特許第6138610号(P6138610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138610
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/26 20060101AFI20170522BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   H01L21/26 Q
   H01L21/26 J
   H01L21/68 N
【請求項の数】9
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-144577(P2013-144577)
(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公開番号】特開2015-18909(P2015-18909A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】横内 健一
【審査官】 桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−231662(JP,A)
【文献】 特開平09−017742(JP,A)
【文献】 特開2008−117892(JP,A)
【文献】 特開2012−199472(JP,A)
【文献】 特開2012−043931(JP,A)
【文献】 特開昭60−173852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/26
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
基板を収容するチャンバーと、
第1面に複数の支持ピンが立設され、前記チャンバー内にて基板を前記複数の支持ピンで支持する石英の平板状のサセプターと、
前記サセプターに支持された基板に前記サセプターを透過して光を照射する光照射部と、
前記サセプターの側方に設けられた補助照射部と、
を備え、
前記補助照射部から出射された光を前記支持ピンに向けて反射する反射部を前記サセプターの第2面に設け
前記反射部は、前記サセプターの第2面に形設された凹部であり、
前記反射部は、前記複数の支持ピンのそれぞれと同一形状を有することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
基板を収容するチャンバーと、
第1面に複数の支持ピンが立設され、前記チャンバー内にて基板を前記複数の支持ピンで支持する石英の平板状のサセプターと、
前記サセプターに支持された基板に前記サセプターを透過して光を照射する光照射部と、
前記サセプターの側方に設けられた補助照射部と、
を備え、
前記補助照射部から出射された光を前記支持ピンに向けて反射する反射部を前記サセプターの第2面に設け、
前記反射部は、前記サセプターの第2面に形設された凹部であり、
前記反射部は、前記複数の支持ピンのそれぞれの中心軸を中心として線対称となる形状を有することを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】
請求項記載の熱処理装置において、
前記反射部は、円錐形状の反射面を有することを特徴とする熱処理装置。
【請求項4】
請求項記載の熱処理装置において、
前記反射部は、凸面形状の反射面を有することを特徴とする熱処理装置。
【請求項5】
請求項記載の熱処理装置において、
前記反射部は、凹面形状の反射面を有することを特徴とする熱処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれかに記載の熱処理装置において、
前記補助照射部は、レーザー光を出射するレーザー光源を有することを特徴とする熱処理装置。
【請求項7】
請求項記載の熱処理装置において、
前記レーザー光源は、前記サセプターの第1面および第2面と平行にレーザー光を出射することを特徴とする熱処理装置。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれかに記載の熱処理装置において、
前記補助照射部は、ハロゲンランプを有することを特徴とする熱処理装置。
【請求項9】
請求項記載の熱処理装置において、
前記ハロゲンランプは、前記サセプターの周囲を囲繞するように環状に設けられることを特徴とする熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハー等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、不純物導入は半導体ウェハー内にpn接合を形成するための必須の工程である。現在、不純物導入は、イオン打ち込み法とその後のアニール法によってなされるのが一般的である。イオン打ち込み法は、ボロン(B)、ヒ素(As)、リン(P)といった不純物の元素をイオン化させて高加速電圧で半導体ウェハーに衝突させて物理的に不純物注入を行う技術である。注入された不純物はアニール処理によって活性化される。この際に、アニール時間が数秒程度以上であると、打ち込まれた不純物が熱によって深く拡散し、その結果接合深さが要求よりも深くなり過ぎて良好なデバイス形成に支障が生じるおそれがある。
【0003】
そこで、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するアニール技術として、近年フラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、不純物が注入された半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
【0004】
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。このため、キセノンフラッシュランプによる極短時間の昇温であれば、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
【0005】
このようなキセノンフラッシュランプを使用した熱処理装置として、特許文献1には、石英製のサセプターの上面に複数のバンプ(支持ピン)を形成し、それらバンプによって点接触で支持した半導体ウェハーにフラッシュ加熱を行う技術が開示されている。特許文献1に開示の装置では、サセプター上に載置した半導体ウェハーの下面からハロゲンランプが光照射を行って予備加熱した後、ウェハー表面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射してフラッシュ加熱を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−164451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されるように、複数のバンプによって点接触で半導体ウェハーを支持すると、その接触箇所にて半導体ウェハーとバンプとの間に熱伝導が生じる。ハロゲンランプからの光照射によって予備加熱を行うときには、石英がほとんど光を吸収しないため、半導体ウェハーが石英のサセプターよりも高温となり、半導体ウェハーからバンプへの熱の移動が発生する。その結果、半導体ウェハー面内の複数のバンプとの接触箇所近傍において他の領域よりも相対的に温度が低下するという問題がある。ハロゲンランプによる予備加熱の段階で半導体ウェハーの面内温度分布が不均一になると、続くフラッシュ光照射時にもその不均一な温度分布が解消されずに最高到達温度も不均一になるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、光照射時の基板面内の温度分布を均一にすることができる熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、基板を収容するチャンバーと、第1面に複数の支持ピンが立設され、前記チャンバー内にて基板を前記複数の支持ピンで支持する石英の平板状のサセプターと、前記サセプターに支持された基板に前記サセプターを透過して光を照射する光照射部と、前記サセプターの側方に設けられた補助照射部と、を備え、前記補助照射部から出射された光を前記支持ピンに向けて反射する反射部を前記サセプターの第2面に設け、前記反射部は、前記サセプターの第2面に形設された凹部であり、前記反射部は、前記複数の支持ピンのそれぞれと同一形状を有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の発明は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、基板を収容するチャンバーと、第1面に複数の支持ピンが立設され、前記チャンバー内にて基板を前記複数の支持ピンで支持する石英の平板状のサセプターと、前記サセプターに支持された基板に前記サセプターを透過して光を照射する光照射部と、前記サセプターの側方に設けられた補助照射部と、を備え、前記補助照射部から出射された光を前記支持ピンに向けて反射する反射部を前記サセプターの第2面に設け、前記反射部は、前記サセプターの第2面に形設された凹部であり、前記反射部は、前記複数の支持ピンのそれぞれの中心軸を中心として線対称となる形状を有することを特徴とする。
