特許第6138594号(P6138594)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6138594海水浸透取水における移動式懸濁物質回収装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138594
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】海水浸透取水における移動式懸濁物質回収装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 24/46 20060101AFI20170522BHJP
   B01D 29/62 20060101ALI20170522BHJP
   B01D 24/02 20060101ALI20170522BHJP
   E03B 3/04 20060101ALI20170522BHJP
   B01D 35/02 20060101ALN20170522BHJP
【FI】
   B01D23/24 Z
   B01D23/16
   E03B3/04
   !B01D35/02 R
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-118257(P2013-118257)
(22)【出願日】2013年6月4日
(65)【公開番号】特開2014-233700(P2014-233700A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市住之江区南港北1丁目7番89号
(73)【特許権者】
【識別番号】305011053
【氏名又は名称】株式会社ナガオカ
【住所又は居所】大阪府貝塚市二色北町1番15号
(74)【代理人】
【識別番号】100089462
【弁理士】
【氏名又は名称】溝上 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100116344
【弁理士】
【氏名又は名称】岩原 義則
(74)【代理人】
【識別番号】100129827
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 進
(72)【発明者】
【氏名】新里 英幸
【住所又は居所】大阪府大阪市住之江区南港北1丁目7番89号 日立造船株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】岡本 豊
【住所又は居所】大阪府大阪市住之江区南港北1丁目7番89号 日立造船株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】坪田 淳一郎
【住所又は居所】大阪府大阪市住之江区南港北1丁目7番89号 日立造船株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆之
【住所又は居所】大阪府大阪市住之江区南港北1丁目7番89号 日立造船株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】大岩 忠男
【住所又は居所】大阪府泉大津市なぎさ町6番1号 株式会社ナガオカ内
(72)【発明者】
【氏名】三村 等
【住所又は居所】大阪府泉大津市なぎさ町6番1号 株式会社ナガオカ内
(72)【発明者】
【氏名】柳本 洋一
【住所又は居所】大阪府泉大津市なぎさ町6番1号 株式会社ナガオカ内
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−075268(JP,A)
【文献】 特開昭60−220116(JP,A)
【文献】 特開2006−152798(JP,A)
【文献】 特開2013−086058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/02−35/02
E03B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沿岸部に近接して設置されており、取水配管及び洗浄管が埋設されたろ過層を少なくとも1つ以上備えた取水エリアを有する海水浸透取水設備で用いられ、
洗浄時に前記洗浄管から前記ろ過層内に噴出されるエアー又は海水により前記ろ過層の上方水域に噴き上げられた懸濁物質とろ過材を含む濁水に対し、前記懸濁物質と前記ろ過材の沈降速度差を利用することにより、前記懸濁物質を選択的に吸引して回収可能な吸引手段と、
