(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レンズ移動決定手段は、前記投射レンズから投射された前記映像を前記スクリーン上で焦点を合わせるように前記投射レンズの移動方向と移動量を決定することを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
前記レンズ移動決定手段は、前記投射レンズを前記光路に沿って前記スクリーンと互いに異なる方向に移動するように前記移動方向を決定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
前記プロジェクタは、前記スクリーン移動手段による前記スクリーンの移動が行われている間において、前記スクリーンの位置の変化に応じて前記映像を補正しつつ前記スクリーンに継続して投射することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置について具体化した一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
先ず、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUDという)1の構成について
図1を用いて説明する。
図1は本実施形態に係るHUD1の車両2への設置態様を示した図である。
【0015】
図1に示すようにHUD1は、車両2のダッシュボード3内部に設置されており、内部にプロジェクタ4やプロジェクタ4からの映像が投射されるスクリーン5を有する。そして、スクリーン5に投射された映像を、後述のようにHUD1が備えるミラーやフレネルレンズを介し、更に運転席の前方のフロントウィンドウ6に反射させて車両2の乗員7に視認させるように構成されている。尚、スクリーン5に投射される映像としては、車両2に関する情報や乗員7の運転の支援の為に用いられる各種情報がある。例えば障害物(他車両や歩行者)に対する警告、ナビゲーション装置で設定された案内経路や案内経路に基づく案内情報(右左折方向を示す矢印等)、現在車速、案内標識、地図画像、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、接続されたスマートフォンの画面、テレビ番組等がある。
【0016】
また、本実施形態のHUD1では、フロントウィンドウ6を反射して乗員7がスクリーン5に投射された映像を視認した場合に、乗員7にはフロントウィンドウ6の位置ではなく、フロントウィンドウ6の先の遠方の位置にスクリーン5に投射された映像が虚像8として視認されるように構成される。尚、乗員7が視認できる虚像8はスクリーン5に投射された映像であるが、ミラーを介するので上下方向は反転する。また、フレネルレンズを介することによってサイズも変更する。
【0017】
ここで、虚像8を生成する位置、より具体的には乗員7から虚像8までの距離(以下、生成距離という)Lについては、HUD1が備えるミラーやフレネルレンズの形状や位置、光路に対するスクリーン5の位置等によって適宜設定することが可能である。特に、本実施形態では後述のようにスクリーン5の位置を光路に沿って前後方向に移動可能に構成する。その結果、生成距離Lを適宜変更することが可能となる。例えば生成距離Lを2.5m〜20mの間で変更することが可能である。
【0018】
次に、
図2を用いてHUD1のより具体的な構成について説明する。
図2は、本実施形態に係るHUD1の内部構成を示した図である。
【0019】
図2に示すようにHUD1は、プロジェクタ4と、スクリーン5と、反射ミラー10と、ミラー11と、フレネルレンズ12と、制御回路部13と、CANインターフェース14とから基本的に構成されている。
【0020】
ここで、プロジェクタ4は光源としてLED光源を用いた映像投射装置であり、例えばDLPプロジェクタとする。尚、プロジェクタ4としては液晶プロジェクタやLCOSプロジェクタを用いても良い。また、プロジェクタ4は映像を投射する為の投射レンズ15を備えているが、本実施形態では投射レンズ15は第1投射レンズ16と第2投射レンズ17の2つの投射レンズから構成され、それぞれ異なる映像を投射可能に構成する。ここで、
図3はプロジェクタ4が備える第1投射レンズ16及び第2投射レンズ17を示した図である。
【0021】
図3に示すように第1投射レンズ16及び第2投射レンズ17は、一の円形状のレンズを上下方向に分割した分割形状を有する。更に、下方にある第2投射レンズ17は、光路に沿って前後方向に移動可能に構成されている。一方、第1投射レンズ16の位置は固定とする。具体的には、第2投射レンズ17の背面側にあるレンズ駆動モータ18を駆動させることによって、
図4に示すように第2投射レンズ17を光路に沿って前後方向に移動させることが可能となる。特に、本実施形態では、後述のようにスクリーン5を光路に沿って前後方向に移動させる場合において、第2投射レンズ17から投射される映像の焦点を移動後のスクリーン5の位置に一致させる為に、第2投射レンズ17も追従して移動させる構成とする。
【0022】
また、レンズ駆動モータ18はステッピングモータからなる。そして、HUD1は、制御回路部13から送信されるパルス信号に基づいてレンズ駆動モータ18を制御し、第2投射レンズ17の位置を設定位置に対して適切に位置決めすることが可能となる。
【0023】
また、スクリーン5は、プロジェクタ4から投射された映像が投射される被投射媒体であり、例えばフレネルスクリーンや拡散型スクリーン等が用いられる。また、本実施形態ではスクリーン5は、第1スクリーン20と第2スクリーン21の2枚のスクリーンから構成される。ここで、
図5は第1スクリーン20と第2スクリーン21をそれぞれ示した図である。
【0024】
図5に示すように第1スクリーン20は、上方に映像が投射される被投射エリア22を有しており、
図6に示すようにプロジェクタ4の第1投射レンズ16から投射された映像が表示される。一方、第2スクリーン21は、下方に映像が投射される被投射エリア23を有しており、
