特許第6138477号(P6138477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138477
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】真空凍結乾燥装置及び真空凍結乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 5/06 20060101AFI20170522BHJP
   F26B 3/347 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   F26B5/06
   F26B3/347
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-272582(P2012-272582)
(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公開番号】特開2014-119140(P2014-119140A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】河村 和彦
【審査官】 長浜 義憲
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03883958(US,A)
【文献】 特開昭61−006581(JP,A)
【文献】 特表2010−540276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 5/06
F26B 3/347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内には凍結された被乾燥物が載置される支持体が配置されるとともに、高周波電界に基づく誘電加熱により被乾燥物を乾燥する真空凍結乾燥装置であって、
前記支持体は上下複数段に配置され、前記支持体のうち少なくとも最上段の支持体及び最下段の支持体は導電性材料により高周波電界印加用の一対の電極として構成されるとともに、一対の電極間に高周波電界が印加されて誘電加熱により被乾燥物が乾燥される際に発生する水蒸気を凝縮させる凝縮装置が設けられ、前記凝縮装置の真空容器側に凝縮装置内の水分が真空容器内へ入り込まないようにする防水壁を備え、かつ凝縮装置内には冷媒が流れるコールドトラップ用配管が蛇行配置され、そのコールドトラップ用配管の外部に水を散布する氷融解用ノズルが設けられていることを特徴とする真空凍結乾燥装置。
【請求項2】
前記支持体は棚板により構成され、該棚板は等間隔で平行に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の真空凍結乾燥装置。
【請求項3】
前記支持体の全てが導電性の金属で形成され、各支持体には高周波電界印加用の一方の電極と他方の電極とが交互に接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の真空凍結乾燥装置。
【請求項4】
前記真空容器は四角箱状に形成されるとともに、各支持体は真空容器の側壁との間隔を一定に保つように四角板状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の真空凍結乾燥装置。
【請求項5】
前記真空容器内の被乾燥物の乾燥開始温度は−20〜−50℃、圧力は2〜50Paであり、高周波電界の周波数は3〜300MHzであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の真空凍結乾燥装置。
【請求項6】
被乾燥物を凍結する凍結工程と、凍結された被乾燥物を請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の真空凍結乾燥装置の上下複数段に配置された支持体上に載置した後真空容器を密閉して真空容器内を真空にする真空工程と、高周波電界印加用の一対の電極により高周波電界を印加して被乾燥物を乾燥する乾燥工程と、乾燥工程で発生した水蒸気を凝縮装置で凝縮させる凝縮工程とを備えることを特徴とする真空凍結乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寒天等の食品分野、電池材料分野、濾過膜やフィルタの製造分野等において使用され、乾燥時間の短縮が可能で、変色、変質等の乾燥後の品質低下を抑制することができる真空凍結乾燥装置及び真空凍結乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の凍結乾燥は、主たる熱源が輻射加熱によるものであったことから、乾燥時間が36〜48時間という長時間を必要としていた。このため、乾燥時間を短縮すべく、マイクロ波照射加熱や高周波誘電加熱を併用する技術が提案されている。例えば、被加熱物の高周波誘電加熱装置が特許文献1に開示されている。
