特許第6138515号(P6138515)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6138515筒状部の長さ調節機能を有する衣服筒状部の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138515
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】筒状部の長さ調節機能を有する衣服筒状部の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/08 20060101AFI20170522BHJP
   A41D 13/06 20060101ALI20170522BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20170522BHJP
   A41D 27/10 20060101ALI20170522BHJP
   A41D 1/06 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   A41D13/08
   A41D13/06
   A41D13/00 107
   A41D27/10 Z
   A41D1/06 M
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-34861(P2013-34861)
(22)【出願日】2013年2月25日
(65)【公開番号】特開2014-163009(P2014-163009A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】500390733
【氏名又は名称】住商モンブラン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】松山 泰三
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3049038(JP,U)
【文献】 実開昭60−052906(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3142553(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3085509(JP,U)
【文献】 特開2002−212807(JP,A)
【文献】 実開昭61−164204(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 1/02−27/28
A41B 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体の一部が出し入れ可能であって、先端部が身体の一部に密着する伸縮性を有する筒状部を備えた衣服において、筒状部の先端から適宜長さ裏返し、その裏返したことにより形成される筒状の折返し部を筒状部の伸縮性を有する先端部を避けて周方向に縫着し、身体の一部が出し入れ可能な筒状生地よりなり、その先端側となる長さ方向一端側が、筒状生地に身体の一部を入れたときに、身体の一部に密着する伸縮性を有するインナーパーツを、その長さ方向他端側の筒状生地周縁部を前記筒状部の折り返し部の周縁部に縫着することにより前記筒状部の折り返し部に結合し、裏返した筒状部の折り返し部を元に戻すことにより筒状部の外周部から内方側に入り込んだ折込部を形成したことを特徴とする筒状部の長さ調節機能を有する衣服筒状部の製造方法
【請求項2】
インナーパーツを形成する筒状生地がメッシュ生地を含むことを特徴とする請求項1に記載の筒状部の長さ調節機能を有する衣服筒状部の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服の身体を出し入れする筒状部の長さ調節機能、及び、インナーパーツを備えた衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
衣服の上衣における袖やズボンの裾のような筒状部は、通常、着用者の腕の長さや足の長さをおおよそ見計らってそれに合わせたものが製造され、それでも個々に寸法を変える必要がある場合には裁断及び縫製加工がなされる。例えば、ズボンの裾については、その筒状端部を所定長さ分裁断し、その端部を内側に折り返してかがり縫いにより縫製して見映えがよいように裾の端末処理、いわゆる裾上げが行われる。
【0003】
ところが、作業ズボンやスポーツ用ズボン等は製品段階で既に裾の端末処理がなされており、端末処理がなされた裾を切断して改めて裾上げを行うことは2度の裾の端末処理をすることとなるので、不合理であって、かつ、余計な手間及び費用を要するものであった。しかも、これらのズボンは、その裾端末に伸縮性を備えさせたものがあり、上記のような裾上げ方法では伸縮性を備えた部分が切除されてしまうので、裾の端末処理ができない場合がある。上衣における袖の端部についても同様である。そのような場合には、その着用者の寸法に合わせて製造段階から特別に誂えることが必要となる。
【0004】
また、衛生管理が必要な食品工場、塵埃の発生を嫌うクリーンルーム等の精密機械工場、製薬会社等の施設においては、白衣等の清潔な作業服を着用して作業が行われている。そして、下着や身体に付着している塵埃や体毛が室内に散乱したり、製品や薬品内に混入することを防止するために、そのような場所で着用される作業服は、ズボンの裾口及び上衣の裾や袖口にはゴム紐等の伸縮性素材が用いられいて、それぞれの開口部が閉じられるようになっている。
【0005】