図6に示すようにプロジェクタ4の第2投射レンズ17から投射された映像が表示される。そして、第1スクリーン20と第2スクリーン21は、
図2及び
図6に示すように被投射エリア22、23が重ならないように、光路に沿って前後方向に所定間隔で並べて配置される。従って、本実施形態では虚像8は、第1スクリーン20に投射された映像の虚像(以下、第1虚像8Aという)と、第2スクリーン21に投射された映像の虚像(以下、第2虚像8Bという)から構成されることとなる。
【0025】
また、第2スクリーン21は、光路に沿って前後方向に移動可能に構成されている。一方、第1スクリーン20の位置は前後方向に対して固定とする。具体的には、第2スクリーン21の背面側にあるスクリーン前後駆動モータ24を駆動させることによって、
図7に示すように第1スクリーン20と第2スクリーン21との間の距離を変更し、第2スクリーン21を光路に沿って前後方向に移動させることが可能となる。その結果、第2スクリーン21に投射された映像の虚像である第2虚像8Bが生成される位置(具体的には乗員7から第2虚像8Bまでの距離である生成距離L2)を変更することが可能である。尚、生成距離L2は、ミラー11から第2スクリーン21までの距離に依存する。即ち、生成距離L2は、ミラー11から第2スクリーン21までの距離に応じて長短を変更される。例えば、ミラー11から第2スクリーン21までの距離が長くなると生成距離L2が長くなり、ミラー11から第2スクリーン21までの距離が短くなると生成距離L2が短くなる。
【0026】
例えば、第2スクリーン21をプロジェクタ4側(ミラー11までの距離が長くなる側)に移動させると、生成距離L2が長くなる(即ち、乗員7からはより遠くに第2虚像8Bが視認されるようになる)。一方、第2スクリーン21をプロジェクタ4と反対側(ミラー11までの距離が短くなる側)に移動させると、生成距離L2が短くなる(即ち、乗員7からはより近くに第2虚像8Bが視認されるようになる)。尚、第1スクリーン20の位置は前後方向に対して固定であるので、第1スクリーン20に投射された映像の虚像である第1虚像8Aが生成される位置(具体的には乗員7から第1虚像8Aまでの距離である生成距離L1)は固定である。従って、生成距離L2を変更することによって、第1虚像8Aから第2虚像8Bまでの距離(|L2−L1|)が変更されることとなる。
【0027】
従って、仮に第1スクリーン20と第2スクリーン21が光路に沿ってミラー11から同距離にある場合には、車両2の前方の同位置に第1虚像8Aと第2虚像8Bが生成されることとなるが、第1スクリーン20と第2スクリーン21がミラー11から光路に沿って異なる距離にある場合には、
図8に示すように第1虚像8Aと第2虚像8Bとがそれぞれ異なる位置に生成されることとなる。また、
図5及び
図6に示すように、第1スクリーン20の被投射エリア22は、第2スクリーン21の被投射エリア23よりも上方に位置するように各スクリーンは配置されるが、ミラー11によって映像が上下反転されるので、光路に対して交差する方向を基準にして、第2虚像8Bが第1虚像8Aの上方に生成されることとなる。
【0028】
また、本実施形態では第1スクリーン20及び第2スクリーン21を、光路に交差する方向に一体に移動可能に構成されている。具体的には、第1スクリーン20の側面にあるスクリーン上下駆動モータ25を駆動させることによって、
図9に示すように第1スクリーン20及び第2スクリーン21を一体に光路に交差する方向に移動させることが可能となる。その結果、
図10に示すように第1スクリーン20と第2スクリーン21を対象としてプロジェクタ4からの映像を投射する第1投射態様と、第1スクリーン20のみを対象としてプロジェクタ4からの映像を投射する第2投射態様との間で、スクリーン5への画像の投射態様を切り換えることが可能となる。
【0029】
そして、HUD1は、投射態様が第1投射態様にある場合には、基本的に第1投射レンズ16と第2投射レンズ17とで異なる種類の映像(例えば、第1投射レンズ16では車両の現在車速の映像、第2投射レンズ17では案内情報や警告情報の映像)をそれぞれ各スクリーンに投射する。一方、投射態様が第2投射態様にある場合には、基本的に第1投射レンズ16と第2投射レンズ17とでそれぞれ投射された映像を組み合わせた一の映像(例えば、第1投射レンズ16ではテレビ画面の下半分の映像、第2投射レンズ17ではテレビ画面の上半分の映像)を第1スクリーン20に投射する。それによって、第2投射態様では、分割線の無いより大きいサイズの映像を虚像として生成することが可能となる。尚、第2投射態様であっても第1投射レンズ16と第2投射レンズ17とで異なる種類の映像を投射する構成とすることも可能である。
【0030】
また、スクリーン前後駆動モータ24及びスクリーン上下駆動モータ25はそれぞれステッピングモータからなる。そして、HUD1は、制御回路部13から送信されるパルス信号に基づいてスクリーン前後駆動モータ24を制御し、第2スクリーン21の前後位置を設定位置に対して適切に位置決めすることが可能となる。また、HUD1は、制御回路部13から送信されるパルス信号に基づいてスクリーン上下駆動モータ25を制御し、第1スクリーン20及び第2スクリーン21の上下位置を設定位置に対して適切に位置決めすることが可能となる。
【0031】
一方、反射ミラー10は、
図2に示すようにプロジェクタ4から投射された映像を反射して光路を変更し、スクリーン5へと投射する反射板である。
【0032】
また、ミラー11は、
図2に示すようにスクリーン5からの映像光を反射させて、フロントウィンドウ6を介して、乗員7の前方に虚像8(
図1参照)を投影する投影手段である。ミラー11としては、球面凹面鏡や、非球面凹面鏡、若しくは投影映像の歪みを補正するための自由曲面鏡が用いられる。
【0033】
また、フレネルレンズ12は、
