【実施例】
【0010】
本発明の実施例を
図1〜5にて説明する。
図1にマルチ型の空気調和機の冷凍サイクル系統図を示す。室外機に室内機31、室内機32が接続されている。
図1では簡易的に2台のみの記載だが、室内機3、室内機4と複数台接続されていても良い。冷房運転時の場合、冷凍サイクルの冷媒の流れは、室外機の圧縮機1で高圧・高温に圧縮された冷媒は四方弁2を通過し室外熱交換器3で液冷媒に凝縮される。
【0011】
これが室外減圧装置4、受液器5を通り室外機を出て、液配管6、液管接続キット7を経由して、室内機31と室内機32に流れる。室内機内部では室内膨張弁8−1および8−2により低圧に膨張され、室内熱交換器9−1および9−2でガス冷媒に蒸発される。ガス管接続キット10を経由してガス配管11にて再び室外機に戻りこれを循環する。マルチ型の空気調和機の場合、室内機31と室内機32は各々個別に制御される。例えば室内機31を空気調和機使用者が運転停止させた場合でも、保護制御により運転が禁止されている条件以外では室内壁2は運転することが可能である。このように圧縮機1を起点とする冷媒の循環は継続されることとなり停止させた室内機31にも冷媒が流れ込んでくる虞がある。そこで本実施例の空気調和機においては、停止した室内機31の室内膨張弁8−1は基本的には全閉し室内熱交換器9−1に流れないように制御する。この室内膨張弁8の制御方法については後に詳述する。
【0012】
図2には壁掛け型の室内機(31、32)の外観を示す。室内機(31、32)の中には室内熱交換器9、室内膨張弁8、室内送風機14を配置し、室内送風機14は送風機用モータ15へ接続されている。室内膨張弁8、送風機用モータ15は室内機の運転を制御する制御装置16により制御される。送風機用モータ15によって室内送風機14が回転し室内空気は空気吸込口17より吸い込まれ、室内熱交換器9を通過して空気吹出口18より吹出される。
【0013】
本実施例の空気調和機の室内機(31、32)は
図2に示すように、壁に取り付けられる壁掛け型の室内機である。壁掛け型の室内機(31、32)では室内熱交換器9の伝熱面積を確保しつつ製品コンパクト化を実現させるために室内送風機14を取り囲むように室内熱交換器9を配置している。また空気の流れに関しては熱交換器の下流側に室内送風機14が位置している。すなわち、複数の室内機(31、32)はそれぞれ室内熱交換器9を通った後に室内送風機14を介して室内に空調した空気を送風する。
【0014】
図1のマルチ型の空気調和機は前述したとおり、冷房運転時に、室内機31が停止していても室内機32が冷房運転をすることができる。すなわち室外機の圧縮機1が運転している場合には室内機31が停止していても冷媒配管を冷媒が循環している。このとき停止している室内機31の室内膨張弁8−1が微開の状態であると冷媒が室内熱交換器9−1に流れ込んだ場合、微少冷媒により室内熱交換器9−1は徐々に冷却される。
【0015】
この停止している室内機31の室内送風機14は停止していて空気の流れは無いが、室内送風機14を取り囲むように配置された室内熱交換器9−1が冷却されるので、その輻射熱で室内送風機14も冷却される。すると室内送風機14の周囲の空気に含まれる水分が凝縮され結露水となって室内送風機14の表面に付着する。この状態で室内機31の運転を再開すると、室内送風機14が回転することで、その表面に付着した結露水は空気吹出口18より室内機外に排出されてしまう。
【0016】
図2に示すような壁掛け型の室内機においては特に、冷房運転の場合、冷媒が室内熱交換器9を通過すると室内熱交換器9は冷たくなり、室内送風機14も冷やされることになるため、上記した結露水の排出の虞がある。このように結露水が空気吹出口28より飛び出し、これにより使用者に不快感を与える虞があった。
【0017】
