特許第6138501号(P6138501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6138501液晶表示装置の製造方法および液晶表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138501
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】液晶表示装置の製造方法および液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1368 20060101AFI20170522BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   G02F1/1368
   G02F1/13 101
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-16724(P2013-16724)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-149340(P2014-149340A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 考雄
(72)【発明者】
【氏名】刈込 修
(72)【発明者】
【氏名】高谷 亮平
【審査官】 佐藤 洋允
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−328210(JP,A)
【文献】 特開平09−183603(JP,A)
【文献】 特開2010−256517(JP,A)
【文献】 特開2009−031468(JP,A)
【文献】 特開2003−302917(JP,A)
【文献】 特開2003−224138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/135−1/1368
G02F1/1343−1/1345
H01L29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に薄膜トランジスタの電極を形成する工程と、
前記薄膜トランジスタの電極の上方に第1の孔を有する有機絶縁膜を形成する工程と、
前記有機絶縁膜の上方に無機絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の孔の中心部の上に第2の孔を有するレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を用いて前記無機絶縁膜をドライエッチングする工程と、
前記レジスト膜を除去する工程と、
前記エッチングされた無機絶縁膜の上面に接する画素電極を形成する工程と、
を含み、
前記ドライエッチングする工程では、フッ素系ガス及び酸素の混合ドライエッチングガスの総流量を(チャンバの容積)×(0.09〜0.11)毎分とし、前記混合ドライエッチングガスにおける前記酸素の割合を80%以上とする、
ことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記有機絶縁膜と前記無機絶縁膜との間に対向電極を形成する工程をさらに含み、
前記対向電極の上面は前記無機絶縁膜に接し、前記対向電極の下面は前記有機絶縁膜に接し、
前記対向電極と前記画素電極との間に生じる電界により液晶の偏光が制御される、
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記薄膜トランジスタの電極は、当該薄膜トランジスタに含まれる半導体膜の上面に電気的に接続される金属である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置の製造方法および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の液晶表示装置では、各画素回路に含まれる薄膜トランジスタの上層に有機絶縁膜の層が設けられ、さらにその上層に有機絶縁膜等を保護する無機絶縁膜が設けられている。また、薄膜トランジスタの電極と画素電極とは、スルーホールにより接続される。
【0003】
上述の液晶表示装置のスルーホールを設けるために、スルーホール部分に孔を有する有機絶縁膜の層を形成する工程、その上層に無機絶縁膜の層を形成する工程、スルーホール部分に孔の空いたレジストを形成する工程、無機絶縁膜をエッチングする工程が順に行われる。エッチング工程により、スルーホール部分の無機絶縁膜が除去され、その後に形成される画素電極と薄膜トランジスタとを電気的に接続することが可能となる。また、画素電極の破れを防ぐため、無機絶縁膜の端には順テーパが設けられるようにエッチングされる。
【0004】