図2に示すようにスクリーン5に投射された映像を拡大して虚像8を生成する為の拡大鏡である。そして、本実施形態に係るHUD1では、スクリーン5に投射された映像を、ミラー11やフレネルレンズ12を介し、更にフロントウィンドウ6に反射させて乗員7に視認させることによって、フロントウィンドウ6の先の遠方の位置にスクリーン5に投射された映像が拡大され、虚像8として乗員に視認される(
図1参照)。
【0034】
また、制御回路部13は、HUD1の全体の制御を行う電子制御ユニットである。ここで、
図11は本実施形態に係るHUD1の構成を示したブロック図である。
【0035】
図11に示すように制御回路部13は、演算装置及び制御装置としてのCPU31、並びにCPU31が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるRAM32、制御用のプログラムのほか、後述のテーブル生成処理プログラム(
図12参照)や虚像生成処理プログラム(
図14参照)等が記録されたROM33、ROM33から読み出したプログラムや後述の位置設定テーブルを記憶するフラッシュメモリ34等の内部記憶装置を備えている。また、制御回路部13は、プロジェクタ4、レンズ駆動モータ18、スクリーン前後駆動モータ24、スクリーン上下駆動モータ25とそれぞれ接続され、プロジェクタ4や各種モータの駆動制御を行う。
【0036】
また、CAN(コントローラエリアネットワーク)インターフェース14は、車両内に設置された各種車載器や車両機器の制御装置間で多重通信を行う車載ネットワーク規格であるCANに対して、データの入出力を行うインターフェースである。そして、HUD1は、CANを介して、各種車載器や車両機器の制御装置(例えば、ナビゲーション装置48、AV装置49等)と相互通信可能に接続される。それによって、HUD1は、ナビゲーション装置48やAV装置49等の出力画面を投影可能に構成する。
【0037】
続いて、前記構成を有するHUD1においてCPU31が実行するテーブル生成処理プログラムについて
図12に基づき説明する。
図12は本実施形態に係るテーブル生成処理プログラムのフローチャートである。ここで、テーブル生成処理プログラムはHUD1の初期設定時に実行され、第2スクリーン21及び第2投射レンズ17を移動させる際に用いる位置設定テーブルを作成するプログラムである。尚、以下の
図12及び
図14にフローチャートで示されるプログラムは、HUD1が備えているRAM32やROM33に記憶されており、CPU31により実行される。
【0038】
先ず、テーブル生成処理プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU31は、乗員7から第2虚像8Bまでの距離である生成距離L2を示す係数D(n)を、初期値である2.5[m]に設定する。
【0039】
次に、S2においてCPU31は、現在のD(n)の値からD(n)+0.1[m]へと生成距離L2を変位させる為の第2スクリーン21の移動量Ds(n)を、HUD1の設計値等から算出する。尚、移動方向は光源の光路に沿ってミラー11から遠ざかる方向(光源に近づく方向)となる。
【0040】
続いて、S3においてCPU31は、現在のD(n)の値からD(n)+0.1[m]へと生成距離L2を変位させる為の第2スクリーン21の移動に必要な移動時間Ts(n)を、HUD1の設計値等から算出する。具体的には、第2スクリーン21を移動させる場合には第2スクリーン21の最大移動速度で移動させると仮定し、算出する。即ち、第2スクリーン21の最大移動速度をVsとすると、以下の式(1)により算出される。
Ts(n)=Ds(n)/Vs・・・・(1)
【0041】
その後、S4においてCPU31は、第2スクリーン21がミラー11から遠ざかる方向(光源に近づく方向)にDs(n)移動する場合において、第2投射レンズ17から投射される映像の焦点を移動後の第2スクリーン21の位置に一致させる為に必要な第2投射レンズ17の移動量Dl(n)を、HUD1の設計値等から算出する。尚、移動方向は光源の光路に沿って第2スクリーン21と逆方向、即ちミラー11に近づく方向(光源から遠ざかる方向)となる。
【0042】
次に、S5においてCPU31は、第2投射レンズ17を移動させる移動速度Vl(n)を、HUD1の設計値等から算出する。具体的には、第2スクリーン21の移動と第2投射レンズ17の移動を連動させる、即ち、第2スクリーン21と同時に第2投射レンズ17の移動を開始した場合に同時に移動を完了するように移動速度Vl(n)を算出する。具体的には、以下の式(2)により算出される。
Vl(n)=Dl(n)/Ts(n)・・・・(2)
【0043】
その後、S6においてCPU31は、現在のD(n)の値に対応させて、前記S2〜S5で算出されたDs(n)、Ts(n)、Dl(n)、Vl(n)をメモリに格納する。
【0044】
その後、S7においてnを「+1」カウントする。更に、現在のD(n)の値を0.1[m]加算する。
【0045】
次に、S8においてCPU31は、現在のカウント値nが184以上となったか否か、即ち、D(n)の値が2.5[m]を初期値として20.0[m]以上となるまで0.1m毎に上記S2〜S7の処理を実行したか否か判定される。
【0046】
そして、現在のカウント値nが184以上となったと判定された場合(S8:YES)には、当該テーブル生成処理プログラムを終了する。それに対して、現在のカウント値nが184未満であると判定された場合(S8:NO)には、0.1[m]加算した新たなD(n)の値を対象としてS2以降の処理を継続して行う。
【0047】
そして、上記テーブル生成処理プログラムを実行した結果、算出結果に基づいて位置設定テーブルが作成される。尚、位置設定テーブルは、