【0014】
また、請求項の発明は、請求項の発明に係る熱処理装置において、前記反射部は、円錐形状の反射面を有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項の発明は、請求項の発明に係る熱処理装置において、前記反射部は、凸面形状の反射面を有することを特徴とする。
【0016】
また、請求項の発明は、請求項の発明に係る熱処理装置において、前記反射部は、凹面形状の反射面を有することを特徴とする。
【0017】
また、請求項の発明は、請求項1から請求項のいずれかの発明に係る熱処理装置において、前記補助照射部は、レーザー光を出射するレーザー光源を有することを特徴とする。
【0018】
また、請求項の発明は、請求項の発明に係る熱処理装置において、前記レーザー光源は、前記サセプターの第1面および第2面と平行にレーザー光を出射することを特徴とする。
【0019】
また、請求項の発明は、請求項1から請求項のいずれかの発明に係る熱処理装置において、前記補助照射部は、ハロゲンランプを有することを特徴とする。
【0020】
また、請求項の発明は、請求項の発明に係る熱処理装置において、前記ハロゲンランプは、前記サセプターの周囲を囲繞するように環状に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、補助照射部から出射された光を支持ピンに向けて反射する反射部をサセプターの第2面に設けるため、光照射部からの光照射時に温度低下が生じやすい支持ピンと基板との接触箇所近傍を補助的に加熱して温度低下を抑制し、基板面内の温度分布を均一にすることができる。
【0022】
特に、請求項の発明によれば、反射部が複数の支持ピンのそれぞれと同一形状を有するため、サセプターの全面にわたって厚さが一定となって厚さ方向の熱容量が均一となり、光照射時の基板面内の温度分布をより均一にすることができる。
【0023】
特に、請求項の発明によれば、反射部が複数の支持ピンのそれぞれの中心軸を中心として線対称となる形状を有するため、補助照射部から出射された光が反射部の周囲のいずれの方向から入射したとしても、その光を支持ピンに向けて導くことができる。
【0024】
特に、請求項の発明によれば、反射部が凸面形状の反射面を有するため、補助照射部から出射された光を反射して拡がるように支持ピンに導くことができ、支持ピンと基板との接触箇所近傍の広い範囲を加熱することができる。
【0025】
特に、請求項の発明によれば、反射部が凹面形状の反射面を有するため、補助照射部から出射された光を反射して集束するように支持ピンに導くことができ、支持ピンと基板との接触箇所近傍の狭い範囲を集中的に加熱することができる。
【0026】
特に、請求項の発明によれば、レーザー光源がサセプターの第1面および第2面と平行にレーザー光を出射するため、サセプターの位置が多少ずれたとしてもサセプターと平行にレーザー光が進行することとなり、基板の不要な箇所を照射して加熱するのを防止することができる。

【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る熱処理装置の構成を示す縦断面図である。
図2】保持部の全体外観を示す斜視図である。
図3】保持部を上面から見た平面図である。
図4】半導体ウェハーを保持したサセプターの周縁部近傍を示す図である。
図5】反射部をサセプターの底面側から見た図である。
図6】移載機構の平面図である。
図7】移載機構の側面図である。
図8】複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
図9】第1実施形態のレーザー光源から出射されたレーザー光の光路を示す図である。
図10】第2実施形態の反射部を示す図である。
図11】第3実施形態の反射部を示す図である。
図12】第4実施形態の反射部を示す図である。
図13】第5実施形態の反射部を示す図である。
図14】第6実施形態の反射部を示す図である。
図15】第7実施形態の反射部および支持ピンを示す図である。
図16】補助照射部としてハロゲンランプを設けた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0029】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。本実施形態の熱処理装置1は、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである。熱処理装置1に搬入される前の半導体ウェハーWには不純物が注入されており、熱処理装置1による加熱処理によって注入された不純物の活性化処理が実行される。なお、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0030】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。さらに、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0031】
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0032】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0033】
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。
【0034】
チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。また、反射リング68,69の内周面は電解ニッケルメッキによって鏡面とされている。
【0035】
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0036】
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガス(本実施形態では窒素ガス(N))を供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83はガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、ガス供給源85から緩衝空間82に窒素ガスが送給される。緩衝空間82に流入した窒素ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。なお、処理ガスは窒素ガスに限定されるものではなく、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)などの不活性ガス、または、酸素(O)、水素(H)、塩素(Cl)、塩化水素(HCl)、オゾン(O)、アンモニア(NH)などの反応性ガスであっても良い。
【0037】
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。また、ガス供給源85および排気部190は、熱処理装置1に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置1が設置される工場のユーティリティであっても良い。