図3では室内膨張弁8の簡略断面図を示す。冷媒入口22から冷媒出口23に流れる場合、膨張弁モータ19によってニードル弁20を上下させ、弁座21との隙間量を変化させることによって冷媒流量を調節する。冷媒を流さないようにするためには完全に閉弁させるようにニードル弁20を弁座21に押し付けるようにする。
【0018】
しかしながらこの状態が長く続くと温度変化等で、ニードル弁20が弁座21に食い付いてしまい、開弁させようと膨張弁モータ19によってニードル弁20を上方向に駆動させても動かなくなってしまうことがある。これをロック状態または固渋、固着と呼び、本来の冷媒流量調整が不可となり空気調和機の故障を招く虞が生じる。
【0019】
ここで上記した微少冷媒の流れで室内送風機14の表面に結露水が付着することを抑制するためには室内膨張弁8を全閉することが必要であるが、一方で
図3で記述したように、閉弁状態が長く続くと室内膨張弁8の信頼性を損なうことにもなりかねない。
【0020】
この相反する事象を解決するために本発明者等は、室内膨張弁8に関して
図4に示す制御を考案するに至ったものである。室内機(31、32)が運転している場合には室内機(31、32)および室外機の各種検知温度や圧力等による情報で室内膨張弁(8−1、8−2)の開度を決定する。ここで室内機31が停止したとすると、室外機の圧縮機1が運転しているかどうかの情報を入手して、もし圧縮機1が運転している場合には停止した室内機31の室内熱交換器9−1に冷媒が流れ込まないように室内膨張弁8−1を全閉とする。このとき圧縮機1が停止している場合には冷媒の流れは無いため室内膨張弁8−1のロックを避ける目的で室内膨張弁8−1の開度を微開に設定する。
【0021】
圧縮機1の運転状態が変わった場合にはその都度、室内膨張弁8の開度設定を変更する。すなわち、圧縮機1が運転開始すれば、停止した室内機31の室内膨張弁8−1の開度は全閉とし、圧縮機1の運転が停止すれば停止した室内機31の室内膨張弁8−1の開度を微開とするように制御する。このように室内膨張弁8の全閉時間を極力、減少させることで室内膨張弁8がロックする虞を抑制させることができる。
【0022】
以上に説明したように本実施例の空気調和機は、室内熱交換器9、室内膨張弁8、室内送風機14をそれぞれ有する複数の室内機(31、32)と、複数の室内機(31、32)と冷媒配管(6、11)により接続され、圧縮機1を備えた室外機と、を備えたことを前提としている。そして冷房運転時において、圧縮機1が運転中である場合に、複数の室内機(31、32)のうち停止中の室内機31の室内膨張弁8−1を全閉とする。さらに圧縮機1が停止した場合に全閉とした室内機31の室内膨張弁8−1を所定の開度(微開)で開くように制御するものである。
【0023】
なお、圧縮機1が停止した場合には、複数の室内機(31、32)の全ての室内膨張弁8を所定の開度(微開)で開くように制御することが望ましい。これにより複数の室内機(31、32)の全てにおいて室内膨張弁8のロックを防止することが可能となる。
【0024】
図5に天井埋込型のカセットタイプと言われる4方向に空気を吹き出すタイプの室内機の構造を示す。送風機用モータ24によって回転する送風機25を取り巻くように室内熱交換器26は配置され、送風機の下には風路を形成するためのベルマウス29および制御機器を内蔵する電気品箱30をベルマウスの一部を配置する。空気吸込口27から吸い込まれた空気は送風機25を通り、室内熱交換器26を通過後、空気吹出口28より室内機機外に排出される。
【0025】
図5の室内機が停止している状態で室内膨張弁が微開の状態となると、冷媒が室内熱交換器26に流れるため、室内熱交換器26によって送風機25、ベルマウス26、電気品箱30が冷却される。するとこれらの部品の表面に結露水が付着し、この状態が長く継続されると結露水の量が多くなり空気吸込口27より落下に至る。このため、このような4方向への吹出すタイプの室内機においても本実施例では圧縮機が運転状態では膨張弁を全閉にすることで冷媒の流入を止めるため、結露水の落下を防ぐことが可能となる。