(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トランスは更に、磁性材料を含み、前記一次側導体層の少なくとも一部および前記二次側導体層の少なくとも一部をそれぞれ囲むように配置されたコア部を有する、請求項1に記載のトランス。
前記基材の表面に形成されている凸部間の間隔である空間距離と、前記基材の表面に形成されている前記凹部の側壁および底面に沿った距離である沿面距離とが所定の比になるように前記凹部および凸部が形成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトランス。
前記凸部の先端部の、前記一次側導体層および前記二次側導体層の積層方向と垂直な面における断面形状が湾曲形状である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のトランス。
前記一次側端子の電圧は前記二次側端子の電圧よりも高電圧であり、前記コア部の前記一次側端子側の端部と前記一次側端子との距離は、前記コア部の前記二次側端子側の端部と前記二次側端子との距離よりも長い、請求項2乃至9のいずれか一項に記載のトランス。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態にかかるトランスの上面図である。
【
図2】実施の形態にかかるトランスの側面図である。
【
図3】
図1に示すトランスの切断線III−IIIにおける断面図である。
【
図4】
図2に示すトランスの切断線IV−IVにおける断面図である。
【
図5】
図2に示すトランスの切断線V−Vにおける断面図である。
【
図6】
図1に示すトランスの切断線VI−VIにおける断面図である。
【
図7】
図1に示すトランスの切断線VII−VIIにおける断面図である。
【
図8A】一次側導体層の接続方法の一例を説明するための断面図である。
【
図8B】一次側導体層の接続方法の一例を説明するための断面図である。
【
図9A】一次側導体層の接続方法の一例を説明するための断面図である。
【
図9B】一次側導体層の接続方法の一例を説明するための断面図である。
【
図10】実施の形態にかかるトランスが備える凹凸部の一例を示す拡大断面図である。
【
図11】実施の形態にかかるトランスが備える凹凸部の一例を示す拡大断面図である。
【
図12】実施の形態にかかるトランスが備える凹凸部の一例を示す拡大断面図である。
【
図13】実施の形態にかかるトランスが備える凹凸部の一例を示す拡大断面図である。
【
図14】実施の形態にかかるトランスが備える凹凸部の一例を示す拡大断面図である。
【
図15A】実施の形態にかかるトランスの製造方法を説明するための側面図である。
【
図15B】実施の形態にかかるトランスの製造方法を説明するための側面図である。
【
図15C】実施の形態にかかるトランスの製造方法を説明するための側面図である。
【
図16A】実施の形態にかかるトランスの製造方法を説明するための断面図である。
【
図16B】実施の形態にかかるトランスの製造方法を説明するための上面図である。
【
図16C】実施の形態にかかるトランスの製造方法を説明するための側面図である。
【
図17】実施の形態にかかるトランスの製造方法を説明するための断面図である。
【
図18A】実施の形態にかかるトランスの製造方法を説明するための断面図である。
【
図18B】実施の形態にかかるトランスの製造方法を説明するための上面図である。
【
図18C】実施の形態にかかるトランスの製造方法を説明するための上面図である。
【
図18D】実施の形態にかかるトランスの製造方法を説明するための側面図である。
【
図19A】実施の形態にかかるトランスの製造方法を説明するための上面図である。
【
図19B】実施の形態にかかるトランスの製造方法を説明するための側面図である。
【
図19C】実施の形態にかかるトランスの製造方法を説明するための側面図である。
【
図19D】実施の形態にかかるトランスの製造方法を説明するための上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。以下では、コア部を備えるトランスについて説明するが、本発明はコア部を備えないトランスにも適用することができる。つまり、トランス本体部が備える一次側導体層と二次側導体層とを磁気的に結合することができるのであれば、必ずしもコア部を設ける必要はない。一般的にコア部を設けたほうがトランスの変換効率は高くなるが、例えば、トランスを高周波数帯で駆動する場合は、コア部を設けなくても十分な変換効率を得られる場合がある。