特許文献1には、薄膜トランジスタと画素電極との間に下から順に下側の無機絶縁膜の層、有機絶縁膜の層、および上側の無機絶縁膜の層の3つの層を設ける液晶表示装置、またそれらの層を貫くスルーホールの形成方法の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−59314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機絶縁膜の上側にある無機絶縁膜は、成膜温度を上げられないために弱くなりやすい。このため、ドライエッチング時に上側の無機絶縁膜に順テーパを形成しようとすると、その無機絶縁膜が平面方向にエッチングされることにより生じる後退シフトの量が多くなり、無機絶縁膜のうち例えばスルーホールの外側にある部分まで除去されてしまう。
【0007】
一方、スマートフォンなどで用いられる液晶表示パネルの高解像度化がすすんでおり、画素回路内でスルーホールと他の構成要素との間隔が狭くなる傾向にある。このため、無機絶縁膜が広範囲にエッチングされると他の構成要素に影響が及んでしまう。例えばスルーホール付近の有機絶縁膜と無機絶縁膜との間に電極を形成している場合には、その電極と画素電極とがショートしてしまい、画素の欠陥が生じやすくなっていた。
【0008】
本願は上記課題を鑑みてなされたものであって、その目的は、画素回路の薄膜トランジスタと画素電極とを接続するスルーホールにおいて、有機絶縁膜上にある無機絶縁膜に順テーパを形成するようエッチングしつつ、そのエッチングに伴う後退シフトの量を減らすことを可能にする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下
の通りである。
【0010】
(1)基板に薄膜トランジスタの電極を形成する工程と、前記薄膜トランジスタの電極の上方に第1の孔を有する有機絶縁膜を形成する工程と、前記有機絶縁膜の上方に無機絶縁膜を形成する工程と、前記第1の孔の中心部の上に第2の孔を有するレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を用いて前記無機絶縁膜をドライエッチングする工程と、前記レジスト膜を除去する工程と、前記エッチングされた無機絶縁膜の上面に接する画素電極を形成する工程と、を含み、前記ドライエッチングする工程では、フッ素系ガス及び酸素の混合ドライエッチングガスの総流量を(チャンバの容積)×(0.09〜0.11)毎分とし、前記混合ドライエッチングガスにおける前記酸素の割合を80%以上とする、ことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【0011】
(2)(1)において、前記有機絶縁膜と前記無機絶縁膜との間に対向電極を形成する工程をさらに含み、前記対向電極の上面は前記無機絶縁膜に接し、前記対向電極の下面は前記有機絶縁膜に接し、前記対向電極と前記画素電極との間に生じる電界により液晶の偏光が制御される、ことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【0012】
(3)(1)または(2)において、前記薄膜トランジスタの電極は、当該薄膜トランジスタに含まれる半導体膜の上面に電気的に接続される金属である、ことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【0013】
(4)半導体膜および、前記半導体膜の上層にあり前記半導体膜と電気的に接続する電極膜、を含む薄膜トランジスタと、前記電極膜の上層にあり、当該電極膜に平面的に重なる第1の孔が形成された有機絶縁膜と、前記有機絶縁膜の上方に形成され、平面的にみて前記第1の孔の内側にある第2の孔を有しかつ第2の孔においてテーパ形状を有する第2の無機絶縁膜と、前記第2の無機絶縁膜の上方にあり、前記第1および第2の孔を介して前記金属膜に接続される画素電極と、前記有機絶縁膜と前記第2の無機絶縁膜との間に形成され、前記画素電極との間に生じる電界により液晶の偏光を制御する対向電極と、を含むことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、画素回路の薄膜トランジスタと画素電極とを接続するスルーホールにおいて、有機絶縁膜上の無機絶縁膜の後退シフトの量を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態にかかかる液晶表示装置の等価回路の一例を示す回路図である。
図2】本発明の実施形態にかかるアレイ基板上の画素回路を示す部分平面図である。
図3図2に示す画素回路のIII−III切断線における断面図である。
図4図2に示す画素回路のIV−IV切断線における断面図である。
図5A】フォトレジスト形成後のアレイ基板を示す断面図である。
図5B】エッチング工程の途中のアレイ基板を示す断面図である。
図5C】エッチング工程の終了時のアレイ基板を示す断面図である。
図6】画素回路の比較例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。出現する構成要素のうち同一機能を有するものには同じ符号を付し、その説明を省略する。以下では、IPS方式の液晶表示装置に本発明を適用した場合の例について説明する。
【0017】
