【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
また、後述のEC−12とは、エンテロコッカス・フェカリス EC−12株(Enterococcus faecalis EC−12)のことであり、平成17年(2005年)2月25日(原寄託日)付で独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305−5466 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されており、受託番号は「FERM BP−10284」である。さらに、EC−12由来の1本鎖RNAがマウスにおいてIL−12の産生を促進する作用等を有していることは、本発明者らにより既に明らかになっている(国際公開第2011/027829号)。
【0052】
(比較例1)
<哺乳動物の免疫機能を調節する作用を有する、EC−12由来RNAの特定>
前記の通り、EC−12由来の1本鎖RNAがマウスにおいてIL−12の産生を促進する作用等を有していることは明らかになっている。そこで、本発明者らは、どのような配列からなる1本鎖RNAがかかる免疫調節作用を有しているのかを、マウス由来のマクロファージ様細胞株を用い、該細胞におけるIL−12産生能を指標として解析した。
【0053】
その結果、EC−12のRNAのうち、1本鎖RNAの1種である23S rRNAがIL−12産生促進能を有することを見出し、さらに、この23S rRNAにおいて、1974〜2152位の179塩基からなるRNAがこの促進能を保持することをも見出した。そして、この促進能を発揮するために必要な最小配列は、23S rRNAの2055〜2074位の塩基配列(配列番号:10に記載の塩基配列)であることも明らかにした。
【0054】
次に、前記2055〜2074位の塩基配列からなる1本鎖RNAによる、ヒト末梢血単核球における免疫調節作用を評価した。なお、評価は、後述の実施例3に記載の方法と同様の方法にて行った。得られた結果を
図1に示す。
【0055】
図1に示した結果から明らかなように、コントロール(RNA非導入ヒト末梢血単核球)と比較して、前記2055〜2074位の塩基配列からなる1本鎖RNA(23S(17))を導入したヒト末梢血単核球において、IL−12産生能の有意な向上は認められなかった。
【0056】
従って、マウスにおいて免疫機能を調節する作用が認められた前記2055〜2074位の塩基配列からなる1本鎖RNAは、ヒトにおいては免疫機能を調節できないことが明らかになった。
【0057】
(試験例1)
<ヒトの免疫機能を調節する作用を有する、EC−12由来成分の特定>
前述の通り、マウスにおいてIL−12の産生を促進する作用を有する、EC−12の23S rRNAの2055〜2074位の塩基配列からなる1本鎖RNAは、ヒトにおいてはその作用が認められなかった。
【0058】
そこで、EC−12においてヒトの免疫機能を調節する作用を有する成分は存在するのか、さらにはEC−12のどのような成分が該調節作用を担うのかを、以下に示す方法にて調べた。
【0059】
<ヒト末梢血単核球の調製>
先ず、ヒトの血液をPBSで2倍希釈し、パーコール(比重:1.077g/mL)に重層した。遠心分離した後、中間層を末梢血単核球(PBMC)として回収し、PBSにて洗浄した。次いで、ACK溶解緩衝液にて残りの赤血球を除去した後、再度PBSにて洗浄した。次に、このようにして調製したPBMCの生細胞数を計測し、96穴プレートに3x10
5細胞/穴になるよう、RPMI1640培地(L−グルタミン、10%ウシ胎児血清、50U/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン含有)に播種し、CO
2インキュベーター内で2〜3時間静置した。なお、このようにしてヒト2名の血液からヒトPBMCを各々調製した。
【0060】
<ヒトPBMCへの添加用EC−12の調製>
前記ヒトPBMCに添加するため、EC−12を次のように処理した。EC−12(コンビ株式会社製)を、RPMI1640培地(L−グルタミン、10%ウシ胎児血清、50U/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン含有)に10mg/mLとなるように添加し、37℃、30分間処理し、前記ヒトPBMCに添加するための菌体懸濁液を調製した。また、EC−12を、20units/mLのRNase free DNase I(Roche社製)及び/又は0.1mg/mLのRNase A(Invitrogen社製)で37℃、30分間処理し、前記ヒトPBMCに添加するための、ヌクレアーゼ処理済み菌体懸濁液を調製した。そして、それら菌体懸濁液をRPMI1640培地(L−グルタミン、10%ウシ胎児血清、50U/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン含有)で希釈し、200μg/mlとなるように調整した。