【0038】
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気部190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介してチャンバー6内の気体が排気される。
【0039】
図2は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。また、図3は、保持部7を上面から見た平面図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプター74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプター74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
【0040】
基台リング71は円環形状の石英部材である。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー6の壁面に支持されることとなる(図1参照)。円環形状を有する基台リング71の上面に、その周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。なお、基台リング71の形状は、円環形状から一部が欠落した円弧状であっても良い。
【0041】
平板状のサセプター74は、基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。サセプター74は、石英にて形成された円形の保持プレートであり、処理対象となる半導体ウェハーWを載置して保持する。サセプター74の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、サセプター74は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。また、サセプター74の厚さは適宜のものとすることができるが、例えば2.5mmである。
【0042】
サセプター74の上面(第1面)には、複数個の支持ピン75が立設されている。本実施形態においては、円形のサセプター74の外周円と同心円の周上に沿って60°毎に計6本の支持ピン75が立設されている。6本の支持ピン75を配置した円の径(対向する支持ピン75間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さい。それぞれの支持ピン75は石英にて形成されている。複数の支持ピン75は、例えばサセプター74の上面に穿設された凹部に嵌着して立設すれば良い。
【0043】
また、サセプター74の上面には、複数個(本実施形態では5個)のガイドピン76が立設されている。5個のガイドピン76もサセプター74の外周円と同心円の周上に沿って設けられている。但し、5個のガイドピン76を配置した円の径は半導体ウェハーWの径よりも若干大きい。各ガイドピン76も石英にて形成されている。さらに、サセプター74には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0044】
基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプター74の下面周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプター74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71がチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー6に装着される。保持部7がチャンバー6に装着された状態においては、サセプター74は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。
【0045】
チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、チャンバー6に装着された保持部7のサセプター74の上に水平姿勢にて載置されて支持される。半導体ウェハーWは、サセプター74の上面に立設された6本の支持ピン75によって点接触にて支持されてサセプター74に保持される。すなわち、半導体ウェハーWは6本の支持ピン75によってサセプター74の上面から所定の間隔を隔てて支持されることとなる。また、支持ピン75の高さよりもガイドピン76の高さの方が高い。従って、6本の支持ピン75によって支持された半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれはガイドピン76によって防止される。
【0046】
図4は、半導体ウェハーWを保持したサセプター74の周縁部近傍を示す図である。同図に示すように、サセプター74の底面(第2面)には反射部77が設けられている。図5は、反射部77をサセプター74の底面側から見た図である。第1実施形態の反射部77は、サセプター74の底面に形設された凹部である。図4に示すように、その凹部の断面形状(サセプター74の径方向に沿って切断した断面)は直角三角形である。このような形状の反射部77が6本の支持ピン75のそれぞれに対応して設けられている。すなわち、第1実施形態では6本の支持ピン75に対応して6個の反射部77が設けられている。図5に示すように、サセプター74の上面に立設された支持ピン75の位置の反対面側に反射部77が形設されている。
【0047】
また、図3から図5に示すように、サセプター74の側方にはレーザー光源21が設置されている。第1実施形態においては、6本の支持ピン75および6個の反射部77に対向するように6個のレーザー光源21が設けられている。6個のレーザー光源21はチャンバー6の凹部62に設置すれば良い。
【0048】
レーザー光源21は、サセプター74を構成する石英が透過する波長域(4μm以下)、かつ、シリコンの半導体ウェハーWが吸収する波長域(1.1μm以下)のレーザー光を出射する。すなわち、レーザー光源21は、波長1.1μm以下のレーザー光を出射する。また、レーザー光源21は、サセプター74の主面(上面および底面)と平行に、対応する反射部77に向けてレーザー光を出射する。レーザー光源21から出射されたレーザー光は反射部77によって反射されて支持ピン75へと向かうのであるが、この作用についてはさらに後述する。
【0049】
図6は、移載機構10の平面図である。また、図7は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(図6の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(図6の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0050】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプター74に穿設された貫通孔79(図2,3参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプター74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0051】
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0052】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0053】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0054】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0055】
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4の内部には複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLが内蔵されている。複数のハロゲンランプHLはチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行う。図8は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。本実施形態では、上下2段に各20本ずつのハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0056】