本発明の実施形態にかかる液晶表示装置は、アレイ基板と、当該アレイ基板に対向し、カラーフィルタが設けられたフィルタ基板と、これらの基板に挟まれた領域に封入された液晶材料と、アレイ基板の外側から光を照射するバックライトと、を含んで構成されている。
【0018】
図1は、第1の実施形態にかかる液晶表示装置の等価回路の一例を示す回路図である。アレイ基板には、複数のゲート信号線GL、複数の映像信号線DL、複数の画素電極PX、複数のコモン電極CT、複数の薄膜トランジスタTR、映像信号線駆動回路XDV、ゲート走査回路YDVなどが配置される。複数のゲート信号線GLはアレイ基板上の表示領域内を並んで横方向に延びており、複数の映像信号線DLは表示領域内を並んで縦方向に延びている。これらの映像信号線DLの一端は映像信号線駆動回路XDVに接続され、ゲート信号線GLの一端はゲート走査回路YDVに接続されている。
【0019】
隣り合うゲート信号線GLと隣り合う映像信号線DLとに囲まれた部分が画素回路である。複数の画素回路はマトリクス状に並んでいる。各画素回路は薄膜トランジスタTRと、画素電極PXと、コモン電極CTとを含む。薄膜トランジスタTRはソース電極STとドレイン電極DTとゲート電極GTとを含む。ドレイン電極DTは映像信号線DLの一部となっており、映像信号線駆動回路XDVと電気的に接続されている。ソース電極STは画素電極PXに接続される。コモン電極CTにはコモン電圧が供給される。コモン電圧は各画素回路により表示される輝度にかかわらず一定の電圧であるが、一定時間(フレーム)ごとに周期的に変化してもよい。
【0020】
画素電極PXとコモン電極CTとは液晶を介してキャパシタを構成している。薄膜トランジスタTRのゲート電極GTはゲート信号線GLの一部であり、ゲート走査回路YDVから走査パルスのオン電圧が供給されると薄膜トランジスタTRがオンになり、それにあわせて、オン電圧が供給される画素回路に向けて、映像信号線駆動回路XDVが画素電極PXに向けて映像信号の電位を供給する。すると、映像信号の電位とコモン電圧とに基づく電位差を上述のキャパシタが記憶する。この電位差により生じる電界により液晶の透過率が変化し、各画素回路が透過する光量が制御される。なお、薄膜トランジスタTRには極性はなく、ソース電極STとドレイン電極DTの名称は電圧の向きによって便宜的に決まるものであるため、これらの配置や接続先が反対になっていても構わない。
【0021】
図2は、本発明の実施形態にかかるアレイ基板上の画素回路を示す部分平面図である。図3は、図2に示す画素回路のIII−III切断線における断面図であり、図4は、図2に示す画素回路のIV−IV切断線における断面図である。薄膜トランジスタTRはトップゲート構造である。トップゲート構造ではポリシリコンの半導体膜PSよりゲート電極GTが上方にあり、その半導体膜PSのうちゲート電極GTの上にある部分がチャネルとなっている。
【0022】
アレイ基板を構成するガラス基板SUB上には、下地膜UIが形成され、その上に半導体膜PSが形成されている。下地膜UIは酸化シリコンの層と窒化シリコンの層とを含み、ガラス基板SUBの組成により半導体膜PSが汚染されることを防ぐ。半導体膜PSの上層には半導体膜PSを覆うようにゲート絶縁膜GIが設けられている。また、ゲート絶縁膜GIの上層にゲート信号線GL(ゲート電極GT)の層が設けられ、図2の左右方向に延びている。ゲート信号線GLの上層にはゲート信号線GLを覆うように第1の層間絶縁膜IN1が設けられ、その上に映像信号線DLとソース電極STとを含む層が設けられている。映像信号線DLは図2の上下方向に延びているが、ゲート信号線GLの間の部分で上下方向よりいくらか傾いている。ゲート信号線GL、映像信号線DL、ソース電極STはAlなどの金属膜である。第1の層間絶縁膜IN1やゲート絶縁膜GIは無機絶縁膜である。
【0023】
ソース電極STは、図2でみると、隣り合う映像信号線DLの中央部にあり、画素回路の下側にあるゲート信号線GLに下側の部分が重なるように配置されており、その形はほぼ矩形である。また図2でみてソース電極STの上側の2つの角は斜めに切り落とされた形状になっている。第1の層間絶縁膜IN1およびゲート絶縁膜GIは、図2のソース電極STの左右方向の中央部かつ上側にあるスルーホールTH1を有する。ソース電極STは、そのスルーホールTH1を介して半導体膜PSのソース側の端の上面と接続される。
【0024】
図2でみると、半導体膜PSは、スルーホールTH1に接続する位置から下方向に延び、ゲート信号線GLと交差した後に左側に延び、映像信号線DLの下層に入り上方に延び、再びゲート信号線GLと交差している。また、第1の層間絶縁膜IN1およびゲート絶縁膜GIのうち隣り合うゲート信号線GLの中間部分にスルーホールTH3が設けられ、そのスルーホールTH3を介して映像信号線DLは半導体膜PSのドレイン側の端の上面に接続される。
【0025】
半導体膜PSのうちゲート信号線GLと交差する部分は薄膜トランジスタTRのチャネル領域となり、この部分のゲート信号線GLは特に薄膜トランジスタTRのゲート電極GTとして働く。なお、半導体膜PSの下方には遮光膜が形成されていてもよい。