【0061】
<EC−12由来の成分存在下でのヒトPBMCの培養>
前記の通りに調製した添加用EC−12をEC−12の終濃度が100μg/mLになるよう、前記ヒトPBMCに添加し、CO
2インキュベーター内で48時間培養した。
【0062】
また、前記EC−12由来成分の他、TLR7阻害剤(TLR7アンタゴニスト)及び/又はTLR9阻害剤(TLR9アンタゴニスト)の存在下においてもヒトPBMCの培養を行った。
【0063】
なお、TLR7及びTLR9のアンタゴニストとして、ホスホロチオエート化(S化)した合成オリゴヌクレオチド(ODN)を用いた(Barrat,F.J.et al.J.Exp.Med.2005,202(8):1131−9 参照)。すなわち、TLR7のアンタゴニストとしてIRS661、TLR9のアンタゴニストとしてIRS869を使用した。各合成ODNの配列を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
ヒトPBMCを96穴プレートに播種する際に、IRS661を5.6μM、IRS869を0.7μMになるよう各々ヒトPBMCに添加し、CO
2インキュベータ内で培養した。その後、前記同様にEC−12由来成分を更に添加し、CO
2インキュベーター内で48時間培養を行った。
【0066】
また、コントロール(陰性対照)として、EC−12由来成分等、何も添加しないで培養したヒトPBMCも調製した。
【0067】
<ELISA>
前記48時間培養後の細胞培養上清中のIL−12p40タンパク質の濃度を、IL−12p40 ELISAキット(Biolegend社製)を用いて測定した。なお、測定の手順はキット添付のプロトコールに準拠した。得られた結果を
図2に示す。
【0068】
図2に示す通り、ヒトPBMCにおいても、EC−12由来の成分はIL−12の産生を促進できることが明らかになった。また、その産生促進作用は、DNaseにて処理しても又TLR9アンタゴニスト存在下にて培養しても、有意に抑制されなかった。一方、RNaseにて処理することによって又はTLR7アンタゴニスト存在下にて培養することによって、EC−12由来成分のヒトIL−12の産生能は有意に抑制されることが明らかになった。
【0069】
以上の結果から、TLR7のリガンドは一本鎖RNAであることも併せ鑑みるに、EC−12由来成分において、ヒトIL−12の産生を促進することができるのは、1本鎖RNAであることが明らかになった。
【0070】
(試験例2)
<ヒトの免疫機能を調節する作用を有する、EC−12由来RNAの特定>
ヒトの免疫機能を調節する作用を有するEC−12の1本鎖RNAの配列を特定するために、EC−12から全RNA、23S rRNAを抽出、精製し、ヒト胎児腎由来の細胞(HEK293細胞)に対するTLR7又はTLR8に対する活性化能を、以下に示す方法にて評価した。
【0071】
なお、TLR8もTLR7同様に1本鎖RNAをリガンドとすることが明らかになっている。さらに、TLR7及びTLR8に関しては、リガンドが結合することによって活性化され、活性化されたTLR7及びTLR8は、細胞内シグナル伝達経路を介して、転写因子であるNF−κB等を活性化することにより、IL−12等のサイトカインの産生を促進し、ひいては免疫機能を調節することが明らかになっている。
【0072】
<EC−12からの全RNA抽出>
EC−12からの全RNA(totalRNA)抽出にはクイックジーンRNA組織キットSII(QuickGene RNA tissue kit SII、KURABO社製)を用いた。抽出処理はクイックジーン−ミニ80(QuickGene−Mini80、KURABO社製)を用い、キット添付のプロトコールに準拠して行った。
【0073】
<23S rRNAの抽出>
前記方法にて抽出した全RNAを1.5%アガロースゲル(TBEバッファー)にて電気泳動を行い、目的のバンド(23S rRNA:2909塩基)を切り出し、QIAクイックゲル抽出キット(QIAquick Gel Extraction Kit、QIAGEN社製)を用いて精製した。なお、精製の手順はキット添付のプロトコールに準拠した。
【0074】
<ルシフェラーゼアッセイ>
先ず、HEK293細胞を白色96穴プレートに2x10
4細胞/穴になるよう播種し、CO
