【実施例】
【0039】
次いで、図面を参照して実施例を説明する。
〔全体構造について〕
この実施例の大きさは幅が2.1m、全長が5.2m、高さが2.6mである。そして、先端に掻き上げ装置1があり当該掻き上げ装置の前部の下にカッターCがあり、掻き上げ装置1の上に掻き上げ助勢装置2があり、さらに、掻き上げ装置1の後ろに引き上げコンベア3がある。上記カッターCは刈り取り幅の広いバリカン式であり、この点は従来のものと違わない。
掻き上げ助勢装置2の前半部は掻き上げ装置1に重なり、後半部は引き上げコンベア3の先端部分に重なっており、これによって掻き上げ装置1から引き上げコンベア3への枝Pの引き渡しがスムーズになされる。
掻き上げ装置1、掻き上げ助勢装置2、カッターC、引き上げコンベア3が可動フレーム(図示略)に支持されていてこれらが一体となって上下に動かされる。上記可動フレームはこれを下から支える油圧シリンダ(図示略)によって昇降操作される。
【0040】
また、掻き上げ装置1、カッターC、掻き上げ助勢装置2はサブフレーム(図示略)に支持されており、当該サブフレームは上記可動フレームに上下方向可動に支持されている。そして、上記サブフレームは油圧シリンダ(図示略)で高さ位置を自在に調節される。これによって掻き上げ装置1の先端が上げ下げされてその上下位置が微調節される。
【0041】
〔部分構造について〕
掻き上げ装置1と掻き上げ助勢装置2間の取り込み口の高さは約160mmである。
収穫作業におけるこのトマト収穫機の前進速度は時速0.05m/秒であり、掻き上げ助勢装置2のコンベアの搬送速度は0.08m/秒であって上記前進速度よりも少し速い。ただし、上記前進速度は作業能率と仕分け精度や選別精度を左右するので、圃場におけるトマト枝Pの粗密に応じて所要の仕分けや精度選別精度を確保しつつ最大の作業能率が得られるように調節される。
他方、引き上げコンベア3の搬送速度は、掻き上げ装置1による掻き上げ速度よりも少し速く具体的には0.1m/秒である。
【0042】
トマト分離装置4はその全長が1600mmで、横幅w1が800mmであり、その先端が引き上げコンベア3の後端よりも450mm下方にある。この落差は適当でよいがトマトの枝Pがトマト分離装置に落ちて山盛りになった状態でも引き上げコンベア3から分離棚41への後続の枝Pの受け渡しがスムーズになされる程度の余裕が必要である。
【0043】
良否仕分け装置5は前下がりに傾斜しておりその搬送方向は後方向である。
そして、当該良否仕分け装置5の先端の前方かつ下方に横送りコンベア6があり、良否仕分け装置5で仕分けられた硬い良好トマトがこの横送りコンベア6に落下し、横送りコンベア6によって選別コンベア7に送られる(
図6)。
選別コンベア7で色、色むら、形、傷などについて目視検査して不良品が取り除かれる。
【0044】
〔収穫作業〕
圃場に広がっているトマトの枝Pは、畝と畝の間の溝に沿って前進するディバイダーDで畝の中央に寄せられ、掻き上げ装置で押し上げられてカッターCで根切りされる。そして根切りされた枝Pは掻き上げ装置1と掻き上げ助勢装置2とによって掻き上げられ、引き上げコンベア3で引き上げられてトマト分離装置4の上に落とされる。そして、トマト分離装置4に落ちた枝Pは、分離棚41の上下動で繰り返し高く跳ね上げられ、このときの衝撃でトマトの実が枝Pから分離される。
【0045】
トマト分離装置4で分離されたトマトの実(以下、単に「トマト」という)は良否仕分け装置5に落ち、そのうちの硬い良好トマトは良否仕分け装置5のコンベア面を前方に転がって横送りコンベア6に転落し、他方、軟らかい不良トマトは良否仕分け装置で後方に搬送されて後方から放出される。
【0046】
横送りコンベア6に転落した硬い良好トマトのうちの小玉が同横送りコンベア6で篩い落とされ、中玉、大玉が横送りコンベア6から選別コンベア7に移される。そして、選別コンベア7での最終検査を経た良質トマトが引き上げコンベア8でシューター9まで引き上げられ、シューター9からコンテナに移される。
【0047】
〔要部の構造〕
次いで、実施例の要部の詳細構造を説明する。
〔掻き上げ装置1の構造〕
この掻き上げ装置1はその横幅が950mm、長さが700mmであり、ロッド11の線径はφ16mm、ロッドのピッチは40mmである。また、クランクの回転速度は300/分で、上下及び前後方向のストロークは16mmである。