【0013】
図1は、本実施の形態にかかるトランスの上面図である。
図2は、本実施の形態にかかるトランスの側面図である。
図3は、
図1に示すトランスの切断線III−IIIにおける断面図である。
図4は、
図2に示すトランスの切断線IV−IVにおける断面図である。
図5は、
図2に示すトランスの切断線V−Vにおける断面図である。
図6は、
図1に示すトランスの切断線VI−VIにおける断面図である。
図7は、
図1に示すトランスの切断線VII−VIIにおける断面図である。
【0014】
図1、
図2に示すように、本実施の形態にかかるトランス1は、トランス本体部10とコア部12とを備える。トランス本体部10は、基材11、一次側導体層20、および二次側導体層25を備える(
図3参照)。
【0015】
基材11はトランス本体部10の母材となる構造体であり、絶縁材料を用いて構成することができる。基材11は、基材11の一次側15の端部に一次側端子17を備える。また、基材11は、基材11の二次側16の端部に二次側端子18を備える。例えば、トランス本体部10は矩形状であり、一次側端子17と二次側端子18はトランス本体部10の長手方向の各々の端部にそれぞれ配置されている。一次側端子17は一次側導体層20と接続される端子である。二次側端子18は二次側導体層25と接続される端子である。一次側端子17および二次側端子18は、基材11の一次側15および二次側16の端部においてそれぞれ基材11の外部に露出している。
【0016】
また、一次側端子17と二次側端子18との間の基材11の表面の少なくとも一部には、凸部13および凹部14が形成されている。
図1、
図2に示す例では、基材11の側面および上下面に凸部13および凹部14を形成している。換言すると、基材11が備える面のうち、一次側端子17と二次側端子18との間に配置されている面に凸部13および凹部14を形成している。
【0017】
図3、
図4に示すように、一次側導体層20(
図4に示す断面図では、最も上に配置されている一次側導体層21を示している)は基材11内に設けられており、一次側端子17と電気的に接続されている。一次側導体層20はトランスの一次巻線に対応している。例えば
図4に示すように、一次側導体層21は、一次側端子17から二次側16の方向に向かって延び、更に基材11の貫通孔19に設けられたコア部12を一周するように形成する。このとき、一次側導体層21の一端は一次側端子17_1と接続し、他端は一次側端子17_2と接続する。一次側導体層20は、例えば銅やアルミニウムなどの金属材料を用いて構成することができる。
【0018】
図3では、トランス本体部10が4層の一次側導体層20を備える場合を例として示しているが、一次側導体層20の層の数は任意に決定することができる。複数の一次側導体層20を設けた場合、複数の一次側導体層20は、例えばスルーホールを介して互いに電気的に接続することができる。また、複数の一次側導体層20は、例えば複数の一次側端子17同士を接続することで互いに電気的に接続することができる。
【0019】
図8A、
図8Bは、複数の一次側導体層21、22をスルーホールを介して互いに電気的に接続する場合を説明するための断面図である。
図8Aに示す一次側導体層21と
図8Bに示す一次側導体層22は、互いに異なる層に配置されている。
図8Aに示すように、一次側導体層21の一端は一次側端子17aと接続され、他端は一次側端子17bと接続されている。また、
図8Bに示すように、一次側導体層22の一端は一次側端子17bと接続され、他端は一次側端子17cと接続されている。このとき、一次側導体層21の他端と一次側導体層22の一端は、一次側端子17bに設けられているスルーホールを用いて互いに電気的に接続されている。
【0020】
よって、
図8A、
図8Bに示す一次側導体層21、22は、一次側端子17a、一次側導体層21、一次側端子17b、一次側導体層22、一次側端子17cの順に電気が流れるように接続されている(一次側端子17cから一次側端子17aに電気が流れる場合は、電気が流れる順番が逆になる)。この場合、コア部12の周りに一次側導体層21、22が2周するように配置されたことになる。
【0021】
図9A、
図9Bは、複数の一次側端子17同士を接続することで、複数の一次側導体層21、22を互いに電気的に接続する場合を説明するための断面図である。この場合も
図9Aに示す一次側導体層21と
図9Bに示す一次側導体層22は、互いに異なる層に配置されている。