しかしながら、上記のような作業服は、作業中の体の動きによってズボンの裾口及び上衣の裾や袖口が移動する場合があり、また、ズボンの裾口及び上衣の裾や袖口の伸縮性素材が経年変化により伸縮力が弱まる場合があり、このような場合には、伸縮性素材により閉じられている開口部に隙間が生じてその隙間から体毛や塵埃が落下するおそれがあるという問題がある。
【0006】
そこで、作業者の身体から脱落する体毛等や着衣から発生する塵埃等が、作業服内から施設内へ落下することを防止することを目的として、下記特許文献に示される提案がなされている。
【0007】
特許文献1には、ズボンの脚筒の下肢部相当部分の内側に、ズボンを着用した状態で下肢部を覆う内筒を挿入し、その内筒上端縁をズボンの脚筒内面に結合した衛生用ズボンが示され、内筒の下端近傍に下肢部への締付用バンド等を設けることもあることが示されている。
【0008】
特許文献2には、短筒状に構成されたメッシュ布の一端側を袖の袖口付近内側に縫い付けるとともに、同布の他端側に、ゴム紐を通して同ゴム紐の弾力により前記布の他端をすぼめてなる防塵手段を備えた作業上衣が示され、その構成手順として、作業上衣を裏返し、袖の内側を表に出して前記防塵手段の取り付け作業がしやすいようにすることが示されている。
【0009】
特許文献3には、前開き型式の上衣本体の下部に下衣の中へ挿入可能な内裾部を縫着し、上衣本体および内裾部の前開口縁に左右分離可能なスライドファスナを縫い付けるとともに、上衣本体の外側に下衣の腰部を覆う外裾部を縫着し、この外裾部の前開口縁に左右分離可能なファスナを縫い付けた防塵上衣が示され、当該防塵上衣が、ラグラン形式の袖、袖口ゴム、内袖、内袖ゴムによって手首に密着する構成となっていることが示されている。
【0010】
特許文献4には、ズボンの内側所望位置の内周に沿って上部を取り付けて下端が裾付近で自由端となるように布状体のインナーガードを設けた作業服が示されており、袖口は通常のゴム入りで締め付けられるものでよく、袖口の内側にも上記したズボンのインナーガードと同様のインナーガードを取り付けてもよいことが示されている。
【0011】
特許文献5には、不織布で構成した筒状の本体と、前記本体の一方側の開口縁のほぼ全周に沿って設けられ、被服の袖若しくはズボンの裾に面ファスナー等により着脱自在に取り付ける固定具と、前記本体の他方側の開口縁を絞縮するゴム紐等の伸縮帯と、前記本体の絞縮された他方開口縁から延長して設けられ、径方向に伸縮する筒状体とを備えた袖裾装着具が示されている。
【0012】
特許文献6には、袖部内側や裾部内側に内袖又は内裾を取り付けてなる作業服において、内袖又は内裾は、加圧伸縮性素材により形成される筒状体の一端を袖部内側又は裾部内側に取り付けることで、全体が腕部又は脚部に密着可能とした作業服が示されており、その図3には裾部の先端部が絞られた形態が示されている。
【0013】
しかしながら、上記の特許文献には、筒状部の内側に取り付けられるインナーパーツの取付方を示すものは少なく、特許文献2にのみその取付方が示されているが、そこに示される方法も作業着全体を裏返して取り付ける方法であり、面倒な取付方法であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平3−97902号公報
【特許文献2】特開平3−152201号公報
【特許文献3】特開平10−251907号公報
【特許文献4】特開2000−328311号公報
【特許文献5】特開2007−169808号公報
【特許文献6】特開2010−261142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明者は、衣服の筒状部の長さが容易に調節することができ、また、筒状部の端部における端末の処理が既になされている衣服において、再び端末の処理を行うことなく、衣服の筒状部の長さ調節が可能な方法を見出した。
【0016】
また、上記の方法により長さ調節がなされた筒状部に対して、その内側にインナーパーツを取り付けた衣服を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の請求項1に係る筒状部の長さ調節機能を有する衣服筒状部の製造方法は、身体の一部が出し入れ可能であって、先端部が身体の一部に密着する伸縮性を有する筒状部を備えた衣服において、筒状部の先端から適宜長さ裏返し、その裏返したことにより形成される筒状の折返し部を筒状部の伸縮性を有する先端部を避けて周方向に縫着し、身体の一部が出し入れ可能な筒状生地よりなり、その先端側となる長さ方向一端側が、筒状生地に身体の一部を入れたときに、身体の一部に密着する伸縮性を有するインナーパーツを、その長さ方向他端側の筒状生地周縁部を前記筒状部の折り返し部の周縁部に縫着することにより前記筒状部の折り返し部に結合し、裏返した筒状部の折り返し部を元に戻すことにより筒状部の外周部から内方側に入り込んだ折込部を形成したことを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の請求項2に係る筒状部の長さ調節機能を有する衣服筒状部の製造方法は、前記請求項1におけるインナーパーツを形成する筒状生地がメッシュ生地を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
上記した本発明に係る筒状部の長さ調節機能を有する衣服筒状部の製造方法は、作業ズボンやスポーツ用ズボン等のように製品段階で既に裾の端末処理がなされていても、また、その裾端末に伸縮性を備えさせたものであっても、容易に筒状部の長さの調節が可能となる。上衣における袖の端部についても同様である。
【0020】
また、上記した本発明に係る筒状部の長さ調節機能を有する衣服筒状部の製造方法により製造された衣服は、衣服筒状部の長さ調節方法により形成された折込部にインナーパーツを取り付けるだけであるため、その作業が極めて容易である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例1に係る作業服の概略全体図である。
