特許第6138470号(P6138470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138470
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20170522BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   F04D29/44 X
   F04D29/44 S
   F04D29/66 H
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-268402(P2012-268402)
(22)【出願日】2012年12月7日
(65)【公開番号】特開2014-114727(P2014-114727A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】杉本 浩一
【審査官】 北川 大地
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−211717(JP,A)
【文献】 特開平05−263796(JP,A)
【文献】 特開2003−013895(JP,A)
【文献】 特開昭60−132099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブおよびその外周面に取り付けられた複数の遠心羽根を有する羽根車と、
前記羽根車を回転可能に収容するケーシングと、を備え、
前記ケーシングは、前記羽根車の回転によって外部から吸込まれた流体を前記羽根車に向けて導く吸込流路と、
前記羽根車の外周側に環状に形成され、前記羽根車の回転によって外周側に吐出される前記流体の流れを減速させるディフューザ部と、
前記ディフューザ部の外周側に形成され、周方向に沿って断面積が漸次増大する渦巻き状のボリュート部と、
前記ボリュート部の断面積が最大の部分から外周側に向けて延びる出口管と、
前記ディフューザ部において前記流体が流れるディフューザ流路の側壁面に形成され、前記ボリュート部内と前記ディフューザ流路内とを連通する連通部とを備え、
前記連通部のディフューザ流路側の開口部が、前記ディフューザ流路の下流側に形成され、かつ、前記ボリュート部の最小面積部と前記出口管との間に形成された舌部を基準として、前記ディフューザ部の上流側30度から下流側30度までの領域にのみ形成されていることを特徴とする遠心圧縮機。
【請求項2】
前記連通部は、前記ディフューザ部の周方向に沿って間隔を隔てて複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記連通部は、少なくとも、前記ボリュート部の断面積が最大の部分の内周側に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記連通部は、少なくとも、前記側壁面側の端部が、前記ディフューザ部の内周側から外周側に向けて傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の遠心圧縮機。
【請求項5】
前記ディフューザ部は、周方向に等間隔で設けられたディフューザベーンを有し、
前記羽根車の回転軸の軸方向から見た場合に、前記連通部前記側壁面側の開口における、前記連通部の前記ボリュート部内側の端部と前記ディフューザ流路内側の端部とを結ぶ方向が、前記ディフューザベーンの翼長方向における外周側端部と平行に形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の遠心圧縮機。
【請求項6】
前記連通部のディフューザ流路側の開口部が、前記舌部を基準として、前記舌部から前記ディフューザ部の上流側30度までの範囲にのみ形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を昇圧して圧縮流体とする遠心圧縮機に関し、特に圧縮流体の吐出側に設けられるディフューザ部を備えた遠心圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機は、回転するハブおよびその外周面に取り付けられた多数の遠心羽根を有した羽根車と、羽根車を収納するとともに流体の流路を形成するケーシングとで主として構成されている。
【0003】