図9Aに示すように、一次側導体層21の一端は一次側端子17dと接続され、他端は一次側端子17eと接続されている。また、
図9Bに示すように、一次側導体層22の一端は一次側端子17fと接続され、他端は一次側端子17gと接続されている。このとき、一次側端子17eと一次側端子17fとを導電部材30を用いて電気的に接続することで、一次側導体層21の他端と一次側導体層22の一端とを電気的に接続することができる。
【0022】
よって、
図9A、
図9Bに示す一次側導体層21、22は、一次側端子17d、一次側導体層21、一次側端子17e、導電部材30、一次側端子17f、一次側導体層22、一次側端子17gの順に電気が流れるように接続されている(一次側端子17gから一次側端子17dに電気が流れる場合は、電気が流れる順番が逆になる)。この場合、コア部12の周りに一次側導体層21、22が2周するように配置されたことになる。
【0023】
なお、上記では複数の一次側導体層20を互いに直列に接続した場合について説明したが、複数の一次側導体層20は互いに並列に接続してもよい。この場合も、スルーホールを介して複数の一次側導体層20を互いに並列に接続してもよく、また、複数の一次側端子17同士を接続することで、複数の一次側導体層20を互いに並列に接続してもよい。
【0024】
複数の一次側導体層20はそれぞれ一次側端子17のいずれかと接続されている。よって、トランスを使用する際に複数の一次側導体層20の接続状態を決定することで(つまり、使用する一次側導体層20の数を決定することで)、一次側導体層の巻き数を調整することができる。複数の一次側導体層20の接続状態は、一次側端子17にスルーホールを設けたり、導電部材30(
図9A、B参照)を用いて一次側端子17同士を接続したりすることで調整することができる。
【0025】
図3、
図5に示すように、二次側導体層25(
図5に示す断面図では、最も上に配置されている二次側導体層26を示している)は基材11内に設けられており、二次側端子18と電気的に接続されている。二次側導体層25はトランスの二次巻線に対応している。例えば
図5に示すように、二次側導体層26は、二次側端子18から一次側15の方向に向かって延び、更に基材11の貫通孔19に設けられたコア部12を一周するように形成する。このとき、二次側導体層26の一端は二次側端子18_1と接続され、他端は二次側端子18_2と接続される。二次側導体層25は、例えば銅やアルミニウムなどの金属材料を用いて構成することができる。
【0026】
図3では、トランス本体部10が4層の二次側導体層25を備える場合を例として示しているが、二次側導体層25の層の数は任意に決定することができる。複数の二次側導体層25を設けた場合、複数の二次側導体層25は、例えばスルーホールを介して互いに電気的に接続することができる。また、複数の二次側導体層25は、例えば複数の二次側端子18同士を接続することで互いに電気的に接続することができる。複数の二次側導体層25を接続する方法については、複数の一次側導体層20を接続する方法(
図8A、B、
図9A、B参照)と同様であるので、重複した説明は省略する。
【0027】
なお、複数の二次側導体層25は、互いに直列に接続してもよく、また互いに並列に接続してもよい。また、複数の二次側導体層25はそれぞれ二次側端子18のいずれかと接続されている。よって、トランスを使用する際に複数の二次側導体層25の接続状態を決定することで(つまり、使用する二次側導体層25の数を決定することで)、二次側導体層の巻き数を調整することができる。複数の二次側導体層25の接続状態は、二次側端子18にスルーホールを設けたり、導電部材30(
図9A、B参照)を用いて二次側端子18同士を接続したりすることで調整することができる。
【0028】
図3に示すように、一次側導体層20および二次側導体層25は絶縁材料を介して互いに積層されている。
図3に示す例では、複数の一次側導体層20を積層方向の中央部付近に配置し、複数の二次側導体層25を積層方向の端部側(上面側および下面側)に配置している。しかし、
図3に示す一次側導体層20および二次側導体層25の配置は一例であり、一次側導体層20および二次側導体層25の配置は任意に決定することができる。
【0029】
また、基材11は複数の絶縁体基板を用いて構成してもよい。この場合、複数の一次側導体層20と、複数の絶縁体基板と、複数の二次側導体層25とを互いに積層することで、トランス本体部10を構成することができる。基材11を構成する絶縁体基板としては、例えばガラスエポキシ基板、ガラスコンポジット基板、紙エポキシ基板、ベークライト基板などを用いることができる。
