特許第6138469号(P6138469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138469
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】杭圧入装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/00 20060101AFI20170522BHJP
   E02D 7/20 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   E02D13/00 Z
   E02D7/20
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-268240(P2012-268240)
(22)【出願日】2012年12月7日
(65)【公開番号】特開2014-114567(P2014-114567A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】北村 精男
(72)【発明者】
【氏名】都築 良夫
(72)【発明者】
【氏名】藤田 知也
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−167758(JP,A)
【文献】 特開2008−007946(JP,A)
【文献】 特開2000−064284(JP,A)
【文献】 実開平4−97993(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00−13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭とオーガ装置を地中に圧入する杭圧入装置であって、
当該杭圧入装置は、前記杭と前記オーガ装置のオーガケーシングを掴むチャック装置を備え、
前記チャック装置は、前記オーガケーシングに向けて押し出し、前記オーガケーシングを把持するケーシングチャック部を備えており、前記ケーシングチャック部は可動爪を有し、その可動爪の把持面の全面を含む一部が、前記オーガケーシングに設けられた凹部に嵌入することで、前記オーガケーシングの上下動を規制することを特徴とする杭圧入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭圧入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、杭を地盤に打ち込んで埋設する装置として、既設の杭から反力を取って杭を地中に圧入する杭圧入機が知られている。
杭圧入機は、装置本体と、装置本体の下部に設けられ、既設の杭を掴むクランプ装置と、装置本体の前端部に設けられ、既設の杭に隣接した位置に圧入する杭を挟んで保持するチャック装置とを備えている。この杭圧入機は、クランプ装置で既設杭の上端側を掴み、その既設杭から反力を取った状態で杭を把持するチャック装置を降下させるようにして、杭を地中に圧入するようになっている。
そして、杭圧入機を用い、硬質地盤に対して杭の圧入施工を行う場合にオーガ装置を併用することがある。その際、オーガ装置のオーガケーシングをチャック装置で把持するために、チャック装置は、杭を掴むパイルチャック部と、オーガケーシングを掴むケーシングチャック部とを備えている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
例えば、図4(a)(b)に示すように、チャック装置25は、杭を掴むパイルチャック部1と、オーガケーシングKを掴むケーシングチャック部2とを備えている。なお、チャック装置25が杭を把持していない状態では、パイルチャック部1はオーガケーシングKを掴むことが可能になっている。
【0004】
そして、杭の圧入施工時にオーガスクリューSのオーガヘッドが損傷・摩耗するなどした場合にオーガヘッドを交換することになるが、この交換作業はオーガケーシングKを把持したチャック装置25の下方で行われるので、その交換作業時にオーガケーシングKが落下しないように、オーガケーシングKをクレーンで吊った状態で交換作業を行うことが好ましい。一方、低空間・狭隘空間などクレーンの設置が困難な現場であっても、オーガヘッドの交換作業を適正に行うために、図4(a)(b)に示すように、チャック装置25に油圧駆動によって出没自在としたロックピン3を配設し、オーガケーシングKのケーシングレールLに設けられたレールスリットHにロックピン3を挿入することで、物理的にオーガケーシングKの落下を防止する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3063835号公報