流体の流路としては、羽根車の回転によって外部から流体を吸い込んで羽根車に導く吸込流路と、羽根車の外周側で略円環状をなし、羽根車から吐出される気流を減速させることで静圧を回復させるディフューザ部と、ディフューザ部の外周側に設けられ、断面積が周方向に沿って拡大するように形成され、気流を減速・昇圧する渦巻状のボリュート部および出口管と、が設けられている。
【0004】
このような遠心圧縮機においては、羽根車が回転すると、羽根車が外部から導入したガスや空気等の流体を圧縮する。こうして形成された流体の流れ(気流)は、羽根車の外周端からディフューザ部およびボリュート部を通って出口管から外部へ送出される。
【0005】
ところで、遠心圧縮機では、特有の周期で圧縮空気を吐出することによって圧力および流量が変動し、一種の自励振動を起こすサージングという現象が発生する。このサージングが発生する圧力および流量が小流量側の作動限界を決定するものである。
一方で、流量が増加すると羽根車またはディフューザ部でチョーキングと呼ばれる流体の閉塞が発生し、大流量側の流量範囲が制限される。
したがって、遠心圧縮機においては、安定した作動を実現するために、小流量側ではサージングが発生せず、大流量側ではチョーキングが生じないような作動範囲で作動させる必要がある。
【0006】
ところで、ディフューザ部においては、小流量側では、ディフューザ流路内にディフューザ流路壁から剥離が発生し、その剥離によって生じる逆流領域がディフューザ部の後縁に達したときに、ボリュート部からの逆流が羽根車に達してサージングに至ると言われている。
【0007】
そこで、例えば、特許文献1に記載された技術においては、ディフューザの壁面の裏側に、流体の流動方向に沿って循環通路を設け、この循環通路の第1開口をディフューザの壁面のインペラ(羽根車)の流体出口側に形成し、第2開口をディフューザの壁面の吐出口側に形成している。
このような構成においては、逆流が生じやすいディフューザの壁面近傍を流れる流体は、第2開口から循環通路に進入して第1開口から吐出する循環流となり、ディフューザでの見掛けの流量が増加する。これにより、壁面の近傍の流れがスムーズなものとなり、流体の逆流の生成を抑制してサージングまでの流量範囲を拡大することができる。その結果、ディフューザとしての機能を損なうことなく低流量時における流体の逆流によるサージングの発生を確実に抑制することができる。
【0008】
また、特許文献2に記載された技術においては、ディフューザ流路に流れる流体の一部をディフューザ流路における下流側領域から上流側領域まで循環流体として戻す循環流路を備え、循環流路に流れる流体は、冷却手段により冷却される構成を有している。
これにより、循環流路を流れる流体は冷却されてディフューザ流路の上流側領域に戻される。これにより、遠心圧縮機の圧縮性能が向上するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−240680号公報
【特許文献2】特開2010−151034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、遠心圧縮機の作動範囲をさらに広げることが常に要求されており、依然として改善の余地がある。
特許文献1,2に記載の技術は、いずれも、ディフューザ流路内を流れる流体の一部を循環させて見掛けの流量を増大させることによって、流体の逆流の生成を抑制しているため、実質的な作動効率が低下している。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、サージングの発生を抑制して作動範囲をより一層広げつつ、その作動効率を高めることのできる遠心圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の遠心圧縮機は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明は、ハブおよびその外周面に取り付けられた複数の遠心羽根を有する羽根車と、前記羽根車を回転可能に収容するケーシングと、を備え、前記ケーシングは、前記羽根車の回転によって外部から吸い込まれた流体を前記羽根車に向けて導く吸込流路と、前記羽根車の外周側に環状に形成され、前記羽根車の回転によって外周側に吐出される前記流体の流れを減速させるディフューザ部と、前記ディフューザ部の外周側に形成され、周方向に沿って断面積が漸次増大する渦巻き状のボリュート部と、前記ボリュート部の断面積が最大の部分から外周側に向けて延びる出口管と、前記ディフューザ部において前記流体が流れるディフューザ流路の側壁面に形成され、前記ボリュート部内と前記ディフューザ流路内とを連通する連通部と、を備え、前記連通部のディフューザ流路側の開口部が、前記ディフューザ流路の下流側に形成され、かつ、前記ボリュート部の最小面積部と前記出口管との間に形成された舌部を基準として、前記ディフューザ部の上流側30度から下流側30度までの領域にのみ形成されていることを特徴とする。
