(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トレッド面の幅方向中央部の周方向に形成された2本の中央リブ主溝と、前記中央リブ主溝の間に前記中央リブ主溝と斜めに交差して形成された中央ラグ溝と、で幅方向及び周方向が区画された中央ブロック列と、
2本の前記中央リブ主溝と、前記中央リブ主溝のそれぞれの幅方向外側であり周方向に形成された2本の中間リブ主溝と、で幅方向が区画され、前記中央リブ主溝と前記中間リブ主溝との間に設けられ、前記中央ラグ溝と反対方向へ斜めに形成された中間ラグ溝で周方向が区画された中間ブロック列と、
前記中央ブロック列を構成する中央ブロックに前記中央ラグ溝と平行に形成され、一方の端部が一方の前記中央リブ主溝に達し、前記中央ブロックを幅方向に3等分した中央領域を中央部としたとき、他方の端部が前記中央部で終端する第1サイプと、
前記中央ブロックに前記第1サイプと平行に形成され、一方の端部が他方の前記中央リブ主溝に達し、他方の端部が前記中央部で終端する第2サイプと、
前記中間ブロック列を構成する中間ブロックに前記中間ラグ溝と平行に形成され、一方の端部が前記中央リブ主溝に達し、他方の端部が前記中間リブ主溝に達する第3サイプと、を有し、
前記中央ブロックでは、一方の前記中央リブ主溝との交差角度が鈍角となる一方の前記中央ラグ溝寄りの部分に前記第1サイプが形成され、他方の前記中央リブ主溝との交差角度が鈍角となる他方の前記中央ラグ溝寄りの部分に前記第2サイプが形成された、空気入りタイヤ。
前記第1サイプの一方の前記中央リブ主溝に達する一方の端部と、前記第2サイプの他方の前記中央リブ主溝に達する一方の端部には、前記第1サイプ及び前記第2サイプの溝幅を広げた細溝が形成されている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
2本の前記中間リブ主溝と、前記中間リブ主溝のそれぞれの幅方向外側に、周方向に形成された2本の端部リブ主溝で幅方向が区画され、前記中間リブ主溝と前記端部リブ主溝の間に前記中間ラグ溝と反対方向へ斜めに形成された端部ラグ溝で周方向が区画された端部ブロック列と、
を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【背景技術】
【0002】
雪上性能の向上を目的としたオールシーズン用空気入りタイヤのトレッドパターンおいては、ブロックにサイプと呼ばれる極細の溝部を設け、接地時にサイプで区画されたブロックを変形させて、多数のエッジで路面と接触させることで操縦安定性を向上させている(エッジ効果)。しかし、ブロックを区画するサイプの数を増せば、ブロック剛性が低下してドライ性能が低下するという問題がある。このため、ブロック剛性の低下を抑制して雪上性能を向上させる技術が要求されている。
ブロック剛性の低下を抑制してブロックにサイプを設ける技術としては、例えば特許文献1がある。
特許文献1には、タイヤのトレッド面の幅方向に、複数のブロック列を形成した空気入りタイヤにおいて、それぞれのブロック列のブロックに、タイヤ幅方向へ延びる複数のサイプを設けた構成が記載されている。各ブロックは縦溝と横溝で矩形に形成され、複数のサイプでブロックを細幅に区画し、エッジ効果による雪上性能の向上を図っている。このとき、トレッド面の幅方向中央部に形成されたブロック列においては、サイプのピッチを、タイヤ周方向の中間部よりも前後端側を大きくしている。これにより、ブロック剛性の低下を抑制している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1は、トレッド面の幅方向中央部に形成されたブロック列のブロック剛性の低下を抑制しているに過ぎない。即ち、中央部のブロック列の幅方向外側に形成された他のブロック列のブロックは、多数のサイプで細かく区画されており、雪上性能は向上するものの、ブロック剛性が不足してドライ性能が低下する。また、矩形に形成されたブロック形状も、ブロック剛性の低下を抑制する見地から見直す余地がある。