図13に示すように生成距離L2毎に、該生成距離L2を0.1[m]加算又は減算させる際の第2スクリーン21の移動量と、第2スクリーン21の移動時間と、第2投射レンズ17の移動量と、第2投射レンズの移動速度がそれぞれ記憶される。尚、第2スクリーン21の移動方向は、生成距離L2を0.1[m]加算させる場合には、光源の光路に沿ってミラー11から遠ざかる方向(光源に近づく方向)であり、第2投射レンズ17の移動方向はその逆方向となる。一方、第2スクリーン21の移動方向は、生成距離L2を0.1[m]減算させる場合には、光源の光路に沿ってミラー11に近づく方向(光源から遠ざかる方向)であり、第2投射レンズ17の移動方向はその逆方向となる。
【0048】
尚、作成された位置設定テーブルはフラッシュメモリ34等に格納され、後述の虚像生成処理プログラム(
図14)において第2投射レンズ17や第2スクリーン21の移動を行わせる際に用いられる。また、テーブル生成処理プログラムは、HUD1を最初に起動した際に行うこととしても良いし、製品出荷前に予め工場側で行う構成としても良い。
【0049】
続いて、HUD1においてCPU31が実行する虚像生成処理プログラムについて
図14に基づき説明する。
図14は本実施形態に係る虚像生成処理プログラムのフローチャートである。ここで、虚像生成処理プログラムは車両のACCがONされた後に実行され、自車両の進行方向前方に他の車線を走行する他車両が割り込みを行った場合に、該他車両を警告する虚像8を生成するプログラムである。また、以下の説明では、スクリーン5への画像の投射態様は常に第1投射態様(
図10)にあるとして説明する。
【0050】
先ず、虚像生成処理プログラムではS11において、CPU31は、自車両の進行歩行前方に他の車線を走行する他車両が割り込みを行ったか否かを判定する。具体的には、前方車両との距離を測距センサで常時検出する構成とし、その距離が一度に所定量以上短く変化した場合に、他車両が割り込みを行ったと判定する。また、自車両が走行する車線と隣接する車線を走行する他車両の方向指示器情報を取得し、自車両の走行する車線側の方向指示器が作動したことを検出した場合に、他車両が割り込みを行ったと判定しても良い。
【0051】
そして、自車両の進行歩行前方に他の車線を走行する他車両が割り込みを行ったと判定された場合(S11:YES)には、S12へと移行する。それに対して、割り込み車両が無いと判定された場合(S111:NO)には、当該虚像生成処理プログラムを終了する。
【0052】
S12においてCPU31は、自車両から割り込みを行った他車両(以下、割り込み車両という)までの距離Rを測距センサ等の検出結果に基づいて取得する。測距センサの代わりにフロントカメラで撮像した撮像画像を用いて距離Rを取得する構成としても良い。
【0053】
S13においてCPU31は、前記S12で取得された距離Rが20m以下であるか否か判定する。尚、前記S13の判定基準となる距離は、HUD1の規格によって決定され、具体的にはHUD1によって第2虚像8Bを生成できる最長の生成距離L2とする。前記したように、本実施形態では第2スクリーン21を光路に沿って前後方向に移動させることによって第2スクリーン21に投射された映像の虚像である第2虚像8Bを生成する位置(具体的には乗員7から第2虚像8Bまでの距離である生成距離L2)を変更することが可能である(
図8参照)。第2スクリーン21を最もプロジェクタ4側に移動させた場合に、生成距離L2が最長となる。そして、HUD1によって第2虚像8Bを生成できる最長の生成距離L2が20mである場合には、前記S13の判定基準は20mとなる。一方、HUD1によって第2虚像8Bを生成できる最長の生成距離L2が30mである場合には、前記S13の判定基準は30mとなる。以下の例では、HUD1によって第2虚像8Bを生成できる最長の生成距離L2が20mであるとして説明する。
【0054】
そして、前記S12で取得された距離Rが20m以下であると判定された場合(S13:YES)には、S14へと移行する。それに対して、前記S12で取得された距離Rが20mより長いと判定された場合(S13:NO)には、S15へと移行する。
【0055】
S14においてCPU31は、第2虚像8Bの生成距離L2の目標値となる目標生成距離Deを前記S12で取得された距離Rに設定する。一方、S15においてCPU31は、第2虚像8Bの生成距離L2の目標値となる目標生成距離Deを最大距離である20mに設定する。その後、CPU31は後述のように乗員7から前記S14又はS15で設定された目標生成距離Deだけ離れた位置に第2虚像8Bが生成されるように第2スクリーン21の位置を制御する。
【0056】
続いて、S16においてCPU31は、現在の第2虚像8Bの生成距離L2を取得する。
【0057】
次に、S17においてCPU31は、前記S6で取得した現在の第2虚像8Bの生成距離L2が、前記S14又はS15で設定された目標生成距離De以下であるか否か、即ち、現在第2虚像8Bが生成されている位置が目標とする位置よりも乗員側にあるか否か判定される。
【0058】
そして、現在の第2虚像8Bの生成距離L2が、前記S14又はS15で設定された目標生成距離De以下であると判定された場合(S17:YES)には、S18へと移行する。それに対して、現在の第2虚像8Bの生成距離L2が、前記S14又はS15で設定された目標生成距離Deより大きいと判定された場合(S17:NO)には、S19へと移行する。
【0059】
S18においてCPU31は、後述の第1スクリーン移動処理(
図16)を実行する。尚、第1スクリーン移動処理では、前記したテーブル生成処理プログラム(
図12)において作成された位置設定テーブル(
図13)に基づいて、前記S14又はS15で設定された目標生成距離Deだけ離れた位置に第2虚像8Bが生成されるように第2スクリーン21及び第2投射レンズ17の位置を移動制御するプログラムである。
【0060】
同じくS19においてCPU31は、後述の第2スクリーン移動処理(
図17)を実行する。尚、第2スクリーン移動処理では、前記したテーブル生成処理プログラム(
図12)において作成された位置設定テーブル(