前記沿岸部に敷設されたレールに沿って移動可能な橋脚部と、前記吸引手段を上下に昇降して所要の高さ位置で吊設するリフター部とを備え、前記吸引手段を前記ろ過層の上方水域に吊設した状態で、前記取水エリア内の所要の位置に移動可能とする移動手段と、を有し、
前記懸濁物質の拡散を防止するために、前記レールの敷設方向と同方向に、第1区画壁を設けたことを特徴とする移動式懸濁物質回収装置。
【請求項2】
前記第1区画壁と交差する向きに1又は複数の第2区画壁をさらに設けると共に、前記吸引手段は、前記第2区画壁の周辺に集まる懸濁物質を重点的に吸引して回収することを特徴とする請求項に記載の移動式懸濁物質回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水浸透取水設備で用いられ、取水エリアを移動しながらろ過層の洗浄時に海水中に噴き上げられた懸濁物質を含む濁水を適時吸引し、ろ過層の目詰まりの原因となる懸濁物質を効率的に回収する移動式懸濁物質回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、海水淡水化プラントなどの海水浸透取水設備において、蒸発型造水法に代わり、逆浸透膜(RO膜)による逆浸透法が主流になってきている。この逆浸透法の場合、海水中に含まれる不純物によって逆浸透膜上でファウリング(目詰まり)が生じると、ろ過性能が低下するので、淡水化の前処理工程で、不純物の少ない清浄な海水を得ることが必要となる。
【0003】
海水を取水する方法として、現在は、図8に示すように、例えば海底に設けた取水口1から導水管2を介して海水を取水する直接取水法が多く採用されている。図8中、3は海水を取水するためのポンプを、4は取水スクリーンを示している。
【0004】
しかし、直接取水法は、海水と同時にごみ、懸濁物、生物等を全て取水するので、クラゲや赤潮の異常発生時、油の流出事故時、高波による濁度の増大時には、取水を停止しなければならない場合がある。また、直接取水法は、取水口や導水管へのフジツボ、イガイ等の海洋生物の付着が激しいため、定期的な清掃が必要である。また、海洋生物の付着防止のために海水中に例えば塩素等の薬品を投入した場合は、環境汚染や塩素を遠因とした逆浸透膜でのバイオファウリング発生の問題がある。さらに、取水した海水を逆浸透膜で処理する場合には、凝集剤を添加した海水をろ過するろ過施設が必要となるので、ろ過施設に溜まった汚泥を処理する施設が必要になる。
【0005】
そこで、近年、取水する海水の前処理として、凝集剤等の薬品を使用しないで、図9に示すように、海底のろ過層5内を浸透してくる海水を取水する間接取水法が注目されている。
【0006】
この間接取水法は、汀線より数百m、水深十数mの沖合にて海底を掘削し、その掘削部に図10に示すように、支持砂利層5a及び5b、砂層5cからなるろ過層5を形成しながら、再び同じ海底面5dまで埋め戻すことで、支持砂利層5a中に埋設した取水配管6から、ろ過浸透して浄化された海水を取水する方法である(例えば特許文献1)。この間接取水法は、上述した直接取水法の問題は一切発生しないが、イニシャルコストが高いことと、ろ過層の表層や内部に例えばシルトなどの有機又は無機の懸濁物質が捕捉されることで目詰まりが生じて取水量が低下する問題により、普及拡大が遅れている。
【0007】
具体的には、間接取水法の一例として、海底のろ過層内に発現される海水浸透速度を1〜8m/日とし、前記ろ過層の水深は、当該ろ過層の表層部分の砂が50cm以上移動する完全移動限界水深よりも深く、かつ1cm以上移動する表層移動限界水深よりも浅くする海水取水システムが提案されている(例えば特許文献2)。しかし、この特許文献2で提案された海水取水システムは、海水の浸透取水速度が1〜8m/日という非常に緩速なろ過速度であるため、短期間で大量の海水を取水するには広大な面積を必要とし、工事規模が大きくなり、イニシャルコストが高くなる。
【0008】
加えて、特許文献2で提案された海水取水システムは、ろ過層の表面に堆積した目詰まりの原因となる懸濁物質を自然の波や流れを利用して取り除くものであるため、ろ過層の設置場所は、潮流や波浪による海水の流動が活発な海域に限られていた。
【0009】