【0026】
ソース電極STの上層には、有機絶縁膜PASの層と第2の層間絶縁膜IN2の層とが形成されている。有機絶縁膜PASおよび第2の層間絶縁膜IN2のそれぞれは、スルーホールTH2を構成する孔を有する。図2でみると、スルーホールTH2はソース電極STの中央よりやや右側かつゲート信号線GLの上側の位置にある。有機絶縁膜PASはその上を平坦化し、その下側にある凸凹を目立たなくする。第2の層間絶縁膜IN2は主に窒化シリコン(SiN)を含み、また孔の外周部分はテーパ形状になっている。
【0027】
また、有機絶縁膜PASの層と第2の層間絶縁膜IN2の層との間にはコモン電極CTを含む層が設けられる。コモン電極CTは平面的にみて、隣り合うゲート信号線GLの間のほぼ全域に形成されるが、スルーホールTH2とその外縁(図2で一点鎖線で囲まれた領域)には形成されない。また、第2の層間絶縁膜IN2はコモン電極CTの上やスルーホールTH2の内周壁の少なくとも一部を覆っている。
【0028】
画素電極PXは、スルーホールTH2の下部でソース電極STの上面に接している。また、画素電極PXは映像信号線DLとゲート信号線GLとに囲まれた領域の中に配置されており、画素電極PXはいわゆる櫛歯状である。画素電極PXは映像信号線DLに沿って延びる複数の線状の領域を有し、またその複数の線状の領域は両端で同じ画素回路内にある他の線状の領域と接続されている。
【0029】
次に、これまでに説明した液晶表示装置の製造方法を説明する。はじめに、ガラス基板SUB上に酸化シリコンや窒化シリコンの層を含む下地膜UIを形成する。下地膜UIが形成されたら、ポリシリコンを含む半導体の層を積層し、それをパターニングすることにより半導体膜PSを形成する。また半導体膜PSにイオンドーピングを行う。次に半導体膜PSの上層に酸化シリコンなどの無機絶縁体を含むゲート絶縁膜GIを形成する。
【0030】
次に、ゲート絶縁膜GIの上層には、Alなどの金属からなるゲート信号線GL(ゲート電極GT)を形成する。ゲート絶縁膜GIの上層には、酸化シリコンを含む第1の層間絶縁膜IN1の層を積層し、その一部をエッチングすることでスルーホールTH1やスルーホールTH3を形成する。スルーホールTH1,TH3が形成された後には、Alからなる金属膜を積層し、その金属膜をパターニングすることによりソース電極STや映像信号線DLを形成する。なお、これまでに説明した各層については、必要に応じて素材を変更しても構わない。
【0031】
ソース電極ST等が形成された後には、ソース電極STの上方にスルーホールTH2を構成する孔を有する有機絶縁膜PASを形成する。有機絶縁膜PASの孔は、感光性樹脂材料をアレイ基板上に塗布し、その感光性樹脂材料を露光することで形成される。
【0032】
有機絶縁膜PASの上層にはITO(Indium Tin Oxide)からなる導電膜の層を積層し、それをパターニングすることによりコモン電極CTを形成する。また、その上層に有機絶縁膜PASの耐熱温度より低い温度で成膜される窒化シリコンの層(以下では「エッチング対象層」と記載する)をCVD装置により形成する。なお、エッチング対象層を成膜する温度は、有機絶縁膜PASより下層にある無機絶縁膜を成膜する温度より低くなる。なお、エッチング対象層の厚さが120ナノメートルであるが、その厚さが異なっていても構わない。
【0033】
次に、エッチング対象層をエッチングし、スルーホールTH2を構成する孔を形成する。以下ではこの工程について説明する。
【0034】
はじめに、エッチングの準備のために、フォトレジストPR(レジスト膜)を形成する。フォトレジストPRを形成する工程では、はじめに、感光性樹脂材料を塗布する。この感光性樹脂材料は、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを80〜90%程度含み、感光性のノボラック樹脂誘導体を10%以上含む。またこの感光性樹脂材料は、ベンジルアルコールを1から10%含み、ナフトキノンジアジド誘導体の濃度は5%以下である。次に、溶剤を除去するためにアレイ基板を乾燥させ、その一部を露光させる。これにより、スルーホールTH2の中央に相当する位置に孔のあいたフォトレジストPRが形成される。
【0035】
フォトレジストPRが形成されると、このフォトレジストPRを用いてエッチング対象層をエッチングする工程が行われる。エッチングの工程では、はじめに、ドライエッチングを行うエッチング装置のチャンバCB内にアレイ基板を配置する。図5Aは、フォトレジストPRが形成された後にチャンバCBに配置されたアレイ基板を示す断面図である。チャンバCBの上部には上部電極UEがあり、下部には下部電極LEがある。アレイ基板は下部電極LEに載せられる。
【0036】
図5Bは、エッチング工程の途中のアレイ基板を示す断面図である。アレイ基板がチャンバCB内に配置されると、エッチング装置は混合ドライエッチングガスを上部電極UEから下部電極LEに向けて流し、スルーホールTH2を形成する。この混合ドライエッチングガスはフッ素系ガスと酸素を混合したものであり、混合ドライエッチングガスにおける酸素の割合は80%以上としている。また、この混合ドライエッチングガスを流す工程では、混合ドライエッチングガスの総流量を(チャンバCBの容積)×(0.09〜0.11)毎分としている。図5Cは、エッチング工程の終了時のアレイ基板を示す断面図である。