このような遠心圧縮機は、羽根車の回転により、外部から吸い込まれた流体が、吸込流路を経て、羽根車の外周側のディフューザ部に吐出されて減速され、ボリュート部へと流れ込む。ボリュート部においては、断面積が小さい側から大きい側へと流体が流れ、出口管から外部に高圧圧縮流体として吐出される。
このとき、ディフューザ部においては、連通部を通して、ボリュート部内の高圧圧縮流体が、ディフューザ流路内に吐出される。これによってディフューザ壁面から発生した剥離に伴う逆流領域がディフューザ部後縁に達する流量をより小さくしてサージングまでの流量範囲を拡大することができる。しかも、ディフューザ部を通過した高圧圧縮流体をボリュート部から循環させることで、ディフューザ部における効率を低下させることがない。
このような連通部は、前記ディフューザ部の周方向に沿って間隔を隔てて複数形成されているのが好ましい。連通部は、貫通孔としても良いし、ディフューザ部の周方向に連続するスリットとしても良い。
【0012】
ところで、ディフューザ下流には、断面積が周方向に沿って渦巻状に拡大するボリュート部等、非軸対称構造物が存在する場合が多い。この影響により、ディフューザ下流においては、周方向に不均一な静圧分布が存在する。この不均一な静圧分布によって、上記の逆流領域のディフューザ流路壁に対する半径方向の長さが周方向に異なる。そして、逆流領域が、最も早く後縁に達した箇所からサージングを起こすと考えられている。
そこで、前記連通部は、少なくとも、前記ボリュート部の断面積が最大の部分の内周側に形成するのが好ましい。
【0013】
さらに、前記連通部は、少なくとも、前記側壁面側の端部を、前記ディフューザ部の内周側から外周側に向けて傾斜して形成しても良い。これにより、連通部からディフューザ流路内に吐出する高圧圧縮流体を、ディフューザ壁面に沿わせることができ、流体の逆流の生成を効果的に抑制できる。
【0014】
また、前記ディフューザ部は、周方向に等間隔で設けられたディフューザベーンを有し、前記羽根車の回転軸の軸方向から見た場合に、前記連通部前記側壁面側の開口における、前記連通部の前記ボリュート部内側の端部と前記ディフューザ流路内側の端部とを結ぶ方向が、前記ディフューザベーンの翼長方向における外周側端部と平行に形成されている構成としても良い。
さらに、前記連通部のディフューザ流路側の開口部が、前記舌部を基準として、前記舌部から前記ディフューザ部の上流側30度までの範囲にのみ形成されている構成としても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明の遠心圧縮機によれば、サージングの発生を抑制し、その作動範囲をより一層広げつつ、その作動効率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る遠心圧縮機の部品構成を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る遠心圧縮機の軸線に沿った半断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る遠心圧縮機のディフューザ部における流体の流れの様子を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る遠心圧縮機の要部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る遠心圧縮機の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態にかかる遠心圧縮機10について説明する。
図1図2に示すように、遠心圧縮機10は、図示しないモータまたはタービンなどの駆動装置により回転駆動される回転軸11と、回転軸11回りに回転する羽根車12と、回転軸11および羽根車12を収容するとともに流体の流路を形成するケーシング20と、を具備している。
【0018】
羽根車12は、回転軸11と一体に設けられたハブ13と、ハブ13の外周面に設けられた複数のブレード(遠心羽根)14と、が備えられている。ハブ13は、回転軸11の一端側の端部13aから他端側の端部13bに向けて、その外径が漸次拡大する湾曲面13cが形成されている。複数のブレード14は、ハブ13の湾曲面13cに、周方向に等間隔に配置されている。ここで図1に示すように、ブレード14は、ハブ13の内周側に設けた内周翼14Aと、ハブ13の外周側に設けた外周翼14Bとからなる、多重構成としても良い。
