特許第6138532号(P6138532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138532
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】トマト収穫機におけるトマト分離装置
(51)【国際特許分類】
   A01D 45/00 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   A01D45/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-55272(P2013-55272)
(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公開番号】特開2014-180225(P2014-180225A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000239725
【氏名又は名称】文明農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】安本 光政
(72)【発明者】
【氏名】佐塚 拓彦
(72)【発明者】
【氏名】公文 敬夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 健司
(72)【発明者】
【氏名】丸野 影文
【審査官】 木村 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−046647(JP,A)
【文献】 実開昭53−124552(JP,U)
【文献】 実開昭60−191111(JP,U)
【文献】 実開昭61−096310(JP,U)
【文献】 実開昭50−135674(JP,U)
【文献】 実開昭53−033659(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 43/00−46/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈り取られた加工用トマトの枝から実を分離するものであって、
分離棚と当該分離棚を支持する支持フレームによるトマト分離装置であり、
上記分離棚と支持フレームの間に駆動機構が介在していて当該駆動機構によって上記分離棚が上下方向に駆動されるものであり、
上記支持フレームが前下がりに傾斜していて当該傾斜の傾斜角度を調節自在に支持構造物に支持されており、
支持フレームの先端又は後端が調節手段を介して上記支持構造物に取り付けられており、
上記調節手段によって支持フレームの先端又は後端の高さを調節することによって上記傾斜角度が調節されるものであり、
上記支持フレームの側面に傾斜角度表示器が備えられていて、この傾斜角度表示器が支持フレームの水平に対する傾斜角度θを表示するものであり、
上記傾斜角度表示器によって基準傾斜角度が表示され、また、傾斜角度が変化したときの基準傾斜角度に対する傾斜角度が表示される加工用トマトのトマト分離装置。
【請求項2】
上記駆動手段がクランク機構によるものであることを特徴とする請求項1の加工用トマトのトマト分離装置。
【請求項3】
上記調節手段が油圧シリンダであり、当該油圧シリンダの伸縮操作手段を有することを特徴とする請求項2の加工用トマトのトマト分離装置。
【請求項4】
上記支持フレームの側面に支持フレームの前後方向傾斜角度を表示する傾斜角度表示器が設けられており、
上記傾斜角度表示器が水平に対する上記支持フレームの傾斜角度を表示するものであり、
支持フレームの傾斜角度の初期設定角度を表示するとともに初期設定傾斜角度に対する支持フレームの傾斜角度のずれを表示するものであることを特徴とする請求項3の加工用トマトのトマト分離装置。
【請求項5】
上記傾斜角度表示器が角度表示板と重力で真下を示す可動指針とを備えているものであって、
上記角度表示板が上記支持フレームの側面に固定されている固定板であり、
上記角度表示板と可動指針とによって、設定傾斜角度を表示するとともに当該設定傾斜角度に対する支持フレームの傾斜角度のずれを表示するものであることを特徴とする請求項4の加工用トマトのトマト分離装置。
【請求項6】
掻き上げ装置で加工用トマトの枝Pを浮かせてカッターで根切りし、根切りされた上記トマトの枝Pを掻き上げ装置で掻き上げ、引き上げコンベアでトマト分離装置に送り、当該トマト分離装置で枝からトマトを分離し、良否仕分け装置で硬い良好トマトと軟らかい不良トマトに仕分けし、良否仕分け装置で仕分けられた硬い良好トマトについて色や形や傷などについて目視検査して、良質トマトを選別する自走式のトマト収穫機において、
上記トマト分離装置が上下方向と前後方向に往復駆動される分離棚によるものであり、
上記分離棚が前方に傾斜した傾斜棚であり、前後のクランク機構を介して支持フレームに支持されており、
上記分離棚の傾斜角度が調節自在であり、上記支持フレームの後部が油圧シリンダで支持されていて、当該油圧シリンダの伸縮によって分離棚の上記傾斜角度が加減されるようになっており、
上記分離棚の水平に対する傾斜角度を表示する傾斜角度表示器を備えており、
上記油圧シリンダを伸縮させるための操作弁を備えており、