【0030】
複数の絶縁体基板を用いて基材11を構成する場合は、基材11を構成する各々の絶縁体基板を同一の材料とすることが好ましい。同一の絶縁体基板を用いることで、基材11の振動や衝撃に対する耐性を高めることができる。また、同一の絶縁体基板を用いることで、基材11を構成する絶縁体基板の熱膨張係数を略等しくすることができ、基材11の温度サイクル特性を向上させることができる。
【0031】
コア部12は、一次側導体層20の少なくとも一部および二次側導体層25の少なくとも一部をそれぞれ囲むように配置する。コア部12はフェライトなどの磁性材料を用いて構成することができる。
図1、
図2に示すように、コア部12はトランス本体部10の二次側16寄りの周囲を覆うように設ける。また、
図6に示すように、コア部12の一部は、基材11に形成された貫通孔19に挿通されている。
【0032】
ここで、本実施の形態にかかるトランスでは、一次側端子17の電圧は二次側端子18の電圧よりも高電圧である。よってコア部12は、電圧が低い二次側端子18側に設けている。換言すると、コア部12の一次側端子17側の端部と一次側端子17との距離は、コア部12の二次側端子18側の端部と二次側端子18との距離よりも長い。
【0033】
図7に示すように、コア部12は、断面形状がE型であるコア部材12a、12bを用いて構成することができる。そしてコア部材12a、12bでトランス本体部10を挟むことで、トランス本体部10にコア部12を取り付けることができる。
図7に示すように、一次側導体層20および二次側導体層25は基材11内に埋設されているので、コア部12と直接接触することはなく、絶縁性が保たれている。また、一次側導体層20および二次側導体層25をコア部12で囲むことで、一次側導体層20および二次側導体層25を磁気的に結合することができる。
【0034】
本実施の形態にかかるトランスでは、一次側端子17に高電圧が印加される。ここで一次側端子17は基材11の外部に露出しているため、一次側端子17と二次側端子18との間の絶縁距離(コア部12が接地されている場合は、一次側端子17とコア部12との間の絶縁距離)を確保する必要がある。そこで本実施の形態にかかるトランスでは、一次側端子17と二次側端子18との間の基材11の表面の少なくとも一部に、凸部13および凹部14を形成している。
図1、
図2に示す例では、基材11の側面および上下面に凸部13および凹部14を形成している。
【0035】
また、本実施の形態では、一次側端子17の電圧は二次側端子18の電圧よりも高いので、一次側端子17とコア部12との間に配置されている凸部13および凹部14の数は、二次側端子18とコア部12との間に配置されている凸部13および凹部14の数よりも多くしている。
【0036】
図10は、本実施の形態にかかるトランスが備える凹凸部の一例を示す拡大断面図である。
図10に示すd1は、基材11の表面に形成されている凸部13aと凸部13bの間隔である空間距離を示している。また、d2は、基材11の表面に形成されている凹部14の側壁および底面に沿った沿面距離を示している。例えば、空間距離d1を長くするほど凸部13aと凸部13bとの距離が長くなり、凸部13aと凸部13bとの間の放電を抑制する効果が高くなる。また、例えば、凹部14を深く形成することで沿面距離d2を長くすることができ、トランス本体部10の表面における絶縁距離を長くすることができる。すなわち、一次側端子17と二次側端子18との間の絶縁距離(コア部12が接地されている場合は、一次側端子17とコア部12との間の絶縁距離)を長くすることができる。これにより、トランス本体部10の絶縁性を向上させることができる。
【0037】
本実施の形態では、基材11の表面に形成されている凸部13の間隔である空間距離d1と、基材11の表面に形成されている凹部14の側壁および底面に沿った距離である沿面距離d2とが所定の比になるように、凸部13および凹部14を形成している。ここで、空間距離d1と沿面距離d2との比(d1/d2)は、一次側端子17に印加される電圧、必要な絶縁距離、トランスを使用する環境(気温、気圧、汚染度等)等を考慮して決定することができる。一例を挙げると、空間距離d1と沿面距離d2との比(d1/d2)は、d1/d2=1/3程度とすることができる。
【0038】