【0048】
掻き上げ装置1は掻き上げユニット1Aと掻き上げユニット1Bとの組み合わせで構成されており、クランク12A,12Bによってそれぞれ駆動されて、交互に上下及び前後方向に往復動する。
掻き上げユニット1A,1Bのクランク運動を
図4の(1)〜(4)を参照しつつ説明する。
【0049】
1):掻き上げユニット1Aが最上位置にあり、同ユニット1Bが最下位置にある。このとき、ユニット1Aとユニット1Bの前後方向位置が一致している。
2):クランク12が時計回りに90度回転して同ユニット1Aが下降しながら後退し、同ユニット1Bが上昇しながら前進する。このとき、同ユニット1Aが同ユニット1Bに対して最も後方にある。
3):さらに90度回転して同ユニット1Aがさらに下降しながら前進し、同ユニット1Bがさらに上昇しながら後退する。
4):さらに90度回転して同ユニット1Aが上昇しながら前進し、同ユニット1Bが下降しながら後退する。
5):さらに90度回転して同ユニット1Aがさらに上昇しながら後退し、同ユニット1Bがさらに下降しながら前進する。これによってクランク12は1回転したことになるので、同ユニット1A,1Bは
図4の(1)の位置に戻ることになる。
そして、2つの掻き上げユニット1A,1Bがゆっくりと前進しながら交互に上下及び前後動することによって、枝Pを押し上げて浮かせ、根切りして後方に掻き上げていく。
【0050】
〔掻き上げ助勢装置2の構造〕
掻き上げ助勢装置2は3個のスプロケット25a,25b,25cによる逆三角形状のチェンコンベア21によるものである。そしてこのチェンコンベア21は左右のチェン22,22を多数の細長い横ロッド23で連結して構成されているものであり、上記横ロッド23の両端は連結ピン(チェンリンクの連結ピン)を兼ねている。横ロッド23の線径はφ8mm、ロッドピッチ(ロッドの間隔)は40mmである。
また、隣接する2つの横ロッド23,23に跨って爪24が設けられており、この爪24は横ロッド23の左右両側部と他のロッドの中央部とにあって、コンベア搬送面に均等に配置されている。
【0051】
この掻き上げ助勢装置2はその横幅が950mmであり、掻き上げ装置1と重なっている前半部分と、引き上げコンベア3の先端部と重なっている後半部とを備えている。
そして、掻き上げ装置1と掻き上げ助勢装置2とが上下に重なっている部分における間隔は、掻き上げユニット1A,1Bのいずれかが最上位置にあるとき150mmである。
そして、掻き上げユニット1A,1Bのいずれかが最上位置にあるとき枝Pが最も押し上げられて掻き上げ助勢装置2に最も強く押し付けられるので、この状態で最も強く後方に掻き上げられることになる。
引き上げ助勢装置2のチェンコンベア21の横ロッド23は細長くて撓み易い高弾性ロッドであり、掻き上げ装置1に掬い上げられた枝Pを弾性的に押さえ、掻き上げユニット1A,1Bによる押し上げ力に応じて上方に弾性変形する。
【0052】
〔引き上げコンベア3の構造〕
引き上げコンベア3は左右のチェンを多数の横ロッドで連結して構成されたチェンコンベアであり、その横ロッドに滑り止め用の高さ50mmの爪がある。この引き上げコンベア3の構造(左右のチェンと横ロッドの関係、及び爪の配置等)は掻き上げ助勢装置2のチェンコンベア21のそれとほぼ同様である(必要なら
図2、
図3を参照されたい)。
引き上げコンベア3の幅は掻き上げ装置1の幅よりも少し広く、長さは2.8mで、傾斜角度は55度である。横ロッドの線径は8mmで、ピッチは40mmである。
【0053】
〔トマト分離装置4の構造〕
このトマト分離装置4の分離棚41は多数の縦ロッド(前後方向ロッド)41aと支持部材41bで構成されており、その幅w1は800mm、全長は1,600mmである。多数の縦ロッド41aが両端を前後の支持部材41bに固着して一体化されており、前後の支持部材41bは前後のクランク42に支持されている。
分離棚41の全長は当該分離棚上の枝Pに後続の枝Pが重ならないで順次後方に送られ、高さ20cmまで10回程度跳ね上げられてから後方に放出されるのに足る長さである。
分離棚41の縦ロッド41aのロッド径はφ17mm、ロッドピッチPは85mmである。