本発明は、上記事実に鑑み、雪上性能を向上させつつドライ性能の低下を抑制し、両性能の両立を図るトレッドパターンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明に係る空気入りタイヤは、トレッド面の幅方向中央部の周方向に形成された2本の中央リブ主溝と、前記中央リブ主溝の間に前記中央リブ主溝と斜めに交差して形成された中央ラグ溝と、で幅方向及び周方向が区画された中央ブロック列と、2本の前記中央リブ主溝と、前記中央リブ主溝のそれぞれの幅方向外側であり周方向に形成された2本の中間リブ主溝と、で幅方向が区画され、前記中央リブ主溝と前記中間リブ主溝との間に設けられ、前記中央ラグ溝と反対方向へ斜めに形成された中間ラグ溝で周方向が区画された中間ブロック列と、前記中央ブロック列を構成する中央ブロックに前記中央ラグ溝と平行に形成され、一方の端部が一方の前記中央リブ主溝に達し、前記中央ブロックを幅方向に3等分した中央領域を中央部としたとき、他方の端部が前記中央部
で終端する第1サイプと、前記中央ブロックに前記第1サイプと平行に形成され、一方の端部が他方の前記中央リブ主溝に達し、他方の端部が前記中央部
で終端する第2サイプと、前記中間ブロック列を構成す
る中間ブロックに前記中間ラグ溝と平行に形成され、一方の端部が前記中央リブ主溝に達し、他方の端部が前記中間リブ主溝に達する第3サイプと、を
有し、前記中央ブロックでは、一方の前記中央リブ主溝との交差角度が鈍角となる一方の前記中央ラグ溝寄りの部分に前記第1サイプが形成され、他方の前記中央リブ主溝との交差角度が鈍角となる他方の前記中央ラグ溝寄りの部分に前記第2サイプが形成されたことを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、空気入りタイヤのトレッド面の幅方向中央に形成された中央ブロック列の中央ブロックは、中央ラグ溝で、中央リブ主溝と斜めに交差して区画されている。また、中央ブロック列の幅方向の両外側に形成された中間ブロック列の中間ブロックは、中央ラグ溝と反対方向へ、斜めに中間ラグ溝で区画されている。これにより、中央ラグ溝と中間ラグ溝で、中央リブ主溝を挟んで周方向(タイヤ前後方向)にV字状、及び逆V字状の溝部が形成される。これにより、雪面での駆動力を増大させることができる。
また、中央ブロック列を構成する中央ブロックには、第1サイプと第2サイプが中央ラグ溝と平行に形成されている。このとき、第1サイプと第2サイプの一方の端部は、中央ブロックの幅方向の両側を区画する中央リブ主溝のそれぞれ一方へ達しており、他方の端部は、中央ブロックの中央部で終了している。更に、中間ブロック列の中間ブロックには、中間ラグ溝と平行に、一方の端部が中央リブ主溝に達し、他方の端部が中間リブ主溝に達する第3サイプが形成されている。
これにより、第1サイプ、第2サイプ及び第3サイプのエッジを、それぞれ路面と接触させることで操縦安定性を向上させることができる(エッジ効果)。また、第1サイプと第2サイプは、いずれも中央ブロックの途中(中央部)までしか区画していない。即ち、中央ブロックの中央部が区画されていないので、中央ブロックのブロック剛性の低下が抑制される。ここに、中央ブロックの中央部とは、中央ブロックを幅方向に3等分した領域の中央の領域をいう。これにより、第1サイプ及び第2サイプの長さの調節が可能となり、ブロック剛性の低下を抑制することができる。
【0007】
別態様によれば、第4サイプにより、第1サイプの他方の端部と第2サイプの他方の端部が連結され、3本のサイプの溝部が連続される。ここに、第4サイプは第1サイプ及び第2サイプと交差する方向に設けられるので、第4サイプで、第1サイプ及び第2サイプと交差する方向のエッジ効果を期待することができる。
また、中央ブロックの変形が交差部で抑制されるので、中央ブロックのブロック剛性の低下を抑制することができる。更に、第1サイプ及び第2サイプが第4サイプで連結されるので、第1サイプ及び第2サイプによる排水性能を向上させることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、前記第1サイプの一方の前記中央リブ主溝に達する一方の端部と、前記第2サイプの他方の前記中央リブ主溝に達する一方の端部には、前記第1サイプ及び前記第2サイプの溝幅を広げた細溝が形成されていることを特徴としている。
請求項2に記載の発明によれば、中央リブ主溝側の端部に溝幅を広げて形成された細溝が、中央リブ主溝に向けて開口されているので、第1サイプ及び第2サイプの排水性能を向上させることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、
請求項1又は2に記載の空気入りタイヤにおいて、前記中間ブロックを区画する前記第3サイプの中央部は、クランク状に折れ曲がっていることを特徴としている。
