Cu、Sn/Ag/Bi、Sn/Bi、Sn/Ag/Cu/Bi、Sn/Sbや、Sn/Zn/Bi、Sn/Zn、Sn/Zn/Al、Sn/Ag/Bi/In、Sn/Ag/Cu/Bi/In/Sb、In/Ag等が挙げられる。
【0033】
上記(D)はんだ粉末の配合量は、はんだ組成物100質量%に対して、65質量%以上95質量%以下であることが好ましく、85質量%以上93質量%以下であることがより好ましく、89質量%以上92質量%以下であることが特に好ましい。(D)はんだ粉末の配合量が65質量%未満の場合(フラックスの含有量が35質量%を超える場合)には、得られるはんだ組成物を用いた場合に、十分なはんだ接合を形成できにくくなる傾向にあり、他方、はんだ粉末の含有量が95質量%を超える場合(フラックスの含有量が5質量%未満の場合)には、バインダーとしてのフラックスが足りないため、フラックスとはんだ粉末とを混合しにくくなる傾向にある。
【0034】
また、(D)はんだ粉末の平均粒子径は、1μm以上40μm以下であることが好ましく、10μm以上35μm以下であることがより好ましく、15μm以上25μm以下であることが特に好ましい。平均粒子径が上記範囲内であれば、はんだ付けランドのピッチの狭くなってきている最近のプリント回路基板にも対応できる。なお、平均粒子径は、動的光散乱式の粒子径測定装置により測定できる。
【0035】
[はんだ組成物の製造]
本発明のはんだ組成物を製造するには、上記説明したフラックスと上記説明した(D)はんだ粉末を上記所定の割合で配合し、撹拌混合すればよい。
【0036】
[プリント配線基板]
次に、本発明のプリント配線基板について説明する。本発明のプリント配線基板は、以上説明したはんだ組成物をレーザーを用いて電子部品をプリント配線基板に実装したことを特徴とするものである。そのため、本発明のプリント配線基板では、レーザー照射時におけるはんだボールやフラックス飛散を十分に抑制できる。
【0037】
塗布方法は、特に限定されないが、スクリーン印刷法やディスペンサーなどを採用できる。
はんだ付けに使用するレーザー光のレーザー光源の種類は特に限定はされず、金属の吸収帯に合わせた波長を選択することが可能である。例えば、固体レーザーとしては、ルビー、ガラス、YAG、半導体レーザーとしては、GaAs、InGaAsP、液体レーザーとしては、色素、気体レーザーとしては、He−Ne、Ar、CO
2、エキシマ等が挙げられる。
【0038】
本発明のはんだ組成物についてはその残渣膜は洗浄することなく、電子部品を搭載した配線基板に被覆されたままにされ、本発明はこのようなはんだ組成物の残渣膜付の電子部品搭載後の配線基板を提供する。
【0039】
本発明のはんだ組成物の印刷膜は、溶融はんだの温度により押し退けられ、溶融はんだを金属面に接触させることができる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
ロジン系樹脂A:完全水添ロジン、商品名「フォーラルAX」、Eastman Chemical社製
ロジン系樹脂B:水添酸変性ロジン、商品名「KE−604」、荒川化学工業社製
カルボン酸類:スベリン酸、東京化成工業社製
溶剤A:イソボルニルシクロヘキサノール(沸点:308〜318℃、粘度:65.5Pa・s(30℃))、商品名「MTPH」、日本テルペン化学社製
溶剤B:ヘキシルジグリコール(沸点:257〜259℃、粘度:0.5〜1Pa・s(30℃))、商品名「HeDG」、日本乳化剤社製
溶剤C:オクタンジオール(沸点:236〜246℃、粘度:2.5〜3.2Pa・s(30℃))、協和発酵工業社製
ハロゲン化化合物:ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、エア・ブラウン社製
チキソ剤A:N,N’−1,6−ヘキサンジイルビス−12−オキシオクタデカンアミド、商品名「スリパックスZHH」、日本化成社製
チキソ剤B:水添ヒマシ油、商品名「ヒマ硬」、ケイエフ・トレーディング社製
はんだ粉末:平均粒子径20〜30μm、はんだ融点200〜230℃、はんだ組成Sn−3.0Ag−0.5Cu
【0041】
[実施例1]
ロジン系樹脂Aを26質量%と、ロジン系樹脂Bを16質量%と、カルボン酸類を0.50質量%と、溶剤Aを13質量%と、溶剤Bを22.5質量%と、溶剤Cを8質量%と、ハロゲン化化合物を2質量%と、チキソ剤Aを6質量%と、およびチキソ剤Bを6質量%とをそれぞれ容器に投入し、らいかい機を用いて混合してフラックスを得た。
その後、得られたフラックス10.2質量%および鉛フリーはんだ粉末89.8質量%(合計で100質量%)を容器に投入し、混練機にて2時間混合することで、次の表1に示す組成を有するはんだ組成物を調製した。
【0042】
[実施例2〜7]
次の表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、はんだ組成物を得た。
[比較例1]
次の表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、はんだ組成物を得た。
【0043】
<はんだ組成物の評価>
はんだ組成物の評価(はんだボール試験、フラックス飛散試験)を以下のような方法で行った。得られた結果を表1に示す。
【0044】
<印刷条件>
メタルマスク厚さ:0.15mm
スキージ :メタルスキージ
スキージ速度:30mm/秒
版離れ速度 :0.2mm/秒
印圧 :100kPa
印刷部位:Cuランド2.1×2.5mm、1.0×1.5mm、1.0×1.0mm、0.8×0.8mm、0.4×0.4mm、0.2×0.2mm
【0045】
<レーザー照射条件>
レーザー波長:980nm
スポット径:Φ0.8
照射時間:0.3s(1.0×1.0mm以下のCuランド)
1.0s(1.0×1.0mmより大きなCuランド)
【0046】
(1)はんだボール試験
はんだ組成物のレーザー照射時に起きるはんだボールの発生状況を調べるために、JIS Z 3284(1994)に準じてはんだボール試験を行った。その結果を表1に示す。
◎:はんだボール発生なし
○:はんだボール発生少し
×:はんだボール発生多し
【0047】
(2)フラックスの飛散試験
はんだ組成物のレーザー照射時に起きるフラックスの飛散状況を調べるために、25cm
2あたりのフラックスの飛散を観察した(個/25cm
2) 。
◎:フラックスの飛散が6個/25cm
2未満のとき
○:フラックスの飛散が6個/25cm
2以上15個/25cm
2以下のとき
×:フラックスの飛散が15個/25cm
2を超えるとき
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明のはんだ組成物を用いた場合(実施例1〜7)には、レーザー照射を用いたはんだ付け工法を行ったときに発生してしまうはんだボールとフラックス飛散が抑制されていることが判る。
一方で、溶剤成分として、高沸点且つ高粘度の溶剤を含有しないはんだ組成物を用いた場合(比較例1)には、はんだボールとフラックス飛散が抑制されていない。