また、基材11の表面に形成されている凸部13の間隔は略等間隔とすることが好ましい。換言すると、各々の凸部13の空間距離d1を略等しくすることが好ましい。トランス本体部10の表面では、空間距離d1が最も短い部分で放電が発生しやすい。このため、トランス本体部10の表面に空間距離d1が長い凸部を形成したとしても、空間距離d1が短い凸部がある場合にはその部分で優先的に放電が発生する。よって、空間距離d1が長い凸部が無駄になり、トランス本体部10のスペースを有効に利用することができない。このような理由から、凸部13の間隔を略等間隔とすることで、トランス本体部10のスペースを有効に活用することができる。
【0039】
また、本実施の形態では、凹凸部の形状を
図11〜14に示すような形状にしてもよい。例えば、
図11に示すように、凹部14'の底面がトランス本体部10の中心方向に向かって湾曲しているように構成してもよい。凹部14'の底面を湾曲させることで、沿面距離d2が長くなり、トランス本体部10の表面における絶縁距離を長くすることができる。また、凹部14'の底面を湾曲させることで、凸部13a、13bの根元部分の機械的強度を向上させることができる。
【0040】
また、
図12に示すように、凸部13a'、13b'の先端部の断面形状(一次側導体層20および二次側導体層25の積層方向と垂直な面における断面形状)が湾曲形状31a、31bとなるように構成してもよい。このように凸部13a'、13b'の先端部を湾曲形状31a、31bとすることで、凸部13a'、13b'の機械的強度を向上させることができる。
【0041】
また、
図13に示すように、凹部14'の底面を湾曲させ、更に凸部13a'、13b'の先端部を湾曲形状31a、31bとしてもよい(
図11と
図12の組み合わせ)。
【0042】
また、
図14に示すように、2つの凸部13a''、13b''の付け根部分と、当該2つの凸部13a''、13b''に挟まれた凹部14''の底面とにおける断面形状が円弧状32となるように構成してもよい。このように凹部14''の断面形状を円弧状32とすることで、凹部14''を深くすることなく沿面距離を長くすることができる。例えば、一次側導体層20および二次側導体層25が基材11の側面近傍にまで配置されている場合は、基材11の側面に形成される凹部を深くすることができない。このような場合に凹部14''の断面形状を円弧状32とすることで、凹部14''を深くすることなく沿面距離を長くすることができる。
【0043】
図1、
図2では、基材11の側面および上下面に凸部13および凹部14を形成した場合を例として示したが、凸部13および凹部14は、基材11の側面および上下面の全ての面に形成する必要はない。凸部13および凹部14を形成する面は、一次側端子および二次側端子の配置や、一次側端子および二次側端子に印加される電圧に応じて任意に決定することができる。なお、基材11の表面における絶縁性を考慮すると、
図1、
図2に示すように、基材11の側面および上下面に凸部13および凹部14を形成することが好ましい。
【0044】
特許文献1に開示されている技術では、導体パターンを含む基板を用いて一次巻線と二次巻線とを構成しているため、トランスを小型化することができる。しかしながら、トランスには高電圧が印加されるため、一次側端子(一次巻線が接続される端子)と二次側端子(二次巻線が接続される端子)との間の電圧差が大きくなる。このため、トランスを構成する場合は、一次側端子と二次側端子との短絡を防止するために、一次側端子と二次側端子との間の絶縁距離を十分に確保する必要がある。
【0045】
したがって、特許文献1に開示されている技術を用いた場合であっても、一次側端子と二次側端子との間の絶縁距離を十分に確保する必要があるため、トランスを十分に小型化することは困難であった。すなわち、トランスの小型化と高耐電圧化を同時に実現することは困難であった。
【0046】
そこで本実施の形態にかかるトランス1では、基材内に一次側導体層20および二次側導体層25を設け、一次側導体層20および二次側導体層25を絶縁材料を介して互いに積層している。このように、トランスを構成する巻線を導体層を用いて構成しているので、トランスを小型化することができる。更に本実施の形態にかかるトランス1では、一次側端子17と二次側端子18との間の基材11の表面の少なくとも一部に凸部13および凹部14を形成している。これにより、トランス本体部10の表面における絶縁距離を十分に確保することができ、トランスの耐電圧特性を向上させることができる。よって本実施の形態にかかるトランス1により、トランスの小型化と高耐圧化を同時に実現することができる。