上記傾斜角度表示器の表示で分離棚の傾斜角度を確認しながら、上記油圧シリンダを伸縮させることによって上記傾斜角度が調節されることを特徴とするトマト収穫機。
【請求項7】
上記傾斜角度表示器が角度表示板と重力で真下を示す可動指針とを備えているものであって、
上記角度表示板が上記支持フレームの側面に固定されている固定板であり、
上記角度表示板と可動指針とによって、設定傾斜角度を表示するとともに当該設定傾斜角度に対する支持フレームの傾斜角度のずれを表示するものであることを特徴とする請求項6のトマト収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は加工用トマトの収穫機におけるトマト分離装置に関するものである。
加工用トマトは一本の茎から多数枝分かれして枝Pが地面を這って四方に伸び、多数の実が一斉に熟するので、根元から切断して枝Pごと取り込み(刈り取り)、枝から実を分離し、硬い良好なトマトと軟らかい不良トマトやゴミを仕分けし、色づきが良くて無傷の良質トマトを目視で選別して収穫する。このトマト収穫機は上記の刈り取りから選別までを一貫して行うものである。
なお、加工用トマトは球形(直径が約5cm程度)乃至は少し縦長の楕円形であり、仮に高さ60cmに盛り上げてもその底のトマトは潰れない程度の硬さがある。そしてまた、枝Pを強く振るとヘタが外れてトマトの実が一斉に分離されるように品種改良がなされている。
【背景技術】
【0002】
外国における加工用トマトの収穫機は大型である。他方、我が国での加工用トマトの収穫作業に適したトマト収穫機は中型である。
ところで、我が国の加工用トマトの栽培は集約的であり、栽培規模が比較的小さく、しかも単位面積当たりの収穫量が多く、かつ、高品質のトマトだけが加工用に使用されるなど、外国のそれとは品種、栽培条件、収穫条件が大きく異なる。
他方、上記のとおりの加工用トマトの収穫作業を人手でするときは、多くの労力を要し、しかも中腰で炎天下でなされるなど辛くて負担の重い労働である。
このため我が国の加工用トマト栽培に適したトマト収穫機を開発する必要があった。
【0003】
以上のような事情から我が国の加工用トマト栽培に適した中型のトマト収穫機が開発されてきたが、光学機器や画像処理装置などの高価な精密機器を用いない等比較的簡素なものであって、その主要部の機構・構造は外国のものとは大きく異なっている。
ところで、我が国での加工用トマト収穫機の開発は、労働負担の軽減と作業能率向上を目的としてまず刈り取り収穫のための補助機から始まり(特許文献1)、その後、能率向上、労働力コストの低減をさらなる目的としてトマト収穫機(いわゆるコンバイン)の開発が進められてきた。そして、今日では機構を単純にしてその製作コストの低減を図り作業性及び作業能率を向上させるとともに、機械的仕分け手段の仕分け精度を向上させるための機構開発が進められている。
【0004】
特許文献1のものは収穫作業のための補助機でありその概略は図12図13に示されているとおりである。これは操作レバー83で操縦されてクローラ80で自走する収穫作業用補助機であり、引き上げコンベア71、ホッパ72、荷台78などを備えている。そして、圃場一面に這って繁茂している加工用トマトの枝Pを人手で刈り取り、刈り取った枝Pをホッパ72の上で強く振るって実を当該ホッパ72に落下させ、実が落とされたらその枝Pを圃場に放棄し、ホッパ72に収集された実を引き上げコンベア71で荷台78上に引き上げ、引き上げられたトマトをシュータ74に一時貯留してここで目視検査して混入しているゴミや不良トマトを取り除いてからシュータ74を開いて荷台上のコンテナ77に収容するという作業がなされる。
この特許文献1のものは刈り取り作業者の後を自走するトマト収穫作業用の補助機にすぎず、枝Pの刈り取り作業、枝Pからトマトを分離する分離作業、及びトマトの実を収集し選別する選別作業は全て作業者の人手によって行われる。
我が国で開発されたトマト収穫機、すなわち、刈り取り、分離、仕分け、選別を一貫して行うトマト収穫機(いわゆるコンバイン)は既に公知であるが、しかし、このトマト収穫機(この発明の前提となる従来技術)が記載されている文献は見当たらない。
【0005】
ところで、我が国におけるトマト収穫機は自走式で、走行部と当該走行部に搭載された作業部とからなり、作業部は油圧シリンダによって昇降されてその高さが調節される前方部と車体フレーム上に固定されている後方部とから構成されている。その全体構造はこの発明のトマト収穫機とほぼ同じであり(図1図2)、先端にある掻き上げ装置は上記支持構造物に上げ下げ自在に支持され、油圧シリンダによって上げ下げされ、またその高さを調整することができる。
【0006】
またこの従来のトマト収穫機は、トマトの枝Pを刈り取って掻き上げる掻き上げ装置、枝からトマトを分離するトマト分離装置(以下、これを単に「分離装置」ともいう)、分離されたトマトを硬い良好トマトと軟らかい不良トマトを仕分ける良否仕分け装置、硬い良好トマトから小玉トマトを排除し、さらに良く熟していて色むらがなく形が良くて無傷の良質トマトを選別する選別装置を備えている。
上記従来技術の各装置の概要を図1図2(この発明の実施例の図面)等を参照して説明する。
【0007】
掻き上げ装置1はクランク運動する多数の縦方向(前後方向)ロッド( 鋼材) によるものであり、多数(例えば、9〜10本) のロッドを一組にした掻き上げユニット1Aと1Bを組み合わせたものである。そして、その横幅は一畝を跨ぐ幅であり、その先端にディバイダーDがある。なお、このディバイダーDは畝の間の溝に延びているトマトの枝を畝の上に掻き寄せる手段である。