これにより、第3サイプのエッジ効果を期待できることに加え、クランク状の折り曲が部で、第3サイプと交差する方向のエッジ効果を期待できる。また、第3サイプはクランク状に折れ曲がっているので、中間ブロックの変形が折れ曲がり部で抑制され、中間ブロックのブロック剛性の低下を抑制することができる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記中央ラグ溝のタイヤ回転軸との鋭角側の角度をα1としたとき、角度α1が35度〜55度とされていることを特徴としている。
これにより、タイヤに駆動力を与えるトレッド面の幅方向中央における中央ラグ溝と、第1サイプ及び第2サイプの角度を、雪上性能を向上させることができる適切な範囲に設定することができる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記中間ラグ溝のタイヤ回転軸との鋭角側の角度をα2としたとき、角度α2が35度〜55度とされていることを特徴としている。
これにより、タイヤに駆動力を与えるトレッド面の幅方向中間部における中間ラグ溝と、第3サイプの角度を、雪上性能を向上させることができる適切な範囲に設定することができる。
【0012】
請求項6に記載の発明は、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、2本の前記中間リブ主溝と、前記中間リブ主溝のそれぞれの幅方向外側に、周方向に形成された2本の端部リブ主溝で幅方向が区画され、前記中間リブ主溝と前記端部リブ主溝の間に前記中間ラグ溝と反対方向へ斜めに形成された端部ラグ溝で周方向が区画された端部ブロック列と、を有することを特徴としている。
【0013】
請求項6に記載の発明によれば、中間リブ主溝のそれぞれの幅方向外側(ショルダー部)に端部ブロック列が形成されている。端部ブロック列の端部ブロックには、サイプは形成されていない。
これにより、ブレーキに寄与する端部ブロック(ショルダー部)のブロック剛性が高い状態で維持され、ブレーキによる制動力を高め、雪上性能及びドライ性能を向上させることができる。
【0014】
請求項7に記載の発明は、
請求項6に記載の空気入りタイヤにおいて、前記端部ラグ溝のタイヤ回転軸との鋭角側の角度をα3としたとき、角度α3が0度〜20度とされていることを特徴としている。
これにより、タイヤに制動力を与えるトレッド面の幅方向端部における端部ラグ溝の角度を、雪上性能を向上させることができると共にドライ性能の低下を抑制できる適切な範囲に設定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記構成としてあるので、雪上性能を向上させつつドライ性能の低下を抑制し、両性能の両立を図るトレッドパターンを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
図1のトレッド面の正面図に示すように、本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤ10のトレッドパターンは、トレッド面40の幅方向中央部の周方向(矢印Rで示す方向)に、2本の中央リブ主溝12C、12Dが形成され、2本の中央リブ主溝12C、12Dのそれぞれの幅方向(矢印Hで示す方向)外側には、2本の中間リブ主溝12B、12Eが形成され、2本の中間リブ主溝12B、12Eのそれぞれの幅方向外側には、2本の端部リブ主溝12A、12Fが形成されている。ここに、空気入りタイヤ10は、一般的に広く使用されているゴム製のタイヤである。
【0018】
中央ブロック列14Cは、幅方向を2本の中央リブ主溝12C、12Dで区画され、周方向を、中央リブ主溝12C、12Dと斜めに交差する方向の複数の中央ラグ溝16により、周方向長さが等しい複数の中央ブロック18に区画されている。ここに、中央ラグ溝16の側壁とタイヤ回転軸と平行な基線Sとの交差位置Pにおける鋭角側の角度をα1としたとき、角度α1は35度〜55度とされている。中央ブロック18はいずれも同じ構成とされ、周方向に連続して一列に配置されている。
これにより、タイヤに駆動力を与えるトレッド面40の、幅方向中央における中央ラグ溝14Cと、後述する第1サイプ28及び第2サイプ29の角度を、雪上性能を向上させることができると共に、ドライ性能の低下を抑制できる適切な範囲に設定することができる。
【0019】