【特許文献2】特許第3263037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術の場合、チャック装置25にロックピン3と、そのロックピン3を作動させるための油圧回路などを設けるために、装置構成が煩雑になってしまい、チャック装置25が大型化したり、コスト増を招いたりするなどの問題があった。
【0007】
本発明の目的は、簡易な構成でオーガケーシングの落下防止を図ることができる杭圧入装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
杭とオーガ装置を地中に圧入する杭圧入装置であって、
当該杭圧入装置は、前記杭と前記オーガ装置のオーガケーシングを掴むチャック装置を備え、
前記チャック装置は、前記オーガケーシングに向けて押し出し、前記オーガケーシングを把持するケーシングチャック部を備えており、前記ケーシングチャック部は可動爪を有し、その可動爪の把持面の全面を含む一部が、前記オーガケーシングに設けられた凹部に嵌入することで、前記オーガケーシングの上下動を規制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構成でオーガケーシングの落下防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る杭圧入装置を側方視して示す概略図である。
図2】本発明に係るチャック装置を側方視して示す縦断面図(a)と、図2(a)のII−II線における概略横断面図である。
図3】チャック装置がオーガケーシングと杭を把持した状態を側方視して示す縦断面図(a)と、図3(a)のIII−III線における概略横断面図である。
図4】従来のチャック装置を側方視して示す縦断面図(a)と、図4(a)のIV−IV線における概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係る杭圧入装置、チャック装置及びオーガケーシングのチャック方法の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
杭圧入装置10は、図1に示すように、所定の杭P(例えば、鋼矢板など)を地中に圧入するパイル圧入機であり、既に地中に圧入された既設杭Pの上端側を掴んで支持する複数のクランプ装置11…を備えたサドル12と、サドル12に対して前後動可能なスライドベース13と、スライドベース13上で左右に旋回可能なリーダマスト14と、リーダマスト14の前面に昇降可能に取り付けられたチャック装置15と、リーダマスト14に対してチャック装置15を昇降駆動するメイン油圧シリンダ16等を備えている。
【0013】
この杭圧入装置10は、硬質地盤に対して杭Pの圧入施工を行う場合にオーガ装置を併用することができる。つまり、杭圧入装置10は、杭Pとオーガ装置を地中に圧入する圧入装置として機能する。
オーガ装置は、その先端部にオーガヘッドを交換可能に備えるオーガスクリューS、そのオーガスクリューSの周囲を覆う略筒状のオーガケーシングK等を備えて構成されている(図2(a)参照)。なお、オーガ装置の構成や動作は従来公知のものと同様であるので、ここでは詳述しない。オーガケーシングKの本発明に関わる部分については後述する。
【0014】
クランプ装置11は、サドル12の下面に設けられている。このクランプ装置11は、例えば、先に圧入された既設の杭Pである鋼矢板の上端側を挟んだ状態で、図示しない油圧シリンダの駆動によりその鋼矢板の上端部を挟持して掴むことができる。つまり、クランプ装置11は、既設杭Pを掴むことで杭圧入装置10を既設杭Pの上端部に固定する固定手段として機能する。
特に、クランプ装置11は、掴んで支持した既設杭Pから反力を取って、杭圧入装置10が新たに杭Pを圧入することができるように、杭圧入装置10を既設杭Pの上端部に固定し設置するようになっている。
【0015】
スライドベース13は、サドル12に対し前方に移動してチャック装置15を水平に前側に移動させることにより、サドル12を移動することなく、先頭のクランプ装置11が支持している既設杭Pの先に、新たな杭を順次圧入することを可能にする。
リーダマスト14は、スライドベース13に対し左右に旋回可能とされることにより、順次並んで圧入される杭の列の方向を直角に曲げたり、湾曲して曲げたりすることが可能となっている。
【0016】
チャック装置15は、その背面側がリーダマスト14の前面側に昇降可能に嵌合した状態とされるとともに、リーダマスト14とチャック装置15に接続されたメイン油圧シリンダ16により昇降駆動されるようになっている。