【0003】
この高周波誘電加熱装置は対向配置された電極を備え、少なくとも一方の電極が全体加熱電極と部分加熱電極とからなり、全体加熱電極は被加熱物(被乾燥物)の投影面積よりも大きく、部分加熱電極は被加熱物の投影面積よりも小さく形成されている。前記全体加熱電極と部分加熱電極の少なくとも一方の電極には、被加熱物との距離の調整を行う手段が設けられている。
【0004】
そして、全体加熱電極又は部分加熱電極と被加熱物との距離を調整することにより、被加熱物表面と内部への電界強度を調整しながら全体加熱と部分加熱を同時に行うことが可能であり、被加熱物への電界集中を抑制した急速加熱が可能である。その結果、不定形な冷凍食品であっても解凍ムラを生じないで急速解凍を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−99263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1に記載されている従来構成の高周波誘電加熱装置においては、載置台がその上に冷凍豚ブロック肉のような大きな被乾燥物を載せるように構成されている。そして、1つの被乾燥物の乾燥後に新たな被乾燥物を載置台上に載せ、その被乾燥物の形状、水分量等に応じた条件で乾燥が行われる。このため、多数の被乾燥物を乾燥させる場合には、乾燥効率が悪く、乾燥時間を要するという問題があった。
【0007】
また、被乾燥物を乾燥する部位が開放状態となっている。そのため、特に乾燥初期には被乾燥物から多量の水蒸気が発生し、水分の多い状態で高周波電界が印加されて乾燥が行われる。従って、高周波電界の印加時に放電が発生しやすく、その影響で乾燥時間が長くなるという問題があった。
【0008】
さらに、被乾燥物表面の水分量にむらがあるとともに、高周波電界に基づく誘電加熱による加熱が不均一になりやすく、被乾燥物の変色や変質が生じて、品質が低下するという問題があった。
【0009】
そこで、本発明の目的とするところは、凍結乾燥を効率良く行うことができ、凍結乾燥時間の短縮を図ることができるとともに、被乾燥物の変色、変質等の品質低下を抑制することができる真空凍結乾燥装置及び真空凍結乾燥方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の真空凍結乾燥装置は、真空容器内には凍結された被乾燥物が載置される支持体が配置されるとともに、高周波電界に基づく誘電加熱により被乾燥物を乾燥する真空凍結乾燥装置であって、前記支持体は上下複数段に配置され、前記支持体のうち少なくとも最上段の支持体及び最下段の支持体は導電性材料により高周波電界印加用の一対の電極として構成されるとともに、一対の電極間に高周波電界が印加されて誘電加熱により被乾燥物が乾燥される際に発生する水蒸気を凝縮させる凝縮装置が設けられ、前記凝縮装置の真空容器側に凝縮装置内の水分が真空容器内へ入り込まないようにする防水壁を備え、かつ凝縮装置内には冷媒が流れるコールドトラップ用配管が蛇行配置され、そのコールドトラップ用配管の外部に水を散布する氷融解用ノズルが設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明の真空凍結乾燥装置は、請求項1に係る発明において、前記支持体は棚板により構成され、該棚板は等間隔で平行に配置されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明の真空凍結乾燥装置は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記支持体の全てが導電性の金属で形成され、各支持体には高周波電界印加用の一方の電極と他方の電極とが交互に接続されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明の真空凍結乾燥装置は、請求項1から請求項3のいずれか一項に係る発明において、前記真空容器は四角箱状に形成されるとともに、各支持体は真空容器の側壁との間隔を一定に保つように四角板状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明の真空凍結乾燥装置は、請求項1から請求項4のいずれか一項に係る発明において、前記真空容器内の被乾燥物の乾燥開始温度は−20〜−50℃、圧力は2〜50Paであり、高周波電界の周波数は3〜300MHzであることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明の真空凍結乾燥方法は、被乾燥物を凍結する凍結工程と、凍結された被乾燥物を請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の真空凍結乾燥装置の上下複数段に配置された支持体上に載置した後真空容器を密閉して真空容器内を真空にする真空工程と、高周波電界印加用の一対の電極により高周波電界を印加して被乾燥物を乾燥する乾燥工程と、乾燥工程で発生した水蒸気を凝縮装置で凝縮させる凝縮工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
本発明の真空凍結乾燥装置では、被乾燥物が載置される支持体は上下複数段に配置され、少なくとも最上段の支持体及び最下段の支持体は導電性材料により高周波電界印加用の一対の電極として構成され、かつ被乾燥物が乾燥される際に発生する水蒸気を凝縮させる凝縮装置が設けられている。
【0016】
このため、複数段の各支持体上に載置された複数の被乾燥物を高周波電界による誘電加熱で同時に乾燥することができ、被乾燥物の乾燥を速やかに行うことができる。また、凍結された被乾燥物を真空容器内で低温状態にて乾燥することができるとともに、誘電加熱により発生した水蒸気を凝縮装置で凝縮させて除去することができ、被乾燥物の品質を損なうことなく、乾燥を行うことができる。
また、前記凝縮装置の真空容器側には防水壁が備えられている。そのため、凝縮装置内の水分が真空容器内へ入り込まないようにすることができる。
さらに、凝縮装置内には冷媒が流れるコールドトラップ用配管が蛇行配置され、そのコールドトラップ用配管の外部に水を散布する氷融解用ノズルが設けられている。このため、コールドトラップ用配管の外周面に付着した氷を融解することができる。
【0017】
従って、本発明の真空凍結乾燥装置によれば、凍結乾燥を効率良く行うことができ、凍結乾燥時間の短縮を図ることができるとともに、被乾燥物の変色、変質等の品質低下を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明を具体化した第1実施形態の真空凍結乾燥装置の概略を示す正面側から見た説明図。
図2】真空凍結乾燥装置の真空容器本体の概略を示す斜視図。
図3】棚板上に載置された被乾燥物を示す平面図。
図4】第2実施形態の真空凍結乾燥装置の真空容器本体を示す要部正面図。
図5】第3実施形態の真空凍結乾燥装置の真空容器本体を示す要部正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図1図3に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1及び図2に示すように、真空凍結乾燥装置10を構成する真空容器本体11は四角枠状に形成され、四角箱状をなす真空容器蓋体12が被せられて密閉されるように構成されている。真空容器蓋体12はその底部のローラ13により移動可能に構成され、真空容器蓋体12の被ガイド部材14が真空容器本体11のガイドレール15に案内されて開閉されるようになっている。真空容器蓋体12の側壁12aには複数の窓16が設けられ、内部を視認できるようになっている。
【0021】
前記真空容器本体11には凝縮装置17が連結されている。前記真空容器本体11、真空容器蓋体12及び凝縮装置17により、真空容器18が四角箱状に形成されている。凝縮装置17の上端部に連結された吸引筒19には、減圧装置としての真空ポンプ20が接続され、その真空ポンプ20により吸引筒19を介して真空容器18内のエアが吸引されて、真空容器18内が2〜50Paの減圧に保持されるようになっている。真空容器18内の圧力が2Pa未満の場合には、真空容器本体11と真空容器蓋体12及び凝縮装置17による密閉構造を密閉度の高いものにしなければならない上に、真空ポンプ20の性能も高めなければならず、構造が複雑でコストも嵩むため好ましくない。その一方、圧力が50Paを超える場合には、減圧度が低く、真空容器18内の被乾燥物Mの温度が高くなるため品質が低下することとなって好ましくない。
【0022】
前記凝縮装置17内の真空容器本体11側には、断面山型状に形成された複数の防水壁21が上下方向に一定間隔をおいて配置され、凝縮装置17内の水分が真空容器本体11内へ入り込まないように構成されている。真空容器18内のエアは防水壁21間の狭い隙間を通過するようになっている。また、凝縮装置17内には−60〜−80℃の冷媒が流れるコールドトラップ用配管22が蛇行配置され、真空容器本体11内から凝縮装置17内に吸入された水蒸気を含むエアを凝縮させるようになっている。