【0037】
このエッチングの際に、酸素によりスルーホールTH2部分のフォトレジストPRが後退する傾向がある。これにより、第2の層間絶縁膜IN2に順テーパを形成することが可能になる。より具体的には、酸素濃度が80%以上であれば順テーパを形成することが可能であるが、特に85%から90%とすると好適である。なお、95%を超えると、エッチングの進み方をコントロールすることが難しくなり、80%未満であると、順テーパを形成することが難しくなる。
【0038】
さらに、上述のように1分当たりの混合ドライエッチングガスの総流量はチャンバCBの容積の0.09倍から0.11倍の範囲にする必要がある。混合エッチングガスの総流量が上述の最低値より少ないとエッチング対象層をエッチングするスピードが顕著に遅くなり、スループットが低下する。一方、総流量が上述の最高値より大きいと、下方にエッチングするスピードに対して横方向にエッチングするスピードが速くなる。そのため後者では周囲の画素回路の構造物(ここではコモン電極CT)に悪影響が出て歩留まりが低下してしまう。
【0039】
スルーホールTH2が形成されると、フォトレジストPRを除去する工程が行われる。そして、スルーホールTH2の下面にあるソース電極STと接する画素電極PXを形成する。画素電極PXはITOからなり、平面的に見るとスルーホールTH2から一定以上離れた部分でコモン電極CTと重なっている。
【0040】
画素電極PXが形成されると、その上層に配向膜が形成され、アレイ基板に対応するようにカラーフィルタ基板が配置される。そしてカラーフィルタ基板とアレイ基板との間に液晶が充填され、アレイ基板にフレキシブル基板などの回路や他の光学部材が配置されて液晶表示パネルが完成する。
【0041】
図6は、アレイ基板に含まれる画素回路の比較例を示す断面図である。図6の例では、スルーホールTH2を形成するために層間絶縁膜INBと層間絶縁膜INCとを一度にドライエッチングするものの、そのエッチングには上述の条件を用いていない。フォトレジストPRの後退に頼らずにテーパを形成するため、層間絶縁膜INCのうち上側の30ナノメートル程度の厚さに後退層を設けている。後退層はその下の層よりもエッチングされやすく、これによりテーパが形成される。
【0042】
このようなエッチング手法を用いると、エッチングにより層間絶縁膜INCが横方向に削られてしまう問題が生じる。これにより、ソース電極STに貫通する孔の底の直径がd1であったとしても、スルーホールTH2の範囲(直径はd2である)より広い範囲にある層間絶縁膜INCが削られてしまい、例えばコモン電極CTを覆う部分が無くなってしまう場合がある。このような場合には、画素電極PXとコモン電極CTとが接する短絡部SHが生じてしまい、画素の表示ができなくなる。
【0043】
図6に示す断面図では、図3図4に示される断面図と異なり、第1の層間絶縁膜IN1に相当する層間絶縁膜INAと第2の層間絶縁膜IN2に相当する層間絶縁膜INCの他に、ソース電極STを含む層と有機絶縁膜PASの層との間に層間絶縁膜INBの層を含んでいるが、エッチングの手法により、スルーホールTH2の底を確実にソース電極STまで貫通させようとすると層間絶縁膜INCが削られる範囲が広くなってしまう問題は、仮に層間絶縁膜INBが存在しなくても生じる。
【0044】
一方、本発明の実施形態にかかるアレイ基板では、第2の層間絶縁膜IN2が削られる範囲が図6に比べて小さくなり、スルーホールTH2の範囲に収まる。これにより、比較例よりスルーホールTH2の近くにコモン電極CTを置いても短絡の発生などを防ぐことができる。これにより、歩留まりの向上だけでなく、画素回路の設計の制約が緩和され、画素回路の小型化や高解像度化が容易になる。
【0045】
これまで本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上述の構成に限定されない。例えば、IPS方式ではなくTN方式やVA方式などの他の方式の液晶表示装置にも適用してもよい。これらにも上述の薄膜トランジスタTRと画素電極PXとを接続する構造が設けられるからである。
【符号の説明】
【0046】
CT コモン電極、DL 映像信号線、GL ゲート信号線、PX 画素電極、TR 薄膜トランジスタ、XDV 映像信号線駆動回路、YDV ゲート走査回路、DT ドレイン電極、GI ゲート絶縁膜、GT ゲート電極、IN1 第1の層間絶縁膜、IN2 第2の層間絶縁膜、PAS 有機絶縁膜、PS 半導体膜、ST ソース電極、SUB ガラス基板、TH1,TH2,TH3 スルーホール、UI 下地膜、CB チャンバ、LE 下部電極、UE 上部電極、PR フォトレジスト、INA,INB,INC 層間絶縁膜、SH 短絡部。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6