掻き上げユニット1A,1Bは先端部分が前下がりに少し傾斜しており、本体部分は後ろ上がりに大きく傾斜している。そしてユニット1A,1Bのロッドが交互に上下及び前後方向に往復運動する。両ユニット1A,1Bはそれぞれのクランクで駆動される。
【0008】
上記掻き上げユニット1A,1Bはトマトの枝P(以下これを単に「枝P」ともいう)を下から掬い上げ、そのクランク運動によって枝Pを押し上げて地面から浮かし、その後、カッターCで根切りし、根切りされた技Pを上方に掻き上げる。
【0009】
掻き上げ装置1の上に掻き上げ助勢装置2がある。この掻き上げ助勢装置2は掻き上げ装置1による掻き上げ作用を助勢するものであり、根切りされた枝Pを掻き上げ装置1との間に引き込んで確実に掻き上げるものである。
【0010】
従来のトマト収穫機における掻き上げ助勢装置2は図11(a),(b)に示すチェンコンベア20によるものであり、このチェンコンベア20は多数のスプロケット26a,26b,26cと一つのチェン27とによるコンベア(29a〜29e)を一定間隔で多数組み合わせて構成しているものであり、各チェン27に設けられている爪28によって枝Pを引っかけて引き上げる。
【0011】
引き上げコンベア3は掻き上げ装置1の直ぐ後方にあり、掻き上げ装置1で掻き上げられた枝Pを高い位置に引き上げてトマト分離装置4に送る。
枝Pが引き上げコンベア3でトマト分離装置4に送られると、トマト分離装置4上で実が枝Pから分離されて下方の良否仕分け装置5に落とされ、枝Pはトマト分離装置4の後方に放出される。
【0012】
分離装置4から良否仕分け装置5に落下したトマトの実(以下、単に「トマト」ともいう)は良否仕分け装置5により、硬い良好トマトが前方に転がって横送りコンベア6に落ち、軟らかい不良トマトが後方に搬送されて放出される。
【0013】
我が国においては、硬くて一定以上の大きさがあり色が良く色むらがなくて傷がない良質トマトが加工用トマトとして収穫される。そして、選別コンベア7で良質トマトが選別されるよりも前の段階で、硬い良好トマトと軟らかい不良トマトが仕分けられる。この仕分けをするのがこの良否仕分け装置5である。なお、トマト分離装置4から落下した茎葉もこの良否仕分け装置5によって後方に放出される。
従来のトマト収穫機における良否仕分け装置5は具体的には通常のベルトコンベアによるものであり、そのコンベアベルトは比較的硬いのでこれに落下したときの衝撃でトマトが傷付くことがあり、また良否仕分けの精度が安定しないという問題もある。
【0014】
横送りコンベア6は硬い良好トマトから小玉のものを選別する篩いを兼ねていて、選別コンベア7に送られる前に小玉を篩い落とす。その結果、一定以上の大きさのものだけが選別コンベア7に送られることになる。これはこの発明の実施例と同じである。
【0015】
選別コンベア7は目視検査のための搬送コンベアであり、色のわるいもの、色むらのあるもの、形がわるいもの、傷もの等が拾い出され、最終的に良質トマトが残される。
そして選別された良質トマトが引き上げコンベア8で引き上げられてシューター9に送られる。これはこの発明の実施例と同じである。
以上が従来のトマト収穫機の概要でありこの発明の前提技術の概要である。
【0016】
〔従来技術における問題点〕
従来のトマト収穫機における掻き上げ助勢装置2のチェンコンベア20(図11(a)(b))においてはその多数のチェン27,27の間から枝Pが入り込んでこれらのチェン27及びスプロケット26a,26b,26cに巻き付いてしまって掻き上げが止まることがあり、また、掻き上げ装置1との間に挟まれた枝Pの塊の大きさの変動に十分順応できないために掻き上げが止まることがある。
【0017】
以上のように、従来の掻き上げ助勢装置2では枝Pがチェンコンベア20に絡みついて掻き上げ不能になることが避けられず、そしてまた枝Pの塊が大きいと掻き上げ装置1とチェンコンベア20との間に強く挟まれて掻き上げがスムーズになされなくなる。そしてまた、枝Pが強く挟まれると掻き上げ助勢装置によって強く押さえられてトマトの実がチェン27で傷付けられてしまうこともある(第1の課題) 。
【0018】
また、従来の良否仕分け装置については硬い良好トマトと軟らかい不良トマトの仕分け精度が安定すること、また、緩衝性があること、さらにその機構が単純であることが求められている(第2の課題) 。
【0019】
さらに、トマト分離装置についてはその分離能力が低下すると収穫力が低下するので、圃場の地形やトマトの繁茂状況及び成熟状況の如何に関わらず、分離能率が常に安定していることが求められている(第3の課題)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
この発明は上記従来のトマト収穫機を前提として、上記第3の課題、すなわち、トマト分離装置について高能率でかつ常に安定的にトマトを分離できるようにその分離棚及びその支持機構を工夫するという課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するための手段は、次の(A)を前提として(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)及び(ヘ)によるものである。