【0023】
前記凝縮装置17の底部には排水管23が接続され、コールドトラップ用配管22で凝縮された水が外部へ排出される。凝縮装置17内の頂部には複数の氷融解用ノズル24が取付けられ、コールドトラップ用配管22の外部に水を散布してコールドトラップ用配管22の外周面に付着した氷を融解するようになっている。
【0024】
図2に示すように、真空容器本体11は四隅の支柱25により平面長方形状の天板26が支持されて構成されるとともに、その天板26の長手方向における中央部は真空容器本体11内を2等分する一対の仕切用支柱27で支持されている。なお、ガイドレール15は、天板26の両側端部に設けられている。前記四隅の各支柱25の内側には、幅方向に平行に延びる複数の支持片28が上下方向に一定間隔をおいて片持ち支持されている。また、前記一対の仕切用支柱27にも幅方向に延びる複数の対向支持片29が上下方向に一定間隔をおいて、前記支持片28と対峙するように片持ち支持されている。
【0025】
そして、前記支持片28と対向支持片29との間には、支持体としての棚板30が架け渡されるように構成されている。前記支持片28、対向支持片29及び棚板30は、導電性材料としてアルミニウム、鉄等の金属で形成されている。従って、棚板30は左右2列でそれぞれ上下方向に等間隔で平行になるように多数並べて支持される。例えば、支柱25及び仕切用支柱27の高さが1800mmのとき、棚板30は90段に設定される。この棚板30は、真空容器18を構成する四角箱状をなす真空容器蓋体12の側壁12aとの間隔を一定に保つように四角板状に形成され、棚板30と真空容器蓋体12の側壁12aとの間における放電を抑えるようになっている。
【0026】
図3に示すように、前記各棚板30上には、凍結された被乾燥物Mが縦横方向に一定間隔をおいて規則正しく載置され、全ての被乾燥物Mが均等に乾燥されるようになっている。なお、被乾燥物M間の間隔は、被乾燥物Mの大きさ、水分量等に応じて適切に設定される。前記真空容器18内の温度は、真空容器18内に冷凍された被乾燥物Mが収容されるため、通常−20〜−50℃の低温に設定される。なお、図1及び図2における支持片28、対向支持片29及びそれらの上に載置される棚板30の数は、実際よりも少なく描かれている。
【0027】
図1に示すように、高周波発信機31に接続された接続線32の他端は、支柱25の最上段の支持片28の端子33に電気的に接続されている。一方、支柱25の最下段の支持片28の端子33は、接地線34を介して接地されている。また、前記一対の仕切用支柱27の最上段の対向支持片29間及び最下段の対向支持片29間は、それぞれ連結線35で電気的に接続されている。
【0028】
そして、高周波発信機31から例えば周波数が3〜300MHzの高周波交番電界(以下、単に高周波電界という)を発信することにより、最上段の棚板30と最下段の棚板30との間に高周波電界が印加され、棚板30上の被乾燥物Mが高周波電界による誘電加熱により発熱して乾燥されるようになっている。高周波電界の周波数が3MHzを下回る場合には、誘電加熱による発熱が不足して、被乾燥物Mの乾燥に時間を要するため好ましくない。一方、高周波電界の周波数が300MHzを上回る場合には、放電(グロー放電)が発生したり、外乱が生じたりするおそれがあって好ましくない。なお、高周波発信機31の出力(kW/h)は、被乾燥物Mの数、水分量等を勘案して適宜設定される。
【0029】
次に、上記の真空凍結乾燥装置10を用いた真空凍結乾燥方法について説明する。
この真空凍結乾燥方法は、被乾燥物Mを凍結する凍結工程と、凍結された被乾燥物Mを真空容器本体11内の棚板30上に載置した状態で真空容器18内を真空にする真空工程と、被乾燥物Mに高周波電界を印加して乾燥する乾燥工程と、乾燥工程で発生した水蒸気を凝縮させる凝縮工程とを有している。
【0030】
前記凍結工程においては、洗浄、殺菌、計量等が行われた食品等の被乾燥物Mが棚板30上に載せられた状態で、−20〜−50℃に冷却されて凍結される。真空工程では、凍結後の被乾燥物Mが載置された棚板30は、真空容器本体11内の支持片28と対向支持片29間に載せられる。その状態で、真空容器蓋体12が凝縮装置17に当接するまで移動されて真空容器18内が密閉された後、真空ポンプ20を駆動させて、真空容器18内を2〜50Paの減圧に維持する。
【0031】
乾燥工程では、高周波発信機31を作動させて、一対の電極としての棚板30間に周波数が3〜300MHzの高周波電界を印加し、真空容器本体11内の被乾燥物Mを誘電加熱によって乾燥する。凝縮工程では、凝縮装置17内において、コールドトラップ用配管22内を流れる冷媒により、エア中の水蒸気が凝縮され、氷として捕獲され、乾燥終了後、氷融解用ノズル24で氷を融解して水として排水管23から排水される。