図13)に基づいて、前記S14又はS15で設定された目標生成距離Deだけ離れた位置に第2虚像8Bが生成されるように第2スクリーン21及び第2投射レンズ17の位置を移動制御するプログラムである。
【0061】
次に、S20においてCPU31は、プロジェクタ4へと信号を送信し、プロジェクタ4による映像の投射を開始する。ここで、プロジェクタ4により投射される映像としては、車両2に関する情報や乗員7の運転の支援の為に用いられる各種情報がある。例えば障害物(他車両や歩行者)に対する警告、ナビゲーション装置で設定された案内経路や案内経路に基づく案内情報(右左折方向を示す矢印等)、現在車速、案内標識、地図画像、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、接続されたスマートフォンの画面、テレビ番組等がある。
【0062】
特に本実施形態では、第1投射レンズ16によって第1スクリーン20に投射する映像は、車両の現在車速の映像とする。また、第2投射レンズ17によって第2スクリーン21に投射する映像は、割り込み車両に対する警告の映像とする。尚、本実施形態では、
図2に示すように第1スクリーン20の下方に第2スクリーン21が配置される。従って、ミラー11によって反射された結果、第2スクリーン21に投射された映像の虚像である第2虚像8Bは、第1スクリーン20に投射された映像の虚像である第1虚像8Aの上方に生成されることとなる。
【0063】
従って、
図15に示すように、フロントウィンドウ6の下縁付近で且つフロントウィンドウ6の前方に、第1虚像8Aとして現在車速を示す数値が生成され、乗員から視認可能となる。また、フロントウィンドウ6の中央付近で且つフロントウィンドウ6の前方に、第2虚像8Bとして割り込み車両61を囲む枠が生成され、乗員から視認可能となる。ここで、第1スクリーン20は位置が固定であることから第1虚像8Aが生成される位置(具体的には乗員7から第1虚像8Aまでの距離である生成距離L1)も固定であり、乗員7から2.5m前方の位置とする。尚、生成距離L1は、2.5m以外としても良い。但し、生成距離L1を長くし過ぎると、第1虚像8Aが路面に埋め込まれることとなるので、2m〜4m程度であることが好ましい。
【0064】
そして、
図15に示す例では第1虚像8Aとして現在車速の映像を表示させる構成としているが、それ以外の情報、例えば案内標識、地図画像、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、接続されたスマートフォンの画面、テレビ番組等の車両からの距離を変位させる必要が無い情報の映像についても表示させる構成としても良い。そして、生成距離L1を適切な距離(例えば2.5m)に固定することによって、仮に
図15に示すように割り込み車両61が自車両に接近し、第2虚像8Bを生成する位置が変位した場合であっても、路面に埋め込まれるような不自然な虚像が生成されることを防止できる。更に、車両の乗員は第1虚像8Aを視認する際に視線移動を極力少なくすることが可能であり、運転時の負担をより少なくすることが可能となる。
【0065】
一方、
図15に示すように第2虚像8Bが生成される位置は、車両の乗員から前記S14又は前記S15で設定された目標生成距離De前方の位置(即ち、割り込み車両61の位置)となる。従って、乗員は、第2虚像8Bを視認する際にも視線移動を極力少なくすることが可能であり、運転時の負担をより少なくすることが可能となる。
【0066】
その後、S21においてCPU31は、前記S20でプロジェクタ4による映像の投射を開始してからの経過時間tが所定時間Y(例えば5秒)以上となったか否か判定する。尚、所定時間Yは投射する映像の内容によっても適宜変更することが可能である。
【0067】
そして、プロジェクタ4による映像の投射を開始してからの経過時間tが所定時間Y以上となったと判定された場合(S21:YES)には、プロジェクタ4による映像の投射を終了する(S22)。尚、第2投射レンズ17による投射のみを終了し、第1投射レンズ16による投射は継続する構成としても良い。
【0068】
一方、プロジェクタ4による映像の投射を開始してからの経過時間tが所定時間Y未満であると判定された場合(S21:NO)には、S23へと移行する。
【0069】
S23においてCPU31は、自車両から割り込み車両までの距離Rを再度取得する。
【0070】
次に、S24においてCPU31は、前記S14又は前記S15で設定された目標生成距離Deと前記S21で取得された距離Rの差分が所定距離X(例えば2m)以上であるか否か判定する。尚、所定距離Xは投射する映像の内容によっても適宜変更することが可能である。
【0071】
そして、前記S14又は前記S15で設定された目標生成距離Deと前記S23で取得された距離Rの差分が所定距離X以上であると判定された場合(S24:YES)には、S13へと移行する。その後、新たに取得された距離Rに基づいて目標生成距離Deを新たに設定し(S14、S15)、第2スクリーン21の移動を行う。その結果、自車両から割り込み車両までの距離が大きく変化した場合であっても、変更後の割り込み車両の位置に第2虚像8Bを生成することが可能となる。
【0072】
一方、前記S14又は前記S15で設定された目標生成距離Deと前記S23で取得された距離Rの差分が所定距離X未満であると判定された場合(S24:NO)には、S21へと移行し、現在の映像の投射を継続して行う。
【0073】
次に、前記S18において実行される第1スクリーン移動処理のサブ処理について
図16に基づき説明する。
図16は第1スクリーン移動処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0074】
先ず、S31においてCPU31は、現在の第2虚像8Bの生成距離L2が、前記S14又はS15で設定された目標生成距離Deであるか否か判定する。
【0075】