そこで、本出願人らは、前者の課題を解決するために、海水浸透速度を400m/日以下のできるだけ大きい速度に高速化することで、短期間での取水量が大量になり、従来に比べて取水面積を大幅に削減し、工事規模を格段に減少させることが可能な海水の浸透ろ過方法を提案した(特許文献3)。
【0010】
また、後者の課題については、波浪や潮流による海水流動が少ない海域にろ過層を設置する場合、ろ過層に捕捉された目詰まりの原因となる懸濁物質は人為的に取り除いて洗浄する必要がある。この人為的な洗浄装置に関し、従来、河川においては、図11に示すように、河川7aの河床下に砂利層7c及び砂層7bを埋め戻して構成される集水埋渠の目詰まりを防止するために、砂利層7cにエアーを噴出可能な孔9aを有した洗浄管9を埋設する場合がある。なお、8は、ろ過浸透により浄化された水を集水する集水管を示している。
【0011】
しかし、仮に、波浪や潮流による海水流動が少ない海域のろ過層に、図11に示すような洗浄管を適用した場合、洗浄時にろ過層の上方に噴き上げられた懸濁物質を含む濃度の高い濁水がろ過層の周辺に漂い、環境上問題となる場合がある。
【0012】
また、本出願人らが特許文献3で提案したように、海水浸透速度を例えば100m/日程度にまで高速化すると、ろ過層の内部に目詰まりが進行しやすくなり、かつ、目詰まりが発生する頻度も高くなる。しかし、洗浄管からエアーを噴出してろ過層を洗浄している間は海水を取水できないため、単に洗浄頻度を高くするなどの方法で目詰まりを防止するのみでは、結果的に取水量の低下を招いてしまう。加えて、洗浄時にろ過層の上方に噴き上げられた懸濁物質を速やかに取り除いて、取水エリア外に効率的に回収できなければ、ろ過層の表面に目詰まりの原因となる懸濁物質が再び堆積し、高速の浸透速度を維持できなくなってしまう。
【0013】
なお、ろ過層の表面にシルトなどの懸濁物質が堆積すると、海水が均一にろ過されなくなり、一部の決まった経路から海水が吸収されて抜け道ができるチャネリング現象が生じるおそれもある。このチャネリング現象が発生すると、ろ過層のろ過性能は著しく低下する。仮に、シルトなどの懸濁物質を含む海水が後処理工程に送られてUFユニット等の後段の設備においても目詰まりが発生すると、メンテナンスのために一時的に運転を停止せざるを得ないなど、重大な問題となる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2004−33993号公報
【特許文献2】特許第3899788号公報
【特許文献3】特開2012−246711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、従来は、ろ過層の洗浄時に海中に噴き上げられた懸濁物質を効率良く速やかに回収する手段がなかったため、ろ過層の設置場所が潮流や波浪による海水の流動が活発な海域に限定され、また、海水の浸透速度を高速に維持することが困難となる場合があった点である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、波浪や潮流による海水の流動が少ない海域にもろ過層を設置可能とし、周辺の環境を汚染する虞を低減することを目的としている。加えて、本発明は、ろ過層の浸透面に対する洗浄を適時行い、洗浄時に生じる懸濁物質は速やかに取り除いて取水エリア外に効率的に回収することで、海水の浸透速度を高速に維持することを目的とするものである。
【0017】
本発明の移動式懸濁物質回収装置は、
沿岸部に近接して設置されており、取水配管及び洗浄管が埋設されたろ過層を少なくとも1つ以上備えた取水エリアを有する海水浸透取水設備で用いられ、
洗浄時に前記洗浄管から前記ろ過層内に噴出されるエアー又は海水により前記ろ過層の上方水域に噴き上げられた懸濁物質とろ過材を含む濁水に対し、前記懸濁物質と前記ろ過材の沈降速度差を利用することにより、前記懸濁物質を選択的に吸引して回収可能な吸引手段と、
前記沿岸部に敷設されたレールに沿って移動可能な橋脚部と、前記吸引手段を上下に昇降して所要の高さ位置で吊設するリフター部とを備え、前記吸引手段を前記ろ過層の上方水域に吊設した状態で、前記取水エリア内の所要の位置に移動可能とする移動手段と、を有し、
前記懸濁物質の拡散を防止するために、前記レールの敷設方向と同方向に、第1区画壁を設けたことを最も主要な特徴としている。
【0018】