また、このチャック装置15の内部には、図2(a)(b)、図3(a)(b)に示すように、杭Pを掴むパイルチャック部1と、オーガケーシングKを掴むケーシングチャック部2が設けられている。つまり、チャック装置15は、パイルチャック部1とケーシングチャック部2とを備えて構成されている。
【0017】
パイルチャック部1は、図2(a)、図3(a)に示すように、対向して配置された可動爪1aと固定爪1bを備えており、可動爪1aは、図示しないシリンダの駆動により作動して固定爪1b側に移動可能となっている。
そして、チャック装置15にオーガケーシングKと杭Pが上下に貫通するように配された状態でパイルチャック部1を作動させ、パイルチャック部1の可動爪1aを杭Pに向けて押し出すことで、可動爪1aとオーガケーシングKの間に杭Pを挟み込んで、チャック装置15がオーガケーシングKと杭Pを把持することができる。このときオーガケーシングKはケーシングチャック部2によって挟持されている。
なお、チャック装置15が杭を把持していない状態において、パイルチャック部1は、チャック装置15に挿通されたオーガケーシングKを掴むことが可能になっている。
【0018】
ケーシングチャック部2は、図2(a)(b)に示すように、対向して配置された可動爪2aと固定爪2bを備えており、可動爪2aは、図示しないシリンダの駆動により作動して固定爪2b側に移動可能となっている。なお、可動爪2aは、オーガケーシングKの長手方向に沿ってその外周面の左右2箇所に形成されている突条のケーシングレールLに当接するように、左右一対・上下一対の計4つ設けられている。
そして、チャック装置15にオーガ装置のオーガケーシングKが上下に貫通するように配された状態では、オーガケーシングKのケーシングレールLが可動爪2aと固定爪2bの間を通されるようになっており、この状態でケーシングチャック部2を作動させ、ケーシングチャック部2の可動爪2aをオーガケーシングKに向けて押し出すことで、可動爪2aと固定爪2bの間にケーシングレールLを挟み込んで、チャック装置15がオーガケーシングKを把持するようになっている。
【0019】
そして、チャック装置15が把持した杭PやオーガケーシングK(オーガ装置)を地中に圧入する際、チャック装置15の昇降範囲は限られているので、杭PやオーガケーシングKを把持してチャック装置15を下降させることと、杭PやオーガケーシングKを離してチャック装置15を上昇させることを繰り返すようになっている。これにより、チャック装置15が昇降する1ストローク分ずつ杭PおよびオーガケーシングKを圧入することが繰り返され、チャック装置15の昇降範囲より深く杭PやオーガケーシングKを地中に圧入することが可能になっている。
【0020】
上記した杭圧入装置10は、既設杭Pの先に新たな杭Pをチャック装置15で圧入する動作と、クランプ装置11による既設杭Pの上端部の把持と解除の動作と、サドル12に対するスライドベース13の前後動の動作と、を組み合わせることで、既設杭Pからなる杭列上を自走し移動することができる。
なお、杭圧入装置10が杭列上を自走する動作は周知であるので、ここでは詳述しない。
【0021】
次に、杭圧入装置10のチャック装置15によって、オーガケーシングKの上下動を規制するように保持するオーガケーシングのチャック方法について説明する。
【0022】
オーガ装置を用いた杭Pの圧入施工時にオーガスクリューSのオーガヘッドを交換する際、その交換作業はオーガケーシングKを把持したチャック装置15の下方で行うことになるため、交換作業時にオーガケーシングKが落下しないように、オーガケーシングKの上下動を規制する必要がある。
本発明では、オーガケーシングKのケーシングレールLに、ケーシングチャック部2の可動爪2aが嵌入する凹部Mを設けることで、オーガケーシングKの落下防止を図った。
【0023】
例えば、オーガスクリューSのオーガヘッドの交換を行う際、交換作業を行い易い高さにオーガケーシングKをチャック装置15で保持することになる。
その交換作業に適した高さに配されたオーガケーシングKをチャック装置15で保持する場合に、そのオーガケーシングKのケーシングレールLにおけるケーシングチャック部2に相当する位置に、ケーシングチャック部2の可動爪2aが嵌入する凹部Mを設けるようにする。
本実施形態では、交換作業に適した高さの配置として、例えば、オーガケーシングKの下端部が、チャック装置15の下端部とほぼ一致する配置に配されたオーガケーシングKをチャック装置15で保持する場合に、そのオーガケーシングKのケーシングレールLにおけるケーシングチャック部2の可動爪2aに相当する位置に、ケーシングチャック部2の下段側の可動爪2aが嵌入する凹部Mを設けている。