また、図8に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0057】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段の各ハロゲンランプHLの長手方向と下段の各ハロゲンランプHLの長手方向とが直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0058】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
【0059】
また、制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
【0060】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。さらに、熱処理装置1には、サセプター74に保持された半導体ウェハーWの温度を測定する温度センサー(放射温度計および/または接触式温時計)が設けられている。
【0061】
次に、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順について説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWはイオン注入法により不純物(イオン)が添加された半導体基板である。その不純物の活性化が熱処理装置1によるフラッシュ光照射加熱処理(アニール)により実行される。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0062】
まず、給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89,192が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
【0063】
また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からもチャンバー6内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。なお、熱処理装置1における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は処理工程に応じて適宜変更される。
【0064】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介してイオン注入後の半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプター74の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12はサセプター74の支持ピン75の上端よりも上方にまで上昇する。
【0065】
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプター74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。
【0066】
半導体ウェハーWは、サセプター74の上面に立設された6本の支持ピン75によって点接触にて支持されてサセプター74に保持される。半導体ウェハーWは、その中心がサセプター74の中心軸と一致するように(つまり、サセプター74の上面の中央に)、6本の支持ピン75によって支持される。支持ピン75によって支持された半導体ウェハーWの周囲は5本のガイドピン76によって取り囲まれる。また、半導体ウェハーWは、パターン形成がなされて不純物が注入された表面を上面としてサセプター74に保持される。複数の支持ピン75によって支持された半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)とサセプター74の上面との間には所定の間隔が形成され、半導体ウェハーWはサセプター74の上面と平行に支持される。サセプター74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
【0067】
半導体ウェハーWが保持部7のサセプター74によって水平姿勢にて下方より支持された後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプター74を透過して半導体ウェハーWの裏面から照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
【0068】
ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が図示を省略する温度センサーによって測定されている。測定された半導体ウェハーWの温度は当該温度センサーから制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視する。予備加熱温度T1は、半導体ウェハーWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、200℃ないし800℃程度、好ましくは350℃ないし600℃程度とされる(本実施の形態では600℃)。
【0069】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、温度センサーによって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を制御して半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に所定時間維持している。
【0070】
ところで、上述の如く、ハロゲンランプHLによる予備加熱は、半導体ウェハーWを6本の支持ピン75によって点接触で支持した状態で行われる。支持ピン75を含む石英のサセプター74は、ハロゲンランプHLから放射された光をほとんど吸収せずに透過する。このため、予備加熱時には、半導体ウェハーWがハロゲンランプHLからの光を吸収して昇温する一方で支持ピン75を含むサセプター74はあまり昇温せず、相対的に半導体ウェハーWよりも低温となる。よって、半導体ウェハーWから直接に接触する支持ピン75への熱伝導が生じ、6本の支持ピン75による接触箇所近傍のウェハー温度が他の領域よりも相対的に低下することとなる。その結果、半導体ウェハーWの面内温度分布が不均一となる傾向が生じる。
【0071】
このため、第1実施形態においては、サセプター74の側方に補助照射部としてのレーザー光源21を設けるとともに、サセプター74の底面に反射部77を設けている。図9は、第1実施形態のレーザー光源21から出射されたレーザー光の光路を示す図である。本実施形態においては、6本の支持ピン75に対応してサセプター74の底面に6個の反射部77が設けられている。そして、6個の反射部77に対向するように6個のレーザー光源21が設けられている。各レーザー光源21は、対応する反射部77に向けてサセプター74の上面および底面と平行にレーザー光を出射する。レーザー光源21が出射するレーザー光の波長はシリコンの吸収波長域である1.1μm以下であり、その光線の径はサセプター74の厚さよりも小さい。
【0072】
レーザー光源21から出射されたレーザー光は、サセプター74の端面から入射してサセプター74の内部を上面および底面と平行に進み、反射部77の反射面77aに到達する。このとき、レーザー光は石英から空気への臨界角(約43°〜44°)よりも大きな入射角にて反射面77aに入射するため、反射面77aによって全反射される。そして、反射面77aで全反射されたレーザー光は支持ピン75へと向かい、半導体ウェハーWの支持ピン75との接触箇所近傍に到達する。換言すれば、反射部77の反射面77aは、サセプター74の上面および底面と平行に進行して入射する光の入射角が臨界角よりも大きくなり、かつ、その光が反射して支持ピン75へと向かうような位置および角度(水平面とのなす角度)に形設される。
