特許第6138466号(P6138466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138466
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】サイクロトロン
(51)【国際特許分類】
   H05H 13/00 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   H05H13/00
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-264564(P2012-264564)
(22)【出願日】2012年12月3日
(65)【公開番号】特開2014-110180(P2014-110180A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】密本 俊典
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−150199(JP,A)
【文献】 特開2002−238872(JP,A)
【文献】 特開昭50−073095(JP,A)
【文献】 特開2000−106299(JP,A)
【文献】 S.Ninomiya et.al.,RCNP TECHNIQUES FOR PRODUCING ULTRA-PRECISE BEAMS,CYCLOTRONS AND THETR APPLICATIONS 2001,16TH INTERNATIONAL CONFERENCE,米国,American Institute of Physics,2001年12月,Vol.600,pp.94-98
【文献】 S.Okumura et.al.,Magnetic field stabilization by temperature control of an azimuthally varying field cyclotro magnt,REVIEW OF SCIENTIFIC INSTRUMENTS,vol.76,no.033301,米国,American Institute of Physics,2005年 2月 2日,Vol.76,pp.03330-1〜03330-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 13/00
H05H 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1ヨーク部及び第2ヨーク部と、前記第1ヨーク部及び前記第2ヨーク部を連結する側ヨーク部と、を有する中空のヨークと、
前記ヨーク内に設けられ、互いに対向する第1のポール及び第2のポールと、
前記第1のポール及び第2のポールを囲むように配置されたコイルと、
前記第1のポール及び第2のポールの間に設けられたディー電極と、
前記コイルへ電力を供給する電源と、
前記第1のポール及び前記第2のポールの少なくとも一方の温度を検出するポール温度検出手段と、
前記側ヨーク部の温度を検出するヨーク温度検出手段と、
前記ポール温度検出手段及び前記ヨーク温度検出手段の検出結果に基づいて、前記電源による前記コイルへの電力供給を制御する制御手段と、
を備える、サイクロトロン。
【請求項2】
前記ヨーク温度検出手段は、前記第1のポール及び前記第2のポールの対向方向において、前記側ヨーク部の略中央に設けられている、請求項1に記載のサイクロトロン。
【請求項3】
前記ポール温度検出手段は、前記第1のポールに設けられた第1のポール温度検出手段と、前記第2のポールに設けられた第2のポール温度検出手段と、を有する、請求項1又は2に記載のサイクロトロン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンビームを出射するサイクロトロンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イオンビームを出射する加速器に関する技術文献として例えば特開平6―077049号公報が知られている。この公報には、中空の鉄心の内部に磁極及びコイルを備える荷電粒子加速器システム(シンクロトロン)であって、鉄心には温度センサ及び電気ヒータが取り付けられ、鉄心の温度に基づいて加熱手段の熱量を調整することにより電磁石を速やかに定常状態にするものが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6―077049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、サイクロトロンから送り出されるイオンビームの電流値を安定させるためには、ポール(磁極)から発生する磁場を精度良く制御する必要がある。しかしながら、磁場を直接測定するための機構は大掛かりなものとなり、コストがかかる。また、磁場の測定精度も十分ではない。一方、前述した従来のシンクロトロンと異なり、サイクロトロンの場合にはポールに大きな熱量が加わるため、ポールの温度制御による磁場の制御は容易ではない。