中間ブロック列14Bは、幅方向を2本の中間リブ主溝12Bと中央リブ主溝12Cで区画され、周方向を、中央リブ主溝12Cと斜めに交差する複数の中間ラグ溝20により、周方向長さが等しい中間ブロック22に区画されている。また、中間ブロック列14Dは、幅方向を2本の中央リブ主溝12Dと中間リブ主溝12Eで区画され、周方向を、中央リブ主溝12Dと斜めに交差する方向の複数の中間ラグ溝20により、周方向長さが等しい中間ブロック22に区画されている。
ここに、中間ラグ溝20は、中央ラグ溝16が中央リブ主溝12C、12Dと斜めに交差する方向(角度α1)とは反対方向に傾斜して、中間リブ主溝12B、12Eと交角度α2で交差している。ここに、中間ラグ溝20の側壁と、タイヤ回転軸と平行な基線Sとの交差位置Pにおける鋭角側の角度α2は35度〜55度とされている。中間ブロック22はいずれも同じ構成とされ、周方向に連続して一列に配置されている。
【0020】
この構成とすることにより、中央ブロック列14Cの中央ブロック18は、中央ラグ溝で16、中央リブ主溝12C、12Dと斜めに交差して区画されている。また、中央ブロック列14Cの幅方向の両外側に形成された中間ブロック列14B、14Dの中間ブロック22は、中央ラグ溝16と反対方向へ、斜めに中間ラグ溝20で区画されている。これにより、中央ラグ溝16と中間ラグ溝20で、中央リブ主溝12C、12Dを挟んで周方向(タイヤ前後方向)にV字状、及び逆V字状の溝部が形成される。これにより、雪面での駆動力を増大させることができる。
【0021】
端部ブロック列14Aは、幅方向を端部リブ主溝12Aと中間リブ主溝12Bで区画され、周方向を、中間リブ主溝12Bと斜めに交差する複数の端部ラグ溝24により、周方向長さが等しい端部ブロック26に区画されている。また、端部ブロック列14Eは、幅方向を端部リブ主溝12Fと中間リブ主溝12Eで区画され、周方向を、中間リブ主溝12Eと斜めに交差する複数の端部ラグ溝24により、周方向長さが等しい端部ブロック26に区画されている。
ここに、端部ラグ溝24は、中間ラグ溝20が中間リブ主溝12B、12Eと斜めに交差する方向(角度α2)と反対の方向に、端部リブ主溝12A、及び端部リブ主溝12Fと斜めに交差している。端部ラグ溝24の側壁と、タイヤ回転軸と平行な基線Sとの交差位置Pにおける鋭角側の角度α3は0度〜20度とされている。端部ブロック26はいずれも同じ構成とされ、周方向に連続して一列に配置されている。また、端部ブロック26には、サイプは形成されていない
これにより、タイヤに制動力を与えるトレッド面40の幅方向端部(ショルダー部)における端部ラグ溝24の角度を、雪上性能を向上させることができると共にドライ性能の低下を抑制できる適切な範囲に設定することができる。
【0022】
中央ブロック18には、中央ラグ溝16と平行に第1サイプ(極細の溝部)28が形成されている。第1サイプ28は、一方の端部28Fが一方の中央リブ主溝12Cに達している。中央ブロック18を幅方向(H方向)に3等分した領域を、端部から領域W1、領域W2、領域W3としたとき、中央の領域W2を中央部W2と呼ぶことにする。このとき、第1サイプ28の他方の端部28Eは、中央ブロック18の中央部W2に達している。
また、中央ブロック18には、第1サイプ28と平行に第2サイプ29が形成されている。第2サイプ29は、一方の端部29Fが中央リブ主溝12Dに達している。第2サイプ29の他方の端部29Eは、同じく、中央ブロック18の中央部W2に達している。
即ち、第1サイプ28と第2サイプ29は、いずれも中央ブロックを、中央リブ主溝の間において途中までしか区画していない。第1サイプ28と第2サイプ29が途中で終え、中央ブロック18の中央部を区画していないので、エッジ効果を高め中央ブロック18のブロック剛性の低下を抑制することができる。
【0023】
具体的には、
図2の特性比較表に示すように、従来、中央ブロック18には、1本のサイプが設けられていた。これに対し、第1実施形態の構成とすることにより、従来の構成に比べ、ラグ溝とサイブの体積は同じで条件において、ブロック剛性の低下は、タイヤ周方向及び幅方向においてほとんど見られず、エッジ効果を、同じくタイヤ周方向及び幅方向において約1割向上させることができる。
【0024】
また、中間ブロック22には、中間ラグ溝20と平行に形成された第3サイプ30が設けられている。第3サイプ30は、一方の端部が中央リブ主溝12C、12Dのいずれか一方に達し、他方の端部が中間リブ主溝12B、12Eの他方に達している。
これにより、第3サイプ30によるエッジ効果で雪上性能を向上させることができる。また、第3サイプ30の数を、中央ブロック18のサイプ数より少なくしていることで、中間ブロック22のブロック剛性の低下を抑制することができる。