(A)掻き上げ装置でトマトの枝Pを浮かせてカッターで根切りし、根切りされた枝Pを掻き上げ装置で掻き上げ、引き上げコンベアでトマト分離装置に送り、トマト分離装置で枝からトマトを分離し、良否仕分け装置で硬い良好トマトと軟らかい不良トマトに仕分けし、硬い良好トマトについて色や形や傷などについて目視検査して良質トマトを選別する自走式トマト収穫機のトマト分離装置であって、
【0022】
(イ)上記トマト分離装置が上下及び前後方向に往復動する分離棚によるものであり、
(ロ)上記分離棚が前方に傾斜していて、前後のクランクを介して支持フレームに支持されており、
(ハ)上記分離棚の傾斜角度が調節可能であり、上記支持フレームの後部が油圧シリンダで支持されていて、当該油圧シリンダの伸縮によって分離棚の上記傾斜角度が加減されるようになっており、
(ニ)上記分離棚の側面に水平に対する傾斜角度を表示する傾斜角度表示器を備えており、
(ホ)上記油圧シリンダを伸縮させるための操作弁を備えており、
(ヘ)上記傾斜角度表示器で分離棚の傾斜角度を確認しながら、上記油圧シリンダを伸縮させて上記傾斜角度を調節できること。
【0023】
なお、上記傾斜角度表示器は分離棚の水平に対する傾斜角度を表示し、また、その変化を読み取れるものである。そして、その角度表示を視認しながら傾斜角度を容易に調節して常に適切にすることができる。
また、その傾斜角度表示器は機械的なものでも電気的なものでもよいが、トマト収穫作業中に作業者がその角度表示を容易に視認できるものであることが必要である。
上記操作弁はトマト収穫作業中に作業者が容易に操作できる位置に配置されていることが好ましい。
なお、上記油圧シリンダを伸縮棒に変更することは可能であるが、その場合その伸縮棒は無段階または多段階に長さを加減して分離棚の角度を容易に調節できるものでなければならない。長さ調節手段として伸縮自在のネジ手段等がある。
【発明の効果】
【0024】
トマトの枝Pが分離棚で跳ね上げられ落下するときの衝撃でトマトが分離され、これが繰り返されることによって熟したトマトが完全に分離される。
例えば約20cmほどの高さに跳ね上げられ、それが10回程度繰り返されると熟したトマトは完全に分離される。
そして跳ね上げられる度に枝Pは分離棚上を後方に少しずつ移動する。そして当該移動距離は分離棚の後方へのストロークとその速度によって左右され、また分離棚の前方への傾斜角度によって左右されるので、この傾斜角度を調節することによって加減される。
したがって、枝Pが分離棚上を後方に移動して後端から落下するまでに繰り返される跳ね上げ回数は分離棚の上記傾斜角度を調節することによって容易に加減される。
【0025】
ところで、加工用トマトは比較的弱い衝撃でトマトのヘタが外れて実が枝Pから分離されるのは上記のとおりであるが、この分離され易さの程度はトマトの種類、繁茂状況、熟成度等によって違う。したがって、必要な跳ね上げ回数はこれらの如何によって異なるので、必要な回数だけ跳ね上げられるように分離棚の傾斜角度θを調節することが必要である。
【0026】
他方、分離棚の傾斜角度θは水平に対する角度であるから、トマト収穫機が前下がり又は前上がりに傾斜すると、これに伴って分離棚の傾斜角度θが変動して分離棚上で跳ね上げられる回数が増減し、その結果、トマト分離装置の分離能力が変動する。すなわち、跳ね上げ回数が少ないとトマトの分離能力が低下し、多いと分離棚上での滞在時間が必要以上に長くなり作業能率が低下することになる。
【0027】
以上のことからトマトの成熟度や繁茂状況が変化しあるいは分離棚の傾斜角度が変化するとこれに応じて分離棚の傾斜角度θを適切に調節する必要がある。
他方、傾斜角度θを適切に調節するには、収穫作業中に分離棚の傾斜角度θと標準傾斜角度に対する変動を容易に認識でき、それに基づいて当該傾斜角度θを容易にかつ適切に加減できることが必要である。
【0028】
この発明のトマト分離装置は分離棚の傾斜角度θの標準角度からの変動を上記傾斜角度表示器で容易かつ正確に認識でき、同傾斜角度表示器の表示を見ながら、上記操作弁を操作して上記油圧シリンダを伸縮させることによって、適宜にかつ容易に調節して適切な傾斜角度にすることができ、これにより、常に能率的でかつ安定的にトマト分離作業が進められる。
【0029】
〔実施態様〕
分離棚の上記傾斜角度は、トマト収穫機がほぼ水平状態にあるとき所定の標準角度(例えば標準角度2〜3度)に設定される。
そして、傾斜した分離棚をその状態でクランクによって上下及び前後方向に往復動させることが必要であり、かつその傾斜角度を適切に調節する必要がある。
【0030】
分離棚は前後のクランクによって上下及び前後に激しく駆動されるが、その傾斜角度θは上記(ロ)における支持フレームの傾斜角度と等しいからこの支持フレームの傾斜角度を表示することによって分離棚の傾斜角度が表示される。
したがって、トマト収穫機本体の前後方向の傾斜角度を表示する場合は時々の表示角度と初期設定された分離棚の傾斜角度を勘案しながら、その時々における分離棚の傾斜角度を適切な角度に調節する必要がある。そしてこのためには初期設定された分離棚の傾斜角度を表示し、トマト収穫機自体の水平に対する傾斜角度を表示してこれらの表示に基づいて必要なだけ分離棚の傾斜角度を修正すればよい。
【0031】
また、上記の支持フレームの傾斜角度θを調節できるようにするには、前部又は後部を上下方向に固定し、後部又は前部を上げ下げできるようにすればよい。