【0005】
そこで、本発明は、イオンビームの制御を安定化することができるサイクロトロンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究した結果、サイクロトロンにおいては、ポール及びヨークの温度が定常状態であったとしても、常温から温度が変化したことで磁場の制御に影響が生じることを新たに発見した。すなわち、サイクロトロンの運転中には、ディー電極が形成する電場により一対のポールの対向する面に電流が生じて熱が発生すると共に、イオンビームの一部が衝突することによってもポールに熱が加えられる。この熱がポールからヨークに伝わり、ポール及びヨークに熱膨張が生じると、一対のポールの間隔であるポールギャップが変化する。ポールギャップが変化すると、同じ電流量をコイルに供給しても生じる磁場が変化するためイオンビームの制御が不安定となることを見出した。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、互いに対向する第1ヨーク部及び第2ヨーク部と、第1ヨーク部及び第2ヨーク部を連結する側ヨーク部と、を有する中空のヨークと、ヨーク内に設けられ、互いに対向する第1のポール及び第2のポールと、第1のポール及び第2のポールを囲むように配置されたコイルと、第1のポール及び第2のポールの間に設けられたディー電極と、コイルへ電力を供給する電源と、第1のポール及び第2のポールの少なくとも一方の温度を検出するポール温度検出手段と、側ヨーク部の温度を検出するヨーク温度検出手段と、ポール温度検出手段及びヨーク温度検出手段の検出結果に基づいて電源による前記コイルへの電力供給を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るサイクロトロンによれば、第1のポール及び第2のポールの少なくとも一方の温度と側ヨーク部の温度に基づいてコイルへの電力供給を制御するので、ポール及びヨークの熱膨張によりポールギャップに変化が生じても、温度によるポールギャップの変化の影響を反映して磁場を高精度に制御することができ、イオンビームの制御を安定化することができる。
【0009】
本発明に係るサイクロトロンにおいて、ヨーク温度検出手段は、第1のポール及び第2のポールの対向方向において、側ヨーク部の略中央に設けられていてもよい。
このサイクロトロンによれば、熱が加えられる第1のポール及び第2のポールからほぼ等しく離れた位置において側ヨーク部の温度を測定することができる。このため、ヨーク温度検出手段がいずれかのポールに片寄って配置される場合と比べて、側ヨーク部の平均的な温度を適切に検出することができるので、温度によるポールギャップの変化の影響を精度良く制御に反映することができる。
【0010】
本発明に係るサイクロトロンにおいて、ポール温度検出手段は、第1のポールに設けられた第1のポール温度検出手段と、第2のポールに設けられた第2のポール温度検出手段と、を有してもよい。
このサイクロトロンによれば、第1のポール及び第2のポールの両方の温度を検出することで、より精度良くポールギャップの変化の影響を制御に反映することができるので、イオンビームの制御安定化に有利である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、イオンビームの制御を安定化することができるサイクロトロンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係るサイクロトロンを示す断面図である。
図2】第1の実施形態に係るサイクロトロンの制御の流れを示すフローチャートである。
図3】第2の実施形態に係るサイクロトロンを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1に示されるように、第1の実施形態に係るサイクロトロン1は、イオン源(図示せず)から送り出されるイオンビームを加速して出力する加速器である。イオンビームを構成するイオンとしては、例えば陽子や重イオンなどが挙げられる。サイクロトロン1は、その中心軸Cが上下方向に延在する横置き型のサイクロトロンである。