【0073】
レーザー光源21が出射するレーザー光の波長はシリコンの半導体ウェハーWが吸収する1.1μm以下である。従って、半導体ウェハーWの支持ピン75との接触箇所近傍においてはレーザー光が吸収されて昇温する。その結果、予備加熱時に相対的な温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの支持ピン75との接触箇所近傍を補助的に加熱して温度低下を抑制し、当該接触箇所近傍と周辺領域との温度差を最小にすることができる。
【0074】
このようなレーザー光照射による支持ピン75との接触箇所近傍の補助的な加熱が6本の支持ピン75のそれぞれについて行われる。これにより、6本の支持ピン75と半導体ウェハーWとの接触箇所近傍が個別に加熱されて昇温し、それらの温度低下を防止して半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にすることができる。
【0075】
ハロゲンランプHLからの光照射によって半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点にてフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLが半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
【0076】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度T2まで上昇し、半導体ウェハーWに注入された不純物が活性化された後、表面温度が急速に下降する。このように、熱処理装置1では、半導体ウェハーWの表面温度を極めて短時間で昇降することができるため、半導体ウェハーWに注入された不純物の熱による拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。なお、不純物の活性化に必要な時間はその熱拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし100ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であっても活性化は完了する。
【0077】
第1実施形態では、レーザー光源21から出射されたレーザー光を反射部77で全反射させて支持ピン75に向けて導くことにより、支持ピン75と半導体ウェハーWとの接触箇所近傍における温度低下を抑制して予備加熱段階での半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にしている。その結果、フラッシュ光照射時における半導体ウェハーW表面の面内温度分布も均一にすることができる。
【0078】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度も温度センサーによって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプター74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプター74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットにより搬出され、熱処理装置1における半導体ウェハーWの加熱処理が完了する。
【0079】
第1実施形態においては、サセプター74の側方にレーザー光源21を設けるとともに、サセプター74の底面に凹部の反射部77を設けている。そして、レーザー光源21から出射されたレーザー光を反射部77での全反射によって支持ピン75に導いている。これにより、温度低下が生じやすい支持ピン75と半導体ウェハーWとの接触箇所近傍を補助的に加熱して温度低下を抑制し、予備加熱時における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にすることができる。その結果、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーW表面の面内温度分布も均一にすることができる。
【0080】
支持ピン75と半導体ウェハーWとの接触箇所近傍にレーザー光を照射するだけであれば、反射部77を設けることなく、レーザー光源21から直接に当該接触箇所近傍に向けてレーザー光を出射することも考えられる。しかし、このようにすると、レーザー光源21から半導体ウェハーWに向けて所定の角度にてレーザー光が出射することとなり、少しでもサセプター74の位置がずれた場合には支持ピン75と接触箇所以外の領域にレーザー光が到達して加熱され、結果として温度分布の不均一がさらに大きくなるおそれがある。第1実施形態においては、レーザー光源21からサセプター74の上面および底面と平行(つまり、サセプター74に支持された半導体ウェハーWと平行)にレーザー光が出射され、それを反射部77によって支持ピン75に導くようにしている。このため、サセプター74の位置が多少ずれたとしても、レーザー光は半導体ウェハーWと平行な面内(第1実施形態であればサセプター74の内部)を進行することとなり、半導体ウェハーWの不要な箇所に到達して加熱するのを防止することができる。
【0081】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の熱処理装置の全体構成は第1実施形態と概ね同様である。また、第2実施形態の熱処理装置における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである。第2実施形態が第1実施形態と相違するのはサセプター74に形設する反射部の構造である。
【0082】
図10は、第2実施形態の反射部177を示す図である。第1実施形態の反射部77がサセプター74の底面に形設された凹部であったのに対して、第2実施形態の反射部177はサセプター74の底面に突設された石英の凸部である。その凸部の断面形状は直角三角形であり、第1実施形態の反射部77の断面形状と同一である。このような形状の反射部177が6本の支持ピン75のそれぞれに対応して設けられている。
【0083】
また、第1実施形態と同様に、サセプター74の側方には、6本の支持ピン75および6個の反射部177に対向するように6個のレーザー光源21が設置されている。レーザー光源21は、石英が透過し、かつ、シリコンが吸収する波長域(1.1μm以下)のレーザー光を出射する。
【0084】
第2実施形態においては、6個のレーザー光源21のそれぞれが対応する反射部177に向けてサセプター74の上面および底面と平行にレーザー光を出射する。レーザー光源21から出射されたレーザー光は、反射部177に入射して反射面177aに到達する。このとき、レーザー光は石英から空気への臨界角よりも大きな入射角にて反射面177aに入射するため、反射面177aによって全反射される。そして、反射面177aで全反射されたレーザー光は支持ピン75へと向かい、半導体ウェハーWの支持ピン75との接触箇所近傍に到達する。換言すれば、反射部177の反射面177aは、サセプター74の上面および底面と平行に進行して入射する光の入射角が臨界角よりも大きくなり、かつ、その光が反射して支持ピン75へと向かうような位置および角度(水平面とのなす角度)に形設される。
【0085】
半導体ウェハーWの支持ピン75との接触箇所近傍においてはレーザー光が吸収されて昇温する。このようなレーザー光照射による支持ピン75との接触箇所近傍の補助的な加熱が6本の支持ピン75のそれぞれについて行われる。これにより、6本の支持ピン75と半導体ウェハーWとの接触箇所近傍が個別に加熱されて昇温し、それらの温度低下を防止して予備加熱時における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にすることができる。その結果、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーW表面の面内温度分布も均一にすることができる。
