(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138595
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】自転車用電装品の通電構造
(51)【国際特許分類】
B62J 6/02 20060101AFI20170522BHJP
B62J 11/00 20060101ALI20170522BHJP
B62J 6/18 20060101ALN20170522BHJP
【FI】
B62J6/02 G
B62J11/00 G
!B62J6/18
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-118507(P2013-118507)
(22)【出願日】2013年6月5日
(65)【公開番号】特開2014-234125(P2014-234125A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2015年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112978
【氏名又は名称】ブリヂストンサイクル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102565
【弁理士】
【氏名又は名称】永嶋 和夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 博
【審査官】
山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−225974(JP,A)
【文献】
実開昭55−085982(JP,U)
【文献】
実開昭51−160338(JP,U)
【文献】
実開昭60−010274(JP,U)
【文献】
特開2005−014834(JP,A)
【文献】
実開昭60−067601(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 6/00,6/02,6/18
B62J 7/00,11/00,99/00
B62K 19/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給部からの電力を車載の電装品に供給する1線式導線を備え、前記電装品から電力供給部への戻り導線を自転車構成部材に兼用させた自転車用電装品の通電構造において、前記戻り導線を構成すべく電装品に電気的に接続された中間部材を介して自転車構成部材から前記電力供給部に通電させるにあたり、前記中間部材に予め通電可能な無塗装部分を形成するとともに、前記中間部材が、第1中間部材と第2中間部材とからなり、前記戻り導線を構成すべく電装品に電気的に接続された前記第1中間部材を前記第2中間部材を介して自転車構成部材から前記電力供給部に通電させるにあたり、前記無塗装部分を前記第2中間部材の前記第1中間部材との接触面に形成したことを特徴とする自転車用電装品の通電構造。
【請求項2】
前記電装品がランプであり、前記第1中間部材がバスケットブラケットであり、前記第2中間部材がバスケットステーであることを特徴とする請求項1に記載の自転車用電装品の通電構造。
【請求項3】
電力供給部からの電力を車載の電装品に供給する1線式導線を備え、前記電装品から電力供給部への戻り導線を自転車構成部材に兼用させた自転車用電装品の通電構造において、前記戻り導線を構成すべく電装品に電気的に接続された中間部材を介して自転車構成部材から前記電力供給部に通電させるにあたり、前記中間部材に予め通電可能な無塗装部分を形成するとともに、前記電装品がランプであり、前記中間部材がキャリアステーであることを特徴とする自転車用電装品の通電構造。
【請求項4】
電力供給部からの電力を車載の電装品に供給する1線式導線を備え、前記電装品から電力供給部への戻り導線を自転車構成部材に兼用させた自転車用電装品の通電構造において、前記戻り導線を構成すべく電装品に電気的に接続された中間部材を介して自転車構成部材から前記電力供給部に通電させるにあたり、前記中間部材に予め通電可能な無塗装部分を形成するとともに、前記電装品がランプであり、前記中間部材がランプブラケットであることを特徴とする自転車用電装品の通電構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給部からの電力を車載の電装品に供給する1線式導線を備え、前記電装品から電力供給部への戻り導線を自転車構成部材に兼用させた自転車用電装品の通電構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自転車等の軽車両にあって、ランプや尾灯等の電装品への電源電力は電池によるものの他、回転駆動部に配置されるハブダイナモやタイヤ側面への圧接式ダイナモによって発電されたものを直接に、あるいは二次蓄電池を介在させてハーネス等のケーブルを通じて供給されている。通常は、ダイナモから電装品への電力供給側の1線(供給線:プラス側)と、電装品からダイナモ側への戻り導線(マイナス側)との一対のケーブルがバスケットステーや前ホークに沿わせて配線されているが、ハーネス類の配設の取回しが煩雑になることから、近年では、ダイナモ等から電装品への電力供給側の1線式のみを配線して電装品からダイナモ側への戻り導線を車体に兼用させるものが多用されている。
