【課題を解決するための手段】
【0009】
本願は、第1工程として、石炭灰からシリカ成分を、ケイ酸アルカリ溶液として分離した後、第2工程として、第1工程で発生するAlリッチ残渣(Si/Al比≦3)をそのまま固化して成形するか、セメントと水を添加して成形し、人工骨材を製造する方法を、提供する。
【0010】
第1工程は、石炭灰からシリカ成分をケイ酸アルカリとして取出す方法であって、25w%より高い濃度のNaOH溶液を用いて、70℃から150℃で、ケイ酸ナトリウムとして浸出させ、ケイ酸ナトリウム溶液とSi/Al比≦3のAlリッチ残渣とに分離する工程であり、第2工程は、第1工程で発生したケイ酸ナトリウムが表面に付着したAlリッチ残渣をそのまま加熱固化して成形するか、セメントと水を添加して、造粒成形し、人工骨材を製造する方法を、提供するものである。
【0011】
ここで、25w%以下の濃度のNaOH溶液で、加熱温度が70℃未満では、シリカ成分の溶出が、不十分であり、溶出に長い時間を要する。Si/Al比>3の残渣では、シリカ成分が十分に利用できたといえない。溶出を150℃以上で行うには、耐圧オートクレーブが必要となる。
【0012】
さらに、第1工程の前に、次のいずれかを行うことにより、石炭灰からケイ酸アルカリの取出を促進する方法を、提供するものである。
1.石炭灰を焙焼する工程、
2.石炭灰を鉱酸溶液中に浸漬する工程、
3.石炭灰をアルカリ溶液中に浸漬する工程
【0013】
前記焙焼は、400℃以下で1〜1.5時間であり、鉱酸は、任意の濃度のH
2SO
4溶液を用いた、常温ないしは任意の温度下での浸漬であり、アルカリ溶液は、5〜20%(w/w)NaOH溶液を用いた、常温ないしは任意の温度下での浸漬である発明を、提供するものである。
【0014】
ここで、焙焼を、400℃より高い温度で、1.5時間より長時間かけても促進効果が、変化しない。
【0015】
さらに、第1工程のシリカ分取出しにおいて、25w%より高い濃度のNaOH溶液を用いて石炭灰からシリカ成分をケイ酸ナトリウムとして浸出させた後、アルカリ浸出残渣であるAlリッチ残渣を分離する方法を、提供するものである。分離には、水を水酸化ナトリウム溶液量と同容量程度、追加し、洗浄することが好ましい。
【0016】
第2工程の成形が、そのままスリット付鋳型に流し込んで加熱固化した後、粗砕機で粗砕し、篩で分級、整粒して成形する人工骨材を製造する方法を、提供する。
【0017】
このとき、鋳型に流し込む際に、セメントと水を混合添加すると、人工骨材の強度の調整ができる。
【0018】
第2工程の成形が、攪拌型造粒機による混合攪拌造粒又は、パン型造粒機による転動造粒である人工骨材を製造する方法を、提供する。
【0019】
第2工程は、Si/Al比≦3であるAlリッチ残渣の50〜70重量部、及びセメント50〜30重量部の合量100重量部に水10〜20重量部を加えて、パン型造粒機による転動造粒する人工骨材を製造する方法を、提供する。
【0020】
Alリッチ残渣の成分によって、50〜70重量部、及びセメント50〜30重量部、その合量100重量部に対して水10〜20重量部の範囲で、10mm直径程度の骨材がパン型造粒で良好に製造できる。このとき、水に成形助剤を溶解して、霧状に噴霧する通常の方法を用いることができる。
【0021】
上記において、第2工程で得られた人工骨材が、吸水率が5%以下、圧潰強度が18N/mm2以上、及び嵩密度が2.0以上である骨材を、提供する。
【0022】
本発明で使用する石炭灰は、石炭焚き火力発電所等から排出されるものであって、種類は特に限定されない。例えば、微粉炭燃焼方式により燃焼し、電気集塵機によって捕集されたフライアッシュはもとより、流動床燃焼方式により燃焼し、集塵機によって捕集されたPFBC灰を使用することもできる。
【0023】
石炭灰は、平均粒径30μm以下となるように、凝集を解いた状態であることが望ましい。後のアルカリ処理を円滑にするためである。また、金属鉄を磁力分離により除去することも好ましい。