そして、現在の第2虚像8Bの生成距離L2が、前記S14又はS15で設定された目標生成距離Deであると判定された場合(S31:YES)には、第2スクリーン21及び第2投射レンズ17の移動制御を終了し、S20へと移行する。それに対して、現在の第2虚像8Bの生成距離L2が、前記S14又はS15で設定された目標生成距離Deでないと判定された場合(S31:NO)には、S32へと移行する。
【0076】
S32においてCPU31は、位置設定テーブル(
図13)に基づいて、現在の生成距離L2を0.1m加算する(即ち、第2虚像8Bが生成される位置を現在の位置よりも乗員から0.1m遠方とする)為の第2スクリーン21の移動量と移動方向を決定する。尚、移動方向は光源の光路に沿ってミラー11から遠ざかる方向(光源に近づく方向)となる。また、第2スクリーン21の移動速度は、第2スクリーン21の最大の移動速度となる。
【0077】
次に、S33においてCPU31は、位置設定テーブル(
図13)に基づいて、現在の生成距離L2を0.1m加算する(即ち、第2虚像8Bが生成される位置を現在の位置よりも乗員から0.1m遠方とする)為の第2投射レンズ17の移動量、移動方向、移動速度を決定する。尚、移動方向は光源の光路に沿ってミラー11に近づく方向(光源から遠ざかる方向)となる。
【0078】
次に、S34においてCPU31は、第2スクリーン21を前記S32で決定された移動量だけ移動させるのに必要なスクリーン前後駆動モータ24の駆動量(パルス数)を決定する。同じく、第2投射レンズ17を前記S33で決定された移動量だけ移動させるのに必要なレンズ駆動モータ18の駆動量(パルス数)を決定する。
【0079】
続いて、S35においてCPU31は、プロジェクタ4へと信号を送信し、プロジェクタ4により出力される映像の補正を開始する。具体的には、第2スクリーン21の位置の変更に伴って、第2投射レンズ17から第2スクリーン21へと投射される映像の歪みやサイズを調整する処理等を行う。それによって、スクリーンの移動中においても歪み等の無い適切な虚像を生成することが可能となる。
【0080】
次に、S36においてCPU31は、前記S34で決定された駆動量だけスクリーン前後駆動モータ24を駆動させる為のパルス信号をスクリーン前後駆動モータ24へと送信する。同じく、前記S34で決定された駆動量だけレンズ駆動モータ18を駆動させる為のパルス信号をレンズ駆動モータ18へと送信する。また、レンズ駆動モータ18には第2投射レンズ17を移動させる移動速度を指示する信号についても送信する。そして、パルス信号を受信したスクリーン前後駆動モータ24やレンズ駆動モータ18は、受信したパルス信号に基づいて駆動を行う。その結果、第2スクリーン21は前記S32で決定された移動方向に同じく決定された移動量だけ移動し、第2投射レンズ17は前記S33で決定された移動方向に同じく決定された移動量且つ移動速度で移動する。
【0081】
続いて、S37においてCPU31は、第2スクリーン21及び第2投射レンズ17の移動が完了したか否かを判定する。具体的には、前記S36でパルス信号を送信したスクリーン前後駆動モータ24やレンズ駆動モータ18から駆動を完了したことを示す信号を受信した場合に、第2スクリーン21及び第2投射レンズ17の移動が完了したと判定する。
【0082】
そして、第2スクリーン21及び第2投射レンズ17の移動が完了したと判定された場合(S37:YES)には、S38へと移行する。それに対して、第2スクリーン21及び第2投射レンズ17の移動が完了していないと判定された場合(S37:NO)には、移動が完了するまで待機する。
【0083】
S38においてCPU31は、プロジェクタ4へと信号を送信し、プロジェクタ4により移動後の第2スクリーン21の位置に対応する補正が行われた映像の投射を開始する。具体的には、移動後の第2スクリーン21の位置に応じて歪みやサイズの補正された映像を出力する。その後、S31へと移行し、第2スクリーン21の移動後の第2虚像8Bの生成距離L2が、前記S14又はS15で設定された目標生成距離Deに到達したか否かが判定される。
【0084】
次に、前記S19において実行される第2スクリーン移動処理のサブ処理について
図17に基づき説明する。
図17は第2スクリーン移動処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0085】
先ず、S41においてCPU31は、現在の第2虚像8Bの生成距離L2が、前記S14又はS15で設定された目標生成距離Deであるか否か判定する。
【0086】
そして、現在の第2虚像8Bの生成距離L2が、前記S14又はS15で設定された目標生成距離Deであると判定された場合(S41:YES)には、第2スクリーン21及び第2投射レンズ17の移動制御を終了し、S20へと移行する。それに対して、現在の第2虚像8Bの生成距離L2が、前記S14又はS15で設定された目標生成距離Deでないと判定された場合(S41:NO)には、S42へと移行する。
【0087】
S42においてCPU31は、位置設定テーブル(
図13)に基づいて、現在の生成距離L2を0.1m減算する(即ち、第2虚像8Bが生成される位置を現在の位置よりも乗員側へ0.1m移動させる)為の第2スクリーン21の移動量と移動方向を決定する。尚、移動方向は光源の光路に沿ってミラー11に近づく方向(光源から遠さかる方向)となる。また、第2スクリーン21の移動速度は、第2スクリーン21の最大の移動速度となる。
【0088】
次に、S43においてCPU31は、位置設定テーブル(
図13)に基づいて、現在の生成距離L2を0.1m減算する(即ち、第2虚像8Bが生成される位置を現在の位置よりも乗員側へ0.1m移動させる)為の第2投射レンズ17の移動量、移動方向、移動速度を決定する。尚、移動方向は光源の光路に沿ってミラー11から遠ざかる方向(光源へ近づく方向)となる。
【0089】