【0003】
そのような従来の1線式電力供給方式を
図6を用いて説明すると、
図6(A)に示した第1従来例のものでは、フロントバスケット118をバスケットブラケット101を介して支持するバスケットステー102における図示省略の下端部が前車輪軸に軸支され、前記バスケットブラケット101の前端部には前照灯であるランプ120のマイナス側である戻り導線側が機械的にも電気的にも接続される。一方、電力供給側であるケーブル・ハーネスが、前車輪軸に装着された図示省略のハブダイナモの出力端子からランプ120の入力端子に向けてバスケットステー102に沿って巻き付けて配線される。
【0004】
また、
図6(B)に示した第2従来例のものは、フロントキャリア117はフロントキャリアステー111によりフロントホーク112の上端部近傍に、図示省略のキャリパブレーキユニット等と共締めにて固定される形式のもので、前記第1従来例のものと同様に、前記フロントキャリアステー111の前端部に前照灯であるランプ120のマイナス側である戻り導線側が機械的にも電気的にも接続され、電力供給側であるケーブル・ハーネスは、前車輪軸に装着された図示省略のハブダイナモの出力端子に接続端子により接続されてランプ120の入力端子に向けてフロントホーク112に沿ってケーブルホルダ等によって巻き付けて配線される。
【0005】
このようにして構成された1線式電力供給方式では、マイナス側である戻り導線側を車体に兼用させる必要から、車体を構成する各部品間での接触部の通電機能が確実に発揮されなければならない。そこで、そのような各部品間での通電性能の向上を目的として様々な工夫がなされてきている。1例として、下記特許文献1に開示された自転車用ヘッドライトの取付装置が提案された。この第3従来例を
図7を用いて説明すると、前記
図6(A)の第1従来例のもののように、図示省略の荷かごの底部に配設される門型形状のバスケットステーの水平部を上下にて挟持する形態にて、ヘッドライト取付金具204の打出し部211と受け金具201とを取付螺子207によって締結する。その際、前記バスケットステーの水平部を挟持する受け金具201の凹部203の接触面には小突起212が切り起こされ、取付螺子207による締結時にバスケットステーの水平部に食い込んで電気的に通電されるように構成されている。ヘッドライト取付金具204の前端取付部206にはボルト・ナット214によって図示省略のヘッドライトの戻り導線側が機械的にも電気的にも接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−225974号公報(公報段落〔0011〕等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、
図6における第1および第2従来例に例示されたような1線式電力供給方式のものにおけるマイナス側である戻り導線側を車体に兼用させ、車体を構成する各部品間での接触部について、
図7の第3従来例に例示したような部品間での切り起こし突起を形成して、塗装面を突き破ることで車体を構成する部品間での通電機能が確実になったものの、例えば、前記
図7における受け金具201の凹部203の接触面に小突起212が切り起こされた場合、受け金具201自体の剛性確保のためには切り起こされた小突起212も剛性が高く、バスケットステーの水平部との接触面と小突起212とは点接触となって取付固定が不安定になる他、通電性能も低下しかねないものであった。しかも、通電確保のために前記小突起212がバスケットステーの水平部における塗装面を突き破る必然性があり、錆の発生が避け難く、錆による通電性能の低下や耐久性が低下することは避けられなかった。
【0008】
そこで本発明では、前記従来の自転車用電装品における1線式電力供給方式の通電構造の諸課題を解決して、簡素な構造にても部品間での通電機能に優れ、面接触による接続を可能にして取付強度も高く、発錆の虞れもない自転車用電装品の通電構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため本発明は、電力供給部からの電力を車載の電装品に供給する1線式導線を備え、前記電装品から電力供給部への戻り導線を自転車構成部材に兼用させた自転車用電装品の通電構造において、前記戻り導線を構成すべく電装品に電気的に接続された中間部材を介して自転車構成部材から前記電力供給部に通電させるにあたり、前記中間部材に
