特許第6138650号(P6138650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138650
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】石炭灰の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 18/10 20060101AFI20170522BHJP
   C04B 14/02 20060101ALI20170522BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   C04B18/10 AZAB
   C04B14/02 Z
   B09B3/00 304G
   B09B3/00 303L
   B09B3/00 Z
   B09B3/00 301N
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-205577(P2013-205577)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-67526(P2015-67526A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137970
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 康央
(72)【発明者】
【氏名】小早川 真
(72)【発明者】
【氏名】平尾 宙
(72)【発明者】
【氏名】山上 晃一
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−012349(JP,A)
【文献】 特開昭63−310716(JP,A)
【文献】 特開平08−117626(JP,A)
【文献】 特開平09−241051(JP,A)
【文献】 特開2000−007394(JP,A)
【文献】 米国特許第04622071(US,A)
【文献】 特開平11−060327(JP,A)
【文献】 特開昭57−135762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00−28/36
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰からシリカ成分をケイ酸アルカリとして取出し、取出し後の残渣から人工骨材を製造する石炭灰の処理方法であって、
石炭灰から25w%より高い濃度のNaOH溶液を用いて、70℃から150℃で加熱して、シリカ成分をケイ酸ナトリウムとして浸出させ、ケイ酸ナトリウム溶液とSi/Al比≦3のAlリッチ残渣とに分離する第1工程と、
前記第1工程で発生したケイ酸ナトリウムが表面に付着したAlリッチ残渣をそのまま加熱固化して成形するか、又は、セメントと水を添加して造粒成形して、人工骨材を製造する第2工程と、
を有することを特徴とする石炭灰の処理方法。
【請求項2】
第1工程の前に、次のいずれかを行うことにより、石炭灰からケイ酸アルカリの取出しを促進する請求項1記載の石炭灰の処理方法。
1.石炭灰を焙焼する工程、
2.石炭灰を鉱酸溶液中に浸漬する工程、
3.石炭灰をアルカリ溶液中に浸漬する工程
【請求項3】
前記焙焼は、400℃以下で1〜1.5時間であり、鉱酸は、任意の濃度のHSO溶液を用いた、常温ないしは任意の温度下での浸漬であり、アルカリ溶液は、5〜20%(w/w)NaOH溶液を用いた、常温ないしは任意の温度下での浸漬である請求項2記載の石炭灰の処理方法。
【請求項4】
第2工程の成形が、前記Alリッチ残渣を、そのままスリット付鋳型に流し込んで加熱固化した後、粗砕機で粗砕し、篩で分級、整粒して成形し、人工骨材を製造する請求項1乃至3のそれぞれに記載の石炭灰の処理方法。
【請求項5】
第2工程の成形が、攪拌型造粒機による混合攪拌造粒又は、パン型造粒機による転動造粒である請求項1乃至3のそれぞれに記載の石炭灰の処理方法。
【請求項6】