【0015】
このようなサイクロトロン1は、例えば、PET[Positron Emission Tomography]用サイクロトロン、ホウ素中性子捕捉療法用サイクロトロン、RI[Radio Isotope]製剤用サイクロトロン、中性子源用サイクロトロン、陽子用サイクロトロン、重陽子用サイクロトロンとして用いられる。
【0016】
本実施形態に係るサイクロトロン1は、ヨーク2、ポール3、コイル4、ディー電極5、制御部(制御手段)6、及び電源7を備えている。
【0017】
ヨーク2は、鉄や鉄合金(例えばコバルト鉄合金)、ケイ素銅板の積層体などからなる中空の部材である。ヨーク2は、上ヨーク部(第1ヨーク部)8、下ヨーク部(第2ヨーク部)9、及び側ヨーク部10によって中空の円盤形状に構成されている。
【0018】
上ヨーク部8及び下ヨーク部9は、中心軸Cの延在方向(上下方向)で互いに対向する略円板状の部位である。上ヨーク部8及び下ヨーク部9の外周側は、環状の側ヨーク部10を介して連結されている。ヨーク2内には、上ヨーク部8、下ヨーク部9、及び側ヨーク部10によって閉じられた内部空間が形成されており、この内部空間にポール3やコイル4が配置されている。
【0019】
なお、上ヨーク部8、下ヨーク部9、及び側ヨーク部10は、個別の部材である必要はなく、一体的に構成されていてもよい。側ヨーク部10は、単一の部材からなる必要はなく、複数の部材から構成されていてもよく、例えば上下に分割可能であってもよい。側ヨーク部10とは、ヨーク2の内部空間の側方に位置する部位を意味する。すなわち、側ヨーク部10の上下方向における長さLyは、内部空間の上下方向における長さ(上ヨーク部8と下ヨーク部9との間隔)に等しい。
【0020】
ポール3は、イオンビームを制御するための磁場を発生させる磁極であり、例えば鉄や鉄合金(例えばコバルト鉄合金)、ケイ素銅板の積層体などから構成されている。ポール3の材質は、ヨーク2と同じであってもよく、ヨーク2と異なっていてもよい。
【0021】
ポール3は、上ヨーク部8の内面に固定された上ポール(第1のポール)12と、下ヨーク部9の内面に固定された下ポール(第2のポール)13と、を有している。上ポール12の周囲には、上ポール12を中心として囲むように第1のコイル14が配置されている。同様に、下ポール13の周囲には、下ポール13を中心として囲むように第2のコイル15が配置されている。
【0022】
上ポール12及び下ポール13は、同じ形状の部材であり、上下方向の長さ(厚さ)Lpは等しい。上ポール12及び下ポール13の間に、ポールギャップLgが形成されている。ポールギャップLgには、一対のディー電極5が設けられている。ポールギャップLgは、側ヨーク部10の上下方向の長さLyと、上ポール12及び下ポール13の上下方向の長さLpを用いて以下の式(1)で表わされる。なお、必ずしも一対のディー電極を設ける必要はなく、例えば一つのディー電極と一つのダミーディー電極を設ける構成であってもよい。
(数1)
Lg=Ly−2Lp…(1)
【0023】
一対のディー電極5は、イオンビームを加速する電場を発生させるための部材である。ディー電極5は、上下方向から見て扇状の部材であり、中心軸Cの周方向に貫通された空洞を有している。また、ディー電極5には、その周方向端部に対応してダミーディー電極16が配置されている。ディー電極5及びダミーディー電極16は、ディー電極5に高周波の交流電流が付与されることにより周方向に変化する電場を発生させる。
【0024】
制御部6は、サイクロトロン1の運転を制御する電子制御ユニットである。制御部6は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等を有している。制御部6は、コイル4、ディー電極5、電源7、ポール温度センサ(ポール温度検出手段)17、及びヨーク温度センサ(ヨーク温度検出手段)18と接続されている。
【0025】
ポール温度センサ17は、上ポール12の温度を検出するセンサである。ポール温度センサ17は、図1において上ポール12の右側端部の下端に配置されている。
【0026】
ヨーク温度センサ18は、側ヨーク部10の温度を検出するセンサである。ヨーク温度センサ18は、図1における側ヨーク部10の左端で、上下方向(上ポール12と下ポール13の対向方向)における側ヨーク部10の略中央に位置している。ヨーク温度センサ18は、上ポール12及び下ポール13から等しく離れた位置で、且つ、ポール温度センサ17から遠い位置に配置されている。
【0027】