【0086】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態の熱処理装置の全体構成は第1実施形態と概ね同様である。また、第3実施形態の熱処理装置における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである。第3実施形態が第1実施形態と相違するのはサセプター74に形設する反射部の構造である。
【0087】
図11は、第3実施形態の反射部277を示す図である。第3実施形態の反射部277はサセプター74の底面に突設された石英の凸部である。反射部277は、支持ピン75の中心軸を中心として線対称となる形状を有している。具体的には、第3実施形態の反射部277は円錐形状の反射面277aを有する。このような線対称形状の反射部277が6本の支持ピン75のそれぞれに対応して設けられている。
【0088】
また、第1実施形態と同様に、サセプター74の側方には、6本の支持ピン75および6個の反射部277に対向するように6個のレーザー光源21が設置されている。レーザー光源21は、石英が透過し、かつ、シリコンが吸収する波長域(1.1μm以下)のレーザー光を出射する。
【0089】
第3実施形態においては、6個のレーザー光源21のそれぞれが対応する反射部277に向けてサセプター74の上面および底面と平行にレーザー光を出射する。レーザー光源21から出射されたレーザー光は、反射部277に入射して反射面277aに到達する。このとき、レーザー光は石英から空気への臨界角よりも大きな入射角にて反射面277aに入射するため、反射面277aによって全反射される。そして、反射面277aで全反射されたレーザー光は支持ピン75へと向かい、半導体ウェハーWの支持ピン75との接触箇所近傍に到達する。
【0090】
半導体ウェハーWの支持ピン75との接触箇所近傍においてはレーザー光が吸収されて昇温する。このようなレーザー光照射による支持ピン75との接触箇所近傍の補助的な加熱が6本の支持ピン75のそれぞれについて行われる。これにより、6本の支持ピン75と半導体ウェハーWとの接触箇所近傍が個別に加熱されて昇温し、それらの温度低下を防止して予備加熱時における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にすることができる。その結果、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーW表面の面内温度分布も均一にすることができる。
【0091】
また、第3実施形態においては、反射部277が支持ピン75の中心軸を中心として線対称となる形状を有している。従って、図11に点線にて示すように、反射部277の周囲のいずれの方向(但し、サセプター74の上面および底面と平行)からレーザー光が入射しても、そのレーザー光は反射面277aで反射されて支持ピン75へと導かれる。このため、レーザー光源21によるレーザー光の入射方向の自由度が高くなり、レーザー光源21の設置位置にバリエーションを持たせることができる。さらに、サセプター74の位置またはレーザー光源21からのレーザー光の光軸がずれ、そのレーザー光が対応するのとは異なる反射部277に入射したとしても支持ピン75に導かれることとなる。
【0092】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態の熱処理装置の全体構成は第1実施形態と概ね同様である。また、第4実施形態の熱処理装置における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである。第4実施形態が第1実施形態と相違するのはサセプター74に形設する反射部の構造である。
【0093】
図12は、第4実施形態の反射部377を示す図である。第4実施形態の反射部377はサセプター74の底面に突設された石英の凸部である。反射部377は、支持ピン75の中心軸を中心として線対称となる形状を有している。具体的には、第4実施形態の反射部377は凸面形状の反射面377aを有する。ここでの凸面形状とは、支持ピン75の側に向かって凸となる曲面の形状である。このような線対称形状の反射部377が6本の支持ピン75のそれぞれに対応して設けられている。
【0094】
また、第1実施形態と同様に、サセプター74の側方には、6本の支持ピン75および6個の反射部377に対向するように6個のレーザー光源21が設置されている。レーザー光源21は、石英が透過し、かつ、シリコンが吸収する波長域(1.1μm以下)のレーザー光を出射する。
【0095】
第4実施形態においては、6個のレーザー光源21のそれぞれが対応する反射部377に向けてサセプター74の上面および底面と平行にレーザー光を出射する。レーザー光源21から出射されたレーザー光は、反射部377に入射して反射面377aに到達する。このとき、レーザー光は石英から空気への臨界角よりも大きな入射角にて反射面377aに入射するため、反射面377aによって全反射される。そして、反射面377aで全反射されたレーザー光は支持ピン75へと向かい、半導体ウェハーWの支持ピン75との接触箇所近傍に到達する。
【0096】
半導体ウェハーWの支持ピン75との接触箇所近傍においてはレーザー光が吸収されて昇温する。このようなレーザー光照射による支持ピン75との接触箇所近傍の補助的な加熱が6本の支持ピン75のそれぞれについて行われる。これにより、6本の支持ピン75と半導体ウェハーWとの接触箇所近傍が個別に加熱されて昇温し、それらの温度低下を防止して予備加熱時における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にすることができる。その結果、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーW表面の面内温度分布も均一にすることができる。
【0097】
また、第3実施形態と同様に、反射部377が支持ピン75の中心軸を中心として線対称となる形状を有している。従って、反射部377の周囲のいずれの方向からレーザー光が入射しても、そのレーザー光は反射面377aで反射されて支持ピン75へと導かれる。このため、レーザー光源21によるレーザー光の入射方向の自由度が高くなる。
【0098】
さらに、第4実施形態においては、反射部377が凸面形状の反射面377aを有しているため、所定の幅を有するレーザー光が反射面377aで反射されて拡がるように支持ピン75に導かれる。このため、第1実施形態から第3実施形態に比較して接触箇所近傍の広い範囲を加熱することができる。すなわち、半導体ウェハーWの支持ピン75との接触箇所近傍の比較的広い範囲にわたって温度低下が生じる場合には、第4実施形態のような凸面形状の反射面377aを有する反射部377が好適である。
【0099】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態の熱処理装置の全体構成は第1実施形態と概ね同様である。また、第5実施形態の熱処理装置における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである。第5実施形態が第1実施形態と相違するのはサセプター74に形設する反射部の構造である。
【0100】
図13は、第5実施形態の反射部477を示す図である。第5実施形態の反射部477はサセプター74の底面に突設された石英の凸部である。反射部477は、支持ピン75の中心軸を中心として線対称となる形状を有している。具体的には、第5実施形態の反射部477は凹面形状の反射面477aを有する。ここでの凹面形状とは、支持ピン75の側から見て凹となる曲面の形状である。このような線対称形状の反射部477が6本の支持ピン75のそれぞれに対応して設けられている。
【0101】
また、第1実施形態と同様に、サセプター74の側方には、6本の支持ピン75および6個の反射部477に対向するように6個のレーザー光源21が設置されている。レーザー光源21は、石英が透過し、かつ、シリコンが吸収する波長域(1.1μm以下)のレーザー光を出射する。
【0102】