【0047】
また、一般的に高電圧で使用するトランスは、一次側端子と二次側端子との間の絶縁距離を長くする必要があるため、一次側配線および二次側配線の長さが長くなる。このため、一次側配線および二次側配線の結合度が低くなる。つまり、一次側配線および二次側配線の漏れインダクタンス成分が大きくなる。このように漏れインダクタンス成分が大きいと、トランスを高周波駆動した際にスイッチングデバイスに過大なサージ電圧が発生し、スイッチングデバイスを破損させるおそれがある。
【0048】
本実施の形態にかかるトランスでは、トランスを小型化することができるので、一次側配線および二次側配線の長さを短くすることができる。よって、一次側配線および二次側配線の漏れインダクタンス成分を低減させることができ、耐電圧特性を保持しつつ、トランスを高周波駆動することが可能となる。
【0049】
また、コアを用いたトランスでは、材料固有の飽和磁束密度が存在するため、コアの磁束密度に上限がある。ここでコアの磁束密度は、トランスを駆動する周波数が高いほど低くなるという性質がある。よって、トランスを高周波駆動すると、コアの磁束密度を低減させることができ、コアを小さくすることができる。すなわち、本実施の形態にかかるトランスでは、耐電圧特性を保持しつつトランスを小型化することで、トランスの高周波駆動が可能となる。更に、トランスを高周波駆動することで、コアを小さくすることができ、トランスを更に小型化することができる。
【0050】
また、本実施の形態にかかるトランス1では、複数の絶縁体基板を用いて基材11を構成してもよい。この場合は、複数の一次側導体層20と、複数の絶縁体基板と、複数の二次側導体層25とを互いに積層することでトランス本体部10を構成することができるので、トランスを更に小型化することができる。また、各部材を積層してトランス本体部10を形成しているので、トランスの製造に使用する樹脂(接着剤)の量を少なくすることができ、トランス本体部10の内部に気泡が発生することを抑制することができる。よって、耐電圧特性を向上させることができる。
【0051】
このとき、基材11を構成する各々の絶縁体基板を同一の材料としてもよい。同一の絶縁体基板を用いることで、基材11の振動や衝撃に対する耐性を高めることができる。また、同一の絶縁体基板を用いることで、基材11を構成する絶縁体基板の熱膨張係数を略等しくすることができ、基材11の温度サイクル特性を向上させることができる。また、これによりトランスの安定性や信頼性を向上させることができる。
【0052】
以上で説明した本実施の形態にかかる発明により、小型でかつ高耐電圧特性を備えたトランスを提供することができる。
【0053】
次に、本実施の形態にかかるトランスの製造方法について説明する。
図15A〜
図15Cは、本実施の形態にかかるトランスの製造方法の一例を説明するための側面図である。
図15Aに示すように、トランス本体部10を作製する際は、第1の構造体40、第2の構造体50、および第3の構造体60を形成する。第1の構造体40はトランス本体部10の中央部に配置される構造体であり、第2の構造体50はトランス本体部10の上部に配置される構造体であり、第3の構造体60はトランス本体部10の下部に配置される構造体である。
【0054】
第1の構造体40は、複数の一次側導体層と複数の絶縁体基板と複数の二次側導体層とを互いに積層し、長手方向側面に凸部43および凹部44を形成することで作製することができる。また、第1の構造体40のコア部12が配置される箇所には貫通孔49を形成する。
【0055】
第2の構造体50は、複数の絶縁体基板を互いに積層し、長手方向側面に凸部53および凹部54を、一方の主面に凸部55および凹部56をそれぞれ形成することで作製することができる。また、第2の構造体50のコア部12が配置される箇所には貫通孔59を形成する。
【0056】
第3の構造体60は、複数の絶縁体基板を互いに積層し、長手方向側面に凸部63および凹部64を、一方の主面に凸部65および凹部66をそれぞれ形成することで作製することができる。また、第3の構造体60のコア部12が配置される箇所には貫通孔69を形成する。
【0057】
そして
図15Aに示すように、第1の構造体40の一方の主面46と第2の構造体50の他方の主面58とを接着し、第1の構造体40の他方の主面47と第3の構造体60の他方の主面68とを接着してトランス本体部10を作製する。第1乃至第3の構造体40、50、60の接着には、例えば熱硬化性樹脂等の接着部材を用いることができる。
【0058】
その後、