本発明によれば、洗浄時にろ過層の上方水域に噴き上げられた懸濁物質は、移動手段により取水エリア内の必要位置まで移動可能とされた吸引手段によって吸引され、取水エリア外に回収されるので、懸濁物質を含む濁水が取水エリアの周辺に漂流することや、懸濁物質が再びろ過層の表面に堆積することを防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、取水エリアの全域に亘って効率良く懸濁物質を回収できるので、潮流や波浪による海水流動が少ない海域であってもろ過層を設置できる。また、本発明によれば、取水エリアの全域に亘って懸濁物質の洗浄及び回収効果が高まるので、海水の浸透速度を高速にした場合でも、ろ過層の目詰まりを確実に防止できる。そのため、本発明を用いた場合は、海水の浸透速度が高速に維持されるので、取水エリアの面積は従来よりも大幅に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の移動式懸濁物質回収装置(第1実施例)の縦断面図である。
図2】本発明の移動式懸濁物質回収装置(第1実施例)の平面図である。
図3】ろ過層に埋設される配管の形状を示す図で、(a)は取水配管の平面図、(b)は洗浄管の平面図である。
図4】海水中における粒子の沈降速度を粒径別に比較したグラフである。
図5】本発明の移動式懸濁物質回収装置(第2実施例)の縦断面図である。
図6】本発明の移動式懸濁物質回収装置(第3実施例)の平面図である。
図7】本発明の移動式懸濁物質回収装置(第3実施例の変形例)の平面図である。
図8】従来の直接取水法の概略説明図である。
図9】従来の間接取水法の概略説明図である。
図10】取水配管が埋設されたろ過層の概略構成図である。
図11】河川において利用されている洗浄管の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の移動式懸濁物質回収装置は、洗浄管からろ過層内にエアー又は海水を噴出し、前記ろ過層の目詰まりの原因となる懸濁物質を洗浄したときに、前記ろ過層の上方水域(ろ過層51の上方の海中ともいう)に噴き上げられた前記懸濁物質が含まれる濁水を吸引して回収する吸引手段と、前記吸引手段を前記ろ過層の上方水域に吊設した状態で、取水エリア内の所要の位置に移動可能とする移動手段と、を備えている。
【0022】
ここで、吸引手段は、懸濁物質とろ過材の沈降速度差を利用し、前記濁水から懸濁物質を選択的に吸引するように構成することが好ましい。この構成を採用した場合、ろ過性能を維持するために必要なろ過材はできるだけ吸引しないようにしてろ過層の表面に戻すことができると共に、目詰まりの原因となる懸濁物質のみを選択的に吸引し、取水エリア外に回収できるので、ろ過層のろ過性能が低下しない。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施形態を、図1図7を用いて詳細に説明する。図1図2において、11は、第1実施例の移動式懸濁物質回収装置を示している。
【0024】
先ず、移動式懸濁物質回収装置11が設置される海水浸透取水設備51について説明する。海水浸透取水設備51の取水エリア61は、図1に示すように、海底を掘削し、その掘削部に支持砂利層と砂層を形成しながら再び同じ海底面まで埋め戻すことにより形成したろ過層52を有している。本実施例のろ過層は支持砂利層と砂層を形成しているが、他の例として支持砂利層と砂層とアンスラサイト層を形成しても良い(この場合、表面から、アンスラサイト、砂、砂利の順になっている)。ろ過層の構成としていくつか挙げたが、これらに限定しない。本実施例のろ過層52は、海水浸透速度を例えば25m/日以上400m/日以下の範囲で高速化したものである。
【0025】
ろ過層52には、取水配管53(集水管ともいう)が埋設されている。取水配管53は、ろ過層52をろ過浸透して浄化された海水を取水する配管であり、その構成の一例は、図3(a)に示す通りである。
【0026】
本実施例の取水配管53は、主管53aと取水孔が多数設けられた枝管53bで構成されており、主管53aを集水ポンプと接続することにより、ろ過層52をろ過浸透して浄化された海水を取水することができる。取水配管53に取水された海水は、送水管54を通じて取水ピット55に送られる。取水ピット55に一時的に格納された海水は、取水ポンプ56により適時、外部に送水される。
【0027】
ろ過層52には、取水配管53よりも上方に、洗浄管57が埋設されている。洗浄管57は、ろ過層52の内部に取り込まれた懸濁物質を撹拌し、ろ過層52の表面や内部に堆積した懸濁物質と共にろ過層52の上方水域S1に噴き上げて洗浄する配管であり、その構成の一例は、図3(b)に示す通りである。