第5実施形態においては、6個のレーザー光源21のそれぞれが対応する反射部477に向けてサセプター74の上面および底面と平行にレーザー光を出射する。レーザー光源21から出射されたレーザー光は、反射部477に入射して反射面477aに到達する。このとき、レーザー光は石英から空気への臨界角よりも大きな入射角にて反射面477aに入射するため、反射面477aによって全反射される。そして、反射面477aで全反射されたレーザー光は支持ピン75へと向かい、半導体ウェハーWの支持ピン75との接触箇所近傍に到達する。
【0103】
半導体ウェハーWの支持ピン75との接触箇所近傍においてはレーザー光が吸収されて昇温する。このようなレーザー光照射による支持ピン75との接触箇所近傍の補助的な加熱が6本の支持ピン75のそれぞれについて行われる。これにより、6本の支持ピン75と半導体ウェハーWとの接触箇所近傍が個別に加熱されて昇温し、それらの温度低下を防止して予備加熱時における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にすることができる。その結果、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーW表面の面内温度分布も均一にすることができる。
【0104】
また、第3実施形態と同様に、反射部477が支持ピン75の中心軸を中心として線対称となる形状を有している。従って、反射部477の周囲のいずれの方向からレーザー光が入射しても、そのレーザー光は反射面477aで反射されて支持ピン75へと導かれる。このため、レーザー光源21によるレーザー光の入射方向の自由度が高くなる。
【0105】
さらに、第5実施形態においては、反射部477が凹面形状の反射面477aを有しているため、所定の幅を有するレーザー光が反射面477aで反射されて集束するように支持ピン75に導かれる。このため、第1実施形態から第3実施形態に比較して接触箇所近傍の狭い範囲を集中的に加熱することができる。すなわち、半導体ウェハーWの支持ピン75との接触箇所近傍の比較的狭い範囲にて周辺領域に比べて大きな温度低下が生じる場合には、第5実施形態のような凹面形状の反射面477aを有する反射部477が好適である。
【0106】
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態について説明する。第6実施形態の熱処理装置の全体構成は第1実施形態と概ね同様である。また、第6実施形態の熱処理装置における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである。第6実施形態が第1実施形態と相違するのはサセプター74に形設する反射部の構造である。
【0107】
図14は、第6実施形態の反射部を示す図である。第3実施形態から第5実施形態ではサセプター74の底面に線対称形状の凸部を反射部として形設していたが、第6実施形態においてはサセプター74の底面に線対称形状の凹部を反射部として設ける。図14(a)の反射部577および図14(b)の反射部578は、いずれも支持ピン75の中心軸を中心として線対称となる形状を有している。具体的には、図14(a)の反射部577は円錐形状の反射面577aを有しており、図14(b)の反射部578は凸面形状の反射面578aを有する。すなわち、図14(a)の反射部577は第3実施形態の凸部を凹部としたものであり、図14(b)の反射部578は第4実施形態の凸部を凹部としたものであると言える。
【0108】
また、第1実施形態と同様に、サセプター74の側方には、6本の支持ピン75および6個の反射部577,578に対向するように6個のレーザー光源21が設置されている。レーザー光源21は、石英が透過し、かつ、シリコンが吸収する波長域(1.1μm以下)のレーザー光を出射する。
【0109】
第5実施形態においては、6個のレーザー光源21のそれぞれが対応する反射部577,578に向けてサセプター74の上面および底面と平行にレーザー光を出射する。レーザー光源21から出射されたレーザー光は、反射部577,578に入射して反射面577a,578aに到達する。このとき、レーザー光は臨界角よりも大きな入射角にて反射面577a,578aに入射するため、反射面577a,578aによって全反射される。そして、反射面577a,578aで全反射されたレーザー光は支持ピン75へと向かい、半導体ウェハーWの支持ピン75との接触箇所近傍に到達する。
【0110】
半導体ウェハーWの支持ピン75との接触箇所近傍においてはレーザー光が吸収されて昇温する。このようなレーザー光照射による支持ピン75との接触箇所近傍の補助的な加熱が6本の支持ピン75のそれぞれについて行われる。これにより、6本の支持ピン75と半導体ウェハーWとの接触箇所近傍が個別に加熱されて昇温し、それらの温度低下を防止して予備加熱時における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にすることができる。その結果、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーW表面の面内温度分布も均一にすることができる。
【0111】
また、図14(a)の反射部577によれば第3実施形態の反射部277と同様の効果を得ることができ、図14(b)の反射部578によれば第4実施形態の反射部377と同様の効果を得ることができる。
【0112】
<第7実施形態>
次に、本発明の第7実施形態について説明する。第7実施形態の熱処理装置の全体構成は第1実施形態と概ね同様である。また、第7実施形態の熱処理装置における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである。第7実施形態が第1実施形態と相違するのはサセプター74に設ける反射部および支持ピンの構造である。
【0113】
図15は、第7実施形態の反射部および支持ピンを示す図である。第6実施形態と同様に、サセプター74の底面には線対称形状の凹部を反射部として設けている。そして、第7実施形態においては、反射部と同じ形状の支持ピンをサセプター74の上面に立設している。すなわち、サセプター74の底面に設ける反射部の形状を上面に設ける支持ピンと同一形状としている。
【0114】
図15(a)の例では、サセプター74の底面に円錐形状の反射面677aを有する反射部677を形設している。そして、サセプター74の上面には円錐形状の支持ピン175を設けている。また、図15(b)の例では、サセプター74の底面に凸面形状の反射面678aを有する反射部678を形設している。そして、サセプター74の上面には凸面形状の支持ピン275を設けている。さらに、図15(c)の例では、サセプター74の底面に凹面形状の反射面679aを有する反射部679を形設している。そして、サセプター74の上面には凹面形状の支持ピン375を設けている。
【0115】
図15(a)〜(c)のいずれにおいても、支持ピン175,275,375と反射部677,678,679とはそれぞれ同一形状であり、大きさも同じである。支持ピン175,275,375は、例えばサセプター74の上面に6個設けられる。6個の支持ピン175,275,375のそれぞれに対応して反射部677,678,679が設けられる。反射部677,678,679は、支持ピン175,275,375の中心軸を中心として線対称となる形状を有している。すなわち、反射部677,678,679の中心軸と支持ピン175,275,375の中心軸とは一致している。
【0116】
また、第1実施形態と同様に、サセプター74の側方には6個のレーザー光源21が設置されている。レーザー光源21は、石英が透過し、かつ、シリコンが吸収する波長域(1.1μm以下)のレーザー光を出射する。
【0117】
第7実施形態においては、6個のレーザー光源21のそれぞれが対応する反射部677,678,679に向けてサセプター74の上面および底面と平行にレーザー光を出射する。レーザー光源21から出射されたレーザー光は、反射部677,678,679に入射して反射面677a,678a,679aに到達する。このとき、レーザー光は臨界角よりも大きな入射角にて反射面677a,678a,679aに入射するため、反射面677a,678a,679aによって全反射される。そして、反射面677a,678a,679aで全反射されたレーザー光は支持ピン175,275,375へと向かい、半導体ウェハーWの支持ピン175,275,375との接触箇所近傍に到達する。
【0118】