【0024】
具体的に、オーガスクリューSのオーガヘッドの交換を行う際、その交換作業を行い易い所定の配置でオーガケーシングKをチャック装置15で保持する。
このとき、図2(a)(b)に示すように、チャック装置15のケーシングチャック部2を作動させて、ケーシングチャック部2の下段側の可動爪2aをケーシングレールLの凹部Mに嵌入させるようにする。
こうしてケーシングチャック部2の可動爪2aをケーシングレールL(オーガケーシングK)に設けられた凹部Mに嵌入するようにチャックしていれば、オーガケーシングKの上下動を規制することができるので、可動爪2aを作動させるシリンダに何らかの異常が生じて保持圧力が低下することや、可動爪2aとケーシングレールLの間の摩擦抵抗が低いために滑り易いことがあっても、物理的にオーガケーシングKの落下を防止することができる。
【0025】
上記したような、ケーシングチャック部2の可動爪2aをケーシングレールLに設けられた凹部Mに嵌入するオーガケーシングのチャック方法は、オーガケーシングKの落下を防止することに優れた手法である。
更に、本実施形態では、オーガスクリューSのオーガヘッドの交換作業時に、パイルチャック部1によってもオーガケーシングKを掴んで保持することができるので、ケーシングチャック部2によるオーガケーシングKの落下防止をパイルチャック部1がサポートするようにして、その落下防止性能を向上させることができる。
【0026】
以上のように、杭とオーガ装置を地中に圧入することが可能な杭圧入装置10においてオーガスクリューSのオーガヘッドの交換を行う場合に、その交換作業に応じた所定位置に配されたオーガケーシングKをチャック装置15で保持する際、チャック装置15のケーシングチャック部2を作動させて、ケーシングチャック部2の可動爪2aをケーシングレールLの凹部Mに嵌入させることで、オーガケーシングKの上下動を規制することができる。
このように、ケーシングレールLの凹部Mにケーシングチャック部2の可動爪2aを嵌入させて、オーガケーシングKの上下動を規制し、物理的にオーガケーシングKの落下を防止することができるので、作業者はオーガケーシングKの落下を心配することなく、オーガスクリューSのオーガヘッドの交換を行うことができる。
【0027】
そして、本発明に係る杭圧入装置10のチャック装置15には、従来技術のようなロックピン3が設けられておらず、比較的簡素な装置構成を有するので、コスト増を招くことや、装置が大型化してしまうことはない。一方、従来技術のチャック装置25の場合、進退駆動するロックピン3を配設するピン取付孔を装置機枠に形成するため、その部分の機枠の肉厚を増すようにするなど強度対策が必要であった。
また、従来技術のチャック装置25がロックピン3を用いることに対し、本発明に係る杭圧入装置10のチャック装置15の場合、既存のケーシングチャック部2を利用し、そのケーシングチャック部2の可動爪2aをケーシングレールLに設けられた凹部Mに嵌入することで、オーガケーシングKの上下動を規制するようになっているので、既存のチャック装置15によってオーガケーシングKの落下を好適に防止することができる。
このように、本発明に係る杭圧入装置10、チャック装置15及びオーガケーシングのチャック方法の技術は、簡易な構成でオーガケーシングKの落下防止を図ることができる優れた技術であるといえる。
【0028】
なお、以上の実施の形態においては、オーガケーシングKのケーシングレールLに、ケーシングチャック部2の可動爪2aが嵌入する凹部Mを設けるとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ケーシングレールLにケーシングチャック部2の可動爪2aが嵌入する貫通孔を設けるようにしてもよい。
【0029】
また、以上の実施の形態においては、ケーシングチャック部2の下段側の可動爪2aをケーシングレールLの凹部Mに嵌入させるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ケーシングチャック部2の上段側の可動爪2aを嵌入する凹部MをケーシングレールL(オーガケーシングK)設けてもよく、また、上下段両方の可動爪2aを嵌入する凹部MをケーシングレールL(オーガケーシングK)設けてもよい。
【0030】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
1 パイルチャック部
1a 可動爪
1b 固定爪
2 ケーシングチャック部
2a 可動爪
2b 固定爪
10 杭圧入装置
15 チャック装置
P 杭
K オーガケーシング
L ケーシングレール
M 凹部
図1
図2
図3
図4