【0028】
本実施例の洗浄管57は、主管57aと孔57baが設けられた枝管57bで構成されている。この洗浄管57は、設置時に孔57baが上向きとなるように、ろ過層52内に設置し、主管57aをエアコンプレッサーと接続することにより定期的に孔57baからエアーを噴出させ、ろ過層52の内部又は表層に存在する目詰まりの原因となる懸濁物質を撹拌して洗浄するものである。なお、58は、洗浄管57に空気を送り込むための配管を示している。
【0029】
なお、上記の説明では、洗浄管57からエアーを噴出させる実施例について述べたが、本発明では、洗浄管57の孔57baから噴出させる物質は、エアーに限らず、海水、水あるいは空気混入水であっても良い。
【0030】
次に、本発明の主要部分である移動式懸濁物質回収装置11の構成を説明する。移動式懸濁物質回収装置11は、洗浄管57からろ過層52内に水又はエアーを噴出し、ろ過層52の目詰まりの原因となる懸濁物質を洗浄したときに、ろ過層52の上方水域S1に噴き上げられた懸濁物質が含まれる濁水を吸引して回収する吸引手段21と、この吸引手段21をろ過層52の上方水域S1に吊設した状態で、取水エリア内の所要の位置に移動可能とする移動手段31とで構成される。
【0031】
移動手段31は、沿岸部59に敷設されたレール32に沿って移動可能とされた橋脚部33と、吸引手段21を上下に昇降して所要の高さ位置で吊設するリフター部34とを有している。リフター部34は、吸引手段21を吊るためのワイヤ36とアーム37を備えている。
【0032】
35は、橋脚部33の移動、ワイヤ36の巻き上げ又は巻き下し、洗浄管57と接続されたエアコンプレッサーに対するエアー送出の指令、吸引手段21に対する濁水の吸引指令などを制御する制御部を示している。ろ過層52は、洗浄管57からエアーを噴出させることにより、内部から逆洗浄される。
【0033】
吸引手段21は、逆洗浄時にろ過層52の上方水域S1に噴き上げられた懸濁物質を含む濁水を受け止める板部材22と、この板部材22で受け止めた懸濁物質を含む濁水を吸引する水中ポンプ23とを備えている。図1の例では、板部材22の中央に開口部が設けられており、この開口部を通じて水中ポンプ23により吸引された濁水は、送水管24を通じて沿岸部59に送られ、沿岸部59の排水溝60に排出される。
【0034】
なお、上記の説明では、板部材22の中央に開口部を設け、水中ポンプ23を1つ設ける実施例について述べたが、開口部を設ける位置や水中ポンプ23の取付け数は、図1の例に限るものではない。
【0035】
図2は、図1を平面の方向から見た図である。本実施例の移動式懸濁物質回収装置11が設置される海水浸透取水設備51は、取水配管53と洗浄管57が埋設されたユニット式のろ過層52が多数並設された取水エリア61を有している。
【0036】
ろ過層52と取水エリア61のサイズの一例を説明すると、次の通りである。先ず、ろ過層52のサイズは、図2中、符号Aで示した横方向の長さが3m、符号Bで示した縦の長さが10mである。また、取水エリア61は、ろ過層52を35個並設したものであるため、図2中、符号Cで示す横方向の長さは3m×35=105mである。なお、図2においては、中間部のろ過層52は図示を省略している。
【0037】
次に、移動式懸濁物質回収装置11の動作について説明する。本発明の移動式懸濁物質回収装置11は、濁水を含む海水を吸引しながら、取水エリア61内を所要の位置に移動可能な自動自走式の装置である。
【0038】
移動式懸濁物質回収装置11は、予め設定された走行プログラムに従い、設定時刻になると移動手段31が作動し、これにより橋脚部33が沿岸部59に敷設されたレール32に沿って水平方向に移動すると共に、リフター部34によって吊設された吸引手段21が必要に応じて上下方向に昇降する。その結果、吸引手段21は、特定のろ過層52の上方水域S1の、濁水を吸引するのに最も適した場所に位置付けられる。
【0039】
制御部35は、吸引手段21の位置付けが完了するタイミングに合わせて、洗浄管57と接続されたエアコンプレッサーに対しエアーの送出を指令する。また、制御部35は、洗浄管57からエアーが噴出されてから一定時間が経過したタイミングで、吸引手段21に対し濁水の吸引を指令する。
【0040】