半導体ウェハーWの支持ピン175,275,375との接触箇所近傍においてはレーザー光が吸収されて昇温する。このようなレーザー光照射による支持ピン175,275,375との接触箇所近傍の補助的な加熱が6個の支持ピン175,275,375のそれぞれについて行われる。これにより、6個の支持ピン175,275,375と半導体ウェハーWとの接触箇所近傍が個別に加熱されて昇温し、それらの温度低下を防止して予備加熱時における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にすることができる。その結果、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーW表面の面内温度分布も均一にすることができる。
【0119】
また、第7実施形態においては、凹部である反射部677,678,679と同一形状の支持ピン175,275,375をサセプター74の上面に立設している。反射部677,678,679の中心軸と支持ピン175,275,375の中心軸とは一致している。このため、支持ピン175,275,375を含むサセプター74の全面にわたって厚さが一定となる。その結果、サセプター74の全面にわたって厚さ方向の熱容量が均一となり、予備加熱時における半導体ウェハーWの面内温度分布をより均一にすることができる。
【0120】
<第8実施形態>
次に、本発明の第8実施形態について説明する。第1実施形態から第7実施形態では補助照射部としてレーザー光源21を設けていたが、第8実施形態においてはレーザー光源に代えて補助照射部としてハロゲンランプ121を設ける。図16は、補助照射部としてハロゲンランプ121を設けた例を示す図である。第8実施形態のサセプター74は第1実施形態と同じものである。すなわち、第1実施形態と同様に、サセプター74の底面には凹部である反射部77が形設される。また、サセプター74の上面には支持ピン75が立設される。
【0121】
第8実施形態においては、サセプター74の側方には、円環形状のハロゲンランプ121が設置される。円環形状のハロゲンランプ121の内径はサセプター74の直径よりも大きい。よって、ハロゲンランプ121はサセプター74の周囲を囲繞するように環状に設けられる。ハロゲンランプ121は、ハロゲン加熱部4のハロゲンランプHLと同じ原理で発光する連続点灯ランプである。
【0122】
第8実施形態においては、ハロゲンランプ121が発光してサセプター74の側方から光を照射する。但し、ハロゲンランプ121はガラス管の全周から光を放射するため、サセプター74の上面および底面と平行に進行する光の他にそれ以外の方向に進行する光も放射する。ハロゲンランプ121から出射された光のうち、サセプター74の上面および底面と平行に進行する光は、第1実施形態と同様に、反射面77aで全反射されて支持ピン75へと導かれる。これにより、6本の支持ピン75と半導体ウェハーWとの接触箇所近傍が加熱されて昇温し、それらの温度低下を防止して予備加熱時における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にすることができる。その結果、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーW表面の面内温度分布も均一にすることができる。
【0123】
また、ハロゲンランプ121はサセプター74の側方にてその周囲を囲繞するように円環状に設けられるため、ハロゲンランプ121から出射された光の一部はサセプター74に支持された半導体ウェハーWの端縁部に直接に照射される。これにより、予備加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの端縁部を加熱して半導体ウェハーWの面内温度分布をより均一にすることができる。
【0124】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、第1実施形態から第7実施形態では、6本の支持ピン75および6個の反射部に対向するように6個のレーザー光源21を設けていたが、これに限定されるものではなく、チャンバー6の側壁内部の1箇所に6系統のレーザー光源を設けて6個の反射部に向けてレーザー光を出射するようにしても良い。特に、第3実施形態から第7実施形態のように、支持ピンの中心軸を中心として線対称となる形状を有する反射部を設けている場合には、反射部の周囲のいずれの方向からレーザー光が入射しても、そのレーザー光は全反射されて支持ピンへと導かれるため、レーザー光源の設置位置の自由度は高い。
【0125】
また、第8実施形態では、サセプター74の側方にハロゲンランプ121を設けていたが、補助照射部としてアークランプを設けるようにしても良い。或いは、サセプター74の側方の四方に、ハロゲン加熱部4のハロゲンランプHLと同様の棒状ランプを配置するようにしても良い。
【0126】
また、上記各実施形態では、支持ピンの本数を6本としていたが、これに限定されるものではなく、サセプター74の上面に立設する支持ピンの本数は半導体ウェハーWを支持可能な3本以上であれば良い。サセプター74の上面に立設する支持ピンの本数に応じて底面に設ける反射部の個数もそれと同数となるように設定される。
【0127】
また、上記各実施形態では、反射部の反射面に臨界角よりも大きな入射角にて光が入射するようにしていたが、これに代えて反射面に金属膜を成膜して鏡面とすることにより、入射光を反射するようにしても良い。金属膜は一般に石英よりも耐熱性に劣るものの、反射面が鏡面であれば入射角は必ずしも臨界角より大きくなくても良いため、特に処理温度が低い場合には好適である。
【0128】
また、第6実施形態において、第5実施形態の如き凹面形状の凸部を凹部としてサセプター74の底面に反射部を形成するようにしても良い(図15(c)参照)。
【0129】
また、第8実施形態において、サセプター74を第2実施形態から第7実施形態にて示したようなものとしても良い。特に、第3実施形態から第7実施形態に示したサセプター74は、支持ピンの中心軸を中心として線対称となる形状を有する反射部を設けているため、反射部の周囲のいずれの方向から入射した光をも支持ピンへと導くことができる。このため、円環状に設けられたハロゲンランプ121の全周から出射された光を効率良く反射して支持ピンへと導くことができる。
【0130】
また、上記各実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、上段および下段に複数する配置する形態であれば任意の数とすることができる。
【0131】
また、本発明に係る熱処理装置によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。また、本発明に係る技術は、金属とシリコンとの接合、或いはポリシリコンの結晶化に適用するようにしても良い。
【0132】
また、本発明に係る熱処理技術は、フラッシュランプアニール装置に限定されるものではなく、ハロゲンランプを使用した枚葉式のランプアニール装置やCVD装置などのフラッシュランプ以外の熱源の装置にも適用することができる。特に、チャンバーの下方にハロゲンランプを配置し、石英のサセプター上に複数の支持ピンで支持した半導体ウェハーの裏面から光照射を行って熱処理を行うバックサイドアニール装置に本発明に係る技術は好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0133】
1 熱処理装置
3 制御部
4 ハロゲン加熱部
5 フラッシュ加熱部
6 チャンバー
7 保持部
10 移載機構
21
65 熱処理空間
74 サセプター
75,175,275,375 支持ピン
77,177,277,377,477,577,578,677,678,679 反射部
77a,177a,277a,377a,477a,577a,578a,677a,678a,679a 反射面
121,HL ハロゲンランプ
FL フラッシュランプ
W 半導体ウェハー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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図15
図16