【0025】
ここに、サイプ28、29、30は、トレッド面40が路面と接したとき、サイプの溝を構成する側壁同士が接する程度の細い溝幅とされている。第1サイプ28の端部は中央リブ主溝12Cに開放され、サイプ28内の水は中央リブ主溝12Cに排水される。また、第2サイプ29の端部は中央リブ主溝12Dに開放され、サイプ29内の水は中央リブ主溝12Cに排水される。同様に、第3サイプ30の水は、中間リブ主溝12B、12E、又は中央リブ主溝12C、12Dのいずれかに排水される。
【0026】
次に、ラグ溝角度と雪上性能の関係に関するシミュレーション結果について説明する。
図3(A)は、タイヤ周方向(前後方向)の雪上せん断力の比を示している。横軸はラグ溝角度α(度)であり、縦軸は雪上せん断力の比τ(−)である。ここに、雪上せん断力の比τとは、ラグ溝角度αにおける雪上せん断力(τα)を、ラグ溝角度0度(タイヤ回転軸と平行な角度)の雪上せん断力(τ0)で除した値(τα/τ0)であり、ラグ溝角度0度の雪上せん断力の比τを100として表示している。
図3(A)の実線が走行時の運転特性P1であり、一点鎖線が制動時のブレーキ特性P2である。
【0027】
図3(A)に示すように、運転特性P1は、ラグ溝角度αを大きくするに従い低下する傾向を示しており、ラグ溝角度が0度の時の値が最大値となっている。しかし、ラグ溝角度が45度前後で一旦上昇しており、駆動力の減少が抑制されている。また、ブレーキ特性P2は、ラグ溝角度αを大きくしても、大きな変化は見られないが、運転特性P1と同様に、ラグ溝角度が45度前後で一旦上昇する傾向を示している。
以上から、ラグ溝角度を45度前後とすれば、運転特性P1とブレーキ特性P2のいずれも大きくすることができる。
【0028】
図3(B)は、タイヤ幅方向(左右方向)の雪上せん断力の比を示している。実線がタイヤの向きSA(スリップアングル)5度での特性Q1であり、一点鎖線がSA10度での特性Q2であり、破線がSA20度での特性を示している。3つの特性Q1、Q2、Q3はほぼ重なっており、大きな差は見られない。タイヤ幅方向においても、タイヤ周方向の特性と同様に、ラグ溝角度が45度前後で雪上せん断力の比が上昇し、雪上性能が向上する傾向を示している。
即ち、ラグ溝角度を45度前後とすれば、タイヤ周方向(前後方向)とタイヤ幅方向(左右方向)の両方の雪上せん断力の比を最大に設定することができ、ブロック剛性を低下させずに、雪上性能を向上させることができる。なお、本実施形態では、ラグ溝角度は、45度に10度の余裕を考慮して35度〜55度の範囲とした。
【0029】
以上説明したように、本実施形態によれば、中央ラグ溝16、中間ラグ溝20、端部ラブ溝24をそれぞれ適切な傾斜角度としているので、ドライ性能を低下させずに、雪上性能を向上させることができる。また、中央ブロック18にはサイプ28、29を、中間ブロック22にはサイプ30を適切に設けてあるので、ドライ性能を低下させずに、雪上性能を向上させることができる。
【0030】
(第2実施形態)
図4(A)に示すように、第2実施形態に係る空気入りタイヤ50は、中央ブロック18において、第1サイプ28の端部28Eと第2サイプ29の端部29Eを連結する第4サイプ31を有する点で、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
第4サイプ31は、第1サイプ28及び第2サイプ29の間に、第1サイプ28及び第2サイプ29と交差して設けられている。ここに、第4サイプ31は、中央ブロック18を幅方向に3等分した領域(W1、W2、W3)の中央部W2に形成されている。
【0031】
本実施形態によれば、第4サイプ31により、第1サイプ28の端部28Eと第2サイプ29の端部29Eが連結され、3本のサイプの溝部が連続した1本のサイプとされている。ここに、第4サイプ31は第1サイプ及び第2サイプと交差する方向に設けられるので、第1サイプ28及び第2サイプ29によるエッジ効果、及び第4サイプ31によるエッジ効果が期待でき、タイヤ周方向の雪上性能の向上に加え、タイヤ幅方向の雪上性能が向上する。
更に、第4サイプ31は第1サイプ及び第2サイプと交差する方向に設けられるので、交差部により変形が抑制され、中央ブロック18のブロック剛性の低下が抑制される。また、第1サイプ28及び第2サイプ29が第4サイプ31で連結されるので、第1サイプ28及び第2サイプ29による排水性能を向上させることができる。