前部又は後部のいずれを上げ下げする構造にするかは適宜選択すればよいことであるが、後部を上げ下げできる構造によるときは横送りコンベア6との位置関係が安定するのでこの構造が望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】はこの発明によるトマト収穫機の全体側面図
図2】はこの発明によるトマト収穫機の全体平面図
図3】は掻き上げ装置1及び掻き上げ助勢装置2の斜視図
図4】は掻き上げ装置1の掻き上げ動作の分解説明図
図5】(a)は掻き上げ助勢装置1のコンベア平面図、(b)はその側面図
図6】はトマト分離装置4、良否仕分け装置5、横送りコンベア6を斜め上方から見た斜視図
図7】はトマト分離装置4の分離棚41の動作を説明するための動作の分解説明図
図8】(a)はトマト分離装置4と良否仕分け装置5の斜視図、(b)は良否仕分け装置の一部拡大図
図9】はトマト分離装置の側面図
図10】は分離棚の傾斜角度表示器の模式図
図11】(a)は従来の掻き上げ助勢装置の斜視図、(b)そのチェンの一部拡大図
図12】は特許文献1の従来のトマト収穫作業用補助機の側面図
図13】は特許文献1の従来のトマト収穫作業用補助機の正面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
この発明の実施形態の概要についてはこの発明の要旨に関連するところを説明し上記従来技術と格別違いがないところについては説明を省略する。
【0034】
(1)トマト分離装置4
トマト分離装置4は上下に往復動する分離棚によるものであり、分離棚の上下動によって当該分離棚上の枝Pを繰り返し大きく跳ね上げて分離棚に落下させ、この跳ね上げ動作の繰り返しで少しずつ後方に送る。この跳ね上げ動作でトマトの実を分離させ、そして分離されたものを分離棚4から篩い落とし、他方、枝Pを後方に放出する。
【0035】
トマト分離装置4の分離棚41の駆動機構は前下がりに傾斜した支持フレーム46と当該支持フレーム46上の前後のクランク42,42で構成されている。また、分離棚41の傾斜角度は容易に調節できるようになっている。
【0036】
(2)良否仕分け装置5
良否仕分け装置5はトマト分離装置4から落下したトマトを硬い良好トマトと軟らかい不良トマトに振り分ける装置であり、速やかにかつ高精度で仕分けることができる。
【0037】
前下がり(後上がり)に傾斜したコンベアの搬送面にトマトを落下させると、硬い良好トマトはコンベアの傾斜面(多数の細い横ロッドによるコンベア面)を転がり落ち、軟らかい不良トマトは転がらずに引き上げられる。これにより硬い良好トマトと軟らかい不良トマトとが確実に仕分けられる。
【0038】
この発明の良否仕分け装置5は左右のチェンと多数の横ロッドとによるチェンコンベアによるものであり、その横ロッドが弾性ロッドであることによりそのコンベア面の転がり抵抗が安定しており、したがって、安定した高い仕分け性能が発揮される。また、落下する硬い良好トマトに対する緩衝性が発揮させられる。
なお、この良否仕分け装置5のチェンコンベアの左右のチェンは必ずしもチェンである必要はなく、タイミングベルトまたはこれと同等の可撓性伝動手段でもよいが、耐久性の観点からチェンであることが好ましい。
【実施例】
【0039】
次いで、図面を参照して実施例を説明する。
〔全体構造について〕
この実施例の大きさは幅が2.1m、全長が5.2m、高さが2.6mである。そして、先端に掻き上げ装置1があり当該掻き上げ装置の前部の下にカッターCがあり、掻き上げ装置1の上に掻き上げ助勢装置2があり、さらに、掻き上げ装置1の後ろに引き上げコンベア3がある。上記カッターCは刈り取り幅の広いバリカン式であり、この点は従来のものと違わない。
掻き上げ助勢装置2の前半部は掻き上げ装置1に重なり、後半部は引き上げコンベア3の先端部分に重なっており、これによって掻き上げ装置1から引き上げコンベア3への枝Pの引き渡しがスムーズになされる。
掻き上げ装置1、掻き上げ助勢装置2、カッターC、引き上げコンベア3が可動フレーム(図示略)に支持されていてこれらが一体となって上下に動かされる。上記可動フレームはこれを下から支える油圧シリンダ(図示略)によって昇降操作される。
【0040】
また、掻き上げ装置1、カッターC、掻き上げ助勢装置2はサブフレーム(図示略)に支持されており、当該サブフレームは上記可動フレームに上下方向可動に支持されている。そして、上記サブフレームは油圧シリンダ(図示略)で高さ位置を自在に調節される。これによって掻き上げ装置1の先端が上げ下げされてその上下位置が微調節される。
【0041】
〔部分構造について〕
掻き上げ装置1と掻き上げ助勢装置2間の取り込み口の高さは約160mmである。
収穫作業におけるこのトマト収穫機の前進速度は時速0.05m/秒であり、掻き上げ助勢装置2のコンベアの搬送速度は0.08m/秒であって上記前進速度よりも少し速い。ただし、上記前進速度は作業能率と仕分け精度や選別精度を左右するので、圃場におけるトマト枝Pの粗密に応じて所要の仕分けや精度選別精度を確保しつつ最大の作業能率が得られるように調節される。
他方、引き上げコンベア3の搬送速度は、掻き上げ装置1による掻き上げ速度よりも少し速く具体的には0.1m/秒である。
【0042】