予め通電可能な無塗装部分を形成するとともに、前記中間部材が、第1中間部材と第2中間部材とからなり、前記戻り導線を構成すべく電装品に電気的に接続された前記第1中間部材を前記第2中間部材を介して自転車構成部材から前記電力供給部に通電させるにあたり、前記無塗装部分を前記第2中間部材の前記第1中間部材との接触面に形成したことを特徴とする。また本発明は、前記電装品がランプであり、前記第1中間部材がバスケットブラケットであり、前記第2中間部材がバスケットステーであることを特徴とする。また本発明は、電力供給部からの電力を車載の電装品に供給する1線式導線を備え、前記電装品から電力供給部への戻り導線を自転車構成部材に兼用させた自転車用電装品の通電構造において、前記戻り導線を構成すべく電装品に電気的に接続された中間部材を介して自転車構成部材から前記電力供給部に通電させるにあたり、前記中間部材に
予め通電可能な無塗装部分を形成するとともに、前記電装品がランプであり、前記中間部材がキャリアステーであることを特徴とする。また本発明は、電力供給部からの電力を車載の電装品に供給する1線式導線を備え、前記電装品から電力供給部への戻り導線を自転車構成部材に兼用させた自転車用電装品の通電構造において、前記戻り導線を構成すべく電装品に電気的に接続された中間部材を介して自転車構成部材から前記電力供給部に通電させるにあたり、前記中間部材に
予め通電可能な無塗装部分を形成するとともに、前記電装品がランプであり、前記中間部材がランプブラケットであることを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、請求項1に記載の構成要件である、電力供給部からの電力を車載の電装品に供給する1線式導線を備え、前記電装品から電力供給部への戻り導線を自転車構成部材に兼用させた自転車用電装品の通電構造において、前記戻り導線を構成すべく電装品に電気的に接続された中間部材を介して自転車構成部材から前記電力供給部に通電させるにあたり、前記中間部材に
予め通電可能な無塗装部分を形成するとともに、前記中間部材が、第1中間部材と第2中間部材とからなり、前記戻り導線を構成すべく電装品に電気的に接続された前記第1中間部材を前記第2中間部材を介して自転車構成部材から前記電力供給部に通電させるにあたり、前記無塗装部分を前記第2中間部材の前記第1中間部材との接触面に形成したことにより、従来のもののような切り起こし突起等を設けて塗装面を突き破らせて通電状態を確保せずとも、簡素な構造にて前記中間部材に無塗装部分を介して充分なる通電可能な接触面を確保でき、面接触による取付強度の維持も可能で、発錆の虞れもない。しかも、中間部材を比較的設計の自由度が高くなる複数の中間部材により構成した場合でも、これらの部材間で通電性能の向上と発錆の虞れのない面接触による取付けが可能となる。
【0011】
さら
に、請求項
2に記載の構成要件である、前記電装品がランプであり、前記第1中間部材がバスケットブラケットであり、前記第2中間部材がバスケットステーである場合は、バスケットを支持するバスケットステーを挟持固定するバスケットブラケットがバスケット下部で外観上目立たないのでこれを塗装することなくランプを電気的に通電が容易な形態にて取り付けることができると同時に、バスケットステーを無塗装部を形成して全体を塗装することができるので、外観上他の部分と色合せが必要なバスケットステーを効果的に塗装できてバスケットステーの耐久性も向上する。
【0012】
また、請求項3に記載の構成要件である、電力供給部からの電力を車載の電装品に供給する1線式導線を備え、前記電装品から電力供給部への戻り導線を自転車構成部材に兼用させた自転車用電装品の通電構造において、前記戻り導線を構成すべく電装品に電気的に接続された中間部材を介して自転車構成部材から前記電力供給部に通電させるにあたり、前記中間部材に
予め通電可能な無塗装部分を形成するとともに、前記電装品がランプであり、前記中間部材がキャリアステーである場合は、キャリアを支持してホーク部に取り付けられるキャリアステーを他の部分との色合せが必要なことから無塗装部分を残して塗装でき、該無塗装部分を通じてランプを電気的に通電が容易な形態にて取り付けることができる。また、請求項4に記載の構成要件である、電力供給部からの電力を車載の電装品に供給する1線式導線を備え、前記電装品から電力供給部への戻り導線を自転車構成部材に兼用させた自転車用電装品の通電構造において、前記戻り導線を構成すべく電装品に電気的に接続された中間部材を介して自転車構成部材から前記電力供給部に通電させるにあたり、前記中間部材に