2インキュベーター内で一晩静置した。また、ルシフェラーゼアッセイ用ベクター、pGL4.32[luc2P/NF−κB−RE/Hygro](プロメガ社製)180ngと、pUNO1−hTLR07(Invivogen社製)420ng又はpUNO1−hTLR08(Invivogen社製)420ngと、94μLのOPTI−MEM(Invitrogen)とを混合し、更にトランスフェクション試薬(Roche社製、製品名:FuGENE HD)6μLを添加して混合した後、10分間室温にて静置した。
【0075】
次に、このようにして調製したルシフェラーゼアッセイ用ベクターとトランスフェクション試薬との混合液を、前記HEK293細胞に、各穴5μLずつ添加し、CO
2インキュベーター内で一晩静置した。
【0076】
また、前記全RNA又は23S rRNA5μgをOPTI−MEM100μLに添加し、更にFuGENE HD6μLを添加して、混合した後、10分間室温にて静置した。そして、このようにして調製したRNAとトランスフェクション試薬との混合液を、前記ルシフェラーゼアッセイ用ベクターが導入されたHEK293細胞に、各穴10μLずつ添加し、CO
2インキュベーター内で15時間静置した。さらに、コントロール(陰性対照)として、前記ルシフェラーゼアッセイ用ベクターは導入されているが、EC−12由来のRNAは導入されていないHEK293細胞も調製した。
【0077】
その後、96穴プレートを1時間室温にて静置し、細胞を室温に戻した。次いで、ルシフェラーゼ発光基質(プロメガ社製、Bright−Glo Luciferase Assay System)を添加した後、プレートリーダー(パーキンエルマー社製、製品名:AROVO X3)にて各ウェルの発光値を測定した。得られた結果を
図3に示す。
【0078】
図3に示した結果から明らかなように、試験例1に記載の結果同様に、全RNAを導入することによってHEK293細胞においてNF−κBによる転写の活性化、すなわちTLR7又はTLR8の活性化が認められた(
図3の「P.Control」参照)。さらに、
図3の「23S rRNA」に示す通り、これらの活性化は23S rRNAによって誘導されていることが明らかになった。
【0079】
(実施例1)
<ヒトの免疫機能を調節する作用を有する、EC−12由来23S rRNAの特定1>
EC−12の23S rRNAにおいて、ヒトの免疫機能を調節する作用を有するのはどの部位であるのかを特定するために、該23S rRNAを400塩基毎に分割し、これら1本鎖RNAについてヒトTLR7及びヒトTLR8の活性化能を評価した。
【0080】
<EC−12からのDNA抽出>
EC−12からのDNA抽出にはクイックジーンDNA組織キットS(QuickGene DNA tissue kit S、KURABO社製)を用いた。抽出処理にはQuickGene−Mini80を用い、キット添付のプロトコールに準拠した。
【0081】
<ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)>
PCRにはKOD FX neo(TOYOBO社製)を使用した。なお、反応溶液の組成はKOD FX neo(1U/μl)0.75μl、2×PCR Buffer forKOD FX neo12.5μl、2mM dNTP5μl、10μMのプライマーセット1.5μl、滅菌蒸留水3.25μl、鋳型(ゲノム)0.5μlの合計25μlとした。なお、これらプライマーセットは、23S rRNAをコードするDNAにおいて、1〜411位の塩基からなる部位、351〜738位の塩基からなる部位、699〜1148位の塩基からなる部位、1084〜1522位の塩基からなる部位、1501〜1856位の塩基からなる部位、1836〜2152位の塩基からなる部位、2133〜2530位の塩基からなる部位及び2511〜2909位の塩基からなる部位を各々増幅できるよう設計して合成したものである。
【0082】
これらプライマーセットを用いたPCR反応は、94℃で2分間の初期変性後、98℃で10秒間の熱変性、52℃で30秒間のアニーリング反応、68℃で20秒間の伸長反応を30サイクル行い、72℃で3分間の最終伸長反応を行った後、増幅産物を4℃に冷却した。そして、反応終了後、0.01%の臭化エチジウム入りの1.0%アガロースゲル(TAEバッファー)にて電気泳動を行い、目的のPCR産物の増幅を分子量から確認した。得られたPCR産物はQIAquick Gel Extraction kit(Qiagen)を用いてアガロースゲルから回収、精製し、下記ライゲーションに供した。
【0083】
<PCR産物からのクローニング及びプラスミド抽出>