ここで、ろ過層52の上方水域S1に噴き上げられた濁水中には、目詰まりの原因となるシルト等の懸濁物質のみならず、ろ過層52のろ過性能を維持するために必要なろ過材(例えば、砂、アンスラサイト、ガーネット、ケイ砂等)も含まれる。
【0041】
そこで、本実施例では、吸引手段21は、懸濁物質とろ過材の沈降速度差を利用し、ろ過層52の上方水域S1に噴き上げられた濁水中から懸濁物質を選択的に吸引する構成を採用した。
【0042】
具体的には、図4のグラフに示すように、ろ過材のうちの砂は、粒径が例えば0.4〜0.6mmの範囲であって沈降速度が速いため、例えば15秒後には60cm以上沈降しているが、ろ過層52の目詰まりの原因となる懸濁物質は、粒径が例えば0.04mm以下であって沈降速度が遅いため、例えば15秒後においても浮遊状態にある。
【0043】
従って、吸水手段21を位置付ける際のろ過層52の表面からの距離と、水中ポンプ23を作動させるタイミングを調整することにより、懸濁物質のみを選択的に吸引し、ろ過材はできるだけ吸引せずにろ過層52の表面に戻すことが可能となる。よって、この構成を採用した場合、ろ過層52のろ過性能が低下しない。
【0044】
さらに言えば、上記沈降速度差を利用すれば、移動手段31の移動速度、吸引手段21の吸引力、吸水手段21を位置付ける際のろ過層52の表面からの距離を適切に設定することにより、ろ過層52の浸透面に残されるろ過材の粒径を概ね制御することも可能になる。これにより、その海域の濁質状況等に応じて、ろ過層52の浸透面(最表層部)のろ過材の粒径を最適なものとすることができる。
【0045】
移動式懸濁物質回収装置11は、1つ目のろ過層52に対する処理が完了すると、次のろ過層52まで移動し、1つ目のろ過層52と同様、次のろ過層52の水又はエアーによる洗浄と、海水S1中に噴き上げられた濁水の吸引を行う。そして、以後は走行プログラムに従い、ろ過層52間の移動、ろ過層52の水又はエアーによる洗浄、濁水の吸引の動作を繰り返す。なお、ろ過層52間を移動中の間は吸引手段21を停止させても良いが、必要に応じて、移動手段31を水平方向に移動させながら吸引手段21を作動させることも可能である。
【0046】
以上の第1実施例の構成によれば、洗浄時にろ過層52の上方水域S1に噴き上げられた懸濁物質は、移動手段31により取水エリア61内の必要位置まで移動可能とされた吸引手段21によって吸引され、取水エリア61以外に回収されるので、懸濁物質を含む濁水が取水エリア61の周辺に漂流することや、懸濁物質が再びろ過層52の表面に堆積することを防止できる。
【0047】
次に、図5を参照して、第2実施例の移動式懸濁物質回収装置12の構成を、既に説明した第1実施例の移動式懸濁物質回収装置11とは異なる点を中心に説明する。
【0048】
移動手段31は、沿岸部59に敷設されたレール32に沿って移動可能とされた橋脚部33と、吸引手段21を上下に昇降して所要の高さ位置で吊設するリフター部34とを備えている。また、取水エリア61は、沿岸部59に近接して設置されている。これらの点は、第1実施例と共通している。
【0049】
第2実施例の移動式懸濁物質回収装置12は、上記の構成に加え、取水エリア61を、取水エリア61以外の他の海域S2から区画して懸濁物質の拡散を防止するために、前記レール32の敷設方向と同方向に、第1区画壁41を設けた点に追加的な特徴を有するものである。
【0050】
上記第2実施例の構成によれば、取水エリア61を構成する各ろ過層52の上方水域S1と、取水エリア61以外の他の海域S2とは、第1区画壁41によって物理的に遮断される。よって、ろ過層52の洗浄時に、懸濁物質を含む濁水が取水エリア61の周辺に漂流することは、より確実に防止される。このとき懸濁物質を系外に流すために強制的に流れを発生させてもよい。
【0051】
また、図6を参照して、第2実施例をさらに改良した第3実施例の移動式懸濁物質回収装置13の構成を説明する。第3実施例の構成においても、レール32の敷設方向と同方向に第1区画壁41を設けた点は、第2実施例と共通している。
【0052】
第3実施例の移動式懸濁物質回収装置13は、上記の構成に加え、第1区画壁41と交差する向きに1又は複数の第2区画壁42をさらに設けると共に、吸引手段21は、前記第2区画壁42の周辺に集まる懸濁物質を重点的に吸引して回収する点に追加的な特徴を有するものである。
【0053】