上記分離棚41は少し後ろ上がり(前下がり)に傾斜しており(傾斜角度θ)、前後のクランク42,42は中央の駆動スプロケット44aによって伝動チェン45及び被駆動スプロケット44bを介して同方向に駆動される。
【0054】
図7の(1)から(5)は分離棚41の前後のクランク42,42によるクランク運動を回転角度90度毎に分解して示している。
図7の(1)では上下方向下端で前後方向中央にあり、(2)では上下方向中央、前後方向前方にある。
また(3)では上端位置、(4)では中央位置、(5)では(1)と同じ下端位置である。
以上のクランク運動が毎分300回の速さで繰り返される。
【0055】
前後のクランク42,42によって駆動されて分離棚41が上下及び前後に往復動すると、その上下動によって分離棚41上の枝Pが大きく(概略20cm程)跳ね上げられて分離棚41上に落下する。そしてこのクランク運動の前後動で枝Pが後方に少しづつ送られる。
跳ね上げられる高さ及び後方への移動距離はクランク42,42のストロークとその回転速度によって決まるので、回転速度を調節することによって跳ね上げ高さと後方への移動距離が加減される。したがって、回転速度の調節で後方への移動距離だけを加減することはできない。
【0056】
この実施例のトマト分離装置4はそのクランク42,42が毎分300回の速度で回転し、そしてこのクランクによる上下及び前後方向ストロークは80mmである。
分離棚41はその水平に対する傾斜角度θ(
図9)を調節できるようになっており、傾斜角度θを調節することによって1回の跳ね上げによる枝Pの後方への移動距離が加減され、これによって分離棚41から後方に放出されるまでに跳ね上げられる回数が加減される。
【0057】
分離棚41のランク運動によって枝Pが後方に送られ、この後方への送り距離は分離棚の傾斜角度によって異なる。そして、分離棚41の傾斜角度を加減することによって、跳ね上げ高さ一定のままで跳ね上げ回数が加減される。この実施例では分離棚41の傾斜角度θがほぼ3度に調節されていて、これにより枝Pが10回跳ね上げられてから後方に放出されるようになっている。
【0058】
トマト分離の難易は品種やその繁茂状況、熟成度等によって違うので、これに応じて枝Pが分離棚41上で跳ね上げられる回数を加減する必要がある。このために分離棚41の傾斜角度を容易に調整できるようでなければならない。
【0059】
この発明のトマト収穫機では分離棚41を駆動するクランク42,42が支持フレーム46に取り付けられており、支持フレーム46の先端部が横方向の枢支軸47で支持され、支持フレーム46の後端部に油圧シリンダ48が連結されている。そして、上記油圧シリンダ48を伸縮させると分離棚41の後端が上げ下げされてその傾斜角度θが加減される(
図9)。
【0060】
支持フレーム46の側面に
図10に示す傾斜角度表示器10が設けられており(
図9)、この傾斜角度表示器10は、支持フレーム46の側面に固定されている角度表示板103と、設定された分離棚41の傾斜角度θを示す基準指針101と、重力によって常に垂直下方を示す可動指針102とを備えている。上記基準指針101は基準となる標準角度を示すものであって、設定された傾斜角度に合わされる(例えば、分離棚41の傾斜角度が25度に設定されたとき、基準指針101を垂直下方に向けてその表示を25度に合わせる)。他方、トマト収穫機が前後方向に傾斜しても可動指針は常に垂直下方を示すので、分離棚41の設定角度からのずれが基準指針101の表示と可動指針の表示とのずれとして表されることになる。
したがって、可動指針102による表示を見ながらトマト分離棚の初期設定を行えば、そのときの初期設定角度が可動指針102で示されることになる。
そして、可動指針102が基準指針101に重なるまで支持フレーム46の傾斜角度を調節すれば、分離棚41の傾斜角度は初期状態に戻されたことになる。
【0061】
圃場が前後方向に傾斜しているとその傾斜角度分だけ基準指針101に対して可動指針102がずれる。このずれが許容範囲を超えたときは、操作弁(図示略)を操作して油圧シリンダ48を伸縮させて可動指針102が基準指針101に重なるように支持フレーム46の傾斜角度を調節する。これによって分離棚41の傾斜角度(水平に対する傾斜角度)は初期設定状態に戻されることになる。
【0062】