予め通電可能な無塗装部分を形成するとともに、前記電装品がランプであり、前記中間部材がランプブラケットである場合は、ランプブラケットを支持ステーのような他の部品の付属品としてではなく、単体にて他の部分との色合せが必要なことから無塗装部分を残して塗装でき、該無塗装部分を通じてランプを電気的に通電が容易な形態にて取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の自転車用電装品の通電構造の第1実施例を示すもので、バスケットブラケットとバスケットステーとの接続部の要部分解斜視図およびマスキングされた塗装前のバスケットステーの全体斜視図である。
【
図2】同、ハブダイナモが装着された車輪軸部における各部品の組付け状態の要部後面図である。
【
図3】本発明の自転車用電装品の通電構造の第2実施例を示すもので、フロントキャリアステーがランプ取付部材を構成する全体斜視図である。
【
図4】同、フロントキャリアステーがフロントホークに取り付けられる状態を示す全体分解側面図である。
【
図5】本発明の自転車用電装品の通電構造の第3実施例を示すもので、ランプブラケット単体にてランプとフロントホークとを接続する状態の要部全体斜視図およびランプブラケットの全体斜視図である。
【
図6】自転車用電装品の通電構造の1線式電力供給方式の第1従来例および第2従来例を示す要部斜視図および側面図である。
【
図7】特許文献1に記載された第3従来例の自転車用ヘッドライトの取付装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の自転車用電装品の通電構造の好適な形態を図面に基づいて説明する。本発明の自転車用電装品の通電構造は、
図1に示すように、電力供給部からの電力を車載の電装品に供給する1線式導線を備え、前記電装品から電力供給部への戻り導線を自転車構成部材に兼用させた自転車用電装品の通電構造において、前記戻り導線を構成すべく電装品に電気的に接続された中間部材1、2を介して自転車構成部材から前記電力供給部に通電させるにあたり、前記中間部材1、2に
予め通電可能な無塗装部分5を形成するとともに、前記中間部材が、第1中間部材1と第2中間部材2とからなり、前記戻り導線を構成すべく電装品に電気的に接続された前記第1中間部材1を前記第2中間部材2を介して自転車構成部材から前記電力供給部に通電させるにあたり、前記無塗装部分5を前記第2中間部材2の前記第1中間部材1との接触面に形成したことを特徴とする。
【実施例1】
【0015】
図1および
図2は、本発明の自転車用電装品の通電構造の第1実施例を示す。
図1(A)はおいては、電力供給部である自転車の回転駆動部、例えば前車輪ハブ部や前照灯であるランプ等は図示が省略されているが、
図6(A)の第1従来例のものや
図2の車輪ハブ部等を参照されたい。本発明の電装品の通電構造は、言うまでもないが後車輪上部のリアキャリアに設置される尾灯等の電装品および後車輪ハブ部にハブダイナモを配設して構成することもできる。図示省略のフロントバスケット等の底部に第2中間部材であるバスケットステー2が配設支持され、該バスケットステー2の両脚部9、9の下端部のハブ軸取付孔10がハブ軸13に固定される(
図1(B))。フロントバスケット等の底部とバスケットステー2とは、第1中間部材であるバスケットブラケット1によりバスケットステー2の水平部を挟持する形態にてボルト・ナット等により緊締固定される。バスケットブラケット1は、通常、バスケット下部に配置されて目立たないので塗装されることなく通電可能なように表面全体をメッキ処理され、そのバスケットステー2の水平部を受け入れる接触面の曲率に対応した凹部4が形成されている。
【0016】
前記バスケットブラケット1の前端部の曲折縁にはランプ取付孔3が穿設され、
図6(A)に示すように前照灯であるランプのマイナス側である戻り導線側が機械的にも電気的にも接続される。詳述はしないが、後述する
図2に示すように、電力供給側であるプラス側のハーネス18は前車輪軸に装着されたハブアッセンブリ内に装着されたハブダイナモの出力端子からランプの入力端子に向けてバスケットステー2に沿って巻き付けて配線される。
図1(B)に示すように、前記バスケットステー2の水平部における無塗装部分5は、該バスケットステー2の塗装前のメッキ処理とマスキングにより形成される。
図1(A)に示すバスケットステー2の水平部における塗装部6間の、少なくとも無塗装部分5より僅かに幅広い範囲にメッキ処理が施された後に、該メッキ部分における無塗装部分を形成させたい範囲にマスキング7を施してバスケットステー2を全体塗装することにより、その後マスキングを除去して
図1(A)に示すようにバスケットステー2の水平部に無塗装部分(メッキ部)5を得る。なお、予めのメッキ処理をバスケットステー2の全体に施すことを妨げるものではない。