図2】本発明の実施例1に係る作業服の袖部を一部切り欠いた拡大斜視図である。
図3】本発明の実施例1に係る作業服おける折込部の形成手順を示す斜視図であって、(a)は袖部の先端部を裏返した状態を示し、(b)は袖部を裏返した折返し部を周方向に縫着して折込部を形成した状態を示し、(c)は袖部を表返した状態を示す。
図4】本発明の実施例に係る作業服の概略全体図である。
図5】本発明の実施例に係る作業服の袖部に内袖部を取り付ける状態を示す斜視図である。
図6】本発明の実施例に係る作業服の袖部を一部切り欠いた拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る作業服の好適な実施例につき図面に基づいて詳述する。なお、実施例における筒状部の長さ調節機能を有する衣服筒状部の製造方法は、作業服上衣について説明するが、ズボンの裾部や上衣の裾部に対しても同様に適用できる。
【実施例1】
【0023】
図1〜図は本発明に係る作業服上衣の実施例1を示す。
【0024】
図1のAは、筒状部を有する衣服の例としての作業服上衣を示す。当該作業服Aには、両腕を出し入れする筒状部としての両袖部A1に折込部10が形成されており、その折込部10を形成する生地長さ分だけ袖の長さが短くなっている。
【0025】
この折込部10の構成は、図2に示すように、袖部A1の外周部11から袖部A1を構成する生地内方側に入り込んだ部分であり、袖部A1を、その周方向に縫着することにより折込部10が形成される。この折込部10は袖部A1を構成する生地が二つ折りになっているので、折込部10の長さ分の2倍だけ袖部A1の長さが短くなる。
【0026】
また、この折込部10の縫着を解くと、元の袖部A1の長さに戻る。したがって、改めて、折込部の長さを変更した折込部を形成すれば、その折込部の長さに応じて袖部A1の長さが調節できる。
【0027】
図3は、本実施例の前記折込部10を袖部A1に形成する手順を示す。
【0028】
まず、図3(a)に示すように、袖部A1を、その先端から適宜の長さ分だけ袖部A1の外周部11側に重なるように裏返す。この裏返したことにより折返し部12が形成され、図3(b)に示すように、この折返し部12の適宜の位置において折返し部12と袖部A1の外周部11とが結合するように、折返し部12と袖部A1の外周部11とを袖部A1の周方向に縫着する。このとき、袖部A1における先端部13が、手首に密着するようにリブ編み等により伸縮性を有する構成となっており、この伸縮性を有する先端部13を避けて縫着する。その後、図3(c)に示すように、裏返した折返し部12を袖部A1の先端側に表返しながら伸ばすと、図2に示す折込部10が形成される。このように折込部10を形成すると、折込部10の長さ分aの2倍の長さ分だけ袖部A1の長さが短くなり、かつ、袖部A1の先端部13は元のように伸縮性を有することとなる。なお、袖部A1の長さを変更する場合には、前記の袖部A1の周方向に縫着した縫い目14の縫い糸を抜き取ると折込部10がなくなって、袖部A1を短くしない元の状態に戻り、改めて、前述と同様の形成方法により新たな折込部を形成する。この場合に折返し部における縫着する位置を変更すると、袖部A1の長さが変化することになる。
【0029】
本実施例における袖部A1の長さ調節方法は、袖部A1の先端部13に伸縮性を備えさせたものであるが、その先端部13を変化させることなく、容易に袖部A1の長さの調節が可能となる。
【0030】
また、本実施例における折込部10の形成方法は、縫い目14が袖部A1の外周部11に露出せず、したがって、シームパッカリングが生じても袖部A1の外周部11への影響が軽減される利点がある。
【0031】
本実施例は、図に示すように、袖部A1の内側に形成した折込部10を使用し、当該折込部10にインナーパーツである内袖部C1を連結したものである。
【0032】
すなわち、内袖部C1は、図に示すように、メッシュ等の通気性の良好な生地を使用して筒状に形成した内袖部本体30と、その長さ方向の一端側に連設され、手首に密着するようにリブ編み等により伸縮性を有する先端部31とからなる筒状生地により形成されている。そして、袖部A1を裏返して折込部10を露出させ、その周縁部15と内袖部C1の長さ方向の他端側の筒状生地周縁部32とを重ね合わせて両者を周方向に縫着し、袖部A1を元のように表返すと、図に示すように、袖部A1に内袖部C1が連結形成される。
【0033】
このように、本実施例における内袖部C1を備えた衣服は、袖部A1の長さ調節方法により形成された折込部10に内袖部C1を取り付けるだけであるため、その作業が極めて容易である。
【0034】
本発明の実施例を説明したが、こ実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。こ実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。こ実施例やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る筒状部の長さ調節機能を有する衣服筒状部の製造方法は、ズボンの裾部、上衣の袖部及び上衣の裾部に適用できるものである。また、本発明は、作業服やスポーツウェアに限らず、一般衣料にも適用できるものである。
【符号の説明】
【0036】
A・・・・作業服上衣 A1・・・袖部
10・・・折込部 11・・・袖部の外周部
12・・・折返し部 13・・・袖部の先端部
14・・・縫い目 15・・・折込部の周縁部
a・・・・折込部の幅長さ
C1・・・内袖部 30・・・内袖部本体
31・・・内袖部の先端部 32・・・内袖部の周縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6