分離棚41の傾斜角度θは支持フレーム46の傾斜角度と同じであるから、支持フレーム46の角度が調節されることによって同時に分離棚41の傾斜角度θが調節されることになる。この実施例における傾斜角度表示器10は極めて単純なもので廉価であり、傾斜角度θの調節は簡単である。
【0063】
この実施例の傾斜角度表示器10は角度表示板103を固定して基準指針101で設定された標準傾斜角度を示す構造であるが、次のようにすることもできる。
すなわち、半円状の角度表示板103を支持フレーム46の側面に揺動自在に枢支させ、当該角度表示板103を一時的に固定し、この状態で可動指針による指示を見ながら傾斜角度を設定(初期設定)し、その後に角度表示板103をフリーにしてその位置をゼロに戻してそこで再び固定する。これによって可動指針102が機体の傾斜角度を表示するようにすることもできる。この場合は角度表示板103の目盛りゼロに対する可動指針102の位置ずれがトマト収穫機の前後方向への傾斜角度を表すことになるから、可動指針102が目盛りゼロに重なるまで分離棚41の傾斜角度を変えることによって初期設定状態に戻されたことになる。
【0064】
また、以上の例は簡単な機械的な傾斜角度表示器であるが、支持フレーム46の側面に何らかの電気的な傾斜角度センサを設け、この電気的な傾斜角度センサによる検出角度がモニタ画面に表示されるようにすることもできる。
そして、このように電気的な傾斜角度センサを用いる場合は、その角度検出データを利用して油圧シリンダ48を自動制御することもでき、この場合は、上記傾斜角度の初期設定、作業中の調節をマイクロコンピュータを利用して自動的に制御することも可能である。
【0065】
〔良否仕分け装置5の構造〕
良否仕分け装置5は、左右のチェン52と多数の横ロッド53とで構成されたチェンコンベア51によるものであり、前下がりに傾斜していて(
図6)後方に搬送する。
【0066】
この良否仕分け装置5のチェンコンベア51上に落下した硬い良好トマトはコンベアの傾斜によって前方(搬送方向に対して反対方向)に速やかに転がり落ち、軟かい不良トマトは転がり難いので後方に搬送される。
このようにして、前方への転落速度よりも後方への搬送速度が勝るものは不良トマトとして後方に排出されることになる。
【0067】
また、前記トマト分離装置4からトマトと一緒に落ちた茎葉も良否仕分け装置5によって後方に放出される。
そして、この実施例の良否仕分け装置5の上記傾斜角度α(
図8参照)は水平に対してほぼ25度であり、後方への搬送速度は0.3〜0.5m/秒である。
【0068】
良否仕分け装置5のチェンコンベア51の横ロッド53の線径dは5mm、ロッドのピッチpは20mmであり、良否仕分け装置5の横幅wは600mm、長さLは1050mmである。
横ロッド53の線径d、ロッドのピッチpがコンベア搬送面の転がり抵抗に関係して良否仕分け性能に関係する。
また、良否仕分け性能はチェンコンベアの傾斜角度αと後方への搬送速度が変わるとこれに左右されるので、傾斜角度を可変にしまた搬送速度を可変にすることにより、所要の仕分け精度になるように調整することができる。
【0069】
良否仕分け装置5は左右のチェン52,52と多数の横ロッド53によるチェンコンベア51であるが、左右の伝動手段は必ずしもチェンである必要はなく、したがって、チェンに変えて歯付きベルト等の伝動手段を用いることもできる。
【0070】
〔横送りコンベア6の構造〕
この横送りコンベア6は左右のチェン62と多数の横ロッド63とによるチェンコンベアである。
横ロッド63の線径はφ9mm、ロッドピッチは42mmであり、横送りコンベア6の横幅は500mm、長さは900mmである。そして、ロッド間の隙間は33mmである。
【0071】
〔選別コンベア7の構造〕
選別コンベア7は目視検査のための搬送コンベアであるから特別の構造を有するものではなく、横送りコンベア6と同様の単純なチェンコンベアになっている。このものの横ロッドの線径はφ5mm、ロッドピッチは20mmであり、コンベア横幅は400mm、長さは3000mmである。ロッド間の隙間は15mmである。
【0072】
〔引き上げコンベア8の構造〕
引き上げコンベア8は左右のチェンと多数の横ロッドによる単純な搬送コンベアであって特別な構造のものではない。
この実施例における引き上げコンベア8は傾斜角度が45度であり、選別コンベア7を延長してこれと一連のものとして構成されている。