第2工程の成形が、Si/Al比≦3であるAlリッチ残渣の50〜70重量部、及びセメント50〜30重量部の合量100重量部に水10〜20重量部を加えて、パン型造粒機による転動造粒である請求項1乃至3のそれぞれに記載の石炭灰の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭灰の処理方法及びその処理産物の石炭灰残渣硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電力需要の増大に伴い、石炭焚き火力発電所等から排出される石炭灰の量は、年々増加する傾向にある。
【0003】
石炭灰は、Al、SiOが含まれており、鉱物資源でもあるので、これら成分の有効な利用が望まれる。
【0004】
特許文献1には、石炭燃焼の集塵灰であるフライアッシュを主成分とし、路盤材を製造するため、フライアッシュ80〜95%と、セメント5〜20%と、外配で20〜25%の水とからなるペーストを成形型に供給し、40kg/cm2以上の圧力でプレス成形し、成形体を養生して固化させた後、破砕して路盤材を得る技術が開示されている。しかし、該技術は有効成分を取り出すことは考慮していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−291848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
石炭灰のシリカ等の取出し処理方法には、酸処理法や、アルカリ処理法があり、酸処理法は、石炭灰からAl分を溶出して、SiO分を残渣として、分離できる。しかし、Al分を浸出するときに、石炭灰中に含まれるFe、Ti、Mg等の可溶性成分を一緒に取り込むので、これを分離するためには、浸出液の後処理が複雑化すること、金属製装置の耐酸性化等の配慮が指摘されている。
【0007】
一方、アルカリ処理法によるシリカ取出処理も、一般的に複雑で時間がかかり、大量の処理剤を要し、相当量の残渣が生じている。
【0008】
本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、石炭灰中のシリカ成分を高純度で取出した後、処理後のアルミナ分の多い残渣(以下、Alリッチ残渣)を活用する処理方法を実現することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願は、第1工程として、石炭灰からシリカ成分を、ケイ酸アルカリ溶液として分離した後、第2工程として、第1工程で発生するAlリッチ残渣(Si/Al比≦3)をそのまま固化して成形するか、セメントと水を添加して成形し、人工骨材を製造する方法を、提供する。
【0010】
第1工程は、石炭灰からシリカ成分をケイ酸アルカリとして取出す方法であって、25w%より高い濃度のNaOH溶液を用いて、70℃から150℃で、ケイ酸ナトリウムとして浸出させ、ケイ酸ナトリウム溶液とSi/Al比≦3のAlリッチ残渣とに分離する工程であり、第2工程は、第1工程で発生したケイ酸ナトリウムが表面に付着したAlリッチ残渣をそのまま加熱固化して成形するか、セメントと水を添加して、造粒成形し、人工骨材を製造する方法を、提供するものである。
【0011】
ここで、25w%以下の濃度のNaOH溶液で、加熱温度が70℃未満では、シリカ成分の溶出が、不十分であり、溶出に長い時間を要する。Si/Al比>3の残渣では、シリカ成分が十分に利用できたといえない。溶出を150℃以上で行うには、耐圧オートクレーブが必要となる。
【0012】
さらに、第1工程の前に、次のいずれかを行うことにより、石炭灰からケイ酸アルカリの取出を促進する方法を、提供するものである。
1.石炭灰を焙焼する工程、
2.石炭灰を鉱酸溶液中に浸漬する工程、
3.石炭灰をアルカリ溶液中に浸漬する工程
【0013】
前記焙焼は、400℃以下で1〜1.5時間であり、鉱酸は、任意の濃度のHSO溶液を用いた、常温ないしは任意の温度下での浸漬であり、アルカリ溶液は、5〜20%(w/w)NaOH溶液を用いた、常温ないしは任意の温度下での浸漬である発明を、提供するものである。
【0014】
ここで、焙焼を、400℃より高い温度で、1.5時間より長時間かけても促進効果が、変化しない。
【0015】
さらに、第1工程のシリカ分取出しにおいて、25w%より高い濃度のNaOH溶液を用いて石炭灰からシリカ成分をケイ酸ナトリウムとして浸出させた後、アルカリ浸出残渣であるAlリッチ残渣を分離する方法を、提供するものである。分離には、水を水酸化ナトリウム溶液量と同容量程度、追加し、洗浄することが好ましい。