次に、S44においてCPU31は、第2スクリーン21を前記S42で決定された移動量だけ移動させるのに必要なスクリーン前後駆動モータ24の駆動量(パルス数)を決定する。同じく、第2投射レンズ17を前記S43で決定された移動量だけ移動させるのに必要なレンズ駆動モータ18の駆動量(パルス数)を決定する。尚、以降のS44〜S48の処理については、既に説明した第1スクリーン移動処理(
図16)のS34〜S38の処理と同様であるので説明は省略する。
【0090】
ここで、第2スクリーン21及び第2投射レンズ17の位置は、
図18に示すようにプロジェクタ4の光源51の光路52に沿って移動可能に構成される。そして、ミラー11から第2スクリーン21までの距離に生成距離L2が依存するので、上述した第1スクリーン移動処理(
図16)や第2スクリーン移動処理(
図17)では、第2スクリーン21の位置は、ミラー11から第2スクリーン21までの距離が前記S14又はS15で設定された目標生成距離Deに対応する距離となるように移動される。
【0091】
一方、第2投射レンズ17の位置は、第2投射レンズ17から投射された映像の焦点を第2スクリーン21上に合わせる位置に決定される。即ち、生成距離L2を長くする為に第2スクリーン21が光路に沿ってミラー11から離間する方向(即ち第2投射レンズ17に近づく方向)に移動すれば、第2投射レンズ17は光路に沿ってその逆方向である第2スクリーン21に近づく方向へと移動することとなる。一方、生成距離L2を短くする為に第2スクリーン21が光路に沿ってミラー11へ近づく方向(即ち第2投射レンズ17から離間する方向)に移動すれば、第2投射レンズ17は光路に沿ってその逆方向である第2スクリーン21から離間する方向へと移動することとなる。また、前記したように第2スクリーン21は生成距離L2を0.1m変位させる移動量を第1単位量として、生成距離L2が前記S14又は前記S15で設定された目標生成距離Deとなるまで繰り返し移動する(S32〜S37、S42〜S47)。更に、第2投射レンズ17は、第2スクリーン21が上記第1単位量移動する度に、移動後の第2スクリーン21上で映像の焦点を合わせるように、第2単位量ずつ移動する。また、第2スクリーン21が第1単位量移動する時間と、第2投射レンズ17が第2単位量移動する時間も同一時間とし、移動開始タイミングもリンクさせる。
【0092】
その結果、生成距離L2を長く変更する為に、第2スクリーン21を第2投射レンズ17側に移動させた場合であっても、生成距離L2を短く変更する為に、第2スクリーン21をミラー11側に移動させた場合であっても、第2投射レンズ17から投射される映像の焦点を常に第2スクリーン21上に合わせた状態を維持できる。それによって、第2スクリーン21の移動中及び移動後においても鮮明な映像を投射することが可能となる。
【0093】
また、生成距離L2を長く変更する為に、第2スクリーン21を第2投射レンズ17側に移動させると、第2投射レンズ17や光源51から第2スクリーン21までの距離が近くなるのを要因として、第2スクリーン21上に投射された映像の明度が上昇する。逆に、生成距離L2を短く変更する為に、第2スクリーン21を第2投射レンズ17から離れる方向に移動させると、第2投射レンズ17や光源51から第2スクリーン21までの距離が遠くなるのを要因として、第2スクリーン21上に投射された映像の明度が低下する。その結果、車両の乗員から第2虚像8Bまでの距離が遠くなる場合であっても、第2虚像8Bを明るくすることができるので第2虚像8Bへの視認性を向上させることが可能となる。一方で、車両の乗員から第2虚像8Bまでの距離が近くなる場合には、第2虚像8Bの明るさを抑えることにより、第2虚像8Bによって乗員の視界が遮られることを防止することが可能となる。
【0094】
また、生成距離L2を長く変更する為に、第2スクリーン21を第2投射レンズ17側に移動させると、第2投射レンズ17から第2スクリーン21までの距離が近くなるのを要因として、同じ映像をプロジェクタ4から投射した場合であっても第2スクリーン21上に映し出される映像のサイズは小さくなる。その結果、プロジェクタ4から投射される映像のサイズを変更しなくとも、車両の乗員から第2虚像8Bまでの距離が遠くなると、それに伴って第2虚像8Bのサイズも小さくすることができるので、乗員から第2虚像8Bまでの距離に応じた適切なサイズの第2虚像8Bを生成することが可能となる。
【0095】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るHUD1によれば、LED光源を用いたプロジェクタ4から、第1投射レンズ16及び第2投射レンズ17を介して夫々映像を第1スクリーン20及び第2スクリーン21に投射し、第1スクリーン20及び第2スクリーン21に投射された映像を車両2のフロントウィンドウ6に反射させて車両の乗員7に視認させることによって、車両の乗員7が視認する映像の虚像を生成する。また、第2投射レンズ17及び第2スクリーン21は、それぞれ独立して光路に沿って移動可能とし、第2スクリーン21を移動させることによって乗員から虚像までの生成距離L2を調整するとともに、第2投射レンズ17から投射された映像を第2スクリーン21上で焦点を合わせるように第2スクリーン21の移動に伴って第2投射レンズ17を移動させるので、第2スクリーン21を移動させることによって乗員7から第2虚像8Bまでの生成距離L2を調整できる一方、第2スクリーン21を移動させた場合であっても第2投射レンズ17から投射された映像を第2スクリーン21上で焦点を合わせることができるので、高い品質の映像を虚像として生成することが可能となる。また、第2虚像8Bを生成する位置を決定した後に、決定された第2虚像8Bの位置に基づいて第2スクリーン21の移動方向と移動量を決定するので、車両の乗員からの距離が変位する障害物や交差点等の対象物に関する映像を虚像として表示させる場合に、ユーザから対象物までの距離に応じた適切な位置に第2虚像8Bを生成することが可能となる。更に、決定された第2スクリーン21の移動方向と移動量に基づいて、第2投射レンズ17の移動方向と移動量を決定するので、車両の乗員から対象物までの距離に応じた適切な位置に虚像を生成しつつ、第2投射レンズ17から投射された映像を第2スクリーン21上で焦点を合わせることも可能となる。