【0024】
更に、磁力選鉱に換えて、又はこれと共に、後のアルカリ処理でシリカ分の溶出を促進や、金属鉄を除去するために前処理をすることが好ましい。
【0025】
即ち、400℃以下で1〜1.5時間、石炭灰を焙焼する工程により、シリカ分の溶出速度を高めることができる。任意の濃度のH
2SO
4溶液で石炭灰を鉱酸溶液中に浸漬する工程により、アルカリに溶解しない金属鉄等を溶解し、石炭灰を活性化した。石炭灰を、常温ないしは任意の温度下で、5〜20w%NaOH溶液中に浸漬する工程により、石炭灰を活性化した。これらの3種の前処理工程は、いずれか1工程以上を任意に組み合わせて使用できる。
【0026】
前記工程後に、石炭灰からシリカ成分をケイ酸アルカリとして取出すため、25w%より高濃度のNaOH溶液で70℃から150℃の浸漬処理をして、ケイ酸ナトリウムとして浸出させ、ケイ酸ナトリウム溶液とSi/Al比≦3のAlリッチ残渣とに分離する。
【0027】
第2工程の成形が、そのまま鋳型に流し込んで固化した固化物を用いる場合、前記固化物を粗砕機で粗砕し、篩で分級、整粒して成形する人工骨材を製造する方法を、提供する。このとき、得られた塊状の固化物をジョークラッシャー等で粗砕する。鋳型がスリット付であると、粗砕の際、固化物がスリットで規則的割れが生じて、同一形状の粗砕物が得られる。粗砕機は、パルベライザー等の回転粗砕機でも良い。
【0028】
粗砕物の篩分けを行い、粗骨材、細骨材として使用できる。分級には、通常の振動篩を用いることができる。
【0029】
さらに篩全通部分(0.075mm以下)は、そのままか、さらに粉砕し、ブレーンを2800〜3800cm
2/gとして、セメントの増量材、アルカリ刺激剤として1%(セメントに対して5wt%)の範囲でセメントに添加することもできる。篩全通部分のナトリウム量が10wt%とアルカリ含有量が多いため、テトラポット等のアルカリ、塩素の影響を考慮が少ないコンクリート材料用途に使用できる。
【0030】
第2工程の成形が、水とセメントを用いる場合、造粒に用いるセメントは、普通セメント、早強セメント、高炉セメント、アルミナセメント、シリカセメント、エコセメント(普通型、速硬型)から選択することができる。短時間での硬化を求める場合には、早強セメントや、超早強セメント等、硬化時間の短いセメントを用いることが好ましい。
【0031】
Alリッチ残渣とセメントとの混合材料の成形は、混合後、所定の粒径となるように成形することができれば、方法は問わない。例えば、パンペレタイザーを使用した転動造粒、ヘンシェルミキサ等を使用した撹拌造粒等が挙げられる。
【0032】
転動造粒に際して、Alリッチ残渣は、固結するので、これを解して転動造粒の供することが好ましい。このとき、通常の粉砕機を用いることができる。セメントの硬化促進剤や、成形助剤等を適宜添加することも好ましい。ここで、セメトの硬化促進剤は、アルミン酸ソーダ等の急硬材や、急結材等が挙げられる。また、成形助剤は、カオリンやベントナイト等の粘土鉱物性無機物質や、パルプの製造時の副酸リグニン、メチルセルロース等の水溶性高分子等である。本願では、ケイ酸ナトリウムをはじめから、含有するので、造粒には有利に作用する。
【0033】
上記転動成形工程によって得られた成形物の養生は、自然養生でも問題はないが、成形物をより短期に硬化させることを考慮すると、加温・加湿養生が好ましい。加湿は、成形物の乾燥を抑制し、Alリッチ残渣のポゾラン活性度を高め、セメントの水和に必要な水分を造粒体に確保しておくためである。
【0034】
Al比率が大きいので、アルミン酸カルシウム水和物の生成量が相対的に上昇し、骨材強度の短期的な増進に寄与する。
【0035】
Si比率が小さいので、粒子間の間隙を適度に充填するC-S-H量が生成する。Si溶出量が多すぎると、水和生成物が急激に成長して粗大な水和物を生成し、逆に粒子間の間隙を広めて強度が低下する傾向がある。