【0016】
第2工程の成形が、そのままスリット付鋳型に流し込んで加熱固化した後、粗砕機で粗砕し、篩で分級、整粒して成形する人工骨材を製造する方法を、提供する。
【0017】
このとき、鋳型に流し込む際に、セメントと水を混合添加すると、人工骨材の強度の調整ができる。
【0018】
第2工程の成形が、攪拌型造粒機による混合攪拌造粒又は、パン型造粒機による転動造粒である人工骨材を製造する方法を、提供する。
【0019】
第2工程は、Si/Al比≦3であるAlリッチ残渣の50〜70重量部、及びセメント50〜30重量部の合量100重量部に水10〜20重量部を加えて、パン型造粒機による転動造粒する人工骨材を製造する方法を、提供する。
【0020】
Alリッチ残渣の成分によって、50〜70重量部、及びセメント50〜30重量部、その合量100重量部に対して水10〜20重量部の範囲で、10mm直径程度の骨材がパン型造粒で良好に製造できる。このとき、水に成形助剤を溶解して、霧状に噴霧する通常の方法を用いることができる。
【0021】
上記において、第2工程で得られた人工骨材が、吸水率が5%以下、圧潰強度が18N/mm2以上、及び嵩密度が2.0以上である骨材を、提供する。
【0022】
本発明で使用する石炭灰は、石炭焚き火力発電所等から排出されるものであって、種類は特に限定されない。例えば、微粉炭燃焼方式により燃焼し、電気集塵機によって捕集されたフライアッシュはもとより、流動床燃焼方式により燃焼し、集塵機によって捕集されたPFBC灰を使用することもできる。
【0023】
石炭灰は、平均粒径30μm以下となるように、凝集を解いた状態であることが望ましい。後のアルカリ処理を円滑にするためである。また、金属鉄を磁力分離により除去することも好ましい。
【0024】
更に、磁力選鉱に換えて、又はこれと共に、後のアルカリ処理でシリカ分の溶出を促進や、金属鉄を除去するために前処理をすることが好ましい。
【0025】
即ち、400℃以下で1〜1.5時間、石炭灰を焙焼する工程により、シリカ分の溶出速度を高めることができる。任意の濃度のHSO溶液で石炭灰を鉱酸溶液中に浸漬する工程により、アルカリに溶解しない金属鉄等を溶解し、石炭灰を活性化した。石炭灰を、常温ないしは任意の温度下で、5〜20w%NaOH溶液中に浸漬する工程により、石炭灰を活性化した。これらの3種の前処理工程は、いずれか1工程以上を任意に組み合わせて使用できる。
【0026】
前記工程後に、石炭灰からシリカ成分をケイ酸アルカリとして取出すため、25w%より高濃度のNaOH溶液で70℃から150℃の浸漬処理をして、ケイ酸ナトリウムとして浸出させ、ケイ酸ナトリウム溶液とSi/Al比≦3のAlリッチ残渣とに分離する。
【0027】
第2工程の成形が、そのまま鋳型に流し込んで固化した固化物を用いる場合、前記固化物を粗砕機で粗砕し、篩で分級、整粒して成形する人工骨材を製造する方法を、提供する。このとき、得られた塊状の固化物をジョークラッシャー等で粗砕する。鋳型がスリット付であると、粗砕の際、固化物がスリットで規則的割れが生じて、同一形状の粗砕物が得られる。粗砕機は、パルベライザー等の回転粗砕機でも良い。
【0028】
粗砕物の篩分けを行い、粗骨材、細骨材として使用できる。分級には、通常の振動篩を用いることができる。
【0029】
さらに篩全通部分(0.075mm以下)は、そのままか、さらに粉砕し、ブレーンを2800〜3800cm/gとして、セメントの増量材、アルカリ刺激剤として1%(セメントに対して5wt%)の範囲でセメントに添加することもできる。篩全通部分のナトリウム量が10wt%とアルカリ含有量が多いため、テトラポット等のアルカリ、塩素の影響を考慮が少ないコンクリート材料用途に使用できる。
【0030】
第2工程の成形が、水とセメントを用いる場合、造粒に用いるセメントは、普通セメント、早強セメント、高炉セメント、アルミナセメント、シリカセメント、エコセメント(普通型、速硬型)から選択することができる。短時間での硬化を求める場合には、早強セメントや、超早強セメント等、硬化時間の短いセメントを用いることが好ましい。