制御部6は、コイル4及びディー電極5に対して電源7からの電力の供給を制御している。制御部6は、ポール温度センサ17及びヨーク温度センサ18の検出結果に基づいて、コイル4及びディー電極5に対する電力供給を制御する。
【0028】
ここで、サイクロトロン1における熱の発生について説明する。サイクロトロン1の運転中には、ディー電極5が発生させる電場によって上ポール12及び下ポール13の対向面に電流による熱が生じると共に、これらの対向面にイオンビームの一部が衝突することによっても熱が生じる。上ポール12及び下ポール13の対向する面に入力された熱は、上ポール12及び下ポール13を通じてヨーク2に伝わる。
【0029】
具体的には、上ポール12の対向面に入力された熱は、上ポール12を通じて上ヨーク部8に伝わり、その一部は上ヨーク部8の端部から側ヨーク部10に伝わる。同様に、下ポール13の対向面に入力された熱は、下ポール13を通じて下ヨーク部9に伝わり、その一部は下ヨーク部9の端部から側ヨーク部10に伝わる。このように、熱が上ポール12、下ポール13、及び側ヨーク部10に伝わると、熱膨張が生じて上ポール12及び下ポール13も上下方向の長さLpが変化すると共に、側ヨーク部10の上下方向の長さLyが変化する。その結果、上記式(1)に示されるようにポールギャップLgにも変化が生じる。
【0030】
具体的には、ポールギャップLgの変化量ΔLgは、側ヨーク部10の平均温度の基準温度からの変化量ΔTy、上ポール12及び下ポール13の平均温度の基準温度からの変化量ΔTp、上ポール12、下ポール13、及び側ヨーク部10の線膨張率αを用いて以下の式(2)で表わすことができる。
(数2)
ΔLg=α(Ly×ΔTy−2Lp×ΔTp)…(2)
【0031】
このように、ポールギャップLgに変化が生じると、上ポール12と下ポール13の間の磁場にも変化が生じる。このため、温度によるポールギャップLgの変化を考慮して磁場を制御する必要がある。
【0032】
制御部6は、ポール温度センサ17及びヨーク温度センサ18の検出結果に基づいて、温度によるポールギャップLgの変化を考慮したコイル4への電力供給を行う。制御部6は、運転中のサイクロトロン1においては熱が入力される上ポール12側が高温で側ヨーク部10側が低温の熱分布となることから、ポール温度センサ17及びヨーク温度センサ18の検出結果に基づいて上ポール12から側ヨーク部10の略中央までの熱分布を考慮して電力供給を制御する。
【0033】
制御部6において、例えばコイルに対する電流量の変化ΔIは、側ヨーク部10の平均温度の基準温度(例えば常温)からの変化量ΔTyと、上ポール12及び下ポール13の平均温度の基準温度からの変化量ΔTpを用いて以下の式(3)で表わすことができる。なお、A,Bは係数である。
(数3)
ΔI=A×ΔTy−2B×ΔTp…(3)
【0034】
次に、サイクロトロン1の制御部6における制御の流れについて図2を参照して説明する。
【0035】
図2に示されるように、本実施形態に係るサイクロトロン1の制御部6では、コイル4の励磁開始時において、所定の初期化処理を行う(ステップS1)。次に、制御部6は、ポール温度センサ17により上ポール12の温度を検出すると共に、ヨーク温度センサ18により側ヨーク部10の温度を検出する(ステップS2)。制御部6は、ポール温度センサ17及びヨーク温度センサ18の検出結果を取得する。
【0036】
続いて、制御部6は、ポール温度センサ17及びヨーク温度センサ18の検出結果に基づいて、コイル4及びディー電極5に対する電力供給を制御する(ステップS3)。
【0037】
その後、制御部6は、コイル4の励磁終了の指示が入力されたか否かを判定する(ステップS4)。制御部6は、コイル4の励磁終了の指示が入力されていないと判定した場合、ステップS2に戻って処理を繰り返す。制御部6は、コイル4の励磁終了の指示が入力された判定した場合、コイル4の励磁を終了する。なお、コイル4の励磁終了の判定は別のフローで処理してもよい。
【0038】
以上説明した第1の実施形態に係るサイクロトロン1によれば、上ポール12の温度と側ヨーク部10の温度に基づいてコイルへの電力供給を制御するので、ポール3及びヨーク2の熱膨張によりポールギャップLgに変化が生じても、温度によるポールギャップLgの変化の影響を反映して磁場を高精度に制御することができ、イオンビームの制御の安定化を図ることができる。
【0039】
しかも、このサイクロトロン1によれば、上ポール12の温度と側ヨーク部10の温度に基づいてディー電極5への電力供給を制御するので、温度によるポールギャップLgの変化の影響を反映して電場を高精度に制御することができる。従って、このサイクロトロン1によれば、磁場及び電場の制御精度の向上により、磁場及び電場によりイオンビームの制御を一層安定化させることができる。