具体的には、第2区画壁42は、例えば図6に示すように、取水エリア61の中央部付近に1つ設けると共に、取水エリア61の左右両端部は区画壁を設けずに外部に開放された状態とする。このような構成とした場合、海流は、取水エリア61の左右両端部から第2区画壁42を設けた中央部に向けて、矢印X1,X2の方向に流入するので、洗浄の際にろ過層52の上方水域S1に漂う懸濁物質を、第2区画壁42周辺の中央部に集めることができる。
【0054】
従って、第3実施例の構成を採用した場合は、取水エリア61の全域に亘って同じ頻度で懸濁物質を吸引する必要はなくなり、懸濁物質が集まりやすい第2区画壁42周辺の中央部付近を重点的に吸引すれば良いことになる。よって、第3実施例の構成は、第1、第2実施例と比較すると、懸濁物質をより効率的に吸引し回収可能なものである。
【0055】
図7は、第3実施例の変形例を示す図である。この変形例にかかる移動式懸濁物質回収装置14では、取水エリア61の中央部よりも左右両端寄りの位置に、第2区画壁43,44を2つ設ける。また、取水エリア61の左右両端部は区画壁を設けずに外部に開放された状態とする。更に、第2区画壁43,44の間に位置する第1区画壁41の一部を切り欠いて、外部に開放された開口部45を設ける。
【0056】
図7の構成の場合、海流は、取水エリア61の左右両端部から第2区画壁43,44の夫々に向けて、矢印X1,X2の方向に流入すると共に、中央の開口部45から第2区画壁43,44の夫々に向けて、矢印Y1,Y2の方向にも流入するので、懸濁物質は、第2区画壁43,44の夫々の周辺部に集めることができる。
【0057】
従って、図7の構成を採用した場合も、取水エリア61の全域に亘って同じ頻度で懸濁物質を吸引する必要はなくなる。懸濁物質は第2区画壁43,44の夫々の周辺部に集まるので、第2区画壁43,44の夫々の周辺部を重点的に吸引すれば良い。
【0058】
以上の本発明の構成によれば、洗浄時にろ過層52の上方水域S1に噴き上げられた懸濁物質を含む濁水を速やかに吸引し、効率良く回収できるので、潮流や波浪による海水流動が少ない海域であってもろ過層52を設置できるようになる。また、本発明によれば、取水エリア61の全域に亘って懸濁物質の洗浄及び回収効果が高まるので、海水の浸透速度を高速にした場合でも、ろ過層52の目詰まりを確実に防止できて、チャネリング現象が生じる虞もなくなる。
【0059】
また、本発明は、海水の浸透速度を高速に維持できるので、取水エリアの面積を従来よりも大幅に削減できるという副次的な効果もある。例えば10万t/日の取水量が求められる取水設備の場合、浸透速度が例えば5m/日の従来の浸透取水法であれば、必要な取水エリアの面積は20,000m2 となるが、浸透速度を例えば100m/日の高速に維持できれば、必要な取水エリアの面積は従来の1/20の1,000m2 にまで格段に削減できる。よって、設置時の工事も小規模化が可能になり、工事時の周囲環境への影響も格段に緩和できる。
【0060】
本発明は、前記の例に限るものではなく、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0061】
例えば、上記の実施例では、1つの取水エリア61に対して本発明の移動式懸濁物質回収装置を1台ないし2台設置する例を開示したが、設置台数はこれに限らない。本発明の移動式懸濁物質回収装置の設置台数は、取水エリア61の面積と、装置1台あたりの懸濁物質の回収能力に応じて、適宜最適な台数を決定すれば良い。
【0062】
また、上記の実施例では、板部材22と水中ポンプ23とで構成される吸引手段21の例を開示したが、吸引手段21の構成はこれに限らない。例えば、吸引手段21にも補助的な洗浄機構を設け、洗浄管57による逆洗浄を組み合わせて、洗浄効果をより高めるように構成しても良い。
【0063】
吸引手段21に設ける補助的な洗浄機構の例としては、ジェットノズルによる水流式の撹拌手段や、スクレーパー、回転翼、スパイラル翼などを動作させる機械式の撹拌手段などが挙げられる。ジェットノズルを用いる場合は、水流式に限らず、空気混流式のジェットノズルを用いても良い。
【符号の説明】
【0064】
11 移動式懸濁物質回収装置
21 吸引手段
31 移動手段
32 レール
33 橋脚部
34 リフター部
41 第1区画壁
42,43,44 第2区画壁
51 海水浸透取水設備
52 ろ過層
53 取水配管
57 洗浄管
59 沿岸部
61 取水エリア
S1 上方水域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11