【0032】
次に、前記のように構成された第1実施形態の真空凍結乾燥装置10について作用を説明する。
図1に示すように、第1実施形態の真空凍結乾燥装置10では、被乾燥物Mが載置される棚板30は上下複数段に配置されている。このため、複数段の棚板30上に載置された被乾燥物Mを誘電加熱により同時に乾燥することができ、多数の被乾燥物Mを同時に、かつ速やかに乾燥することができる。
【0033】
また、電極として構成された最上段の棚板30と最下段の棚板30との間に周波数が3〜300MHzの高周波電界を印加して、各棚板30上の被乾燥物Mが誘電加熱により乾燥される。そのため、被乾燥物Mに対して適切な高周波エネルギーを与えることができ、被乾燥物Mを構成する分子(双極子)を運動させて摩擦熱を発生させ、被乾燥物Mを内部から乾燥に導くことができる。
【0034】
さらに、被乾燥物Mに高周波電界を印加することにより、被乾燥物Mが食品等の絶縁物であっても、高周波エネルギーによって被乾燥物Mの分子の運動に基づく摩擦熱で被乾燥物Mを発熱させて乾燥することができる。加えて、真空容器18内が乾燥初期に−20〜−50℃の低温に保持された状態で乾燥が行われることから、乾燥初期に食品のコラプス温度(−5〜−45℃、通常−5〜−15℃)に達することを回避でき、食品の変色、変質等の品質の低下を防止することができる。
【0035】
前記高周波電界が被乾燥物Mに印加されて発生した水蒸気は、凝縮装置17で氷として凝縮させて取り除くことができる。従って、真空容器18内での乾燥が円滑に進行するとともに、被乾燥物Mの品質を損なうことなく、乾燥を完了することができる。乾燥終了後、凝縮装置17の真空容器本体11側には防水壁21が設けられていることから、凝縮装置17内で氷融解用ノズル24にて氷を融解して水となっても、真空容器本体11側への水の逆流が防止される。
【0036】
以上の第1実施形態により発揮される効果を以下にまとめて記載する。
(1)第1実施形態の真空凍結乾燥装置10では、被乾燥物Mが載置される棚板30は上下複数段に配置され、最上段の棚板30と最下段の棚板30が導電性の金属により一対の電極として構成されるとともに、被乾燥物Mが乾燥される際に発生する水蒸気を凝縮させる凝縮装置17が設けられている。
【0037】
このため、複数段の棚板30上に載置された被乾燥物Mを高周波電界による誘電加熱で同時に乾燥することができ、被乾燥物Mの乾燥を迅速に行うことができる。また、凍結された被乾燥物Mを低温状態で乾燥することができ、かつ誘電加熱により発生した水蒸気を凝縮装置17で凝縮させて除去することができ、被乾燥物Mの品質を損なうことなく、乾燥を行うことができる。
【0038】
従って、第1実施形態の真空凍結乾燥装置10によれば、被乾燥物Mの凍結乾燥を効率良く行うことができ、凍結乾燥時間の短縮を図ることができるとともに、被乾燥物Mの変色、変質等の品質低下を抑制することができるという効果を奏する。
(2)前記棚板30は等間隔をおいて平行に配置されている。そのため、各棚板30上に載置された被乾燥物Mに対して高周波電界を均等に印加することができ、被乾燥物Mを均一かつ良好に乾燥することができる。
(3)前記真空容器蓋体12は四角箱状に形成されるとともに、棚板30は真空容器蓋体12の側壁12aとの間隔を一定に保つように四角板状に形成されている。従って、棚板30と真空容器蓋体12の側壁12aとの間における放電を抑制しつつ、被乾燥物Mの乾燥を有効に遂行することができる。
(4)前記真空容器18内の被乾燥物Mの乾燥開始温度は−20〜−50℃、圧力は2〜50Paであり、高周波電界の周波数は3〜300MHzである。このため、被乾燥物Mの品質低下を極力抑制しつつ、被乾燥物Mの凍結乾燥を有効かつ迅速に進めることができる。
(5)真空凍結乾燥方法は、被乾燥物Mを凍結する凍結工程と、凍結された被乾燥物Mを上下複数段に配置された棚板30上に載置した後に真空容器18内を真空にする真空工程と、高周波電界を被乾燥物Mに印加して被乾燥物Mを乾燥する乾燥工程と、乾燥工程で発生した水蒸気を凝縮装置17で凝縮させる凝縮工程とを有している。
【0039】
このため、上下複数段の棚板30上に載置された多数の被乾燥物Mを同時に乾燥することができ、凍結乾燥の効率を高め、凍結乾燥時間の短縮を図ることができるとともに、被乾燥物Mの変色、変質等の品質低下を抑制することができる。
(第2実施形態)
続いて、本発明を具体化した第2実施形態について、図4に基づいて詳細に説明する。なお、この第2実施形態及び後述する第3実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明し、同一部分については説明を省略する。