【0040】
また、このサイクロトロン1によれば、上下方向における側ヨーク部10の略中央にヨーク温度センサ18が配置されているので、熱が加えられる上ポール12及び下ポール13からほぼ等しく離れた位置において側ヨーク部10の温度を検出することができる。このため、ヨーク温度センサ18が上下いずれかに片寄って配置される場合と比べて、側ヨーク部10の平均的な温度を適切に測定して温度によるポールギャップLgの変化の影響を精度良く制御に反映することができる。
【0041】
(第2の実施形態)
図3に示されるように、第2の実施形態に係るサイクロトロン21は、第1の実施形態に係るサイクロトロン1と比べて、温度センサの数を増やした点のみが異なっている。温度センサ以外の構成要素については、第1の実施形態と同じため同じ符号を付して説明を省略する。
【0042】
具体的には、サイクロトロン21のポール温度センサ22は、上ポール12の温度を検出する第1のポール温度センサ24と、下ポール13の温度を検出する第2のポール温度センサ25と、を有している。第1のポール温度センサ24は、第1の実施形態に係るポール温度センサ17と同じ位置に配置されている。一方、第2のポール温度センサ25は、下ポール13の右側端部の上端に配置されている。
【0043】
また、ヨーク温度センサ23は、側ヨーク部10の上下方向の略中央に配置された第1のヨーク温度センサ26と、側ヨーク部10と上ヨーク部8の境界に配置された第2のヨーク温度センサ27と、側ヨーク部10と下ヨーク部9の境界に配置された第3のヨーク温度センサ28と、を有している。
【0044】
なお、側ヨーク部10と上ヨーク部8の境界とは、部材の境界を意味するものではない。側ヨーク部10及び上ヨーク部8が一つの部材である場合には、中空のヨーク2の内部空間の側方に位置する部位と当該内部空間より上方に位置する部位との境界が側ヨーク部10と上ヨーク部8の境界に相当する。側ヨーク部10と下ヨーク部9の場合も同じである。
【0045】
第2の実施形態に係るサイクロトロン21の制御部6では、第1のポール温度センサ24、第2のポール温度センサ25、第1のヨーク温度センサ26、第2のヨーク温度センサ27、及び第3のヨーク温度センサ28の検出結果に基づいて、コイル4及びディー電極5への電力供給を制御する。
【0046】
以上説明した第2の実施形態に係るサイクロトロン21によれば、上ポール12及び下ポール13の両方の温度を検出することで、より精度良くポールギャップの変化の影響を制御に反映することができるので、イオンビームの制御の安定化に有利である。しかも、このサイクロトロン21では、側ヨーク部10の上ポール12と下ポール13との境界にも温度センサ27,28を対称的に配置することで、側ヨーク部10の平均的な温度をより正確に検出することができるので、側ヨーク部10の熱膨張に起因するポールギャップLgの変化をより確実に制御に反映することができ、イオンビームの制御を一層安定化させることができる。
【0047】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明に係るサイクロトロンは、一対のポールが上下方向で対向する横置き型のサイクロトロンに限られず、一対のポールが水平方向で対向する縦置き型のサイクロトロンであってもよい。
【0048】
また、ポール温度センサ及びヨーク温度センサの位置や数は、上述したものに限られない。第1の実施形態において、上ポールに代えて下ポールに温度センサを設けてもよく、両方に温度センサを設けてもよい。また、第2の実施形態において、ヨーク温度センサは三つではなく何れか二つであってもよい。また、上ポールと上ヨークの境界や下ポールと下ヨークの境界に温度センサを配置してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1,21…サイクロトロン 2…ヨーク 3…ポール 4…コイル 5…ディー電極 6…制御部(制御手段) 7…電源 8…上ヨーク部 9…下ヨーク部 10…側ヨーク部 12…上ポール 13…下ポール 16…ダミーディー電極 17,22…ポール温度センサ(ポール温度検出手段) 18,23…ヨーク温度センサ(ヨーク温度検出手段) 24…第1のポール温度センサ(第1のポール温度検出手段) 25…第2のポール温度センサ(第2のポール温度検出手段) 26…第1のヨーク温度センサ 27…第2のヨーク温度センサ 28…第3のヨーク温度センサ C…中心軸 Lg…ポールギャップ
図1
図2
図3