【0017】
このような簡素な構造により、従来のもののような切り起こし突起等を設けて塗装面を突き破らせて通電状態を確保せずとも、メッキ処理に続く塗装前のマスキングという簡素な処理工程のみにて、確実に通電性の高い無塗装部分を形成でき、簡素な構造にて第1中間部材であるバスケットブラケット1と、第2中間部材であるバスケットステー2との間に無塗装部分5を介して充分なる通電可能な接触面を確保でき、面接触による取付強度の維持も可能で、発錆の虞れもなく耐久性に優れ、ランプのマイナス側である戻り導線側が機械的にも電気的にも強固で確実に接続することが可能となる。しかも、バスケットを支持するバスケットステー2を挟持固定するバスケットブラケット1がバスケット下部で外観上目立たないので、これを塗装することなくランプを電気的に通電が容易な形態にて取り付けることができると同時に、バスケットステー2を無塗装部を形成して全体を塗装することができるので、外観上他の部分と色合せが必要なバスケットステーを効果的に塗装できてバスケットステー2の耐久性が向上する効果も得ることになる。
【0018】
図2はハブダイナモが装着された車輪軸部(実施例では前車輪軸部)における各部品の組付け状態の要部後面図である。ハブ軸13に軸支されるハブアセンブリ内にはハブダイナモが装着されており、ハブダイナモの出力端子からプラス側の電力供給ケーブルであるハーネス18がバスケットステー2に巻き付けられて上方へ配線される。ハブ軸13には内側から順次、フロントホーク12の下端部、バスケットステー2の下端部が挿入され、菊座ハブワッシャー、ハブワッシャー、ハブナットにより緊締固定される。フロントホーク12の下端部とバスケットステー2の下端部との間には歯付き座金14が介設されて、フロントホーク12とバスケットステー2とのいずれをも前記ハブダイナモの戻り導線であるマイナス側と電気的に通電可能に構成される。フロントホーク12側の戻り導線側については以下の第2および第3実施例にて詳述する。
【実施例2】
【0019】
図3および
図4は、本発明の自転車用電装品の通電構造の第2実施例を示す。本実施例でも電力供給側であるプラス側のハーネス類は図示が省略されている。本実施例では
図3に示すように、中間部材であるフロントキャリアステー11がランプ取付部材を構成し、
図4に示すように、フロントキャリアステー11がフロントホーク12に取り付けられた例である。
図3に示す実施例では、フロントキャリア17の底部にフロントキャリアステー11が一体成型されて構成されているが、無論、フロントキャリア17の底部にフロントキャリアステー11を別体にて取り付けるように構成されてもよい。通電可能なようにハッチングで示されたメッキ処理等が施されたフロントキャリアステー11の前端部の無塗装部分(電装品および自転車構成部材との接触面。ハッチング部の裏面や孔部等も無塗装でも可)にはランプ取付孔3が穿設されており、前照灯であるランプの戻り導線側であるマイナス端子が電気的にも機械的にも接続固定される。フロントキャリアステー11の後下端部に形成された固定板16には、同様にハッチングで示された無塗装部分(電装品および自転車構成部材との接触面)が形成され、
図4に示すように、フロントホーク12の股部に通電可能に接続される。
【0020】
フロントキャリアステー11がフロントホーク12に取り付けられる状態を示す
図4の全体分解側面図に示すように、フロントキャリアステー11における固定板16は下方に開放された溝を有する門型形状を呈しており、該溝の奥に突き当たるようにキャリパブレーキ軸19が挿入された上で、該キャリパブレーキ軸19がフロントホーク12の股部に穿設された無塗装部を形成するブレーキ軸挿入孔15に挿入され、スペーサや座金を介設されてナットにより緊締固定される。フロントキャリアステー11から固定板16を通じた通電接続は、無塗装あるいはメッキ処理された通電可能なキャリパブレーキ軸19を介してフロントホーク12のブレーキ軸挿入孔15に接続される。ブレーキ軸挿入孔15の内部をメッキ処理された無塗装部分(通常は塗装されない)としてもよいし、あるいは、フロントキャリアステー11の固定板16に添設されるスペーサ22を通電可能な材質として、該スペーサ22と面接触するフロントホーク12のブレーキ軸挿入孔15の周囲をメッキ処理された無塗装部分としてもよい。
【0021】
このように構成することで、キャリア17を支持してホーク部12に取り付けられるキャリアステー11を、他の部分との色合せが必要なことから無塗装部分を残して塗装でき、該無塗装部分を通じてランプを電気的に通電が容易な形態にて取り付けることができると同時に、キャリアステーに接続される外観上他の部品と色合せが必要なホークについても、無塗装部を形成して全体を塗装することができるので、ホークの耐久性も向上する。しかも、キャリアステー11が取り付けられる無塗装の接触面としてホーク12におけるキャリパブレーキユニット等の取付孔15やスペーサ22介設面等を活用して、面接触による通電性能の確保と機械的な強固な接続を容易に得ることができる。