トマト分離装置4はその全長が1600mmで、横幅w1が800mmであり、その先端が引き上げコンベア3の後端よりも450mm下方にある。この落差は適当でよいがトマトの枝Pがトマト分離装置に落ちて山盛りになった状態でも引き上げコンベア3から分離棚41への後続の枝Pの受け渡しがスムーズになされる程度の余裕が必要である。
【0043】
良否仕分け装置5は前下がりに傾斜しておりその搬送方向は後方向である。
そして、当該良否仕分け装置5の先端の前方かつ下方に横送りコンベア6があり、良否仕分け装置5で仕分けられた硬い良好トマトがこの横送りコンベア6に落下し、横送りコンベア6によって選別コンベア7に送られる(図6)。
選別コンベア7で色、色むら、形、傷などについて目視検査して不良品が取り除かれる。
【0044】
〔収穫作業〕
圃場に広がっているトマトの枝Pは、畝と畝の間の溝に沿って前進するディバイダーDで畝の中央に寄せられ、掻き上げ装置で押し上げられてカッターCで根切りされる。そして根切りされた枝Pは掻き上げ装置1と掻き上げ助勢装置2とによって掻き上げられ、引き上げコンベア3で引き上げられてトマト分離装置4の上に落とされる。そして、トマト分離装置4に落ちた枝Pは、分離棚41の上下動で繰り返し高く跳ね上げられ、このときの衝撃でトマトの実が枝Pから分離される。
【0045】
トマト分離装置4で分離されたトマトの実(以下、単に「トマト」という)は良否仕分け装置5に落ち、そのうちの硬い良好トマトは良否仕分け装置5のコンベア面を前方に転がって横送りコンベア6に転落し、他方、軟らかい不良トマトは良否仕分け装置で後方に搬送されて後方から放出される。
【0046】
横送りコンベア6に転落した硬い良好トマトのうちの小玉が同横送りコンベア6で篩い落とされ、中玉、大玉が横送りコンベア6から選別コンベア7に移される。そして、選別コンベア7での最終検査を経た良質トマトが引き上げコンベア8でシューター9まで引き上げられ、シューター9からコンテナに移される。
【0047】
〔要部の構造〕
次いで、実施例の要部の詳細構造を説明する。
〔掻き上げ装置1の構造〕
この掻き上げ装置1はその横幅が950mm、長さが700mmであり、ロッド11の線径はφ16mm、ロッドのピッチは40mmである。また、クランクの回転速度は300/分で、上下及び前後方向のストロークは16mmである。
【0048】
掻き上げ装置1は掻き上げユニット1Aと掻き上げユニット1Bとの組み合わせで構成されており、クランク12A,12Bによってそれぞれ駆動されて、交互に上下及び前後方向に往復動する。
掻き上げユニット1A,1Bのクランク運動を図4の(1)〜(4)を参照しつつ説明する。
【0049】
1):掻き上げユニット1Aが最上位置にあり、同ユニット1Bが最下位置にある。このとき、ユニット1Aとユニット1Bの前後方向位置が一致している。
2):クランク12が時計回りに90度回転して同ユニット1Aが下降しながら後退し、同ユニット1Bが上昇しながら前進する。このとき、同ユニット1Aが同ユニット1Bに対して最も後方にある。
3):さらに90度回転して同ユニット1Aがさらに下降しながら前進し、同ユニット1Bがさらに上昇しながら後退する。
4):さらに90度回転して同ユニット1Aが上昇しながら前進し、同ユニット1Bが下降しながら後退する。
5):さらに90度回転して同ユニット1Aがさらに上昇しながら後退し、同ユニット1Bがさらに下降しながら前進する。これによってクランク12は1回転したことになるので、同ユニット1A,1Bは図4の(1)の位置に戻ることになる。
そして、2つの掻き上げユニット1A,1Bがゆっくりと前進しながら交互に上下及び前後動することによって、枝Pを押し上げて浮かせ、根切りして後方に掻き上げていく。
【0050】
〔掻き上げ助勢装置2の構造〕
掻き上げ助勢装置2は3個のスプロケット25a,25b,25cによる逆三角形状のチェンコンベア21によるものである。そしてこのチェンコンベア21は左右のチェン22,22を多数の細長い横ロッド23で連結して構成されているものであり、上記横ロッド23の両端は連結ピン(チェンリンクの連結ピン)を兼ねている。横ロッド23の線径はφ8mm、ロッドピッチ(ロッドの間隔)は40mmである。
また、隣接する2つの横ロッド23,23に跨って爪24が設けられており、この爪24は横ロッド23の左右両側部と他のロッドの中央部とにあって、コンベア搬送面に均等に配置されている。
【0051】
この掻き上げ助勢装置2はその横幅が950mmであり、掻き上げ装置1と重なっている前半部分と、引き上げコンベア3の先端部と重なっている後半部とを備えている。
そして、掻き上げ装置1と掻き上げ助勢装置2とが上下に重なっている部分における間隔は、掻き上げユニット1A,1Bのいずれかが最上位置にあるとき150mmである。
そして、掻き上げユニット1A,1Bのいずれかが最上位置にあるとき枝Pが最も押し上げられて掻き上げ助勢装置2に最も強く押し付けられるので、この状態で最も強く後方に掻き上げられることになる。
引き上げ助勢装置2のチェンコンベア21の横ロッド23は細長くて撓み易い高弾性ロッドであり、掻き上げ装置1に掬い上げられた枝Pを弾性的に押さえ、掻き上げユニット1A,1Bによる押し上げ力に応じて上方に弾性変形する。
【0052】
〔引き上げコンベア3の構造〕