他の構成は、第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0032】
(第3実施形態)
図4(B)に示すように、第3実施形態に係る空気入りタイヤ60は、中央ブロック18において、第1サイプ28及び第2サイプ29の端部に、第1サイプ28及び第2サイプ29の溝幅を広げた細溝62が形成されている点で、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
第1サイプ28の中央リブ主溝12C側の端部には、第1サイプ28の溝幅を広げた細溝62が形成されている。細溝62は、中央ブロック18を幅方向に3等分した領域(W1、W2、W3)の端部W1の内部に形成され、中央リブ主溝12C側の端部は、中央リブ主溝12Cに開口されている。なお、第1サイプ28の他方の端部28Eは、中央ブロック18の中央部W2で終了している。
【0033】
同様に、第2サイプ29の中央リブ主溝12D側の端部には、第2サイプ29にの溝幅を広げた細溝62が形成されている。細溝62は、中央ブロック18を幅方向に3等分した範囲(W1、W2、W3)の端部W3の内部に形成され、中央リブ主溝12D側の端部は、中央リブ主溝12Dに開口されている。なお、第2サイプ29の他方の端部29Eは、中央ブロック18の中央部W2で終了している。細溝62は、第1サイプ28及び第2サイプ29より溝幅が広いので、第1サイプ及び第2サイプによる排水性能が向上し、雪上性能を向上させることができる。
他の構成は第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0034】
(第4実施形態)
図4(C)に示すように、第4実施形態に係る空気入りタイヤ70は、中央ブロック18において、第1サイプ28及び第2サイプ29の端部に、第1サイプ28及び第2サイプ29より溝幅が広い細溝62が形成されている点で、第2実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
第1サイプ28の中央リブ主溝12C側の端部には、第3実施形態で説明した細溝62が形成されている。細溝62は、中央ブロック18を幅方向に3等分した領域(W1、W2、W3)の端部W1に、端部W1に収まる長さで形成され、中央リブ主溝12C側の端部は、中央リブ主溝12Cに開口されている。また、第1サイプ28の他方の端部28Eは、第4サイプ31で第2サイプ29と連結されている。
【0035】
同様に、第2サイプ29の中央リブ主溝12D側の端部には細溝62が形成されている。細溝62は、中央ブロック18を幅方向に3等分した範囲(W1、W2、W3)の端部W3に、端部W3に収まる長さで形成され、中央リブ主溝12D側の端部が、中央リブ主溝12Dに開口されている。細溝62は、第1サイプ28及び第2サイプ29より溝幅が広いので、第1サイプ及び第2サイプによる排水性能が向上し、雪上性能を向上させることができる。
また、第2サイプ29の他方の端部29Eは、第4サイプ31で第1サイプ28と連結されている。これにより、第1サイプ、第2サイプ及び第4サイプの溝が連結され、排水性能を向上させることができ、雪上性能を向上させることができる。
他の構成は第2実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0036】
(第5実施形態)
図5に示すように、第5実施形態に係る空気入りタイヤ72は、中間ブロック22において、第3サイプ32にクランク状の折り曲げられている点で、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
中間ブロック22を区画する第3サイプ32には、クランク状に折れ曲がる2か所の角部32A、32Bが形成されている。角部32A、32Bは、中間ブロック22を幅方向に3等分した領域(W1、W2、W3)の中央部W2に形成されている。
これにより、第3サイプ32のエッジ効果で雪上性能を向上させることに加え、クランク状の折り曲がり部32Aと、折り曲がり部32Bとの間のサイプによるエッジ効果で、第3サイプ32と交差する方向の雪上性能が向上する。また、第3サイプ32は、クランク状に折れ曲がっているので、中間ブロック22の変形が、折れ曲がり部32A、32Bで抑制され、中間ブロック22におけるブロック剛性の低下を抑制することができる。
他の構成は、第1実施形態と同じであり、説明は省略する。