図15Bに示すようにトランス本体部10をコア部材12a、12bで挟むことで、
図15Cに示すようにトランス本体部10にコア部12を取り付けることができる。このとき、一次側導体層の少なくとも一部および二次側導体層の少なくとも一部がコア部材12で囲まれるように、トランス本体部10にコア部12を配置する。なお、
図15B、Cでは、トランス本体部10を組み立てた後の凸部および凹部について、凸部13および凹部14と符号を付している。
【0059】
次に、第1の構造体40の作製方法について、
図16A〜
図16Cを用いて詳細に説明する。第1の構造体40を作製する場合は、まず、
図16Aに示すように、複数の一次側導体層21〜24、複数の絶縁体基板41a〜41i、および複数の二次側導体層26〜29を互いに積層する。具体的には、絶縁体基板41a、両面に二次側導体層26、27が形成された絶縁体基板41b、絶縁体基板41c、両面に一次側導体層21、22が形成された絶縁体基板41d、絶縁体基板41e、両面に一次側導体層23、24が形成された絶縁体基板41f、絶縁体基板41g、両面に二次側導体層28、29が形成された絶縁体基板41h、および絶縁体基板41iをそれぞれ準備し、これらをこの順に積層して互いに接着することで第1の積層体41を形成する。
【0060】
各々の絶縁体基板を接着する際は、例えば熱硬化性樹脂等の接着部材を用いることができる。例えば、導体層(一次側導体層および二次側導体層を総称して導体層と記載する)が形成されていない絶縁体基板41a、41c、41e、41g、41iの両面(絶縁体基板41a、41iは片面)に接着部材を配置して各々の絶縁体基板41a〜41iを積層することで、各々の絶縁体基板41a〜41iを接着することができる。絶縁体基板には、例えばガラスエポキシ基板、ガラスコンポジット基板、紙エポキシ基板、ベークライト基板などを用いることができる。なお、上記で説明した理由から、各々の絶縁体基板には同一の材料で構成された基板を用いることが好ましい。
【0061】
また、絶縁体基板に導体層を形成する際は、例えば絶縁体基板に導体層を接着剤で接着してもよい。また、例えば絶縁体基板に導体層を成膜して形成してもよい。なお、
図16Aに示した複数の一次側導体層21〜24、複数の絶縁体基板41a〜41i、および複数の二次側導体層26〜29の配置は一例であり、これらの配置はトランス本体部10の構造に応じて適宜変更することができる。また、導体層間の絶縁性を考慮し、導体層間に配置される絶縁体基板を複数としてもよい。
【0062】
また、
図17に示すように、片面に導体層が形成された絶縁体基板を積層することで、第1の積層体41を形成してもよい。すなわち、絶縁体基板71a、片面に二次側導体層26が形成された絶縁体基板71b、片面に二次側導体層27が形成された絶縁体基板71c、片面に一次側導体層21が形成された絶縁体基板71d、片面に一次側導体層22が形成された絶縁体基板71e、片面に一次側導体層23が形成された絶縁体基板71f、片面に一次側導体層24が形成された絶縁体基板71g、片面に二次側導体層28が形成された絶縁体基板71h、および片面に二次側導体層29が形成された絶縁体基板71iをそれぞれ準備し、これらをこの順に積層して互いに接着することで第1の積層体41を形成してもよい。
【0063】
また、複数の一次側導体層21〜24、複数の絶縁体基板41a〜41i、および複数の二次側導体層26〜29を別々に準備し(つまり、導体層を絶縁体基板と別に準備し)、これらを積層して互いに接着することで第1の積層体41を形成してもよい。
【0064】
図16Bに示すように、第1の積層体41を形成した後、第1の積層体41の長手方向側面に凸部43および凹部44を形成する。また、コア部12が配置される箇所に貫通孔49を形成する。このような方法により、
図16Cの側面図に示すような第1の構造体40を作製することができる。
【0065】
第1の積層体41の側面に凸部43および凹部44を形成する際は、例えばカッターやレーザ加工機を用いることができる。また、第1の積層体41から複数の第1の構造体40を切り出す場合は、各々の第1の構造体40を切り出す際に第1の積層体41の側面に凸部43および凹部44を形成してもよい。つまり、各々の第1の構造体40を切り出すと同時に第1の積層体41の側面に凸部43および凹部44を形成してもよい。
【0066】
次に、第2の構造体50の作製方法について、
図18A〜
図18Dを用いて詳細に説明する。第2の構造体50を作製する場合は、まず、