引き上げコンベア3は左右のチェンを多数の横ロッドで連結して構成されたチェンコンベアであり、その横ロッドに滑り止め用の高さ50mmの爪がある。この引き上げコンベア3の構造(左右のチェンと横ロッドの関係、及び爪の配置等)は掻き上げ助勢装置2のチェンコンベア21のそれとほぼ同様である(必要なら図2図3を参照されたい)。
引き上げコンベア3の幅は掻き上げ装置1の幅よりも少し広く、長さは2.8mで、傾斜角度は55度である。横ロッドの線径は8mmで、ピッチは40mmである。
【0053】
〔トマト分離装置4の構造〕
このトマト分離装置4の分離棚41は多数の縦ロッド(前後方向ロッド)41aと支持部材41bで構成されており、その幅w1は800mm、全長は1,600mmである。多数の縦ロッド41aが両端を前後の支持部材41bに固着して一体化されており、前後の支持部材41bは前後のクランク42に支持されている。
分離棚41の全長は当該分離棚上の枝Pに後続の枝Pが重ならないで順次後方に送られ、高さ20cmまで10回程度跳ね上げられてから後方に放出されるのに足る長さである。
分離棚41の縦ロッド41aのロッド径はφ17mm、ロッドピッチPは85mmである。
上記分離棚41は少し後ろ上がり(前下がり)に傾斜しており(傾斜角度θ)、前後のクランク42,42は中央の駆動スプロケット44aによって伝動チェン45及び被駆動スプロケット44bを介して同方向に駆動される。
【0054】
図7の(1)から(5)は分離棚41の前後のクランク42,42によるクランク運動を回転角度90度毎に分解して示している。
図7の(1)では上下方向下端で前後方向中央にあり、(2)では上下方向中央、前後方向前方にある。
また(3)では上端位置、(4)では中央位置、(5)では(1)と同じ下端位置である。
以上のクランク運動が毎分300回の速さで繰り返される。
【0055】
前後のクランク42,42によって駆動されて分離棚41が上下及び前後に往復動すると、その上下動によって分離棚41上の枝Pが大きく(概略20cm程)跳ね上げられて分離棚41上に落下する。そしてこのクランク運動の前後動で枝Pが後方に少しづつ送られる。
跳ね上げられる高さ及び後方への移動距離はクランク42,42のストロークとその回転速度によって決まるので、回転速度を調節することによって跳ね上げ高さと後方への移動距離が加減される。したがって、回転速度の調節で後方への移動距離だけを加減することはできない。
【0056】
この実施例のトマト分離装置4はそのクランク42,42が毎分300回の速度で回転し、そしてこのクランクによる上下及び前後方向ストロークは80mmである。
分離棚41はその水平に対する傾斜角度θ(図9)を調節できるようになっており、傾斜角度θを調節することによって1回の跳ね上げによる枝Pの後方への移動距離が加減され、これによって分離棚41から後方に放出されるまでに跳ね上げられる回数が加減される。
【0057】
分離棚41のランク運動によって枝Pが後方に送られ、この後方への送り距離は分離棚の傾斜角度によって異なる。そして、分離棚41の傾斜角度を加減することによって、跳ね上げ高さ一定のままで跳ね上げ回数が加減される。この実施例では分離棚41の傾斜角度θがほぼ3度に調節されていて、これにより枝Pが10回跳ね上げられてから後方に放出されるようになっている。
【0058】
トマト分離の難易は品種やその繁茂状況、熟成度等によって違うので、これに応じて枝Pが分離棚41上で跳ね上げられる回数を加減する必要がある。このために分離棚41の傾斜角度を容易に調整できるようでなければならない。
【0059】
この発明のトマト収穫機では分離棚41を駆動するクランク42,42が支持フレーム46に取り付けられており、支持フレーム46の先端部が横方向の枢支軸47で支持され、支持フレーム46の後端部に油圧シリンダ48が連結されている。そして、上記油圧シリンダ48を伸縮させると分離棚41の後端が上げ下げされてその傾斜角度θが加減される(図9)。
【0060】
支持フレーム46の側面に図10に示す傾斜角度表示器10が設けられており(図9)、この傾斜角度表示器10は、支持フレーム46の側面に固定されている角度表示板103と、設定された分離棚41の傾斜角度θを示す基準指針101と、重力によって常に垂直下方を示す可動指針102とを備えている。上記基準指針101は基準となる標準角度を示すものであって、設定された傾斜角度に合わされる(例えば、分離棚41の傾斜角度が25度に設定されたとき、基準指針101を垂直下方に向けてその表示を25度に合わせる)。他方、トマト収穫機が前後方向に傾斜しても可動指針は常に垂直下方を示すので、分離棚41の設定角度からのずれが基準指針101の表示と可動指針の表示とのずれとして表されることになる。
したがって、可動指針102による表示を見ながらトマト分離棚の初期設定を行えば、そのときの初期設定角度が可動指針102で示されることになる。
そして、可動指針102が基準指針101に重なるまで支持フレーム46の傾斜角度を調節すれば、分離棚41の傾斜角度は初期状態に戻されたことになる。
【0061】
圃場が前後方向に傾斜しているとその傾斜角度分だけ基準指針101に対して可動指針102がずれる。このずれが許容範囲を超えたときは、操作弁(図示略)を操作して油圧シリンダ48を伸縮させて可動指針102が基準指針101に重なるように支持フレーム46の傾斜角度を調節する。これによって分離棚41の傾斜角度(水平に対する傾斜角度)は初期設定状態に戻されることになる。