【0096】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態ではHUD1によって車両2のフロントウィンドウ6の前方に虚像を生成する構成としているが、フロントウィンドウ6以外のウィンドウの前方に虚像を生成する構成としても良い。また、HUD1により映像を反射させる対象はフロントウィンドウ6自身ではなくフロントウィンドウ6の周辺に設置されたバイザー(コンバイナー)であっても良い。
【0097】
また、本実施形態では車両2に対してHUD1を設置する構成としているが、車両2以外の移動体に設置する構成としても良い。例えば、船舶や航空機等に対して設置することも可能である。また、アミューズメント施設に設置されるライド型アトラクションに設置しても良い。その場合には、ライドの周囲に虚像を生成し、ライドの乗員に対して虚像を視認させることが可能となる。
【0098】
また、本実施形態では第1虚像8Aとして、現在車速、案内標識、地図画像、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、接続されたスマートフォンの画面、テレビ番組等の生成距離を変位させる必要が無い情報の映像を表示させることとしているが、第1虚像8Aも第2虚像8Bと同様に車両からの距離が変位する障害物や交差点等の対象物に関する映像(即ち生成距離を変位させる必要がある情報)を表示する構成としても良い。
【0099】
また、本実施形態では、第2スクリーン21のみを光路に沿って前後方向に移動可能に構成しているが、第1スクリーン20についても移動可能に構成しても良い。同様に、第1投射レンズ16についても移動可能に構成しても良い。その場合には、第1虚像8Aの生成距離L1について変更可能となる。
【0100】
また、本実施形態では、スクリーンを第1スクリーン20と第2スクリーン21の2枚のスクリーンから構成し、プロジェクタ4のレンズを第1投射レンズ16と第2投射レンズ17の2つのレンズから構成しているが、スクリーンとレンズの数は一対のみ又は3対以上としても良い。また、プロジェクタ4の光源としてはLED以外に、ランプやレーザを用いても良い。
【0101】
また、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置を具体化した実施例について上記に説明したが、ヘッドアップディスプレイ装置は以下の構成を有することも可能であり、その場合には以下の効果を奏する。
【0102】
例えば、第1の構成は以下のとおりである。
レンズ移動決定手段は、投射レンズから投射された映像をスクリーン上で焦点を合わせるように投射レンズの移動方向と移動量を決定することを特徴とする。
上記構成を有するヘッドアップディスプレイ装置によれば、スクリーンを移動させることによってユーザから虚像までの距離を調整できる一方、スクリーンを移動させた場合であっても投射レンズから投射された映像をスクリーン上で焦点を合わせることができるので、高い品質の映像を虚像として生成することが可能となる。
【0103】
また、第2の構成は以下のとおりである。
レンズ移動決定手段は、投射レンズを光路に沿ってスクリーンと互いに異なる方向に移動するように移動方向を決定することを特徴とする。
上記構成を有するヘッドアップディスプレイ装置によれば、投射レンズ及びスクリーンを光路に沿って互いに異なる方向に移動させることによって、投射レンズから投射された映像をスクリーン上で焦点を合わせるので、投射レンズ及びスクリーンの移動を最小限とし、且つスクリーンが光路に沿ってどちらの方向に移動したとしても、投射レンズから投射された映像をスクリーン上で焦点を合わせることが可能となる。また、光源から投射レンズまでの距離にクリアランスを設ける必要が無く装置を小型化することが可能となる
【0104】
また、第3の構成は以下のとおりである。
スクリーン移動手段は、スクリーン移動決定手段により決定された移動方向へスクリーンを所定の第1単位量移動させる第1の動作を、スクリーン移動決定手段により決定された移動量を移動するまで繰り返し行い、レンズ移動手段は、レンズ移動決定手段により決定された移動方向へ投射レンズを所定の第2単位量移動させる第2の動作を、レンズ移動決定手段により決定された移動量を移動するまで繰り返し行い、スクリーンにおいて第1の動作が行われる度に、投射レンズから投射された映像を第1単位量移動した後のスクリーン上で焦点を合わせるように、投射レンズにおいて第2の動作が行われることを特徴とする。
上記構成を有するヘッドアップディスプレイ装置によれば、虚像の生成される位置を変更する為に、スクリーンを投射レンズ側又は反対側に移動させた場合であっても、投射レンズから投射される映像の焦点を常にスクリーン上に合わせた状態を維持できる。それによって、スクリーンの移動中及び移動後においても鮮明な映像を投射することが可能となる。
【0105】
また、第4の構成は以下のとおりである。
第1の動作と第2の動作は同じタイミングで開始され、第2単位量を、スクリーンが第1単位量を移動するのに必要な時間で除した値を、レンズ移動手段による投射レンズの移動速度とすることを特徴とする。
上記構成を有するヘッドアップディスプレイ装置によれば、スクリーンと投射レンズの移動をリンクさせることができるので、スクリーンが第1単位量を移動する前、移動中及び移動後において、投射レンズから投射される映像の焦点を常にスクリーン上に合わせた状態を維持できる。
【0106】
また、第5の構成は以下のとおりである。
プロジェクタは、スクリーン移動手段によるスクリーンの移動が行われている間において、スクリーンの位置の変化に応じて映像を補正しつつスクリーンに継続して投射することを特徴とする。
上記構成を有するヘッドアップディスプレイ装置によれば、スクリーンの移動中においても歪み等の無い適切な虚像を生成することが可能となる。