【0031】
Alリッチ残渣とセメントとの混合材料の成形は、混合後、所定の粒径となるように成形することができれば、方法は問わない。例えば、パンペレタイザーを使用した転動造粒、ヘンシェルミキサ等を使用した撹拌造粒等が挙げられる。
【0032】
転動造粒に際して、Alリッチ残渣は、固結するので、これを解して転動造粒の供することが好ましい。このとき、通常の粉砕機を用いることができる。セメントの硬化促進剤や、成形助剤等を適宜添加することも好ましい。ここで、セメトの硬化促進剤は、アルミン酸ソーダ等の急硬材や、急結材等が挙げられる。また、成形助剤は、カオリンやベントナイト等の粘土鉱物性無機物質や、パルプの製造時の副酸リグニン、メチルセルロース等の水溶性高分子等である。本願では、ケイ酸ナトリウムをはじめから、含有するので、造粒には有利に作用する。
【0033】
上記転動成形工程によって得られた成形物の養生は、自然養生でも問題はないが、成形物をより短期に硬化させることを考慮すると、加温・加湿養生が好ましい。加湿は、成形物の乾燥を抑制し、Alリッチ残渣のポゾラン活性度を高め、セメントの水和に必要な水分を造粒体に確保しておくためである。
【0034】
Al比率が大きいので、アルミン酸カルシウム水和物の生成量が相対的に上昇し、骨材強度の短期的な増進に寄与する。
【0035】
Si比率が小さいので、粒子間の間隙を適度に充填するC-S-H量が生成する。Si溶出量が多すぎると、水和生成物が急激に成長して粗大な水和物を生成し、逆に粒子間の間隙を広めて強度が低下する傾向がある。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、石炭灰からシリカ成分を取出した残渣をセメント骨材とするので、アルカリ浸出残渣のAl/Si比が高まり、これを用いた人工骨材の性能が高まる。また、NaSiO溶液から高純度シリカを生成することができる等、石炭灰資源を余すところなく有効利用できる。
【0037】
本発明の方法は、石炭灰からの高収率でのシリカ成分の取出しと、人工骨材として有効活用を同時に実現するものである。Alリッチ残渣は、ケイ酸ナトリウムの結合材の効果で、そのまま固化、成形することもできるし、セメントを用いた造粒も容易である。得られた人工骨材は、強度が十分であり、シリカ分が少ないのでアルカリ骨材反応を起こしにくい。
【発明を実施するための形態】
【0038】
まず、第1工程の好ましい実施形態の詳細を説明する。
【0039】
本発明で使用する石炭灰として、微粉炭燃焼方式により燃焼し、電気集塵機によって捕集されたフライアッシュを使用した。
【0040】
フライアッシュは、一部凝集が認められるが、SEM観察結果で平均粒径30μm以下であった。これに、磁力選鉱により金属鉄を除去するために前処理をおこなった。
【0041】
ついで、3種の前処理工程(粉砕焙焼、焙焼のみ、粉砕のみ)を行なった後に、石炭灰からシリカ成分をケイ酸アルカリとして取出すため、25w%のNaOH溶液で95℃の浸漬処理をして、ケイ酸ナトリウムとして浸出させ、ケイ酸ナトリウム溶液と、Si/Al比≦3のAlリッチ残渣とに分離した。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に、浸漬処理のない実験例1と、浸漬処理した実験例のSi/Al比、Al/Siを示した。
実験例2は、石炭灰100重量部を350℃で焙焼し、粉砕処理する前処理例である。浸漬処理は、還流冷却反応槽に投入し、25%NaOH溶液75重量部を加え、撹拌しながら95℃で4時間加熱し、静置した。溶液中の石炭灰残渣が、沈殿した後、分離した上澄み液を採取し、残渣と分離した。本固化体残渣は、Si/Al比が、2.39であった。
【0044】
このNaSiO溶液を希釈した後、炭酸化槽でCOガスをバブリングし、70〜85℃で撹拌しながら、弱アルカリとなるまで炭酸化を行い、ろ過及び分離の後、SiO含率が99%の微粒シリカを得た。
【0045】
実験例3は、焙焼処理のみで粉砕処理をしなかった実験例であり、Si/Al比が、2.77であった。
【0046】
実験例4は、粉砕処理のみで焙焼処理をしなかった実験例である。Si/Al比が、2.70であった。粉砕条件は、ディスクミルで5分間粉砕であった。
【0047】