前記にて精製したPCR産物(DNA)をpCR−BluntII−TOPOに組み込んだ。かかるライゲーションの反応液の組成は、pCR−BluntII−TOPO1μl、Salt Solution1μl、滅菌蒸留水1.5μl、PCR産物2.5μlとし、反応液を室温で5分間インキュベートした。その後、大腸菌(NEB Turbo Competent E.coli(BioLabs社製))にヒートショック法にてライゲーション産物を導入し、形質転換を行った。次いで、このようにして得られた大腸菌を含カナマイシン50μg/mlLB寒天培地に塗布し、37℃で一晩培養した。なお、以下の実験は50μg/mlカナマイシンを添加した培地にて行った。
【0084】
また、陽性クローンの選抜はコロニーPCRによるインサートチェックにて行った。すなわち、2×GoTaq(R)Green Master Mix10μl、10μMプライマー各1μl、滅菌蒸留水8μlにて全量20μlに調製したPCR反応溶液に、滅菌済イエローチップで採取したコロニーの一部を懸濁し、増幅反応を行った。また、プライマーとしては、T7プロモーター配列をセンスプライマー(M13Forward)とし、各々の領域を増幅する際に用いたリバースプライマーをアンチセンスプライマーとして用いた。反応は、94℃で3分間の初期変性後、94℃で30秒間の熱変性、53℃で30秒間のアニーリング反応、72℃で30秒間の伸長反応を25サイクル行い、72℃で3分間の最終伸長反応を行った後、増幅産物を4℃に冷却した。そして、このようにして得られた増幅産物を1.0%アガロースゲル(TAEバッファー)にて電気泳動を行い、陽性クローンを選抜した。得られた陽性クローンを、含カナマイシンLB液体培地5mlに植菌し、37℃で8時間培養した。そして、増菌した陽性クローンからミニプラスプラスミド抽出システム(Mini Plus(TM)PlasmidDNA Extraction System、VIOGENE社製)を用いてプラスミドDNAの抽出を行った。なお、抽出の手順はキット添付のプロトコールに準拠した。
【0085】
<制限酵素処理>
制限酵素salI、SpeI、BamHI(TOYOBO社製)を用いて、前記にて抽出したプラスミドDNAの制限酵素処理を行った。反応溶液の組成は各制限酵素2μl、10×Hバッファー又は10×Mバッファー2μl、プラスミドDNA16μlの合計20μlとし、反応を37℃にて2時間から一晩行った。
【0086】
<プロテナーゼK処理及び精製>
反応終了後の制限酵素反応液に、プロテナーゼKを最終濃度100μg/ml、SDSを最終濃度0.5%となるように添加し、反応を37℃にて30分間行った。次いで、等量のフェノール/クロロホルムを加え1分間ボルテックスした後、室温にて、15,000rpmで5分間遠心分離を行った。遠心分離後、上清を1.5ml微量遠心チューブに回収し、1/10量の3M酢酸ナトリウムと2.5倍量のエタノールとを加えてエタノール沈殿を行った。軽く攪拌した後に、4℃、15,000rpmで5分間遠心分離後、上清を除去し、2.5倍量の80%エタノールを加えて洗浄した。次いで、軽く攪拌した後に、4℃、15,000rpmで5分間遠心分離後、上清を除去し、回収したDNAをRNaseフリーの水50μlに溶解した。
【0087】
<インビトロ転写>
前記にてプロテナーゼK処理及び精製したDNAを鋳型として、インビトロ転写(in vitro Transcription)T7キット(Takara社製)を用いてRNAを合成した。反応溶液の組成は10×転写バッファー(Transcription Buffer)2μl、ATP溶液2μl、GTP溶液2μl、CTP溶液2μl、UTP溶液2μl、RNase阻害剤0.5μl、T7RNAポリメラーゼ2μl及びDNA 100ngに、RNaseフリーdH
2Oを加え、全量20μlとした。そして、反応を42℃にて120分間行った。
【0088】
<DNase処理及び精製>
RNaseフリーDNaseI(Takara社製)を用いて、前記にて合成したRNAのDNase処理を行った。15U/20μl反応液となるようにRNaseフリーDNaseIを混和し、37℃にて30分間インキュベートを行った。DNase処理後、MEGAclear(TM)Kitを用いて精製した。なお、精製の手順はキット添付のプロトコールに準拠した。
【0089】
<ルシフェラーゼアッセイ>
先ず、ルシフェラーゼアッセイ用ベクターを導入したHEK293細胞を前記同様に調製した。また、前述のインビトロ転写にて調製した1本鎖RNA5μgをOPTI−MEM100μLに添加し、更にFuGENE HD6μLを添加して、混合した後、10分間室温にて静置した。そして、このようにして調製したRNAとトランスフェクション試薬との混合液を、前記HEK293細胞に、各穴10μLずつ添加し、CO