【0019】
ケーシング20は、一端20a側に形成された吸込口29から羽根車12に向けて、回転軸11の軸線方向に沿って連続する吸込流路21と、羽根車12の外周側に円環状をなして形成されたディフューザ部30と、ディフューザ部30の外周(下流)側に周方向に連続して形成され、周方向に直交する断面における断面積が周方向に沿って漸次拡大する渦巻き状のボリュート部22と、ボリュート部22の最大面積部22bに接続されて接線方向に延びる出口管23と、を備えている。
ここで、最大面積部22bに対しては、ボリュート部22の周方向において、最小面積部22aと出口管23とが隣接している。そしてボリュート部22の最小面積部22aと出口管23との間には、舌部28が形成されている。
【0020】
ディフューザ部30は、羽根車12の外周部全周にわたって、内周側(羽根車12側)と外周側(ボリュート部22側)とに開口している。このディフューザ部30は、ケーシング20の一部によって形成された環状円板部31と、環状円板部31に間隔を隔てて対向配置された環状円板32と、環状円板32に一体に形成され、環状円板32の周方向に等間隔で設けられたディフューザベーン33と、を備えている。ディフューザベーン33は、環状円板32の径方向に対し、傾斜して形成されている。これにより、環状円板32の周方向において互いに隣接するディフューザベーン33,33の間隔は、内周側から外周側に向けて漸次拡大するようになっている。
このようなディフューザ部30においては、環状円板部31と環状円板32との間が、ディフューザ流路35とされている。
【0021】
本実施形態においては、環状円板32およびディフューザベーン33からなるディフューザ部材34は、ケーシング20とは別体とされ、ケーシング20の一部をなす環状円板部31と、環状円板部31に対向して形成されたケーシング20の保持部24との間に挟み込まれるように設けられている。そして、環状円板32の内周側端部32aは、環状円板部31との間隔が、羽根車12の外周部12aから外周に行くにしたがって漸次縮小する湾曲面状とされている。
【0022】
また、環状円板32の外周側端部32bは、保持部24の外周側端部24aよりも外周側に延びて、ボリュート部22内に突出するよう形成されている。環状円板32において、保持部24の外周側端部24aよりも外周側に、ディフューザ流路35に面する側壁面32cとその反対側の背面32dとを連通する連通部40Aが形成されている。この連通部40Aは、環状円板32の周方向において間隔を隔てて複数が形成された、それぞれ周方向に連続するスリット41から形成することができる。
ここで、スリット41等からなる連通部40Aは、背面32d側の開口端40aから側壁面32c側の開口端(開口部)40bに向けて、ディフューザ部30の内周側から外周側に傾斜するように形成するのが好ましい。
さらに、連通部40Aにおいて、ディフューザ流路35側の開口端40bは、ディフューザ流路35の下流側に形成されているのが好ましい。この開口端40bは、より好ましくは、ディフューザ部30の外周部の半径に対し、ディフューザ部30の中心側から75%となる位置よりもさらに外周側に形成されているのが良い。これよりも内周側では開口端40aと開口端40bとの静圧差が大きいため、連通部40Aからディフューザ部30に導入される流れの速度が大きくなり、ディフューザ内部の流動を悪化させてしまう。
【0023】
上記のように構成された遠心圧縮機10の動作について以下に説明する。
遠心圧縮機10は、図示しないモータあるいはタービン等の駆動装置によって、羽根車12を回転軸11回りに回転駆動させる。羽根車12が回転することによって、外部から吸込口29を通してケーシング20内に取り込まれた流体が、吸込流路21を羽根車12に向けて流れる。
ケーシング20内に導入された流体は、ハブ13と一体に回転するブレード14の回転によって遠心力が与られて圧縮される。圧縮された流体の流れは、羽根車12の外周端から外周側のディフューザ部30に流れ込む。ディフューザ部30においては、羽根車12から外周側に吐出される気流を、周方向において互いに隣接するディフューザベーン33,33間に通すことで、気流を減速させ、静圧を回復させる。そして、ディフューザ部30から外周のボリュート部22に流れ込んだ流体は、最小面積部22aから最大面積部22bに向けて流れ、出口管23から高圧圧縮流体として吐出される。