焙焼処理と粉砕処理をすることで、浸漬によるSi/Al比の減少が認められた。
【0048】
【表2】
【0049】
表2は、内割り10%のAlリッチ残渣を混合したセメントとJIS砂と水を用いたモルタルの7日強度を示した。石炭灰が、Alリッチ残渣である場合、水準2で、強度増進効果が認められる。Alリッチ残渣がセメントに程度混入しても、このように、Alリッチ残渣が、粉末として、モルタル等のセメントマトリックス部分に10wt%混入しても、悪影響は及ぼさず、7日強度に悪影響をおよぼさないことが確認できた。
【0050】
次に、第2工程の好ましい実施形態の詳細を説明する。
【0051】
第2工程で、そのケイ酸ナトリウムが表面に付着したAlリッチ残渣をそのまま破砕造粒する方法を説明する。ホバートミキサーにて作成した水セメント比25wt%のセメントペースト中に、沈降分離にて得た、含水率20〜25%のAlリッチ残渣をセメントペーストに対して、外割り10〜50wt%の割合で添加し、ホバートミキサーで5分間攪拌し、得られた残渣入りペーストを5cm×5cm×5cmの型枠に流し込んだ。型枠には、高さ5mmのスリットを付した。飽和水蒸気中で24時間、90℃の蒸気養生を行い、得られた固形物を脱型後、ジョークラッシャーで粉砕した。ほぼ、1〜5cm程度の粒度となる様に、粗砕を繰り返し、振動篩で分級して成形した。型枠がスリット付であると、粗砕の際、固化物がスリットで規則的割れが生じて、同一形状の粗砕物が得られる。粗砕機は、パルベライザー等の回転粗砕機でも良い。
【0052】
粗砕物の篩分けを行い、粗骨材、細骨材として使用できる。分級には、通常の振動篩を用いることができる。
【0053】
得られる骨材は不定形の粒状であり、外割り10%〜50%のAlリッチ残渣をセメントペーストに混合することで、骨材粒度1〜1.2cmの点載加重強度は平均12N/mm2〜8N/mm2となった。
【0054】
第2工程で、セメントと水を添加して成形し、造粒して人工骨材を製造する方法を、例示する。
【0055】
Alリッチ残渣は、ケイ酸ナトリウムが表面に含まれるため固結するときは、ボールミル等で、粉砕して、固結を解して用いても良い。併せて使用するセメントと共に、混合粉砕しても良い。実験例1から5では、先ず、Alリッチ残渣60重量部に普通ポルランドセメント40重量部を調合し、ディスク振動ミルで混合粉砕して、平均粒子径が8μmの混合物とした。混合物100重量部に対し17重量部の水となるように調整し、添加し、1000mm径×210mm深さのパンペレタイザーで造粒し、15〜20mmの成形物を得た。成形物を直ちに65℃飽和蒸気で48時間養生し、さらに20℃、96時間湿空養生して非焼成型の骨材を得た。
【0056】
実験例6として、平均粒子径21μmの未粉砕のフライアッシュ原粉を用いて前記と同一条件で成形して非焼成型の骨材を得た。
【0057】
表3に前記実験例の非焼成骨材の品質を示した。各品質の測定法は以下の通りである。
〔吸水率〕
粒度となるまでああ試料を水中に24時間水没させ、表面を表乾状態にする。これを100℃の乾燥器で乾燥させて、乾燥前後の質量を測定し、吸水した水分の量を算出する。これを乾燥質量で割って吸水率とした。
〔圧潰強度〕
球状に造粒したものを圧縮試験機で圧縮し、最大の荷重を圧潰強度とした。
【0058】
【表3】
【0059】
表3は、実験例1乃至6について、前記パンペレターザー造粒条件等で、得られた石炭灰残渣活用人工骨材の前記測定法による、かさ密度、圧潰強度、吸水率の測定結果を示した。浸漬処理によって、前処理の有無に拘わらず、上記物性が骨材として改良されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、石炭灰からシリカ成分を取出した残渣をセメント骨材とするので、NaSiO溶液から高純度シリカを生成することができ、石炭灰資源を余すところなく有効利用できる。
【0061】
本発明の方法は、石炭灰からの高収率でのシリカ成分の取出しと、人工骨材として有効活用を同時に実現し、Alリッチ残渣は、ケイ酸ナトリウムの結合材の効果で、そのまま固化、成形し、簡便に骨材化することもできる。また、セメントを用いた造粒で、人工骨材は、強度等が十分であり、シリカ分が少ないのでアルカリ骨材反応を起こしにくい。