【0062】
分離棚41の傾斜角度θは支持フレーム46の傾斜角度と同じであるから、支持フレーム46の角度が調節されることによって同時に分離棚41の傾斜角度θが調節されることになる。この実施例における傾斜角度表示器10は極めて単純なもので廉価であり、傾斜角度θの調節は簡単である。
【0063】
この実施例の傾斜角度表示器10は角度表示板103を固定して基準指針101で設定された標準傾斜角度を示す構造であるが、次のようにすることもできる。
すなわち、半円状の角度表示板103を支持フレーム46の側面に揺動自在に枢支させ、当該角度表示板103を一時的に固定し、この状態で可動指針による指示を見ながら傾斜角度を設定(初期設定)し、その後に角度表示板103をフリーにしてその位置をゼロに戻してそこで再び固定する。これによって可動指針102が機体の傾斜角度を表示するようにすることもできる。この場合は角度表示板103の目盛りゼロに対する可動指針102の位置ずれがトマト収穫機の前後方向への傾斜角度を表すことになるから、可動指針102が目盛りゼロに重なるまで分離棚41の傾斜角度を変えることによって初期設定状態に戻されたことになる。
【0064】
また、以上の例は簡単な機械的な傾斜角度表示器であるが、支持フレーム46の側面に何らかの電気的な傾斜角度センサを設け、この電気的な傾斜角度センサによる検出角度がモニタ画面に表示されるようにすることもできる。
そして、このように電気的な傾斜角度センサを用いる場合は、その角度検出データを利用して油圧シリンダ48を自動制御することもでき、この場合は、上記傾斜角度の初期設定、作業中の調節をマイクロコンピュータを利用して自動的に制御することも可能である。
【0065】
〔良否仕分け装置5の構造〕
良否仕分け装置5は、左右のチェン52と多数の横ロッド53とで構成されたチェンコンベア51によるものであり、前下がりに傾斜していて(図6)後方に搬送する。
【0066】
この良否仕分け装置5のチェンコンベア51上に落下した硬い良好トマトはコンベアの傾斜によって前方(搬送方向に対して反対方向)に速やかに転がり落ち、軟かい不良トマトは転がり難いので後方に搬送される。
このようにして、前方への転落速度よりも後方への搬送速度が勝るものは不良トマトとして後方に排出されることになる。
【0067】
また、前記トマト分離装置4からトマトと一緒に落ちた茎葉も良否仕分け装置5によって後方に放出される。
そして、この実施例の良否仕分け装置5の上記傾斜角度α(図8参照)は水平に対してほぼ25度であり、後方への搬送速度は0.3〜0.5m/秒である。
【0068】
良否仕分け装置5のチェンコンベア51の横ロッド53の線径dは5mm、ロッドのピッチpは20mmであり、良否仕分け装置5の横幅wは600mm、長さLは1050mmである。
横ロッド53の線径d、ロッドのピッチpがコンベア搬送面の転がり抵抗に関係して良否仕分け性能に関係する。
また、良否仕分け性能はチェンコンベアの傾斜角度αと後方への搬送速度が変わるとこれに左右されるので、傾斜角度を可変にしまた搬送速度を可変にすることにより、所要の仕分け精度になるように調整することができる。
【0069】
良否仕分け装置5は左右のチェン52,52と多数の横ロッド53によるチェンコンベア51であるが、左右の伝動手段は必ずしもチェンである必要はなく、したがって、チェンに変えて歯付きベルト等の伝動手段を用いることもできる。
【0070】
〔横送りコンベア6の構造〕
この横送りコンベア6は左右のチェン62と多数の横ロッド63とによるチェンコンベアである。
横ロッド63の線径はφ9mm、ロッドピッチは42mmであり、横送りコンベア6の横幅は500mm、長さは900mmである。そして、ロッド間の隙間は33mmである。
【0071】
〔選別コンベア7の構造〕
選別コンベア7は目視検査のための搬送コンベアであるから特別の構造を有するものではなく、横送りコンベア6と同様の単純なチェンコンベアになっている。このものの横ロッドの線径はφ5mm、ロッドピッチは20mmであり、コンベア横幅は400mm、長さは3000mmである。ロッド間の隙間は15mmである。
【0072】
〔引き上げコンベア8の構造〕
引き上げコンベア8は左右のチェンと多数の横ロッドによる単純な搬送コンベアであって特別な構造のものではない。
この実施例における引き上げコンベア8は傾斜角度が45度であり、選別コンベア7を延長してこれと一連のものとして構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【特許文献1】特開平6−46647号公報
【符号の説明】
【0074】
1:掻き上げ装置
2:掻き上げ助勢装置
3:引き上げコンベア
4:トマト分離装置
5:良否仕分け装置
6:横送りコンベア
7:選別コンベア
8:引き上げコンベア
9:シューター
10:傾斜角度表示器
21:チェンコンベア
22:チェン
23:横ロッド
24:爪
41:分離棚
41a:縦ロッド
42:クランク
45:チェン
46:支持フレーム46
48:油圧シリンダ
101:基準指針
102:可動指針
103:角度表示板103
1A,1B:掻き上げユニット
θ:分離棚の傾斜角度
α:良否仕分け装置の傾斜角度
C:カッター
P:トマトの枝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13