【0024】
ここで、図3に示すように、環状円板部31と環状円板32との間のディフューザ流路35に対し、連通部40Aを通して、ディフューザ部30を経てボリュート部22内に流れ込んだ高圧圧縮流体が引き込まれる。ディフューザ部30においては、流量の低減に伴って、ディフューザ流路35内に環状円板32から剥離が発生し、その剥離による逆流領域Hがディフューザ部30の後縁(外周側の縁部)に向けて延びて行く。このとき、ボリュート部22から連通部40Aを経てディフューザ流路35内に流れ込んだ高圧圧縮流体の流れRにより、環状円板32に沿った部分における流体の流量を増やすことができる。これによって、環状円板32からの生じた大規模な剥離による逆流領域Hがディフューザ部30の後縁に向けて延びるのを防ぐことができる。
これによって、ディフューザ部30におけるサージングの発生を防ぐことが可能となり、遠心圧縮機10の作動範囲を拡大することが可能となる。
【0025】
また、連通部40Aが形成された環状円板32およびディフューザベーン33からなるディフューザ部材34は、ケーシング20とは別体としてもよい。これにより、連通部40Aの加工を、ディフューザ部材34単体の状態で容易に行うことが可能となる。
【0026】
ところで、上記の連通部40Aを構成する複数のスリット41は、ディフューザ部30の全周にわたって形成しても良いが、周方向の一部のみに形成することもできる。
ディフューザ部30の下流側においては、断面積が周方向に沿って拡大するボリュート部22において、周方向に不均一な静圧分布が舌部28の近傍に存在することが知られている。
そこで、上記の連通部40Aを構成するスリット41を、舌部28を基準として、舌部から上流側30度までの範囲にのみ形成しても良い。
また、上記の連通部40Aを構成するスリット41を、圧力分布がある、舌部28を基準として上流側30度から下流側30度の領域にのみ形成しても良い。
【0027】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下に説明する第2実施形態において、上記第1実施形態と共通する構成については、図中に同符号を付してその説明を省略し、上記第1実施形態との差異を中心に説明を行う。
図4に示すように、本実施形態においては、連通部40Bが、スリット41ではなく貫通孔42により形成されるとともに、この貫通孔42からなる連通部40Bが、環状円板32の背面32d側の開口端40aから側壁面32c側の開口端40bに向けて、環状円板32の径方向に対し、ディフューザベーン33の外周側端部33bと平行に、同程度の角度だけ傾斜して形成されている。
【0028】
このようにすると、連通部40Bを通して開口端40bからディフューザ流路35内に流れ込む高圧圧縮流体は、周方向で隣接するディフューザベーン33,33間の流れを乱すのを抑えることができる。したがって、ディフューザ部30におけるサージングの発生をより確実に防ぐことが可能となり、遠心圧縮機10の作動範囲をさらに拡大することができる。
【0029】
この場合も、上記の連通部40Bを、舌部28に対して上流側30度までの範囲にのみ形成しても良い。
【0030】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
例えば、連通部40A、40Bは、その断面形状、大きさ、配置等について、何ら限るものではない。
また、連通部40A、40Bを、内周側と外周側に複数列(複数重)に配置することも可能である。
また、ディフューザベーン33は無くてもよく、ケーシング20と保持部24は一体構造としても良い。
【符号の説明】
【0031】
10 遠心圧縮機
11 回転軸
12 羽根車
12a 外周部
13 ハブ
13a 端部
13b 端部
13c 湾曲面
14 ブレード(遠心羽根)
14A 内周翼
14B 外周翼
20 ケーシング
20a 一端
21 吸込流路
22 ボリュート部
22a 最小面積部
22b 最大面積部
23 出口管
24 保持部
24a 外周側端部
28 舌部
29 吸込口
30 ディフューザ部
31 環状円板部
32 環状円板
32a 内周側端部
32b 外周側端部
32c 側壁面
32d 背面
33 ディフューザベーン
33b 外周側端部
34 ディフューザ部材
35 ディフューザ流路
40A,40B 連通部
40a 開口端
40b 開口端(開口部)
41 スリット
42 貫通孔
図1
図2
図3
図4