2インキュベーター内で15時間静置した。さらに、コントロール(陰性対照)として、前記ルシフェラーゼアッセイ用ベクターは導入されているが、RNAは導入されていないHEK293細胞も調製した。
【0090】
その後、96穴プレートを1時間室温にて静置し、細胞を室温に戻した。次いで、ルシフェラーゼ発光基質を添加した後、AROVO X3にて各ウェルの発光値を測定した。TLR7の活性化能の有無を調べた結果を
図4に、TLR8の活性化能の有無を調べた結果を
図5に示す。
【0091】
図4及び5に示す通り、EC−12由来の23S rRNAにおいて、1〜411位の塩基からなる1本鎖RNAと、1836〜2152位の塩基からなる1本鎖RNAとが、ヒトTLR7及びヒトTLR8の活性化能を有していることが明らかになった。
【0092】
(実施例2)
<ヒトの免疫機能を調節する作用を有する、EC−12由来23S rRNAの特定2>
実施例1において、ヒトTLR7及びヒトTLR8の活性化能を有していることが明らかになった、前記1836〜2152位の塩基からなる1本鎖RNAを、更に2分割し、これら1本鎖RNAについてヒトTLR7及びヒトTLR8の活性化能を評価した。
【0093】
なお、本評価は、前記実施例2同様に、インビトロ転写にて調製したRNAを、ルシフェラーゼアッセイ用ベクターを導入したHEK293細胞に導入し、発光値を測定することにより行った。得られた結果を
図6に示す。
【0094】
図6に示した結果から明らかなように、EC−12由来の23S rRNAにおいて、1947〜2152位の塩基からなる1本鎖RNAが、ヒトTLR7及びヒトTLR8の高い活性化能を有していることが明らかになった。また、該1本鎖RNAよりは劣るものの、EC−12由来の23S rRNAにおいて、1836〜1994位の塩基からなる1本鎖RNAもかかる活性化能を有していることが明らかになった。
【0095】
(実施例3)
<ヒトの免疫機能を調節する作用を有する、EC−12由来23S rRNAの特定3>
実施例2において、ヒトTLR7及びヒトTLR8の活性化能を有していることが明らかになった、前記1947〜2152位の塩基からなる1本鎖RNAを、更に13分割し、これら1本鎖RNAについて、ヒトIL−12産生の促進能を、以下に示す方法にて評価した。
【0096】
先ず、表2に示す通り、EC−12由来23S rRNAの1965〜2164位の塩基配列を、互いに5塩基ずつ重なり合うようにして13個に分けた。そして、これら塩基配列に基づき、20塩基からなる1本鎖RNAを株式会社ジーンデザインに委託して化学合成した。
【0097】
【表2】
【0098】
次に、前記20塩基からなる各1本鎖RNA500pmolを50μLのOPTI−MEM培地に添加した。そして、別チューブ内にてsiRNA用トランスフェクション試薬(Invitrogen社製、製品名:RNAiMAX)3μLと50μLのOPTI−MEM培地とを混合したものに、添加し、混合して、室温にて15分間静置した。
【0099】
そして、このように調製した1本鎖RNAとトランスフェクション試薬との混合液を、前記同様に調製したヒトPBMCを播種したプレートに各穴20μLずつ添加した後、CO
2インキュベーター内で48時間静置した。次いで、培養上清を回収し、IL−12p40 ELISAキットを用いてIL−12p40タンパク質の濃度を測定した。得られた結果を
図7に示す。
【0100】
図7に示す通り、EC−12由来23S rRNAの1965〜2164位の塩基配列において、IL−12促進能を有している1本鎖RNAは、該23S rRNAの2085〜2104位の塩基配列からなるものであることが明らかになった(図中、23S(19) 参照)。また、この評価においても、マウスの免疫機能を調節する作用を有する2055〜2074位の塩基配列からなる1本鎖RNAは、ヒトにおいては免疫機能を調節できないことが確認された(図中、23S(17) 参照)。さらに、図には示さないが、前記同様にルシフェラーゼアッセイにて、該23S rRNAの2085〜2104位の塩基配列からなる1本鎖RNAのヒトTLR8の活性化能を評価したところ、コントロール(RNA非導入細胞)と比較して、約3倍(2.68〜3.45倍)であることが明らかになった。
【0101】
従って、以上の結果から、EC−12由来の23S rRNA(配列番号:1に記載の塩基配列からなるRNA)において、ヒトの免疫機能を調節する作用を有するのは、1〜411位の塩基配列からなる1本鎖RNA、1836〜1994位の塩基配列からなる1本鎖RNA及び2085〜2104位の塩基配列からなる1本鎖RNAであることが明らかになった。