【0040】
図4に示すように、前記各支持片28には、高周波発信機31側又は接地側の端子33が交互に設けられ、高周波発信機31側の端子33には接続線32が接続されるとともに、接地側の端子33には接地線34がそれぞれ接続されている。また、背中合せの各対向支持片29に設けられた高周波発信機31側の端子33間又は接地側の端子33間は連結線35で電気的に接続されている。従って、上下に隣接して対向する複数対の棚板30間にそれぞれ高周波電界が印加されるようになっている。
【0041】
さて、凍結された被乾燥物Mを乾燥する場合には、高周波発信機31側の端子33が設けられた棚板30と、その棚板30に隣接し、接地側の端子33が設けられた棚板30との間に周波数が3〜300MHzの高周波電界を印加する。この高周波電界が印加されることにより、棚板30上の被乾燥物Mが誘電加熱され、乾燥される。このとき、高周波電界は、上下隣接位置の棚板30間に印加されることから、各棚板30上の被乾燥物Mに対してそれぞれ直接的に高周波電界を印加することができ、被乾燥物Mの乾燥を有効かつ的確に行うことができる。
【0042】
従って、この第2実施形態によれば、前記第1実施形態に比べて被乾燥物Mの凍結乾燥の効率を一層高め、凍結乾燥時間のさらなる短縮を図ることができ、かつ被乾燥物Mの品質低下を一段と抑制することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について、図5に基づいて詳細に説明する。
【0043】
図5に示すように、各棚板30は、支持片28及び対向支持片29の上下方向の一つおきに載置されている。これは、被乾燥物Mの高さが第1実施形態の場合より高く、第1実施形態の棚板30間の隙間には収容できないため、棚板30間の間隔が第1実施形態の場合の2倍に広げられている。なお、棚板30を、被乾燥物Mの高さに応じて支持片28及び対向支持片29の上下方向の二つおき以上に載置するように構成してもよい。
【0044】
前記棚板30が載置された支持片28及び対向支持片29のうち、最上段の支持片28と、上から7番目の支持片28の端子33には、高周波発信機31に接続された接続線32が接続されている。一方、棚板30が載置された支持片28のうち、最下段の支持片28と、上から5番目の支持片28の端子33には、接地線34が接続されている。また、背中合せの対向支持片29に設けられた高周波発信機31側の端子33間又は接地側の端子33間は連結線35で電気的に接続されている。
【0045】
さて、凍結された被乾燥物Mを乾燥する場合には、高周波発信機31側の端子33が設けられた棚板30と、接地側の端子33が設けられた棚板30との間に3〜300MHzの高周波電界を印加する。この高周波電界が印加されることにより、棚板30上の被乾燥物Mが誘電加熱され、乾燥に到る。このとき、高周波電界が印加される高周波発信機31側の端子33と接地側の端子33との組合せは、真空容器18内の上部位置と下部位置との2箇所に設けられていることから、被乾燥物Mの誘電加熱による乾燥が効果的に行われる。
【0046】
従って、第3実施形態によれば、前記第1実施形態に比べて高く、大きな被乾燥物Mを容易に凍結乾燥することができるとともに、凍結乾燥時間を短縮しつつ、被乾燥物Mの品質低下を抑制することができる。
【0047】
なお、前記各実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記棚板30に代えて、板状以外の形状を有する支持体、例えば皿状の支持体、箱状の支持体等を使用してもよい。
【0048】
・ 前記支持片28及び対向支持片29を省略し、棚板30を例えば支柱25や仕切用支柱27に設けた切欠きや孔に係合して支持するように構成してもよい。
・ 前記高周波発信機31側の端子33又は接地側の端子33が接続される棚板30の位置や、数を、被乾燥物Mの形状、水分量等に基づいて任意に変更してもよい。
【0049】
・ 前記真空容器本体11の支持片28及び対向支持片29の上下方向の間隔を、等間隔ではなく、各棚板30上に載置される被乾燥物Mの大きさに基づいて適宜設定してもよい。
【0050】
・ 前記真空容器18を、棚板30を1列又は3列以上に並べて収容可能となるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0051】
10…真空凍結乾燥装置、11…真空容器を構成する真空容器本体、12…真空容器を構成する真空容器蓋体、12a…側壁、17…真空容器を構成する凝縮装置、18…真空容器、30…支持体としての棚板、31…高周波発信機、M…被乾燥物。
図1
図2
図3
図4
図5