図18Aに示すように、複数の絶縁体基板51a〜51cを積層して互いに接着することで第2の積層体51を形成する。各々の絶縁体基板を接着する際は、例えば熱硬化性樹脂等の接着部材を用いることができる。絶縁体基板には、例えばガラスエポキシ基板、ガラスコンポジット基板、紙エポキシ基板、ベークライト基板などを用いることができる。なお、上記で説明した理由から、各々の絶縁体基板には同一の材料で構成された基板を用いることが好ましい。
【0067】
その後、
図18Bに示すように、第2の積層体51の長手方向側面に凸部53および凹部54を形成する。また、コア部12が配置される箇所に貫通孔59を形成する。更に
図18Cに示すように、第2の積層体51の上面に凸部55および凹部56を形成する。このような方法により、
図18Dの側面図に示すような第2の構造体50を作製することができる。
【0068】
第2の積層体51の側面に凸部53および凹部54を形成する際は、例えばカッターやレーザ加工機を用いることができる。また、第2の積層体51から複数の第2の構造体50を切り出す場合は、各々の第2の構造体50を切り出す際に第2の積層体51の側面に凸部53および凹部54を形成してもよい。また、第2の積層体51の上面に凸部55および凹部56を形成する際も、例えばカッターやレーザ加工機を用いることができる。
【0069】
なお、第3の構造体60の作製方法は、第2の構造体50の作製方法と同様であるので重複した説明は省略する。
【0070】
このようにして作製した第1乃至第3の構造体40、50、60を、
図15Aに示すように互いに接着することで、トランス本体部10を作製することができる。上記で説明したトランスの製造方法では、トランス本体部10を作製する際に、第1乃至第3の構造体40、50、60の側面に別々に凹凸部を形成している。よって、トランス本体部10と同一の厚みを有する構造体を形成して当該構造体の側面に凹凸部を形成する場合よりも、凹凸部を形成する構造体を薄くすることができるので、凹凸部の加工が容易になるという利点がある。
【0071】
なお、第1乃至第3の構造体40、50、60を作製する際は、側面に予め凸部と凹部とが形成された絶縁体基板を用いてもよい。つまり、第1の構造体40を作製する際に用いる絶縁体基板41a〜41i(
図16A)の各々、第2および第3の構造体50、60を作製する際に用いる絶縁体基板51a〜51c(
図18A)の各々として、側面に予め凸部と凹部とが形成された絶縁体基板を用いてもよい。このような絶縁体基板を用いた場合は、絶縁体基板を積層した時点で側面に凹凸部が形成されるので、各々の積層体に凹凸部を形成する工程を省略することができる。
【0072】
また、トランス本体部10を作製する際は、第1乃至第3の構造体40、50、60を作製することなく、複数の一次側導体層と複数の絶縁体基板と複数の二次側導体層とを互いに積層して、一度でトランス本体部10を作製してもよい。この場合は、積層体の厚みがトランス本体部10の厚みと同一となるが、トランス本体部10の厚みが薄い場合は側面に凹凸部を形成することが可能である。よって、トランス本体部10の厚みが、側面に凹凸部を形成できる程度に薄い場合は、一度でトランス本体部10を作製したほうが、トランス本体部10を作製する際の工程数を少なくすることができる。
【0073】
また、トランス本体部10の厚みが厚い場合であっても、例えば側面に予め凹凸部が形成された絶縁体基板を用いることで、第1乃至第3の構造体40、50、60を作製することなく、一度でトランス本体部10を作製することができる。この製造方法について
図19A〜
図19Dを用いて説明する。
【0074】
まず、
図19Aに示すように、側面に予め凸部83と凹部84とが形成された絶縁体基板を準備する。このとき、絶縁体基板のコア部12が配置される箇所に予め貫通孔89を形成してもよい。準備する絶縁体基板の中には、少なくとも一方の面に導体層が形成された絶縁体基板も含まれる。
【0075】
その後、
図19Bに示すように、予め凸部83と凹部84とが形成された絶縁体基板を積層して互いに接着して積層体81を形成する。このとき積層体81の側面には凸部83と凹部84が形成されている。そして、
図19C、
図19Dに示すように、積層体81の上面に凸部85および凹部86を形成し、積層体81の下面に凸部87および凹部88を形成する。このような方法により、トランス本体部10を作製することができる。
【0076】
以上、本発明を上記実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。