【実施例3】
【0022】
図5は本発明の自転車用電装品の通電構造の第3実施例を示す。本実施例でも電力供給側であるプラス側のハーネス類は図示が省略されている。本実施例ではランプブラケット21単体にてランプ20とフロントホーク12とを接続する。
図5(B)に示すように、単体にて部品を構成するランプブラケット21は、ランプブラケットを支持ステーのような他の部品の付属品としてではなく、単体にて他の部分との色合せが必要なことからハッチングで示した前後端部の無塗装部分を残して塗装でき、該無塗装部分を通じてランプを電気的に通電が容易な形態にて取り付けることができると同時に、ランプブラケットに接続されるホークについても、無塗装部を形成して全体を塗装することができるので、ホークの耐久性も向上する。ランプブラケット21の前端部の無塗装部分にはランプ取付孔3が穿設されており、前照灯であるランプ20の戻り導線側であるマイナス端子が電気的にも機械的にも接続固定される。ランプブラケット21の後下端部には固定板16が曲折形成され、該固定板16のハッチングで示す無塗装部分には、
図5(A)に示すように、フロントホーク12の股部に通電可能に接続される。ランプブラケット21の固定板16とフロントホーク12との電気的および機械的な接続形態については前記第2実施例のものと同様に、ブレーキ軸挿入孔15やスペーサ22の介設が採用される。
【0023】
このように構成したので、ランプブラケット21を支持ステーのような他の部品の付属品としてではなく、より簡素な構造の単体部品として他の部分との色合せが必要なことからハッチングで示した前後端部の無塗装部分を残して塗装でき、ランプ20を電気的に通電が容易な形態にて取り付けることができると同時に、ホーク12を接続部である無塗装部を形成して全体を塗装することができるので、ホーク12の耐久性が向上する。しかも、ランプブラケット21が取り付けられる無塗装の接触面としてホーク12におけるキャリパブレーキユニット等の取付孔15やスペーサ22介設面等を活用して、面接触による通電性能の確保と機械的な強固な接続を容易に得ることができる。
【0024】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、電力供給部である回転駆動部により発電されるダイナモ等の形状、形式(ハブダイナモ、タイヤ側面への圧接によるダナモ等)については適宜の発電装置が採用され得る。また、電力供給形態についても、発電電力の直接供給の他、電池や二次蓄電池からの電力供給にも適用できる。電力が提供される電装品の種類(前照灯、尾灯、方向指示器、ブザー、識別灯、サイクルコンピュータ、制御器等適宜のものが採用され得る)、その配設部位(実施例の、バスケットステー、キャリアステー、ランプブラケットの他、フレーム自体や泥除け等適宜のものに配設可能である)、1線式導線の配線形態(ホーク、バスケットステー、キャリアステー、ランプブラケットの他、適宜のフレームに添設、巻付けあるいは貫通等適宜配線可能である)、戻り導線を構成する第1中間部材と第2中間部材との間の面接触部を構成する無塗装部分の形成部位(実施例の、バスケットブラケットとバスケットステーとの間、フロントキャリアステーおよびランプブラケットとフロントホークとの間の他、ヘッドチューブとフロントホークとの間や電装品取付ブラケットと例えばハンドルバーとの間等適宜の部品間での通電必要部位に形成することができる)、メッキを施した(場合によってはメッキを施さなくてもよい)無塗装部分の形成形態(塗装前のマスキングの他、塗装後に研磨して塗膜を剥離すること等を妨げない)、車輪ハブ軸に装着されたハブダイナモに対する戻り導線側の通電確保手段(実施例の、歯付き座金を介したものの他、各部品間への接続ニップルの配設等も採用し得る)等については適宜採用できる。また、実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の自転車用電装品の通電構造は、好適には、通常の自転車のハブダイナモとランプとの間の1線式電力供給方式に適用されるが、運搬車両や自動二輪車等にも適用が可能であり、電装品についてもランプのみならず各種の搭載電装品の電力供給に適用できる。電力供給についても、ハブダイナモからに限らず、タイヤ側面への圧接発電機によるものや電池あるいは二次蓄電池からの電力供給にも適用できる。
【符号の説明】
【0026】
1 バスケットブラケット(第1中間部材)
2 バスケットステー(第2中間部材)
3 ランプ取付孔
4 接触面(凹部)
5 メッキ部(無塗装部)
6 塗装部
7 マスキング
8 水平部
9 脚部
10 ハブ軸取付孔